説明

凝縮装置

【課題】含水潤滑剤から蒸発水を分離し凝縮液を的確にエンジンに戻す。
【解決手段】含水潤滑剤を有するエンジン1用の凝縮装置は、蒸発水がその自然対流下でエンジンから排出される第1のライン2と、空気が凝縮装置から漏出できる圧力補償装置3と、凝縮液がエンジンに戻り得る、第1のラインと異なりそれよりも冷たい第2のライン4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水潤滑剤を有するエンジン用の凝縮装置に関するものであり、この凝縮装置は、蒸発水がその自然対流下でエンジンから排出される第1のラインと、空気が凝縮装置から漏出できる圧力補償装置とを備える。
【背景技術】
【0002】
オイル潤滑ギアボックスでは、通気開口が設けられ、この通気開口は、ギアボックスの動作時に温度が上昇し下降する際に、環境との圧力バランスを可能にし、通常、オイルミストを保持し環境から塵を除外する取付け部品を有する装置として設計される。
【0003】
国際公開第2007/098523A1号パンフレットは、高い割合の水だけでなく、凝固点を低下させるための媒介物、たとえばグリコール、およびさらなる添加物や懸濁物を含む含水潤滑剤も開示している。これのさらなる詳細、およびこの種の潤滑剤で実現し得る利益が、前記公開に示されている。
【0004】
独国特許第2220565号明細書は、オイル潤滑減速機用の再循環冷却システムを開示している。ファンが、油蒸気を含む空気を、ギアボックスの内部から熱交換器を通してギアボックスの方へ逆戻りして再循環させる。凝縮された油は別個に戻される。環境とのいかなる圧力バランスもない。
【0005】
最後に、国際公開第2010/037829A1号パンフレットは、含水潤滑剤を有するギアボックス用の換気装置を開示している。換気装置は、ラインを介してギアボックスと連結される。装置は、凝縮液が同じラインを通ってギアボックスに逆戻りして流れ込むように、流入する水蒸気が凝縮できる凝縮装置を有する。
【0006】
これらの凝縮装置はすべて、ギアボックス潤滑剤から蒸気を凝縮するように設計されている。燃焼機関を潤滑するために、または電気モータを潤滑し冷却するために、通常、油が使用される。水性潤滑剤が内燃機関または同様に電気モータに使用される場合には、高い熱負荷、および摂氏100度よりも著しく高い温度のため、水性成分の大量の蒸発が生じ、したがって、潤滑剤および冷却剤の組成の連続的な変形および変化が生じる。ギアボックスと対照的に、内燃機関のシリンダや電気モータの巻線などの構成部品からの急速な高温の入力は、直ちに潤滑剤の水性部分を蒸発させ、その結果、水の大きな膨張および水蒸気の形成をもたらす。この大幅に増加される膨張により、換気システムで流速の増加を生じ、国際公開第2010/037829号パンフレットで説明したような凝縮装置は、もはや適切に凝縮することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が基礎とする目的は、この欠点を除去し、水蒸気の顕著な形成による環境への水の損失を阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、含水潤滑剤を有するエンジン用の凝縮装置であって、
蒸発水がその自然対流下でエンジンから排出される第1のラインと、
空気が凝縮装置から漏出できる圧力補償装置と、
凝縮液がエンジンに戻り得る、第1のラインと異なりそれよりも冷たい第2のラインと
を備える凝縮装置、によって達成される。
【0009】
凝縮の場合には、さまざまな方法で実現され得る熱放出が必要とされる。本発明による凝縮装置では、凝縮された水蒸気がエンジンの領域に、特に潤滑剤溜めの中に戻され得る第2のラインが使用される。追加の冷却装置がない簡単な構造では、熱放出は、蒸発されかつ最後には凝縮された水が第1および第2のラインのパイプシステム全体を通して案内され、それに伴って冷却されることによって実現される。最初は高温の水蒸気により、第1のラインは、既に凝縮された水を実質的に戻す働きをする第2のラインよりも著しく温かい。
【0010】
ここで、第1のラインと異なる第2のラインは、エンジンの領域からの水蒸気が既に通過した第1のラインの同じ領域が、同様に、エンジンの領域へ凝縮液を戻すために使用されないことを意味している。また、第1のラインと異なる第2のラインは、第1のラインに共通な導管の別個のラインセグメントによって形成され得る。
【0011】
本発明の改良が、サブクレーム、記述、および添付の図面で説明される。
【0012】
本発明による凝縮装置では、第1の放熱手段を有する凝縮装置が、第1のラインと第2のラインとの間に配置され、流入する蒸発水が凝縮装置によって凝縮され得ることが好ましい。冷却装置を有する凝縮装置の場合、第1のラインを通って上昇する水蒸気は、目標とした方法で冷却されることができ、このように含まれた水が凝縮される。したがって、既に冷却され凝縮された水だけが、凝縮装置の下流に配置される第2のラインを通過し、その結果、第2のラインの温度もまた低下し、水は、エンジンの領域まで妨害されることなく還流することができる。
【0013】
凝縮装置のさらなる好ましい実施形態によれば、第2の放熱手段が、第2のラインに配置される。凝縮装置の後の第2の冷却により、任意の残留水蒸気がさらに完全に凝縮され得ることが実現され、このようにして、燃焼機関および電気モータの潤滑で生じる顕著な蒸発を管理することができる。追加的に得られ凝縮される流体は、第2のラインを介して潤滑剤溜めに供給される。
【0014】
好ましい実施形態では、第2の放熱手段は、空気乾燥装置、たとえば遠心分離機やサイクロン分離器などの機械式空気乾燥装置であり得る。水蒸気の高い流速により、サイクロン分離器に適した十分に高い回転または遠心力が生じる。また、空気乾燥装置には、流入する流体からの水分ばかりでなく汚染物質も抽出するという利点がある。
【0015】
通気されたエンジンハウジングから冷却装置の中への圧力変動の影響を回避するために、本発明による凝縮装置の場合には、調整された凝縮液ダイバータが、第2のラインに配置されることが好ましい。特に、内燃機関のクランクケース内で移動するピストンにより、圧力変動が生じる。たとえば、凝縮液ダイバータ内で特定の流体レベルに達すると、あるいは時間間隔、エンジン負荷、構成部品または流体を取り巻く温度、アクセルペダルの設定および類似物に応じて、凝縮液排出口は、凝縮液が潤滑剤および冷却回路に戻り得るように開口される。
【0016】
調整された凝縮液ダイバータは、第2の放熱手段にまたはそれの後に、特に空気乾燥装置またはサイクロン分離器の後に配置されることが好ましい。このようにして、空気乾燥装置に戻る水の反発を防止することができる。
【0017】
調整された凝縮液ダイバータは、フロートまたは回転弁凝縮液ダイバータ、あるいは電気または機械制御弁であり得る。
【0018】
エンジンが停止していると、凝縮液ダイバータの形態に応じて、水の残量が凝縮液ダイバータ内に残り、低温で凍結する場合があり、それにより、凝縮装置の機能に不利な影響があることになる。したがって、凝縮装置の好ましい実施形態では、加熱装置が、調整された凝縮液ダイバータの領域に配置される場合がある。
【0019】
代替的または追加的には、低い周囲温度で記述される問題を防止するために、調整された凝縮液ダイバータは、凝縮液がエンジンに向かって下方に流出できるように、エンジンが停止している場合に開口するように設計され得る。エンジンが始動されると、凝縮液ダイバータ、たとえば弁は、通気回路で正の温度に達するまで開口したままであり得る。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、圧力補償装置は、空気が凝縮装置の環境に漏出できる通気開口として形成される。これは、空気が漏出する前に空気乾燥装置によって清浄にされている場合に特に有利である。
【0021】
他の実施形態では、圧力補償装置は、空気が圧力補償装置を通ってエンジンの領域に漏出できるように形成される。この空気は、特に、内燃機関の吸気路に戻され得る。
【0022】
本発明は、図面を参照して例示として下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による凝縮装置の線図である。
【図2】さらなる実施形態の本発明による凝縮装置の線図である。
【図3】さらなる実施形態の本発明による凝縮装置の線図である。
【図4】さらなる実施形態の本発明による凝縮装置の線図である。
【図5】さらなる実施形態の本発明による凝縮装置の線図である。
【図6】さらなる実施形態の本発明による凝縮装置の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、含水潤滑剤を有するエンジン1のための本発明による凝縮装置を示している。潤滑剤は、エンジン1の下に潤滑剤溜め5の中に集まる。水性潤滑剤の蒸発によって、水蒸気が、第1のライン2を通って上昇し、したがって最も熱いゾーンからエンジン1の付近に排出される。とりわけ、第1のライン2と第2のライン4との間の領域で、水は、ライン回路内で水蒸気から凝縮し、したがって第2のライン4を通って潤滑剤溜め5の中に還流する。凝縮で吐出される空気は、圧力補償装置3を通って漏出できる。図1に示される実施形態では、圧力補償装置3は、通気開口によって形成され、空気は、凝縮装置の環境に漏出する。
【0025】
図2に示される実施形態では、第1のライン2と第2のライン4との間に、冷却装置を有する凝縮装置6が配置されている。凝縮装置6の領域では、水蒸気の大部分が凝縮して、第2のライン4を通って下方に流れる水になる。分離された空気は、通気開口3を通って漏出できる。
【0026】
図3に示されるように、凝縮装置6の後に第2の放熱手段7、すなわち第2の冷却装置が第2のライン4に配置され得る。ここで、第2の冷却装置は、サイクロン分離器として形成される。圧力補償装置3は、サイクロン分離器の領域に配置され、空気はまた、図3の環境に漏出する。
【0027】
対照的に、図4の圧力補償装置は、空気がさらなるラインを通って燃焼機関1の吸入チャンバに案内され、したがってエンジン1による燃焼のために供給されるように、形成される。
【0028】
さらに、図4は、2つの凝縮液ダイバータ8を示しており、その第1のものは、サイクロン分離器に連結して配置され、フロートオープンナーまたは電気的に作動される弁を有する収集容器として設計される。第2の凝縮液ダイバータ8は、平行に延びる各第2のライン4の合流の後に配置され、この各第2のライン4は、第一に、凝縮装置6の後に直接潤滑剤溜め5まで、そして第二に、凝縮装置6の後に第2の放熱手段7を介して潤滑剤溜め5までもとの場所につながる。
【0029】
図5は、凝縮液ダイバータ8の領域に、低温で凝縮液の凍結を防止する加熱装置9、たとえば加熱コイルが配置され得ることを示している。
【0030】
図6の本発明による実施形態では、凝縮装置6、たとえば空気乾燥装置が潤滑剤溜め5の下に配置される。水蒸気は、ライン2を通過して設けられた放熱手段に達する。この場合には、凝縮液は、ポンプ10を使って潤滑剤溜め5に戻される。
【0031】
したがって、本発明は、含水潤滑剤を有するエンジンのための、信頼性のある水蒸気の凝縮を実現する。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン
2 第1のライン
3 圧力補償装置
4 第2のライン
5 潤滑剤溜め
6 凝縮装置
7 第2の放熱手段
8 凝縮液ダイバータ
9 加熱装置
10 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水潤滑剤を有するエンジン(1)用の凝縮装置であり、
蒸発水がその自然対流下で前記エンジン(1)から排出される第1のライン(2)と、
空気が凝縮装置から漏出できる圧力補償装置(3)と
を備える凝縮装置であって、
凝縮液がエンジン(1)に戻り得る、前記第1のラインと異なりそれよりも冷たい第2のライン(4)
によって特徴づけられる凝縮装置。
【請求項2】
第1の放熱手段を有する凝縮装置(6)が、前記第1のライン(2)と前記第2のライン(4)との間に配置され、流入する蒸発水が凝縮装置(6)によって凝縮され得ることを特徴とする、請求項1に記載の凝縮装置。
【請求項3】
第2の放熱手段(7)が、前記第2のライン(4)に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の凝縮装置。
【請求項4】
前記第2の放熱手段(7)が、空気乾燥装置であることを特徴とする、請求項3に記載の凝縮装置。
【請求項5】
前記空気乾燥装置が、サイクロン分離器であることを特徴とする、請求項4に記載の凝縮装置。
【請求項6】
少なくとも1つの調整された凝縮液ダイバータ(8)が、第2のラインに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の凝縮装置。
【請求項7】
調整された凝縮液ダイバータ(8)が、前記第2の放熱手段(7)にまたはそれの後に配置されることを特徴とする請求項6に記載の調整された凝縮液ダイバータを有する、請求項3に記載の凝縮装置。
【請求項8】
前記調整された凝縮液ダイバータ(8)が、フロート凝縮液ダイバータであることを特徴とする、請求項6に記載の凝縮装置。
【請求項9】
前記調整された凝縮液ダイバータ(8)が、電気または機械制御弁であることを特徴とする、請求項6に記載の凝縮装置。
【請求項10】
加熱装置(9)が、前記調整された凝縮液ダイバータ(8)の領域に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の凝縮装置。
【請求項11】
前記調整された凝縮液ダイバータ(8)は、凝縮液が前記エンジン(1)に向かって下方に流出できるように、エンジン(1)が停止した場合に開口するように設計されることを特徴とする、請求項6に記載の凝縮装置。
【請求項12】
前記圧力補償装置(3)は、空気が凝縮装置の環境に漏出できる通気開口として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の凝縮装置。
【請求項13】
前記圧力補償装置(3)は、空気が前記圧力補償装置(3)を通って前記エンジン(1)の領域に漏出できるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の凝縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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