説明

凸状マーク部材とその製造法

【課題】
凸状マーク部材として、被着体の外観や伸縮に追随でき、全体がソフトな感触であるので柔軟な被着体に取り付けた際に違和感が少ないものを提供する。
【解決手段】
ポリウレタンまたはこれと同等の伸縮性を有する素材である可撓性の表層シートと、表層シートの下側で該表層シートに接着した補強用の繊維生地と、繊維生地の下側に接着した該表層シートと同じ平面形状である可撓性の弾性芯材とからなり、前記表層シート、繊維生地および弾性芯材は、少なくともマーク周辺において相互に密着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体がソフトな感触であるので柔軟な被着体に取り付けた際に違和感が少ない凸状マーク部材およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類、カバン類、スポーツ用品類には、装飾効果、安全性、付加価値などを高めるために本体素材と異なるシート状のマーク部材を貼着することがあり、該マーク部材としてユニホームや帽子について野球チームのネーム、肩ワッペン、背番号などが例示できる。従来のマーク部材は、主たる目的が装飾効果であり、例えば、多色プリントされた比較的厚手のフェルト片、織物片、編物片、樹脂シートを使用する。これらの部材は、加工方法や素材が限定されて単なるシート状のものが多く、意匠の自由度が低くてデザイン性の高い表現は困難であった。
【0003】
文字やマークを立体成形するために、実用新案登録第3079054号では、樹脂製の反射ステッカーについて、軟質ビニルの表面に発泡ビニルを重ね、さらに微細なガラスビーズをコーティングした反射フィルムを用い、これを凸状または凹状の金型に入れ、この表面側より加圧状態で高周波を掛けて全体を圧着させる。立体マーク部材の他の例として特開2010−222716号が存在し、表面層と裏面層とを貼り合わせ、該表面層に濃色の模様を含み、少なくとも一部分を切り抜くことで立体感を付与する。また、立体的なワッペンは、実用新案登録第3152523号において開示され、表面の装飾布は、内部シートの形状の外縁より大きい外周を有し、該装飾布の上から縫製によって生地と一体化させ、該装飾布の周囲を刺繍または縁かがり糸で縁取りする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3079054号公報
【特許文献2】特開2010−222716号公報
【特許文献3】実用新案登録第3152523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実用新案登録第3079054号で開示の反射ステッカーは、軟質ビニルや発泡ビニルなどの樹脂が衣類の素材に比べて硬く、衣類に縫製することは実際上困難であり、仮に貼着しても着用者に強い違和感が生じてしまう。特開2010−222716号のようにマークに切り抜き部分が存在すると、使用時において、この切り抜き個所から表面層が剥離しやすく、裏面層が裏層を有する光沢織物であるので製造コストが高くなる。また、実用新案登録第3152523号で用いる装飾布は、織物や編物の裏面に樹脂フィルムをラミネートするため、被着体つまり生地の素材によっては縫製時に歪みが生じたり、帽子やTシャツのような肌に直接触れるような製品では、周囲の刺繍または縁かがりが肌と接触し、皮膚障害を発症する懸念がある。
【0006】
本発明は、従来の立体マークに関する前記の問題を改善するために提案されたものであり、全体がソフトな感触で立体感がありしかも耐久性を有する凸状マーク部材を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、衣類のような柔軟な被着体に加えて、製品保護材や衝撃吸収材として他の部材にも適用可能である凸状マーク部材を提供することである。本発明の別の目的は、デザイン性などに優れた表層シートと弾性芯材との間にポリエステル天竺などの繊維生地を挟むことにより、立体成形時の安定性ならびにマーク部材自体の強度を増大させる凸状マーク部材の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る凸状マーク部材は、柔軟な被着体の外観や伸縮に追随できる柔軟なマーク部材である。この凸状マーク部材は、ポリウレタンまたはこれと同等の伸縮性を有する素材である可撓性の表層シートと、表層シートの下側で該表層シートに接着した補強用の繊維生地と、繊維生地の下側に接着し且つ該表層シートと同じ平面形状である可撓性の弾性芯材とからなる。前記表層シート、繊維生地および弾性芯材は、少なくともマーク周辺において相互に密着し、且つ前記表層シートはその横断中央部において少なくとも部分的に上方へ突出している。
【0008】
本発明のマーク部材において、可撓性の表層シートは、熱転写シート、再帰反射生地または昇華転写生地であり、該表層シートは、その横断面において突出中央部から周辺部へなだらかに下降すると好ましい。また、可撓性の弾性芯材は、硬質や軟質の発泡ポリウレタン、ニードルフェルト、縮充フェルト、不織布、発泡ポリエチレンまたは発泡EVAであり、密着時と突出時の高さの差が1mm以上であると好ましい。
【0009】
本発明に係るマーク部材の製造法は、表層シートの裏側に感熱接着層を設けたマーク素材と、厚さ3〜20mmの弾性芯材と、熱融着性フィルムとをマーク平面形状に合わせて概略裁断する。この製造法では、ついでマーク素材、弾性芯材および熱融着性フィルムの全3層体を平板プレスで仮接着し、仮接着の全3層体を予熱し、成形プレスにおいて全3層体を所定の金型に載せて全体を立体成形し、さらにマーク平面形状に合わせて抜き加工を施す。
【0010】
本発明に係るマーク部材の製造法において、マーク素材は、熱転写シートの接着層の下側に繊維生地を重ねて全体を熱圧着し、さらに繊維生地の下側にホットメルト樹脂を塗布して乾燥することで感熱接着層を形成すると好ましい。また、表層シートが熱転写シートである場合、熱転写シート表面のキャリアフィルムを仮接着の後に剥離する。さらに、被着体に接着するために、マーク部材の下側に熱融着性フィルムの熱圧着によって感熱接着層を形成すると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る凸状マーク部材は、全体がソフトな感触であるうえに豊かな立体感があり、表層シートを適宜に選択することでデザイン性およびクッション性を兼備することができる。本発明の凸状マーク部材は、デザイン性とクッション性の兼備により、衣類のような柔軟な被着体のほかに、スポーツ用具や手動工具における製品保護材または衝撃吸収材などとしても適用可能である。また、本発明の凸状マーク部材では、表層シート、繊維生地および弾性芯材のいずれもがマーク周辺において相互に密着するので、使用中に剥離することが少なく、耐洗濯性や耐磨耗性などに関して優れている。
【0012】
本発明の凸状マーク部材は、縫製によって被着体へ取り付けても、感熱や感圧の接着層の形成による熱圧着または単純圧着しても、表面溶融、感熱接着剤の塗布、熱融着性シートの介在などによって衣類以外の素材にも取り付けることができる。このため、本発明の凸状マーク部材は、装飾マーキング用途以外にも、そのクッション性を利用して製品保護や衝撃吸収として適用することもでき、広い用途での商品展開が可能である。
【0013】
本発明に係るマーク部材の製造法は、可撓性の表層シートを含むマーク素材、比較的厚い弾性芯材および熱融着性フィルムの全3層体を仮接着した後に予熱し、ついで成形プレスにおいて全3層体を立体成形することにより、厚い弾性芯材を内在させても表層シートが立体成形時に亀裂することがなく、表層シートを含むマーク部材の形状安定性を高める。また、本発明の製造法では、可撓性の表層シートと弾性芯材との間にポリエステル天竺などの繊維生地を挟むことにより、可撓性の表層シートの引裂き耐性を高め、マーク部材の機械的強度を増大させることで長期使用を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る凸状マーク部材を例示する概略断面図である。
【図2】本発明で用いる表層シートの一例である熱転写シートを示す概略断面図である。
【図3】表層シートの他の例である再帰反射シートを示す概略断面図である。
【図4】表層シートの裏側に感熱接着層を設けたマーク素材の一例を示す概略断面図である。
【図5】概略裁断したマーク素材、弾性芯材5および熱融着性フィルム26を例示する平面図である。
【図6】仮接着時のプレス状態を示す概略断面図である。
【図7】立体成形時のプレス状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る凸状マーク部材1は、図1に例示するように、通常、可撓性の表層シート2と、該表層シートに接着した補強用の繊維生地3と、該繊維生地の下側に接着した可撓性の弾性芯材5とで構成する。図1に示すマーク部材1は、下面に形成した感熱接着層6を介して衣類などの被着体7に取り付けられているけれども、接着層6を積層する代わりに、感圧接着層による単純圧着、弾性芯材5の表面溶融、感熱接着剤の塗布、熱融着性シートの介在などによって接着することも可能である。
【0016】
表層シート2は、ポリウレタンなどの素材を用いて可撓性を有することが望ましい。表層シート2には、所望に応じて、表面に適当なプリントを施したり、表面の一部または全体に微細な凹凸模様や再帰反射模様などを形成して意匠性を高めてもよい。表層シート2は、その下面に接着層22(図2参照)を有するのが一般的な態様であり、このような接着層が表層シートに存在しない場合には、熱融着性フィルムの介在または接着剤の塗布などによって繊維生地3と密に接着できることを要する。
【0017】
表層シート2は、一般に可撓性の樹脂シートであり、例えば、図2に示すような熱転写シート8(ジャパンポリマーク製)、再帰反射シート10(図3参照)、カラーシート、蓄光シート、蛍光シート、低摩擦シート、昇華転写生地(ジャパンポリマーク製)などが列挙できる。表層シート2として、ガラス球露出タイプまたは透明な表面樹脂層を積層した市販の再帰反射シート(例えば、ユニチカスパークライト製)、再帰反射クロスまたは蛍光反射クロスを使用してもよく、その裏面がクロスであれば繊維生地3の代用になる。
【0018】
表層シート2が熱転写シート8や再帰反射シート10であると、該熱転写シートは図2に例示するように多層構造であり、例えば、保護層(図示しない)、図柄層16、バックアップ層18、中間層20、接着層22からなり、これらの層はそれぞれスクリーン印刷によって形成すればよい。シート8,10の表面には、通常、キャリアフィルム14またはベースフィルム42が存在し、該フィルムは一般にポリエステルフィルム製などである。この種のフィルムの表面には、平滑な離型層が形成されており、一般にマット仕上げまたはグロス仕上げであって仮接着後に剥離することが望ましい。
【0019】
補強用の繊維生地3は、表層シート2と同じ平面形状を有し、可撓性の表層シート2の引裂き耐性を高めて立体成形時に裂けることを防止し、且つマーク部材1の機械的強度を増大させ、被着体7への取付け後に洗濯耐性を付与する。この繊維生地は、表層シート2が高伸縮性であるうえに特定の予熱温度および立体成形時の加圧・加熱を設定した場合には省略することも可能である。
【0020】
繊維生地3は、一般に、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維などの比較的厚い織編物である。好ましくは、繊維生地3は、比較的伸縮性が高いポリエステル天竺(例えば、ファインモールド販売品)またはこれと同等品、スムースニット、2WAYトリコットなどである。
【0021】
繊維生地3は、仮接着前に、接着層22を介して熱転写シート8などの表層シート2と熱圧着すればよい。この熱圧着時には、熱転写シート8のキャリアフィルム14は、基本的には表面保護のために仮接着後まで剥がさないで残しておく。この熱圧着は、トランスジャンボなどの熱転写機を用いて、温度130〜160℃、圧力0.5〜1kg/cmで10秒〜20秒間加熱・加圧すると好ましい。繊維生地3は、表層シート2に関して立体成形時の裂けを防止し、凸状マーク部材1の強度を向上させるために介在させる。
【0022】
マーク素材12は、図4に示すように、繊維素材3または表層シート2の裏側に感熱接着層24を設けた多層構造材料を意味し、凸状マーク部材1の製造時の中間材料である。マーク素材12には、通常、表層シート2と感熱接着層24との間に繊維素材3を介在させる。この繊維素材は、表層シート2に繊維材があらかじめインサートされていれば、これを代用することで省略できる。
【0023】
マーク素材12には、感熱接着層を有する市販の再帰反射生地や装飾生地などをそのまま使用してもよく、弾性芯材5が比較的薄い場合には、表層シート2の下側の繊維素材3を省略できることもある。マーク素材12の下面に積層する感熱接着層24は、仮接着時に発泡ウレタンなどの弾性芯材5と接合させるために、表層シート2と繊維素材3の貼り付け後に、例えば、熱融着性樹脂を繊維素材3の下面にスクリーン印刷し、この際にスクリーン版のメッシュは50〜100メッシュ程度である。感熱接着層24は、熱融着性フィルムの介在または接着剤の散布や塗布などによって積層することも可能である。
【0024】
可撓性の弾性芯材5は、厚さが3〜20mmであり、表層シート2と同じ平面形状を有する。弾性芯材5は、硬質や軟質の発泡ポリウレタン、ニードルフェルト、縮充フェルト、不織布、発泡ポリエチレンまたは発泡EVAであり、用途に応じて種類および厚みを選択する。弾性芯材5が発泡ポリウレタンである場合には、その種類はGLタイプ(ハードタイプでローコスト)、USWタイプ(ソフトタイプ)などであり、その厚さは3mm、5mm、7mmなどであり、用途によって、材料の種類と厚みは変更可能である。
【0025】
凸状マーク部材1を製造するために、図4に示すマーク素材12は、弾性芯材5および熱融着性フィルム26とともに、まずマーク平面形状A(図5参照)に合わせて概略裁断し、三者ともにほぼ同じ平面形状に定める。この概略裁断では、マーク平面形状を含む矩形状や円形状などの単純な平面形状にすればよい。この際に、熱融着性フィルム26は、通常、その融点が立体成形時の加熱温度よりも低く、一般に剥離紙と一体になっている。熱融着性フィルム26を使用しない場合には、凸状マーク部材1の裏面には感熱接着層6が存在しないことになる。底面接着層が無い凸状マーク部材は、ミシン縫製によって被着体7に縫着したり、抜き成形後に、熱融着性フィルムの介在または接着剤の散布や塗布などによって被着体7に接着すればよい。
【0026】
マーク素材12および弾性芯材5は、図6に示すように、平プレス金型28によって仮接着する。平プレス金型28において、仮接着時における押し型と受け台との圧縮間隙は弾性芯材5の厚みにほぼ相当し、その間隔は3〜20mmであって、仮接着時に弾性芯材5が強く圧縮変形されることを回避する。仮接着のプレス条件は、表層シート2の素材に応じて、圧力2〜6kg/cm、温度100℃〜150℃であり、プレス時間は10〜20秒間であると好ましい。
【0027】
仮接着時までに、表層シート2の表面にキャリアフィルム14やベースフィルムがマーク素材12に付着しているならば、該フィルムは仮接着後に剥離すると、表層シート2の表面を保護できる。キャリアフィルム14またはベースフィルムは、表層シート2の素材に応じて、プレス熱が冷めて常温になってから剥離すればよい。保護フィルムが存在しない表層シート2では、その表面を保護するために、仮接着前にキャリアフィルムを新たに貼り付けることも可能である。
【0028】
平坦な仮接着マーク素材30は、立体成形の前に、表層シートの裂け防止のために加熱炉(図示しない)において予熱することが望ましい。この予熱温度と時間は、表層シート2の素材に応じて調整し、一般に弾性芯材5が厚いほど予熱温度を高めればよく、一般に予熱温度は50〜80℃、予熱時間は10〜20秒であると好ましい。
【0029】
予熱した仮接着マーク素材30は、図7に示すように、プレス32の凹状金型34に逆向きに載せ、加熱・加圧プレスによって立体成形すると、凸状マーク素材36を得る。凹状金型34は、最大深さが8mm以下であり、その全周辺は、通常、成形品の全周辺よりも内側に位置させる。立体成形のプレス条件は、温度150℃〜250℃、圧力2〜6kg/cmで30〜120秒間であると好ましい。
【0030】
立体成形した凸状マーク部材1には、所望に応じて、その下面に感熱接着層6を積層する。この際に、マーク平面形状に合わせて裁断した熱融着性フィルム26は、立体成形時の200℃以上の温度で溶融するので、立体成形後に、その成形温度よりも低い温度で凸状マーク素材36と一体化させる。この一体化のプレス条件は、温度90℃〜130℃、圧力2〜6kg/cmで5秒〜15秒間であると好ましい。
【0031】
得た凸状マーク部材1は、図5のAのような飾り文字、図形、商標などに対応する平面形状を有し、表層シート2が部分的に上方へ突き出た突出部40を有し、該突出中央部から周辺の密着部38へなだらかに下降するのが一般的な形態である。凸状マーク部材1において、表層シート2、繊維生地3および弾性芯材5は、少なくともマーク全周辺において相互密着部38(図1)を有し、該密着部は、例えば幅1〜5mmで厚みが0.3〜1.0mmであると好ましい。凸状マーク部材1は、例えば、表層シート2の中央部40が帯状に突出し、マーク全周辺において相互密着部38を有することによって美観と耐久性を高めている。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図2に示す熱転写シート8を製造するために、キャリアフィルム14として、厚さ100μmであるマットまたはグロス仕上げのポリエステルフィルムの全面に300メッシュのスクリーン版でセルロース系樹脂などの離型剤を1〜5μm印刷して乾燥する。次に、保護層(図示しない)および図柄層16をキャリアフィルム14の上に設ける。例えば、図柄層16として、黒インクはポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、イソシアネート樹脂およびカーボンブラック顔料からなる。この2液架橋型ペーストを225メッシュのスクリーン版によって印刷し、厚さ4〜8μmの黒色図柄層16を形成する。
【0033】
図柄層16の全面に、白色バックアップ層18および中間層20をスクリーン印刷によって積層し、これらの層18,20も、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、イソシアネート樹脂などを含む。この2液架橋型ペーストを70メッシュのスクリーン版によって印刷・乾燥し、厚さ15〜20μmのバックアップ層18および中間層20を形成する。接着層22は、図柄層16の全面より0.2mm拡大してスクリーン印刷によって形成する。接着層22は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂からなり、100〜70メッシュのスクリーン版を用いて印刷・乾燥すると、接着層22の厚さは全体で60μmである。
【0034】
次に、マーク素材12(図4)を製造するために、表層シート2である熱転写シート8は、補強用の繊維生地3であるポリエステル天竺(品番:CR7500、ファインモールド販売品)と熱圧着する。この熱圧着時には、熱転写シート8のキャリアフィルム14は、表面保護のために転写後にも剥がさないで残しておく。この熱圧着は、熱転写機であるトランスジャンボ(商品名:JP−5040A)を用いて、温度130〜160℃、圧力0.5〜1kg/cmで10秒〜20秒間行う。熱転写シート8と繊維生地3の貼り付け加工後に、ホットメルト樹脂を補強用生地の表面にスクリーンメッシュ70メッシュを用いてスクリーン印刷して、感熱接着層24を形成する。
【0035】
マーク素材12は、弾性芯材5および熱融着性フィルム26とともに、図5において一点鎖線で示す所定のマーク平面形状Aに合わせて同じ矩形状に概略裁断する。弾性芯材5は、厚さ7mmのGLタイプの発泡ポリウレタンである。離型紙付きの熱融着性フィルム26は、ポリエステルおよびポリウレタンからなり、立体成形の後に貼り合わせる。
【0036】
マーク素材12および弾性芯材5は、図6に示すように、平プレス金型28において仮接着する。平プレス金型28において、仮接着時の圧縮間隙は6mmであり、この間隙は弾性芯材5の厚みとほぼ対応する。仮接着のプレス条件は、温度100℃〜150℃、圧力6kg/cmで10〜20秒間プレスする。得た仮接着マーク素材30は、プレス熱が冷めて常温になってから、キャリアフィルム14を剥がす。
【0037】
平坦な仮接着マーク素材30は、立体成形の前に、表層シートの裂け防止のために加熱炉(図示しない)において予熱する。この予熱温度は50〜80℃、予熱時間は10秒である。
【0038】
予熱した仮接着マーク素材30は、図7に示すように、プレス32の凹状金型34に逆向きに載せ、加熱加圧プレスによって立体成形すると、凸状マーク素材36を得る。このプレス条件は、温度150℃〜250℃、圧力6kg/cmで30〜120秒間である。
【0039】
さらに、凸状マーク素材36は、再び凹状金型34内に載せて馴染ませ、その上に前記の離型紙付きの熱融着性接着フィルム26を重ねてプレスで一体化させる。このプレス条件は、温度90℃〜130℃、圧力6kg/cmで5秒〜15秒間である。この結果、凸状マーク素材36の下面には離型紙付きの感熱接着層6(図1)が積層され、最後にマーク平面形状に合わせた抜き型(図示しない)によって抜き加工を行って凸状マーク部材1(図1)が完成する。
【0040】
得た凸状マーク部材1は、図1に示すように、その下面に感熱接着層6を有する。凸状マーク部材1において、表層シート2、繊維生地3および弾性芯材5は、マーク全周辺において2mm幅の相互密着部38を有し、該密着部の厚みは0.5mmである。また、表層シート2は、その横断面中央部において約3mm上方へ突き出た突出部40を有し、該突出中央部から周辺の密着部38へなだらかに下降する。
【0041】
凸状マーク部材1は、離型紙を剥がしてから、熱転写機やアイロンなどを用いて、感熱接着層6によって被着体に熱圧着する。凸状マーク部材1は、全体がソフトな感触であるうえに豊かな立体感があり、デザイン性およびクッション性を兼備する。
【実施例2】
【0042】
実施例1で成形した凸状マーク素材36は、そのままマーク平面形状に合わせた抜き型(図示しない)によって抜き加工を行うと、接着層を有しない凸状マーク部材を製造できる。この凸状マーク部材は、ミシン縫製によって衣類に縫着することができる。
また、フレームラミネート加工法として、この凸状マーク部材において、裏側の弾性芯材5である発泡ポリウレタンの表皮0.5mmをバーナーで炙って溶かし、そのまま被着体である織編物生地に熱圧着してもよい。このフレームラミネート加工法は低コストであり、融着用樹脂などを使用しないので、マーク部材がごわつかず、樹脂の染み出しなどが発生しないという利点がある。
【実施例3】
【0043】
実施例2で製造した接着層を有しない凸状マーク部材は、接着樹脂ラミネート加工法によって被着体に熱圧着してもよい。接着樹脂ラミネート加工法では、この凸状マーク部材を裏返し、弾性芯材5の表面に接着樹脂を散布または塗布してから、加熱・加圧によって被着体に接着する。接着樹脂ラミネート加工法は、発泡ウレタン中で熱に対する反応が鈍いものについて、実施例2のフレームラミネート加工法が実施できない場合に選択する。例えば、連続気泡の発泡ウレタンを接着樹脂ラミネート加工法によって被着体に接着すると、凸状マーク部材の通気性を保持することができる。
【実施例4】
【0044】
実施例2で製造した接着層を有しない凸状マーク部材は、スパンファブラミネート加工法によって被着体に熱圧着してもよい。スパンファブラミネート加工法は、弾性芯材5が不織布または発泡EVAである場合に適用する。スパンファブラミネート加工法では、目付12g/m±10%のクモの巣状の熱融着性不織布を使用し、被着体である織編物生地に接着する際に、この薄い不織布を間に挟み込んで加熱・加圧し、該不織布を溶かして貼り合わせる。スパンファブラミネート加工法は、全体が軽量であり、通気性を保持できる。
【実施例5】
【0045】
図3は、表層シートが再帰反射シート10である場合を示す。再帰反射シート10を製造するために、ベースフィルム42の全面に微小透明球を仮接着した市販のビーズシート(商品名:スパークライトTR)を用いる。このシートにおいて、ベースフィルム42は厚さ100μmのポリエステルフィルムであり、仮接着層はシート全面に塗布して乾燥した厚さ20μmのセルロース系樹脂からなり、該仮接着層によって粒径30〜60μmのガラスビーズである透明球列44を密に接着している。
【0046】
1層または2層以上の残光発生層46は、シート42の透明球列44上の一部にスクリーン印刷で設ける。残光発生層46は、ポリウレタン樹脂20重量%、ポリエステル樹脂2重量%、イソシアネート樹脂3重量%、黄色系の蓄光顔料75重量%からなり、ペースト状の経時架橋性インクを100メッシュのスクリーン版によって所定の模様にスクリーン印刷してから、40℃で20分間乾燥する。さらに、通常の赤色顔料ついで青色顔料を添加したインクで2回スクリーン印刷を行い、全体で厚さ6〜30μmの所定の図柄層47を積層する。
【0047】
次に、接着層48は、残光発生層46の上に図柄模様の平面形状よりわずかに大きく、スクリーン印刷で形成する。接着層48は、ポリウレタン樹脂40重量%、ポリアミド樹脂60重量%からなり、ペースト状の熱可塑性インクを70メッシュのスクリーン版を用いてスクリーン印刷する。40℃で20分間乾燥すると、接着層48の厚さは60〜100μmである。
【0048】
得た再帰反射シート10は、補強用の繊維生地3であるポリエステル天竺(品番:CR7500)と熱圧着する。この熱圧着は、熱転写機を用いて行われる。再帰反射シート10と繊維生地3の貼り付け加工後に、ホットメルト樹脂を補強用生地の表面にスクリーンメッシュ70メッシュを用いてスクリーン印刷して、感熱接着層24を形成するとマーク素材を得る。
【0049】
再帰反射シート10のマーク素材は、弾性芯材5および熱融着性フィルム26とともに、マーク平面形状に合わせて矩形状に概略裁断する。弾性芯材5は、厚さ7mmのGLタイプの発泡ポリウレタンである。離型紙付きの熱融着性フィルム26は、ポリエステルおよびポリウレタンからなる。
【0050】
このマーク素材および弾性芯材5は、平プレス金型28によって仮接着する。平プレス金型28において、仮接着時の圧縮間隙は6mmであり、この間隔は弾性芯材5の厚みとほぼ対応する。仮接着のプレス条件は、温度100℃〜150℃、圧力6kg/cmで10〜20秒間プレスする。
【0051】
以下、実施例1と同様に処理して再帰反射凸状マーク部材を製造する。この凸状マーク部材は、離型紙を剥がしてから、熱転写機などを用いて、感熱接着層6によって被着体に熱圧着する。この凸状マーク部材は、蓄光顔料を含む残光発生層46の全面を透明球列44で覆っている図柄になる。この凸状マーク部材は、自動車用ライトが照射されると、凸状の表面によって広範囲に再帰反射して遠くからでも容易に視認でき、しかも照射直後も優れた蓄光性によって運転者が見落とすことも減少する。
【符号の説明】
【0052】
1 凸状マーク部材
2 表層シート
3 補強用の繊維生地
5 弾性芯材
6 感熱接着層
7 被着体
8 熱転写シート
10 再帰反射シート
12 マーク素材
14 キャリアフィルム
22 接着層
24 感熱接着層
26 熱融着性フィルム
30 仮接着マーク素材
36 凸状マーク素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体の外観や伸縮に追随できる柔軟なマーク部材であって、ポリウレタンまたはこれと同等の伸縮性を有する素材である可撓性の表層シートと、表層シートの下側で該表層シートに接着した補強用の繊維生地と、繊維生地の下側に接着した該表層シートと同じ平面形状である可撓性の弾性芯材とからなり、前記表層シート、繊維生地および弾性芯材は、少なくともマーク周辺において相互に密着し、且つ前記表層シートはその横断中央部において少なくとも部分的に上方へ突出している凸状マーク部材。
【請求項2】
可撓性の表層シートは、熱転写シート、再帰反射生地または昇華転写生地であり、該表層シートは、その横断面において突出中央部から周辺部へなだらかに下降する請求項1記載のマーク部材。
【請求項3】
可撓性の弾性芯材は、硬質や軟質の発泡ポリウレタン、ニードルフェルト、縮充フェルト、不織布、発泡ポリエチレンまたは発泡EVAであり、密着時と突出時の高さの差が1mm以上である請求項1記載のマーク部材。
【請求項4】
表層シートの裏側に感熱接着層を設けたマーク素材と、厚さ3〜20mmの弾性芯材と、熱融着性フィルムとをマーク平面形状に合わせて概略裁断し、ついでマーク素材、弾性芯材および熱融着性フィルムの全3層体を平板プレスで仮接着し、仮接着の全3層体を予熱し、成形プレスにおいて全3層体を所定の金型に載せて全体を立体成形し、さらにマーク平面形状に合わせて抜き加工を施すマーク部材の製造法。
【請求項5】
マーク素材は、熱転写シートの接着層の下側に繊維生地を重ねて全体を熱圧着し、さらに繊維生地の下側にホットメルト樹脂を塗布して乾燥することで感熱接着層を形成する請求項4記載の製造法。
【請求項6】
表層シートが熱転写シートである場合、熱転写シート表面のキャリアフィルムを仮接着の後に剥離する請求項4記載の製造法。
【請求項7】
被着体に接着するために、マーク部材の下側に熱融着性フィルムの熱圧着によって感熱接着層を形成する請求項4記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237074(P2012−237074A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105861(P2011−105861)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(391002513)ジャパンポリマーク株式会社 (6)
【出願人】(508084261)株式会社ファインモールド (4)
【Fターム(参考)】