説明

分割個片群の搬送方法および分割個片群の搬送用治具

【課題】張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で当該被分割体を分割してなる分割個片群を、観察・評価その他のために良好に供することができる搬送方法を提供する。
【解決手段】当該分割個片群を搬送する方法が、中央部にくりぬき部を有する平板状をなし、かつ、少なくとも一方の主面が弾性フィルムに対して直接または間接に貼付固定可能な貼付部とされてなる搬送用治具を準備する準備工程と、くりぬき部に分割個片群が位置するように搬送用治具の貼付部を弾性フィルムに貼付固定する貼付工程と、貼付部が弾性フィルムに貼付された状態で搬送用治具の外周端部よりも外側で弾性フィルムをカットし、カット位置より内側の部分を被搬送体として得る取得工程と、被搬送体を搬送する搬送工程と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割装置によって被分割体を分割することによって得られた分割個片群の搬送に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス基板その他の脆性材料を用いて構成された脆性材料基板や、シリコン基板や、ガラス基板などの表面に、同一の幾何学的形状を有する回路パターン(電極、配線など)を2次元的に繰り返し形成し、その後、当該基板を個々のデバイス単位(分割個片)に分割することによって電子デバイスを作製する方法が広く周知である。なお、基板内部に回路パターンが形成されている場合もある。このときの基板(母基板)の分割方法としては、ダイサーを用いて直接にダイシングする手法や、基板表面にスクライブラインや分離溝などの分割起点を形成した後でブレーカーを用いてブレイクする手法などのなかから、基板の材質やデバイス特性などの種々の要件に応じて適宜に選択されて用いられる。
【0003】
係る母基板から個々の分割個片への分割は、多くの場合、母基板を、弾性を有するフィルム(以下、弾性フィルム)に貼り付け、該弾性フィルムをダイサーやブレーカーなどに固定することによって行われる(例えば、特許文献1参照)。このようにしておくと、分割後においても、微細な分割個片は飛散することなく弾性フィルムに貼付されて保持されたままとなっているので、紛失等が起こりにくいからである。なお、ダイサーによる分割をおこなう場合は、弾性フィルムの上層部分がカットされたとしても下層部分がカットされることなくつながっていることで、同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−173251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分割によって得られた分割個片群は、通常、弾性フィルムにそれぞれの底部が貼付される一方、側面部は、物理的に分離された状態となっている。場合によっては、個々の分割個片同士が接触して破損することの防止や、後工程でのピックアップをしやすくすることを目的として、分割後の分割個片群が貼付された状態の弾性フィルムを周囲から引き延ばして(エキスパンドして)張設状態とすることにより、分割個片群同士をより離間させることもある。なお、分割の態様によっては、あらかじめ分割前から弾性フィルムが張設状態とされていることもあり得る。
【0006】
一方で、このような分割後の分割個片群に関し、弾性フィルムに貼付された状態のままで観察や評価を行いたいというニーズがある。特に、接触による破損が生じやすい分割個片や、微細であるがゆえに人手でのハンドリングが難しくまた紛失の可能性が高い分割個片の評価を行う場合などが、これに該当する。
【0007】
仮に、ダイサーやブレーカーなどの分割装置や、分割後に弾性フィルムをエキスパンドする装置(エキスパンド装置)など(以下、分割装置等)に備わる、弾性フィルムを保持する部位(以下、単に保持部)がそれぞれの本体から分離可能であれば、当該保持部を分割個片が保持された弾性フィルムともどもそれら分割装置等から取り外し、当該保持部ごと搬送して観察や評価に供することも考えられる。しかしながら、係る保持部はあくまで分割装置等の構成要素であって、装置から取り外したままであるとスペアを用意しておかない限りは次後の処理を行えないことになり不都合である。また、分割装置等のオペレータと観察・評価者とが異なる場合、保持部が返却されず紛失されてしまうなどの問題も起こり得る。当然ながら、弾性フィルムを保持した状態保持部を分割装置等から分離することができない場合は、このような態様での観察・評価がそもそも行えない。
【0008】
また、張設状態にある弾性フィルムから分割個片群が保持されている部分のみを切り出すことは、当該保持部分における弾性フィルムの張設状態が保たれなくなり、弾性フィルムが弛むことによる個々の分割個片同士の衝突や弾性フィルムからの分割個片の欠落が生じやすくなってしまうために適切ではない。
【0009】
さらにいえば、分割装置等は、必ずしも、作製しようとするデバイスの専用の装置であるとは限られない。よって、分割しようとする母基板や張設後の分割個片群が弾性フィルムにおいて占める領域のサイズが、デバイスによって種々に異なることがある。それゆえ、分割装置等に備わる弾性フィルムの保持部は、通常、弾性フィルムの最大保持可能サイズにある程度の余裕を持たせて構成されている。すると、上述のように保持部を分離して観察等に供することができる場合であっても、保持部が大きすぎるために、分割個片を保持部ともども観察や評価に供することが難しい場合が生じる。例えば、分割個片の外観を顕微鏡にて観察しようとしても、顕微鏡のステージに保持部を載置できないため、良好な観察が行えないなどの不具合が起こる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で当該被分割体を分割してなる分割個片群を、観察・評価その他のために良好に供することができる搬送方法およびこれに用いる搬送用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で前記被分割体を分割してなる分割個片群を搬送する方法であって、中央部にくりぬき部を有する平板状をなし、かつ、少なくとも一方の主面が前記弾性フィルムに対して直接または間接に貼付固定可能な貼付部とされてなる搬送用治具を準備する準備工程と、前記くりぬき部に前記分割個片群が位置するように前記搬送用治具の前記貼付部を前記弾性フィルムに貼付固定する貼付工程と、前記貼付部が前記弾性フィルムに貼付された状態で前記搬送用治具の外周端部よりも外側で前記弾性フィルムをカットし、カット位置より内側の部分を被搬送体として得る取得工程と、前記被搬送体を搬送する搬送工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分割個片群の搬送方法であって、前記貼付工程においては、前記被搬送体においても前記弾性フィルムの張設状態が維持されるように前記搬送用治具を前記弾性フィルムに貼付固定する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の分割個片群の搬送方法であって、前記搬送用治具が前記弾性フィルムに直接に貼付固定可能な材質からなる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の分割個片群の搬送方法であって、前記貼付工程においては、前記貼付部に接着剤が付与された状態で前記弾性フィルムに貼付固定される、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で前記被分割体を分割してなる分割個片群を、搬送するための搬送用治具であって、中央部にくりぬき部を有する平板状をなし、少なくとも一方の主面が前記弾性フィルムに対して直接または間接に貼付固定可能な貼付部とされてなり、前記くりぬき部に前記分割個片群が位置するように前記貼付部を前記弾性フィルムに貼付固定した状態で、前記搬送用治具の外周端部よりも外側で前記弾性フィルムをカットすることによって、カット位置より内側の部分が被搬送体として搬送可能とされる、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の搬送用治具であって、前記被搬送体においても前記弾性フィルムの張設状態が維持されるように前記弾性フィルムに貼付固定される、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5または請求項6に記載の搬送用治具であって、前記弾性フィルムに直接に貼付固定可能な材質からなる、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項5または請求項6に記載の搬送用治具であって、前記貼付部に接着剤が付与された状態で前記弾性フィルムに貼付固定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし請求項8の発明によれば、張設保持された弾性フィルム上に分割個片群が貼付保持されている場合において、搬送用治具を、そのくりぬき部に分割個片群が位置するように弾性フィルムに貼付して、該搬送用治具の外周部分にて弾性フィルムをカットすることで得られる被搬送体を搬送対象とすることで、分割直後の状態を保って分割個片群を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】保持部材1によって外周部分が保持された弾性フィルム2の上に、被分割体3が貼付固定された様子を示す上面図である。
【図2】保持部材1によって外周部分が保持された弾性フィルム2の上に、被分割体3が貼付固定された様子を示す側断面図である。
【図3】被分割体3を図示しない分割装置によって分割した後の様子を示す上面図である。
【図4】搬送用治具5の外形を示す斜視図である。
【図5】搬送用治具5を貼付後の状態を示す上面図である。
【図6】被搬送体6の上面図である。
【図7】被搬送体6の側断面図である。
【図8】変形例に係る、外形が円形状の搬送用治具5’を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<分割個片群の概要>
本発明の搬送対象である分割個片群は、被分割体を分割装置によって分割することで得られる複数の分割個片の集合である。なお、本実施の形態において搬送とは、分割個片群を一括してある位置から他の位置へと移動させることを意味するものとする。以下においては、まず、分割個片群が得られるまでの概要について説明する。
【0022】
図1は、分割用保持部材10によって外周部分が保持された弾性フィルム2の上に、被分割体3が貼付固定された様子を示す上面図である。分割用保持部材10は、図1においては上面視環状の枠体として例示されている。分割用保持部材10は、弾性フィルム2の上面2aに貼付されている。なお、分割用保持部材10は、ダイサーでの分割に用いるか否かを問わず、ダイシングリングなどと称されることもある。
【0023】
被分割体3は、例えば、セラミックス基板その他の脆性材料を用いて構成された脆性材料基板や、シリコン基板や、ガラス基板などである。被分割体3の表面には、同一の幾何学的形状を有する回路パターン(電極、配線など)を2次元的に繰り返し形成されていてもよいが、本発明に照らしてこれは必須の態様ではない。また、被分割体3の上面3aに、後段の分割に際して分割位置を特定するための位置決めマーク(カットマーク)が形成されていてもよい。
【0024】
弾性フィルム2は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルなどを素材とするフィルム状の部材である。なお、弾性フィルム2は、ダイサーでの分割に用いるか否かを問わず、ダイシングテープなどと称されることもある。
【0025】
本実施の形態においては、分割用保持部材10は図示しない分割装置の構成要素であって、被分割体3が貼付固定された弾性フィルム2を保持してなる分割用保持部材10が、該分割装置の所定位置に配置されることによって、被分割体3が分割されるものとする。分割用保持部材10は、弾性フィルム2を保持した状態で分割装置から着脱自在とされてなる。
【0026】
分割装置としては、例えば、上面3aにスクライブラインSLが形成された被分割体3を該スクライブラインに沿ってブレイクするためのブレーカーが想定される。ただし、これは必須の態様ではなく、ダイサーその他の種々の分割装置を用いる態様であってもよい。
【0027】
分割装置によって分割を行うことで、被分割体3は、複数の分割個片に分割される。これら個々の分割個片の集合を、分割個片群と総称する。それぞれの分割個片は、弾性フィルム2に底部が貼付保持される一方、側面部は、隣り合う分割個片同士が接触し得る状態となっている。係る状態のままであると、分割個片同士が接触して破損する可能性があるため、好ましくは、分割装置での分割後、分割個片同士を離間させるべく、弾性フィルム2の引き延ばしが行われる。
【0028】
図2は、弾性フィルム2の引き延ばし(エキスパンド)の様子を示す概略図である。まず、図2(a)に示すように、分割用保持部材10によって保持されたままの状態で、表面2aに分割個片群4を保持してなる弾性フィルム2が、図示しないエキスパンド装置に備わるステージ11と対向配置される。より具体的には、弾性フィルム2の裏面2b(分割個片群が貼付されていない側の面)が、平坦面であるステージ11の上面11aと対向配置される。
【0029】
係る配置状態から、矢印AR1およびAR2に示すように、裏面2bと上面11aとが互いに接近する方向に、弾性フィルム2とステージ11とが相対的に移動される。係る相対移動は、両者が接触した後も続けられる。すると、図2(b)にて矢印AR3として示すように、ステージ11上においては、弾性フィルム2aが、分割個片群4が貼付された中央部から外周部へと向かう力を受けて引き延ばされる。その結果、弾性フィルム2は十分な張設状態とされ、隣り合う分割個片4aの間には離間部4bが形成される。すなわち、個々の分割個片4が互いに離間した状態が実現される。
【0030】
係る張設状態が実現されると、図2(c)に示すように、弾性フィルム2の端部が張設保持部材1によって挟み込まれる一方、それまで弾性フィルム2を保持していた分割用保持部材10が弾性フィルム2から引き剥がされる。これにより、個々の分割個片4aが互いに離間した状態で貼付されている弾性フィルム2が張設保持部材1によって張設保持された状態が、実現される。
【0031】
より詳細には、張設保持部材1は、上側枠部(クランプカバー)1aと下側枠部(クランプリング)1bとから構成されている。これら上側枠部1aと下側枠部1bとは、互いに嵌め合わせ可能に構成されている。弾性フィルム2を間に挟んで上側枠部1aと下側枠部1bとを互いに嵌め合うことによって、弾性フィルム2は、矢印AR3として示した張力を保って張設保持部材1に保持される。なお、図2(c)においては図示を省略しているが、邪魔にならない限りにおいて、保持部材1の外側に弾性フィルム2がはみ出していてもよい。
【0032】
張設保持部材1が上面視環状の枠体であることは必須の態様ではなく、弾性フィルム2を張設保持可能である限りにおいて、エキスパンド装置に応じた種々の形状を有していてもよい。例えば、矩形その他の外形形状を有する枠体であってもよい。
【0033】
図3は、図2(c)に示した、張設保持部材1によって弾性フィルム2を張設保持する様子を示す上面図である。
【0034】
<搬送用治具>
次に、上述のように得られた分割個片群4の搬送に用いる搬送用治具について説明する。
【0035】
図4は、搬送用治具5の外形を示す斜視図である。搬送用治具5は、中央部にくりぬき部5aを有する平板状の部材であり、一方の主面が弾性フィルム2を貼付固定するための貼付部5bとされてなる。なお、図4においては、くりぬき部5aが矩形形状をなしている場合を例示している。
【0036】
搬送用治具5は、図4に示したような平板形状を好適に実現可能であれば、その材質は特に限定されない。例えば、アクリルその他の樹脂や、ガラス、金属などからなるのが好適である。ただし、搬送用治具5は、弾性フィルム2よりも高い耐熱温度、例えば40℃〜50℃程度の耐熱温度を有することが好ましい。これは、ブレイク時やエキスパンド時などに弾性フィルム2がそれらの温度近くにまで加熱された直後に、搬送用治具5が該弾性フィルム2に貼付される場合があるからである。
【0037】
なお、弾性フィルム2の材質と搬送用治具5の材質との組合せによっては、弾性フィルム2に対し搬送用治具5を直接に圧接することで搬送用治具5は弾性フィルム2に貼付固定が実現される。係る場合は、搬送用治具5の両方の主面が貼付部5bとなり得る。すなわち、係る場合は、表裏を区別せずに搬送用治具5を使用することができる。
【0038】
一方、弾性フィルム2の材質と搬送用治具5の材質との組合せによっては、そのような直接の貼付固定が難しい場合もある。そのような場合は、貼付部5bに適宜の接着材を付与したうえで貼付固定を行えばよい。
【0039】
<搬送用治具を用いた搬送>
次に、上述のように得られた分割個片群4を、搬送用治具5を用いて搬送可能とする態様について説明する。
【0040】
まず、搬送用治具5を、分割個片群4を保持した状態で張設保持部材1に張設保持されている弾性フィルム2(図3)に対して貼付固定する。図5は、係る貼付後の状態を示す上面図である。図5に示すように、搬送用治具5の貼付固定は、くりぬき部5aに分割個片群4が位置するように行う。
【0041】
このように搬送用治具5を弾性フィルム2に貼り付けた後、続いて、搬送用治具5の外周端部5eよりも外側の位置で弾性フィルム2をカットする。本実施の形態においては、カット位置よりも内側の部分が、直接の搬送対象たる被搬送体6となる。図6は、被搬送体6の上面図を例示しており、図7は被搬送体6の側断面図を例示している。なお、カットによって張設保持部材1は不要となる。係るカット後の張設保持部材1は、エキスパンド装置での新たな処理に使用すべく、回収される。
【0042】
なお、カット位置は搬送用治具5の外周端部5eよりも外側であって、かつ保持部材1よりも内側であればよい。具体的には、図6に例示するように、被搬送体6においては、搬送用治具5の外周端部5eよりも外側にはみ出したはみ出し部2dとして弾性フィルム2の一部が残っていてもよい。ただし、搬送時その他におけるハンドリングのしやすさを考慮すると、外周端部5eにできるだけ近い位置をカット位置としたカットを行い、はみ出し部2dはなるべく少ない方が好ましい。なお、図7においては、はみ出し部2dの図示を省略している。
【0043】
被搬送体6は、搬送用治具5と、搬送用治具5の直下およびくりぬき部5aに位置する弾性フィルム2の残存部分2cと、当該残存部分2cの上に貼付保持されている分割個片群4とを含んでなる。すなわち、係る被搬送体6を搬送対象とすることで、分割個片群4の搬送を行うことができる。換言すれば、本実施の形態は、張設保持部材1によって張設保持されている、分割個片群4を貼付保持した弾性フィルム2のうち、当該分割個片群4が保持されている部分のみを、搬送用治具5を用いて取り出すことにより、分割個片群4を搬送可能としているともいえる。係る被搬送体6は、弾性フィルム2を保持した状態の張設保持部材1よりもコンパクト化されているので、後者を直接搬送する場合よりも、可搬性に優れている。
【0044】
また、搬送用治具5の貼付は、張設保持部材1に張設保持された状態の弾性フィルム2に対して行われている。よって、上述したように弾性フィルム2をカットすることによって張設保持部材1による張設保持が解消された後においても、弾性フィルム2の残存部分2cにおいては、貼付部5bが貼付されていることで、図7において矢印AR4にて示すように、分割個片群4が貼付固定された中央部から搬送用治具5へと向かう張力が作用した状態が保たれている。すなわち、上述のカットを行うことによって弾性フィルム2が弛んだりすることはない。それゆえ、被搬送体6における弾性フィルム2による分割個片群4の保持状態も、カット前の状態と同様に維持されている。
【0045】
結果として、被搬送体6においては、張設保持部材1で弾性フィルム2を保持していたときと同様に、張設保持された弾性フィルム2に分割個片群4が貼付保持された状態が良好に保たれている。よって、被搬送体6を搬送対象とすることで、分割個片群4を分割直後の状態を保って搬送し、さらには、観察や評価などに供することが可能となる。
【0046】
また、張設保持部材1はエキスパンド装置の構成要素であるので、通常は、再使用のために回収することが必要となり、受け渡し先の把握・管理が必要な場合があるが、搬送用治具5は必ずしも回収の必要がない。よって、低コストの素材にて作製し、使い切りを前提とすれば、そのような受け渡し先の管理が必要ではないという利点もある。
【0047】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、張設保持された弾性フィルム上に分割個片群が貼付保持されている場合において、搬送用治具を、そのくりぬき部に分割個片群が位置するように弾性フィルムに貼付して該搬送用治具の外周部分にて弾性フィルムをカットすることで得られる被搬送体を搬送対象とする。これにより、優れた可搬性のもとで、分割直後の状態を保った分割個片群の搬送を行うことできる。その結果、分割直後の状態を保って分割個片群を観察や評価に供することが、容易に行えるようになる。
【0048】
<変形例>
図7では、搬送用治具5の厚みが分割個片群4の厚みと略同一となる場合を例示しているが、これは必須の態様ではない。例えば、搬送用治具5の厚みの方を大きくしておくと、分割個片群4と外部との接触が起こりにくくなる。さらに、係る場合において、搬送用治具5の上面に図示しない蓋体を設け、搬送時に分割個片群4の上面を保護できるようになっていてもよい。
【0049】
また、図4においては、搬送用治具5の外形およびくりぬき部5aがいずれも矩形形状をなしている場合を例示しているが、これは必須の態様ではない。図8は、外形が円形状の搬送用治具5’を示す斜視図である。搬送用治具5’においては、くりぬき部5a’も円形状となっている。あるいは、外形形状およびくりぬき部の形状が、相異なっていてもよい。それぞれに、円形、楕円形、矩形、多角形など、種々の平面形状をなしていてもよい。
【0050】
分割装置において被分割体3の分割を行った後、エキスパンド装置において弾性フィルム2を引き延ばすことは、必須の態様ではない。例えば、分割直後の状態において、弾性フィルム2が分割用保持部材10によって充分な張設状態とされている場合であれば、この状態において、搬送用治具5を弾性フィルム2に貼付し、上述の実施の形態と同様に分割個片群4を搬送するようにしてもよい。
【0051】
あるいはまた、分割装置に固定的に設けられた保持要素によって、被分割体3および分割個片群4が貼付保持された弾性フィルム2が張設保持される態様であっても、搬送用治具5の使用は可能である。係る場合は、当該保持要素に(つまりは分割装置自体に)保持されている(分割個片群4が貼付されている)弾性フィルム2に対して、搬送用治具5を貼付するようにすれば、その後は上述の実施の形態と同様に、分割個片群4を搬送可能とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 張設保持部材
1a (張設保持部材の)上側枠部
1b (張設保持部材の)下側枠部
2 弾性フィルム
2c (弾性フィルムのカット後の)残存部分
3 被分割体
4 分割個片群
4a 分割個片
5 搬送用治具
5a (搬送用治具の)くり抜き部
5b (搬送用治具の)貼付部
5e (搬送用治具の)外周端部
6 被搬送体
10 分割用保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で前記被分割体を分割してなる分割個片群を搬送する方法であって、
中央部にくりぬき部を有する平板状をなし、かつ、少なくとも一方の主面が前記弾性フィルムに対して直接または間接に貼付固定可能な貼付部とされてなる搬送用治具を準備する準備工程と、
前記くりぬき部に前記分割個片群が位置するように前記搬送用治具の前記貼付部を前記弾性フィルムに貼付固定する貼付工程と、
前記貼付部が前記弾性フィルムに貼付された状態で前記搬送用治具の外周端部よりも外側で前記弾性フィルムをカットし、カット位置より内側の部分を被搬送体として得る取得工程と、
前記被搬送体を搬送する搬送工程と、
を備えることを特徴とする分割個片群の搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分割個片群の搬送方法であって、
前記貼付工程においては、前記被搬送体においても前記弾性フィルムの張設状態が維持されるように前記搬送用治具を前記弾性フィルムに貼付固定する、
ことを特徴とする分割個片群の搬送方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分割個片群の搬送方法であって、
前記搬送用治具が前記弾性フィルムに直接に貼付固定可能な材質からなる、
ことを特徴とする分割個片群の搬送方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の分割個片群の搬送方法であって、
前記貼付工程においては、前記貼付部に接着剤が付与された状態で前記弾性フィルムに貼付固定される、
ことを特徴とする分割個片群の搬送方法。
【請求項5】
張設部材によって外周部分を固定されて張設状態とされた弾性フィルムに被分割体を貼付した状態で前記被分割体を分割してなる分割個片群を、搬送するための搬送用治具であって、
中央部にくりぬき部を有する平板状をなし、
少なくとも一方の主面が前記弾性フィルムに対して直接または間接に貼付固定可能な貼付部とされてなり、
前記くりぬき部に前記分割個片群が位置するように前記貼付部を前記弾性フィルムに貼付固定した状態で、前記搬送用治具の外周端部よりも外側で前記弾性フィルムをカットすることによって、カット位置より内側の部分が被搬送体として搬送可能とされる、
ことを特徴とする分割個片群の搬送用治具。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送用治具であって、
前記被搬送体においても前記弾性フィルムの張設状態が維持されるように前記弾性フィルムに貼付固定される、
ことを特徴とする分割個片群の搬送用治具。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の搬送用治具であって、
前記弾性フィルムに直接に貼付固定可能な材質からなる、
ことを特徴とする分割個片群の搬送用治具。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の搬送用治具であって、
前記貼付部に接着剤が付与された状態で前記弾性フィルムに貼付固定される、
ことを特徴とする分割個片群の搬送用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−109330(P2012−109330A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255540(P2010−255540)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】