説明

処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造、処理槽の上蓋部の構造、及び、処理槽

【課題】担体に固定化した微生物を用いた廃水の処理槽において、処理水を排水するための排水機構について新規な構造を提案する。
【解決手段】原水2を微生物処理にて浄化する処理槽1の上蓋部10bに設けられる排水機構40の構造であって、排水機構40は、処理槽1の水を流出させるための流出部41と、流出部41に取り付けられ、少なくとも微生物を固定化するための担体の流出を防止するフィルタ機構42と、フィルタ機構42を内側に収容する内部空間43aを形設する空間形成部43と、を有し、空間形成部43は、内部空間43aにおける水平断面積M(図3網掛部参照)が上側になるほど狭くなる部位を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、微生物が担持された固定床に廃水が通水される固定床型微生物リアクターといった処理槽に関するものであり、より詳しくは、処理槽の上蓋部に設けられる排水機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、担体に固定化した微生物を用いた廃水の処理槽として、例えば、固定床型微生物リアクターが知られている。この固定床型微生物リアクターなどにおいて、固定化される微生物として、独立栄養性アンモニア酸化細菌やメタン菌、水素生成菌などの嫌気性の細菌が用いられることがある。
【0003】
特に、アンモニア態窒素を含む廃水を処理する場合には、アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素とから直接窒素を生成する反応を起こす微生物である独立栄養性の嫌気性アンモニア酸化(Anaerobic Ammonium Oxidation)細菌(所謂Anammox菌)が用いられることがある。このAnammox菌の利用により、流入廃水中のアンモニア態窒素の50%〜60%程度を亜硝酸態窒素に酸化させる前処理により脱窒が可能となり、硝化に要する酸素供給量を半減できることが知られている。Anammox菌は倍加時間が11日と言われている増殖速度が非常に緩慢な菌で、脱窒細菌のように大量に増殖して汚泥として廃棄する事態とはならない。消費エネルギーを抑え、廃棄物を出さない画期的な窒素除去プロセスを構築することが可能とされている。このように、Anammox菌を用いてアンモニア態窒素を含む廃水を処理することは、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0004】
この特許文献1では、処理された後の廃水(以下、単に「処理水」とする。)と、微生物を固定化した担体を、平板状のスクリーンにて分離するとともに、窒素ガス噴出手段より噴出させた窒素ガスをスクリーンに衝突させる構成について開示されている。この構成によれば、担体の流出を防止に加え、スクリーンの目詰まりを防止できることとしている。
【0005】
また、特許文献2においては、処理槽内の固定床の下方に配置された集水管が配置され、この集水管に処理水を収集し、排水がなされる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−194620号公報
【特許文献2】特開2009−195763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示される構成では、処理槽内の窒素ガス噴出手段の設置や、この窒素ガス噴出手段に対して窒素ガスを供給させる手段を設置することが必要となり、装置構成が複雑になることはもちろんのこと、これらのメンテナンスも必要となる。
【0008】
また、スクリーンを平板状とする構成では、フィルタ面積を大きく確保する場合に大型化が必要となって、その目詰まりが生じた際の分解洗浄などの作業が行い難いものとなってしまう。
【0009】
他方、特許文献2に開示される構成の場合には、廃水が過剰に供給された場合などにおいて、処理槽内の水をオーバーフロー(溢流)をさせるために、上蓋部の付近にオーバーフローを溢流させるための排水機構を設けることが好ましい。
【0010】
しかし、この排水機構を設ける場合においても、担体の流出を防止する必要があるため、特許文献1と同様に、何らかのフィルタ機構を設ける必要がある。
【0011】
特に、特許文献2のような構成では、廃水の処理反応によって生じた窒素ガスとともに微生物を担持した担体が浮上するため、この担体の流出を防止しつつ、オーバーフローを可能とする必要がある。
【0012】
また、この排水機構に設置されるフィルタ機構についても、目詰まりの防止や、メンテナンス性を確保することが要求されることになる。
【0013】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑み、担体に固定化した微生物を用いた廃水の処理槽において、処理水を排水するための排水機構について新規な構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1に記載のごとく、
原水を微生物処理にて浄化する処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造であって、
前記処理槽内の水を流出させるための流出部と、
前記流出部に取り付けられ、少なくとも微生物を固定化するための担体の流出を防止するフィルタ機構と、
前記フィルタ機構を内側に収容する内部空間を形設する空間形成部と、を有し、
前記空間形成部は、
前記内部空間における水平断面積が上側になるほど狭くなる部位を有する構成とする、
処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造とする。
【0016】
また、請求項2に記載のごとく、
前記フィルタ機構は、
外周部にフィルタ面を有する略円筒状のものであり、
円筒軸が略水平方向となるように配置され、
前記フィルタ面が前記空間形成部内に配置されることとする。
【0017】
また、請求項3に記載のごとく、
前記フィルタ機構は、
前記空間形成部の外部から前記内部空間へと挿入固定され得る構成とし、
前記空間形成部の外部において前記空間形成部に対し脱着可能な構成とする。
【0018】
また、請求項4に記載のごとく、
前記フィルタ機構は、
外部からパージガスが送り込まれることで、
前記フィルタ機構の目詰まりを除去するための逆洗が行い得る構造とする。
【0019】
また、請求項5に記載のごとく、
前記空間形成部には、
前記生成ガスを排出し得るガス排出部が設けられる構造とする。
【0020】
また、請求項6に記載のごとく、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の排水機構が設けられる上蓋部の構造であって、
前記上蓋部は、略水平の天面を有することとし、
処理槽内にて発生して上昇する生成ガスの気泡を、前記天面にて一時的に滞留させることで拡大化し、
拡大化した気泡を前記空間形成部へと流入させ得る構成とする。
【0021】
また、請求項7に記載のごとく、
請求項6に記載の上蓋部が設けられる、処理槽とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
フィルタ面に衝突させる生成ガスの量を増加させる(気泡のフィルタ面への衝突確率を高める)ことが可能となって、フィルタ面に付着した菌を担持した担体あるいは単独の菌を、気泡によって効果的に剥離させる、若しくは、フィルタ面への菌を担持した担体あるいは単独の菌の付着を気泡の流動によって効果的に防止することが可能となり、フィルタ機構の目詰まりの防止や、メンテナンス回数の削減を図ることが可能となる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明においては、
空間形成部の限られた内部空間において、単純に平板状のフィルタを流出部に設ける場合と比較して、より大きなフィルタ面積(濾過面積)を確保することができ、多量の通水量を確保することが可能となる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明においては、
上蓋部や空間形成部を分解することなく、フィルタ機構を脱着することが可能となり、フィルタ機構の洗浄や、フィルタ機構の交換などを行うことができ、メンテナンスに優れた構成を実現することができる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明においては、
フィルタ機構を取り付けたままで、フィルタ面の目詰まりを除去することが可能となり、短時間でのメンテナンスが可能となる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明においては、
内部空間に導かれた生成ガスをガス排出部から外部へと排出・回収できる。また、オーバーフローする水の流れとともに生成ガスを空間形成部へと導くことが可能となり、生成ガスを効率よく空間形成部に集めることが可能となる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明においては、
拡大化した気泡をフィルタ機構のフィルタ面に衝突させることが可能となり、拡大化した気泡はその浮上速度が速く、また、衝突面積が広くなることから、フィルタ面の目詰まり除去・防止を効果的に行うことが可能となる。
【0029】
また、請求項7に記載の発明においては、
フィルタ機構の目詰まりの防止や、メンテナンス回数の削減が図られた排水機構を有する処理槽を実現することができ、稼働率の高い処理槽を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】処理槽の全体構成について説明する図。
【図2】別形態の処理槽の全体構成について説明する図。
【図3】排水機構の概要について説明する図。
【図4】気泡がフィルタ機構に衝突する状況について示す図。
【図5】フィルタ機構の詳細な構成について説明する図。
【図6】(a)は一方の壁面を傾斜内壁面とする例について説明する図。(b)は他方の壁面を傾斜内壁面とする例について説明する図。(c)は内部空間側に膨らむ円弧状の内壁面とする例について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0032】
まず、図1を用いて全体構成について説明する。
図1に示す処理槽1は、処理槽本体10内に廃水などの原水2を供給し、この原水2を微生物が担持された固定床11に通水することにより、原水2の浄化処理を行うものである。浄化処理を行う対象となる原水2としては、例えば、ビール工場などの食品工場にて生成される廃水が考えられる。
【0033】
また、固定床11は、処理槽本体10内に充填した多数の担体21・21・・・を、処理槽本体10の下部に配置される支持部材12により支持することで構成されている。
【0034】
また、担体21・21・・・には、原水2の処理を行う微生物が担持されている。担体21・21・・・に担持させる微生物としては、独立栄養性アンモニア酸化細菌やメタン菌、水素生成菌などの嫌気性の細菌(本明細書中においては、単に「菌」としても表現される)が用いられることができる。
【0035】
特に、原水2がアンモニア態窒素を含む廃水である場合には、アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素から直接窒素を生成する反応を起こす微生物である嫌気性アンモニア酸化細菌(所謂Anammox菌)を用いることが好ましい。
【0036】
これは、原水2の処理を行う際に、処理槽本体10内に流入する原水2中のアンモニア態窒素の50%を亜硝酸態窒素に酸化させるだけで脱窒が可能となり、硝化に要する酸素供給量を半減できるとともに、脱窒のために外部から水素供与体を補填する必要がなくなるため、画期的な窒素除去プロセスを構築することが可能となるためである。
【0037】
また、担体21・21・・・は、例えば、ビール粕成形炭にて構成されることができる。このビール粕成形炭は、加工が比較的容易であるとともに、様々な元素を含有しているため、独立栄養性細菌の生育がよく、担体素材として特に優れている。
【0038】
但し、ビール粕成形炭以外にも、オガクズ等の破砕木材、ビール粕、ウイスキー粕、麦根、製麦粕、ワイン粕、酒粕、醤油粕、おから、ふすま、コーヒー粕、茶粕、リンゴ粕、ホップ粕、酵母、残飯、梅酒残渣等の有機性廃棄物を炭化させたものや、ポリエステル不織布、アクリル繊維、樹脂成形体などを、担体21・21・・・として用いることも可能である。
【0039】
また、処理槽本体10内における固定床11の下方には原水流入部10aが構成されており、原水流入部10a内には流入管14が配置されている。この流入管14は、例えば、複数の通水孔が形成されたパイプ状部材にて構成されている。この流入管14には、処理槽本体10の外部に延出する原水供給管31が接続されており、原水2が原水供給管31、流入管14を介して処理槽本体10内へと供給される。
【0040】
また、処理槽本体10の上部開放を覆う機能を果たす上蓋部10bには、排水機構40が設けられている。この排水機構40は、処理槽本体10内の水(原水2、及び、微生物処理後の原水2である処理水を含む)を処理槽本体10の外部に排水するためのものであり、排水機構40には処理槽本体10の外部に配置される排水管33が接続されている。なお、「上蓋部10b」とは、少なくとも、処理槽本体10の上部開放を覆う機能を果たすものを広く含むものである。
【0041】
以上の構成により、固定床11の下方に配置される流入管14から供給された原水2は、微生物処理されて処理水となり、上蓋部10bに設けた排水機構40を通じて、処理槽本体10の外部の排水管33へと排水されるようになっている。
【0042】
なお、以上に説明した図1の構成では、固定床11の下方に流入管14を配置する構成としたが、図2に示すごとく、固定床11の上方に流入管14Aを配置する構成としてもよい。この図2の構成の場合、流入管14Aは固定床11の近傍に配置することが好ましい。また、これら図1・図2に示される流入管14・14Aの配置や形状については、特に限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0043】
次に、図1に示される排水機構40の詳細について説明する。
排水機構40は、処理槽本体10の上蓋部10bに設けられるものであり、上蓋部10bの製作時に設けることや、既存の処理槽本体10の上蓋部10bに後付で設けることも可能である。
【0044】
また、排水機構40は、処理槽1内の水を流出させるための流出部41と、流出部41に取り付けられ、菌を担持した担体21(微生物を固定化するための担体)あるいは単独の菌の流出を防止するフィルタ機構42と、フィルタ機構42を内側に収容する内部空間43aを形設する空間形成部43と、を有して構成されている。
【0045】
このような排水機構40の構成により、微生物処理された後の処理水を流出部41から流出させ、排水管33を通じて処理槽本体10の外部に排出するようにしている。なお、この排水管33に排出された水は、処理槽本体10内へと循環などさせることにより、処理を安定化させることができる。
【0046】
また、フィルタ機構42によって、流出部41からの菌を担持した担体21あるいは単独の菌の流出を防止できるようになっている。特に、微生物処理によって窒素ガスを主とする多量の生成ガス51が浮上するため、この生成ガス51とともに菌を担持した担体21あるいは単独の菌が浮上することになる。このため、浮上した菌を担持した担体21あるいは単独の菌の流出をフィルタ機構42によって防止するのである。
【0047】
また、空間形成部43は、内側にフィルタ機構42を収容する内部空間43aを形成しており、この内部空間43aに流入する水がフィルタ機構42を介して流出部41から排出できるようになっている。
【0048】
また、空間形成部43には、ガス排出部43bが設けられており、内部空間43aに導かれた生成ガス51を、ガス排出部43bから外部へと排出・回収できるようにしている。また、上蓋部10bにおいて、流出部41を設けた空間形成部43にガス排出部43bを設けることにより、排出される水の流れとともに生成ガス51を空間形成部43へと導くことが可能となり、生成ガス51を効率よく空間形成部43に集めることが可能となる。
【0049】
また、空間形成部43には、圧力計接続部43cが設けられており、この圧力計接続部43cに図示せぬ圧力計を接続することで、処理槽本体10内の水圧などを測定できるようにしている。このように、空間形成部43には、複数のポート(接続部)が設けられ、図示するもの以外のフィルタ機構、配水管、排気管、各種センサが配置され得る構成とすることができる。
【0050】
次に、図3乃至図5を用いて、排水機構40の詳細について説明する。
まず、図3及び図4に示すごとく、
排水機構40に設けられるフィルタ機構42は、
外周部にフィルタ面42aを有する略円筒状のものであり、
円筒軸42gが略水平方向となるように配置され、
フィルタ面42aが空間形成部43内に配置される、ようになっている。
【0051】
このように、フィルタ機構42を円筒状とすることによれば、空間形成部43の限られた内部空間43aにおいて、単純に平板状のフィルタを流出部41に設ける場合と比較して、より大きなフィルタ面積(濾過面積)を確保することができ、多量の通水量を確保することが可能となる。
【0052】
また、図4に示すごとく、空間形成部43の内部空間43a内へと浮上した気泡51a(生成ガス51)が、フィルタ機構42に衝突することで、フィルタ面42aに付着した担体21・21が剥離されて、フィルタ面42aの目詰まりが防止されることになる。そして、フィルタ機構42を円筒状とすることで、360度の全方向から気泡51a(生成ガス51)をフィルタ面42aに衝突させることが可能となり、効率のよい目詰まり防止を行うことが可能となる。
【0053】
また、図3に示すごとく、
フィルタ機構42は、
空間形成部43の外部から流出部41に挿入固定され得る構成とし、
空間形成部43の外部において流出部41に対し脱着可能な構成としている。
【0054】
これにより、図3に示すごとく、上蓋部10bや空間形成部43を分解することなく、フィルタ機構42を脱着することが可能となり、フィルタ機構42の洗浄や、フィルタ機構42の交換などを行うことができ、メンテナンスに優れた構成を実現することができる。また、上蓋部10bや空間形成部43の分解の必要がないので、例えば、処理槽を稼働させながら、フィルタ機構42のメンテナンスを行うことも可能となるのである。
【0055】
なお、図3の構成において、空間形成部43については、例えば、ステンレスなどの金属にて構成し、上蓋部10bと同一の素材としてもよいが、アクリルなどの透光性を有する部材にて構成することによれば、フィルタ面42aへの担体や菌の付着などを視認することが可能となって、メンテナンス(後述する逆洗や交換)の要否を目視で確認できることになる。
【0056】
また、図5に示すごとく、フィルタ機構42は、フィルタ面42aを外周面に有するフィルタ筒部42bと、フィルタ筒部42bの一端に形設される雄螺子部42cを螺挿するための雌螺子部42dを有するジョイント部42eと、を有して構成することができる。ジョイント部42eの雌螺子部42dに、フィルタ筒部42bの雄螺子部42cを螺挿することによって、ユニットとしてのフィルタ機構42が構成される。
【0057】
また、図5に示すごとく、フィルタ筒部42bは、周知のウェッジワイヤースクリーンや、パンチングメタルによって構成することができ、例えば、網目形状については、処理槽内に導入された担体の形状に基づいて設定、網目寸法については、処理槽内に導入された担体の最小径に基づいて設定するといったことや、さらには、菌の種別を考慮して設定するなど、フィルタ面42aの網目形状や網目寸法は担体や菌の流出を効果的に防止できるように適宜設定され得るものである。
【0058】
なお、図1に示すごとく、フィルタ機構42の空間形成部43内における突出長さについては、空間形成部43の長手方向の約1/3とするほか、より長く設定されるものであってもよい。例えば、ガス排出部43bの開口部の下方までフィルタ機構42(フィルタ面42a:図4参照)が延出される構成とし、このフィルタ機構42の存在によって、生成ガス51と一緒に浮いた担体21や菌が、ガス排出部43bの開口部に直接導かれることを防ぐ構成としてもよい。このような形態によれば、ガス排出部43bの開口部の目詰まりをフィルタ機構42によって抑制できることが期待できる。また、このフィルタ機構42の空間形成部43内における突出長さや、角度について、調整可能に構成することで、最適なフィルタ機構42の配置を適時可能なものとしてもよい。さらに、フィルタ機構42は、空間形成部43に対し2個、又は、それ以上の複数とすることも可能である。その場合は対面に併設する、又は、上下方向に併設することが可能である。なお、上下方向に併設する場合には、気泡との接触効率を考え、フィルタ機構の中心軸が垂直に重ならないよう、ずらすことが望ましい。
【0059】
また、図5に示すごとく、流出部41は、空間形成部43の側壁面43eに筒状に設けられており、その内側にフィルタ機構42のフィルタ筒部42bが挿入可能に構成されるとともに、流出部41の内周面には雌螺子部41aが形設されている。この雌螺子部41aに対し、フィルタ機構42のジョイント部42eの雄螺子部42fが螺挿されることで、フィルタ機構42が流出部41に対して固定される。また、この流出部41に対して固定されたフィルタ機構42のジョイント部42eを緩めることで、フィルタ機構42を流出部41から抜き出すことができ、空間形成部43の外部において、フィルタ機構42の脱着(取り外し、及び、交換取り付け)が可能となっている。また、ジョイント部42eの外周部には、フィルタ機構42の脱着を行いやすくするために、ナット部42hが形設されることが好ましい。
【0060】
また、図5に示すごとく、フィルタ機構42のジョイント部42eには、T字状の分岐管44が固定され得る接続ポート42jが設けられている。分岐管44には、ジョイント部42eの接続ポート42jに接続され得る接続ポート44aと、フィルタ機構42を介して排水される水を排水管33へ導くための流出ポート44bと、窒素ガスなどのパージガスを送り込んでフィルタ機構42を逆洗をするためのパージ用ポート44cと、を有する構成としている。
【0061】
パージ用ポート44cは、フィルタ機構42へガスを送り込むことで、フィルタ面42aに付着した担体や菌などの付着物を剥離させる、つまりは、フィルタ面42aの目詰まりを除去する逆洗を行うために使用されるものであり、この逆洗を行わない場合には、パージ用ポート44cはプラグ44dによって塞ぐことが可能となっている。なお、逆洗とは、「フィルタ面42aの内側から外側へ向かうパージガスの流れを作り、フィルタ面42aに付着した担体や菌などを剥離させること」をいう。
【0062】
以上の構成により、図1に示すごとく、フィルタ機構42は、外部に設けたパージガス供給手段45からパージガス46が送り込まれることで、フィルタ機構42の目詰まりを除去するための逆洗が行い得る構造となっている。これにより、フィルタ機構42を取り付けたままで、フィルタ面42aの目詰まりを除去することが可能となり、短時間でのメンテナンスが可能となる。なお、パージガス46としては、処理槽本体10内の嫌気性条件を保つために、窒素ガスなどの利用が考えられる。さらに、逆洗は、各種センサからの信号で自動的に実施する構成としてもよい。例えば、空間形成部43に水位計(図示しない)を設置するとともに、水位計の出力信号の変化率に基づいてフィルタ機構42の閉塞状況を診断するものであり、出力信号が一定値になったときに閉塞したものとして自動的に逆洗を実施する機能をもたせるといった構成である。
【0063】
また、図3及び図4に示すごとく、排水機構40の空間形成部43は、その上部がフィルタ機構42に近くなるように傾斜する傾斜内壁面43f・43gを有し、生成ガス51の気泡51aは、上昇するに従って、傾斜内壁面43f・43gの間に配置されるフィルタ機構42に近づくように案内され得る構成としている。
【0064】
このように空間形成部43において、傾斜内壁面43f・43gを形成することで、生成ガス51の気泡51aは上昇するに従ってフィルタ機構42に近づくようになることから、フィルタ機構42に衝突させる気泡51aの量を増やすことができ、気泡51aの衝突によるフィルタ面42aの目詰まり防止を効果的に行うことができる。換言すれば、空間形成部43の内部空間43aにおける水平断面積M(図3網掛部参照)が上側になるほど狭くなるように傾斜内壁面43f・43gを配置することで、フィルタ面42aに衝突させる生成ガス51の量を増加させる(気泡51aのフィルタ面42aへの衝突確率を高める)こととするものである。
【0065】
このようにして、フィルタ機構42のフィルタ面42aに付着した担体21や菌を、気泡51aによって効果的に剥離させる、若しくは、フィルタ面42aへの担体21や菌の付着を気泡51aの流動によって効果的に防止することが可能となり、フィルタ機構42の逆洗や交換などのメンテナンスの回数を削減することが可能となる。
【0066】
また、図4に示すごとく、
排水機構40が設けられる上蓋部10bは、略水平の天面10cを有することとし、
処理槽1内にて発生して上昇する生成ガス51の気泡51aを、天面10cにて一時的に滞留させることで拡大化し、
拡大化した気泡51aを空間形成部43へと流入させ得る構成としている。
【0067】
これによれば、拡大化した気泡51aをフィルタ機構42のフィルタ面42aに衝突させることが可能となり、特に、拡大化した気泡51aはその浮上速度が速く、また、衝突面積が広くなることから、フィルタ面42aの目詰まりを除去・防止を効果的に行うことが可能となる。
【0068】
なお、図3に示される傾斜内壁面43f・43gについては、いくつかの実施形態が考えられる。即ち、図3及び図4の例では、フィルタ機構42の円筒軸42gと直行する断面が、略台形となるように、互いに対向する傾斜内壁面43f・43gを構成することとしたが、図6(a)に示すごとく、一方の壁面のみを傾斜内壁面43xとして、他方の内壁面43yを垂直面としてもよく、また、図6(b)に示すごとく、その逆であってもよい。さらに、図6(c)に示すごとく、内部空間43a側に膨らむ円弧状の内壁面43u・43vとしてもよい。
【0069】
つまり、空間形成部43の内部空間43aにおける水平断面積M(図3網掛部参照)が上側になるほど狭くなるように構成するとともに、内部空間43aの上部にフィルタ機構42のフィルタ面42aが配置される構成とすることで、フィルタ機構42に対し、気泡51a(生成ガス51)を効果的に衝突させることが可能となる。このほか、図3に示される側壁面43e・43mについても傾斜して配置することで、空間形成部43を略四角柱に構成してもよい。なお、内部空間43aの最下部から最上部の全範囲において連続的に水平断面積M(図3網掛部参照)が狭くなる構成としたが、段階的に狭くなる構成としてもよく、最下部よりも狭くなった狭隘部にフィルタ機構42が配置される構成であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0070】
また、図4に示すごとく、フィルタ機構42の内部空間43aにおける上下位置は、少なくとも、内部空間43aの上下中心よりも上方とすることが好ましい。内部空間43aにおける水平断面積M(図3網掛部参照)が上側になるほど狭くなるため、フィルタ機構42が高い位置に配置されるほど、気泡51aをフィルタ機構42に衝突させる確率を高めることができるからである。
【0071】
また、図4に示すごとく、気泡51aの拡大化を狙う観点から、図1に示すごとく、上蓋部10bの中心部に排水機構40を設けることで、処理槽本体10内の広範囲で生成する生成ガス51を、広い範囲の天面10cにて確実に一時的に滞留させることが好ましい。つまりは、生成ガス51を天面10cにて一時的に滞留させる確率を高める構成とするものである。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態は、図1及び図3に示すごとく、
原水2を微生物処理にて浄化する処理槽1の上蓋部10bに設けられる排水機構40の構造であって、
排水機構40は、処理槽1の水を流出させるための流出部41と、
流出部41に取り付けられ、少なくとも微生物を固定化するための担体21・21の流出を防止するフィルタ機構42と、
フィルタ機構42を内側に収容する内部空間43aを形設する空間形成部43と、を有し、
空間形成部43は、
内部空間43aにおける水平断面積M(図3網掛部参照)が上側になるほど狭くなる部位を有する構成とするものである。
【0073】
これにより、フィルタ面42aに衝突させる生成ガス51の量を増加させる(気泡51aのフィルタ面42aへの衝突確率を高める)ことが可能となって、フィルタ面42aに付着した担体21あるいは単独の菌を、気泡51aによって効果的に剥離させる、若しくは、フィルタ面42aへの菌を担持した担体21・21あるいは単独の菌の付着を気泡51aの流動によって効果的に防止することが可能となり、フィルタ機構42の目詰まりの防止や、メンテナンス回数の削減を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、処理槽の上部に排水機構を設ける構成において、処理槽内の微生物担体などの溢流を防止する用途として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 処理槽
2 原水
10 処理槽本体
10a 原水流入部
10b 上蓋部
10c 天面
11 固定床
12 支持部材
14 流入管
21 担体
31 原水供給管
40 排水機構
41 流出部
42 フィルタ機構
43 空間形成部
43a 内部空間
43f 傾斜内壁面
43g 傾斜内壁面
44 分岐管
44c パージ用ポート
45 パージガス供給手段
46 パージガス
51 生成ガス
51a 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を微生物処理にて浄化する処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造であって、
前記処理槽内の水を流出させるための流出部と、
前記流出部に取り付けられ、少なくとも微生物を固定化するための担体の流出を防止するフィルタ機構と、
前記フィルタ機構を内側に収容する内部空間を形設する空間形成部と、を有し、
前記空間形成部は、
前記内部空間における水平断面積が上側になるほど狭くなる部位を有する構成とする、
処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造。
【請求項2】
前記フィルタ機構は、
外周部にフィルタ面を有する略円筒状のものであり、
円筒軸が略水平方向となるように配置され、
前記フィルタ面が前記空間形成部内に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造。
【請求項3】
前記フィルタ機構は、
前記空間形成部の外部から前記内部空間へと挿入固定され得る構成とし、
前記空間形成部の外部において前記空間形成部に対し脱着可能な構成とする、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造。
【請求項4】
前記フィルタ機構は、
外部からパージガスが送り込まれることで、
前記フィルタ機構の目詰まりを除去するための逆洗が行い得る構造とする、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造。
【請求項5】
前記空間形成部には、
前記生成ガスを排出し得るガス排出部が設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の処理槽の上蓋部に設けられる排水機構の構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の排水機構が設けられる上蓋部の構造であって、
前記上蓋部は、略水平の天面を有することとし、
処理槽内にて発生して上昇する生成ガスの気泡を、前記天面にて一時的に滞留させることで拡大化し、
拡大化した気泡を前記空間形成部へと流入させ得る構成とする、
処理槽の上蓋部の構造。
【請求項7】
請求項6に記載の上蓋部が設けられる、処理槽。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−206630(P2011−206630A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74214(P2010−74214)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000055)アサヒグループホールディングス株式会社 (535)
【Fターム(参考)】