説明

分光測色器、および画像形成装置

【課題】光検出手段の各画素が受光する光の波長値を精度よく値付けすることが可能な分光測色器を提供する。
【解決手段】被測色物に測色光を照射する光源と、前記被測色物からの反射光を分光する分光手段と、前記分光手段により分光された分散光を受光し、当該分散光の強度に応じて信号を出力する複数の画素を有する光検出手段と、基準となる被測色物を測色した際に前記光検出手段にて検出された分散光のプロファイルにおける複数の変曲点の波長と画素との対応関係を用いて、前記光検出手段を構成する複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する演算手段とを有し、前記演算手段は、前記複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する際に、前記複数の変曲点に対応する画素によって出力される信号が基準値以上で且つ飽和しない出力レベルとなるよう、変曲点ごとに測色条件を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式や電子写真方式等の複写機やプリンタなどで出力された画像の測色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物や物体色の色を測定する装置の一つとして分光測色器(カラーセンサ)が用いられている。分光測色器は、被測色物に白色の光を照射し、反射光を回折格子やプリズムを用いて波長分散した後に分散された分散光の強度をラインセンサで検出する。そして、分光測色器は、検出された分散光強度の波長分布、光源の光の波長分布、センサの分光感度などを考慮した演算を行って被測色物の分光反射率を求める。ここで、被測色物への入射光量は、可視光波長全域にわたって均一ではないので、被測色物の分光反射率を求めるためには、波長ごとの入射光の強度を求める必要があり、ラインセンサの各画素に入射する光の波長分布を求める必要がある。
【0003】
しかしながら、ラインセンサの各画素と当該画素に値付けられた波長との関係は、経時変化や熱的な変化によってズレを生じてしまう。尚、ここでの値付けるとは対応付けるということを意味する。このため、反射光の波長分布を正しく測定し、さらに入射光の強度分布による補正を行うには、ラインセンサの各画素に値付けられた波長を適宜校正する必要がある。
【0004】
上記問題に対し、特許文献1では、測色用の光受光素子(画素)を一列に配列したラインセンサについ、センサの画素を必要最小限の数より余分に設ける。更に、分光用の光学素子とセンサの間に可視光以外の波長の光を吸収するフィルタを設けるか、所定の波長の光を発光する発光素子を追加することにより、センサの各画素に入射している光の波長を特定する手法が提案されている。この方法によれば、センサの各画素に入射している光の波長を特定することにより、精度の高い部品や、厳しい位置精度の管理、調整を不要とし、トナーパッチの分光反射率を低コストで検出することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−114187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、別途、光の吸収手段(フィルタ)が必要となりコスト面で不利である。或いは、用いるフィルタによっては可視光を減衰させ、色測定の精度を低下させてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題及び他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。センサの各画素に入射している光の波長を特定するうえで、例えば、コスト面で有利な仕組みを提供する。また例えば、色測定の精度を簡易に向上させる仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明は、以下の構成を有する。すなわち、被測色物に測色光を照射する光源と、前記被測色物からの反射光を分光する分光手段と、前記分光手段により分光された分散光を受光し、当該分散光の強度に応じて信号を出力する複数の画素を有する光検出手段と、基準となる被測色物を測色した際に前記光検出手段にて検出された分散光のプロファイルにおける複数の変曲点の波長と画素との対応関係を用いて、前記光検出手段を構成する複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する演算手段とを有し、前記演算手段は、前記複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する際に、前記複数の変曲点に対応する画素によって出力される信号が基準値以上で且つ飽和しない出力レベルとなるよう、変曲点ごとに測色条件を調整する。
【0009】
また、本願発明の別の構成として、以下の構成を有する。すなわち、被測色物に測色光を照射する光源と、前記被測色物からの反射光を分光する分光手段と、前記分光手段により分光された分散光を受光し、当該分散光の強度に応じて信号を出力する複数の画素を有する光検出手段と、基準となる被測色物を測色した際に前記光検出手段にて検出された分散光のプロファイルにおける複数の変曲点の波長と画素との対応関係を用いて、前記光検出手段を構成する複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する演算手段とを有し、前記演算手段は、前記複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する際に、前記複数の変曲点に対応する画素によって出力される信号が基準値以上で且つ飽和しない出力レベルとなるよう、変曲点ごとに測色条件を調整する分光測色器を備え、記録媒体に像を形成する画像形成装置であって、前記記録媒体に形成された像に対して前記分光測色器の演算手段が演算した前記複数の画素それぞれと波長との対応関係を、基準となる分散光のプロファイルにおける波長と画素との対応関係を用いて補正する補正手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサの各画素に入射している光の波長を特定するうえで、例えば、コスト面で有利な仕組みや、色測定の精度を簡易に向上させる仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】分光測色器の一実施例を示す概略構成図。
【図2】分光測色器で予め測定された白色基準試料測定スペクトルを示す図。
【図3】第一実施形態に係るフローチャート。
【図4】測定された白色基準試料測定スペクトルを示す図。
【図5】測定された白色基準試料測定スペクトルを示す図。
【図6】分光測色器における波長とラインセンサ上の相対位置関係を示す図。
【図7】第一実施形態に係るラインセンサ画素と波長の関係を示す図。
【図8】第二実施形態に係るフローチャート。
【図9】第二実施形態に係る2次近似曲線を示す図。
【図10】理論値と近似値の差分を示す図。
【図11】画像形成装置の一実施例を示す概略構成図。
【図12】画像形成装置の構成を説明する概略図。
【図13】画像処理部におけるデータ変換の流れを示す図。
【図14】白色LEDおよびトナーの分光輝度特性を示す図。
【図15】白色LEDでマゼンタ色パッチを投影した反射光の分光特性を示す図。
【図16】ラインセンサの出力補正を説明するフロー図。
【図17】白基準及びM色パッチの画素位置と反射光量の対応関係を示す図。
【図18】色度センサの分光波長とその投影位置関係を示す図。
【図19】ラインセンサの各画素と波長の対応を示す図。
【図20】分光測色器の光学系を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態の例について、図を用いて説明する。なお、ここで述べる構成は一例であり、これに限定するものではない。また、本明細書の構成として、第一実施形態および第二実施形態において分光測色器に関する説明を行う。さらに、第三実施形態および第四実施形態にて分光測色器を備える画像形成装置全体における波長補正の実施形態についての説明を行う。
【0013】
<第一実施形態>
本実施形態に用いる分光測色器の概略図を図1に示す。図1(a)に示す分光測色器10は、可視光全体にわたる発光波長分布を有する白色光源12、集光レンズ17、回折格子18、電荷蓄積型のラインセンサ11を有する。更に分光測色器10は、AD変換器21、制御演算部22、メモリ23を有する。制御演算部22は、各種演算の他に周辺デバイス(ラインセンサ11やAD変換器21やメモリ23や白色光源12)の制御をも司る。
【0014】
ここで白色光源12としては、例えば、タングステン光や白色LED、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の3色LED等などが使用可能である。本実施形態においては白色光源12として、青色光を発光するLED素子を、黄色の蛍光材を混合した樹脂でパッケージングした白色LEDを用いる。この場合において、波長が460nm付近のピークは青色LEDの発光スペクトルであり、590nm付近のピークは黄色蛍光体のスペクトルである。このスペクトルは蛍光材がLED素子からの光を受けて蛍光したときに発生される光によるものである。白色光源12が発する光量は制御演算部22の作用によって適宜調整することが可能になっている。なお、本実施形態において、図2に示すように、青色LEDの発光スペクトルに対応するピークを453nmとし、黄色蛍光体のスペクトルを567nmとする。また、白色光源12から照射される対象として、被測色物14および白板などの白基準24を示している。
【0015】
図1(b)は分光測色器10が有するラインセンサ11の詳細模式図であり、134個の画素がライン上に並んだ構成をしている。本実施形態では、図1(b)に示した画素番号を各画素のアドレスとする。白色光源12から発せられた光15は、開口13を通過し転写材の上に形成された被測色物14に約45°の角度で入射し、被測色物14の光吸収特性に応じた散乱光となる。散乱光16の一部は、集光レンズ17に取り込まれて平行光となった後、回折格子18に入射角90°で入射し、分光される。分光された分散光は、ラインセンサ11に入射する。
【0016】
図1(b)に示すように、本実施形態では、ラインセンサ11は、波長が約350nmから約750nmの可視光を3nm単位で検出するために必要な134画素を有する。なお、ラインセンサ11には、誤差用の画素や、暗時出力補正用及び有効画素の対称性を向上させ素子間ばらつきを低減させるために端部にダーク画素を設けても構わないが、ここでは簡略化のため、省略する。ラインセンサ11は、入射した分散光の強度に応じて画素ごとに電圧信号を出力する。そして、ラインセンサ11により出力された信号をAD変換器21によってAD変換し、被測色物14からの反射光を画素毎のデジタル強度信号として得ることができる。本実施形態にて用いたラインセンサ11は電荷蓄積型ラインセンサであり、所定の蓄積時間に入射した分散光の強度に応じて、画素ごとに電圧信号を出力する。ラインセンサ11における蓄積時間は、制御演算部22の作用によって、適宜調整することが可能である。
【0017】
これら各画素により出力されたデジタル強度信号は制御演算部22に送られ、以下の演算がなされる。ラインセンサ11の各画素には、後述する方法にて予め対応する波長λが値付けられ、メモリ23に保持されている。そのため、メモリ23に保持された値により、被測色物14からの反射光の波長−信号強度スペクトルOi(λ)が得られる。被測色物14の分光反射率Or(λ)は、以下の式(1)により求められる。ここで、別途測定される分光反射率が既知の基準試料(一般には白色基準試料)に白色光源12の光を照射した際の反射光の波長−信号強度スペクトルWi(λ)と、基準試料が有する分光反射率Wr(λ)とが用いられる。尚、Wr(λ)は既知とする。
【0018】
Or(λ)={Oi(λ)/Wi(λ)}×Wr(λ) ・・・式(1)
さらに、制御演算部22は得られた分光反射率Or(λ)を元に、380nmから730nmの範囲の分光反射率を10nm毎に補完演算して外部へ出力する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る分光測色器10を用いて、被測定対象として白色基準試料(白基準24)を測定した際に得られる波長−信号強度スペクトルであり、最大強度を“1”として正規化した図である。白色基準試料の波長−信号強度スペクトルを得るためには、ラインセンサ11の画素位置と波長λとの関係が予め値付けられている(即ち、対応付けられている)必要が当然ある。この値付けの作業は、例えばラインセンサ11の出荷時に波長が既知の基準単一波長スペクトルを用いるなどして従来公知の方法にて行うことができる。本実施形態においては、図2のスペクトルを得るにあたって、ラインセンサ11の画素と波長λとの関係を朝日分光社製のモノクロメータ(CMS−100)を用いて対応付けた。しかし、出荷時に値付けたラインセンサ11の画素と波長λとの関係は、上述したように経時変化・熱・応力などの影響を受けて変化してしまうため、ユーザが分光測色器を使用する場合には、改めてその関係を値付けなおす必要がある。
【0020】
[波長の再値付け方法]
本実施形態における、ラインセンサ11の各画素に対応する波長λの再値付けを行う手法について、具体的な手順を図3のフローチャートを用いて説明する。本処理は、分光測色器10により実行される。ここで、予め図1のメモリ23には、図2に示した白色基準試料(白基準24)を測定した際のスペクトルの変曲点として、極大ポイントの波長453nmと567nmが分散光プロファイルとして記録されている。ここでの分散光プロファイルとは、各波長に分散された光が各々どれだけの分光反射率を持つか、或いは、ある条件下において各波長に分散された光が各々どれだけの反射強度を持つかの光特性の情報を指す。また各波長に分散された光の強度について、一番強度の強い波長の光強度を1にしたときの比率を分散光プロファイルとしても良い。また、本実施形態にて用いるプロファイルにおいて、例えば全ての波長と光特性と対応関係の値を保持してもよいし、また、図2に示すような、変曲点の値のみを記憶部に保持するようにしても構わない。これは、目的やメモリ等に保持するデータ量などを考慮し、異ならせても構わない。
【0021】
まず、分光測色器10は、S1にて第1の変曲点の予備検出を行う。この予備検出では、センサ出力の最大値が飽和値以下であり且つ基準値以上であることを確認する。ここで、第1の変曲点とは、図2に示す例においては、波長453nmの極大ポイントが相当する。
【0022】
以下、S1の処理の詳細について説明する。制御演算部22は、図1(b)に示す電荷蓄積型のラインセンサ11が有する各画素による光電圧出力を所定時間蓄積した信号をリセットする。その後、分光測色器10は、白基準24を光源である白色LED12で照射し、白基準24からの反射光を回折格子18で波長分散する。
【0023】
そして、各波長の分散光はラインセンサ11に入射され、ラインセンサ11は、その入射光によって発生する光電圧出力を所定時間蓄積した信号として得る。分光測色器10は、取得した信号をAD変換器21でAD変換し、制御演算部22に送る。分光測色器10は、制御演算部22にて各画素の信号の中から最大出力値を抽出する。
【0024】
そして、制御演算部22は、S2、S3にて、抽出された最大出力値が飽和値以下であること及び基準値以上であるか否かを判別する。ここで用いられる飽和値および基準値に関しては、予め定義され、メモリ23にて保持されている。
【0025】
S1にて抽出した最大出力値が飽和値に達している場合(S3にてNO)もしくは基準値以下である場合(S2にてNO)には、制御演算部22は、第1の出力調整を行う(S4)。つまり、ここで所定の出力レベルとするために、抽出される最大出力値が、基準値≦最大出力値<飽和値となるように白色LED12の発光出力を調整する。具体的には、制御演算部22は、随時送られてくるAD変換信号をモニタしながら白色LED12の発光出力を制御し、上記条件を満たす適正な出力となるよう測色条件を調整する。このとき、出力値が基準値に満たない場合には、分光測色器10は制御演算部22により白色LED12の出力を上げる制御を行う。また、出力値が飽和値を超えている場合には、制御演算部22は、白色LED12の発光出力を下げる制御を行う。本実施形態においては、AD変換器21は12ビットで動作しており、4095(dec)が飽和値となる。また、信号出力としては、飽和値の3/4程度が得られれば十分として、基準値を3000(dec)として白色LED12の発光出力の調整を行う。尚、decとはdecimalの略である。
【0026】
白色LED12の発光出力が適正に調整されると(S2およびS3にてYES)、次に分光測色器10は、S5にて第1の変曲点の検出を行う。白色LED12の発光出力調整後における各画素が出力する光電圧出力がAD変換されて制御演算部22に送られる。制御演算部22は、改めて各画素の信号の中から最大出力値を抽出し、最大出力値を有する画素を特定する。なお、1度目のS2、S3の判断で、共に判断した場合には、S1で予備抽出されたセンサ出力値が制御演算部22により採用される。
【0027】
図4は、S4を経由して或いは経由しないで制御演算部22に送られた信号の一例であり、画素位置がアドレス35の出力であるVout(35)が極大値を示している。一方、メモリ23には図2に示したように白基準24を測定した際に得られるスペクトルの極大ポイントの波長情報が予め記憶されている。この予め記憶されている白基準24における分散光の特性を分散光プロファイルとして用いる。そのため、制御演算部22はその波長情報と信号を比較することにより、アドレス35の画素が453nmの波長の光を受光している画素であると特定する。
【0028】
次に、S6にて分光測色器10は、第2の変曲点の予備検出を行う。S1と同様に、この予備検出では、センサ出力の最大値が飽和値以下であり且つ基準値以上であることを確認する。ここで、第2の変曲点とは、図2に示す例においては、波長567nmの極大ポイントが相当する。制御演算部22は、もう一つの極大値を示しているアドレス69の画素の出力値を確認する。本実施形態において、この出力値は1925(dec)であるが、アドレス69の隣の画素であるアドレス70の出力値は1924(dec)である。ここで、本実施形態におけるラインセンサ11の電圧出力値の電気ノイズ変動はAD変換後の値で±1(dec)を有している。したがって、これら出力値が電気ノイズ変動の影響を受けていることを考慮すると、アドレス69の画素ではなく、アドレス70の画素が真の第2の変曲点である可能性がある。変曲点の画素の決定に誤差が生じると、後に説明する各画素への波長の値付け動作において、その他の画素の波長値付けに更に大きな誤差を生じさせる要因となってしまう。したがって、第2の変曲点の画素を決定するためにはノイズの影響を無視できるだけの大きさの電気信号量を得る必要がある。
【0029】
そこで本実施形態においては、極大値を示したアドレス69の画素出力をモニタしながら、その値が前述の基準値以上かつ飽和値未満となるように制御演算部22が白色LED12の発光出力を調整する。S6にて抽出した最大出力値が飽和値に達している場合(S8にてNO)もしくは基準値以下である場合(S7にてNO)には、制御演算部22は、第2の出力調整を行う(S9)。ここでは、制御演算部22は、随時送られてくるAD変換信号をモニタしながら白色LED12の発光出力電圧を制御し、適正な出力となるよう調整する。この第2の出力調整は、S4と同様に制御されることとなる。白色LED12の発光出力調整後に得られるスペクトルは、図5(a)に示されるように、第1の変曲点の信号が飽和している。しかし、ここでの動作は第2の変曲点の画素を決定することが目的であるので、第1の変曲点の信号飽和は問題とならない。
【0030】
白色LED12の発光出力が適正に調整されると(S7およびS8にてYES)、次に分光測色器10は、S10にて第2の変曲点検出を行う。分光測色器10は、制御演算部22にて改めてアドレス71付近の極大値を確認する。本実施形態における例では上記処理の結果、図5(b)に示す通りアドレス69の出力値が3279(dec)、アドレス70は3282(dec)となり、電気ノイズ変動以上の有意差のある出力が得られる。この結果、極大値を示すアドレスはアドレス69ではなくアドレス70であると決定することができる。このようにして、アドレス70の画素が567nmの波長の光を受光している画素であることが特定できる。
【0031】
第2の変曲点検出の後、S11にて制御演算部22はラインセンサ11の画素と波長の対応を特定する。本実施形態の分光測色器10の構成において、波長とラインセンサ11上の相対位置は、図6の実線で示される通り、ほぼ線形の関係にある。従って、2組の画素位置と波長との対応関係から、図6の破線にて示される線形補完をすることで、各画素に対する波長の対応付けが可能である。図7に、S5およびS10にて求めたアドレスと波長の関係(アドレス35:453nm、アドレス70:567nm)に基づいて、本補正方法にて対応付けしたラインセンサ11の各画素と波長の関係を記す。分光測色器10は、制御演算部22にて、これらの情報をメモリ23に記憶させ、再値付け動作を終了する。
【0032】
以上説明した手順にて、ラインセンサ11の各画素に対応する波長λの値付けが行われる。本実施形態によれば、白基準24からの反射スペクトルをラインセンサ11で読み取った際の2つの変曲点としての極大値に対応する波長をメモリ23に記憶する。これにより、任意のタイミングでラインセンサ11の各画素に対応する波長λの値付けを行うことが可能である。したがって、経時変化や熱、応力などにより分光測色器10の枠体が変形し、ラインセンサ11に投影される分光光の位置がシフトしても、各画素と波長の対応関係を再値付けすることが可能となる。
【0033】
そして、上記の値付けを行うにあたって、2つの変曲点のそれぞれに対して最適な信号量を確保した上で対応する画素を特定する。そのため、本実施形態に示した第2の変曲点(極大値)のようにスペクトル形状がブロードである場合、或いは信号の出力レベルが低い場合など、通常の方法では位置が特定しづらいスペクトル形状においても、変曲点を精度よく特定することが可能となる。したがって、外部から校正用の光源を入射させたり、分光測色器内に校正用光源を別途設けるなどしたりする必要が無く、安価で簡便な手段により分光測色器の精度を向上させることが可能となる。
【0034】
以上の動作により、ラインセンサ11の画素と波長λとの対応付けが完了する。本実施形態の分光測色器10にて被測定物を測色するにあたっては、まず制御演算部22が式(1)に示された波長λを画素アドレスnに置き換える。そして、予め測定しておいた白基準24の出力信号Oi(n)と、被測定物を測定した際の出力信号Wi(n)から、各画素についてOi(n)/Wi(n)を演算する。その後、本補正方法にて対応付けしたラインセンサ11の各画素と波長との対応関係をメモリ23から読み出し、画素アドレスnを波長λに置き換えてOi(λ)/Wi(λ)を得る。そしてメモリ23に記憶されているWr(λ)の値を読み出し、式(1)に従って被測色物の分光反射率Or(λ)を得ることができる。
【0035】
尚、本実施形態では白基準24からの反射光を用いてラインセンサ11の各画素に対応する波長λの値付けを行っているが、予め変曲点の波長が既知であれば測色光は白色に限らず基準として用いることが可能である。また、本実施形態では、回折格子18を用いて反射光を分光させた例を示した。しかし、回折格子に限らず、プリズムなどの分光手段を用いた場合においても本発明は適用可能である。また、本実施形態において、変曲点として2つの極大値を用いたが、より多くの極大値を変曲点として用いても構わない。
【0036】
<第二実施形態>
本実施形態に用いる分光測色器10の構成は第一実施形態にて説明したものと同様であるため、構成の詳細な説明は割愛する。第一実施形態では、ラインセンサ11の各画素に対応する波長λの値付けを、ラインセンサ11で観測されるスペクトルの2つの変曲点の波長を基に、線形補完を用いて行った。
【0037】
これに対し本実施形態では、分光測色器の更なる精度向上を目的として、ラインセンサ11の画素と波長λとの対応関係をさらに厳密に値付けする。具体的には、変曲点の画素値の値付けを小数点を含めて算出すること、および変曲点以外の画素の波長値付けを2次の近似式を用いて行う。更に、第一実施形態にて行った光源の出力調整による信号量の増大の替わりに、ラインセンサに対する光の蓄積時間を調整することで受信信号量の増大を図る。
【0038】
[波長の再値付け方法]
以下に、ラインセンサ11の各画素に対応する波長λを値付ける手法について、具体的な手順を図8のフローチャートを用いて説明する。本処理は、分光測色器10により実行される。なお、予めメモリ23には、図2に示す白色基準試料を測定した際のスペクトルの変曲点として、2つの極大ポイントに対応する波長453nmと567nmが分光測色器10の出荷時情報として記録されている。さらに、極大ポイントの間にある極小ポイントに対応する波長491nmの値が記録されている。本実施形態の例においては、第1の変曲点は波長453nmの極大ポイントが相当し、第2の特徴点は波長567nmの極大ポイントが相当する。また、第3の特徴点として、波長491nmの極小ポイントが相当する。また、本実施形態においては、出荷時情報が以降の処理における基準値となる。また、以下の処理にて用いられる基準値および飽和値はメモリ23にて予め保持されている。
【0039】
まず、分光測色器10は、第一実施形態と同様に、第1の変曲点の予備検出を行う(S101)。具体的には、分光測色器10は、ラインセンサ11が有する各画素の光電圧出力を所定時間蓄積した信号をリセットする。その後、分光測色器10は、白色基準試料を光源の白色LED12で照射し、波長分散された反射光をラインセンサ11で受光し、スペクトル信号を得る。分光測色器10は、スペクトル信号をAD変換器21にてAD変換し、制御演算部22に送る。
【0040】
制御演算部22は、S101にて各画素の信号の中から最大出力値を抽出し、その値が飽和値以下であること及び予め定めた基準値以上であるか否かを判別する(S102、S103)。そして、飽和値に達している場合(S103にてNO)もしくは基準値以下である場合(S102にてNO)には、制御演算部22は、S104にてラインセンサ11の蓄積時間を制御し、適正な出力となるよう調整する(第1の出力調整)。ここでの調整方法は、出力値が基準値に満たない場合、制御演算部22によりラインセンサ11の各画素における蓄積時間がより長くなるように設定される。また、出力値が飽和値を超えている場合には、制御演算部22によりラインセンサ11の各画素の蓄積画素をより短く設定する。
【0041】
ラインセンサ11の蓄積時間が適正に調整されると(S102およびS103にてYES)、S105にてAD変換器21は、白色LED12の出力調整した際に各画素が出力する光電圧出力をAD変換する。そして、制御演算部22は変換されたデータをメモリ23にて格納する(第1の変曲点の検出)。本実施形態における例では、画素位置がアドレス35の出力であるVout(35)が極大値を示している。ここで、制御演算部22は、制御演算部22にてアドレス46およびその前後それぞれ2つのアドレス、計5つのアドレスの出力(Vout(33)〜Vout(37))を読み出し、2次の近似曲線を算出する(図9)。そして、制御演算部22は、その近似曲線の極大値に対応する画素値を、小数点を含めて算出し、メモリ23に記憶されている波長情報と組み合わせることで算出した画素値と波長との対応関係として値付ける。
【0042】
次に、次にS106にて分光測色器10は、第一実施形態と同様に、第2の変曲点の予備検出を行う。図5において、制御演算部22は、もう一つの極大値を示しているアドレス70の画素の出力値を確認する。そして、第一実施形態と同様に、S109にて制御演算部22は、極大値を示したアドレス71の画素出力をモニタしながら、その値が前述の基準値以上かつ飽和値未満となるように制御演算部22がラインセンサの蓄積時間を調整する(第2の出力調整)。ここでの調整方法は、S101において行われる方法と同様である。
【0043】
第2の出力調整にて蓄積時間が適正に調整されると(S107およびS108にてYES)、S110にて、制御演算部22は、アドレス70付近の極大値を確認し、その前後それぞれ2つのアドレスの出力を読み出す。本実施形態では、図5(b)に示すようにアドレス70の出力が極大値であり、その前後それぞれ2つのアドレスの出力(Vout(68)〜Vout(72))を読み出す。そして、分光測色器10は、S105と同様に2次の近似曲線から極大値に対応する画素値を、小数点を含めて算出し、メモリ23に記憶されている波長情報と組み合わせることで算出した画素値と波長との対応関係として値付ける。
【0044】
さらに本実施形態では、S111にて制御演算部22は、前述した2つの極大ポイントの間にある極小値を示しているアドレス45の画素および、その前後それぞれ2つのアドレスの出力を確認する(第3の変曲点の予備検出)。そして、S104やS109と同様の手法にて、S114にて制御演算部22は、5つのアドレスの画素出力をモニタしながら、その最小値が前述同様の基準値以上かつ飽和値未満となるように、ラインセンサ11の蓄積時間を調整する(第3の出力調整)。ここでの調整方法は、S101において行われる方法と同様である。
【0045】
第3の出力調整にて蓄積時間が適正に調整されると(S111およびS112にてYES)、S113にて制御演算部22は、アドレス45付近の極小値を確認し、その前後それぞれ2つのアドレスの出力を読み出す。本実施形態では図5に示すようにこの結果、アドレス45の出力が極小値であり、その前後2つのアドレスの出力(Vout(43)〜Vout(47))を読み出す。制御演算部22はS5と同様に2次の近似曲線から極小値に対応する画素値を、小数点を含めて算出し、メモリ23に記憶されている波長情報と組み合わせることで算出した画素値と波長との対応関係を値付ける。
【0046】
第一実施形態では、波長とラインセンサ11上の相対位置がほぼ線形の関係にあるとして、2組の画素位置と波長の対応から、線形補完をすることで、各画素の波長との対応付けを行った。なお、ラインセンサ11上の相対位置とは、図6から明らかなように、一番端の波長(図6では350nm)の画素位置から、どれだけの距離が離された位置かを示すものである。また基準となる画素を750nmに対応する画素としてもよい。図10(a)は、本実施形態の例に対して光学幾何条件から理論的に求められる画素と波長との対応関係と、第一実施形態において線形補間で値付けた画素と波長との対応関係との差分を示している。図10(a)から判るように、より厳密にいえば、波長とラインセンサ11上の相対位置との関係は曲線で示される。そこで、本実施形態ではS105、S110、S113で求めた3つの変曲点における画素と波長の関係から、分光測色器10はS116にて2次曲線を用いて各画素と波長との関係を値付ける。
【0047】
図10(b)に、本手法により対応付けしたラインセンサ11の画素と波長との対応関係と、理論的に求められる画素と波長との対応関係との差分を示す。図10(b)からも明らかなように、ラインセンサ11の各画素と波長との対応関係が、より精度よく対応付けられる。分光測色器10は、制御演算部22にてこの情報をメモリ23に記憶させ、再値付け動作を終了する。
【0048】
以上説明した手順にて、ラインセンサ11における各画素に対応する波長λの値付けが行われる。本手法によれば、白基準からの反射スペクトルをラインセンサ11で読み取った際の3つの変曲点としての極大値および極小値に対応する波長をメモリ23に記憶しておく。これらの情報を用いることで、任意のタイミングでラインセンサの各画素に対応する波長λの値付けを更に精度よく行うことが可能である。
【0049】
そして、上記のように2次曲線を用いて値付けを行うためには、3つの変曲点を精度よく抽出する必要がある。本発明によれば、変曲点のそれぞれに対して最適な信号量を確保した上で対応する画素を特定するので、元々高い信号出力が得られる極大値だけでなく、従来はノイズの影響で抽出しにくかった極小値も変曲点として精度よく抽出することができる。従って、本実施形態においては、外部から校正用の光源を入射させたり、分光測色器内に校正用光源を別途設けるなどしたりする必要はもちろん無い。さらにスペクトルのピークが少ないLEDを用いた場合でも、精度よくラインセンサの各画素に対応する波長λの値付けを行うことが可能となる。
【0050】
以上の動作により、ラインセンサ11の画素と波長λの対応付けが完了する。本実施形態の分光測色器にて被測定物を測色する際に、まず制御演算部22が式(1)に示された波長λを画素アドレスnに置き換える。そして、制御演算部22は、予め測定しておいた白基準の出力信号Oi(n)と、被測定物を測定した際の出力信号Wi(n)とから、各画素についてOi(n)/Wi(n)を演算する。その後、本補正方法にて対応付けしたラインセンサ11の各画素と波長の関係をメモリ23から読み出し、画素アドレスnを波長λに置き換えてOi(λ)/Wi(λ)を得る。ここで、各画素に値付けられた波長λは小数点を含むものとなるので、予めメモリ23に記憶されているWr(λ)のλと一致していない場合がある。この場合には、適宜補完処理を行って波長λを一致させた上で、式(1)に従って被測色物の分光反射率Or(λ)を得ることができる。
【0051】
尚、本実施形態では白色光源として、青色光を発光するLED素子に黄色の蛍光材を樹脂に混合しパッケージングした白色LEDを用い、2つの極大ポイントと1つの極小ポイントを変曲点として用いた。しかし、光源はこれに限定されるものではなく、極大ポイントを3つ以上持つスペクトルのLEDを用いたり、LED以外の光源を用いたりすることも可能である。
【0052】
また、第一実施形態ではラインセンサからの受信信号量を増大させるためにLED光源の出力強度を調整し、第二実施形態ではラインセンサの蓄積時間を調整した。しかし、これらは補正方法や変曲点の抽出方法に限定するものではなく、適宜選択して用いることが可能である。また、本実施形態においては、第一実施形態に加え、第3の変曲点として1つの極小値を用いたが、より多くの極小値を変曲点として用いてもよい。
【0053】
<第三実施形態>
[システム構成]
続いて、本願発明に係る画像形成装置の実施形態について、図を用いて述べる。図11に、本実施形態に係る画像形成装置の一構成例を示す。本実施形態において、画像形成装置は、電子写真式多色画像形成装置であるカラーレーザプリンタとする。次に、レーザプリンタ全体の構成と、分光測色器を用いた色制御とについて説明する。本実施形態にて、カラーレーザプリンタは、画像形成部において画像信号に基づいて形成される画像光により静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して可視画像を形成する。更に、カラーレーザプリンタは、このカラー可視画像を記録媒体である転写材へ転写し、次いで、カラー可視画像を転写材に定着する。
【0054】
カラーレーザプリンタは、本実施形態では4つの並置した、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色材にそれぞれ対応するステーションPa、Pb、Pc、Pdを備える。また、各ステーションPa、Pb、Pc、Pdの画像形成部はそれぞれ、感光ドラム205Y、205M、205C、205K、一次帯電手段としての注入帯電器207Y、207M、207C、207K、現像器208Y、208M、208C、208K、トナーカートリッジ211Y、211M、211C、211Kを備えている。又、各感光ドラムの下方には、中間転写体212が配置され、各感光ドラムに対応して一次転写部206Y、206M、206C、206Kが配置される。転写材201は、給紙カセット202から二次転写ローラ209へと供給され、その後、定着部213へと搬送される。
【0055】
各感光ドラムは、アルミシリンダの外周に有機光導電層が塗布して形成され、駆動モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。本実施形態では、各感光ドラムは、画像形成動作に応じて反時計方向に回転する。
【0056】
一次帯電手段として、ステーション毎にYMCKの各感光ドラムを帯電させるための4個の注入帯電器207Y、207M、207C、207Kを備える。各注入帯電器にはスリーブ207YS、207MS、207CS、207KSが設けられている。各感光ドラムへの露光光はそれぞれ、スキャナ部210Y、210M、210C、210Kから送られ、一次帯電手段により帯電された各感光ドラムの表面を選択的に露光することにより、静電潜像が形成される。
【0057】
現像手段として、形成された静電潜像を可視化するために、ステーション毎にYMCKの現像を行う4個の現像器208Y、208M、208C、208Kを備え、各現像器にはそれぞれスリーブ208YS、208MS、208CS、208CKが設けられている。尚、各々の現像器は、画像形成装置本体に対して脱着可能に取り付けられている。中間転写体212は、駆動ローラ218a、及び従動ローラ218b、218cに張設された無端ベルト体であって、各感光ドラムに接触しており、カラー画像形成時に時計周りに回転し、各色用の一次転写ローラ(一次転写部)の作用によって順次転写を受ける。
【0058】
給紙手段(給紙口)としての給紙カセット202又は給紙トレー203には転写材201が収容されており、転写材201は給紙ローラ204及び搬送ローラ224などにより構成される搬送路225を搬送されて、レジストローラ223に到達する。これはレジ前センサ219によって検知される。画像形成時には、レジ前センサ219によって中間転写体212上のカラー可視画像が転写領域に到達するタイミングを合わせられて、所定時間、転写材の搬送を停止させる。転写材201がレジストローラ223から転写領域に給紙され、中間転写体212に二次転写ローラ209が接触して転写材201を狭持搬送することにより転写材201に中間転写体212上のカラー可視画像を同時に重畳転写する。
【0059】
定着部213は、転写材201を搬送させながら、転写されたカラー可視画像を定着させるものであり、図11に示すように転写材201を加熱する定着ローラ214と、転写材201を定着ローラ214に圧接させるための加圧ローラ215とを備えている。定着ローラ214と加圧ローラ215は中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ216、217が内蔵されている。即ち、カラー可視画像を保持した転写材201は、定着ローラ214と加圧ローラ215により搬送されるとともに、熱及び圧力を加えることによりトナーが表面に定着される。定着ローラ214による可視画像定着後の転写材201は、排出ローラ(不図示)によって排紙部(不図示)に排出され、画像形成動作を終了する。転写材201の定着部213からの排紙は、定着排紙センサ220によって検知される。
【0060】
クリーニング手段221は、中間転写体212上に形成された4色のカラー可視画像のうち、転写材201に転写されずに残った廃トナーを中間転写体212から取り除き、蓄える。図11に示すステーションPdより下流側にて、中間転写体212の上方に配置された濃度検出手段222は、転写材201上に形成された濃度検出パターンの濃度を検知する。また、転写材201上に形成されたトナーパッチを読むための分光測色器1414が定着部213と排紙口(不図示)との中間位置に配置される。
【0061】
尚、図11で説明した画像形成装置の構成は、第一実施形態、第二実施形態で説明した分光測色器10に対しても適用可能であり、この場合には、分光測色器1414に替わって、分光測色器10が画像形成装置に搭載されることとなる。
【0062】
[画像処理部]
次に、画像形成装置のブロック図である図12、及び画像処理部における処理の一例を示す図13を用い、画像処理部における処理と色補正について説明する。画像形成装置の画像処理部1402と画像形成部1401はビデオインターフェースで接続され、画像処理部1402が外部端末のホストコンピュータ1403やネットワーク(不図示)に接続される。画像処理部1402の記憶手段には、色変換に用いるカラーマッチングテーブル1421、色分解テーブル1422、および濃度補正テーブル1423が記憶されている。また、画像形成部1401には、分光測色器1414からの信号を変換するAD変換部1411、画像形成処理や分光測色器1414からの計測結果を処理するCPU1412、および計測結果を一時保管するメモリ1413が搭載される。なお、本実施形態において、画像形成部1401には、第一実施形態にて述べた分光測色器10と同様の分光測色器を用いる構成とする。
【0063】
尚、第一実施形態、第二実施形態では、分光測色器10が、AD変換器やメモリを有する形態を説明したが、第三実施形態では、分光測色器1414の外部にAD変換器やメモリが接続されている。しかしながら、第三実施形態においても、第一、第二実施形態で説明したような分光測色器を構成できることは言うまでもない。
【0064】
次に図13を用いて画像処理部1402におけるデータ変換の流れについて説明する。S1501にて、画像処理部1402は、予め用意されているカラーマッチングテーブル1421を用いて、RGB信号をカラー画像形成装置の色再現域に合わせたデバイスRGB信号(以下DevRGBという)に変換する。ここで、RGB信号は、ホストコンピュータ1403等から送られてくる。S1502にて、画像処理部1402は、色分解テーブル1422を用いて、DevRGB信号をカラー画像形成装置のトナー色材色であるCMYK信号に変換する。S1503にて、画像処理部1402は、各々のカラー画像形成装置に固有の階調−濃度特性を補正するための濃度補正テーブル1423を用いて、CMYK信号を階調−濃度特性の補正を加えたC’M’Y’K’信号へ変換する。S1504にて、画像処理部1402は、ハーフトーン処理を行い、C’’M’’Y’’K’’信号へ変換する。S1505にて、画像処理部1402は、PWM(Pulse Width Modulation)テーブルを用いて、C’’M’’Y’’K’’信号に対応するスキャナ部210Y、210M、210C、210Kにおける露光時間Tc、Tm、Ty、Tkへ変換する。
【0065】
デフォルトの設定では、カラーパッチデータとして複数個のCMYK形式のカラーパッチデータが画像処理部1402に格納されている。図13の処理の流れに従い、デフォルトのCMYK形式のカラーパッチデータが印字される。転写材201上に形成されたカラーパッチ画像は、分光測色器1414で測色され、色値(例えばCIEL*a*b*の色空間における値)が読み取られる。
【0066】
画像処理部1402は、読み取られた色値を画像処理部1402の色変換部へ送り、CMS(カラーマネジメントシステム)(不図示)を利用して、色値を画像形成装置に依存するCMYK形式のデータに変換する。そして、画像処理部1402は、変換されたCMYKデータと、デフォルトのカラーパッチデータのCMYKデータとを比較することによって、その差を補正するような補正データΔC,ΔM,ΔY,ΔKを生成する。画像処理部1402は、この処理を複数個のパッチにて行い、パッチとして存在しないCMYKデータに関しては、補完により補正データΔC,ΔM,ΔY,ΔKを作成する。これらの補正データを補正された色分解テーブル1422(色変換部又は色補正部)として、画像処理部1402に保存する。そして色補正データが保存された色分解テーブル1422(色変換部又は色補正部)により、実際の画像形成時の色処理が行われる。また、このことについては、第一実施形態、第二実施形態についても同様とする。
【0067】
[波長−光強度スペクトル特性]
以下に、光源の波長−光強度スペクトル特性と、パッチの分光反射率と、の関係について説明する。なお、上述した如く、画像形成部1401は、分光測色器について、AD変換器1411、CPU1412(制御演算部22に相当)、メモリ1413が外部に接続されている点を除いては、第一実施形態にて述べた分光測色器10と同等の構成を有する。従って、分光測色器の詳しい説明は省略する。また、本実施形態では、ラインセンサとして、第一実施形態に示した134画素に加えて2画素の余裕を設けた136画素の有効画素(アドレス3〜138)を有する。更に、ラインセンサは、暗出力補正用及び有効画素の対称性を向上させ素子間ばらつきを低減させるために端部に設けた計4つのダーク画素(アドレス1、アドレス2、アドレス139、アドレス140)を有する。また、本実施形態において、分光測色器1414の光源として用いた白色LEDは、第一実施形態において示した図2と略同様の特性を有する。具体的に、図14(a)に白色LEDの分光特性を示す。なお、図14(a)において、横軸を波長、縦軸を相対的な光強度(輝度)として示している。図14(a)では、光強度の最大値を“1”として正規化したものである。波長が460nm付近(459nm)のピークは青色LEDの発光スペクトルであり、590nm付近(586nm)のピークは黄色蛍光体のスペクトルである。
【0068】
後で詳しく説明するが、本実施形態において、波長の特定にパッチからの分光反射光のピーク部を用いる。なお、青色LEDのような急峻なピークであれば精度良く波長特定できるが、黄色が示すようななだらかなピークでは精度の高い波長特定が困難である。一方で、カラー画像形成装置に用いるトナーはそれぞれ、図14(b)に示す反射光の分光特性を示す。なお、図14(b)において、横軸を波長、縦軸を分光反射率として示している。一般的なトナーの分光特性としては急峻なピークはないものの、急峻な傾斜(値の変動が大きい)の波長帯域が存在する。図14(b)に示す例において急峻な傾斜の波長帯域とは、例えば、Y色では470nmから500nm付近の帯域であり、M色では590nmから610nm付近の帯域である。
【0069】
図15に白色LEDでM色パッチを投影したときの反射光の分光特性(反射される光の分光光強度)を示す。この反射光の分光特性は白色LEDとM色パッチの分光特性を波長ごとに掛け合わせることで求められる。このとき、白色LEDの分光特性とMパッチの分光特性との関係から、反射光の分光特性において、620nm近傍に急峻なピークが発生する。これは、図14(b)に示す波長が大きくなるにつれ立ちあがるM色のパッチ分光特性の急峻な傾斜部に、図14(a)に示す波長が大きくなるにつれ立ち下がる白色LEDが照射する光における分光特性のなだらかな傾斜が重なることで発生する。
【0070】
より具体的に述べると、白色LEDの分光特性(分光輝度)がほぼ一定である550nmから600nm付近の波長帯については、反射光の分光特性において、Mパッチの分光特性(分光反射率)が示すような立ち上がりの傾斜となる分光特性が示される。また、600nmから620nm付近の波長帯については、白色LEDは立ち下りの傾斜の分光特性(分光輝度)を示しているが、それ以上にMパッチが急峻な立ち上がりの傾斜の分光特性(分光反射率)を有するため、より優位な立ち上がりの傾斜を有する反射光の分光特性が示される。620nm以降の波長帯においては、Mパッチは緩やか立ち上り又はほぼ一定である分光反射率を示すのに対し、白色LEDの分光特性(分光輝度)は立ち下りの傾斜を示すため、白色LEDが有する分光特性(分光輝度)が優位となり、反射光の分光特性において立ち下りの傾斜が示されることとなる。ここで、立ち上がりの傾斜から立ち下がりの傾斜に切り替わる620nm付近、つまり、白色LEDの立ち下りの傾斜とMパッチの立ち上がりの傾斜とが均衡のとれる位置(波長)にて、反射光の分光特性(反射される光の分光強度)におけるピーク(変曲点)が示されることとなる。
【0071】
そして、パッチの分光特性と光源の分光特性(分光輝度)との関係により、図15の(a)に示すような分光特性の急峻なピーク(621nm)を実現することができる。そして、この急峻なピークを用いれば精度良く波長特定が行える。なお、図15の(a)の分光特性の急峻なピークの発生メカニズムについてまとめると以下のように記載できる。トナーパッチの分光特性(分光反射率)と光源の分光特性(分光輝度)との夫々は、連続する着目波長帯域において、ある波長までの帯域では片方の分光特性の傾斜(変化)が支配的であり、ある波長からの帯域では他方の波長の分光特性の傾斜が支配的となる。このとき、各々の支配的になる分光特性の傾斜は、互いに逆の傾斜を持つ。そして、支配的な分光特性の傾斜が切り替わる、言い換えれば互いの傾斜特性によって均衡が発生するある波長において、変曲点が現れる。このメカニズムにより図14(b)の場合には、621nmで変曲点が現れている。
【0072】
本実施形態において用いるパッチは彩度の高いパターンであることが望ましく、例えば単色のベタパターンが挙げられる。「ベタパターン」とは、一般的に印字率(印刷率)が100%(もしくは略100%)の高濃度パターンとしてのトナー像である。画像形成装置によっては、単色で印字率が100%でないものもあるが、そのような場合は、印字率が最大のパッチのものを指す。これは、パッチパターンの濃度があまりにも淡いと、トナー像による光の反射と吸収のコントラストが小さくなり、分光特性の急峻な傾斜部の発生帯域が狭まることにより、傾斜がなだらかになる。そのため、濃度が淡いパッチパターンは好ましくない。
【0073】
また、複数のトナーを混色することでも画像彩度が低下し、トナー像による光の反射と吸収のコントラストが小さくなる。さらに、混色すると混色の比率の不安定さが、分光反射特性の不安定さを発生させる。よって、混色パターンも好ましくない。
【0074】
以上の理由から、トナー像は単色のベタパターンであることが望ましい。しかし、波長特定に十分なトナー像による十分な光の反射と吸収のコントラストが確保できていれば、かつ、分光反射特性が安定していれば、印字率が100%でなくてもよいし、混色していてもかまわない。
【0075】
本実施形態では、波長特定が最も安定して行える単色トナーからなるベタパターンを使用する場合について、すなわち本発明の効果を最大限に期待できる例について説明を行う。具体的には、光源として青色LEDと黄色蛍光体を用いた白色LEDを、トナーパッチとしてM色トナーを用い、画素位置と波長との対応関係を特定する波長補正のアルゴリズムを説明する。
【0076】
[波長補正処理]
以下、具体的な波長補正手順をフローチャートである図16および図17を用いて説明する。図17は白基準、及びM色パッチからラインセンサ11で読み取った測色値(反射光量)を、白基準の最大値を元に正規化したものである。図17の縦軸は相対的な反射光量(反射強度)である。また、記憶部であるメモリ1413には、図14(a)に示す白色LEDの急峻なピーク波長459nmと、図15に示す白色LEDでM色パッチを照射したときの反射光の急峻なピーク波長621nmが予め分散光プロファイルとして保持されているものとする。
【0077】
上述したように、本実施形態において、ピーク波長の検出には、第一実施形態における検出方法(変曲点検出)を用いるものとする。つまり、第一実施形態の図3にて示したように、白基準に対するピーク波長(変曲点)の検出(S1801)とM色パッチに対するピーク波長の検出(S1804)の際に、その抽出される出力値が、基準値≦最大出力値<飽和値となるように白色LED12の発光出力を調整する。具体的には、CPU1412は、随時送られてくるAD変換信号をモニタしながら白色LED12の発光出力を制御し、上記条件を満たす適正な出力となるよう測色条件を調整する。このとき、白基準およびM色パッチそれぞれの検出の際に出力値が基準値に満たない場合には、CPU1412は白色LED12の出力を上げる制御を行う。また、出力値が飽和値を超えている場合には、CPU1412は、白色LED12の出力を下げる制御を行う。そして、白基準とM色パッチそれぞれの出力値と画素との対応を特定し、各画素の信号の中から最大出力値を抽出することとなる(S1802、S1805)。
【0078】
まず、S1801にてCPU1412は、図1(b)の電荷蓄積型のラインセンサ11の各画素の光電圧出力を所定時間蓄積することにより得られた信号をリセットする。その後、CPU1412は、図1(a)の白基準24を光源の白色LED12で照射し、白基準24からの反射光を回折格子18で波長分散する。そして、分光測色器1414は、各波長の分散光をラインセンサ11に入射し、その入射光によって発生する光電圧出力を所定時間蓄積した信号として得る。AD変換部1411は、それらの信号をAD変換し、画像形成装置の動作を制御するCPU1412内に設けられた記憶部としてのメモリ1413(メモリ23)に収納する。
【0079】
S1802にてCPU1412は、メモリ1413に収納されたラインセンサ11の出力を読み出す。CPU1412は、読み出されたセンサ出力から、ダーク画素(例えばアドレス1)の出力を差し引くことにより、蓄積時間中に発生した暗電流分を除き純粋にラインセンサ11に入射する光量に応じた信号(図17の破線)を得る。なお、ダーク画素に関連した処理については、第一、第二実施形態でもこの第三実施形態と同様の処理を行っても良い。
【0080】
図17の破線の信号は、白色LED12の波形形状と、白基準24の分光反射特性と、分光測色器1414の分光感度特性を掛け合わせた形状となり、横軸は画素位置である。なお、本実施形態の説明において、白基準24の分光反射特性と、分光測色器1414の分光感度特性は、可視光の波長帯においてフラットであると仮定している。
【0081】
図17において、画素位置がアドレス46の出力であるVout(46)がピーク値を示している。一方、上述したように、メモリ1413には光源のピーク波長情報が予め記憶されている。その波長情報と信号を比較することで、アドレス46の画素が459nmの波長の光を受光している画素であることが特定できる。
【0082】
S1803にて画像形成部1401は、パッチパターン作成を行う。ここでパッチパターンを作成する画像形成部1401の実態は、図11で説明したトナー像形成に係る部材に相当する。このS1803のパッチパターン作成により、転写材201上にセンサ校正用のM色のベタパッチが形成され、分光測色器1414はM色のベタパッチを計測する。
【0083】
S1804にて分光測色器1414は、パッチパターンからの分光反射光の検出を行う。CPU1412は、電荷蓄積型の分光測色器1414の各画素の光電圧出力を所定時間蓄積した信号をリセットする。その後、光源である白色LED12がM色の被測色物14であるベタパッチを照射しているタイミングで、M色のベタパッチから反射され、且つ回折格子18で波長分散された各波長の反射光がラインセンサ11に入射する。そして、ラインセンサ11は、その入射光によって発生する光電圧出力を所定時間蓄積した信号として得る。ここでも、ピーク波長の検出においては、第一実施形態における検出方法(変曲点検出)を用いるものとする。分光測色器10は、それらの信号をAD変換器21にてAD変換し、画像形成装置の動作を制御するCPU1412内に設けられた記憶部としてのメモリ1413に収納する。
【0084】
S1805にてCPU1412は、測色したパッチパターンからの分光反射光と画素の対応関係を決定する。CPU1412は、メモリ1413に収納されたパッチパターンのラインセンサ11の出力(図17の実線)を読み出す。読み出されたセンサ出力は、ダーク画素(例えばアドレス139)の出力を差し引くことにより、蓄積時間中に発生した暗電流分を除き純粋にセンサに入射する光量に応じた信号(図17の実線)を得ることができる。図17より、アドレス99の画素の出力であるVout(99)がピーク値を示している。一方、上述したようにメモリ1413には、図15に示すM色のベタパッチのピーク波長情報が予め記憶されている。メモリ1413に予め記憶されているピーク波長情報と図17に示す値とを比較することで、アドレス99の画素が621nmを含む波長の光を受光している画素であることが特定できる。
【0085】
S1806にてCPU1412は、ラインセンサ11の画素と波長の対応を決定する。CPU1412は、以上のように、白基準24とM色のベタパッチからの分光光を分光測色器1414で読み取ることで、アドレス46の画素が459nm、アドレス99の画素が621nmを含む波長の光を受光する画素から、2組の画素と波長との対応を特定する。例えば、図20に示す分光測色器の構成において、波長とラインセンサ11上の画素の相対位置とは、ほぼ線形の関係にある(図18)。これは、第一実施形態にて図6を用いて述べた関係と同様である。従って、2組の画素位置と波長との対応から、線形補完をすることで、各画素の波長との対応付けが可能である。これは、第一実施形態にて図7を用いて述べた対応付けと同様である。図19に、本補正により対応付けしたラインセンサ11の各画素の波長を記す。分光測色器10は、各画素に対応付けられた波長の分光光を検出する。分光測色器10は、制御演算部22にて、検出した情報をメモリ1413に記憶させ、補正動作を終了する。
【0086】
以上の波長補正のアルゴリズムを行うことで、経時変化や、熱や応力により分光測色器1414の枠体が変形し、ラインセンサに投影される分光光の位置がシフトしても、補正時において各画素と波長との対応関係を補正することが可能となる。また、光源の分光特性はある程度のばらつきを有する。図14(a)に示す白色LEDの波長459nmのピークも、青色LEDチップのばらつきなどで、約10nm程度のばらつきが生じる場合も有り得る。しかし、画像形成装置本体は、搭載した分光測色器の白色LED固有のピーク波長を予めメモリ23内に収納して保持し、併せて、第一実施形態に示すピーク値(変曲点)の検出手法を用いることで、より精度の高い補正が可能となる。
【0087】
白基準24からの反射光を用いることを説明したが、白色であれば転写材からの反射光に対する分散光でも同様の効果がある。ただし、色紙など、分光反射特性が白色に近いものから乖離した転写材を用いるのは望ましくはない。
【0088】
なお、本実施形態では、分光測色器は図1に示す構造に従って、回折格子18を用いて反射光を分光させた例を示した。しかし、回折格子にかぎらず、プリズムでも良いことは言うまでもない。加えて、ここでは像担持体上にトナー像(パッチパターン)を形成する画像形成装置の例を示したが、本発明はインクにより像を形成するインクジェットプリンタのような画像形成装置でも同様の効果がある。この場合において、白基準からの反射光を用いるほか、記録媒体からの反射光に対する分散光を用いてもよい。
【0089】
以上示したように、分光測光方式の分光測色器において、ラインセンサと光学系間に位置ずれがあっても、ラインセンサの画素と入射光の波長との対応を特定することができる。よって、精度の高い部品や、厳しい位置精度の管理、調整を不要とし、トナーパッチの分光反射率を低コストで検出するにことが可能となる。また、先行技術にあるようなフィルタや単色光源を追加することなく、光検出手段の画素上に単色の波長に対応した反射光を入射させ、精密な位置精度を必要とせず波長と画素の対応を正確に取ることが可能となる。
【0090】
また、図1(a)において紙上のトナー像と白基準24で補正を行う場合、紙の厚みや紙の波打ちなどにより測色する位置が変化し、分散光の投影位置が変化することがある。これは、紙上のトナー像と白基準24を測色する場合において、測色位置に対する投影位置の補正を行うか、白基準24を紙の厚みと波打ちの分だけ分光測色器1414に近づける機構を搭載することが望ましい。
【0091】
本実施形態においては、各色トナーパッチの色を精度よく検出することが可能となり、LUT(色分解テーブル1422)にフィードバック制御することにより、色再現性のよい画像形成装置を安価に提供することが可能となる。
【0092】
<第四実施形態>
本実施形態では、画像形成装置の消耗品に搭載された記録手段に、トナーの分光特性と分光測色器の光源の分光特性による急峻なピークが記録されている構成を述べる。画像形成装置は、この情報に基づいてトナーのロット違いなどによる分光特性の変化や、色材の変更による分光特性の変化に対応する。
【0093】
例えば、消耗品としてプロセス一体型カートリッジ(以下、CRG)があり、充てんされたトナー固有の波長ピーク値(図14(a)の586nmに相当)が、消耗品の出荷前に、CRGメモリに記憶される。新規のCRGを画像形成装置に搭載した時点、もしくは画像形成装置に起因するタイミングにより、CRGメモリ(不図示)に記憶された波長ピーク値が自動で図12に示すメモリ1413に転送、記憶される。そして、第三実施形態にて示した波長補正処理を行う。
【0094】
本実施形態によれば、画像形成装置の消耗品に搭載された記録手段に、トナーの分光特性と分光測色器の光源の分光特性による急峻なピークを記録することで、トナーのロット違いや、色材の変更によりトナーの色味が変わった場合でも対応が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測色物に測色光を照射する光源と、
前記被測色物からの反射光を分光する分光手段と、
前記分光手段により分光された分散光を受光し、当該分散光の強度に応じて信号を出力する複数の画素を有する光検出手段と、
基準となる被測色物を測色した際に前記光検出手段にて検出された分散光のプロファイルにおける複数の変曲点の波長と画素との対応関係を用いて、前記光検出手段を構成する複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する演算手段と
を有し、
前記演算手段は、前記複数の画素それぞれにて受光された分散光の波長を演算する際に、前記複数の変曲点に対応する画素によって出力される信号が基準値以上で且つ飽和しない出力レベルとなるよう、変曲点ごとに測色条件を調整することを特徴とする分光測色器。
【請求項2】
変曲点ごとに調整する前記測色条件は、前記光源が発する測色光の光量であることを特徴とする請求項1に記載の分光測色器。
【請求項3】
変曲点ごとに調整する前記測色条件は、前記光検出手段が受光する蓄積時間であることを特徴とする請求項1に記載の分光測色器。
【請求項4】
前記複数の変曲点の少なくとも一つは、前記分散光のプロファイルにおける極大値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の分光測色器。
【請求項5】
前記複数の変曲点の少なくとも一つは、前記分散光のプロファイルにおける極小値であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の分光測色器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の分光測色器を備え、記録媒体に像を形成する画像形成装置であって、
前記記録媒体に形成された像に対して前記分光測色器の演算手段が演算した前記複数の画素それぞれと波長との対応関係を、基準となる分散光のプロファイルにおける波長と画素との対応関係を用いて補正する補正手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
記録媒体に色材を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
被測色物に光を照射する光源と、
前記被測色物からの反射光を分光する分光手段と、
前記分光手段により分光された分散光を受光し、当該分散光の強度に応じて信号を出力する複数の画素を有する光検出手段と、
基準となる被測色物を測色した際に前記光検出手段にて検出された分散光のプロファイルにおける波長と画素との対応関係と、前記記録媒体に形成された像の分散光の波長と画素との対応関係とを用いて、前記光検出手段にて受光される前記分散光の波長と画素との対応関係を補正する補正手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記記録媒体に形成された色材の像の分散光の波長情報を記憶する記憶手段を更に有し、
前記補正手段は、前記記憶手段に記憶された色材の像に対する波長情報と、補正時に前記光検出手段により検出した前記記録媒体に形成された色材の像の分散光の波長との関係から、前記光検出手段にて受光される前記分散光の波長と画素の位置との対応関係を補正することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記分散光のプロファイルは、基準となる前記記録媒体の分散光の波長情報を含み、
前記補正手段は、前記記憶手段に記憶された色材の像に対する波長情報および前記記録媒体に対する波長情報と、補正時に前記光検出手段により検出した前記記録媒体に形成された色材の像の分散光および前記記録媒体の分散光の波長との関係から、前記光検出手段にて受光される前記分散光の波長と画素の位置との対応関係を補正することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記色材の像に対する分散光の波長情報を記憶する前記記憶手段は、当該画像形成装置にて用いられる当該色材を提供する消耗品が有することを特徴とする請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記色材の色は、シアン、イエロー、マゼンタ、レッド、グリーン、ブルーのいずれかであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記光源により照射される光は、白色光であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記色材の像は、印字率が100%或いは略100%の単色からなる高濃度パターンであることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−40799(P2013−40799A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176332(P2011−176332)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】