説明

処理管理システム、及び、コンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】 管理の容易化や追跡調査機能向上を実現できると共に、汎用的な機器によって追跡調査を行うこともできる処理管理システムを提供する。
【解決手段】 前処理における生成物としての生成物データを作成する生成物データ作成手段と、該生成物に対応したデータであって、次処理における部分物としての部分物データを作成する部分物データ作成手段と、該生成物データと該部分物データとを、前処理と、それに対応する次処理との接続を示す接続情報に関連付けて単一のファイルから成る管理データとして、それぞれの処理間に対して作成する管理データ作成手段とを備えたシステムで、管理データに、管理対象物が前処理からそれに対応する次処理に移動したことを示す経路情報であって、処理を重ねる毎にその経路が累積されていく経路情報を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、次処理における部分物を生成物として生成させる前処理と、少なくとも1つの前処理における生成物の各々を部分物として用いて第2の生成物を生成させる次処理とを連鎖的に接続することにより、複数の処理を階層的に配置した構成としてモデル化された処理管理システム、及び、このようなシステムに用いられるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある生産ラインにおいて製品が製造される場合、ライン上を上流から下流に流れる主たる部品に対して各種の部品を順次組み付ける構成が取られていた。本出願人は、各部品が他の生産設備において製品として製造されたものであることに着目し、部品を受け入れて製品(各生産設備において製造される部品)を製造する機能的単位を「工程」と捉えて、最終的な製品の製造を、複数の「工程」が階層的に接続された構造として表現することにより、生産管理を容易にすると共に、トレーサビリティの機能(すなわち追跡調査機能)を向上させることができる管理システムを提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−56706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上記特許文献1に示されるような管理システムによってもたらされる管理の容易化や追跡調査機能向上が要求される一方で、汎用的な機器によって物品(製品や部品等を含む)の経路を追跡できるようにすることも要求されている。しかしながら上記特許文献1に示されるような管理システムでは、当該システムや専用のソフトウェアを使用しない限り、物品に対する追跡調査を行うことができない。
【0004】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、管理の容易化や追跡調査機能向上を実現できると共に、汎用的な機器によって追跡調査を行うこともできる処理管理システム、及び、このようなシステムに用いられるコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る処理管理システムは、次処理において部分物として用いられる物を生成物として生成させる前処理と、少なくとも1つの前処理において生成された生成物の各々を部分物として用いて第2の生成物を生成させる次処理とを連鎖的に接続することにより、複数の処理を階層的に配置した構成としてモデル化されたシステムであり、管理対象物に対して前処理における生成物としての生成物データを作成する生成物データ作成手段と、該生成物に対応したデータであって、次処理における部分物としての部分物データを作成する部分物データ作成手段と、該生成物データと該部分物データとを、前処理と、それに対応する次処理との接続を示す接続情報に関連付けて単一のファイルから成る管理データとして、それぞれの処理間に対して作成する管理データ作成手段とを備えており管理データ作成手段が、管理データに、管理対象物が前処理からそれに対応する次処理に移動したことを示す経路情報であって、処理を重ねる毎にその経路が累積されていく経路情報を付加することを特徴とする。
【0006】
なお、上記処理管理システムにおいて、該生成物データが、少なくとも、前処理の名称データと、生成物の生成を開始する時刻データと、生成物の生成が終了する時刻データとを含んだものであっても良い。また、該部分物データが、少なくとも、次処理の名称データと、部分物の使用を開始する時刻データと、部分物の使用が終了する時刻データとを含んだものであっても良い。
【0007】
また、上記処理管理システムにおいて、管理データ作成手段から取得される経路情報を記憶する記憶手段を、生成物及び部分物に付加しても良い。このような記憶手段は例えばICタグである。
【0008】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、複数の処理を経て生成される生成物の各処理を管理する為の管理データが記録されたものであり、各処理間で搬送される生成物群を構成する物品の集合体である複数の物品群の各々に対応した複数の物品群用記憶領域を有し、該複数の物品群用記憶領域の各々に、各物品群を識別する為の物品群識別データと、該物品群識別データに関連付けられた、該物品群を使用する処理に関するデータであって、生成された物品を集合させて物品群とする第一の処理に関する第一処理データ、及び該物品群から物品を取り出す第二の処理に関する第二処理データと、該物品が第一の処理からそれに対応する第二の処理に移動したことを示す経路情報であって、処理を重ねる毎にその経路が累積されていく経路データと、を含むデータを単一のファイルの管理データとして、それぞれの処理間に対して記録していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処理管理システム、及び、このようなシステムに用いられるコンピュータ読み取り可能な記録媒体を採用すると、例えば複雑に連結された工程を経て製造された物品に対して、管理及び追跡調査を容易に行うことができると共に、汎用的な機器による追跡調査を行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態による管理システムは、複数の工程からなる生産ライン全体を管理する為のシステムである。ここでいう工程とは、受け入れた部品を使用して製品を製造する機能的単位を表すものとする。すなわち工程とは、工場等の生産施設内における所定の領域に設置された工作機械等の各種生産設備、及び部品や製品を格納しておく各種倉庫、並びに、これら生産設備や倉庫を利用して生産活動を行う作業者により実現される機能的単位を示したものである。最終的な製品の製造は、このような「工程」が順次階層的に接続されたツリー構造でモデル化される。
【0011】
これらの各工程は、所定の順序で接続されている。そして各工程は、前工程から搬出された部品を使用して製品を製造し、得られた製品を次工程へ搬出する。なお、部品/製品は、これらが格納される箱の中に、例えば数十個や数百個というまとまった数量格納された状態で取り扱われる。また、各箱には、当該の箱を他の箱と識別する為の箱識別情報が付与されている。より具体的には、各箱の表面に、その箱の箱識別情報を示すバーコードが貼付されている。なお、箱識別情報は、上述の如く各箱全てを識別するような情報であってもよいが、最低限、ある工程において順々に処理の対象となっていく複数の箱の各々であって、同一部品を格納したそれぞれの箱を識別できるような情報であればよい。
【0012】
上記の各工程における各種倉庫は、部品入庫倉庫、部品使用倉庫、製品完成倉庫、及び製品搬出倉庫からなる。以下、図1を参照して、工程内における各倉庫間の部品/製品の移動について説明する。
【0013】
まず、ある工程に部品が格納された箱が到着すると、作業者は、この箱を部品入庫倉庫内に格納して保管しておく。そして製造が開始される際、作業者は、部品入庫倉庫内に保管された箱のうち必要なものを適宜選択して、部品使用倉庫へ移す。その上で作業者は、この部品使用倉庫に移された箱の中の部品を使用して製品を製造する。なお、完成した製品は、部品が格納された箱とは別の箱の中に順次格納されていく。製造が終了すると、作業者は、製品が格納された箱を製品完成倉庫内へ格納して保管しておく。そして製品出荷の際、作業者は、製品完成倉庫内に保管された箱のうち必要なものを適宜選択して、製品搬出倉庫へ移す。なお、製品搬出倉庫に移された箱は、直ちに次工程(より具体的には次工程に対応した部品入庫倉庫)に向けて搬出される。
【0014】
図2は、各工程と各工程間の関係を模式的に示した図である。なお、図2には、複数の工程のうちの6つの工程(すなわちA工程、B工程、C工程、D工程、E工程、及びF工程)が模式的に示されている。各工程が所定の順序で接続されることにより、目的となる最終製品が生産される。
【0015】
図2において、C工程は、A工程において完成した製品とB工程において完成した製品とを、当該C工程における部品として受け入れる。そして、C工程は、受け入れた部品に対して組立及び加工等の処理を施してC工程における製品として完成させ、F工程に搬出する。
【0016】
F工程は、C工程による製品、D工程による製品、およびE工程による製品を部品として受け入れ、F工程における製品を完成させる。なお、この例ではF工程による製品が、生産工程群全体の最終製品となっている。
【0017】
次に、上述の生産工程群における各工程を管理する為の管理システムの構成について説明する。図3は、本実施形態による管理システムの構成の一例を示す図である。本実施形態の管理システムは、サーバ1と、ネットワークの一態様であるLAN4を介して該サーバ1に接続された複数のパーソナルコンピュータ(以下、PCと略記)2と、PC2に接続された複数の端末3A〜3Fを有している。なお、端末3A〜3Fは、A工程〜F工程にそれぞれ対応して配置されている。また、管理システムの構成は上述したものに限らない。
【0018】
以下、サーバ1、PC2および端末3A〜3Fについて詳細に説明する。
【0019】
図4は、サーバ1の構成を示す図である。図4に示されるように、サーバ1は、バスBUSによって相互に接続された、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、HDD(Hard Disk Drive)13と、通信制御回路14と、表示制御回路15と、入力制御回路16とを有している。さらにサーバ1は、表示制御回路15に接続されたCRT17と、入力制御回路16に接続されたキーボード18とを有している。また、サーバ1は、通信制御回路14によりLAN4に接続されている。
【0020】
HDD13には、オペレーティングシステム及びデータベース・プログラム等の各種プログラムが予め格納されている。また、HDD13には、後述する管理データであって、各工程間の接続を示すリンクに関連付けられたデータが記憶される。なお、ここでいうリンクとは、管理システム内の各工程間に内在している、各工程間を関連付けて接続させる為の接続情報であり、本実施形態では、箱識別情報に該当するものである。
【0021】
CPU11は、HDD13に格納されたプログラムを読み出してRAM12の所定領域に展開させて実行させる。また、CPU11は、表示制御回路15を制御してCRT17に画像を画面表示させることにより、作業者に対して必要な情報を出力する。作業者がキーボード18に対して入力操作を行うと、CPU11は、入力制御回路16を介して当該入力操作を検知する。なお、製造された製品に不良が発生した場合、後述するように、作業者は、キーボード18により所定のコマンドを入力して、サーバ1に対して不良品追跡を指示することができる。
【0022】
また、各PC2も、上記サーバ1と略同一の構成であり、LAN4を介してサーバ1にそれぞれ接続されている。また、各PC2は、複数の端末を統括する機器であり、例えば図2で左側に配置されたPC2は、複数の端末3A〜3Eを統括し、それぞれの端末とLAN4を介して接続されている。
【0023】
図5は、端末3Aの構成を示す図である。なお、他の各端末3B〜3Fは端末3Aと同一の構成となっている為、これら他の端末3B〜3Fの説明は、端末3Aの説明をもって省略する。図5に示されるように、端末3Aは、プログラマブル・ロジック・コントローラ(以下、PLCと略記)31、表示入力装置32、及びバーコードリーダ33を有している。
【0024】
PLC31は、バスによって相互に接続された、CPU311と、ROM(Read Only Memory)312と、RAM313と、通信制御回路314と、入力制御回路315と、表示制御回路316と、通信部317を有している。また、CPU311は、計時手段としての時計Mを内蔵しており、この時計Mによって、時刻(年、月、日、時、分、秒)を取得することができる。さらに、CPU311は、部品の使用や製品の製造時間をカウントするカウンタLを内蔵している。ROM312内には、データベース・プログラム等の各種プログラムが予め記憶されている。
【0025】
表示入力装置32は、タッチパネル321と液晶パネル(以下、LCDと略記)322を有している。タッチパネル321は、LCD322の画面上に配置されるとともに、PLC31の入力制御回路315に接続されている。また、LCD322は、PLC31の表示制御回路316に接続されている。
【0026】
バーコードリーダ33は、部品/製品を格納した箱にバーコードの形態で付与された箱識別情報等を読み取るときに使用されるもので、PLC31の入力制御回路315に接続されている。
【0027】
PLC31のCPU311は、ROM312内に格納されたプログラムをRAM313の所定領域に展開して実行する。また、CPU311は、表示制御回路316を制御して表示入力装置32のLCD322に画像を表示させる。この画像には、例えば、部品が搬入されたときに押される搬入ボタンや、部品の使用を開始するときに押される使用開始ボタン、製品の製造を開始するときに押される製造開始ボタン、部品の使用が終了したときに押される使用終了ボタン、製品の製造が終了したときに押される製造終了ボタン、製品を搬出するときに押される搬出ボタン、作業者がその工程内における部品の使用及び製品の製造を中断するときに押される作業中断ボタン、さらには部品の使用及び製品の製造を再開するときに押される作業再開ボタン等が含まれる。
【0028】
作業者は、LCD322に表示された各ボタンを押すことにより、入力操作を行うことができる。すなわちLCD322の画面上に配置されたタッチパネル321は、作業者によって押された画面上の位置を検出可能であり、この位置を示す信号を、PLC31の入力制御回路315へ送信することができる。そしてCPU311は、この入力制御回路315を介して、作業者によって押された画面上の位置を検知するとともに、この位置が画面上のいずれのボタンの位置と一致しているかを認識することができる。
【0029】
また、作業者がバーコードリーダ33によってバーコードを読み取らせた場合、このバーコードリーダ33は、当該バーコードに対応したバーコードデータを取得してPLC31の入力制御回路315へ送信する。PLC31は、このとき取得したデータをPLC31のRAM313に一時的に格納する。
【0030】
このように構成された各端末3A〜3Fは、通信制御回路314を介してLAN4に接続されている。RAM313に一時的に格納されたデータは、PC2及びLAN4を介してサーバ1のHDD13に記録される。
【0031】
ここで、部品/製品を格納する各箱には、アンテナとメモリを備えたICタグ(不図示)が取り付けられている。このICタグは、アンテナによってPLC31の通信部317と通信することにより、そこから発信される各種データ(後述)を受信してメモリに蓄積する。
【0032】
次に、実際の各工程における部品/製品の流れと、管理システム内のデータ処理の対応関係について説明する。なお、上述したように、各工程間における部品/製品は、箱の中に格納された(ある数量まとめられた)状態で取り扱われる。
【0033】
管理システムは、箱の各々を1単位(1ファイル)の管理データに対応させて各種処理を実行している。これら各管理データは、サーバ1におけるデータベース・プログラム、及び各端末3A〜3Fにおけるデータベース・プログラムにより処理される。
【0034】
各管理データは、ある2つの工程間を移動する箱の箱識別情報に関連付けられたデータである。箱には、一方の工程(前工程)における製品が格納される。そしてその箱の内容は、次の工程(次工程)においては部品として扱われる。これに伴い、管理データには、前工程に関するデータ、すなわち該箱に格納されている物品を製品として考えたときのデータ(前工程データ)と、次工程に関するデータ(次工程データ)、すなわち該箱に格納されている物品を部品として考えたときのデータとが含まれている。
【0035】
前工程データには、例えば、該製品が製造された工程の名称のデータ(製品工程名称データ)、箱内容すなわち良品または不良品のいずれが格納される箱かというデータ(製品箱内容データ)、該製品の製造が開始された時刻のデータ(製品製造開始時刻データ)、該製品の製造が終了した時刻のデータ(製品製造終了時刻データ)、該製品製造時における温湿度等の環境条件を示すデータ(製品環境条件データ)、該製品を製品完成倉庫に入庫した時刻のデータ(製品入庫時刻データ)、該製品を次工程に搬出する時刻のデータ(製品搬出時刻データ)、該製品の製造を担当した作業者に関するデータ(製品担当者データ)、該製品の製造中に発生した不良品に関するデータ(製品不良情報)、さらには該製品の製造に作業者が実際に費やした時間を示すデータ(製品製造時間データ)等が含まれている。
【0036】
なお、製品工程名称データは、該箱に該製品が格納された工程の名称のデータに置き換えることができ、製品製造開始時刻データは、該箱に対する製品の格納を開始した時刻のデータに置き換えることができ、また、製品製造終了時刻データは、該箱に対する製品の格納が終了した時刻のデータに置き換えることができる。
【0037】
また、製品製造時間データは、製品の製造開始時における製造開始ボタンを押してから当該製品の製造終了時における製造終了ボタンを押すまでの間にCPU311のカウンタLがカウントしたカウント値によって生成されるデータである。より正確にはこのカウント値は、製造開始ボタンが押されるとカウント値(=0)から増加していき、作業中断ボタンが押されるとその時点での値で固定され、作業再開ボタンが押されるとその固定値から再び増加していき、製造終了ボタンが押されると、製品製造時間データに対応するカウント値としてRAM313に一時的に記憶される。そしてこのカウント値は、所定のプログラムによって製品製造時間データに変換される。カウント値が増加している時間は、製品製造開始から終了までの時間から作業中断(例えば作業者の休憩)の時間を差し引いた時間である為、作業者が実際に製品を製造している時間に相当する。従って、製品製造時間データは、製品の製造に実際に費やされた時間に相当する。
【0038】
また、上記製品不良情報には種々のデータがある。このデータには、例えば、当該工程において良品として製造された製品の数のデータ(製品合格数データ)や、当該工程において不良品となってしまった製品の数のデータ(製品不合格数データ)、当該工程において良品か不良品かが不明な製品の数のデータ(製品保留数データ)、当該工程において簡単な手直しで合格製品になる製品の数のデータ(製品手直し数データ)、当該工程において不良が発生したときの部品を製造した工程名群(不良工程名群データ)、当該工程において不良が発生した部品群別の不良品の数(部品群別不良数データ)、該製品の不良の原因を示す項目のデータ(製品不良項目データ)、該製品の不良品の数を該項目別に示したデータ(項目別製品不良数データ)等が含まれている。
【0039】
また、次工程データには、例えば、該部品が使用された工程の名称のデータ(部品工程名称データ)や、該部品の使用が開始された時刻のデータ(部品使用開始時刻データ)、該部品の使用が終了した時刻のデータ(部品使用終了時刻データ)、該部品が部品入庫倉庫に搬入された時刻のデータ(部品搬入時刻データ)、該部品が部品使用倉庫に入庫した時刻のデータ(部品準備時刻データ)、該部品を使用した作業者に関するデータ(部品使用者データ)、該部品の使用中に発生した不良品に関するデータ(部品不良情報)、さらには該部品の使用に作業者が実際に費やした時間を示すデータ(部品使用時間データ)等が含まれている。
【0040】
なお、部品工程名称データは、該箱から該部品を取り出した工程の名称のデータに置き換えることができ、部品使用開始時刻データは、該箱に対する部品の取り出しを開始した時刻のデータに置き換えることができ、また、部品使用終了時刻データは、該箱に対する全ての部品の取り出しが終了した時刻のデータに置き換えることができる。
【0041】
また、部品使用時間データは、部品の使用開始時における使用開始ボタンを押してから当該部品の使用終了時における使用終了ボタンを押すまでの間にCPU311のカウンタLがカウントしたカウント値によって生成されるデータである。より正確にはこのカウント値は、使用開始ボタンが押されるとカウント値(=0)から増加していき、作業中断ボタンが押されるとその時点での値で固定され、作業再開ボタンが押されるとその固定値から再び増加していき、使用終了ボタンが押されると、部品使用時間データに対応するカウント値としてRAM313に一時的に記憶される。そしてこのカウント値は、所定のプログラムによって部品使用時間データに変換される。カウント値が増加している時間は、部品使用開始から終了までの時間から作業中断(例えば作業者の休憩)の時間を差し引いた時間である為、作業者が実際に部品を使用している時間に相当する。従って、部品使用時間データは、部品の使用に実際に費やされた時間に相当する。
【0042】
また、上記部品不良情報には種々のデータがある。このデータには、例えば、当該工程において良品として使用された部品の数のデータ(部品合格数データ)や、当該工程において不良品と判定された部品の数のデータ(部品不合格数データ)、部品の不良の原因を示す項目のデータ(部品不良項目データ)、部品の不良の数を該項目別に示したデータ(項目別部品不良数データ)等が含まれている。
【0043】
上記の如き製品不良情報及び部品不良情報を得ることにより、管理側は、不良率を加味した各工程の精細な製造計画の考案や、不良発生の予測、不良が発生した工程の優先的な改善処置、不良発生の早期発見等を実現することができる。
【0044】
各工程内及び各工程間において物品(部品/製品)が移動していくと、該物品の流れに一致した状態で、対応する管理データが管理システム内において更新されていく。
【0045】
例えば、図2におけるC工程に着目すると、上述の如く、C工程では、A工程から出荷された製品を当該C工程における部品として受け入れるとともに、B工程から出荷された製品を当該C工程における部品として受け入れる。ここで、例えばA工程において製造された製品群の各々は、所定の箱識別情報(a1、a2、a3…)がバーコードで付与された箱の各々に格納された状態でC工程に搬出される。なお、箱識別情報「a1」が付与された箱のことを、以下、”箱a1”と略記する(他の梱包箱識別情報が付された梱包箱についても同様に略記する)。
【0046】
図6は、本実施形態の管理データ更新処理を示すフローチャートである。また、図7は、図6のフローチャート(S1〜S3)に対応した、本実施形態の管理データを説明する為の図である。また、図8は、図6のフローチャート(S4〜S6)に対応した、本実施形態の管理データを説明する為の図である。また、図9は、S1〜S6の処理を経て作成される管理データを説明する為の図である。以下、図6から図9を参照して、本実施形態の管理データの更新処理の一例(箱a1に関する管理データDの更新処理)を説明する。なお、箱a1に関する管理データDを、以下、”管理データDa1”と略記する(他の箱に関する管理データDについても同様に略記する)。なお、管理データを説明する為の図(図7〜図12)に示されるデータは、説明の便宜上、符号が付されたものだけとする。
【0047】
A工程において製品の製造を開始するとき(S1)、作業者は、先ず、今から実施する作業に使用される部品が格納された箱と、該部品により製造された製品が格納される箱を選択する。具体的には、作業者は、A工程で部品として取り扱われる各物品が格納された各箱群の中からそれぞれ1つの箱を選択し、端末3Aのバーコードリーダ33を使用してそれらに貼付されたバーコードの読み取りを行う。また、A工程で製造された製品が格納される箱群の中の1つの箱を選択し、バーコードリーダ33により該箱に貼付されたバーコードの読み取りを行う。なお、ここでは便宜上、A工程で製造された製品が格納される箱群のうち箱a1についてのみ説明し、他の箱についての説明は省略する。また、部品が格納される箱a1の処理例を後述する為、部品が格納された箱群についての管理データの更新処理のここでの説明は省略する。
【0048】
箱a1には、例えば、箱識別情報a1や、製造された製品が格納される工程の名称のデータ(ここではA工程)、良品、不良品、良否不明品、または手直し品のいずれを格納する箱かというデータ(製品箱内容データ、ここでは良品)を含んだバーコードが貼付されている。このときバーコードリーダ33により読み取られたデータは、端末3AのRAM313に格納される。
【0049】
なお、製品工程名称データ(以下、「A」とする)は、A工程で部品として取り扱われる物品が格納された箱に付与された部品工程名称データ(後述)と同一のデータとなる。このことから、製品工程名称データを含む管理データDa1には、「C工程」が部品工程名称データとして含まれることになる。
【0050】
バーコードリーダ33により上記のデータが端末3Aに入力されると、作業者は、タッチパネル321を操作して端末3Aにさらにデータを入力する。ここで入力されるデータには、例えば、当該工程における製品の製造を担当する作業者のデータ(製品担当者データ)や、当該工程における製品の製造時の温湿度等のデータ(製品環境条件データ)、当該工程における製品の製造を開始する時刻(上述した製造開始ボタンを押したときにRAM313に記憶される時計Mの時刻であって、製品製造開始時刻データT)等が挙げられる。以上のように、A工程において製品の製造を開始するとき、RAM313には製品工程名称データ「A」及び時刻データTが格納される(図7(a)参照)。なお、製品担当者データや製品環境条件データの入力を製品製造開始のトリガーと考えて、これらのデータのいずれかが端末3Aに入力された時刻を内部時計により取得し、製品製造開始時刻データTとしてRAM313に記憶させてもよい。担当者データは、その都度入力するのではなく、作業者が端末3Aを使用開始するときに入力し、以降の処理においては、入力されたデータを利用するようにしても良い。
【0051】
製品担当者データは、他の工程における製品担当者データや部品使用者データ(後述)と比較されることによりA工程を担当する作業者の製品製造能力を管理側に知らせることができるデータである。例えば、各管理データから得られる情報に基づいて各工程における単位時間当たりの製品製造数を割り出して各データを比較することにより、管理側は、各作業者の製品製造速度を知ることができる。また、A工程で良品とされていた製品がC工程で不良部品として判定された場合、A工程またはC工程のいずれかの良否判定が誤っている可能性がある。その後調査を行って、いずれかの工程に良否判定ミスがあったことが明らかとなったとき、管理側は、ミスを犯した作業者を特定することができる。この製品担当者データを活用することにより作業者の勤怠管理を行うことができる為、管理側は、作業者に対する能力向上を促すことができる。また、作業者の労働時間や製品製造数に基づいて、その仕事量が適正であるか否かを判断することもできる。また、極度に製品製造速度が低下している場合に、その作業者の体調が悪くないか等を判断することもできる。
【0052】
製品環境条件データは、製品が良品・不良品となった時の条件(例えば温度・湿度等)を管理側に知らせるためのデータである。管理側は、製品環境条件データに基づいて、不良の原因(温度・湿度条件)を解析することができる。
【0053】
製品製造開始時刻データT及び後述する種々の時刻データは、単位時間当たりの製品製造数や、追跡情報、リードタイム、不良解析等の様々な解析に使用されるデータである。
【0054】
製品工程名称データ「A」及び時刻データTが端末3Aに入力されると、作業者は、A工程における製品の製造を開始する。そして完成した製品の各々を箱a1に入れる度に、その製品の状態を、タッチパネル321を用いることによりRAM313に入力する。なお、ここでいう製品の状態とは、当該製品の製造中に発生した不良品に関するものである。このとき端末3Aに入力される不良品に関するデータには、例えば、当該工程において良品として製造された製品の数のデータ(製品合格数データ)や、上述した製品不合格数データ、製品保留数データ、製品手直し数データ、不良工程名群データ、部品群別不良数データ、製品不良項目データ、項目別製品不良数データ等が挙げられる。ここで、箱a1は良品(工程Cにおいて部品として使用可能な製品)を格納する箱である。この為、箱a1に製品を入れる度に当該作業者がタッチパネル321を操作し、製品の合格数(良品数)がカウントされる。
【0055】
なお、箱a1が不良品を格納する箱である場合には、作業者は、不良品を処理する為の所定のモードを実行し、端末3Aに、製品不合格数データ、不良工程名群データ、部品群別不良数データ、製品不良項目データ、項目別製品不良数データを入力する。また、箱a1が良否不明品を格納する箱である場合には、良否不明品を処理する為の所定のモードを実行し、端末3Aに製品保留数データを入力する。また、箱a1が手直し品を格納する箱である場合には、手直し品を処理する為の所定のモードを実行し、端末3Aに製品手直し数データを入力する。
【0056】
箱a1に対する製品の製造(格納作業も含む)が終了し(S2)、作業者によりタッチパネル321の製造終了ボタンが押されると、その押圧時刻が当該工程の製品の製造が終了した時刻(製品製造終了時刻データT)としてRAM313に格納されると共に、カウントされていた製品合格数の総数が製品合格数データとしてRAM313に格納される(図7(b)参照)。
【0057】
管理側は、製品製造終了時刻データT、製品製造開始時刻データT、製品合格数データ、製品不合格数データ、製品保留数データ、製品手直し数データに基づいて、上述した単位時間当たりの製品製造数を算出することができる。
【0058】
A工程における製品の製造が終了すると、箱a1は、在庫として製品完成倉庫に入庫される。そしてその際RAM313には当該製品を製品完成倉庫に入庫した時刻のデータ(製品入庫時刻データ)が入力される。管理データDa1の最新の時刻データが製品入庫時刻データである場合、箱a1が製品完成倉庫に保管されていることを意味する。すなわち製品入庫時刻データは、箱a1の現在の位置情報を管理側に知らせる為のデータでもある。
【0059】
C工程側からA工程で製造した製品が要求された場合、A工程の作業者は、製品完成倉庫内に保管された箱a1を製品搬出倉庫へ移す。すなわち箱a1をC工程に向けて搬出する(S3)。このとき作業者は、箱a1を製品搬出倉庫へ移した時刻、すなわちタッチパネル321の搬出ボタンを押すことにより、箱a1をC工程に向けて搬出した時刻のデータ(製品搬出時刻データ)を内部時計により取得して、RAM313に記憶させる。
【0060】
これまでの処理(S1〜S3)でRAM313に一時的に格納された各種データは、箱に格納されている物品を製品として考えたときのデータであって、A工程に関するデータである。(以下、箱a1製品データと略記)。製品搬出時刻データがRAM313に記憶されたとき箱a1はA工程から離れる為、この箱a1製品データのみを含む管理データDa1は、PC2及びLAN4を介してサーバ1に送信され、1つのファイルとしてHDD13に記録される。
【0061】
ここで、サーバ1は、HDD13に記録した管理データDa1に、経路情報として前工程「A」を追加して記録する。そしてLAN4及びPC2を介して端末3Aに、経路情報を追加した管理データDa1を送信する。この管理データDa1は、端末3Aの通信部317から外部に発信されて、箱a1のICタグに受信されてそのメモリに格納される。これにより、箱a1のICタグに、経路情報を含んだ管理データDa1が蓄積される(図7(c)参照)。
【0062】
A工程から搬出された箱a1がC工程の部品入庫倉庫に搬入されると(S4)、作業者は、C工程に対応されて配置された端末Cを使用して管理データDa1の更新処理を進めていく。なお、端末Cの構成は端末Aの構成と同一である為、ここでの端末Cの各構成要素の説明は省略する。以下、端末Cの各構成要素を、便宜上、端末Aの対応する各構成要素の符号に”c”を付すことにより示す。
【0063】
箱a1が部品入庫倉庫に搬入されると、箱a1が部品入庫倉庫に搬入された時刻のデータ(部品搬入時刻データ)を、端末Cのタッチパネル321cの搬入ボタンを押すことによりRAM313に記憶させる。管理データDa1の最新の時刻データが部品搬入時刻データである場合、箱a1が部品入庫倉庫に保管されていることを意味する。すなわち部品搬入時刻データは、箱a1の現在の位置情報を管理側に知らせる為のデータである。
【0064】
また、部品搬入時刻データと製品搬出時刻データとの差を算出することにより、A工程からC工程への部品納入のリードタイムを知ることができる。ここで算出されたリードタイムは、例えば他のデータと共にA工程やC工程の管理データに記憶されてもよい。
【0065】
C工程において製品の製造作業の準備するとき、作業者は、部品入庫倉庫内に保管された箱a1を部品使用倉庫へ移す。このとき作業者は、箱a1を部品使用倉庫へ移した時刻のデータ(部品準備時刻データ)を、タッチパネル321cを操作することによりRAM313cに記憶させる。
【0066】
C工程において製品の製造を開始するとき(S5)、C工程の作業者は、先ず、C工程で部品として取り扱われる各物品が格納された各箱群(A工程及びB工程で製造された製品が格納された箱)の中からそれぞれ1つの箱を選択し、端末3Cのバーコードリーダ33cを使用してそれらに貼付されたバーコードの読み取りを行う。また、C工程で製造された製品が格納される箱群の中の1つの箱を選択し、バーコードリーダ33cにより該箱に貼付されたバーコードの読み取りを行う。なお、ここでは便宜上、C工程で部品として取り扱われる物品を格納した箱群のうち箱a1についてのみ説明し、他の箱についての説明は省略する。また、C工程で製造された製品を格納する箱群についての管理データの更新処理の説明は、上述した箱a1の説明をもって省略する。
【0067】
箱a1には、上述した箱識別情報a1や、製品工程名称データ「A」、製品箱内容データの他に、部品として使用される工程の名称のデータ(部品工程名称データ、ここではC工程)を含んだバーコードが貼付されている。このときバーコードリーダ33cにより読み取られたデータは、RAM313cに格納される。
【0068】
なお、部品工程名称データ(以下、「C」とする)は、C工程で製造された製品を格納する箱に付与された製品工程名称データと同一のデータとなる。具体的には両データとも「C工程」を示すデータである。
【0069】
バーコードリーダ33cにより上記のデータを端末3Cに入力し、作業者は、さらにタッチパネル321cを操作して端末3Cにさらにデータを入力する。ここで入力されるデータには、例えば、当該工程において部品を使用する作業者のデータ(部品使用者データ)や、当該工程において部品の使用を開始する時刻(上述した使用開始ボタンを押したときにRAM313に記憶される時計Mの時刻であって、部品使用開始時刻データT)等が挙げられる。以上のように、C工程において部品の使用を開始するとき、RAM313cには部品工程名称データ「C」、及び、部品使用開始時刻データTが格納されている(図8(a)参照)。なお、部品使用者データの入力を部品使用開始のトリガーと考えて、部品使用者データが端末3Cに入力された時刻を部品使用開始時刻データTとしてRAM313cに記憶させることもできる。
【0070】
部品使用者データは、上述した製品担当者データと同様に、他の工程における部品使用者データや製品担当者データと比較されることによりC工程を担当する作業者の製品製造能力を管理側に知らせることができるデータである。また、作業者の労働時間や製品製造数に基づいて、その仕事量が適正であるか否かを判断することもできる。また、極度に製品製造速度が低下している場合に、その作業者の体調が悪くないか等を判断することもできる。
【0071】
部品工程名称データ「C」、及び、部品使用開始時刻データTが端末3Cに入力されると、作業者は、C工程において部品の使用を開始する。このとき箱a1から部品を取り出す度に、その部品の状態をタッチパネル321cにより端末3Cに入力する。なお、ここでいう部品の状態とは、箱a1に格納されている部品に含まれている不良品に関するものである。このとき端末3Cに入力される不良品に関するデータには、例えば、当該工程において良品として使用された部品の数のデータ(部品合格数データ)や、当該工程において不良品と判定された部品の数のデータ(部品不合格数データ)、部品の不良の原因を示す項目のデータ(部品不良項目データ)、部品の不良の数を該項目別に示したデータ(項目別部品不良数データ)等が挙げられる。
【0072】
C工程における部品の使用が終了し(S6)、作業者によりタッチパネル321が操作(すなわち使用終了ボタンが押圧)されると、その操作時刻が当該工程の部品の使用が終了した時刻(部品使用終了時刻データT)としてRAM313cに格納される(図8(b)参照)。
【0073】
RAM313cに一時的に格納された部品工程名称データ「C」、部品使用開始時刻データT、及び、部品使用終了時刻データTは、箱に格納されている物品を部品として考えたときのデータであって、C工程に関するデータである。(以下、箱a1部品データと略記)。部品使用終了時刻データTがRAM313cに記憶された時点で箱a1の役割(すなわち物品の格納・移動)は終了した為、この箱a1部品データのみを含む管理データDa1は、LAN4を介してサーバ1に送信され、先に送信された箱a1製品データのみを含む管理データDa1を更新する。最終的に、管理データDa1は、箱a1製品データ及び箱a1部品データの両方を含む1つのファイルとしてHDD13に記録される(図9参照)。
【0074】
サーバ1は、箱a1がA工程を経てC工程で使用されたことから、HDD13に記録された管理データDa1に、経路情報として、前工程「A」に対する次工程として「C」を追加する。これにより、管理データDa1には、図9に示されるように、箱a1製品データ及び箱a1部品データに加えて、箱a1内の物品が「A工程を経てC工程に送られた」ことを示す経路情報が記録される。
【0075】
次に、サーバ1は、LAN4及びPC2を介して端末3Aに、上記経路情報が追加された管理データDa1を送信する。この管理データDa1は、端末3Aの通信部317から発信されて、箱a1のICタグに受信されて蓄積される。これにより、箱a1のICタグに、上記経路情報を含んだ管理データDa1が蓄積される。なお、例えば、上記ICタグには自身を識別させる為の識別情報が記憶されており、端末3Aは、各箱のICタグと通信し、その識別情報を参照することにより管理データの送信先を決定する。箱a1のICタグに対して管理データDa1を送信する場合、端末3Aは、通信部317により、箱a1のICタグとの通信が確立されるまで、通信範囲内に置かれている箱の各々と通信して箱a1を探す。箱a1のICタグとの通信が確立されると、端末3Aは、箱a1のICタグに対して管理データDa1を送信する。
【0076】
なお、S4〜S6の処理を実行している間、例えばB工程を経てC工程で使用される箱b1に対しても、箱a1のものと同様の部品データと経路情報が作成される。すなわち箱b1に対しても箱a1と同様の管理データDb1が作成され(図10参照)、箱b1のICタグには、工程名称データ等と共に、箱b1内の物品が「B工程を経てC工程に送られた」ことを示す経路情報が蓄積される。
【0077】
また、S4〜S6の処理を実行している間、例えばC工程で製品が格納される箱c1に対しても、箱a1のものと同様の製品データと経路情報を含む管理データDc1が作成される。より具体的には、C工程における箱c1に対しては、上記の如き製品データと共に、箱c1内の物品が「A工程及びB工程を経てC工程に送られた」ことを示す経路情報が作成され、箱c1のICタグに蓄積される。
【0078】
また更に工程が進み、箱c1が例えばC工程を経てF工程で使用された場合、当該箱c1に対し、上記の如き製品データ及び経路情報に加えて、箱a1のものと同様の部品データと、更なる経路情報を含む管理データDc1が作成される。図11に示されるように、ここでは、経路情報として、A工程及びB工程に対して次工程であったC工程を前工程とし、それに対する次工程としてF工程が追加される。すなわち箱c1のICタグに蓄積される経路情報は、箱c1内の物品が「A工程及びB工程を経てC工程、F工程に順に送られた」ことを示すものである。なお、本実施形態では、図11を含む全ての図面において、同一の下付き文字が付された各時刻データ(例えば「T」と「T’」)は略同一時刻を示すものとする。従って、例えば時刻データT〜Tの時間と時刻データT’〜T’の時間はその大部分で重複した時間となる。
【0079】
また、例えばF工程において箱c1をC工程に戻した場合には、その箱の経路情報として、「A工程及びB工程を経てC工程、F工程に順に送られた」ことを示す情報に、「F工程からC工程に送られた」ことを示す情報が追加される。
【0080】
上述したような経路情報は各工程における各箱に対して付与され、その内容は、工程を積み重ねる毎に、それまでの経路情報に対して更なる情報を累積したものとなる。例えばF工程の次に更なるG工程(不図示)がある場合、G工程において使用される部品を格納した箱f1に対しては、箱c1の経路情報に対して更なる情報を追加したものであり、具体的には、「A工程及びB工程を経てC工程、F工程、G工程に順に送られた」ことを示す経路情報が蓄積される(図12参照)。
【0081】
本実施形態の管理システムで追跡調査を実施する場合、サーバ1のCPU11は、HDD13に記録された各箱に対応した各管理データに含まれている、製品製造中を示す時間のデータ(例えば時刻データT〜Tの間の時間データに相当)と、部品使用中を示す時間のデータ(例えば時刻データT〜Tの間の時間データに相当)を検索する。このとき、ある工程に関連付けられた製品データを有する管理データの製品製造中の時間と、当該工程に関連付けられた部品データを有する管理データの部品使用中の時間とで重複する時間がある場合、それらの管理データに関連付けられた箱は、重複している期間中、同一工程で同時に使用されていることを意味する。例えばC工程において、箱a1内の物品を部品として使用した期間と、製造された製品を箱c1内に格納した期間とが少なくとも一部重複しているとき、これらの箱が、C工程において同時に使用され、連結した関係にあることを意味する。また、箱b1内の物品を部品として使用した期間と、製造された製品を箱c2内に格納した期間とが少なくとも一部重複しているとき、これらの箱が、C工程において同時に使用され、連結した関係にあることを意味する。従って、この重複時間を検索することにより、ある箱に格納された製品がいずれの箱の部品を使用して製造されたかどうかを特定することができる。すなわち本実施形態の管理システムによると、箱単位で物品を特定できる為、複数に分岐された複雑な工程においても容易な管理と精細な追跡調査を実行することができる。
【0082】
このように、本実施形態の管理システムでは、各工程間を移動する物品を格納する各箱に識別情報を付与し、各箱に関連した処理が実行されていく度に、各識別情報と関連付けられた種々のデータを収集し、それら収集した各工程間毎のデータをそれぞれ1つのファイルとしてサーバ1に記憶させている。従って、サーバ1には、各工程間のリンクに関連付けられたファイルが蓄積されていく。そのため、所望の工程間の接続情報を得たい場合、管理側は、1つのファイルを検索するだけで該情報を得ることができるようになる。
【0083】
また、本実施形態の管理データが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体によると、1つのファイル内に、現在工程で物品を製品として考えたときの不良データと、次工程で該物品を部品として考えたときの不良データとを備えている。従って、同一ファイル内の製品不良情報と部品不良情報に食い違いが見られる場合、不良が発生したことを迅速に判断できる。そのため、このように管理データを構築すると、より迅速な不良解析の実現が可能となる。
【0084】
ここで、上記の如き追跡調査を、サーバ1等のシステムを用いることなく実施することもできる。この場合、各箱のICタグに蓄積された経路情報に参照して追跡調査を実施する。例えばF工程の製品に不良が発生し、その原因がA工程である場合の追跡調査(すなわちF工程からA工程の追跡調査)について説明する。
【0085】
このような場合、不良が発生した工程の箱すなわちF工程の箱(例えば箱f1)に備えられたICタグを参照して追跡調査を実行する。箱f1のICタグを参照すると、図12に示されたように、次工程がG工程であり、それに対する前工程がF工程であることが確定される。更に、一つ前の製造段階(すなわち上述において前工程であったものが次工程となる段階)において、次工程がF工程であり、それに対する前工程がC工程であることが確定される。また更に、一つ前の製造段階において、次工程がC工程であり、それに対する前工程がA工程又はB工程であることが確定される。ここで、目標の工程であるA工程が発見されて、F工程からA工程の経路が、F工程、C工程、A工程の順に連結された経路であることが確定され、追跡調査が完了する。
【0086】
各箱に取り付けられたICタグは広く普及している一般的なチップである為、ユーザは、その内部に記憶されたデータを、サーバ1等を含む特定のシステムを用いることなく、汎用的な装置で読み取ることができる。従って、本実施形態の管理システムや専用のソフトウェアを所有していないユーザも、その物品に含まれている経路情報を簡単に知ることができる。また、上記の如き経路情報は、単なるテキストデータのような非常に軽微なデータから成る。従って、複雑に分岐された経路情報をICタグに蓄積させることは容易である。結果として、ユーザは、ある物品に対する、非常に複雑な経路情報を容易に知ることができる。
【0087】
また、ICタグを読み取る為の装置を有していない場合であっても、ユーザは、追跡調査を容易に実行することができる。例えばユーザは、サーバ1にアクセスして所望の箱の管理データを閲覧することにより、その箱の経路を知ることができる。この場合、データを閲覧するだけである為、重複時間等の工程間を接続させる情報に基づいた追跡調査を実施するプログラムやソフトウェアを必要とせず、サーバ1にアクセス可能な端末があれば良い。
【0088】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0089】
なお、本実施形態では経路情報として各工程名を蓄積しているが、別の実施形態では工程名に加えて、それぞれの工程に関連した時刻(例えば製品製造開始時刻や製品製造終了時刻等)のデータを経路情報として蓄積しても良い。この場合、ユーザは、経路中の各地点においてそれぞれの処理がいつ行われたかを、ICタグの情報のみで知ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、部品を加工して製品を製造する行為を工程と定義し、各工程間を移動する集合体を箱と定義している。しかしながら工程間を該物品が移動する際に何らかの問題が生じた可能性の有無等を迅速に判断するようなシステムやその追跡調査を行う為のシステムは、これら「物品」、「工程」、「製品」、「部品」、「箱」を他のものに置き換えることにより、他の分野(流通、経済等)にも応用可能である。
【0091】
より具体的には、例えば、「物品」を、有形的な存在を有する有体物(上記の如き部品及び製品或いは食肉等)及び有形的な存在を有さない無体物(経済又は経営等)を含む「物」、「工程」を様々な形態の物に施す処置である「処理」、「製品」をある処理で生成される物である「生成物」、「部品」を生成物を成す為に用いられる「部分物」、「箱」を各処理間を移動する「集合物」に置き換えることができる。各要素を上述の如く置き換えることにより、本実施形態の如き管理システムを、食肉等の有体物や、経済又は経営或いは流通等をコントロールする為の情報である無体物を管理する為の様々な態様の処理管理システムに適用することができる。
【0092】
例えば、図2に示されたものに上記G工程を追加したモデルを例に挙げて説明する。このようなモデルにおいて、A工程を、X国産の食肉を一次加工する工程とし、B工程を、Y国産の食肉を一次加工する工程とし、C、D、及びE工程を、一次加工された食肉を加熱する工程とし、F工程を、加熱された食肉を二次加工する工程とし、F工程の次工程であるG工程を、加熱された食肉をパッキングする工程とする。この場合において、例えば、製造者が、F工程で二次加工された食肉を格納する箱f1に、Y国産の食肉が含まれているか否かを知りたいとする。このような場合、本実施形態と同様に、箱f1に備えられたICタグを参照して追跡調査を実行する。箱f1のICタグを参照すると(図12を用いて説明する)、次工程がG工程であり、それに対する前工程がF工程であることが確定される。更に、一つ前の製造段階において、次工程がF工程であり、それに対する前工程がC工程であることが確定される。また更に、一つ前の製造段階において、次工程がC工程であり、それに対する前工程がA工程又はB工程であることが確定される。ここで、B工程はY国産の食肉を処理する工程である為、ユーザは、箱f1内の食肉がY国産のものを含んでいることを知ることができる。このように、ユーザは、サーバ1等を含む特定のシステムを用いることなく、ICタグを参照して追跡調査を行うだけで、その箱内の物品の由来や内容等を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態における工程間を移動する箱の移動経路を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における各工程と各工程間の関係を模式的に示した図である。
【図3】本発明の実施形態による管理システムの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態のサーバの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の端末の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の管理データ更新処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャート(S1〜S3)に対応した、本実施形態の管理データを説明する為の図である。
【図8】図6のフローチャート(S4〜S6)に対応した、本実施形態の管理データを説明する為の図である。
【図9】本発明の実施形態において最終的に作成される箱a1の管理データを説明する為の図である。
【図10】本発明の実施形態において作成される箱b1の管理データを説明する為の図である。
【図11】本発明の実施形態において作成される箱c1の管理データを説明する為の図である。
【図12】本発明の実施形態において作成される箱f1の管理データを説明する為の図である。
【符号の説明】
【0094】
1 サーバ
2 PC
3A〜3F 端末
11 CPU
13 HDD
31 PLC
33 バーコードリーダ
a1 箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次処理において部分物として用いられる物を生成物として生成させる前処理と、少なくとも1つの前処理において生成された生成物の各々を部分物として用いて第2の生成物を生成させる次処理とを連鎖的に接続することにより、複数の処理を階層的に配置した構成としてモデル化された処理管理システムにおいて、
管理対象物に対して前処理における生成物としての生成物データを作成する生成物データ作成手段と、
該生成物に対応したデータであって、次処理における部分物としての部分物データを作成する部分物データ作成手段と、
該生成物データと該部分物データとを、前処理と、それに対応する次処理との接続を示す接続情報に関連付けて単一のファイルから成る管理データとして、それぞれの処理間に対して作成する管理データ作成手段と、を備え、
前記管理データ作成手段が、管理データに、管理対象物が前処理からそれに対応する次処理に移動したことを示す経路情報であって、処理を重ねる毎にその経路が累積されていく経路情報を付加すること、を特徴とする処理管理システム。
【請求項2】
該生成物データが、少なくとも、前処理の名称データと、生成物の生成を開始する時刻データと、生成物の生成が終了する時刻データとを含むこと、を特徴とする請求項1に記載の処理管理システム。
【請求項3】
該部分物データが、少なくとも、次処理の名称データと、部分物の使用を開始する時刻データと、部分物の使用が終了する時刻データとを含むこと、を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の処理管理システム。
【請求項4】
前記管理データ作成手段から取得される経路情報を記憶する記憶手段を、生成物及び部分物に付加したこと、を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の処理管理システム。
【請求項5】
前記記憶手段がICタグであること、を特徴とする請求項4に記載の処理管理システム。
【請求項6】
複数の処理を経て生成される生成物の各処理を管理する為の管理データが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
各処理間で搬送される生成物群を構成する物品の集合体である複数の物品群の各々に対応した複数の物品群用記憶領域を有し、
該複数の物品群用記憶領域の各々に、
各物品群を識別する為の物品群識別データと、
該物品群識別データに関連付けられた、該物品群を使用する処理に関するデータであって、生成された物品を集合させて物品群とする第一の処理に関する第一処理データ、及び、該物品群から物品を取り出す第二の処理に関する第二処理データと、
該物品が第一の処理からそれに対応する第二の処理に移動したことを示す経路情報であって、処理を重ねる毎にその経路が累積されていく経路データと、
を含むデータを単一のファイルの管理データとして、それぞれの処理間に対して記録していること、を特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−285364(P2006−285364A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101097(P2005−101097)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】