説明

凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法

【課題】凹凸パターンの変形および転写不良を招くことなく、基材の上に凹凸パターンを高精度で形成し得る凹凸パターン形成方法を提供する。
【解決手段】凹凸パターン25が形成されたスタンパー2を中間体10(基材)上の樹脂層3に押し付けることによって凹凸パターン25を樹脂層3に転写することで中間体10の上に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法であって、スタンパー2の押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が低い第1の樹脂材料と、押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が高い第2の樹脂材料とを混合した混合樹脂材料を中間体10の上に塗布することによって樹脂層3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成した樹脂層にスタンパーを押し付けて基材の上に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法、およびその凹凸パターン形成方法に従って形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の凹凸パターン形成方法として、凹凸パターンが形成されたスタンパー(A metal-based stamper )を基材(glass substrate )上の樹脂層(resist layer)に押し付けてスタンパーの凹凸パターンを樹脂層に転写することで基材の上に凹凸パターンを形成するインプリント法が米国特許6814898号明細書に開示されている。この凹凸パターン形成方法では、まず、同明細書のFig.1Aに示すように、凹凸パターンを形成すべき基材の上に樹脂層を形成する。次いで、同明細書のFig.1Bに示すように、基材上の樹脂層にスタンパーを押し付けることによってスタンパーの凹凸パターンを樹脂層に転写する。この際に、この凹凸パターン形成方法では、基材および樹脂層の積層体、並びにスタンパーの双方を加熱処理することなく、室温の状態において樹脂層にスタンパーを押し付ける。続いて、同明細書のFig.1Cに示すように、樹脂層からスタンパーを剥離した後に、同明細書のFig.1Dに示すように、樹脂層に転写された凹凸パターンにおける凹部の底面に対してエッチング処理を実行することにより、凹部の底面において樹脂層から基材を露出させる。これにより、スタンパーにおける各凸部を押し込んだ部位に各凹部が形成されると共にスタンパーにおける各凹部の部位に各凸部が形成されて、基材の上(樹脂層)に凹凸パターンが形成される。
【特許文献1】米国特許6814898号明細書(第4−10欄、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の凹凸パターン形成方法には、以下の問題点がある。すなわち、従来の凹凸パターン形成方法では、積層体およびスタンパーに対する加熱処理および冷却処理を実行することなく樹脂層にスタンパーを押し付けている。しかし、この凹凸パターン形成方法に従い、例えば、スタンパーの押し付け時における樹脂層の温度(室温)よりもガラス転移点が低い樹脂材料で樹脂層を構成して凹凸パターンを形成した場合には、スタンパーの押し付け時にスタンパーの各凸部を樹脂層に対してスムーズに押し込むことができるものの、凹凸パターンの転写が完了して樹脂層からスタンパーを剥離した後に、樹脂層に転写された凹凸パターンが時間の経過に伴って徐々に変形するという問題が生じる。また、この凹凸パターン形成方法に従い、例えば、スタンパーの押し付け時における樹脂層の温度(室温)よりもガラス転移点が高い樹脂材料で樹脂層を構成して凹凸パターンを形成した場合には、スタンパーの剥離後における凹凸パターンの大きな変形を回避することができるものの、スタンパーの各凸部を樹脂層に対して押し込むのが困難となる結果、樹脂層に対して十分な深さの凹部(十分な高さの凸部)を形成することができないという問題が生じる(転写不良の発生)。このように、従来の凹凸パターン形成方法には、基材上に形成された凹凸パターンの変形、または、凹凸パターンの転写不良を招くことがあるという問題点が存在する。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、凹凸パターンの変形および転写不良を招くことなく、基材の上に凹凸パターンを高精度で形成し得る凹凸パターン形成方法と、全域に亘って凹凸パターンを高精度で形成し得る情報記録媒体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、スタンパー側凹凸パターンが形成されたスタンパーを基材上の樹脂層に押し付けることによって当該スタンパー側凹凸パターンを当該樹脂層に転写することで当該基材の上に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法であって、前記スタンパーの押し付け時における前記樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い第1の樹脂材料と、前記押し付け時における前記樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い第2の樹脂材料とを混合した混合樹脂材料を前記基材の上に塗布することによって前記樹脂層を形成する。なお、本発明における混合樹脂材料には、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料だけを混合した混合樹脂材料だけでなく、それ以外に、添加剤や他の樹脂材料等を含有させた各種の混合樹脂材料も含まれる。
【0006】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、上記の凹凸パターン形成方法に従って前記基材の上に形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、スタンパーの押し付け時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い第1の樹脂材料と、スタンパーの押し付け時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い第2の樹脂材料とを混合した混合樹脂材料を基材の上に塗布することによって樹脂層を形成することにより、樹脂層に対するスタンパーの押し付け時にスタンパー側凹凸パターンにおける各凸部を樹脂層に対してスムーズに十分に奥深くまで押し込むことができる。したがって、各凸部の押し込み不足に起因する凹凸パターンの転写不良を回避して基材の上に高精度で凹凸パターンを形成することができる。また、樹脂層からスタンパーを剥離した後に、凹凸パターンが大きく変形する事態を回避して、その凹凸形状を高精度な状態で維持することができる。
【0008】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法によれば、上記の凹凸パターン形成方法に従って基材の上に形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造することにより、例えば、形成した凹凸パターンをマスクパターンとして、または、形成した凹凸パターンと凹凸位置関係が一致する凹凸パターンをマスクパターンとして用いて基材をエッチング処理することで、その全域に亘って凹凸パターンを高精度で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法の最良の形態について説明する。
【0010】
図1に示す磁気ディスク1は、例えば垂直記録方式による記録データの記録が可能なディスクリートトラック型の磁気記録媒体(パターンド媒体)であって、軟磁性層12、中間層13および記録層(磁性記録層)14が基材11の上にこの順で形成されている。この磁気ディスク1は、本発明における情報記録媒体に相当し、その一方の面(同図における上面)には、少なくとも突端部側が磁性材料(記録層14)で形成された複数の凸部15aと複数の凹部15bとが形成されてデータトラックパターンやサーボパターンとして機能する凹凸パターン15が形成されている。一方、図2に示すスタンパー2は、上記の磁気ディスク1を製造する際に、中間体10(本発明における基材:図3参照)の上にマスクパターンとしての凹凸パターン35(図5参照)を形成するための原盤であって、全体として円板状に構成されている。このスタンパー2は、ニッケル層21を電極として用いた電鋳処理によってニッケル層21の上にニッケル層22が形成されて薄板状に構成されている。また、スタンパー2には、磁気ディスク1における凹凸パターン15の各凹部15bに対応して形成された複数の凸部25aと、凹凸パターン15の各凸部15aに対応して形成された複数の凹部25bとを有する凹凸パターン25(本発明における「スタンパー側凹凸パターン」の一例)が形成されている。また、図3に示す中間体10は、軟磁性層12、中間層13および記録層14が基材11の上にこの順で形成されている。
【0011】
上記の磁気ディスク1の製造に際しては、まず、本発明における凹凸パターン形成方法に従って中間体10の上にマスクパターンとしての凹凸パターン35を形成する。この際には、まず、後述するインプリント処理時における樹脂層3(図3参照)の温度(一例として、22℃)よりもガラス転移点が低い樹脂材料(すなわち、低弾性率で高流動性の樹脂材料:本発明における「第1の樹脂材料」)と、インプリント処理時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(すなわち、高弾性率で低流動性の樹脂材料:本発明における「第2の樹脂材料」)とを混合して混合樹脂材料を製作する。具体的には、一例として、ガラス転移点が13℃で、重量平均分子量が5782で、弾性率が1.59GPaのアクリル樹脂(本発明における第1の樹脂材料の一例)と、ガラス転移点が34℃で、重量平均分子量が5074で、弾性率が2.98GPaのアクリル樹脂(本発明における第2の樹脂材料の一例)とを体積比(混合比)が1:1となるように混合して混合樹脂材料を製作する。
【0012】
この場合、両アクリル樹脂には、一例として、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテル)が溶剤として用いられている。また、上記の両アクリル樹脂は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体であって、構成される各分子(モノマー単位)の構成比を変化させることでガラス転移点が調整されると共に、上記の溶剤の他に各種の添加剤を添加することでその特性が相違させられている。なお、上記の両アクリル樹脂および、後述する各実施例や比較例において使用する各樹脂A〜D(図6〜8参照)のガラス転移点は示差熱分析による測定値であり、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定値である。また、両アクリル樹脂および各樹脂A〜Dの弾性率については、測定用の支持体(図示せず)の上に膜厚が1μmとなるように各樹脂を塗布した後に、一例として、90℃で90秒間のベイク処理を実行することによって形成された樹脂層について、ナノインデンテーション法によって測定した測定値である。
【0013】
次いで、製作した混合樹脂材料を例えばスピンコート法によって中間体10の上に塗布することにより、中間体10における記録層14の上に一例として厚みが100nmの塗膜を形成する。続いて、90℃で90秒間のベイク処理を実行する。これにより、図3に示すように、中間体10における記録層14の上に樹脂層3が形成される。次いで、樹脂層3の形成面を上向きにして中間体10をインプリント装置にセットすると共に、凹凸パターン15の形成面を下向きにしてスタンパー2をインプリント装置にセットする。続いて、中間体10に向けてスタンパー2を下降させることにより、樹脂層3の表面に凹凸パターン15を押し付ける。この際には、中間体10(樹脂層3)およびスタンパー2の双方に対して加熱処理を実行することなく、室温(一例として22℃)を維持した状態において、スタンパー2の全域に対して、一例として16.3MPaの押圧力を加える(インプリント処理の開始)。
【0014】
この際に、この凹凸パターン形成方法では、スタンパー2の押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が低いアクリル樹脂(低弾性率で高流動性の樹脂材料)を含有させた混合樹脂材料を塗布して樹脂層3を形成している。したがって、樹脂層3に対するスタンパー2の押し付け時には、樹脂層3およびスタンパー2の双方を加熱処理していないにも拘わらず(樹脂層3が室温の22℃であるにも拘わらず)、スタンパー2における凹凸パターン25の各凸部25aが樹脂層3に対してスムーズに(容易に)押し込まれる。この結果、図4に示すように、スタンパー2の各凸部25aが樹脂層3に対して十分に奥深くまで押し込まれる。なお、同図および後に参照する図5では、本発明についての理解を容易とするために、スタンパー2の押し付け時に各凸部25aの突端面と中間体10(記録層14)との間に生じる樹脂材料(残渣)の図示を省略している。続いて、樹脂層3に対してスタンパー2を押し付けた状態を例えば5分間に亘って維持した後に、中間体10に対してスタンパー2を上動させることによって樹脂層3からスタンパー2を剥離する。これにより、図5に示すように、スタンパー2における凹凸パターン25の凹凸形状が樹脂層3に転写されて中間体10の上に凹凸パターン35が形成される。この場合、中間体10の上に形成された凹凸パターン35は、スタンパー2の凹凸パターン25における各凸部25aに対応して各凹部35bが形成され、凹凸パターン25における各凹部25bに対応して各凸部35aが形成されている。以上により、本発明に係る凹凸パターン形成方法による凹凸パターン35(マスクパターン)の形成処理が完了する。
【0015】
次いで、中間体10上の樹脂層3における凹凸パターン35の各凹部35bの底面に残存する残渣(図示せず)を例えば酸素プラズマ処理によって除去する。続いて、凹凸パターン35(各凸部35a)をマスクパターンとして用いて中間体10(記録層14)に対するエッチング処理を行うことにより、中間層13の上に凹凸パターン15を形成する。この場合、上記の凹凸パターン形成方法では、スタンパー2の押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が高いアクリル樹脂(高弾性率で低流動性の樹脂材料)を含有させた混合樹脂材料を塗布して樹脂層3を形成している。したがって、凹凸パターン35の形成が完了した樹脂層3からスタンパー2を剥離した後に、中間体10に対するエッチング処理の開始以前に凹凸パターン35の凹凸形状が大きく変形する事態が回避されている。この結果、図5に破線で示すように、その凹凸形状が維持された状態の凹凸パターン35における各凸部35aに対応して各凸部15aが形成されると共に各凹部35bに対応して各凹部15bが形成され、図1に示すように、中間層13の上に凹凸パターン15が形成される。以上により、本発明に係る情報記録媒体製造方法が完了し、磁気ディスク1が完成する。
【0016】
次に、基材上の樹脂層に対するスタンパーの各凸部の押し込み容易性、およびスタンパーを剥離した後の凹凸形状の安定性(凹凸パターンの変形のし難さ)と、樹脂層の形成時に用いる樹脂材料との関係について、図面を参照して説明する。
【0017】
ガラス転移点が相違する4種類の樹脂材料(一例として、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体:アクリル樹脂)を組み合わせて各種混合樹脂材料を製作し、図6に示す実施例1〜4および比較例1,2の樹脂層を支持基材(図示せず)上に形成した。また、形成した各実施例および各比較例の樹脂層に上記のスタンパー2における凹凸パターン25を押し付けることによって支持基材の上(樹脂層)に凹凸パターンを形成した。なお、各樹脂層については、混合樹脂材料の作製方法を除き、前述した樹脂層3の形成方法と同様の手順で形成した。また、各樹脂層に対するスタンパー2の押し付け処理(凹凸パターンの形成処理:インプリント処理)については、前述した樹脂層3に対するスタンパー2の押し付け処理(凹凸パターン35の形成処理)と同様の手順で実施した。このようにして凹凸パターンを形成した各実施例および各比較例の樹脂層について、その表面の凹凸形状を原子間力顕微鏡(AFM)によって観察することにより、各樹脂層に対するスタンパー2の各凸部25aの押し込み容易性と、スタンパー2を剥離した後の凹凸形状の安定性とを確認した。その結果を図6に示す。
【0018】
なお、同図および後に参照する図7,8においては、図9に示すように、樹脂層に対する各凸部25aの押し込み量が不足して凹凸パターンの転写不良が生じたものについては、「押し込み容易性」の部位に「×」を付し、樹脂層に対する各凸部25aの押し込みが困難であるものの十分に高精度で凹凸パターンを転写できたものについては、「押し込み容易性」の部位に「△」を付し、樹脂層に対する各凸部25aの押し込みがやや困難であるものの転写不良は生じなかったものについては、「押し込み容易性」の部位に「○」を付し、図10に示すように、樹脂層に対する各凸部25aの押し込みが容易で、しかも、十分に奥深くまで各凸部25aを押し込むことができたものについては、「押し込み容易性」の部位に「◎」を付した。この場合、図9,10および後に参照する図11〜14は、凹凸パターンが形成された状態の各実施例および各比較例の樹脂層における表面をAFMによって撮像した図面代用写真であって、樹脂層の表面に近い部位ほど白色で、樹脂層の表面から厚み方向で離間した部位ほど(深い部位ほど)黒色となっている。したがって、黒色の部位と白色の部位との境界部分がはっきりしている部位ほど、樹脂層に形成された凹凸パターンに転写不良や変形が生じていない部位であることを意味する。
【0019】
また、図6〜8においては、樹脂層からスタンパー2を剥離した後に、図11に示すように、形成された凹凸パターンが大きく変形したものについては、「凹凸形状の安定性」の部位に「×」を付し、図12に示すように、僅かな変形が生じたもののマスクパターンとしての使用が可能な程度のものについては、「凹凸形状の安定性」の部位に「△」を付し、図13に示すように、極く僅かな変形が生じたもののマスクパターンとしての使用が十分に可能な程度のものについては、「凹凸形状の安定性」の部位に「○」を付し、図14に示すように、形成された凹凸パターンに殆ど変形が生じなかったものについては、「凹凸形状の安定性」の部位に「◎」を付した。
【0020】
[実施例1]
ガラス転移点が13℃で、重量平均分子量が5782で、弾性率が1.59GPaのアクリル樹脂(図6における「樹脂A」:以下、このアクリル樹脂を「樹脂A」ともいう)と、ガラス転移点が34℃で、重量平均分子量が5074で、弾性率が2.98GPaのアクリル樹脂(図6における「樹脂C」:以下、このアクリル樹脂を「樹脂C」ともいう)とを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層(インプリント処理によって凹凸パターンを形成する樹脂層)を形成した。
【0021】
[実施例2]
樹脂Aと、ガラス転移点が27℃で、重量平均分子量が7420で、弾性率が1.88GPaのアクリル樹脂(図6における「樹脂D」:以下、このアクリル樹脂を「樹脂D」ともいう)とを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0022】
[実施例3]
ガラス転移点が10℃で、重量平均分子量が5120で、弾性率が1.46GPaのアクリル樹脂(図6における「樹脂B」:以下、このアクリル樹脂を「樹脂B」ともいう)と、樹脂Cとを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0023】
[実施例4]
樹脂Bと樹脂Dとを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0024】
[比較例1]
樹脂Aと樹脂Bとを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0025】
[比較例2]
樹脂Cと樹脂Dとを混合比(体積比)が1:1(50%:50%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0026】
図6に示すように、インプリント処理時における樹脂層の温度(この例では、22℃)よりもガラス転移点が低い樹脂Aまたは樹脂Bと、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂Cまたは樹脂Dとを混合した混合樹脂材料を用いて形成した実施例1から4の樹脂層では、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時において、樹脂層に対して各凸部25aを十分に奥深くまでスムーズに(容易に)押し込むことができた。したがって、凹凸パターンの転写不良が生じる事態が回避されて、樹脂層に高精度で凹凸パターンが形成された。また、実施例1〜4の樹脂層では、スタンパー2を剥離した後にも、形成された凹凸パターンが大きく変形することなく、スタンパー2の剥離時点から120分が経過した時点においても、その凹凸形状が十分に高精度な状態に維持された。これに対して、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料同士(樹脂A,B)を混合した混合樹脂材料を用いて形成した比較例1の樹脂層では、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時には、実施例1〜4の樹脂層と同様にして、樹脂層に対して各凸部25aをスムーズに(容易に)押し込むことができたものの、スタンパー2を剥離した後には、形成された凹凸パターンが大きく変形してしまい、その凹凸形状を維持することができなかった。
【0027】
一方、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料同士(樹脂C,D)を混合した混合樹脂材料を用いて形成した比較例2の樹脂層では、スタンパー2を剥離した後には、形成された凹凸パターンが大きく変形することなく、その凹凸形状が維持されたものの、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時には、樹脂層に対して各凸部25aを十分に奥深くまで押し込むことができず、十分な深さの凹部を形成することができなかった(転写不良の発生)。このように、インプリント処理によって凹凸パターンを形成する樹脂層の製作に際しては、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料(この例では、樹脂Aまたは樹脂B)と、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(この例では、樹脂Cまたは樹脂D)とを混合した混合樹脂材料を用いて形成することで、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時において各凸部25aを樹脂層に対して十分に奥深くまでスムーズに押し込むことができ、かつ、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる(転写不良の発生を回避することができる)と共に、スタンパー2の剥離後も、その凹凸形状を長い時間に亘って維持する(凹凸パターンの変形を回避する)ことができる。
【0028】
次に、各樹脂材料の混合比(体積比)を変化させて各種混合樹脂材料を製作し、実施例5〜20および比較例3〜5の樹脂層を支持基材上に形成し、形成した各樹脂層に凹凸パターンを形成して各樹脂層に対するスタンパー2の各凸部25aの押し込み容易性と、スタンパー2を剥離した後の凹凸形状の安定性とを確認した。その結果を図7,8に示す。なお、各実施例および各比較例の樹脂層については、混合樹脂材料の作製方法を除き、前述した樹脂層3の形成方法と同様の手順で形成した。また、各樹脂層に対するスタンパー2の押し付け処理(凹凸パターンの形成処理:インプリント処理)については、前述した樹脂層3に対するスタンパー2の押し付け処理(凹凸パターン35の形成処理)と同様の手順で実施した。
【0029】
[実施例5]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が1:9(10%:90%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0030】
[実施例6]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が2:8(20%:80%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0031】
[実施例7]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が3:7(30%:70%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0032】
[実施例8]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が4:6(40%:60%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0033】
[実施例9]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が6:4(60%:40%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0034】
[実施例10]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が7:3(70%:30%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0035】
[実施例11]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が8:2(80%:20%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0036】
[実施例12]
樹脂Aと樹脂Cとを混合比(体積比)が9:1(90%:10%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0037】
[実施例13]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が1:9(10%:90%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0038】
[実施例14]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が2:8(20%:80%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0039】
[実施例15]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が3:7(30%:70%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0040】
[実施例16]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が4:6(40%:60%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0041】
[実施例17]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が6:4(60%:40%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0042】
[実施例18]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が7:3(70%:30%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0043】
[実施例19]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が8:2(80%:20%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0044】
[実施例20]
樹脂Aと樹脂Dとを混合比(体積比)が9:1(90%:10%)となるように混合した混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成した。
【0045】
[比較例3]
樹脂Cのみを用いて樹脂層を形成した。
【0046】
[比較例4]
樹脂Aのみを用いて樹脂層を形成した。
【0047】
[比較例5]
樹脂Dのみを用いて樹脂層を形成した。
【0048】
図7,8に示すように、インプリント処理時における樹脂層の温度(この例では、22℃)よりもガラス転移点が低い樹脂Aを10%以上含有させた混合樹脂材料を用いて形成した実施例1,2,5〜20の樹脂層や、樹脂Aのみを用いて形成した比較例4の樹脂層では、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時において、樹脂層に対して各凸部25aを十分に奥深くまでスムーズに(容易に)押し込むことができた。これに対して、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂Aを含まずに、樹脂Cのみを用いて形成した比較例3、および樹脂Dのみを用いて形成した比較例5の樹脂層では、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時には、樹脂層に対して各凸部25aを十分に奥深くまで押し込むことができず、十分な深さの凹部を形成することができなかった(転写不良の発生)。このように、凹凸パターンを形成する樹脂層の形成に際して、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料(この例では、樹脂A)を少なくとも10%含有させた混合樹脂材料を用いることで、樹脂層に対するスタンパー2の押し付け時において各凸部25aを樹脂層に対して十分に奥深くまでスムーズに押し込むことができ、かつ、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる(転写不良の発生を回避することができる)のが理解できる。
【0049】
一方、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(樹脂C,D)を10%以上含有させた混合樹脂材料を用いて形成した実施例1,2,5〜20の樹脂層や、樹脂Cのみを用いて形成した比較例3の樹脂層、および、樹脂Dのみを用いて形成した比較例5の樹脂層では、スタンパー2を剥離した後にも、形成された凹凸パターンが大きく変形することなく、その凹凸形状が高精度な状態に維持された。これに対して、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(樹脂C,D)を含まずに、樹脂Aのみを用いて形成した比較例4の樹脂層では、スタンパー2を剥離した後において、形成された凹凸パターンが大きく変形してしまい、その凹凸形状を維持することができなかった。このように、凹凸パターンを形成する樹脂層の形成に際して、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(この例では、樹脂C,D)を少なくとも10%含有させた混合樹脂材料を用いることで、スタンパー2を剥離した後にも、形成された凹凸パターンが大きく変形することなく、その凹凸形状を高精度な状態に維持されるのが理解できる。
【0050】
この場合、両図に示すように、転写不良の発生を回避して十分に高精度で凹凸パターンを形成するためには、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料(樹脂A)を30%以上含有させた混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成するのが好ましい。また、スタンパー2の剥離後における凹凸パターンの変形を回避して、凹凸形状を十分な時間に亘って維持するためには、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料(樹脂C,D)を30%以上含有させた混合樹脂材料を用いて樹脂層を形成するのが好ましい。したがって、転写不良の発生を回避して十分に高精度で凹凸パターンを形成すると共に、スタンパー2の剥離後における凹凸パターンの変形を回避して、凹凸形状を十分な時間に亘って維持するためには、インプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料を30%以上含有させ、かつインプリント処理時における樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料を30%以上含有させて混合樹脂材料を作製するのが好ましい。
【0051】
このように、上記の凹凸パターン形成方法によれば、スタンパー2の押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が低い第1の樹脂材料と、スタンパー2の押し付け時における樹脂層3の温度よりもガラス転移点が高い第2の樹脂材料とを混合した混合樹脂材料を中間体10(基材)の上に塗布することによって樹脂層3を形成することにより、樹脂層3に対するスタンパー2の押し付け時に凹凸パターン25における各凸部25aを樹脂層3に対してスムーズに十分に奥深くまで押し込むことができる。したがって、各凸部25aの押し込み不足に起因する凹凸パターン25の転写不良を回避して中間体10の上に高精度で凹凸パターン35を形成することができる。また、樹脂層3からスタンパー2を剥離した後に、凹凸パターン35が大きく変形する事態を回避して、その凹凸形状を高精度な状態で維持することができる。
【0052】
また、上記の情報記録媒体製造方法によれば、上記の凹凸パターン形成方法に従って中間体10(基材)の上に形成した凹凸パターン35を用いて磁気ディスク1(情報記録媒体)を製造することにより、例えば、形成した凹凸パターン35をマスクパターンとして、または、凹凸パターン35と凹凸位置関係が一致する凹凸パターンをマスクパターンとして用いて中間体10をエッチング処理することで、その全域に亘って凹凸パターン15を高精度で形成することができる。
【0053】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、上記の凹凸パターン形成方法では、中間体10、樹脂層3およびスタンパー2に対する加熱処理や冷却処理を実行することなくインプリント処理しているが、本発明に係る凹凸パターン形成方法はこれに限定されず、樹脂層3に対する各凸部25aの押し込みを一層容易とするために、インプリント処理の開始に先立ち、中間体10、樹脂層3およびスタンパー2をある程度の温度まで加熱処理する方法を採用することもできる。この方法においても、樹脂層3を形成するのに用いた樹脂材料内にインプリント処理時の樹脂層3の温度よりもガラス転移点が高い樹脂材料を含有させることで、スタンパー2の剥離に先立ち、中間体10、樹脂層3およびスタンパー2を冷却処理しなかったとしても、樹脂層3に形成された凹凸パターン35が大きく変形する事態を十分に回避することができる。
【0054】
また、例えば、インプリント処理を行う作業場所の温度が高いときには、スタンパー2の剥離後における凹凸パターン35の変形を回避するために、中間体10、樹脂層3およびスタンパー2をインプリント処理の開始に先立ってある程度の温度まで冷却処理する方法を採用することもできる。この方法においても、樹脂層3を形成するのに用いた樹脂材料内にインプリント処理時の樹脂層3の温度よりもガラス転移点が低い樹脂材料を含有させることで、冷却処理によって樹脂層3の温度が低下させられたとしてもスタンパー2の各凸部25aを樹脂層3に対して容易に押し込むことができる。これにより、凹凸パターンの転写不良が生じる事態を十分に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】磁気ディスク1の断面図である。
【図2】スタンパー2の断面図である。
【図3】記録層14上に樹脂層3を形成した状態の中間体10の断面図である。
【図4】中間体10上の樹脂層3にスタンパー2を押し付けた状態の断面図である。
【図5】図4に示す状態の樹脂層3からスタンパー2を剥離した状態の中間体10の断面図である。
【図6】実施例1〜4の樹脂層および比較例1,2の樹脂層についてのスタンパーの押し込み容易性と転写後の凹凸パターンの形状安定性とを説明するための説明図である。
【図7】実施例1,5〜12の樹脂層および比較例3,4の樹脂層についてのスタンパーの押し込み容易性と転写後の凹凸パターンの形状安定性とを説明するための説明図である。
【図8】実施例2,13〜20の樹脂層および比較例4,5の樹脂層についてのスタンパーの押し込み容易性と転写後の凹凸パターンの形状安定性とを説明するための説明図である。
【図9】スタンパー2における各凸部25aの押し込み量が不足し、形成された凹凸パターン(データトラックパターン)に転写不良が生じた樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【図10】転写不良が生じることなく凹凸パターン(データトラックパターン)が形成された樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【図11】形成した凹凸パターンに大きな変形が生じた状態の樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【図12】形成した凹凸パターンにマスクパターンとしての使用が可能な程度の小さな変形が生じた状態の樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【図13】形成した凹凸パターンに極く小さな変形が生じた状態の樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【図14】形成した凹凸パターンに殆ど変形が生じていない樹脂層の表面を撮像した図面代用写真である。
【符号の説明】
【0056】
1 磁気ディスク
2 スタンパー
3 樹脂層
10 中間体
15,25,35 凹凸パターン
15a,25a,35a 凸部
15b,25b,35b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンパー側凹凸パターンが形成されたスタンパーを基材上の樹脂層に押し付けることによって当該スタンパー側凹凸パターンを当該樹脂層に転写することで当該基材の上に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法であって、前記スタンパーの押し付け時における前記樹脂層の温度よりもガラス転移点が低い第1の樹脂材料と、前記押し付け時における前記樹脂層の温度よりもガラス転移点が高い第2の樹脂材料とを混合した混合樹脂材料を前記基材の上に塗布することによって前記樹脂層を形成する凹凸パターン形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の凹凸パターン形成方法に従って前記基材の上に形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−168270(P2007−168270A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369331(P2005−369331)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】