分光モジュール
【課題】本発明は、信頼性の高い分光モジュールを提供する。
【解決手段】 本発明に係る分光モジュール1では、分光部4に進行する光L1が光通過孔50を通過するに際し、分光部4側に向かって先細りとなる光入射側部51を抜け、光入射側部51の底面51bと対向するように形成された光出射側部52に入射した光のみが光出射開口52aから出射される。このため、光入射側部51の側面51cや底面51bに入射した迷光Mは、光出射側部52と反対側に反射されるので、光出射側部52に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュール1の信頼性を向上させることが可能となる。
【解決手段】 本発明に係る分光モジュール1では、分光部4に進行する光L1が光通過孔50を通過するに際し、分光部4側に向かって先細りとなる光入射側部51を抜け、光入射側部51の底面51bと対向するように形成された光出射側部52に入射した光のみが光出射開口52aから出射される。このため、光入射側部51の側面51cや底面51bに入射した迷光Mは、光出射側部52と反対側に反射されるので、光出射側部52に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュール1の信頼性を向上させることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、例えば特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1には、光を透過させる支持体と、支持体に光を入射させる入射スリット部と、支持体に入射した光を分光して反射する凹面回折格子と、凹面回折格子によって分光されて反射された光を検出するダイオードと、を備える分光モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−294223号公報
【特許文献2】特開2000−65642号公報
【特許文献3】特開2004−354176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の分光モジュールにあっては、入射スリット部から入射した光が支持体内で散乱する迷光となり、分光モジュールの信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い分光モジュール及びその分光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、入射した光を分光すると共に反射する分光部と、分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールであって、光検出素子は、前記分光部に進行する光が通過する光通過孔が形成された基板部を有し、光通過孔は、基板部の一方の主面に光入射開口を画定する光入射側部、及び基板部の他方の主面に光出射開口を画定する光出射側部を含み、光入射側部は、一方の主面と略平行な底面を有し且つ他方の主面に向かって先細りとなるように形成され、光出射側部は、他方の主面と略垂直な側面を有し且つ底面と対向するように形成され、光入射側部の側面には、遮光層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、分光部に進行する光が光通過孔を通過するに際し、基板部の他方の主面側に向かって先細りとなる光入射側部の底面と対向するように形成された光出射側部に入射した光のみが光出射開口から出射される。このとき、光入射側部の側面や底面に入射した光は、光出射側部の反対側に反射されるので、光出射側部に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュールの信頼性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性の高い分光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る分光モジュールの平面図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った断面図である。
【図3】分光モジュールの下面図である。
【図4】光通過孔を示す要部拡大断面図である。
【図5】光通過孔を示す要部拡大平面図である。
【図6】光入射側部を形成する工程を説明するための断面図である。
【図7】光出射側部を形成する工程を説明するための断面図である。
【図8】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図9】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図10】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図11】第2の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る光通過孔を示す、図3に対応する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る分光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1,2に示されるように、分光モジュール1は、前面(所定の面)2aから入射した光L1を透過させる基板(本体部)2と、基板2を透過して入射面3aから入射した光L1を透過させるレンズ部(本体部)3と、レンズ部3に入射した光L1を分光すると共に反射する分光部4と、分光部4によって分光された光L2を検出する光検出素子5と、を備えている。分光モジュール1は、光L1を分光部4で複数の波長に対応した光L2に分光し、その光L2を光検出素子5で検出することにより、光L1の波長分布や特定波長成分の強度などを測定するマイクロ分光モジュールである。
【0012】
基板2は、BK7、パイレックス(登録商標)、石英などの光透過性ガラス、プラスチックなどによって、長方形板状(例えば、全長15〜20mm、全幅11〜12mm、厚さ1〜3mm)に形成されている。基板2の前面2aには、AlやAuなどの単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Auなどの積層膜からなる配線11が形成されている。配線11は、基板2の中央部に配置された複数のパッド部11a、基板2の長手方向における一端部に配置された複数のパッド部11b、及び対応するパッド部11aとパッド部11bとを接続する複数の接続部11cを有している。また、配線11は、CrOなどの単層膜、或いはCr−CrOなどの積層膜からなる光反射防止層を基板2の前面2a側に有している。
【0013】
尚、基板2の前面2aに形成された光吸収層13は、光検出素子5の光通過孔50(後述)を介して分光部4に進行する光L1が通過するスリット(光通過スリット)13a、及び光検出素子5の光検出部5b(後述)に進行する光L2が通過する開口部13bを有している。光吸収層13の材料としては、ブラックレジスト、フィラー(カーボンや酸化物など)が入った有色の樹脂(シリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド、複合樹脂など)、CrやCoなどの金属又は酸化金属、或いはその積層膜、ポーラス状のセラミックや金属又は酸化金属が挙げられる。
【0014】
図2,3に示されるように、レンズ部3は、基板2と同一の材料、光透過性樹脂、光透過性の無機・有機ハイブリッド材料、或いはレプリカ成形用の光透過性低融点ガラス、プラスチックなどによって、半球状のレンズがその入射面(底面)3aと略直交し且つ互いに略平行な2つの平面で切り落とされて側面3bが形成された形状(例えば曲率半径6〜10mm、入射面3aの全長12〜18mm、入射面3aの全幅(側面3bの間の距離)6〜10mm、高さ5〜8mm)に形成されており、分光部4によって分光された光L2を光検出素子5の光検出部5bに結像するレンズとして機能する。尚、レンズ形状は球面レンズに限らず、非球面レンズであっても良い。
【0015】
分光部4は、レンズ部3の外側表面に形成された回折層6、回折層6の外側表面に形成された反射層7、並びに回折層6及び反射層7を覆うパッシベーション層8を有する反射型グレーティングである。回折層6は、基板2の長手方向に沿って複数のグレーティング溝6aが並設されることによって形成され、グレーティング溝6aの延在方向は、基板2の長手方向と略直交する方向と略一致する。回折層6は、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティングなどが適用され、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は有機無機ハイブリッド樹脂などのレプリカ用光学樹脂を光硬化させることよって形成される。反射層7は、膜状であって、例えば、回折層6の外側表面にAlやAuなどを蒸着することで形成される。尚、反射層7を形成する面積を調整することで、分光モジュール1の光学NAを調整することができる。また、レンズ部3と分光部4を構成する回折層6とを、上記の材料により一体に形成することも可能である。パッシベーション層8は、膜状であって、例えば、回折層6及び反射層7の外側表面にMgF2やSiO2などを蒸着することで形成される。
【0016】
図1,2及び図4に示されるように、光検出素子5は、基板2の前面2a上に配置され、長方形状(例えば、全長5〜10mm、全幅1.5〜3mm、厚さ0.1〜0.8mm)の半導体基板5a(基板部)を有している。半導体基板5aは、Si、GaAs、InGaAs、Ge、SiGeなどの結晶材料からなる。
【0017】
半導体基板5aの分光部4側の面には、光検出部5bが形成されている。光検出部5bは、CCDイメージセンサ、PDアレイ、或いはCMOSイメージセンサなどであり、複数のチャンネルが分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向(グレーティング溝6aの並設方向)に配列されてなる。また、半導体基板5aの分光部4と反対側の面には、AlやAuなどから構成される遮光層12が蒸着によって形成されている。
【0018】
光検出部5bがCCDイメージセンサの場合、2次元的に配置されている画素に入射された位置における光の強度情報がラインビニングされることにより、1次元の位置における光の強度情報とされて、その1次元の位置における光の強度情報が時系列的に読み出される。つまり、ラインビニングされる画素のラインが1チャンネルとなる。光検出部5bがPDアレイ又はCMOSイメージセンサの場合、1次元的に配置されている画素に入射された位置における光の強度情報が時系列的に読み出されるため、1画素が1チャンネルとなる。
【0019】
尚、光検出部5bがPDアレイ又はCMOSイメージセンサであって、画素が2次元配列されている場合には、分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と平行な1次元配列方向に並ぶ画素のラインが1チャンネルとなる。また、光検出部5bがCCDイメージセンサの場合、例えば、配列方向におけるチャンネル同士の間隔が12.5μm、チャンネル全長(ラインビニングされる1次元画素列の長さ)が1mm、配列されるチャンネルの数が256のものが光検出素子5に用いられる。
【0020】
図2,4及び図5に示されるように、半導体基板5aには、チャンネルの配列方向において光検出部5bと並設され、分光部4に進行する光L1が通過する光通過孔50が形成されている。光通過孔50は、基板2の前面2aと略直交する方向に延在し、光検出部5bに対して高精度に位置決めされた状態でエッチングによって形成されている。
【0021】
光通過孔50は、光L1が入射する光入射開口51aを画定する光入射側部51、及び光L1が出射する光出射開口52aを画定する光出射側部52から構成されている。光入射側部51は、基板2の前面2aに向かって先細りとなるように略四角錘台形状に形成され、基板2の前面2aと略平行な底面51bを有している。
【0022】
光出射側部52は、半導体基板5aの分光部4側の面から、光入射側部51の底面51bと対向し、且つ連結するように略四角柱形状に形成されており、基板2の前面2aと略垂直な側面52bを有している。光出射側部52は、光検出部5bのチャンネル配列方向(グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向)において、その幅H1(最小幅)が光吸収層13のスリット13aの幅H2より大きくなるように形成されている。
【0023】
また、半導体基板5aと基板2又は光吸収層13との間には、少なくとも光L2を透過させるアンダーフィル材15が充填されている。半導体基板5aの基板2側の面には、光出射開口52aの周囲を囲むように矩形環状の凸部53が形成されており、充填されたアンダーフィル材15は、光出射開口52aに到達する前に凸部53でせき止められる。これにより、光通過孔50へのアンダーフィル材15の進入が防止されるため、アンダーフィル材15によって屈折されたり拡散されたりすることなく、本体部2に光を入射させることができる。また、光吸収層13から露出したパッド部11aには、光検出素子5の外部端子が、バンプ14を介したフェースダウンボンディングによって電気的に接続されている。パッド部11bは、外部の電気素子(不図示)と電気的に接続される。
【0024】
上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0025】
まず、光検出素子5を用意する。例えばSiから構成される半導体基板5aにおいて、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)などを用いたアルカリエッチングなどを施すことによって予定される光出射開口52aを囲むように矩形環状の凸部53を形成する。その後、他方の主面B側に光検出部5bや配線や電極パッドを用意する。
【0026】
続いて、検出部5bを基準として両面アライメントを用いたフォトリソグラフィにて所定の位置にマスクを開口し、アルカリエッチングを施すことによって略四角錘台形状の光入射側部51を形成する(図6参照)。このとき、例えばSiから構成される半導体基板5aにおいては、アルカリエッチングを施すことにより(100)結晶面に対して約55°傾斜した(111)結晶面に沿って光入射側部51の側面51cが形成される。そして、検出部5bを基準としたフォトグラフィにて半導体基板5aの他方の主面Bに対して、所定の位置にプラズマ放電を用いたシリコンディープドライエッチングを施すことによって光入射側部51の底面51bに対向する略四角柱形状の光出射側部52を形成する(図7参照)。このようにして、半導体基板5aの一方の主面Aと略直交する方向に延在する光通過孔50が形成される。その後、一方の主面A及び光入射側部51の側面51c及び底面51b上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層12を形成し、検出部5bを基準としてウェハをダインシングすることにより光検出素子5を用意する。
【0027】
次に、レンズ部3に分光部4を形成する。具体的には、レンズ部3の頂点付近に滴下したレプリカ用光学樹脂に対し、回折層6に対応するグレーティングが刻まれた光透過性のマスターグレーティングを押し当てる。そして、この状態で光を照射することによりレプリカ用光学樹脂を硬化させ、好ましくは、安定化させるために加熱キュアを行うことで、複数のグレーティング溝6aを有する回折層6を形成する。その後、マスターグレーティングを離型して、回折層6の外側表面にAlやAuなどをマスク蒸着や全面蒸着することで反射層7を形成し、更に、回折層6及び反射層7の外側表面にMgF2やSiO2などをマスク蒸着や全面蒸着することでパッシベーション層8を形成する。
【0028】
その一方で、基板2を準備し、スリット13a及び開口部13bを有する光吸収層13を基板2の前面2aに形成する。尚、スリット13a及び開口部13bは、基板2に分光部4を位置決めするための基準部となる基板2の外縁部に対して所定の位置関係を有するように形成される。
【0029】
光吸収層13の上には、光検出素子5がフェースダウンボンディングによって実装される。続いて、光検出素子5と基板2の前面2aとの間にアンダーフィル材15が充填される。その後、分光部4が形成されたレンズ部3を、基板2の外縁部を基準部として、光学樹脂剤18によって基板2の後面2bに接着することで、分光モジュール1を得る。尚、この際、光検出素子5と基板2とはバンプ14を介して電気的に接続されている。
【0030】
上述した分光モジュール1の作用効果について説明する。
【0031】
この分光モジュール1では、分光部4に進行する光L1が光通過孔50を通過するに際し、基板2側に向かって先細りとなる光入射側部51の底面51bと対向するように形成された光出射側部52に入射した光のみが光出射開口52aから出射される。このとき、光入射側部51の底面51bや側面51cに入射した迷光Mは、光入射開口51a側に反射されるので、光出射側部52に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュール1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、この分光モジュール1では、ウェハ状態の半導体基板5aに対し、アルカリエッチングを施すことによって光入射側部51を一括して形成することで、光検出素子5の用意工程における短時間化及び低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、半導体基板5aの他方の主面Bから、シリコンディープドライエッチングを施すことにより光出射側部52を精度良く形成することができるので、安定した光通過特性を有する光通過孔50の形成が可能となり、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。具体的には、分光モジュール1では、光検出部5bが配置される他方の主面B側から、光出射側部52を形成するため、同一面上の光検出部5bに対する光出射側部52の位置精度を高くすることが可能となる。この光通過孔50の光出射側部52を通過する光が分光部4のグレーティング溝6aで回折されると共に反射され、光検出部5bにおいて検出されるため、光出射側部52と光検出部5bとの位置精度を向上させることにより、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。更に、この光出射側部52の開口断面の形状(すなわち光出射開口52aの形状)が光検出部5bにおいて光学的に結像され、半導体基板5aの長手方向における光出射側部52の最小幅に対応して光検出部5bのチャンネルが配列されている。このため、分光モジュール1の分解能は、チャンネルの配列方向における光出射側部52の最小幅に大きく影響される。従って、シリコンディープドライエッチングを施すことによって光出射側部52を精度良く形成することで、製品毎に分解能にバラツキが生じることを抑制し、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0034】
また、この分光モジュール1においては、半導体基板5aがSiなどの結晶材料から構成されており、アルカリエッチングを施すことにより材料の(111)結晶面に沿って側面を形成することで、精度良く光入射側部51を形成することができるので、高精度な光通過孔50の形成が可能となる。従って、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、分光モジュール1の分解能は、グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光が通過するスリットの最小幅に大きく影響される。このため、グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光検出素子5における光通過孔50の最小幅H1より光吸収層13のスリット13aの幅H2を小さくすることで、分光モジュール1の分解能を向上させることができる。このことは、分光モジュール1の信頼性の向上に有利である。
【0036】
尚、図8に示されるように、光検出素子5に形成される光通過孔60は、光入射側部61の底面61bと略垂直な側面62bを有する光出射側部62が断面長円形状に形成されていても良い。また、図9に示されるように、図5と比べて、半導体基板5aの長手方向と略直交する方向(グレーティング溝6aの延在方向)に光出射側部72が延長され、光入射側部71の底面71bの幅と光出射側部72の開口断面の幅とが等しくなるように、すなわち光出射側部72の側面72bと光入射側部71の側面71cとが直接連結するように形成されていても良い。或いは、図10に示されるように、図9と比べて、更に光出射側部82が延長され、半導体基板5aの長手方向と略直交する方向における光入射側部81の底面81bの幅より、光出射側部82の開口断面の幅が長くなるように形成されていても良い。
[第2の実施形態]
【0037】
第2の実施形態に係る分光モジュール21は、光検出素子の構成と基板の前面に配線基板が配置されている点とが第1の実施形態に係る分光モジュール1と相違している。
【0038】
図11,12に示されるように、分光モジュール21においては、光検出素子22の分光部4と反対側の面に、端子電極23が複数形成されている。各端子電極23は、対応する配線基板24のパッド部24aとワイヤ26によって接続されている。これにより、端子電極23と配線基板24とが電気的に接続されて、光検出部22bで発生した電気信号は、端子電極23、配線基板24のパッド部24a及びパッド部24bを介して外部に取り出される。
【0039】
半導体基板22aに形成された光通過孔90は、光入射開口91aを画定する光入射側部91、及び光出射開口92aを画定する光出射側部92から構成されている。光入射側部91は、基板2の前面2aと略垂直な側面91bを有している。光出射側部92は、基板2の前面2aに向かって末広がりとなるように略四角錘台形状に形成され、基板2の前面2aと略平行な上面92bを有している。光入射側部91は、光出射側部92の上面92bに対向して略四角柱形状に形成され、その側面91bは、光出射側部92の上面92bに連結されている。また、基板2の前面2aに形成された光吸収層27は、分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光入射側部91の最小幅より幅の小さいスリット(光通過スリット)27aを有している。
【0040】
上述した分光モジュール21の製造方法の製造方法について説明する。
【0041】
まず、光検出素子22を用意する。例えばSiから構成されるウェハ状態の半導体基板22aにおいて、他方の主面B側に光検出部22bや配線や電極パッドを用意する。その後、他方の主面BのSiO2などの絶縁膜上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層29を形成し、光検出素子22を用意する。
【0042】
続いて、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)などを用いたアルカリエッチングやドライエッチングなどを施すことによって予定される光出射開口92aを囲むように矩形環状の凸部93を形成する。その後、光検出部22bを基準として、半導体基板22aの一方の主面Aに対して、両面アライメントを用いたフォトリソグラフィにて所定の位置にマスクを開口し、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)を用いたアルカリエッチングを施すことによって略四角錘台形状の光出射側部92を形成する。そして、検出部22bを基準としたフォトグラフィにて半導体基板22aの他方の主面Bに対して、所定の位置にプラズマ放電を用いたシリコンディープドライエッチングを施すことによって光出射側部92の底面92bに連結する略四角柱形状の光入射側部91を形成する。このようにして、半導体基板22aの一方の主面Aと略直交する方向に延在する光通過孔90が形成される。その後、一方の主面A及び光入射側部91の側面91c及び底面91b上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層29を形成し、検出部22bを基準としてウェハをダインシングすることにより光検出素子22を用意する。
【0043】
そして、光検出素子22と基板2の外縁部あるいはアライメントマークを基準部として、光検出素子22の他方の主面B側と光学樹脂材17によって基板2の前面2aに接着する。その後、対応する光検出素子22の端子電極23と基板2のパッド部24aとをワイヤ26によって接続する。パッド部24aは配線層19を介して端子パッド部24bに電気的に接続されている。尚、基板2において、黒レジストなどからなる光吸収層が光検出素子22の外周部に配置されているために、外乱光や分光部4からの信号として不要な反射光を吸収し、信頼性を確保することができる。
【0044】
そして、分光部4が形成されたレンズ部3を、基板2の外縁部を基準部として、光学樹脂剤18によって基板2の後面2bに接着することで、分光モジュール21を得る。
【0045】
上述した第2の実施形態に係る分光モジュール21によれば、ウェハ状態の半導体基板22aに対し、アルカリエッチングを施すことによって光出射側部92を一括して形成することで、光検出素子22の用意工程における短時間化及び低コスト化を図ることができる。また、半導体基板5aの他方の主面Bから、シリコンディープドライエッチングを施すことにより光出射側部52を精度良く形成することができるので、安定した光通過特性を有する光通過孔50の形成が可能となり、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、第1の実施形態における光入射側部及び第2の実施形態における光出射側部の形状は、略四角錘台形状に限られず、基板2の前面2aと略平行な底面(上面)を有し、且つ前面2aに向かって先細りとなる形状であれば良い。同様に、第1の実施形態における光出射側部及び第2の実施形態における光入射側部の形状は、略四角柱形状に限られず、基板2の前面2aと略垂直な側面を有し、且つ、対となる光入射側部(光出射側部)の底面(上面)に対向するように形成されていれば良い。
【0048】
また、光通過孔は、光入射側部と光出射側部とが直接連結する態様に限られず、その間を連結する中間部(例えば、側面の傾斜角度や開口断面の形状が異なる部位)が設けられていても良い。
【0049】
また、第1の実施形態における光入射側部及び第2の実施形態における光出射側部は、アルカリエッチングによって形成される場合に限られず、種々のウェットエッチングやドライエッチングによって形成される態様であれば良い。同様に、第1の実施形態における光出射側部及び第2の実施形態における光入射側部は、シリコンディープドライエッチングによって形成する場合に限られず、種々のドライエッチングによって形成される態様であれば良い。
【0050】
また、上述した第1の実施形態において、第2の実施形態における光通過孔の構成を採用しても良く、第2の実施形態において、第1の実施形態における光通過孔の構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1,21…分光モジュール、2…基板(本体部)、2a…前面(所定の面)、3…レンズ部(本体部)、4…分光部、5,22…光検出素子、5a,22a…半導体基板、光検出部…5b,22b、6…回折層、6a…グレーティング溝、13,27…光吸収層、50,60,70,80,90…光通過孔、51,61,71,81,91…光入射側部、52,62,72,82,92…光出射側部、51a,61a,71a,81a,91a…光入射開口、51b,61b,71b、81b…底面、51c,61c,71c,81c,92c…側面、52a,62a,72a,82a,92a…光出射開口、92b…上面(底面)、52b,62b,72b,82b,91b…側面、A…一方の主面、B…他方の主面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、例えば特許文献1〜3に記載されたものが知られている。特許文献1には、光を透過させる支持体と、支持体に光を入射させる入射スリット部と、支持体に入射した光を分光して反射する凹面回折格子と、凹面回折格子によって分光されて反射された光を検出するダイオードと、を備える分光モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−294223号公報
【特許文献2】特開2000−65642号公報
【特許文献3】特開2004−354176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の分光モジュールにあっては、入射スリット部から入射した光が支持体内で散乱する迷光となり、分光モジュールの信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い分光モジュール及びその分光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、入射した光を分光すると共に反射する分光部と、分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールであって、光検出素子は、前記分光部に進行する光が通過する光通過孔が形成された基板部を有し、光通過孔は、基板部の一方の主面に光入射開口を画定する光入射側部、及び基板部の他方の主面に光出射開口を画定する光出射側部を含み、光入射側部は、一方の主面と略平行な底面を有し且つ他方の主面に向かって先細りとなるように形成され、光出射側部は、他方の主面と略垂直な側面を有し且つ底面と対向するように形成され、光入射側部の側面には、遮光層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、分光部に進行する光が光通過孔を通過するに際し、基板部の他方の主面側に向かって先細りとなる光入射側部の底面と対向するように形成された光出射側部に入射した光のみが光出射開口から出射される。このとき、光入射側部の側面や底面に入射した光は、光出射側部の反対側に反射されるので、光出射側部に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュールの信頼性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性の高い分光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る分光モジュールの平面図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った断面図である。
【図3】分光モジュールの下面図である。
【図4】光通過孔を示す要部拡大断面図である。
【図5】光通過孔を示す要部拡大平面図である。
【図6】光入射側部を形成する工程を説明するための断面図である。
【図7】光出射側部を形成する工程を説明するための断面図である。
【図8】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図9】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図10】光通過孔の変形例を示す、図5に対応する要部拡大平面図である。
【図11】第2の実施形態に係る分光モジュールを示す、図2に対応する断面図である。
【図12】第2の実施形態に係る光通過孔を示す、図3に対応する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る分光モジュールの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1,2に示されるように、分光モジュール1は、前面(所定の面)2aから入射した光L1を透過させる基板(本体部)2と、基板2を透過して入射面3aから入射した光L1を透過させるレンズ部(本体部)3と、レンズ部3に入射した光L1を分光すると共に反射する分光部4と、分光部4によって分光された光L2を検出する光検出素子5と、を備えている。分光モジュール1は、光L1を分光部4で複数の波長に対応した光L2に分光し、その光L2を光検出素子5で検出することにより、光L1の波長分布や特定波長成分の強度などを測定するマイクロ分光モジュールである。
【0012】
基板2は、BK7、パイレックス(登録商標)、石英などの光透過性ガラス、プラスチックなどによって、長方形板状(例えば、全長15〜20mm、全幅11〜12mm、厚さ1〜3mm)に形成されている。基板2の前面2aには、AlやAuなどの単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Auなどの積層膜からなる配線11が形成されている。配線11は、基板2の中央部に配置された複数のパッド部11a、基板2の長手方向における一端部に配置された複数のパッド部11b、及び対応するパッド部11aとパッド部11bとを接続する複数の接続部11cを有している。また、配線11は、CrOなどの単層膜、或いはCr−CrOなどの積層膜からなる光反射防止層を基板2の前面2a側に有している。
【0013】
尚、基板2の前面2aに形成された光吸収層13は、光検出素子5の光通過孔50(後述)を介して分光部4に進行する光L1が通過するスリット(光通過スリット)13a、及び光検出素子5の光検出部5b(後述)に進行する光L2が通過する開口部13bを有している。光吸収層13の材料としては、ブラックレジスト、フィラー(カーボンや酸化物など)が入った有色の樹脂(シリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド、複合樹脂など)、CrやCoなどの金属又は酸化金属、或いはその積層膜、ポーラス状のセラミックや金属又は酸化金属が挙げられる。
【0014】
図2,3に示されるように、レンズ部3は、基板2と同一の材料、光透過性樹脂、光透過性の無機・有機ハイブリッド材料、或いはレプリカ成形用の光透過性低融点ガラス、プラスチックなどによって、半球状のレンズがその入射面(底面)3aと略直交し且つ互いに略平行な2つの平面で切り落とされて側面3bが形成された形状(例えば曲率半径6〜10mm、入射面3aの全長12〜18mm、入射面3aの全幅(側面3bの間の距離)6〜10mm、高さ5〜8mm)に形成されており、分光部4によって分光された光L2を光検出素子5の光検出部5bに結像するレンズとして機能する。尚、レンズ形状は球面レンズに限らず、非球面レンズであっても良い。
【0015】
分光部4は、レンズ部3の外側表面に形成された回折層6、回折層6の外側表面に形成された反射層7、並びに回折層6及び反射層7を覆うパッシベーション層8を有する反射型グレーティングである。回折層6は、基板2の長手方向に沿って複数のグレーティング溝6aが並設されることによって形成され、グレーティング溝6aの延在方向は、基板2の長手方向と略直交する方向と略一致する。回折層6は、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティングなどが適用され、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は有機無機ハイブリッド樹脂などのレプリカ用光学樹脂を光硬化させることよって形成される。反射層7は、膜状であって、例えば、回折層6の外側表面にAlやAuなどを蒸着することで形成される。尚、反射層7を形成する面積を調整することで、分光モジュール1の光学NAを調整することができる。また、レンズ部3と分光部4を構成する回折層6とを、上記の材料により一体に形成することも可能である。パッシベーション層8は、膜状であって、例えば、回折層6及び反射層7の外側表面にMgF2やSiO2などを蒸着することで形成される。
【0016】
図1,2及び図4に示されるように、光検出素子5は、基板2の前面2a上に配置され、長方形状(例えば、全長5〜10mm、全幅1.5〜3mm、厚さ0.1〜0.8mm)の半導体基板5a(基板部)を有している。半導体基板5aは、Si、GaAs、InGaAs、Ge、SiGeなどの結晶材料からなる。
【0017】
半導体基板5aの分光部4側の面には、光検出部5bが形成されている。光検出部5bは、CCDイメージセンサ、PDアレイ、或いはCMOSイメージセンサなどであり、複数のチャンネルが分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向(グレーティング溝6aの並設方向)に配列されてなる。また、半導体基板5aの分光部4と反対側の面には、AlやAuなどから構成される遮光層12が蒸着によって形成されている。
【0018】
光検出部5bがCCDイメージセンサの場合、2次元的に配置されている画素に入射された位置における光の強度情報がラインビニングされることにより、1次元の位置における光の強度情報とされて、その1次元の位置における光の強度情報が時系列的に読み出される。つまり、ラインビニングされる画素のラインが1チャンネルとなる。光検出部5bがPDアレイ又はCMOSイメージセンサの場合、1次元的に配置されている画素に入射された位置における光の強度情報が時系列的に読み出されるため、1画素が1チャンネルとなる。
【0019】
尚、光検出部5bがPDアレイ又はCMOSイメージセンサであって、画素が2次元配列されている場合には、分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と平行な1次元配列方向に並ぶ画素のラインが1チャンネルとなる。また、光検出部5bがCCDイメージセンサの場合、例えば、配列方向におけるチャンネル同士の間隔が12.5μm、チャンネル全長(ラインビニングされる1次元画素列の長さ)が1mm、配列されるチャンネルの数が256のものが光検出素子5に用いられる。
【0020】
図2,4及び図5に示されるように、半導体基板5aには、チャンネルの配列方向において光検出部5bと並設され、分光部4に進行する光L1が通過する光通過孔50が形成されている。光通過孔50は、基板2の前面2aと略直交する方向に延在し、光検出部5bに対して高精度に位置決めされた状態でエッチングによって形成されている。
【0021】
光通過孔50は、光L1が入射する光入射開口51aを画定する光入射側部51、及び光L1が出射する光出射開口52aを画定する光出射側部52から構成されている。光入射側部51は、基板2の前面2aに向かって先細りとなるように略四角錘台形状に形成され、基板2の前面2aと略平行な底面51bを有している。
【0022】
光出射側部52は、半導体基板5aの分光部4側の面から、光入射側部51の底面51bと対向し、且つ連結するように略四角柱形状に形成されており、基板2の前面2aと略垂直な側面52bを有している。光出射側部52は、光検出部5bのチャンネル配列方向(グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向)において、その幅H1(最小幅)が光吸収層13のスリット13aの幅H2より大きくなるように形成されている。
【0023】
また、半導体基板5aと基板2又は光吸収層13との間には、少なくとも光L2を透過させるアンダーフィル材15が充填されている。半導体基板5aの基板2側の面には、光出射開口52aの周囲を囲むように矩形環状の凸部53が形成されており、充填されたアンダーフィル材15は、光出射開口52aに到達する前に凸部53でせき止められる。これにより、光通過孔50へのアンダーフィル材15の進入が防止されるため、アンダーフィル材15によって屈折されたり拡散されたりすることなく、本体部2に光を入射させることができる。また、光吸収層13から露出したパッド部11aには、光検出素子5の外部端子が、バンプ14を介したフェースダウンボンディングによって電気的に接続されている。パッド部11bは、外部の電気素子(不図示)と電気的に接続される。
【0024】
上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0025】
まず、光検出素子5を用意する。例えばSiから構成される半導体基板5aにおいて、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)などを用いたアルカリエッチングなどを施すことによって予定される光出射開口52aを囲むように矩形環状の凸部53を形成する。その後、他方の主面B側に光検出部5bや配線や電極パッドを用意する。
【0026】
続いて、検出部5bを基準として両面アライメントを用いたフォトリソグラフィにて所定の位置にマスクを開口し、アルカリエッチングを施すことによって略四角錘台形状の光入射側部51を形成する(図6参照)。このとき、例えばSiから構成される半導体基板5aにおいては、アルカリエッチングを施すことにより(100)結晶面に対して約55°傾斜した(111)結晶面に沿って光入射側部51の側面51cが形成される。そして、検出部5bを基準としたフォトグラフィにて半導体基板5aの他方の主面Bに対して、所定の位置にプラズマ放電を用いたシリコンディープドライエッチングを施すことによって光入射側部51の底面51bに対向する略四角柱形状の光出射側部52を形成する(図7参照)。このようにして、半導体基板5aの一方の主面Aと略直交する方向に延在する光通過孔50が形成される。その後、一方の主面A及び光入射側部51の側面51c及び底面51b上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層12を形成し、検出部5bを基準としてウェハをダインシングすることにより光検出素子5を用意する。
【0027】
次に、レンズ部3に分光部4を形成する。具体的には、レンズ部3の頂点付近に滴下したレプリカ用光学樹脂に対し、回折層6に対応するグレーティングが刻まれた光透過性のマスターグレーティングを押し当てる。そして、この状態で光を照射することによりレプリカ用光学樹脂を硬化させ、好ましくは、安定化させるために加熱キュアを行うことで、複数のグレーティング溝6aを有する回折層6を形成する。その後、マスターグレーティングを離型して、回折層6の外側表面にAlやAuなどをマスク蒸着や全面蒸着することで反射層7を形成し、更に、回折層6及び反射層7の外側表面にMgF2やSiO2などをマスク蒸着や全面蒸着することでパッシベーション層8を形成する。
【0028】
その一方で、基板2を準備し、スリット13a及び開口部13bを有する光吸収層13を基板2の前面2aに形成する。尚、スリット13a及び開口部13bは、基板2に分光部4を位置決めするための基準部となる基板2の外縁部に対して所定の位置関係を有するように形成される。
【0029】
光吸収層13の上には、光検出素子5がフェースダウンボンディングによって実装される。続いて、光検出素子5と基板2の前面2aとの間にアンダーフィル材15が充填される。その後、分光部4が形成されたレンズ部3を、基板2の外縁部を基準部として、光学樹脂剤18によって基板2の後面2bに接着することで、分光モジュール1を得る。尚、この際、光検出素子5と基板2とはバンプ14を介して電気的に接続されている。
【0030】
上述した分光モジュール1の作用効果について説明する。
【0031】
この分光モジュール1では、分光部4に進行する光L1が光通過孔50を通過するに際し、基板2側に向かって先細りとなる光入射側部51の底面51bと対向するように形成された光出射側部52に入射した光のみが光出射開口52aから出射される。このとき、光入射側部51の底面51bや側面51cに入射した迷光Mは、光入射開口51a側に反射されるので、光出射側部52に迷光が入射することを抑制することができる。従って、分光モジュール1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、この分光モジュール1では、ウェハ状態の半導体基板5aに対し、アルカリエッチングを施すことによって光入射側部51を一括して形成することで、光検出素子5の用意工程における短時間化及び低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、半導体基板5aの他方の主面Bから、シリコンディープドライエッチングを施すことにより光出射側部52を精度良く形成することができるので、安定した光通過特性を有する光通過孔50の形成が可能となり、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。具体的には、分光モジュール1では、光検出部5bが配置される他方の主面B側から、光出射側部52を形成するため、同一面上の光検出部5bに対する光出射側部52の位置精度を高くすることが可能となる。この光通過孔50の光出射側部52を通過する光が分光部4のグレーティング溝6aで回折されると共に反射され、光検出部5bにおいて検出されるため、光出射側部52と光検出部5bとの位置精度を向上させることにより、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。更に、この光出射側部52の開口断面の形状(すなわち光出射開口52aの形状)が光検出部5bにおいて光学的に結像され、半導体基板5aの長手方向における光出射側部52の最小幅に対応して光検出部5bのチャンネルが配列されている。このため、分光モジュール1の分解能は、チャンネルの配列方向における光出射側部52の最小幅に大きく影響される。従って、シリコンディープドライエッチングを施すことによって光出射側部52を精度良く形成することで、製品毎に分解能にバラツキが生じることを抑制し、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0034】
また、この分光モジュール1においては、半導体基板5aがSiなどの結晶材料から構成されており、アルカリエッチングを施すことにより材料の(111)結晶面に沿って側面を形成することで、精度良く光入射側部51を形成することができるので、高精度な光通過孔50の形成が可能となる。従って、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、分光モジュール1の分解能は、グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光が通過するスリットの最小幅に大きく影響される。このため、グレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光検出素子5における光通過孔50の最小幅H1より光吸収層13のスリット13aの幅H2を小さくすることで、分光モジュール1の分解能を向上させることができる。このことは、分光モジュール1の信頼性の向上に有利である。
【0036】
尚、図8に示されるように、光検出素子5に形成される光通過孔60は、光入射側部61の底面61bと略垂直な側面62bを有する光出射側部62が断面長円形状に形成されていても良い。また、図9に示されるように、図5と比べて、半導体基板5aの長手方向と略直交する方向(グレーティング溝6aの延在方向)に光出射側部72が延長され、光入射側部71の底面71bの幅と光出射側部72の開口断面の幅とが等しくなるように、すなわち光出射側部72の側面72bと光入射側部71の側面71cとが直接連結するように形成されていても良い。或いは、図10に示されるように、図9と比べて、更に光出射側部82が延長され、半導体基板5aの長手方向と略直交する方向における光入射側部81の底面81bの幅より、光出射側部82の開口断面の幅が長くなるように形成されていても良い。
[第2の実施形態]
【0037】
第2の実施形態に係る分光モジュール21は、光検出素子の構成と基板の前面に配線基板が配置されている点とが第1の実施形態に係る分光モジュール1と相違している。
【0038】
図11,12に示されるように、分光モジュール21においては、光検出素子22の分光部4と反対側の面に、端子電極23が複数形成されている。各端子電極23は、対応する配線基板24のパッド部24aとワイヤ26によって接続されている。これにより、端子電極23と配線基板24とが電気的に接続されて、光検出部22bで発生した電気信号は、端子電極23、配線基板24のパッド部24a及びパッド部24bを介して外部に取り出される。
【0039】
半導体基板22aに形成された光通過孔90は、光入射開口91aを画定する光入射側部91、及び光出射開口92aを画定する光出射側部92から構成されている。光入射側部91は、基板2の前面2aと略垂直な側面91bを有している。光出射側部92は、基板2の前面2aに向かって末広がりとなるように略四角錘台形状に形成され、基板2の前面2aと略平行な上面92bを有している。光入射側部91は、光出射側部92の上面92bに対向して略四角柱形状に形成され、その側面91bは、光出射側部92の上面92bに連結されている。また、基板2の前面2aに形成された光吸収層27は、分光部4のグレーティング溝6aの延在方向と略直交する方向において、光入射側部91の最小幅より幅の小さいスリット(光通過スリット)27aを有している。
【0040】
上述した分光モジュール21の製造方法の製造方法について説明する。
【0041】
まず、光検出素子22を用意する。例えばSiから構成されるウェハ状態の半導体基板22aにおいて、他方の主面B側に光検出部22bや配線や電極パッドを用意する。その後、他方の主面BのSiO2などの絶縁膜上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層29を形成し、光検出素子22を用意する。
【0042】
続いて、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)などを用いたアルカリエッチングやドライエッチングなどを施すことによって予定される光出射開口92aを囲むように矩形環状の凸部93を形成する。その後、光検出部22bを基準として、半導体基板22aの一方の主面Aに対して、両面アライメントを用いたフォトリソグラフィにて所定の位置にマスクを開口し、KOH(水酸化カリウム)やTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド)を用いたアルカリエッチングを施すことによって略四角錘台形状の光出射側部92を形成する。そして、検出部22bを基準としたフォトグラフィにて半導体基板22aの他方の主面Bに対して、所定の位置にプラズマ放電を用いたシリコンディープドライエッチングを施すことによって光出射側部92の底面92bに連結する略四角柱形状の光入射側部91を形成する。このようにして、半導体基板22aの一方の主面Aと略直交する方向に延在する光通過孔90が形成される。その後、一方の主面A及び光入射側部91の側面91c及び底面91b上に、AlやAuなどを蒸着させることで遮光層29を形成し、検出部22bを基準としてウェハをダインシングすることにより光検出素子22を用意する。
【0043】
そして、光検出素子22と基板2の外縁部あるいはアライメントマークを基準部として、光検出素子22の他方の主面B側と光学樹脂材17によって基板2の前面2aに接着する。その後、対応する光検出素子22の端子電極23と基板2のパッド部24aとをワイヤ26によって接続する。パッド部24aは配線層19を介して端子パッド部24bに電気的に接続されている。尚、基板2において、黒レジストなどからなる光吸収層が光検出素子22の外周部に配置されているために、外乱光や分光部4からの信号として不要な反射光を吸収し、信頼性を確保することができる。
【0044】
そして、分光部4が形成されたレンズ部3を、基板2の外縁部を基準部として、光学樹脂剤18によって基板2の後面2bに接着することで、分光モジュール21を得る。
【0045】
上述した第2の実施形態に係る分光モジュール21によれば、ウェハ状態の半導体基板22aに対し、アルカリエッチングを施すことによって光出射側部92を一括して形成することで、光検出素子22の用意工程における短時間化及び低コスト化を図ることができる。また、半導体基板5aの他方の主面Bから、シリコンディープドライエッチングを施すことにより光出射側部52を精度良く形成することができるので、安定した光通過特性を有する光通過孔50の形成が可能となり、分光モジュール1の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、第1の実施形態における光入射側部及び第2の実施形態における光出射側部の形状は、略四角錘台形状に限られず、基板2の前面2aと略平行な底面(上面)を有し、且つ前面2aに向かって先細りとなる形状であれば良い。同様に、第1の実施形態における光出射側部及び第2の実施形態における光入射側部の形状は、略四角柱形状に限られず、基板2の前面2aと略垂直な側面を有し、且つ、対となる光入射側部(光出射側部)の底面(上面)に対向するように形成されていれば良い。
【0048】
また、光通過孔は、光入射側部と光出射側部とが直接連結する態様に限られず、その間を連結する中間部(例えば、側面の傾斜角度や開口断面の形状が異なる部位)が設けられていても良い。
【0049】
また、第1の実施形態における光入射側部及び第2の実施形態における光出射側部は、アルカリエッチングによって形成される場合に限られず、種々のウェットエッチングやドライエッチングによって形成される態様であれば良い。同様に、第1の実施形態における光出射側部及び第2の実施形態における光入射側部は、シリコンディープドライエッチングによって形成する場合に限られず、種々のドライエッチングによって形成される態様であれば良い。
【0050】
また、上述した第1の実施形態において、第2の実施形態における光通過孔の構成を採用しても良く、第2の実施形態において、第1の実施形態における光通過孔の構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1,21…分光モジュール、2…基板(本体部)、2a…前面(所定の面)、3…レンズ部(本体部)、4…分光部、5,22…光検出素子、5a,22a…半導体基板、光検出部…5b,22b、6…回折層、6a…グレーティング溝、13,27…光吸収層、50,60,70,80,90…光通過孔、51,61,71,81,91…光入射側部、52,62,72,82,92…光出射側部、51a,61a,71a,81a,91a…光入射開口、51b,61b,71b、81b…底面、51c,61c,71c,81c,92c…側面、52a,62a,72a,82a,92a…光出射開口、92b…上面(底面)、52b,62b,72b,82b,91b…側面、A…一方の主面、B…他方の主面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を分光すると共に反射する分光部と、前記分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールであって、
前記光検出素子は、前記分光部に進行する光が通過する光通過孔が形成された基板部を有し、
前記光通過孔は、前記基板部の一方の主面に光入射開口を画定する光入射側部、及び前記基板部の他方の主面に光出射開口を画定する光出射側部を含み、
前記光入射側部は、前記一方の主面と略平行な底面を有し且つ前記他方の主面に向かって先細りとなるように形成され、
前記光出射側部は、前記他方の主面と略垂直な側面を有し且つ前記底面と対向するように形成され、
前記光入射側部の側面には、遮光層が形成されていることを特徴とする分光モジュール。
【請求項1】
入射した光を分光すると共に反射する分光部と、前記分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備える分光モジュールであって、
前記光検出素子は、前記分光部に進行する光が通過する光通過孔が形成された基板部を有し、
前記光通過孔は、前記基板部の一方の主面に光入射開口を画定する光入射側部、及び前記基板部の他方の主面に光出射開口を画定する光出射側部を含み、
前記光入射側部は、前記一方の主面と略平行な底面を有し且つ前記他方の主面に向かって先細りとなるように形成され、
前記光出射側部は、前記他方の主面と略垂直な側面を有し且つ前記底面と対向するように形成され、
前記光入射側部の側面には、遮光層が形成されていることを特徴とする分光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−92541(P2013−92541A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−30219(P2013−30219)
【出願日】平成25年2月19日(2013.2.19)
【分割の表示】特願2008−311087(P2008−311087)の分割
【原出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月19日(2013.2.19)
【分割の表示】特願2008−311087(P2008−311087)の分割
【原出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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