説明

分割型回転子及び電動機

【課題】永久磁石からの漏れ磁束が発生することを抑制することと、外周側鉄心片と回転軸側鉄心片とを容易に且つ確実に結合できるようにすることとの双方を実現できるようにする。
【解決手段】相対的に分割型回転子120の外周側に位置する外周側鉄心片121a〜121dと、相対的に分割型回転子120の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片122とに回転子の鉄心を分割し、それら外周側鉄心片121a〜121dに形成された貫通孔125に鉄心片結合部材123a〜123dを挿入し、鉄心片結合部材123a〜123dの両端を、端板150a、150bに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型回転子及び電動機に関し、特に、永久磁石を内蔵する回転子として用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等では、高い効率と高い耐久性とを有するIPM(Interior Permanent Magnet)モータが用いられている。このIPMモータでは、永久磁石を内蔵した回転子を用いている。
本発明者は、このようなIPMモータにおける永久磁石からの漏れ磁束を抑制する技術として、特願2009−37045号に記載されている技術を提案している。この技術では、回転子として、複数の鉄心片を組み合わせて構成される分割型回転子を採用する。この分割型回転子は、相対的に当該分割型回転子の外周側に配置された複数の外周側鉄心片と、相対的に分割型回転子の回転軸側に配置された回転軸側鉄心片とのそれぞれの間に、分割型回転子の外周方向で間隔を有して2つの永久磁石を配置すると共に、外周側鉄心片と回転軸側鉄心片との間の磁路を遮断するように外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片に非磁性体の鉄心片結合部材を嵌め合わせるようにする。
このようにすることにより、永久磁石からの漏れ磁束が発生することを従来よりも抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した技術では、外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片に嵌め合わせることができるように鉄心片結合部材の形状を決定しなければならない。このため、鉄心片結合部材の形状が複雑になることにより、その加工が難しくなる。また、外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片に嵌め合わされた際に、鉄心片結合部材にガタが生じないようにする必要がある。このため、外周側鉄心片、回転軸側鉄心片、及び鉄心片結合部材を高い寸法精度で製造する必要がある。さらに、鉄心片結合部材は、外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片に嵌め合わさることにより、それら外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片を留めているので、鉄心片結合部材には高い強度が要求される。特に、モータの回転速度が大きくなると、外周側鉄心片に作用する遠心力が大きくなり、この遠心力に対抗するために、特殊な高強度の材料を鉄心片結合部材に用いる必要がある。
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、永久磁石からの漏れ磁束が発生することを抑制することと、外周側鉄心片と回転軸側鉄心片とを容易に且つ確実に結合できるようにすることとの双方を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分割型回転子は、相対的に外周側に配置された外周側鉄心片と、相対的に回転軸側に配置された回転軸側鉄心片と、前記外周側鉄心片と前記回転軸側鉄心片との間において、周方向で間隔を有して配置された複数の永久磁石と、前記回転軸方向における両端に配置された2つの端板と、を有し、前記外周側鉄心片に、回転軸方向の貫通孔が形成されている分割型回転子であって、前記貫通孔に挿入され、両端が前記端板に固定された鉄心片結合部材を有し、前記永久磁石の、前記分割型回転子における外周側の端面よりも当該外周側の領域における透磁率が、前記外周側鉄心片及び前記回転軸側鉄心片の透磁率よりも低いことを特徴とする。
本発明の電動機は、前記分割型回転子と、内周が前記分割型回転子の外周と間隔を有して相互に対向するように配置された固定子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、相対的に分割型回転子の外周側に位置する外周側鉄心片と、相対的に分割型回転子の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片とに回転子の鉄心を分割し、外周側鉄心片に形成された貫通孔に鉄心片結合部材を挿入し、鉄心片結合部材の両端を、端板に固定するようにした。したがって、外周側鉄心片と回転軸側鉄心片とに鉄心片結合部材を嵌め合わせるようにする場合よりも、それらの構成を簡単にすることができ、外周側鉄心片と回転軸側鉄心片とを容易に且つ確実に結合することができる。また、永久磁石の、分割型回転子における外周側の端面よりも当該外周側の領域における透磁率を、外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片の透磁率よりも低くしたので、永久磁石からの漏れ磁束が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、IPMモータの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、分割型回転子の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、外周側鉄心片の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、回転軸側鉄心片の構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示し、IPMモータの断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示し、分割型回転子の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示し、外周側鉄心片の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示し、回転軸側鉄心片の構成を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示し、IPMモータの断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態を示し、分割型回転子の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態を示し、外周側鉄心片の構成を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態を示し、回転軸側鉄心片の構成を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を示し、IPMモータの断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態を示し、分割型回転子の断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態を示し、外周側鉄心片の構成を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態を示し、鉄心片結合部材が貫通孔に挿入されたときの様子を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態を示し、IPMモータの断面図である。
【図18】本発明の第5の実施形態を示し、分割型回転子の断面図である。
【図19】本発明の第5の実施形態を示し、外周側鉄心片の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、分割型回転子の適用例であるIPMモータの回転軸に垂直な方向からIPMモータを切ったときの断面図の一例を示す。また、図2は、IPMモータの回転軸に沿ってIPMモータを切ったときの分割型回転子の断面図の一例を示す。具体的に図2は、図1のA−A´方向から見た分割型回転子の断面図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分の概略だけを示している。
図1、図2において、IPMモータ100は、固定子(ステータ)110と、分割型回転子(ロータ)120と、ケース130と、回転軸140と、端板150と、を有している。
【0009】
固定子110は、周方向に延在するヨークと、ヨークの内周側から軸心方向に延在する複数のティースとを有している。複数のティースは、周方向において略等間隔で設けられている(図1に示す例では、12個のティースが設けられている)。尚、ティースには、図示しない巻線が巻き回されている。
ケース130は、焼き嵌め等が行われることにより、固定子110の周囲(外周)から固定子110に密接して、固定子110を固定する。ケース130は、例えば、鉄等の磁性体あるいはアルミニウム等の非磁性体により構成される。
【0010】
分割型回転子120は、外周側鉄心片121a〜121dと、回転軸側鉄心片122と、鉄心片結合部材123a〜123dと、永久磁石124a〜124hとを有し、これらを組み合わせることにより形成される。
永久磁石124a〜124hは、直方体形状を有している。図1に示すように、永久磁石124a〜124hは、分割型回転子120の周方向において、相互に間隔を有して配設されている。また、永久磁石124a〜124hにおける、分割型回転子120の周方向における両端面のうち、一端面が相対的に分割型回転子120の外周側に位置し、他端面が相対的に分割型回転子120の回転軸側に位置するようにする。このとき、分割型回転子120の周方向において、相対的に分割型回転子120の外周側に位置している端面同士が相互に間隔を有して隣接し、相対的に分割型回転子120の回転軸側に位置している端面同士が相互に間隔を有して隣接するように、それぞれの永久磁石124a〜124hが、分割型回転子120の周方向において、相互に間隔を有して配置されるようにする。
【0011】
このようにして配設されている永久磁石124a〜124hのうち、相対的に分割型回転子120の回転軸側に位置している端面同士が相互に間隔を有して隣接している2つの永久磁石(例えば永久磁石124a、124b)により分割型回転子120の1つのポール(極)を形成するようにしている。そして、分割型回転子120の周方向において、異なる極が交互に存在するようにしている。
尚、以下の説明において、外周、回転軸と称した場合には、特に断らない限り、それぞれ分割型回転子11の外周、回転軸を示すものとする。
【0012】
外周側鉄心片121a〜121dは、相対的に分割型回転子120の外周側に配置される鉄心片である。図1に示すように、本実施形態では、分割型回転子120の極毎に外周側鉄心片121a〜121dが個別に設けられている。
図3は、外周側鉄心片121aの構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図3(a)は、図1に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た外周側鉄心片121aの外観図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A´方向から見た外周側鉄心片121aの断面図である。尚、外周側鉄心片121a以外の外周側鉄心片121b〜121dは、外周側鉄心片121aと同じ構成を有するので、それらの図示を省略する。
【0013】
外周側鉄心片121aは、図3(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図3(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。ただし、電磁鋼板以外の磁性体板を用いて外周側鉄心片121aを形成するようにしてもよい。
図3に示すように、外周側鉄心片121aの周方向における中央の回転軸側の領域(外周側鉄心片121aの外周側よりも回転軸側に近い領域であって、出来るだけ回転軸側に近い領域)には、後述する鉄心片結合部材123aを挿入するための貫通孔125が形成されている。
【0014】
回転軸側鉄心片122は、相対的に分割型回転子120の回転軸側に配置される鉄心片である。図1に示すように、本実施形態では、単一の回転軸側鉄心片122が設けられている。
図4は、回転軸側鉄心片122の構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図4(a)は、図1に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た回転軸側鉄心片122の外観図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A´方向から見た回転軸側鉄心片122の断面図である。
図4に示すように、回転軸側鉄心片122の中心の領域には、回転軸140を挿入するための貫通孔126が形成されている。
回転軸側鉄心片122は、図4(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図4(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。
そして、図1に示すように、本実施形態では、外周側鉄心片121a〜121dの周方向の端面の間に、隙間127a〜127dが形成されるようにしている。本実施形態では、このようにすることによって、永久磁石124a〜124hの周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域に隙間127a〜127dができるようにしている。よって、当該外周側の領域(隙間127a〜127d)の透磁率は、外周側鉄心片121及び回転軸側鉄心片122の透磁率よりも低くなる。
【0015】
尚、本実施形態では、複数の電磁鋼板を積み重ねることにより回転軸側鉄心片122を形成するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、図4に示したものと同じ外形を有する磁性体(鉄等)を用いて回転軸側鉄心片を一体で形成するようにしてもよい。分割型回転子120の回転軸側には、直流の磁束は発生するが高周波の磁束が発生しないため、このようにしても分割型回転子120の性能に大きな影響を与えないからである。
【0016】
鉄心片結合部材123a〜123dの(加工前の)形状は、図3に示した貫通孔125に合わせた形状(直方体形状)であり、外周側鉄心片121a〜121dに形成されている貫通孔125に挿入される。その後、図2に示すように、鉄心片結合部材123a〜123dの一端側と他端側とのそれぞれにハトメ等を使用して加工が施され、鉄心片結合部材123a〜123dの一端と他端が、それぞれ端板150a、150bに固定される。端板150a、150bは、分割型回転子110の回転軸方向における両端に配置され、分割型回転子110をとめるためのものである。端板150a、150bは、非磁性体(又は透磁率の低い磁性体)で形成される。ただし、必ずしもこのようにする必要はなく、永久磁石124a〜124hに近い領域だけを非磁性体とし、その他の領域を磁性体とする端板を採用してもよい。
【0017】
本実施形態では、鉄心片結合部材123a〜123dを磁性体により(一体で)形成するようにしている。ただし、鉄心片結合部材123を非磁性体(又は外周側鉄心片121及び回転軸側鉄心片122よりも透磁率が低い磁性体)で形成するようにしてもよい。
前述したように、貫通孔125は、外周側鉄心片121aの回転軸側(外周側鉄心片121aの外周面から遠い位置)に形成されている。したがって、鉄心片結合部材123、端板150、外周側鉄心片121により閉回路(電気回路)が構成されるようにしても、固定子110からの交流磁界が、この閉回路に錯交することによる誘導起電力(誘導電流)の発生を低減できる。
また、鉄心片結合部材123は、分割型回転子120の回転により発生する遠心力によって変形しない強度を有している。
【0018】
本実施形態では、以上のようにすることによって、分割型回転子120が回転しても、外周側鉄心片121a〜121dが、鉄心片結合部材123a〜123dを介して端板150a、150bに固定されるようにすることができる。これにより、分割型回転子120が回転することによる遠心力が発生しても、外周側鉄心片121a〜121d、回転軸側鉄心片122、鉄心片結合部材123a〜123d、及び永久磁石124a〜124hが相互に分離しないようにすることができる。
【0019】
以上のように本実施形態では、相対的に分割型回転子120の外周側に位置する外周側鉄心片121a〜121dと、相対的に分割型回転子120の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片122とに回転子の鉄心を分割し、それら外周側鉄心片121a〜121dに形成された貫通孔125に鉄心片結合部材123a〜123dを挿入し、鉄心片結合部材123a〜123dの両端を、端板150a、150bに固定するようにした。したがって、鉄心片結合部材を、外周側鉄心片及び回転軸側鉄心片の双方に嵌め合わせるようにしなくても、外周側鉄心片121a〜121dと、回転軸側鉄心片122とを従来よりも確実に結合させることができる。
【0020】
また、永久磁石124a〜124hの周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域に隙間127a〜127dができるようにしたので、当該外周側の領域を介して、永久磁石124a〜124dの外周側の端面と回転軸側の端面との間で漏れ磁束が生じることを従来よりも抑制することができ、この漏れ磁束によって鉄心が飽和することを従来よりも抑制することができる。したがって、固定子110等で発生した磁束が永久磁石124a〜124dに進入することを可及的に防止することができ、永久磁石124a〜124dの温度が上昇し、永久磁石124a〜124dの磁石としての機能が低下してしまうことを従来よりも抑制することができる。これにより、例えば、永久磁石124a〜124dとして、耐熱性を高めたネオジウム−鉄−ボロン(Ne−Fe−B)のような特定の材料を用いなくてもよくなる。
【0021】
また、永久磁石124a〜124dの外周側の端面と回転軸側の端面との間で漏れ磁束が生じることを従来よりも抑制することができるようにしたことにより、永久磁石124a〜124dから固定子110の方向に伝わる磁束を増加させることもでき、IMPモータのトルクが低下することを抑制することができる。
以上のように、本実施形態では、従来よりも高性能且つ高強度のIPMモータを容易に形成することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、外周側鉄心片121の周方向における中央の回転軸側の領域に、1つの鉄心片結合部材123を挿入し、鉄心片結合部材123を端板150a、150bに固定する場合について説明した。これに対し、本実施形態では、2つの鉄心片結合部材を外周側鉄心片に挿入し、これら2つの鉄心片結合部材を端板に固定する場合について説明する。このように本実施形態と前述した第1の実施形態とは、外周側鉄心片と鉄心片結合部材に係る構成が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図4に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0023】
図5は、分割型回転子の適用例であるIPMモータの回転軸に垂直な方向からIPMモータを切ったときの断面図の一例を示す。また、図6は、IPMモータの回転軸に沿ってIPMモータを切ったときの分割型回転子の断面図の一例を示す。具体的に図6は、図5のA−A´方向から見た分割型回転子の断面図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分の概略だけを示している。
図5、図6において、IPMモータ200は、固定子(ステータ)110と、分割型回転子(ロータ)210と、ケース130と、回転軸140と、端板150と、を有している。
【0024】
分割型回転子210は、外周側鉄心片211a〜211dと、回転軸側鉄心片212と、鉄心片結合部材213a〜213hと、永久磁石124a〜124hとを有し、これらを組み合わせることにより形成される。
外周側鉄心片211a〜211dは、相対的に分割型回転子210の外周側に配置される鉄心片である。図5に示すように、本実施形態では、分割型回転子210の極毎に外周側鉄心片211a〜211dが個別に設けられている。
図7は、外周側鉄心片211aの構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図7(a)は、図5に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た外周側鉄心片211aの外観図であり、図7(b)は、図7(a)のA−A´方向から見た外周側鉄心片211aの断面図である。尚、外周側鉄心片211a以外の外周側鉄心片211b〜211dは、外周側鉄心片211aと同じ構成を有するので、それらの図示を省略する。
外周側鉄心片211aは、図7(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図7(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。ただし、電磁鋼板以外の磁性体板を用いて外周側鉄心片211aを形成するようにしてもよい。
図7に示すように、外周側鉄心片211aの周方向における両側の領域には、それぞれ後述する鉄心片結合部材213a、213bを挿入するための貫通孔214a、214bが形成されている。尚、図5、図7では、表記の都合上、鉄心片結合部材213a、213bの外周側の端面からの距離と、回転軸側の端面からの距離とが略同じとなる位置に貫通孔214a、214bを形成しているが、第1の実施形態で説明したように、固定子110からの交流磁界による影響が低減されるように、出来るだけ回転軸側に貫通孔214a、214bを形成するのが好ましい。
【0025】
回転軸側鉄心片212は、相対的に分割型回転子210の回転軸側に配置される鉄心片である。図5に示すように、本実施形態では、単一の回転軸側鉄心片212が設けられている。
図8は、回転軸側鉄心片212の構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図8(a)は、図5に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た回転軸側鉄心片212の外観図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A´方向から見た回転軸側鉄心片212の断面図である。
図8に示すように、回転軸側鉄心片212の中心の領域には、回転軸140を挿入するための貫通孔215が形成されている。
【0026】
回転軸側鉄心片212は、図8(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図8(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。
そして、図5に示すように、本実施形態では、外周側鉄心片211a〜211dの周方向の端面の間に、隙間216a〜216dが形成されるようにしている。本実施形態では、このようにすることによって、永久磁石124a〜124hの周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域に隙間216a〜216dができるようにしている。よって、当該外周側の領域(隙間216a〜216d)の透磁率は、外周側鉄心片211及び回転軸側鉄心片212の透磁率よりも低くなる。
尚、本実施形態では、複数の電磁鋼板を積み重ねることにより回転軸側鉄心片212を形成するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、図8に示したものと同じ外形を有する磁性体(鉄等)を用いて回転軸側鉄心片を一体で形成するようにしてもよい。
【0027】
鉄心片結合部材213a〜213hの(加工前の)形状は、図7に示した貫通孔214に合わせた形状(円柱形状)であり、外周側鉄心片211a〜211dに形成されている貫通孔214に挿入される。その後、図6に示すように、鉄心片結合部材213の一端側と他端側とのそれぞれに加工が施され、鉄心片結合部材213の一端と他端が、それぞれ端板150a、150bに固定される。
本実施形態では、鉄心片結合部材213a〜213hを磁性体により(一体で)形成するようにしている。また、鉄心片結合部材213は、分割型回転子210の回転により発生する遠心力によって変形しない強度を有している。
【0028】
本実施形態では、このようにすることによって、分割型回転子210が回転しても、外周側鉄心片211a〜211dが、鉄心片結合部材213a〜213hを介して端板150a、150bに固定されるようにすることができる。これにより、分割型回転子210が回転することによる遠心力が発生しても、外周側鉄心片211a〜211d、回転軸側鉄心片212、鉄心片結合部材213a〜213h、及び永久磁石124a〜124hが相互に分離しないようにすることができる。
【0029】
以上のように本実施形態では、相対的に分割型回転子210の外周側に位置する外周側鉄心片211a〜211dと、相対的に分割型回転子210の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片212とに回転子の鉄心を分割し、それら外周側鉄心片211a〜211dのそれぞれに2つずつ形成された貫通孔214に鉄心片結合部材213a〜213hを個別に挿入し、鉄心片結合部材213a〜213hの両端を、端板150a、150bに固定するようにした。このように外周側鉄心片211a〜211dを2箇所で端板150a、150bに固定することができるので、外周側鉄心片121a〜121dと、回転軸側鉄心片122とを、第1の実施形態よりも、より確実に結合させることができる。
尚、本実施形態では、外周側鉄心片211a〜211dを2箇所で端板150a、150bに固定するようにしたが、外周側鉄心片を3箇所以上で端板150a、150bに固定するようにしてもよい。
【0030】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、前述した第2の実施形態の鉄心片結合部材を他の部材と電気的に絶縁した状態で取り付けるようにした場合について説明する。このように本実施形態と前述した第1、第2の実施形態とは、鉄心片結合部材を電気的に絶縁した状態にすることによる構成が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0031】
図9は、分割型回転子の適用例であるIPMモータの回転軸に垂直な方向からIPMモータを切ったときの断面図の一例を示す。また、図10は、IPMモータの回転軸に沿ってIPMモータを切ったときの分割型回転子の断面図の一例を示す。具体的に図10は、図9のA−A´方向から見た分割型回転子の断面図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分の概略だけを示している。
図9、図10において、IPMモータ300は、固定子(ステータ)110と、分割型回転子(ロータ)310と、ケース130と、回転軸140と、端板150と、を有している。
【0032】
分割型回転子310は、外周側鉄心片311a〜311dと、回転軸側鉄心片312と、鉄心片結合部材313a〜313hと、絶縁部材314a〜314hと、永久磁石124a〜124hとを有し、これらを組み合わせることにより形成される。
外周側鉄心片311a〜311dは、相対的に分割型回転子310の外周側に配置される鉄心片である。図9に示すように、本実施形態では、分割型回転子310の極毎に外周側鉄心片311a〜311dが個別に設けられている。
図11は、外周側鉄心片311aの構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図11(a)は、図9に示した方向(分割型回転子310の回転軸に沿った方向)から見た外周側鉄心片311aの外観図であり、図11(b)は、図11(a)のA−A´方向から見た外周側鉄心片311aの断面図である。尚、外周側鉄心片311a以外の外周側鉄心片311b〜311dは、外周側鉄心片311aと同じ構成を有するので、それらの図示を省略する。
【0033】
外周側鉄心片311aは、図11(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図11(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。ただし、電磁鋼板以外の磁性体板を用いて外周側鉄心片311aを形成するようにしてもよい。
図11に示すように、外周側鉄心片311aの周方向における両側の領域には、それぞれ後述する鉄心片結合部材313a、313b、及び絶縁部材314a、314bを挿入するための貫通孔315a、315bが形成されている。
【0034】
回転軸側鉄心片312は、相対的に分割型回転子310の回転軸側に配置される鉄心片である。図9に示すように、本実施形態では、単一の回転軸側鉄心片312が設けられている。
図12は、回転軸側鉄心片312の構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図12(a)は、図9に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た回転軸側鉄心片312の外観図であり、図12(b)は、図12(a)のA−A´方向から見た回転軸側鉄心片312の断面図である。
図12に示すように、回転軸側鉄心片312の中心の領域には、回転軸140を挿入するための貫通孔316が形成されている。
【0035】
回転軸側鉄心片312は、図12(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図12(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。
そして、図9に示すように、本実施形態では、外周側鉄心片311a〜311dの外周方向の端面と、回転軸側鉄心片312の端面のうち、永久磁石124a〜124hよりも外周側に突出した端面と、の間に隙間317a〜317hができるように、外周側鉄心片311a〜311d、回転軸側鉄心片312、及び永久磁石124a〜124hを構成している。本実施形態では、このようにすることによって、永久磁石124a〜124hの外周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域に隙間317a〜317hができるようにしている。よって、当該外周側の領域(隙間317a〜317h)の透磁率は、外周側鉄心片311及び回転軸側鉄心片312の透磁率よりも低くなる。
尚、本実施形態では、複数の電磁鋼板を積み重ねることにより回転軸側鉄心片312を形成するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、図12に示したものと同じ外形を有する磁性体(鉄等)を用いて回転軸側鉄心片を一体で形成するようにしてもよい。
【0036】
鉄心片結合部材313a〜313hは、図11に示した貫通孔315に合わせたボルト形状(螺子形状)を有する。また、絶縁部材314a〜314hは、鉄心片結合部材313a〜313hが貫通孔315に挿入された際に生じる「鉄心片結合部材313a〜313hと、端板150a、及び外周側鉄心片311との間の形状」に合わせて加工された絶縁材料により(一体で)形成されている。図9、図10に示すように、絶縁部材314a〜314hは貫通孔315に挿入され、貫通孔315に挿入された絶縁部材314a〜314hに鉄心片結合部材313a〜313hが挿入される。尚、鉄心片結合部材313a〜313hが挿入された状態で、絶縁部材314a〜314hを貫通孔315に挿入するようにしてもよい。
本実施形態では、このようにして鉄心片結合部材313a〜313hを貫通孔315に挿入する際に、図10に示すように、鉄心片結合部材313a〜313hの先端(螺子山のある側の先端)と端板150bとの接合点で回転軸140に沿う方向に、端板150bを加圧することにより、鉄心片結合部材313a〜314hを端板150a、150bに固定する。
【0037】
また、本実施形態では、絶縁部材314a〜314hにより、鉄心片結合部材313a〜313hと、端板150a及び外周側鉄心片311とが電気的に絶縁されているので、鉄心片結合部材313a〜313h及び外周側鉄心片311による閉回路(電気回路)や、鉄心片結合部材313、外周側鉄心片311、及び端板150による閉回路(電気回路)が形成されることはない。よって、鉄心片結合部材313a〜313hは磁性体により(一体で)形成しても非磁性体(又は外周側鉄心片311及び回転軸側鉄心片312よりも透磁率が低い磁性体)により(一体で)形成してもよい。また、鉄心片結合部材313a〜313hは、分割型回転子210の回転により発生する遠心力によって変形しない強度を有している。
【0038】
本実施形態では、このようにすることによって、分割型回転子310が回転しても、外周側鉄心片311a〜311dが、鉄心片結合部材313a〜313hを介して端板150a、150bに固定されるようにすることができる。これにより、分割型回転子310が回転することによる遠心力が発生しても、外周側鉄心片311a〜311d、回転軸側鉄心片312、鉄心片結合部材313a〜313h、及び永久磁石324a〜324hが相互に分離しないようにすることができる。
【0039】
以上のように本実施形態では、相対的に分割型回転子310の外周側に位置する外周側鉄心片311a〜311dと、相対的に分割型回転子310の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片312とに回転子の鉄心を分割し、鉄心片結合部材313a〜313hが、絶縁部材314aによって、外周側鉄心片311a〜311d及び端板150aと電気的に絶縁されるように、鉄心片結合部材313a〜313hを貫通孔315に個別に挿入し、鉄心片結合部材313a〜313hの両端を、端板150a、150bに固定するようにした。したがって、鉄心片結合部材313、外周側鉄心片311、端板150による閉回路が形成されることを防止することができ、図9に示すように、固定子110からの交流磁界が回転軸側鉄心片312を通るように、回転軸側鉄心片312を永久磁石124a〜124hよりも外周側に突出させても、分割型回転子310の鉄損が増加することを防止することができる。
【0040】
尚、本実施形態では、鉄心片結合部材313a〜313hが、外周側鉄心片311a〜311d及び端板150aと電気的に絶縁されるようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、鉄心片結合部材313a〜313hが、外周側鉄心片311a〜311d及び端板150bと電気的に絶縁されるようにしてもよいし、鉄心片結合部材313a〜313hが、外周側鉄心片311a〜311d及び端板150a、150bと電気的に絶縁されるようにしてもよい。すなわち、鉄心片結合部材313a〜313hを一部に含む(電気的な)閉回路が形成されないように、鉄心片結合部材313a〜313hが他の部材と電気的に絶縁されるようにしていればよい。
また、絶縁部材314a〜314hは一体加工された絶縁材料としたが、複数個の加工された絶縁材料の組み合わせで形成されても、鉄心結合部材313a〜313hと貫通孔315との間にモールドして形成された樹脂等の絶縁材料であっても、鉄心結合部材313a〜313hに予め密着被覆された絶縁材料であっても、貫通孔315の壁面に予め密着被覆された絶縁材料であってもよい。
また、外周側鉄心片を3箇所以上で端板150a、150bに固定するようにしてもよい。
また、第1の実施形態で説明した鉄心片結合部材123に対して、本実施形態のように絶縁部材を適用するようにしてもよい。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、鉄心片結合部材により磁束の流れる方向を制御するようにする場合について説明する。このように本実施形態と前述した第1〜第3の実施形態とは、鉄心片結合部材により磁束の流れる方向を制御することによる構成が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1〜第3の実施形態と同一の部分については、図1〜図15に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0042】
図13は、分割型回転子の適用例であるIPMモータの回転軸に垂直な方向からIPMモータを切ったときの断面図の一例を示す。また、図14は、IPMモータの回転軸に沿ってIPMモータを切ったときの分割型回転子の断面図の一例を示す。具体的に図14は、図13のA−A´方向から見た分割型回転子の断面図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分の概略だけを示している。
図13、図14において、IPMモータ400は、固定子(ステータ)110と、分割型回転子(ロータ)410と、ケース130と、回転軸140と、端板150と、を有している。
【0043】
分割型回転子410は、外周側鉄心片411a〜411dと、回転軸側鉄心片122と、鉄心片結合部材413a〜413tと、永久磁石124a〜124hとを有し、これらを組み合わせることにより形成される。
外周側鉄心片411a〜411dは、相対的に分割型回転子410の外周側に配置される鉄心片である。図13に示すように、本実施形態では、分割型回転子410の極毎に外周側鉄心片411a〜411dが個別に設けられている。
図15は、外周側鉄心片411aの構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図15(a)は、図13に示した方向(分割型回転子410の回転軸に沿った方向)から見た外周側鉄心片411aの外観図であり、図15(b)は、図15(a)のA−A´方向から見た外周側鉄心片411aの断面図である。尚、外周側鉄心片411a以外の外周側鉄心片411b〜411dは、外周側鉄心片411aと同じ構成を有するので、それらの図示を省略する。
【0044】
外周側鉄心片411aは、図15(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図15(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。ただし、電磁鋼板以外の磁性体板を用いて外周側鉄心片411aを形成するようにしてもよい。
図15に示すように、外周側鉄心片411aの周方向には、それぞれ後述する鉄心片結合部材413a〜413eを挿入するための貫通孔414a〜414eが間隔を有して形成されている。本実施形態では、貫通孔414a〜414eの間の「外周側鉄心片411aの回転軸側(図15(a)の下側)から外周側鉄心片411aの外周側(図15(a)の上側)に向かう経路」が、外周側鉄心片411aの周方向における中央部に向かうように、貫通孔414a〜414eが形成されている。
【0045】
また、本実施形態では、鉄心片結合部材413a〜413tは、非磁性体(又は外周側鉄心片411及び回転軸側鉄心片122よりも透磁率が低い磁性体)で形成される。また、鉄心片結合部材413a〜413tの(加工前の)形状は、第1の実施形態で説明したように直方体形状であり、外周側鉄心片411a〜411dに形成されている貫通孔414a〜414tに挿入される。その後、図14に示すように、鉄心片結合部材413a〜413tの一端側と他端側とのそれぞれにハトメ等を使用して加工が施され、鉄心片結合部材413a〜413tの一端と他端が、それぞれ端板150a、150bに固定される。
図16は、鉄心片結合部材413aが貫通孔414aに挿入されたときの様子の一例を示す図(図13の鉄心片結合部材413aの部分の拡大図)である。尚、鉄心片結合部材413a以外の他の鉄心片結合部材413b〜413tが貫通孔414b〜414tに挿入されたときの様子は、鉄心片結合部材413aが貫通孔414aに挿入されたときの様子と同じであるので、それらの図示を省略する。
【0046】
図16に示すように、本実施形態では、分割型回転子410の径方向(図16のa方向)については、鉄心片結合部材413aの長さと貫通孔414aの長さとを略同じにしているが、周方向(図16のb方向)については、鉄心片結合部材413aの長さよりも貫通孔414aの長さを大きくし、鉄心片結合部材413aと外周側鉄心片411aとの間に隙間を設けるようにしている。このような隙間を形成することによって、鉄心片結合部材413aの周方向へ交流磁束が流れる(固定子110からの交流磁束が鉄心片結合部材413aに流れる)のを防止することができる。
【0047】
本実施形態では、このようにすることによって、分割型回転子410が回転しても、外周側鉄心片411a〜411dが、鉄心片結合部材413a〜413rを介して端板150a、150bに固定されるようにすることができる。これにより、分割型回転子410が回転することによる遠心力が発生しても、外周側鉄心片411a〜411d、回転軸側鉄心片122、鉄心片結合部材413a〜413r、及び永久磁石124a〜124hが相互に分離しないようにすることができる。尚、図13に示すように、本実施形態では、外周側鉄心片411a〜411dの周方向の端面の間に、隙間415a〜415dが形成されるようにしている。本実施形態では、このようにすることによって、永久磁石124a〜124hの周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域に隙間415a〜415dができるようにしている。よって、当該外周側の領域(隙間415a〜415d)の透磁率は、外周側鉄心片411及び回転軸側鉄心片122の透磁率よりも低くなる。
【0048】
以上のように本実施形態では、相対的に分割型回転子410の外周側に位置する外周側鉄心片411a〜411dと、相対的に分割型回転子410の回転軸側に位置する回転軸側鉄心片122とに回転子の鉄心を分割する。そして、それら外周側鉄心片411a〜411dのそれぞれに、外周側鉄心片411a〜411dの外周面の周方向における中央部の方向を向く貫通孔414を、当該周方向で間隔を空けて5つ形成し、それら5つの貫通孔414に鉄心片結合部材413a〜413rを個別に挿入し、鉄心片結合部材413a〜413rの両端を、端板150a、150bに固定するようにした。したがって、外周側鉄心片421a〜421dと回転軸側鉄心片122とを確実に結合させることに加え、永久磁石124a〜124hからの直流磁界を、外周側鉄心片411a〜411dの外周面の周方向における中央部に集めることができ、永久磁石124a〜124hで発生する直流磁界を効率よく伝達させることができる。
また、周方向については、鉄心片結合部材413と外周側鉄心片411との間に隙間を設けるようにしたので、固定子110からの交流磁束が鉄心片結合部材413aに流れるのを低減することができる。
【0049】
尚、1つの外周側鉄心片421a〜421dに形成する貫通孔414の数は、5つに限定されず、2つ以上であれば幾つであってもよい。
また、本実施形態の鉄心片結合部材413に対して、第3の実施形態のように絶縁部材を適用するようにしてもよい。
また、第1〜第3の実施形態においても、本実施形態のように、鉄心片結合部材と外周側鉄心片との間に隙間を形成するようにしてもよい。
また、前述した各実施形態において、鉄心片結合部材123、213、313、413の形状は、前述したものに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態で説明した鉄心片結合部材313の代わりに、第2の実施形態で説明した鉄心片結合部材213を用いてもよいし、第1の実施形態で説明した鉄心片結合部材123の代わりに、第2の実施形態で説明した鉄心片結合部材213を用いてもよい。
【0050】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態に対し、周方向で相互に隣り合う外周側鉄心片を繋ぐ第2の鉄心片結合部材を設けるようにする場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、第2の鉄心片結合部材を設けることによる構成が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図4に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0051】
図17は、分割型回転子の適用例であるIPMモータの回転軸に垂直な方向からIPMモータを切ったときの断面図の一例を示す。また、図18は、IPMモータの回転軸に沿ってIPMモータを切ったときの分割型回転子の断面図の一例を示す。具体的に図18は、図17のA−A´方向から見た分割型回転子の断面図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分の概略だけを示している。
図17、図18において、IPMモータ500は、固定子(ステータ)110と、分割型回転子(ロータ)510と、ケース130と、回転軸140と、端板150と、を有している。
【0052】
分割型回転子510は、外周側鉄心片511a〜511dと、回転軸側鉄心片122と、鉄心片結合部材123a〜123dと、第2の鉄心片結合部材512a〜512dと、永久磁石124a〜124hとを有し、これらを組み合わせることにより形成される。
外周側鉄心片211a〜211dは、相対的に分割型回転子210の外周側に配置される鉄心片である。図5に示すように、本実施形態では、分割型回転子210の極毎に外周側鉄心片211a〜211dが個別に設けられている。
図19は、外周側鉄心片511aの構成の一例を示す図である。具体的に説明すると、図19(a)は、図17に示した方向(回転軸140に沿った方向)から見た外周側鉄心片511aの外観図であり、図19(b)は、図17(a)のA−A´方向から見た外周側鉄心片511aの断面図である。尚、外周側鉄心片511a以外の外周側鉄心片511b〜511dは、外周側鉄心片511aと同じ構成を有するので、それらの図示を省略する。
【0053】
外周側鉄心片511aは、図19(a)に示すような形に打ち抜かれた複数の電磁鋼板を図19(b)に示すように、その厚み方向に積み重ねることにより形成される。ただし、電磁鋼板以外の磁性体板を用いて外周側鉄心片511aを形成するようにしてもよい。
図19に示すように、外周側鉄心片511aの周方向における中央の回転軸側の領域には、鉄心片結合部材123aを挿入するための貫通孔514が形成されている。この貫通孔514は、第1の実施形態で説明したものと同じである(図3の貫通孔125を参照)。また、外周側鉄心片511aの周方向の両端には、後述する第2の鉄心片結合部材512a、512dを嵌め合わせるための孔513a、513bが形成されている。
【0054】
第2の鉄心片結合部材51は、直方体形状を有する非磁性体(又は外周側鉄心片511及び回転軸側鉄心片122よりも透磁率が低い磁性体)により形成されるものであり、周方向で相互に隣接する外周側鉄心片511(例えば、外周側鉄心片511a、511b)の周方向の端部に形成された孔513に嵌め合わされる。第2の鉄心片結合部材511の周方向における長さは、周方向で相互に隣接する外周側鉄心片511の周方向の端部に形成された2つの孔513の底部の間の長さと略同じ長さを有している。このようにすることによって、第2の鉄心片結合部材511が孔513に嵌め合わさると、周方向で相互に隣接する外周側鉄心片511が周方向に動くことを可及的に防止することができる。
このように本実施形態では、例えば、分割型回転子510(外周側鉄心片511)の周方向における動きを、主として第2の鉄心片結合部材511により防止し、径方向における動きを、主として鉄心片結合部材511により防止することにより、外周側鉄心片511と、回転軸側鉄心片122とをより確実に結合させることができる。また、第2の鉄心片結合部材511は直方体形状であるので、各部材の加工にそれほど高い精度は要求されない。
【0055】
尚、永久磁石124a〜124hの周方向における端面のうち、相対的に外周側に位置している端面よりも外周側の領域であって、周方向で相互に隣接する2つの外周側鉄心片511(例えば、外周側鉄心片511a、511b)の間の領域全体に第2の鉄心片結合部材を配置するようにしてもよい。
また、第2〜第4の実施形態で説明した分割型回転子210〜410に対して、本実施形態のように第2の鉄心片結合部材を適用するようにしてもよい。
また、周方向で相互に隣接する外周側鉄心片511に嵌め合わせることができれば、第2の鉄心片結合部材の形状は、直方体形状に限定されるものではない。ただし、第2の鉄心片結合部材の形状は、各部材の加工の精度を考慮すると、できるだけ単純な形状であることが望ましい。
【0056】
尚、前述した各実施形態では、電動機としてIPMモータを例に挙げて説明したが、IPMモータ以外の電動機又は発電機であっても前述した各実施形態を適用することが可能である。
また、前述した各実施形態では、分割型回転子の外周方向に複数の外周側鉄心片を、永久磁石により形成されるポール(極)毎に1つの割合で間隔を有して配置する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、永久磁石の外周方向における端面の側方を通ろうとする磁路を隙間や非磁性体等によって遮断する構成を採っていれば、外周側鉄心片は永久磁石により形成されるポール(極)毎に複数あってもよい。
【0057】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300、400、500 IPMモータ
110 固定子(ステータ)
120、210、310、410、510 分割型回転子(ロータ)
121、211、311、411、511 外周側鉄心片
122、212、312 回転軸側鉄心片
123、213、313、413 鉄心片結合部材
124 永久磁石
130 ケース
140 回転軸
150 端板
314 絶縁部材
512 第2の鉄心片結合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に外周側に配置された外周側鉄心片と、
相対的に回転軸側に配置された回転軸側鉄心片と、
前記外周側鉄心片と前記回転軸側鉄心片との間において、周方向で間隔を有して配置された複数の永久磁石と、
前記回転軸方向における両端に配置された2つの端板と、を有し、
前記外周側鉄心片に、回転軸方向の貫通孔が形成されている分割型回転子であって、
前記貫通孔に挿入され、両端が前記端板に固定された鉄心片結合部材を有し、
前記永久磁石の、前記分割型回転子における外周側の端面よりも当該外周側の領域における透磁率が、前記外周側鉄心片及び前記回転軸側鉄心片の透磁率よりも低いことを特徴とする分割型回転子。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記外周側鉄心片の外周側よりも、前記外周側鉄心片の回転軸側に近い位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分割型回転子。
【請求項3】
前記貫通孔に挿入された鉄心片結合部材と、前記2つの端板の少なくとも何れか一方、及び前記外周側鉄心片との間に配置された絶縁部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分割型回転子。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記外周側鉄心片に複数形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分割型回転子。
【請求項5】
前記鉄心片結合部材の透磁率は、前記外周側鉄心片及び前記回転軸側鉄心片の透磁率よりも低く、
前記複数の貫通孔は、前記外周側鉄心片の周方向に間隔を有して配置され、
前記複数の貫通孔の間の領域が、前記外周側鉄心片の回転軸側から、前記外周側鉄心片の周方向における中央部に向かうように、前記複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の分割型回転子。
【請求項6】
前記分割型回転子の周方向で、前記外周側鉄心片と前記鉄心片結合部材との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の分割型回転子。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の分割型回転子と、
内周が前記分割型回転子の外周と間隔を有して相互に対向するように配置された固定子とを有することを特徴とする電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−172359(P2011−172359A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32816(P2010−32816)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】