説明

凸版製造用感光性樹脂組成物

【課題】 凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキの何れに対しても耐性を有する凸版印刷版を製造するために好適な凸版製造用感光性樹脂組成物を提供する
ことを技術的課題とする。
【解決手段】不飽和ポリエステルポリオールとポリイソシアネートと活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物とを反応させて得られる不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、光重合開始剤(C)を含有成分とし、プレポリマー(A)とモノマー(B)の重量比が30〜70/70〜30、酸価が50〜150mgKOH/gであり、感光性樹脂組成物を光重合させた硬化物が、JISゴム硬度でショアA60〜90°且つ、25℃のアニソールなどに24時間浸漬したときの重量増加率が15重量%以下であることを特徴とする凸版製造用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版印刷に用いられる樹脂凸版を製造するために好適な感光性樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキの何れに対しても優れた耐性を有する凸版製造用感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネル、電子回路の微細パターンの形成などは一般的にフォトリソ法、真空蒸着法等が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法、真空蒸着法等と比較し、処理速度が速い、プロセスに係わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高いなどコスト低減が期待されている。
【0003】
印刷法としては、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等が知られているが、その中でも、特に弾性を有するゴム版や樹脂版を使用する凸版印刷は、印刷スピードが速く、また、樹脂凸版を用いることから、インキは凸部表面に転写され、被印刷体表面には凸部が接触するため、被印刷部位には汚れが発生しないという大きな特徴を有し、凸版印刷法を用いて表示パネル、電子回路等の部材を製造する方法が注目されている。
【0004】
表示パネル、電子回路を形成するために用いられるインキにおいて、機能性化合物を溶解或は分散させる溶剤としては、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶剤、イソプロピルアルコール、エタノール等のアルコール系溶剤、及び水等を挙げることができる。また、このようなインキを用いて微細なパターンを形成するためには、これら種々の溶剤に対して膨潤や変形が起こらないよう、耐性を有する必要がある。
【0005】
凸版製造用感光性樹脂組成物としては、ポリブタジエン、SBR、ポリイソプレン等のゴム成分を主体とするもの、水溶性ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等の水溶性高分子を主体とするもの、或いは、ポリエステル及びポリエーテル系ウレタンアクリレートを主体とするものが使用されている。
【0006】
しかしながら、ポリブタジエン、SBR、ポリイソプレン等のゴム成分を主体とする感光性樹脂は、高極性溶剤や水に対する耐性が優れるため、水系及びアルコール系インキの印刷に適用されるが、ケトン系、エステル系、エーテル系、芳香族系溶剤を使用するインキには耐性が乏しいため適用できない。
【0007】
水溶性ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等の水溶性高分子を主体とする感光性樹脂は、主体とする樹脂の溶解度パラメータ(以下、SP値と略することがある。)がそれぞれ13.6(ナイロン)、12.6(ポリビニルアルコール)、15.7(セルロース)であり、芳香族系溶剤の代表であるトルエンのSP値8.9、キシレンのSP値8.8と十分に離れており、芳香族系溶剤に対する耐性を有するが、得られる印刷版の硬度が非常に高く、印刷時の基板へのダメージが大きいといった問題や、水性インキに対する耐性が乏しいといった問題がある。
【0008】
ポリエステル及びポリエーテル系ウレタンアクリレートを主体とする液状感光性樹脂組成物は、耐摩擦性に優れるために凸版製造用として汎用されているが、芳香族系溶剤に対する耐性が乏しく、印刷処理の繰り返しに伴い版が膨潤してしまい印刷精度が著しく悪化し、極端な場合には凸版が破損してしまう問題が生じるおそれがある。
【0009】
芳香族系溶剤を使用するインキに耐性を有する印刷版用感光性樹脂として、ジオール成分に低分子量のアルキルジオールと高分子量のポリアルキレングリコールを使用した特定の不飽和ポリエステルからなる感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この不飽和ポリエステル系感光性樹脂組成物は、画像形成性に優れているが、不飽和ポリエステルとエチレン性不飽和モノマーとの共重合性が良好でないために重合が遅く、且つ、不均一に進行する。そのため、芳香族系溶剤に対して十分な耐性と強度を得るためには、露光量を増やす必要があり、製造時間が長くなり、画像形成の解像性が損なわれるといった問題がある。
【0010】
不飽和ポリエステルとポリエステル系ウレタンプレポリマーを併用した感光性樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂のポリマー末端の一部にウレタン結合を介して反応性の高いアクリレート基を導入した不飽和ポリエステルウレタン樹脂を使用した感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらの方法では、不飽和ポリエステル樹脂とモノマーとの重合速度や共重合性は改善されてはいるものの、凸版とした場合の芳香族系溶剤に対する耐性は不十分である。
【0011】
また、芳香族炭化水素系溶剤に耐性を有するフッ素化ポリエーテル構造を有するフッ素系エラストマーを用いたフレキソ印刷版が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、フッ素系材料は非常に高価であること、また、注型成型により樹脂凸版のパターン形成を行うため、微細なパターンを再現するには不適である。上記したように従来の技術では、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用する何れのインキの印刷に対して耐性を有するものはなく、これらの課題のすべてを解決する樹脂凸版が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭51−37320号公報
【特許文献2】特開昭55−717号公報
【特許文献3】特開平6−43639号公報
【特許文献4】特開2004−322329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記状況に鑑み、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキの何れに対しても優れた耐性を有する凸版製造用感光性樹脂組成物を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のプレポリマー(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、光重合開始剤(C)を含有成分とする凸版製造用感光性樹脂組成物(D)が、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキの何れに対しても優れた耐性を有し、特に従来技術では達成が困難な芳香族系溶剤を使用したインキに対して優れた耐性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
<1>プレポリマー(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、光重合開始剤(C)を含有成分とする凸版製造用感光性樹脂組成物(D)において、下記[1]〜[6]を全て満たすことを特徴とする凸版製造用感光性樹脂組成物である。
[1]前記プレポリマー(A)が、多価アルコールと多価カルボン酸を縮重合させて得られる不飽和ポリエステルポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)とを少なくとも反応させて得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーであること。
[2]前記不飽和ポリエステルポリオール(a1)が、多価アルコール成分として少なくともポリエチレングリコールと多価カルボン酸成分として少なくとも脂肪族不飽和ジカルボン酸を必須成分とする不飽和ポリエステルポリオールであること。
[3]前記エチレン性不飽和モノマー(B)が、下記一般式(1)で示されるモノマー(b1)を少なくとも含有すること。
【化4】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数2〜5のアルキレン基、nは1〜4、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、下記一般式(2)、下記一般式(3)を示す。)
【化5】

【化6】

[4]前記プレポリマー(A)と前記エチレン性不飽和モノマー(B)の重量比が30〜70/70〜30の範囲にあること。
[5]前記凸版製造用感光性樹脂組成物(D)の酸価が50〜150mgKOH/gの範囲であること。
[6]前記凸版製造用感光性樹脂組成物(D)を光重合させた硬化物が、
(1)JISゴム硬度でショアA60〜90°であり、且つ、
(2)25℃のアニソール、イソプロピルアルコール及び水に24時間浸漬したときの重量増加率が15重量%以下であること。
【0016】
また、好ましい態様としては、
<2>不飽和ポリエステルポリオール(a1)が、縮重合に使用した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分の合計重量に対し、ポリエチレングリコールの使用量が40〜70重量%の範囲にあり、且つ、エチレン性不飽和結合濃度が0.5〜3.0mmol/gの範囲にある前記<1>の凸版製造用感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキの何れに対しても耐性を有する凸版印刷版を製造するために好適な凸版製造用感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次のとおりである。
(A)プレポリマー
本発明の構成成分であるプレポリマー(A)は、少なくともポリエチレングリコールと脂肪族不飽和ジカルボン酸とを縮重合して得られる不飽和ポリエステルポリオール(a1)とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)とを反応することにより得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーであり、ポリマー主鎖部分に柔軟なオキシエチレン構造を有し、更に、ポリマー主鎖部分とポリマー末端部分の両方にエチレン性不飽和基を有することを必須とする。プレポリマー(A)に、親水性が高いポリエチレングリコールを含有する不飽和ポリエステルポリオール(a1)を用いることとしたので、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等に対しても耐性を有する凸版製造用感光性樹脂を提供することが可能となる。また、得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーは、エチレン性不飽和モノマー(B)との共重合性が良好であるため、より少ない露光量でも緻密な架橋構造を有する硬化物を得ることが可能となり、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等の何れに対しても優れた耐性を有する凸版製造用感光性樹脂を提供することが可能となる。
【0019】
(a1)不飽和ポリエステルポリオール
不飽和ポリウレタンプレポリマーに用いられる不飽和ポリエステルポリオール(a1)は、2価以上の多価アルコール成分と2価以上の多価カルボン酸成分とを縮重合することにより得られるが、芳香族系溶剤に対する耐性を向上させるため、ポリエチレングリコール単独若しくはポリエチレングリコール以外の多価アルコールとポリエチレングリコールの混合物からなる多価アルコール成分と脂肪族不飽和ジカルボン酸単独若しくは脂肪族不飽和ジカルボン酸以外の多価カルボン酸と脂肪族不飽和ジカルボン酸の混合物からなる多価カルボン酸成分とを縮重合して得られるものでなければならない。
【0020】
ポリエチレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール(分子量200〜20000)が挙げられ、特に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量が200〜600であるポリエチレングリコールは、ポリエステル樹脂の製造が容易であり、且つ、凸版に必要な適度なゴム硬度と芳香族系溶剤に対する耐性を付与することができるため好ましい。
【0021】
ポリエチレングリコール以外の多価アルコール成分としては、例えば2価のアルコール成分として、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられ、3価以上のアルコール成分としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの中でも多価アルコール成分としては、ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオールがアルコール系溶剤、及び水などに対する耐性を付与できるため好ましい。
【0022】
脂肪族不飽和ジカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、及びシトラコン酸や、その無水物として、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物が挙げられ、特に、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物は安価であり、且つ、ポリエステル樹脂の製造が容易なため好ましい。
【0023】
脂肪族不飽和ジカルボン酸以外の多価カルボン酸成分としては、例えば2価のカルボン酸成分として、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸などの芳香族二塩基酸類又はその無水物;テトラヒドロフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸などの脂環族二塩基酸類又はその無水物;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、及びアゼライン酸などの脂肪族二塩基酸類又はその無水物;炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物が挙げられ、3価以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸又はその無水物などが挙げられる。上記脂肪族不飽和ジカルボン酸以外の多価カルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸が安価であり、且つ、芳香族系溶剤に対する耐性と水に対する耐性を両立できるため好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエチレングリコールは、不飽和ポリエステルポリオール(a1)の製造に使用した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分の合計重量に対して、40〜70重量%を含有することが好ましい。40重量%未満になると、親水性が弱くなり、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤に対する耐性が悪化する傾向にある。また、70重量%を超えると、逆に親水性が強過ぎ、アルコール、水に対する耐性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明における脂肪族不飽和ジカルボン酸は、ポリエステルポリオールの分子量、ポリエチレングリコールの含有量によっても異なるが、エチレン性不飽和結合濃度が0.5〜3.0mmol/gの範囲となるように調整されることが好ましい。エチレン性不飽和結合濃度とは、ポリエステルポリオールにおけるエチレン性不飽和結合の数を表したもので、次式で定義される。
「エチレン性不飽和結合濃度(mmol/g)」=(X×Y)/Z×1000
X : 脂肪族不飽和ジカルボン酸中のエチレン性不飽和基の個数
Y : 脂肪族不飽和ジカルボン酸のモル数
Z : ポリエステルポリオール原料のアルコール成分と酸成分の総重量(g)
【0026】
即ち、エチレン性不飽和結合濃度が0.5mmol/g未満になると、硬化物の架橋密度が低下し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤に対する耐性が悪化する傾向にあり、3.0mmol/gを超えると、硬化物の架橋密度が高くなり過ぎ、ゴム硬度が高くなるだけでなく、脆くなり、レリーフが欠け易くなる傾向がある。
【0027】
不飽和ポリエステルポリオール(a1)の製造は、多価カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基の合計モル数に対し、多価アルコール成分に含まれる水酸基の合計モル数が10〜100モル%過剰となるような原料組成比で、公知の方法により、不活性ガス気流中で、150〜240℃の温度で脱水縮合を行うことが適当である。
【0028】
本発明においては、不飽和ポリエステルポリオール(a1)の分子量は、数平均分子量で500〜5000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、不飽和ウレタンプレポリマー(A)にした場合にウレタン結合濃度が高くなり、感光性樹脂組成物の粘度安定性が悪化するおそれがあり、また硬化物のゴム硬度も高くなる傾向にある。数平均分子量が5000を超えると、樹脂粘度が増加し、更には現像性を悪化させるおそれ
がある。
【0029】
ポリイソシアネート(a2)はジイソシネート、トリイソシアネートなど2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、ジイソシネートとしては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−水添化キシリレンジイソシアネート、m−水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、トリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体などが挙げられる。その中で、不飽和ポリウレタンプレポリマーの製造が容易であることから、ジイソシアネートが好ましい。更に、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0030】
活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)としては、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物であればよく、好ましくはヒドロキシ基とエチレン性不飽和結合を分子内にもとに有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ或いはジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その中で、芳香族系溶剤に対する耐性の観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)は、種々の方法で得ることができる。例えば、反応温度20〜80℃で、不飽和ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させることによりポリマー末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体を合成し、これに、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)を付加させることで得ることができる。反応は、IR測定により2230cm−1付近のNCO特性吸収帯の痕跡がなくなるまで保温を継続することにより完結することができる。
【0032】
このとき、不飽和ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との割合は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO基)と不飽和ポリエステルポリオール(a1)の水酸基(OH基)とのモル比(NCO基/OH基)が1.1〜2.0の範囲で反応することでポリマー末端にNCO基を有するプレポリマー前駆体を合成し、これに、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)の水酸基(OH基)が、プレポリマー前駆体のポリマー鎖末端NCO基と当量になるように反応することが好ましい。不飽和ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との割合が、上記範囲を外れると、未反応不飽和ポリエステルポリオールの残留による諸物性の低下や、過剰なイソシアネート基の残存による貯蔵安定性の低下を起こす場合がある。
【0033】
前記不飽和ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との反応において、触媒を使用しても良い。このような触媒としては、例えば、ジ−n−ブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチルアミン、ナフテン酸金属塩、オクチル酸鉛などのオクチル酸金属塩等が挙げられる。これら触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の分子量は、数平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満であると、光硬化物の機械的強度が低く、繰り返し印刷に対する耐久性が悪化するおそれがあり、数平均分子量が10000を越えると、現像性が悪化するおそれがある。
【0035】
(B)エチレン性不飽和モノマー
本発明におけるエチレン性不飽和モノマー(B)としては、芳香族系溶剤に対する耐性、ゴム硬度を最適化するため、前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するモノマー(b1)を必須成分として含有する必要がある。
【化7】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数2〜5のアルキレン基、nは1〜4、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、下記一般式(2)、下記一般式(3)を示す。)
【化8】

【化9】

【0036】
前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するモノマー(b1)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとポリカルボン酸或いはその無水物とを等モルでエステル化反応させて得ることができ、例えば、市販されているものとしては、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学株式会社製、商品名HO−MS)、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(新中村化学株式会社製、商品名NKエステルA−SA)、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸(三菱レイヨン株式会社製、商品名アクリエステルPA)、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸(共栄社化学株式会社、商品名HOA−MPL)、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(三菱レイヨン株式会社製、商品名アクリエステルHH)、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学株式会社製、HOA−HH)等が挙げられる。その中で、特に、光硬化物の柔軟性の観点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸が好ましい。
【0037】
本発明におけるカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(b1)は、不飽和ポリエステルポリオール(a1)のポリエチレングリコールの使用量、或いはエチレン性不飽和結合濃度によっても異なるが、感光性樹脂組成物(D)における含有量が、20〜60重量%であることが好ましい。20重量%未満になると、芳香族系溶剤に対する耐性が悪化する傾向にあり、60重量%を超えると水に対する耐性が悪化する傾向にある。
【0038】
前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するモノマー(b1)の一部として他のエチレン性不飽和モノマーを用いることができる。前記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和モノマー(b1)以外のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、例えばアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、アルキレングリコール及びポリオキシアルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ,ジ,トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ,ジ,トリ,テトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基で、N−置換又はN,N’−置換した(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。その中で、特に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが、芳香族系溶剤に対する耐性と水に対する耐性を両立することができるため好ましく、その使用量は、感光性樹脂組成物(D)に対して、1〜30重量%であることが好ましい。
【0039】
なお、本発明におけるエチレン性不飽和モノマー(B)としては、前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(b1)が必須である理由は、エチレン性不飽和モノマー(B)として、前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(b1)を凸版製造用感光性樹脂の必須成分とすることにより、その硬化物が凸版印刷版として適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、及び水に対する耐性を有することが可能となるからである。
【0040】
(C) 光重合開始剤
本発明における光重合開始剤(C)としては、光による重合開始剤であれば、特に限定はなく、例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなどが挙げられる。これら光重合開始剤は2種以上を用いても良い。
【0041】
光重合開始剤(C)の添加量は、通常、プレポリマー(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)との総量に対して0.1〜10重量%の範囲が好ましい。0.1重量%より少ないと、所定の露光量で光重合することが困難となり、製版時間が著しく伸びると共に、共重合性が悪化することにより架橋密度が低下し、そのため、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤に対する耐性の悪化を生じるおそれがある。また、10重量%を超えると、ポットライフが短くなり、保管中にゲル化したりするといった問題が生じる場合があると共に、製版時においては感度が高すぎて露光時間のコントロールが困難になる。連続製版する際の、画像再現性の観点から、0.5〜5重量%とすることがより好ましい。
【0042】
本発明における凸版製造用感光性樹脂組成物(D)は、前記プレポリマー(A)と前記エチレン性不飽和モノマー(B)と前記光重合開始剤(C)を常温で、或いは加熱して均一に混合することにより得ることができる。その場合、ゴム硬度を最適化し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水に対する耐性を向上させるため、プレポリマー(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の重量比が30〜70/70〜30の範囲とし、また、感光性樹脂組成物(D)の酸価が50〜150mgKOH/gとすることが必要である。
【0043】
プレポリマー(A)とエチレン性不飽和モノマー(B)の重量比はプレポリマー(A)/エチレン性不飽和モノマー(B)=30〜70/70〜30であり、緻密な架橋構造を有する硬化物とすることが可能な凸版製造用感光性樹脂を提供することができる。プレポリマー(A)/エチレン性不飽和モノマー(B)=30/70よりも少ないと、画像形成の解像性の悪化を招いたり、光重合時に硬化収縮が起こり、製版中に版がカールしたり、凸部が均一な一定の厚さにならないといった問題が生じる。プレポリマー(A)/エチレン性不飽和モノマー(B)=70/30を超えると、エチレン性不飽和モノマー(B)との共重合性が悪くなるため重合速度が低下し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤に対する耐性が悪化したり、硬化物の強度が低下し、凸版とした場合、繰り返し印刷中に、版が欠けたりするといった問題が生じる。
【0044】
感光性樹脂組成物(D)の酸価を50〜150mgKOH/gとすると、極性の強い硬化物とすることが可能となり、強度が高く、芳香族系溶剤、及び水の両方に対して優れた耐性を有する凸版製造用感光性樹脂を提供することが可能となる。酸価が50mgKOH/gより少ないと、硬化物中の極性基の数が不足し、芳香族系溶剤に対する耐性を維持することが不可能となる。また、酸価が150mgKOH/gを超えると、硬化物の極性が強くなりすぎ、水に対する耐性が悪化し、また吸湿性が高いため、硬化物の強度の低下を招く問題が生じてしまう。
【0045】
また、感光性樹脂組成物(D)を光重合させたときの硬化物は、ゴム硬度がJISゴム硬度でショアA60〜90°とすると、印刷時の基板への負荷を低減することができ、薄膜印刷においては精度よく均一な膜厚での印刷が可能となる。ゴム硬度がショアA60°未満の場合は、僅かな印圧でもレリーフ変形を起こし、印刷物の画線が太り、繊細な画像を得ることができない。ゴム硬度がショアA90°を超えると、版が硬いために版胴に版を巻くことが困難であったり、インキののりが悪く、均一な膜厚での印刷が困難となる。
【0046】
更に、感光性樹脂組成物(D)を光硬化させたときの硬化物は、25℃のアニソール、イソプロピルアルコール及び水に24時間浸漬したときの硬化物の重量増加率が15%以下であると、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等の様々な溶剤からなる印刷インキを使用した繰り返しの印刷処理によっても、樹脂凸版の寸法精度の低下が少なく、精度の良い印刷物を得ることが可能となる。上記重量増加率は、低いほど好ましく、通常の繰り返し印刷の使用回数を考慮すると、10%以下であることがより好ましい。更に好ましくは、7%以下である。
【0047】
一般的に、アニソールは、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤と比較して、分子中にエーテル結合を有しているために、版材に対する溶解性が高い。そのため、アニソールに対して耐性を維持することが可能となれば、様々な芳香族系溶剤に対して耐性があるということができる。更に、極性の高いイソプロピルアルコール及び水に対して耐性を維持することが可能となれば、様々な芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水に対して耐性があるということができる。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物(D)の粘度は、25℃で2000〜25000mPa・sの範囲であることが好ましい。2000mPa・sより低いと原版製造時に有効画像領域以外のところまで液状樹脂がオーバーフローしてしまい作業性が悪くなるとともに、原版の版厚精度が低下する場合がある。25000mPa・sを超えると、使用前に加温等の前処理が必用となる場合がある。
【0049】
このようにして得られた凸版製造用感光性樹脂組成物(D)は、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水等を使用するインキに対して優れた耐性を有する凸版製造用感光性樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物(D)には、必要に応じて、熱重合禁止剤、他のウレタンアクリルオリゴマー、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂等を混合して使用できる。また、ガラス繊維、ガラスビーズ等の強化材充填剤、更には安定剤、可塑剤、離型剤、滑剤などの添加剤を添加して、所望の特性を付与することができる。
【0051】
熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、β−ナフトールなどが挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、通常プレポリマー及びエチレン性不飽和モノマーの総量に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<製造例1> [不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−1)の製造]
(不飽和ポリエステルポリオールの合成)
ポリエチレングリコール(日油株式会社製、平均分子量200、以下PEG200と略すことがある)5.74モル、アジピン酸(分子量146、以下、AAと略することがある)3.83モル、脂肪族不飽和ジカルボン酸としてフマル酸(分子量116、以下、FAと略することがある)0.43モル、p−メトキシフェノール(以下、MEHQと略することがある)0.01モル、及び触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(以下、TBTと略することがある)0.005モルを反応容器に仕込み、窒素雰囲気中で常圧、200℃で4時間反応させ、更に、20mmHg減圧下、200℃で酸価が1mgKOH/g以下となるまで脱水縮合反応を行うことにより、水酸基価95mgKOH/g、ポリエチレングリコール含有量65重量%、及びエチレン性不飽和結合濃度0.24mmol/g、水酸基価の不飽和ポリエステルポリオール(PES−1)を得た。
【0054】
(不飽和ポリウレタンプレポリマーの合成)
不飽和ポリエステルポリオール(PES−1)66.0重量部、及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略することがある)0.10重量部を反応容器に仕込み、そこにポリイソシアネートとして2,4−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略することがある)19.5重量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、60℃で3時間反応させ、プレポリマー前駆体を得た。更に、この反応物に、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略することがある)14.5重量部、及び触媒としてジブチルスズジラウレート(以下、DBSLと略することがある)0.04重量部を添加し、80℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、表1に示す不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−1)を得た。
【0055】
<製造例2〜7> 〔不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−2)〜(A−7)の製造〕
表1に示した組成で、製造例1と同様の操作を行うことによりポリエステルポリオール(PES−1)〜(PES−7)、不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−2)〜(A−7)を得た。
【0056】
【表1】

【0057】
表1中の略号の説明
DEGはジエチレングリコール(分子量106)、PEG200はポリエチレングリコール(日油株式会社製、平均分子量200)、PEG400はポリエチレングリコール(日油株式会社製、平均分子量400)、BGは1,3−ブタンジオール(分子量90)、MPDは3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分子量118)、FAはフマル酸(分子量116)、MAはマレイン酸(分子量116)、AAはアジピン酸(分子量146)、TDIは2,4−トリレンジイソシアネート、HDIは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、PEGMはポリエチレングリコール(平均分子量350)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名ブレンマーPE−350、水酸基価128mgKOH/g)であることを示す。
【0058】
<実施例1>
製造例1で製造した不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−1)60.0重量部、前記一般式(1)に示すエチレン性不飽和モノマーとして2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(新中村化学株式会社製、商品名NKエステルA−SA、酸価257mgKOH/g、以下ASAと略すことがある)30.0重量部、前記一般式(1)に示すエチレン性不飽和モノマー以外のモノマー成分としてエチレンオキサイト変性(4モル付加)ビスフェノールAジアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名ライトアクリレートBP−4EA、以下、BPDAと略すことがある)10.0重量部、光重合開始剤に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、HCHPと略すことがある)2.0重量部、及び熱重合禁止剤としてBHT0.2重量部をそれぞれ容器に仕込み、約60℃で1時間攪拌することにより、酸価77mgKOH/gの均一透明な感光性樹脂組成物(D−1)を得た。
【0059】
<実施例2〜7>
表2に示した組成に変更する以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物(D−2)〜(D−7)を得た。
【0060】
<比較例1>
不飽和ポリウレタンプレポリマーに不飽和ポリエステルポリオール(PES−4)50.0重量部とし、ASA 40.0重量部、BPDA 10.0重量部、HCHP 2.0重量部、BHT 0.2重量部をそれぞれ容器に仕込み、約60℃で1時間攪拌することにより、酸価103mgKOH/gの均一透明な感光性樹脂組成物(D−8)を得た。
【0061】
<比較例2〜8>
表2に示した組成に変更する以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物(D−9)〜(D−15)を得た。
【0062】
<比較例9>
特許文献3(特開平6−43639号公報)の実施例1に準じて合成し、均一透明な液状樹脂を得た。これを感光性樹脂組成物(D−16)とする。
【0063】
前記のようにして得られた感光性樹脂組成物(D−1)〜(D−16)について以下の凸版製造用感光性樹脂の基本物性評価を行なった。結果を表3に示す。
【0064】
(凸版製造用感光性樹脂の基本物性評価)
<樹脂の酸価、水酸基価>
JIS K0070の規定による。
【0065】
<硬化物のゴム硬度の測定>
水平に設置したガラス板上に厚さ100μmのPETフィルムを密着させ、更に、その上に得られた感光性樹脂組成物を40mm×40mm、厚さ3mmとなるように塗布し、更にその上に厚さ25μmのPETフィルムを重ね、中心波長360nmのケミカルランプ(照度約3mW/cm)を用いて、10分間露光することにより硬化させた。その後、PETフィルムを取り除いて作成した硬化物を2枚重ねにして、JIS K6253「ゴムの硬さ試験方法」により測定した。
【0066】
<硬化物のアニソール、イソプロピルアルコール、及び水に対する重量増加率の測定>
感光性樹脂組成物を使用し、前記「硬化物のゴム硬度の測定」と同様にして硬化物を作成し、アニソール、イソプロピルアルコール、及び水にそれぞれ、25℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴を拭き取り、重量を測定することより、浸漬前後における重量変化からのアニソール、イソプロピルアルコール、及び水の重量増加率を求めた。
【0067】
【表2】

【0068】
表2中の略号の説明
ASAは2−アクリロイルオキシエチルコハク酸(新中村化学株式会社製、商品名NKエステルA−SA、酸価257mgKOH/g)、MPAは2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸(三菱レイヨン株式会社製、商品名アクリエステルPA、酸価200mgKOH/g)、MAAはメタクリル酸(酸価651mgKOH/g)、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、BPDAはエチレンオキサイト変性(4モル付加物)ビスフェノールAジアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名ライトアクリレートBP−4EA)、PEGDはポリエチレングリコール(平均分子量400)ジメタクリレート(新中村化学株式会社製、商品名NKエステル9EG)を示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜7において得られた感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物は、ゴム硬度がショアA90°以下と柔軟で、アニソール、イソプロピルアルコール、及び水の重量増加率も10%以下と低く、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水に優れた耐性を有する。
【0071】
一方、プレポリマーを不飽和ポリエステルポリオールとした比較例1は、ゴム硬度はショアA78°と柔らかいが、アニソールの重量増加率は35.0%と高く、芳香族系溶剤に対する耐性は不十分であった。
【0072】
エチレン性不飽和モノマーに、前記一般式(1)で示される分子中にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(b1)を使用していない比較例2は、ゴム硬度がショアA95°と高く、アニソールの重量増加率も20.0%と高く、芳香族系溶剤に対する耐性は不十分であった。更に、カルボキシル基を分子中に有するモノマーの代表例としてメタクリル酸を使用した比較例3は、アニソールの重量増加率は5.0%と低かったが、ゴム硬度がショアA98°以上と非常に高く凸版としては使用できないものであった。
【0073】
比較例4は、樹脂酸価が182mgOH/gと高いため、ゴム硬度がショアA98°と高かった。更に、比較例5は、プレポリマーの使用量が多いため、アニソールの重量増加率も25.0%と高く芳香族系溶剤に対する耐性が低いものであった。また、プレポリマーの使用量が少ない比較例6は、アニソールの重量増加率は3.0%と低いものであったが、ゴム硬度がショアA95°と高かった。
【0074】
不飽和ポリエステルポリオールを飽和ポリエステルポリオールとした比較例7は、ゴム硬度はショアA80°と適当であったが、アニソールの重量増加率が21.3%と高く、ポリエチレングリコールを使用していない不飽和ポリエステルポリオールとした比較例8においても、アニソールの重量増加率が22.0%と高く、芳香族系溶剤に対する耐性は不十分なものであった。
【0075】
比較例9は、ゴム硬度はショアA98°と硬く、アニソールの重量増加率も18.0%と高く、芳香族系溶剤に対する耐性は不十分であった。
【0076】
本発明によれば、凸版印刷に必要な適度なゴム硬度を有し、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、及び水を使用するインキに対して耐性を有する凸版印刷版を製造するために好適な凸版製造用感光性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマー(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、光重合開始剤(C)を含有成分とする凸版製造用感光性樹脂組成物(D)において、下記[1]〜[6]を全て満たすことを特徴とする凸版製造用感光性樹脂組成物。
[1]前記プレポリマー(A)が、多価アルコールと多価カルボン酸を縮重合させて得られる不飽和ポリエステルポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)とを少なくとも反応させて得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーであること。
[2]前記不飽和ポリエステルポリオール(a1)が、多価アルコール成分として少なくともポリエチレングリコールと多価カルボン酸成分として少なくとも脂肪族不飽和ジカルボン酸を必須成分とする不飽和ポリエステルポリオールであること。
[3]前記エチレン性不飽和モノマー(B)が、下記一般式(1)で示されるモノマー(b1)を少なくとも含有すること。
【化1】

(式中、RはH又はCH、Rは炭素数2〜5のアルキレン基、nは1〜4、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、下記一般式(2)、下記一般式(3)を示す。)
【化2】

【化3】

[4]前記プレポリマー(A)と前記エチレン性不飽和モノマー(B)の重量比が30〜70/70〜30の範囲にあること。
[5]前記凸版製造用感光性樹脂組成物(D)の酸価が50〜150mgKOH/gの範囲であること。
[6]前記凸版製造用感光性樹脂組成物(D)を光重合させた硬化物が、
(1)JISゴム硬度でショアA60〜90°であり、且つ、
(2)25℃のアニソール、イソプロピルアルコール及び水に24時間浸漬したときの重量増加率が15%以下であること。
【請求項2】
不飽和ポリエステルポリオール(a1)が、縮重合に使用した多価アルコール成分と多価カルボン酸成分の合計重量に対し、ポリエチレングリコールの使用量が40〜70重量%の範囲にあり、且つ、エチレン性不飽和結合濃度が0.5〜3.0mmol/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の凸版製造用感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−164661(P2010−164661A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5250(P2009−5250)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】