説明

凍結乾燥機スロットドアアクチュエーター及び方法

凍結乾燥機のスロットドアの動きがラック及びピニオンアクチュエーターによって駆動される。そのアクチュエーターは容易に消毒され、消毒用スプレーが達することができる内部要素を含む。ピニオンは、無菌エリアを、駆動系統が配置される非無菌エリアから分離するシールを通り抜けるピニオン軸によって駆動される。無菌障壁を越えて回転運動だけが伝達され、消毒するのが難しいベローズ又はスライディングカバーの必要性を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結乾燥機チャンバー等のスロットドアを動作させるための装置及び方法、並びにそのような装置を組み込む凍結乾燥機に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年12月22日に出願された「Freeze Dryer Slot Door Actuator and Method」と題する米国仮特許出願第61/203,441号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
凍結乾燥は、氷の形態の生成物から水を除去する工程である。凍結乾燥工程では、生成物が凍結され、真空下で、その氷が昇華し、結果として生成された蒸気が凝縮器に向かって流れる。その後に凝縮器において凝縮した氷は後の段階において除去される。凍結乾燥工程では、生成物の完全性が保持され、比較的長期にわたって生成物の安定性を保証することができるので、凍結乾燥は製薬工業において特に有用である。
【0004】
凍結乾燥機は、凍結乾燥されるべき生成物が入っている複数の容器又はバイアルを収容する真空チャンバーを有する。そのチャンバーは通常、複数の棚を備えており、それらの棚はチャンバー内で昇降することができる。それらの棚に積み込むとき、棚は最初にチャンバーの下側部分に動かされ、最も上にある棚が積み込み位置に配置される。その棚に積み込まれた後に、その機構は棚を自動的に持ち上げて、次の棚が積み込み位置に動かされるようにする。チャンバーへの積み込みが完了するまで、その一連の動作が続けられる。チャンバーから積み下ろすためには、積み込みの流れが逆にされ、最も下にある棚から最初に積み下ろされる。
【0005】
生成物を自動的に積み込み、取り出すためのチャンバーへの出入りは、チャンバーの壁内、又は主ドア内に形成される長方形の開口部、すなわち、スロットを通して行なわれる。可動スロットドアがそのスロットを閉じる。チャンバーに生成物のバイアルを挿入できるようにするために、ガイドトラックに沿ってスロットドアを動かすことによって、スロットドアがスロットに対して垂直に持ち上げられる。
【0006】
チャンバーにおいてバイアルの積み込み及び積み下ろしの際に種々の技法が用いられている。1つの構成では、或る機構が、スロットと平行に延在するコンベヤベルトから、チャンバー内の棚にバイアルを押し出す。バイアルはコンベヤベルトから一列ずつ棚に積み込むことができる。別の積み込み技法は、レール上を移動する車輪付移送カートを利用する。移送カートは、一度に棚全体のバイアルを搬送することができ、それらのバイアルを、一度の積み込み作業においてチャンバー内の棚上に押し出すことができる。棚に完全に積み込まれた後に、その棚は持ち上げられ、別の棚が積み込みのための所定の位置に動かされる。積み込みが完了すると、後にバイアルの内容物を凍結乾燥するために、スロットドアを下げてスロットを閉じ、チャンバーを真空にできるようにする。
【0007】
凍結乾燥チャンバーのスロットドアを開位置と閉位置との間で動かすのに、いくつかの作動機構が用いられてきた。1つの構成では、1つ又は複数の親ねじ(lead screw)又はボールねじを用いて、スロットドアをそのガイドトラック内で昇降させる。それらのねじはスロットドアの両側に配置される。別の構成では、1つ又は複数の空気圧又は液圧ピストンアクチュエーターを用いて、スロットドアを昇降させる。
【0008】
スロットドア及びその作動機構は、クラス100、すなわち、クラスAの清潔なクリーンルーム環境内に存在する。用途によっては、積み込み及びドア作動構成要素のうちの1つ又は複数が、チャンバー開口部と共に、滅菌環境を含むアイソレーター内に存在する場合があり、アイソレーターによって、該アイソレーターが置かれる部屋は、クラスCのような厳しくない清浄度要件を有することが許される。
【0009】
チャンバー、スロットドア及び作動機構は定期的に消毒又は滅菌して、その環境を保持しなければならない。ねじタイプ及びピストンタイプのいずれのアクチュエーターも、直接的な化学消毒技法又は蒸気消毒技法を用いて容易に消毒されない内部機構を含む。たとえば、ボールねじは、ボールベアリング、ボール再循環経路及び内部ボール溝を含み、それらは、分解することなく容易に消毒することはできない。同様に、親ねじ及びシリンダーロッドのねじ山、シリンダー壁、並びに液圧又は空気圧アクチュエーターのピストンは、消毒するために近づくのは容易ではない。
【0010】
清浄な環境の無菌性を保持するために、それらの直線作動機構は、清浄な環境の外部に配置される場合がある。その場合、直線運動を有するリンクが、清浄な処理環境と、外部の周囲環境との間の障壁を横切らなければならない。それゆえ、障壁は、衛生的な環境を封入しながら移動できるようにする可撓性ベローズ又はスライディングカバーのような可動シールを組み込まなければならない。ベローズ及びスライディングカバーはいずれも欠点を有する。ベローズは多数の波状のしわを有する内部形状を与えるので、手作業で消毒するのは難しい。それは、消毒が噴霧によって行なわれる応用例では特に課題を提起する。スライディングカバーも衛生的な環境の内外に動き、気密封止することができないので、問題を提起する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、清浄な環境を保持するために改善された特性を有するスロットドア作動方法及び装置が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、凍結乾燥チャンバーのスロットドアの動作に関するシステム及び方法を提供することによって、上記の要求に対処する。本明細書において記述される1つの実施の形態は、無菌エリア及び非無菌エリアを有する凍結乾燥機システムである。そのシステムは、真空チャンバーと、開位置と閉位置との間で摺動することによって真空チャンバー内の開口部を通して出入りできるようにするためのスロットドアとを備え、スロットドアは開位置及び閉位置の両方において無菌エリア内にある。少なくとも1つのギヤラックがスロットドアに接続され、ギヤラックはシステムの無菌エリア内にある。ギヤラックを駆動してスロットドアを開位置と閉位置との間で動かすために、ギヤラック毎に、ピニオンがギヤラックと係合し、ピニオンは無菌エリア内にある。
【0013】
凍結乾燥機システムは、少なくとも1つのピニオンを回転運動において駆動するための少なくとも1つのピニオン駆動軸をさらに備えることができる。該少なくとも1つのピニオン駆動軸は、システムの無菌エリアを非無菌エリアから分離する回転シールを通り抜ける。この構成は、駆動軸及びピニオンを回転させるために接続される駆動手段をさらに備えルことができる。該駆動手段はシステムの非無菌エリア内にある。駆動手段は、個々のピニオン駆動軸に結合される第1の直角駆動部及び第2の直角駆動部と、同期して回転させるために直角駆動部を結合する軸と、直角駆動部を駆動するために結合されるモーターとを備えることができる。
【0014】
凍結乾燥機システムは、少なくともギヤラック及びピニオンを無菌エリア内で消毒するための自動消毒システムをさらに備えることができる。本システムは、気化過酸化水素、漂白剤又は蒸気のような清浄剤を供給することができる。スロットドアは、真空チャンバーにおける開口部を包囲する延長部によって真空チャンバーの壁から離隔して配置することができる。本システムは、真空チャンバー内の開口部を通して生成物を積み込むために配置される積み込み機構をさらに備えることができる。該積み込み機構は少なくとも部分的に無菌エリア内にある。少なくとも1つのギヤラック及びピニオンの上方にガードを配置することができる。該ガードはギヤ及びピニオンを消毒するために手動で取り外すことができる。
【0015】
本明細書において開示される別の実施形態は、無菌環境においてスロットドアを動作させるための方法である。ピニオン駆動軸の駆動端が無菌でない一方で、該駆動軸のピニオン端を無菌にしておくために、ピニオン駆動軸が衛生シールで封止される。その後、少なくとも以下の要素:ピニオン駆動軸のピニオン端に取り付けられるピニオン、スロットドアに取り付けられ、ピニオンと係合しているギヤラック、及びスロットドアが消毒される。その後、駆動軸の駆動端を駆動して、ピニオンを回転させ、ギヤラックを駆動し、スロットドアを動作させる。
【0016】
消毒ステップは、凍結乾燥チャンバーの要素上に消毒剤を噴霧することをさらに含むことができる。消毒剤は、気化過酸化水素、漂白剤又は蒸気を含むことができる。封止するステップは、リップシール又はパッキングを貼り付けることを含むことができる。ピニオン駆動軸は、直角駆動機構を通して駆動することができ。
【0017】
別の実施形態は、真空チャンバー内に生成物を積み込むための真空チャンバー開口部を有する真空チャンバーを備える凍結乾燥機システムである。スロットドアが、真空チャンバー開口部を通して生成物を積み込むための開位置と、真空チャンバー開口部を封止するための閉位置との間で実質的に直線的に動くように取り付けられる。少なくとも1つのギヤラックがスロットドアに接続される。ギヤラックを駆動してスロットドアを開位置と閉位置との間で動かすために、ギヤラック毎に、ピニオンがギヤラックと係合する。
【0018】
凍結乾燥機システムは、真空チャンバー内の開口部を通して生成物を積み込むために配置される積み込み機構をさらに備えることができる。少なくとも1つのギヤラック及びピニオンの上方に少なくとも1つのガードを配置することができる。該ガードはギヤラック及びピニオンを消毒するために手動で取り外すことができる。各ピニオンはスロットドアの平面に対して実質的に垂直な回転軸を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】チャンバードアが開位置にある、本発明のドア及び作動システムの部分図である。
【図1B】チャンバードアが閉位置にある、本発明のドア及び作動システムの部分図である。
【図2A】本発明によるドア及びチャンバーの側面図である。
【図2B】本発明によるドア及びチャンバーの平面図である。
【図3】本発明による凍結乾燥システムの概略図である。
【図4】本発明による駆動手段を示す概略図である。
【図5】本発明による方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の装置及び方法は、標準的な自動化された技法又は手動の技法を用いて容易に消毒される、露出した構成要素を有する機構を用いてスロットドアを動作させることによって、従来技術に内在する問題を克服する。本発明はさらに、直線的な動きを有するアクチュエーターで衛生障壁を横切るのを不要にすることによって、ベローズ又はスライディングカバーを不要にする。
【0021】
本発明による真空チャンバースロットドア及びドア動作機構100が図1A及び図1Bに示される。機構100は真空チャンバー開口部130に出入りできるようにし、その開口部を通して、凍結乾燥される材料が真空チャンバー101内に積み込まれる。図示される実施形態では、機構100は、図2A及び図2Bを参照してこの開示の他の所でさらに説明されるように、延長部210によって、真空チャンバー101の前壁から離隔して配置される。
【0022】
開口部130は、スロットドア105を昇降させることによって開閉され、スロットドアは、図1Aでは開位置に、図1Bでは閉位置に示される。閉位置では、スロットドア105はドアシール132(図1A)と接触し、チャンバー内の真空又は正圧を保持する。
【0023】
ドア105の両側にある一対のドアガイド106が、開位置と閉位置との間で直線的に摺動して並進するようにドアを拘束する。さらに、ガイドは、チャンバーが消毒又は滅菌中に正圧をかけられるときに、ドアを拘持する。例示的な図において、右側にあるドアガイドは、その下にある構成要素をより明確に示すために取り外されている。スロットドア105は、後に説明される作動機構と共に衛生的な環境内に保持され、それにより、材料を汚染することなく、ドアを開閉することができ、材料を積み込み、積み下ろすことができる。
【0024】
ギヤラック110がスロットドア105の一方の側に固定される。同様のギヤラックがスロットドア105の反対側に固定されるが、図1A及び図1Bでは、ガイド106の下にあるので見ることはできない。ギヤラック110は、ステンレス鋼のような非腐食金属から、又は衛生的な若しくは滅菌した環境において用いるのに適している樹脂から製作することができる。各ギヤラックは複数の歯を含む。各歯は、後に説明されるように、インボリュートのピニオン歯と噛み合うために真直ぐで先細りの形状を有することができる。
【0025】
ギヤラック110はスロットドア105と共に動く。図において明示されるように、ギヤラック110は、スロットドア105の上端105Aを過度に越えて延在しない。ギヤラック110はさらに、無菌環境内に全体的に含まれるので、無菌障壁を越えて直線運動を伝達する可撓性ベローズ又はスライディングカバーは不要である。
【0026】
回転式ピニオンギヤ120、121が、スロットドアの両側に位置するギヤラック110と噛み合い、ドアの直線運動を駆動する。ピニオン120、121は複数の歯を有し、それらの歯はラックと噛み合い、該ラック駆動する際の効率を最大にするインボリュート歯形を有することができる。好ましい実施形態では、ドアのそれぞれの側に、1つのラック及びピニオンアセンブリが配置される。2つのピニオン120、121の回転運動が同期して、直線運動するドアへの追従をさらに確実にする。
【0027】
ピニオン120、121及びラック110は、消毒剤溶液を噴霧するために近づけるように、無菌エリア内で露出される。ボールねじ、親ねじ、液圧又は空気圧シリンダー、及び大部分の他の作動機構とは異なり、ラック及びピニオン構成は、分解しなければ近づくことができない内部部品を持たない。回転式ピニオンと直線ラックとの間の接触面は、自動化、手作業のいずれでも、噴霧消毒のためにむき出しにしておくことができる。代替的には、それらの構成要素は、噴霧又は蒸気消毒の場合に容易に取り外されるガードを用いて、偶発的な接触から保護することができる。たとえば、ドアガイド106は、迅速取外し及び交換機構を組み込むことができる。結果として形成されるアセンブリは、構成要素を広範に分解することなく容易に消毒又は滅菌される。
【0028】
ピニオン120、121は、ピニオンの回転軸においてピニオンに結合される駆動軸によって駆動される。図1A及び図1Bに示される実施形態では、ピニオン120、121は、その回転軸がスロットドア105の平面に対して垂直になるように配置される。後に説明されるように、別々の駆動軸が2つのピニオンを駆動し、同期する。代替の実施形態(図示せず)では、2つのピニオンはスロットドア105の平面に対して平行な単一の回転軸を中心にして回転する。その実施形態では、単一の軸が2つのピニオンを結合することができる。
【0029】
図2A及び図2Bにはスロットドアノズル又は延長部210が示されており、それらの図はそれぞれ、チャンバーの側面図及び平面図を示す。延長部210は、チャンバー201の壁202からベゼル215まで延在し、ベゼルは、凍結乾燥システムの無菌エリア290を非無菌エリア291(図2A)から分離する。延長部210は、真空チャンバー201の開口部130(図1A)を包囲し、チャンバーの無菌内部を非無菌エリア291から隔離する。
【0030】
ドア動作機構100は、チャンバー201の壁202の反対側にある、延長部210の端部に取り付けられ、ドア105を動作させる。ピニオン120、121は、ベゼル215を通り抜ける駆動軸170、171によって駆動される。駆動部177が、ピニオン120、121の反対側にある軸端から駆動軸170、171を駆動する。ピニオン端と駆動端との中間の場所において、駆動軸170、171は、リップシール又はパッキングのような回転シールによって、ベゼル215に封止される。それにより、ベゼル215の非無菌側291上の汚染物質によって、無菌側290が汚染されないようにする。
【0031】
真空チャンバー301及び無菌領域390を含む、凍結乾燥機システム300が、図3に示される。無菌エリア390は、コンベア377、及びチャンバー301内の棚(図示せず)上にバイアル列を押し出すためのプッシャー386を含む積み込み機構と共に、真空チャンバー301のスロットドア305及び開口部330を含む。積み込み機構は、自動化された消毒、又は手作業による消毒を容易にするように設計される。無菌エリア390及び非無菌エリア391は、ベゼル又は障壁315によって分離される。ベゼル315は、開口部330を包囲する延長部331によって、チャンバー301から離隔して配置される。
【0032】
ギヤラック310、311は、スロットドア305の両側に取り付けられ、図3に示される開位置と閉位置との間でドアを駆動する。ピニオン320、321はそれぞれラック310、311を駆動する。ピニオンは、図4を参照しながら後に説明されるような駆動機構によって駆動される。その駆動機構は動力駆動軸354を含み、動力駆動軸は、その機構をモーター(図示せず)に接続する。その駆動機構は、ベゼル315の非無菌側391に位置し、それゆえ、無菌エリア390の外部にある。ラック310、311、ピニオン320、321、ピニオン駆動軸(図示せず)の一部は無菌エリア390内で露出され、それゆえ、噴霧によって容易に消毒される。ガード(図示せず)が、無菌エリア内のそれらの構成要素を覆うことができる。その場合には、手動で消毒するために、ガードを容易に取り外すことができる。
【0033】
ピニオン駆動軸は隔離するベゼル315を通り抜け、ベゼルは、無菌エリア390を、ピニオン駆動機構を含む非無菌機械エリア391から分離する。軸の駆動端が非無菌状態に曝露されるにもかかわらず、駆動軸をベゼルに封止するシールが軸のピニオン端上の無菌状態を保持する。
【0034】
1つの例示的なピニオン駆動機構アセンブリ400が図4に示される。ピニオン420、421はそれぞれ駆動軸470、471によって駆動される。駆動軸470、471は、無菌エリア390を非無菌機械エリア391から分離するベゼル415内のシール480、481を通り抜ける。駆動軸はピニオンとは別の構成要素として示されるが、本開示の範囲から逸脱することなく、駆動軸はピニオンと一体に構成することもでき、図示されるのとは異なる構成を有することもできる。用語「駆動軸」は、本明細書において用いられるときに、図示されるような別々の軸470、471と、ピニオンの任意の部分、又はピニオンと共に回転し、シールのための封止表面を与える任意の他の構成要素の任意の部分とを含む。
【0035】
駆動軸470、471はそれぞれ、直角駆動部477、478によって駆動される。直角駆動部477、478は、連結駆動軸450によって同期し、動力駆動軸454を通してモーター455によって駆動される。モーター455は、凍結乾燥システムの他の構成要素と共に、コントローラー495によって制御することができる。
【0036】
直角駆動部477、478及びモーター455はそれぞれ、消毒するのが難しいか、又は不可能である内部構成要素を有する。しかしながら、それらの構成要素は、システムの非無菌機械エリア491内にあり、ベゼル415及びシール480、481によって、無菌エリア490から分離される。そのようにして、それらの構成要素を用いて、ピニオンを駆動することができ、一方、容易に消毒されるピニオン及びラックのみが無菌エリア490内に配置される。
【0037】
本開示の範囲から逸脱することなく、限定はしないが、チェーン駆動システム、別々の液圧又は電気サーボモーター、及びベルト駆動システムを含む、他のピニオン駆動機構を用いることもできる。その駆動機構は、ピニオンが一緒に回転するのを確実するためのタイミング方式を含むことが好ましい。ドアの平面と平行な共通の軸を中心して回転するピニオンの場合、共通の駆動軸を用いることができ、より複雑なタイミング機構を不要にすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態による、無菌環境において凍結乾燥チャンバーのスロットドアを動作させるための方法500が図5の流れ図によって示される。ピニオン駆動軸が、衛生シールを用いて封止される(ステップ510)。そのシールは駆動軸のピニオン端を無菌に保ち、一方、駆動軸の駆動端は非無菌環境に曝露することができる。シールは、ピニオン駆動軸と、図3に示されるベゼル315のような、無菌環境と非無菌環境とを分離する構成要素との間に障壁を形成する。
【0039】
その後、無菌エリア内の要素が消毒される(ステップ520)。それらの要素は、駆動軸のピニオン端、駆動軸のピニオン端に取り付けられるピニオン、スロットドアに取り付けられ、ピニオンと係合しているギヤラック、及びスロットドアを含む。それらの要素は、アメリカ合衆国オハイオ州メンター(Mentor, OH, USA)のSteris社から市販されるVHP(登録商標)滅菌剤のような気化過酸化水素滅菌剤を含む、アイソレーター用薬剤(isolator agent)のような消毒液がアイソレーター内の構成要素に塗布される,
自動化された工程において消毒することもできるし、クリーンルーム環境において漂白剤のような消毒剤を塗布することによって消毒することもできる。ラック及びピニオンアクチュエーターがむき出しであることによって、消毒工程が容易になる。別の実施形態では、ラック及びピニオンアクチュエーター上に設置されるガード又はガイドが、消毒ステップの前に手作業で取り外される。消毒ステップは、殺菌剤を手作業で塗布すること、構成要素を消毒ガス若しくは蒸気に曝露すること、又は構成要素に電磁波を照射することを含む場合がある。
【0040】
その後、駆動軸の駆動端を駆動して、ピニオンを回転させ、ラックを駆動し、スロットドアを動作させる(ステップ530)。ピニオン駆動軸は衛生シールによって封止されるので、駆動機構アセンブリは消毒される必要はない。
【0041】
本発明の方法は、産業用コントローラー又はコンピューター495(図4)によって部分的に制御又は実行することができる。そのコンピューターは、動作を開始する、及びセンサーデータを受信する等の当該技術分野において知られている目的のために、マンマシンインターフェース、ネットワークインターフェース及び凍結乾燥システムとのインターフェースのような入力及び出力デバイスとバスを通して相互接続される中央処理装置(CPU)及びメモリを含む。
【0042】
メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)及び種々の取外し可能及び固定メモリデバイスを含むことができる。メモリは、プログラムの実行中にCPUにおいて用いられるデータを格納し、作業領域として用いることができる。メモリはさらに、プログラムを格納するためのプログラムメモリとしての役割を果たす。プログラムは、上記で開示された方法を実行するCPU又は別のプロセッサによって実行するために格納されるコンピューター可読命令として、コンピューター使用可能媒体上に存在することもできる。
【0043】
これまでの詳細な説明は、あらゆる点で、限定するのではなく、例証及び例示であると理解されるべきであり、本明細書において開示される発明の範囲は、発明の説明から決定されるべきではなく、特許請求の範囲から、特許法によって許される最大限の広い解釈に準じて決定されるべきである。本明細書において図示及び説明される実施形態は、本発明の原理の例示にすぎず、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者によって種々の変更を実施することができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌エリア及び非無菌エリアを有する凍結乾燥機システムであって、
真空チャンバーと、
開位置と閉位置との間で摺動することによって前記真空チャンバー内の開口部を通して出入りできるようにするためのスロットドアであって、該スロットドアは、該開位置及び該閉位置の両方において前記無菌エリア内にある、スロットドアと、
前記スロットドアに接続される少なくとも1つのギヤラックであって、該少なくとも1つのギヤラックは前記システムの前記無菌エリア内にある、少なくとも1つのギヤラックと、
前記ギヤラック毎に、該ギヤラックと係合し、該ギヤラックを駆動して前記スロットドアを前記開位置と前記閉位置との間で動かすためのピニオンであって、該ピニオンは前記無菌エリア内にある、ピニオンと、
を備える、凍結乾燥機システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのピニオンを回転運動において駆動するための少なくとも1つのピニオン駆動軸であって、該少なくとも1つのピニオン駆動軸はそれぞれ、前記システムの前記無菌エリアを前記非無菌エリアから分離する回転シールを通り抜ける、少なくとも1つのピニオン駆動軸をさらに備える、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項3】
前記回転シールはリップシールを含む、請求項2に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項4】
前記ピニオンを回転させるために接続される駆動手段であって、該駆動手段は前記システムの前記非無菌エリア内にある、駆動手段をさらに備える、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項5】
前記駆動手段は、
各前記ピニオンを駆動するための1つのピニオン駆動軸と、
個々の前記ピニオン駆動軸に結合される第1の直角駆動部及び第2の直角駆動部と、
同期して回転させるために前記直角駆動部を結合する軸と、
前記直角駆動部を駆動するために結合されるモーターと、
を備える、請求項4に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項6】
少なくとも前記ギヤラック及び前記ピニオンを前記無菌エリア内で消毒するための自動消毒システムをさらに備える、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項7】
前記自動消毒システムは、気化過酸化水素、漂白剤及び蒸気からなるグループから選択される清浄剤を供給する、請求項6に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項8】
前記スロットドアは、前記開口部を包囲する延長部によって前記真空チャンバーの壁から離隔して配置される、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項9】
ベゼルであって、前記真空チャンバー壁の反対側にある該ベゼルの端部において前記延長部に取り付けられ、かつ前記無菌エリアと前記非無菌エリアとを分離する、ベゼルをさらに備える、請求項8に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項10】
前記真空チャンバー内の前記開口部を通して生成物を積み込むために配置される積み込み機構であって、該積み込み機構は少なくとも部分的に前記無菌エリア内にある、積み込み機構をさらに備える、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのギヤラック及び前記ピニオンの上方に配置されるガードであって、該ガードは前記ギヤ及び前記ピニオンを消毒するために手動で取り外すことができる、ガードをさらに備える、請求項1に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項12】
無菌環境において凍結乾燥チャンバーのスロットドアを動作させるための方法であって、ピニオン駆動軸の駆動端が無菌でない一方で、該ピニオン駆動軸のピニオン端を無菌に保つために、衛生シールを用いて該ピニオン駆動軸を封止するステップと、
前記ピニオン駆動軸の前記ピニオン端に取り付けられるピニオン、前記スロットドアに取り付けられ、前記ピニオンと係合しているギヤラック、及び前記スロットドアを含む要素を消毒するステップと、
前記駆動軸の前記駆動端を駆動するステップであって、前記ピニオンを回転させ、前記ギヤラックを駆動し、前記スロットドアを動作させる、駆動するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記消毒するステップは、前記凍結乾燥チャンバーの前記要素上に消毒剤を噴霧することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記消毒剤は、気化過酸化水素(VHP)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記消毒剤は、漂白剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記消毒するステップは、前記要素を蒸気に曝露することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記封止するステップは、リップシール及びパッキングからなるグループから選択されるシールを被着することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記駆動するステップは、直角駆動部を通して、前記ピニオン軸の前記駆動端を駆動することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
凍結乾燥機システムであって、
真空チャンバーであって、該真空チャンバー内に生成物を積み込むための真空チャンバー開口部を有する、真空チャンバーと、
前記真空チャンバー開口部を通して生成物を積み込むための開位置と、前記真空チャンバー開口部を封止するための閉位置との間で実質的に直線的に動くように取り付けられるスロットドアと、
前記スロットドアに接続される少なくとも1つのギヤラックと、
前記ギヤラック毎に、該ギヤラックと係合し、該ギヤラックを駆動して前記スロットドアを前記開位置と前記閉位置との間で動かすためのピニオンと、
を備える、凍結乾燥機システム。
【請求項20】
前記真空チャンバー開口部を通して生成物を積み込むために配置される積み込み機構をさらに備える、請求項19に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのギヤラック及び前記ピニオンの上方に配置される少なくとも1つのガードであって、該ガードは前記ギヤラック及び前記ピニオンを消毒するために取り外すことができる、ガードをさらに備える、請求項19に記載の凍結乾燥機システム。
【請求項22】
各前記ピニオンは前記スロットドアの平面に対して実質的に垂直な回転軸を有する、請求項19に記載の凍結乾燥機システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513578(P2012−513578A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543494(P2011−543494)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/006559
【国際公開番号】WO2010/074723
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511152968)アイエムエー ライフ ノース アメリカ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】