説明

処理装置

【課題】処理槽内を蒸気化に適した状態に維持して、効率よく乾燥処理を行うこと。
【解決手段】本発明の処理装置は、処理対象物を収容する処理槽と、前記処理槽内を加温する加温手段と、前記処理槽内の空気を外気と換気する換気手段と、前記処理槽内の空気の湿度に関わる物理量を検出する検出手段と、前記換気手段を制御し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記処理槽内の空気の換気量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を乾燥処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象物を乾燥処理する装置においては、短時間でエネルギの無駄が無く乾燥処理が行えることが望ましい。例えば、生ごみ等の廃棄物を減量処理する廃棄物処理装置では、処理槽内で廃棄物を微生物の働きで醗酵させて分解し、乾燥するに際し、その短時間化や省エネルギ化が望まれる。
【0003】
ここで、この種の廃棄物処理装置では、廃棄物から除去された水分(水蒸気)は、装置外へ排気ガスとして排出され、それにより廃棄物の乾燥が進行する。廃棄物の水分を蒸気化するために処理槽内はヒータ等により加温される。代表的な制御例としては、処理槽内の空気の換気量及び温度を一定に維持するものが知られている。しかし、この制御例ではヒータが出力するエネルギを無駄に排出している場合があり、効率化が求められる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には処理開始直後においては、予め定めた時間だけ処理槽内の空気の換気量を定常値よりも低減するものが開示されている。また、特許文献2は処理槽内の廃棄物の温度を検出し、その検出結果に応じて処理槽内の空気の換気量を制御するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−178528号公報
【特許文献2】特開2002−346510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものは、予め設定した時間により換気量を切り換える制御となっている。廃棄物中の水分の蒸気化の程度は、廃棄物の多寡や温度状況によって変動するため、更なる改善の余地がある。また、特許文献2のものは、処理槽内の廃棄物の温度を検出しているが、廃棄物が高温であっても処理槽内の空気の水蒸気量が飽和している場合には蒸気化が図られず、廃棄物自体の温度は廃棄物中の水分の蒸気化の程度と直接関係しない。
【0007】
本発明は、処理槽内を蒸気化に適した状態に維持して、効率よく乾燥処理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、処理対象物を収容する処理槽と、前記処理槽内を加温する加温手段と、前記処理槽内の空気を外気と換気する換気手段と、前記処理槽内の空気の湿度に関わる物理量を検出する検出手段と、前記換気手段を制御し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記処理槽内の空気の換気量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理槽内を蒸気化に適した状態に維持して、効率よく乾燥処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る処理装置の外観図。
【図2】前記処理装置の内部構造の説明図。
【図3】制御部のブロック図。
【図4】換気量及び加温を一定にした場合の処理槽内の空気の水蒸気量の変化の例を示す図。
【図5】制御部が実行する処理のフローチャート。
【図6】処理槽内の空気の水蒸気量、槽内温度及び換気量の変化の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置Aの外観図、図2は処理装置Aの内部構造の説明図である。図中、矢印Zは鉛直方向(処理装置Aの高さ方向)を示し、矢印X及びYは互いに直交する水平方向(X方向は処理装置Aの幅方向、Y方向は処理装置Aの奥行き方向)を示す。処理装置Aは生ごみ等の廃棄物を減量処理する廃棄物処理装置である。
【0012】
<装置の概要>
図1に示すように、処理装置Aの上面には、生ごみを投入する投入口1aを開閉するドア1が回動自在に設けられている。処理装置Aの上面にはまた、操作部3が設けられている。操作部3には処理装置Aの処理開始、停止等をユーザが指示するためのスイッチ等が設けられる。処理装置Aの正面には、減量処理済の廃棄物を排出するための開口部2、及び、この開口部2を開閉するためのドア2aが回動自在に設けられている。ドア1、ドア2aを閉鎖した状態では、処理装置A内の気密性が保たれるようにドア1やドア2aの周囲には不図示のシール部材が設けられる。
【0013】
図2を参照して、処理装置Aは底板4を備え、その下面にはキャスタ5が取り付けられており、処理装置Aの移動を容易なものとしている。底板4上にはX方向に互いに離間した仕切壁6乃至8が立設されている。仕切壁6乃至8は底板4に固定された隔壁である。処理装置A内では、処理対象物として、例えば、生ごみ等の廃棄物を加温処理する。詳細には、廃棄物の前処理となる醗酵処理と、後処理となる乾燥処理とによる廃棄物の減量処理である。
【0014】
仕切壁6と仕切壁7との間の空間は廃棄物処理槽10を、仕切壁7と仕切壁8との間の空間は廃棄物処理槽11を、それぞれ形成し、X方向に連続して配設されたこれらの処理槽10及び11が生ごみを減量処理する処理槽を構成している。本実施形態では処理槽を2槽構成としているが、1槽構成としてもよく、或いは、3槽以上の構成としてもよい。
【0015】
処理槽11のX方向の側方には、仕切壁8で仕切られた回収室12が形成されている。回収室12は減量処理された廃棄物が処理槽11から導入される。回収室12は排出口2と連通しており、ドア2aを開放することで回収室12から減量処理済の廃棄物を取り出すことができる。
【0016】
処理装置Aは、駆動ユニット20を備える。駆動ユニット20は、処理槽10及び11を横断する駆動軸21を備える。駆動軸21はX方向に延設され、仕切壁6乃至8にそれぞれ設けた軸受け22により回転自在に支持されている。駆動ユニット20は、また、駆動軸21の一方端部に固定されたスプロケット23と、モータ24と、を備える。スプロケット23と、モータ24の出力軸に固定したスプロケットとにはベルトが巻きまわされてベルト伝動機構が構成されている。そして、モータ24の駆動により駆動軸21が回転するようにしている。
【0017】
駆動軸21にはその径方向に延びる攪拌棒25が複数取り付けられている。駆動軸21の回転により、攪拌棒25によって処理槽11及び12内の廃棄物が攪拌される。本実施形態では棒状の攪拌棒25を採用したが、槽内を攪拌可能な形状であればよい。仕切壁7の下部には、処理槽10と処理槽11とを連通させる連通孔71が形成されており、攪拌棒25による攪拌により、処理槽10から処理槽11へ廃棄物が移動可能となっている。
【0018】
なお、本実施形態では、仕切壁7の下部に連通孔71を設けて処理槽10から処理槽11へ廃棄物を移動可能としたが、仕切壁7の上部に開口部を設けて、仕切壁7を超えて処理槽10から処理槽11へ廃棄物がオーバーフローすることにより、廃棄物を移動可能としてもよい。
【0019】
処理槽11内の廃棄物は、その堆積量の増加により仕切壁8を超えて回収室12へ落下し、回収室12内に堆積する。なお、本実施形態では、仕切壁8を超えて処理槽11から回収室12へ廃棄物が移動可能としたが、仕切壁8の下部に連通孔を設けて処理槽11から回収室12へ廃棄物がアンダーフローすることにより、廃棄物を移動可能としてもよい。
【0020】
処理槽10には、送風機61が設けられている。送風機61は処理槽10内の空気を図2で矢印で示す方向に吸引・送風し、処理槽10内の空気を循環させる。
【0021】
<処理槽内の空気の加温>
回収室12及び処理槽11の上方空間には脱臭機30が配設されている。脱臭機30はヒータ31と、酸化触媒32と、を備える。送風機60は仕切壁7を通過するダクト60aを介して処理槽10内の空気を吸引して脱臭機30へ送風する。送風機60から送風された空気は、ヒータ31により酸化触媒32の活性化温度に加温され、酸化触媒32により脱臭される。
【0022】
脱臭機30で脱臭された空気の一部は、ダクト30aにより処理槽11に戻される。仕切壁7の上部には、処理槽10と処理槽11とを連通させる連通孔72が形成されており、ダクト30aから処理槽11へ導かれた空気は連通孔72を通って処理槽10にも流入する。
【0023】
こうして本実施形態では、ヒータ31を処理槽内の空気を加温するためにも用いている。なお、本実施形態では、ヒータ31による処理槽内の空気の加温効果を向上するために、脱臭機30を処理槽の空間内に配置しているが、処理槽と連通しない外部空間に脱臭機30を設けてもよい。
【0024】
仕切壁6には、ヒータ35が設けられている。ヒータ35はその発熱により、仕切壁6を介して処理槽10内の空気を加温する。なお、ヒータ35は処理槽10或いは処理槽11を取り囲むように設けてもよい。
【0025】
本実施形態では、処理槽内の空気を加温するために、ヒータ31とヒータ35との双方を利用しているが、いずれか一方でもよい。例えば、ヒータ31のみで処理槽内の空気を加温することとし、ヒータ35を省略してもよい。
【0026】
<処理槽内の空気の換気>
ダクト30aには、送風機40が接続されている。送風機40は、脱臭機30で脱臭・加温された空気を吸引し、ダクト40a及び換気孔41を介して処理装置Aの外部へ排気する。処理槽10及び11並びに回収室12は換気孔41を除いて気密性が維持されるよう構成され、ダクト40aから排気された空気量に相当する外気が換気孔41から処理装置A内に自然吸気され、処理槽10及び11へ進入する。
【0027】
こうして、処理槽10及び11(並びに回収室12)の換気が行われる。そして、送風機40の送風量を変化させることで、換気量を変化させることができる。送風機40を停止すると、処理槽10及び11並びに回収室12内の空気は処理装置A外部へ排出されず、外気が自然吸気されないため、換気量は0となる。なお、本実施形態では、このように、送風機40による排気側の制御で処理槽10等を換気することとしたが、吸気側の制御で処理槽10等を換気(排気は自然排気)するようにしてもよい。但し、本実施形態のように廃棄物の処理装置の場合は、排気を脱臭する必要があるので、排気側の制御で換気する方式が適している。
【0028】
<処理槽内の空気の湿度に関わる物理量の検出>
処理槽10内には温度センサ50が配設されている。温度センサ50は、処理槽10内の空気の湿度に関わる物理量として、その温度(気温)を検出する。湿度に関わる物理量として、湿度そのものを検出するセンサを採用することもできる。しかし、安価で信頼性の高く、高温で腐食性のある空気の湿度を検出できる湿度センサが実用化されていない。そこで、本実施形態では温度センサ50を用いて湿度を推測する方式としたが、湿度を推測可能な物理量を検出できるものであれば何でもよい。
【0029】
温度センサ50は、より正確に処理槽10内の温度のみを検出できることが好ましい。このため、本実施形態では、支持部材50aを介して仕切壁6で温度センサ50を支持する構成とし、処理槽10を画定するその壁部から温度センサ50を離間させることで、仕切壁6等の温度が温度センサ50の検出結果に与える影響を小さくしている。支持部材50aは熱伝導性の低い材料であることが好ましい。
【0030】
また、処理槽10内の廃棄物の温度が温度センサ50の検出結果に与える影響を小さくするために、処理槽10内の比較的上部に温度センサ50を配置している。温度センサ50は廃棄物に接しない位置に配置することが望ましい。
【0031】
なお、本実施形態では処理槽10内に温度センサ50を設けたが、処理槽11内に設けてもよい。
【0032】
<減量処理>
処理装置Aによる生ごみ等の廃棄物の減量処理について説明する。生ごみの減量処理としては、生ごみを単に脱水させる方式、生ごみを乾燥させる方式、微生物による分解処理(醗酵処理)が知られている。本実施形態の減量処理は、分解処理と乾燥とを組み合わせた減量処理である。
【0033】
投入口1aから投入された生ごみは、始めに処理槽10に入る。処理槽10内の、水分を多量に含む生ごみRD1は、生ごみRD1に存する微生物或いは予め投入された大鋸屑等の菌床となる基材の働きにより分解される。また、ダクト30aから排気される加温された空気が連通孔72を介して処理槽10に導入され、ヒータ35で処理槽10内が加温されることで、廃棄物の乾燥が促進される。また、攪拌棒25による攪拌や送風機61による空気の循環により、生ごみRD1の均一な分解、乾燥が促進される。
【0034】
生ごみRD1の醗酵により、処理槽10内の空気は異臭を伴うが、脱臭機30で脱臭されて処理装置Aの外部に排気され、また、換気孔41から処理装置A内に外気が自然吸気されるので、その程度は軽減される。
【0035】
分解処理が進行して減量された処理槽10内の生ごみRD1は、仕切壁7の下部の連通孔71を介して処理槽10から処理槽11へ移動する。処理槽11内の生ごみRD2は、主として、ダクト30aから排気される加温された空気の吹き付けにより、乾燥される。処理槽11内に堆積した、乾燥の進んだ生ごみRD2は、攪拌棒25による攪拌により処理槽11からオーバーフローして回収室12に排出される。回収室12には、こうした減量処理によって生じた、生ごみの残渣RD3が堆積されることになる。
【0036】
<制御部>
図3は処理装置Aの制御部13のブロック図である。制御部13は、CPU131、ROM132、RAM133及びI/F(インターフェース)134を備える。CPU131は、I/F134を介して、操作部3の操作状態を取得し、送風機40、60、61、ヒータ31及び35、モータ24を制御する。ROM132にはCPU121が実行する制御プログラムやデータが記憶される。RAM133には一時的なデータが記憶される。ROM132、RAM133は他の種類の記憶手段を採用してもよい。なお、図示しないが、送風機40についてはその送風量を可変にする駆動回路が、ヒータ35についてはその発熱量を可変にする駆動回路が、それぞれ設けられる。
【0037】
<乾燥処理例>
<基本的な考え方>
処理槽10及び11内の廃棄物の乾燥処理を、短時間かつ無駄なエネルギの放出を少なく行うためには、ヒータ31及び35が発するエネルギが廃棄物の乾燥処理に利用される割合を高めることが必要である。ここで、図4は処理槽10及び11内の換気量及び加温(ヒータ31及び35)を一定にして、新たな廃棄物の乾燥処理を行った場合の、処理槽10及び11内の空気の水蒸気量の変化の例を示す図である。
【0038】
同図に示すように、時間の経過に伴って廃棄物中の水分の蒸発が進み、処理槽10及び11内の空気の水蒸気量が増加するが、一定量に至ると飽和する。そして、廃棄物中の水分が少なくなって水蒸気量が減少し、乾燥が終了する。
【0039】
この例の場合、区間P2においては処理槽10及び11内の空気の水蒸気が飽和しており、ヒータ31及び35から発せられる熱エネルギが、廃棄物の乾燥に役立っておらず、無駄に消費(排出)されていることになる。また、区間P1においては、水蒸気量の増加の立ち上がりが鈍く、これは、槽内の温度の立ち上がりが悪いことを示している。これもヒータ31及び35から発せられる熱エネルギが、無駄に消費(排出)されていることになる。
【0040】
本実施形態では、槽内の空気の水蒸気量が飽和しないように、槽内の換気量を制御する。つまり、槽内の空気の湿度が相対的に増大すると換気量を相対的に増大させることで、区間P2のように水蒸気が飽和しないようにする。これにより、ヒータ31及び35から発せられる熱エネルギを廃棄物の乾燥のためにより無駄なく消費することができる。また、槽内の空気の湿度が相対的に減少すると、乾燥のための熱エネルギが足りていないことになるので、換気量を相対的に減少させる。こうして換気量を制御することで、処理槽内を蒸気化に適した状態に維持することができ、効率よく乾燥処理を行うことができる。
【0041】
また、乾燥開始時においては、槽内の温度の立ち上がりを鋭くするために、換気量を小さくし、好ましくは0とする。これにより、乾燥開始時において、早期に廃棄物中の水分の蒸気化を促進できる。
【0042】
本実施形態では、温度センサ50により槽内の空気の湿度を推測して換気量の制御を行う。処理槽内の空気の換気量は、廃棄物からの水分蒸発量と処理槽外への排出量のバランスを制御することになる。すなわち、ヒータ31及び35で印加した熱エネルギは、乾燥(蒸気化)エネルギ、空気の昇温エネルギ、および、排気に伴う放出エネルギとして消費されることになる。このため、処理槽内の温度変化の様子を検出すれば、処理槽の気化状態を判断することが可能となり、ヒータ31及び35で印加した熱エネルギを乾燥(蒸気化)エネルギとして優先的に使用できるように制御することが可能になる。
【0043】
例えば、処理槽内の温度が一定の値で推移していれば、印加した熱エネルギはその全てが廃棄物中の水分を蒸気化する為のエネルギとして消費されていることになる。この場合は現状の換気量を維持すればよいことになる。
【0044】
一方、処理槽内の温度が上昇している場合には、処理槽内の相対湿度が高く、水蒸気が飽和状態近くになっている為、廃棄物中の水分の蒸気化が鈍化し、印加した熱エネルギが空気の昇温エネルギとして消費される状態になっている。この場合は、換気量を増やすことで処理槽内の水蒸気を多量に含んだ空気をより多く処理槽外に排出すると共に、処理槽外に排出する空気に見合った外気を処理槽内に導入することで、処理槽内の相対湿度を減少させ、廃棄物中の水分蒸発を促すようにすることができる。
【0045】
また、処理槽内の温度が減少している場合は、蒸気化量に比べて換気量が多すぎて廃棄物中の水分の気化が鈍くなっていることが推定される。よって、この場合は換気量を適量に減らすことで処理槽からの不必要な熱の排出を抑制して、廃棄物中の水分蒸発を促す。
【0046】
<制御例>
図5はこのような考え方に基づく処理のフローチャートであり、制御部13のCPU131が実行する処理のフローチャートを示す。処理装置Aのユーザは、廃棄物を装置内に投入後、操作部3から処理の開始を指示する。CPU131は該指示を契機として同図の処理を実行する。
【0047】
S1では初期処理を行う。ここでは、モータ24を駆動し、廃棄物の攪拌を開始する。送風機40はOFFとし、送風機60及び61はONとする。送風機40をOFFとすることで、処理槽10及び11内の空気の換気量は0となり、送風機60及び61の作動により、処理槽10及び11内で空気が循環しているだけの状態となる。また、ヒータ31及び35をONにする。この場合、ヒータ31及び35の出力は最大(定格出力)とする。出力を最大とすることで、廃棄物の減量処理、特に、乾燥を短時間で終えられる。出力を最大としても、換気量の制御により、その熱エネルギが有効に活用される。これらの処理により、廃棄物の醗酵、乾燥が開始される。ヒータ31及び35の出力は、温度センサ50の検出温度が規定温度T2に達するまで(S5)、最大のまま一定とする。
【0048】
S2では温度センサ50の検出結果を取得して、その検出温度が規定温度T1に達したか否かを判定する。規定温度T1に達していた場合はS3へ進み、達していない場合はS4へ進む。規定温度T1は、微生物の働きや廃棄物中の水分の蒸発が活発化し始める温度とし、例えば、摂氏35度である。
【0049】
S3では、送風機40を運転する。規定温度T1まで送風機40をOFFとしておくことで、槽内の温度の立ち上がりをよくすることができる。換気量(送風量)は、温度センサ50の検出温度(槽内温度)が相対的に高い場合は相対的に増大し、相対的に低い場合は相対的に減少させる。これにより、処理槽10及び11内を蒸気化に適した状態に維持することができ、効率よく乾燥処理を行うことができる。本実施形態では、検出温度に定数kを乗算して換気量を算出し、検出温度に換気量が比例するようにしている。
【0050】
S4では送風機40をOFFとしてS2へ戻る。送風機40の運転開始後、温度センサ50の検知温度が規定温度T1以下になった場合の処理である。
【0051】
S5では温度センサ50の検出結果を取得して、その検出温度が規定温度T2に達したか否かを判定する。規定温度T2に達していた場合はS6へ進み、達していない場合はS2へ戻る。規定温度T2は、例えば、槽内の空気の水蒸気が飽和に近い温度で、微生物が活動する上限温度とし、例えば、摂氏80度である。
【0052】
槽内温度が規定温度T2に達した場合は、槽内の空気の水蒸気が飽和に近いので、S6では送風機40の運転を継続するが換気量を最大とする。また、本実施形態の場合、ヒータ35の出力を減少する。ヒータ35の出力は0としてもよいし、半分程度としてもよい。いずれにしても、ヒータ31及び35からの合計の出力は減少する。ヒータ31及び35からの熱エネルギを減少することで、廃棄物中の水分の蒸発を抑制し、槽内の空気の水蒸気が飽和しないように(熱エネルギが無駄にならないように)する。
【0053】
S7では、温度センサ50の検出結果を取得して、その検出温度が規定温度T3に達したか否かを判定する。規定温度T3に達していた場合はS8へ進み、達していない場合はS2へ戻る。規定温度T3は、蒸発すべき廃棄物中の水分がほとんどない場合、つまり、乾燥が完了する温度とし、例えば、摂氏90度である。
【0054】
S8では終了処理を行う。ここでは、モータ24、送風機40、60、61並びにヒータ31、35をOFFにする。以上により一単位の処理が終了する。
【0055】
図6は、上記の制御を行った場合の処理槽内の空気の水蒸気量、槽内温度及び換気量の変化の例を示す図である。処理開始から槽内温度が規定温度T1に至るまでは、換気量が0であるため、その立ち上がりがよく、槽内の水蒸気量の立ち上がりがよくなっている。槽内温度が規定温度T1からT2までの間では換気量が槽内温度に比例して増加し、槽内の水蒸気量が飽和していない。槽内温度が規定温度T2からT3までの間では換気量が最大となって、槽内の水蒸気量が飽和することを防ぐと共に、廃棄物中の水分減少により槽内の水蒸気量が減少する。しかして、廃棄物が乾燥して処理が終了する。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、処理対象物として生ごみ等の廃棄物を処理する廃棄物処理装置を例示して説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加熱処理装置、攪拌処理装置、混合処理装置、減溶処理装置等に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を収容する処理槽と、
前記処理槽内を加温する加温手段と、
前記処理槽内の空気を外気と換気する換気手段と、
前記処理槽内の空気の湿度に関わる物理量を検出する検出手段と、
前記換気手段を制御し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記処理槽内の空気の換気量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記処理槽内の空気の湿度が、相対的に高い場合は前記換気量を相対的に増大し、相対的に低い場合は前記換気量を相対的に減少することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記検出手段が、前記処理槽内の空気の温度を検出する温度センサであることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記温度センサが検出した温度が規定温度に達するまでは前記換気量を0とすることを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記温度センサが検出した温度が第1規定温度に達するまでは前記換気量を0とし、
前記温度センサが検出した温度が、前記第1規定温度と前記第1規定温度よりも高い第2規定温度との間である場合は、前記温度センサが検出した温度が、相対的に高い場合は前記換気量を相対的に増大し、相対的に低い場合は前記換気量を相対的に減少することを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記温度センサが検出した温度が前記第2規定温度に達するまでは前記加温手段の出力が一定となるように前記加温手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記温度センサが検出した温度が前記第2規定温度に達した場合は前記加温手段の出力が減少するように前記加温手段を制御することを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記温度センサが検出した温度が前記第2規定温度よりも高い第3規定温度に達した場合は前記加温手段を停止させることを特徴とする請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記処理対象物が廃棄物であり、
前記処理槽は前記廃棄物を減量処理する廃棄物処理槽であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115740(P2011−115740A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277022(P2009−277022)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】