説明

分別方法、および、分別装置

【課題】パルス送風機から、パルスエアを吐出し、特定材質物を分別対象の自然落下位置よりも遠方に吹飛ばすことで分別する方法において特定材質物の純度と回収率が低くなるという課題がある。
【解決手段】搬送装置1によって搬送される分別対象101から特定材質物2を識別し、識別された特定材質物2の位置情報を取得し、搬送装置1の搬出端より分別対象101を落下させ、落下する分別対象101の落下経路を板体6によって所定の方向に案内し、板体6の端部から落下する分別対象101の中から、パルス送風機4によって発生させたパルス状の気体流を前記位置情報に基づき特定材質物2にのみ当てて、特定材質物2の落下経路を変更して分別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み家電製品の再資源化を目的とした、樹脂片が混在する分別対象物からの樹脂の分別技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済活動が、地球温暖化や資源の枯渇など地球規模での環境問題を引き起こしている。このような状況の中、循環型社会の構築に向けて、平成13年4月から家電リサイクル法が完全施行され、使用済みになったエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機のリサイクルが義務付けられている。
【0003】
従来、不要になった家電製品は、家電リサイクル工場で、破砕後に磁気、風力、振動等を利用して材料毎に分別回収され、再資源化されている。特に金属材料は、比重選別装置や磁気選別装置を用いることで、鉄、銅、アルミニウムなど材料毎に高純度で回収され、高い再資源化率が実現されている。
【0004】
一方、樹脂材料では、軽比重物であるポリプロピレン(以下、PPと表記)が、水を活用した比重選別で高比重物と分別され、比較的高純度で回収されている。しかしながら、水を活用した比重選別は、大量の排水が発生することや比重の近いポリスチレン(以下、PSと表記)とアクリロニトリルブタジェンスチレン(以下、ABSと表記)とが分別できないことが大きな課題となっている。また近年、高比重物であるフィラー入りPPも需要が拡大しているが、これは従来の比重選別では対応できなくなっている。
【0005】
樹脂材料の再資源化に関する前記課題を考慮した分別方法が下記の特許文献1で提案されている。
【0006】
特許文献1は、材質識別装置により材質を検出することで、従来の比重選別で分別できない樹脂材料の分別を可能にしている。
【0007】
具体的には、コンベアベルト上を流れる樹脂混在物を、材料識別装置で個々に材質識別し、識別された特定材質の樹脂を、前記コンベアベルトの搬出端より排出される樹脂混在物の落下経路から分離するために、前記落下経路の下方に配置されたパルス送風機から、パルスエアを吐出し、前記特定材質の樹脂を前記樹脂混在物の自然落下位置よりも遠方に吹飛ばすことで分別する方法である。
【0008】
この分別方法によれば、比重の近いPSとABSが分別でき、高比重物であるフィラー入りPPの分別にも対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−263587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、前記樹脂混在物の落下経路が、樹脂の形状の違いや比重の違いにより異なるため、パルスエアを前記特定材質の樹脂に正確に吐出できない場合や、誤って前記特定材質の樹脂以外のものにパルスエアを吐出する場合があり、分別した前記特定材質の樹脂の純度や回収量が小さくなるという課題がある。
【0011】
具体的に、従来の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1(a)〜(c)は、従来の混在物の分別方法の実施の形態を示すもので、搬送装置1によって搬送される混在物から、所望する特定材質物2を分別する工程を示している。
【0013】
図1(a)では、搬送装置1によって混在物の中の一つとして特定材質物2が搬送されている。
【0014】
図1(b)では、特定材質物2が情報取得装置3の下を通過して、材質、形状が識別されている。
【0015】
図1(c)では、搬送装置1の搬出端より排出された特定材質物2が、特定材質物2の落下経路の下方に配置されたパルス送風機4からのパルスエアによって、吹飛ばされた際の飛翔軌道の代表例を実線および点線で示している。
【0016】
パルス送風機4からのパルスエアは、情報取得装置3からの材質、形状、位置情報にもとづいて吐出タイミングが制御されており、パルスエアで特定材質物2の重心を撃つことで、特定材質物2を実線で示したような飛翔軌道で、分別板5よりも遠方に落下させて分別する。なお、混在物に含まれる特定材質物2以外のものは、搬送装置1の搬出端より排出された後、自然落下で分別板5の手前に落下する。
【0017】
しかしながら、搬送装置1としてはコンベアベルトなどが採用されるが、その搬出端は、所定の曲率で曲がっているため、混在物の落下経路が形状の違いや比重の違いによって、落下を開始するタイミングや落下する場所が異なることとなる。これにより、パルス送風機4が気体流を吐出するタイミングと特定材質物2の位置関係との間にズレが発生し、気体流が特定材質物2の重心を外れる場合がある。例えば、気体流が特定材質物2の先端部を撃った場合は、点線のような高い飛翔軌道になり、分別板5の手前に落下して分別できない。さらには、気体流が特定材質物2に当らない場合や誤って特定材質物2に近接する特定材質物2以外のものに気体流を吐出する場合があり、分別した特定材質物群の純度や回収量が小さくなるという課題がある。
【0018】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、特定材質の樹脂の純度や回収量を高める混在物の分別方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる分別方法は、複数の特定材質物と、複数の他材質物とが混在する分別対象から特定材質物と他材質物とを分別する分別方法であって、搬送装置によって搬送される分別対象から特定材質物を前記搬送装置上で識別し、識別された特定材質物の位置情報を取得し、前記搬送装置の搬出端より分別対象を落下させ、落下する分別対象の落下経路を板体によって所定の方向に案内し、パルス送風機によって発生させたパルス状の気体流を前記位置情報に基づき特定材質物に当てて特定材質物の落下経路を変更することにより、前記板体の端部から落下する分別対象の中から特定材質物を分別することを特徴とする。
【0020】
これにより、板体によって落下が案内される分別対象は、下端縁から落下することとなる。従って、特定材質物などの落下タイミングが一定となり、パルス送風機が気体流を吐出するタイミングと特定材質物の位置関係との間に発生するズレを抑制し、特定材質物の重心を気体流で打つ確立を高めることができる。以上から、特定材質物の分別精度を高め、また、従来に比較して、特定材質物の純度や回収量を高めることができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる分別装置は、複数の特定材質物と、複数の他材質物とが混在する分別対象から特定材質物と他材質物とを分別する分別装置であって、分別対象を載置して搬送し、所定の位置で分別対象を落下させる搬送装置と、落下する分別対象の落下経路を所定の方向に案内する板体と、前記搬送装置によって搬送される分別対象から特定材質物を識別する識別装置と、前記識別装置において識別された特定材質物の位置情報を取得する位置情報取得装置と、前記位置情報に基づき、前記板体から落下する特定材質物に当てる気体流をパルス状に発生させ、特定材質物の落下経路を変更するパルス送風機とを備えることを特徴とする。
【0022】
これにより、板体によって落下が案内される分別対象は、下端縁から落下することとなる。従って、特定材質物などの落下タイミングが一定となり、パルス送風機が気体流を吐出するタイミングと特定材質物の位置関係との間に発生するズレを抑制し、特定材質物の重心を気体流で打つ確立を高めることができる。以上から、特定材質物の分別精度を高め、また、従来に比較して、特定材質物の純度や回収量を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
この構成によれば、分別対象の落下経路を板体で案内させることにより、分別対象の落下経路が安定し、従来に比較して、前記特定材質物の純度や回収量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の実施の形態の分別方法を示す工程毎に示す断面図
【図2】本願発明の実施の形態に係る分別装置を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【図3】本発明の実施の形態の分別方法を示す工程毎に示す断面図
【図4】本発明の実施の形態の分別方法を示す工程毎に示す断面図
【図5】本発明の実施の形態における板体の傾斜角と分別対象の落下経路のバラツキの関係図
【図6】本発明の実施の形態におけるコンベアベルトの搬送速度と板体の好ましい傾斜角の関係図
【図7】本発明の実施の形態におけるコンベアベルトの搬送速度毎の板体の好ましい傾斜角を示す表
【図8】本願発明の他の実施の形態に係る分別装置を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図2は、本願発明の実施の形態に係る分別装置を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【0027】
同図に示すように、分別装置100は、特定材質物2と、他材質物7とが混在する状態の分別対象101から特定材質物2を取り出す分別装置であって、搬送装置1と、情報取得装置3と、パルス送風機4と、板体6とを備えている。
【0028】
搬送装置1は、分別対象101を載置して搬送する装置である。本実施の形態の場合、搬送装置1としてベルトコンベアが採用されている。
【0029】
情報取得装置3は、特定材質物2と他材質物7とを識別する識別装置と、識別された特定材質物の位置情報を取得する位置情報取得装置とを備えた装置である。
【0030】
識別装置は、特定材質物2と他材質物7とを識別する装置である。識別装置としては、分別対象101を撮像し、得られた画像を解析することにより色や、形状、デザインに基づいて特定材質物2と他材質物7とを識別する装置や、近赤外線センサ、中赤外線センサ、X線センサ、画像認識センサなど様々な方式の中から、感度の最も優れたセンサを備え、特定材質物2と他材質物7との材質の差に基づいて特定材質物2と他材質物7とを識別する装置等を例示することができる。本実施の形態の場合、識別装置としては、近赤外線識別装置を用いており、搬送装置1の上方に配置されている。
【0031】
本実施の形態に係る分別装置100の場合、搬送装置1としてのベルトコンベアにより分別対象101を矢印方向に搬送しており、識別装置は、ベルトコンベアの搬送方向と交差する方向にセンサを走査し、特定材質物2の材質が存在する位置情報とそれ以外の位置情報とを取得することができるものとなっている。従って、本実施の形態の場合、情報取得装置3は、識別装置としてばかりでなく、位置情報取得装置としても機能している。
【0032】
パルス送風機4は、情報取得装置3から得られる特定材質物2の位置情報に基づき、落下する特定材質物2に当てる気体流F1をパルス状に発生させ、特定材質物2の第一落下経路R1を変更する装置である。本実施の形態の場合、パルス送風機4は、空圧源に接続される複数のノズルを一列に備え、位置情報に基づき気体流F1をパルス状に吐出するノズルを選択できるものとなっている。
【0033】
板体6は、搬送装置1の搬送路の搬出端近傍に取り付けられる板状の部材であり、搬送装置1の搬出端から落下する分別対象101の落下経路を所定方向に案内する板状の部材である。本実施の形態の場合、板体6の上表面全体は、フッ素系樹脂などの潤滑物質で覆われている。板体6の上端縁は、搬送装置1に近接して配置されている。これにより、板体6は搬出端において分別対象101をすくい取ることができ、分別対象101を安定したタイミングで搬出端から落下させることが可能となる。
【0034】
なお、本願発明は上記実施の形態に限定されるわけではない。例えば、識別装置は、アレイ状やマトリクス状に並べられる複数個のセンサを備え、一度に複数箇所の特定材質物2を識別するものでも良い。
【0035】
また、パルス送風機4は、単一のノズルを備え、位置情報に基づきノズルを移動させるものでもよい。
【0036】
また、図2(b)において特定材質物2を四角形、他材質物7を円形で示したが、これらはこれらを区別するための便宜上のものであって、特定材質物2や他材質物7の形状は限定されない。
【0037】
また、分別板5は、分別後の特定材質物2と他材質物7とを明確に区別するための壁状の部材である。
【0038】
次に、分別方法について説明する。
【0039】
図3(a)〜(d)は、本発明の特定材質物の分別方法の実施の形態を示すもので、搬送装置1によって搬送される分別対象101から、所望する特定材質物2を分別する工程を示している。
【0040】
図3(a)では、搬送装置1によって特定材質物2が搬送されている。
【0041】
図3(b)では、特定材質物2が情報取得装置3の下を通過して、材質、形状が識別されている。同時に幅方向の位置情報も取得されている。
【0042】
図3(c)は、搬送装置1の搬出端より排出された特定材質物2が、搬送装置1の搬出端から特定材質物2の落下経路に沿って設けられた板体6に沿って、案内されている。
【0043】
図3(d)は、板体6の下端縁より飛出した特定材質物2が、特定材質物2の落下経路の下方に配置されたパルス送風機4からのパルス状の気体流によって、吹飛ばされた際の飛翔軌道の代表例を線で示している。
【0044】
パルス送風機4からのパルス状の気体流は、情報取得装置3からの材質、形状、位置情報にもとづいて吐出タイミングが制御されており、パルス状の気体流で特定材質物2の重心を撃つことで、特定材質物2を点線で示したような飛翔軌道で、分別板5よりも遠方に落下させて分別する。なお、特定材質物に含まれる特定材質物2以外のものは、板体6の下端より排出された後、自然落下で分別板5の手前に落下する。
【0045】
本発明では、従来の特定材質物の分別方法と異なり、搬送装置1の搬出端から特定材質物の落下経路に沿って板体6を設けており、特定材質物を板体6に沿って案内されるので、特定材質物の形状の違いや比重の違いによる落下経路のバラツキを低減し、パルス状の気体流を特定材質物2に正確に吐出することで、分別した特定材質物群の純度や回収量を高めている。
【0046】
なお、図3では、特定材質物2の落下経路の下方に配置されたパルス送風機4から上方にパルス状の気体流を吐出することで、特定材質物2を上方に吹飛ばして分別する実施形態を示したが、図4のように、特定材質物2の落下経路の上方に配置されたパルス送風機4から下方にパルス状の気体流を吐出することで、特定材質物2を下方に吹飛ばして分別する実施形態でも、同様の効果が得られている。
【0047】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
【0048】
使用済み冷蔵庫からコンプレッサおよび断熱剤中のフロンを取り除いた後、破砕機で破砕し、篩い分けにより5〜150mmの分別対象101として回収した。
【0049】
次に、1kg分の分別対象101を重ならないように、走行する搬送装置1の上に順次散布し、ハイスピードカメラを用いて、1kg分の分別対象101の落下経路のバラツキを評価して、搬送装置1の搬出端から分別対象101の落下経路に沿って設けた板体6の効果を確認した。
【0050】
落下経路のバラツキは、ハイスピードカメラの再生映像から1kg分の分別対象101に含まれる全ての破砕片の落下経路を計測し、任意の落下位置における1kg分の分別対象101の落下経路の振れ幅から評価した。
【0051】
まず、1kg分の分別対象101の落下経路のバラツキ抑制に関する板体6の効果を検討した。ここで、搬送装置1の搬送速度は2m/秒としている。
【0052】
板体6を設けない場合、パルス送風機4の位置における分別対象101の落下経路のバラツキは、40mmであった。
【0053】
これに対して、搬送装置1の搬送面に対する傾斜角θ(図3(a)参照)を19度として板体6を設置した場合、パルス送風機4位置における分別対象101の落下経路のバラツキは、15mmであった。これにより、板体6の設置による落下経路のバラツキ抑制の効果を見出した。
【0054】
次に、分別対象101の落下経路のバラツキにおよぼす板体6の傾斜角θの影響を検討した。
【0055】
図5は、搬送装置1の搬送速度2m/秒の時の板体6の傾斜角θと特定材質物の落下経路のバラツキの関係示している。
【0056】
傾斜角θが14度よりも小さいと落下中の特定材質物が板体に衝突し、落下経路のバラツキが大きくなった。また、傾斜角が25度よりも大きいと落下中の分別対象101が、板体に接触し難くなるため、落下経路バラツキは板体6を設けない従来の分別方法と同等のバラツキとなった。この結果、搬送装置1の搬送速度が2m/秒の場合は、板体の傾斜角は15以上、24度以下の範囲で良好な結果が得られることを見出した。
【0057】
同様に、搬送装置1の搬送速度を1、1.5、3、4m/秒に設定し、板体6の傾斜角θと分別対象101の落下経路のバラツキの関係を検討した。図7に搬送装置1の搬送速度毎の板体の好ましい傾斜角を示し、さらに、図6のように搬送速度と板体の好ましい傾斜角の関係をプロットにより、搬送装置1による搬送速度V(m/秒)と板体の傾斜角θとの良好な相関関係を見出した。
【0058】
すなわち、搬送装置1による搬送速度V(m/秒)と板体の傾斜角θとの関係は、1m/秒≦V≦4m/秒の範囲において、θ≧−3.29V+21.97かつθ≦−4.36V+33.23であることが好ましい。
【0059】
次に、板体6の面上における分別対象101の落下経路のバラツキおよび板体6の下端から飛出した後の分別対象101の落下経路のバラツキについて比較検討した。
【0060】
その結果、板体6の面上における分別対象101の落下経路のバラツキは10mmであり、板体6の下端から飛出した後のパルス送風機4の位置での特定材質物の落下経路のバラツキは15mmであることから、板体6の面上を通過するときは、特定材質物の落下経路のバラツキがさらに小さくなっていることを見出した。
【0061】
したがって、パルス状の気体流を特定材質物2に正確に吐出し、分別した特定材質物2の群の純度や回収量を高めるためには、図8に示すように、板体6にパルス送風機4から送風される気体流の吐出口8を設け、吐出口8毎にパルス送風機4が設置されていることが好ましい。
【0062】
以上のように、搬送装置1の搬出端から分別対象101の落下経路に沿って設けた板体6により、分別対象101の落下経路のバラツキを低減できることを見出した。
【0063】
(実施の形態2)
次に、板体6と分別対象101との摩擦抵抗により、所望する特定材質物2の飛翔速度が低下し、パルス送風機4からのパルス状の気体流の吐出タイミングにズレが発生する防止するため、板体6と分別対象101との摩擦抵抗の低減を試みた。
【0064】
第一の態様として、上面の全面にわたって複数の送風口を備えた板体6と、前記送風口から気体流を連続的に吐出する連続送風機を準備した。これにより、所望する特定材質物2の飛翔速度の低下を抑制することができた。なお、前記送風口の直径は0.3mmで、流速3m/秒の気体流を連続で吐出した。
【0065】
第二の態様として、板体6の上面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし摩擦抵抗を低減を試みた。
【0066】
以下に本発明の実施の形態における特定材質物からのABSの分別方法について詳細に説明する。
【0067】
使用済み冷蔵庫からコンプレッサおよび断熱剤中のフロンを取り除いた後、破砕機で破砕し、篩い分けにより5〜150mmの分別対象101として回収した。次に、分別対象101のそれぞれが重ならないように、2m/秒で走行する搬送装置1の上に順次散布し、搬送した。情報取得装置3として、近赤外線識別装置を用いて、搬送装置1の上を流れる分別対象101の中からABSを成分とする特定材質物2を識別した。次に、搬送装置1の搬出端より排出された特定材質物2を、パルス状の気体流(吐出圧力:5bar)で吹飛ばし、分別板5よりも遠方に落下させることで、分別した。
【0068】
また、分別板5で分別された分別対象101を、再び近赤外線識別装置を用いて識別し、分別板5よりも遠方に落下した分別対象101からABSからなる特定材質物2の重量とそれ以外の材質からなる他材質物7の重量を測定した。また、分別板5よりも手前に落下した特定材質物2の重量とそれ以外の材質からなる他材質物7の重量を測定した。以上の四つの測定結果を下記の数式に代入し、特定材質物2の純度と回収率を算出した。
【0069】
特定材質物2の純度(%):A/(A+B)×100
特定材質物2の回収率(%):A/(A+C)×100
A:分別板5よりも遠方に落下した特定材質物2の重量
B:分別板5よりも遠方に落下した他材質物7の重量
C:分別板5よりも手前に落下した特定材質物2の重量
【0070】
従来の分別方法では、特定材質物2の純度97.3%、回収率75.5%であったが、搬送装置1の搬出端から分別対象101の落下経路に沿って傾斜角19度で板体が設けることで、ABS純度99.0%、回収率80.5%となった。
【0071】
さらには、板体6の下端縁に幅方向に並んだ複数の吐出口8を設け、各吐出口8について気体流を吐出するか否かを制御できるように、吐出口8毎にパルス送風機4を設置し、板体6の上でパルス状の気体流を吐出することで、特定材質物2の純度99.4%、回収率85.6%となった。
【0072】
一方、板体6に0.3mmφの複数の送風口を設け、板体6の下面から連続送風機(図示せず)によって上面方向に前記送風口から流速3m/秒の気体流を連続的に吐出することで、ABS純度99.8%、回収率93.3%となった。
【0073】
また、板体6の上面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングすることでABS純度99.6%、回収率92.5%となった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、所望する特定材質物の純度と回収量を高めることができ、廃家電や一般廃棄物に含まれる特定材質物を再資源化する分別手法として、材料の資源循環に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 搬送装置
2 特定材質物
3 情報取得装置
4 パルス送風機
5 分別板
6 板体
7 他材質物
8 吐出口
9 吐出体
100 分別装置
101 分別対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特定材質物と、複数の他材質物とが混在する分別対象から特定材質物と他材質物とを分別する分別方法であって、
搬送装置によって搬送される分別対象から特定材質物を前記搬送装置上で識別し、
識別された特定材質物の位置情報を取得し、
前記搬送装置の搬出端より分別対象を落下させ、
落下する分別対象の落下経路を板体によって所定の方向に案内し、
パルス送風機によって発生させたパルス状の気体流を前記位置情報に基づき特定材質物に当てて特定材質物の落下経路を変更することにより、前記板体の端部から落下する分別対象の中から特定材質物を分別する
分別方法。
【請求項2】
前記搬送装置による分別対象の搬送速度をV(m/秒)とし、
前記搬送装置の搬送面に対する前記板体の傾斜角をθ(度)とするとき、
前記搬送装置の搬送速度Vを1m/秒≦V≦4m/秒の範囲から設定し、
−4.36V+33.23≧θ≧−3.29V+21.97の範囲から選定される傾斜角θの板体によって分別対象の落下を案内する
請求項1に記載の分別方法。
【請求項3】
複数の特定材質物と、複数の他材質物とが混在する分別対象から特定材質物と他材質物とを分別する分別装置であって、
分別対象を載置して搬送し、所定の位置で分別対象を落下させる搬送装置と、
落下する分別対象の落下経路を所定の方向に案内する板体と、
前記搬送装置によって搬送される分別対象から特定材質物を識別する識別装置と、
前記識別装置において識別された特定材質物の位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記位置情報に基づき、前記板体から落下する特定材質物に当てる気体流をパルス状に発生させ、特定材質物の落下経路を変更するパルス送風機と
を備える分別装置。
【請求項4】
前記搬送装置による分別対象の搬送速度をV(m/秒)とした場合において、前記搬送装置の搬送面に対する前記板体の傾斜角θ(度)が、−4.36V+33.23≧θ≧−3.29V+21.97の範囲から選定される
請求項3に記載の分別装置。
【請求項5】
さらに、
前記板体の下端縁に一体に設けられ、幅方向に並んで配置される複数の吐出口を有する吐出体を備え、
前記吐出口は、前記パルス送風機に接続されている
請求項3に記載の分別装置。
【請求項6】
前記板体は、前記板体の分別対象が案内される面である案内面に全面にわたって複数の送風口を備え、
当該分別装置はさらに、
前記送風口から気体流を連続的に吐出する連続送風機
を備える請求項3に記載の分別装置。
【請求項7】
前記板体は、
前記板体の分別対象が案内される面である案内面に全面にわたって分別対象との滑り抵抗を抑制する層である潤滑層を表面に備える
請求項3に記載の分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−173049(P2011−173049A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37938(P2010−37938)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】