説明

分子分離装置及び製造方法

【課題】液体サンプルから分子のサイズによって特定の分子を分離する分離装置の提供。
【解決手段】分子は、分離装置1によって、前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つと、を含む液体サンプルから、分離される。前記分離装置は、基板2と、前記基板に配置される少なくとも1つの循環チャンネル7と、分離される前記分子と関係付けられており、且つ、前記基板の自由表面2aの上に形成される少なくとも1つのナノチューブ3と、を備える。分離は、カーボンナノチューブのような、所定のものとして、且つ、制御された方法から選択された有効直径を有する、ナノチューブの内部チャンネル4によって達成する。前記内部チャンネルの前記有効直径は、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、大きい流体力学直径の前記付加分子の流体力学直径よりも小さくなるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの分子を、分離される前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径(hydrodynamic diameter)よりも大きい流体力学直径を有する付加分子(additional molecule)の少なくとも1つと、を含む液体サンプル(liquid sample)から、分離する分離装置に関する。
【0002】
また、本発明は、分離装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分離技術は、特に、農業、食品製造、治金(metallurgy)及び染料、香料もしくは医学(medicine)や薬学(pharmacy)のための有効成分の抽出の分野において、常に重要である。
【0004】
今日では、分離技術は、特定物質の製造のみならず、分析目的や、混合物の情報もしくは混合物の特性を知得するためにも、用いられる。
【0005】
特に、生物学、衛生(health)分野においては、複合混合物(complex mixtures)の分離能力は、非常に重要な課題となりつつある。
【0006】
例えば、プロテオミクス(proteomics)分野では、重要なたんぱく質(also called protein of interest)を同定するために質量スペクトルメーターを用いることを基礎とする実験的アプローチの1つの専門分野では、1つもしくはそれ以上の分離工程の前工程(prior stage)において、例えば、アクリルアミド ゲル(acrylamide gel)上の、もしくは、1もしくは2次元のゲル上の電気泳動や、液体クロマトグラフィーの、助けを借りること(resort)が必要である。特定の場合において、実際、質量スペクトルメーターは、生の生体サンプル(raw biological sample)を処理することができない。
【0007】
例えば、癌のような、特定の病気の診察においては、患者の血液中における所定のマーカー(marker)の検出、及び/又は、滴定(titration)が必要である。これらのマーカーは、一般に特定のたんぱく質内にあり、マーカーの検出は、実行される分析プロトコル(analysis protocol)を必要とする。よって、マーカーの検出の最初のステップは、しばしば、いくつかの分離ステップで構成される。
【0008】
同様に、所定の治療(therapy)は、血液中に蓄積した所定の毒性化合物の除去、すなわち、分離に基づくものである。これは、特に、腎臓障害に冒される患者のための血液透析の場合である。
【0009】
しかしながら、生物学的分析手段(biological analysis means)の強い要求の1つは、小さなサイズのサンプルを処理するための能力を含むものである。臨床分野(diagnostic field)において、このことは、実際にサンプルをできるだけ侵襲の程度が低い方法(least invasive possible manner)で取り扱うことを可能にする(例えば、血液サンプル、又は、生検(biopsy))。増加している癌の早期発見、もしくは、治療の場合においては、小さいサイズの腫瘍を分析することがますます求められている。ライフ・サイエンス分野においては、非常に少ない量であるような、もしくは、個々の細胞又は特に細胞小器官(organelles)に存在するような、たんぱく質の性質を研究する必要がある。
【0010】
多くの分離技術は、生体サンプル(biological sample)に適したものである。これらの技術は、異なる物理化学の法則に基づくものであり、処理される分子は、それら物理化学の法則の1つ1つに対する異なる性質によって区別される。例えば、下記のような性質を利用することができる。
【0011】
−分子サイズは、膜の孔(pores)を通過する分子の移動能力だけではなく、分子が動く際の分子上の溶媒によって生ずる摩擦力や溶媒中の分子の拡散定数(diffusion constant)(これを決定する運動はブラウン運動(Brownian movement)と呼ばれる)をも、決定する。
【0012】
−分子の電荷。生体分子(biological molecules)は、一般的な弱酸(核酸、たんぱく質はアミノ酸で形成される)であり、溶液のpHに従って異なる程度にイオン化している。従って、対象になる分子の電荷は、通常pHに従って様々な状態となる。
【0013】
−化学ポテンシャル(chemical potential)、すなわち、他の物質に対する、対象になる分子の親和力のことである。これらの親和力は、様々な分子間力によって引き起こされる。ファンデルワールス(Van der Waals)力、静電気力、親水性相互作用/非親水性相互作用、立体相互作用(steric interaction)、エントロピー相互作用(entropic interaction)。特定の生物学的相互作用(Biological interactions)は、これらの全ての力が組み合わさったものとして考えることができる。
【0014】
−分子の構造、構造ダイナミクス(conformation dynamics)。生体分子は、通常、おおよそ固定された構造を有するポリマー(polymers)、又は、オリゴマー(oligomers)である。所定の複合培地(complex media)(例えば、ゲル)においては、そのサイズによって、空間的に再構成(reconfigure)する所定の分子の能力は、これらの培地の中を大抵簡単に移動することを可能にする。
【0015】
最も一般的な分離技術は、異なる形式の電気泳動(electrophoresis)(1次元又は2次元のゲルであるキャピラリー(capillary))及び異なる形式の液体クロマトグラフィー、ろ過、透析、遠心分離(centrifugation)である。
【0016】
これらの技術のあるものは、非常に小さいサイズのサンプルの処理、又は、数10ナノメートル(分子サイズ)よりも小さい物質の分離には、適してはいない。例えば、これは遠心分離の場合である。
【0017】
従って、数年にもおよぶ多くの研究は、非常に小さいサイズ、もしくは、非常に少ない量のサンプルを処理するため、マイクロテクノロジー及びナノテクノロジー分野に由来する技術を用いる分離装置の製造、ということになる。非常に有益なこれらの装置は、特に、対象となる分子のサイズに対応した特徴的なディメンション(dimension)を有する構造を製造することと、十分によくコントロールされた方法によって製造されることとを、可能にする中で見出される。
【0018】
例えば、Jan C.T. Eijkel らの“The promise of nanotechnology for separation devices - from a top-down approach to nature-inspired separation devices”(Electrophoresis 2006,027,677-685)には、従来の分離方法を最適化し、且つ、新しい方法を提供するために、ナノテクノロジーの可能な応用が明らかにされている。Jan C.T. Eijkel らは、例えば、HPLC用のマイクロ構造及びナノ構造(nano-structured)のカラム(columns)、マイクロ構造及びナノ構造のふるい構造(sieving structures)などを、記載している。
【0019】
Jianping Fu らの“A patterned anisotropic nanofluidic sieving structure for continuous-flow separation of DNA and proteins”(Nature Nanotechnology, Vol 2,February 2007)においては、生体分子(biomolecule)の分離のスピード及び分解能を改善するための、簡便なマイクロエレクトロニクス技術による2次元のふるい構造の製造が紹介されている。マイクロメートル以下の精度を得るためにマスクワーク(maskwork)を制御することが可能な、リソグラフィー及び反応性イオンエッチング(RIE)技術による、シリコン基板のエッチングにより、ふるい構造を得ることができる。平坦なふるい構造は、幅1μm、深さ55nmの横チャンネル(lateral channel)によって他のメインチャンネル(main channel)と接続される、幅1μm、深さ300nmの平行なメインチャンネルを備える。メインチャンネルは、幅1μm、深さ55nmの横チャンネルによって他のメインチャンネルと接続される。DNA分子やたんぱく質のような分子の動きは、メインチャンネルの方向の縦方向電界(longitudinal electric field)と、横チャンネルの方向の横方向電界(lateral electric field)と、の重なりによって、生じており、横チャンネルは、メインチャンネルよりも深くはない。このような構造における分離効果は、異なる分子が、横チャンネルを介して1つのメインチャンネルから他のチャンネルへ移動する確率が異なることから、生ずる。
【0020】
Christopher C. Striemer らの“Charge- and size-based separation of macromolecules using ultrathin silicon membranes” (Nature, Vol 445, 15 February 2007) において、マイクロエレクトロニクス分野の簡便な方法を用いて作成された、非常に薄いナノポーラス膜が示されている。この膜の孔の平均サイズは、製造する際の温度パラメータを変化させることによって調節することができる。
【0021】
ナノポーラス膜、又は、ふるい構造の場合には、孔の中の、もしくは、チャンネルの中の生体分子の移動は、孔、もしくは、チャンネルのサイズによってのみならず、孔、もしくは、チャンネルの輪郭を描く壁に生じる静電気ポテンシャル(electrostatic potential)によっても、条件づけられる。しかしながら、両方の場合において、ポテンシャルは静的なものであり、通過する確率をダイナミックに制御することを可能にするものではない。Rohit Karnikらの、“Field-effect control of protein transport in a nanofluidic transistor circuit”(Applied Physics Letters 88,123114(2006))には、トランジスタ(transistor)のようなものの製造と、キャピラリー(キャリアーに対してトランジスタ・チャンネルとして振舞う)の表面に、様々なポテンシャルが生じることが記載されている。著者は、これによって、チャンネル内のたんぱく質の通路をダイナミックに制御することが可能であることを明らかにしている。この原理は、キャピラリーのサイズが、例えば10ナノメートル程度にも満たない材料の表面に生じるデバイ長(Debye length)程度である場合には、応用できる。
【0022】
生体分子を分離するための異なる研究によって従来から提案されている分離装置は、製造するにはコストがかかるため、工業的に製造することが難しいという大きな欠点を有する。実際には、これらの分離装置は、対象分子のサイズに対応するディメンションの孔、又は、チャンネルを製造するために、非常に高価なリソグラフィー工程を使用することを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、シンプルで、簡単に使用でき、特に、生体分子のような、数100ナノメートル以下の流体力学直径を有する少なくとも1つの分子を、分離される前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つと、を含む液体サンプルから、効果的に分離することを可能にする、分離装置を提供することである。
【0024】
本発明によれば、この目的は、
−基板と、
−前記基板に配置される少なくとも1つの循環チャンネル(circulation channel)と、
−少なくとも1つのナノチューブであって、
前記ナノチューブは、分離される前記分子と関係付けられて(会合して、associate)おり、且つ、前記基板の自由表面(free surface)の上に形成されており、
前記ナノチューブは、内部チャンネル(internal channel)を備え、且つ、前記循環チャンネルに対して開いており、且つ、プリセット有効直径(preset effective diameter)を有しており、
前記プリセット有効直径は、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、前記付加分子の流体力学直径よりも小さいものである、
少なくとも1つのナノチューブと、
を備える装置によって、達成される。
【0025】
本発明のさらなる目的は、簡単に使用でき且つ安価な製造方法であって、少なくとも1つの分子を、分離される前記分子と分離される前記分子の流体力学直径よりも大きな流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つとを含む液体サンプルから分離する、分離装置の、製造方法を提供することである。
【0026】
本発明によれば、この目的は、以下の連続するステップである、
−少なくとも1つのナノチューブの制御形成(controlled formation)であって、
前記ナノチューブは、分離される分子と関係付けられており、前記制御形成は、基板の自由表面の上での形成であり、前記基板は、化学薬品(chemical agent)の作用によって分解可能な材料から形成されており、
前記ナノチューブは、所定の有効直径(effective diameter)を有する内部チャンネルを備え、
前記有効直径は、分離しようとする前記分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、前記付加分子の流体力学直径よりも小さい、
少なくとも1つのナノチューブの制御形成と、
−前記基板の前記自由表面の上と、前記ナノチューブの前記自由表面の上と、への、化学薬品に対して不浸透性である薄層(Thin layer)の形成と、
−前記ナノチューブの前記内部チャンネルへの前記化学薬品の導入、及び、前記基板の所定領域の選択的分解、による、循環チャンネルの形成と、
を備える方法によって、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による分離装置の製造工程のうちの1つの工程を示す概略断面図である。
【図8】図7の分離装置の斜視図である。
【図9】図7の、本発明の他の実施形態による分離装置を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による分離装置を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による分離装置を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態による分離装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
他の利点及び特徴は、本発明の特有な実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特有な実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特有な実施形態は、添付の図面により示される。
【0029】
少なくとも1つの分子は、特に生体分子は、前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つと、を含む液体サンプルから、分離装置によって、分離もしくは抽出される。
【0030】
前記分離装置は、
−基板と、
−前記基板に配置される少なくとも1つの循環チャンネルと、
−分離される前記分子と関係付けられて(会合して、associate)おり、且つ、前記基板の自由表面の上に形成される、少なくとも1つのナノチューブと、
を備える。
【0031】
流体力学直径(Dhで示される)は、λで示されるデバイ長が足された分子の実際のサイズ(又は、直径)に対応する。デバイ長は、分子が帯電する(charge)際の、分子の周囲の電気2重層(electric double layer)の厚さに対応する。デバイ長は、特に、分子が帯電し、且つ、塩水(salt water)の緩衝溶液に含まれている際の、分子の電荷と局所的に均衡した対イオン雲(counter-ion cloud)の厚さに対応する。それは、1つの分子もしくは複数分子を備える溶液の状態、特に、電解質のタイプ及び濃度と温度とに依存する。
【0032】
液体サンプルから分離もしくは抽出されることとなる1つの分子、もしくは、複数の分子は、通常、約数10ナノメートル、さらに詳細には、1nmから1μmの間の流体力学直径(Dhで示す)を有する。例えば、液体サンプルから分離、もしくは、抽出される1つの分子又は複数の分子は、6.8nmの流体力学直径DhBSAを有するウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)分子(BSAと示される)、及び/又は、14nmの流体力学直径DhIgGを有する免疫グロブリン(immunoglobulin)分子(IgGと示される)であることができる。
【0033】
分離は、さらに詳細には、基板の自由表面の上に形成される、カーボンナノチューブのような、ナノチューブの内部チャンネルによって形成されたチャンネルによって行われる。さらに、ナノチューブの内部チャンネルは、循環チャンネルに対して開いている。
【0034】
ナノチューブの内部チャンネルは、所望のものとして、且つ、制御された方法によって、選択された有効直径deを有する。内部チャンネルの有効直径deは、以下の式によって定義される。
−de=dr−2λ
drは、例えば、ナノチューブの内部壁によって輪郭が形成される断面の直径である、内部チャンネルの実直径(actual diameter)に対応する。λは、ナノチューブと分子とが同じ符号(sign)の電荷によって静電気帯電する際の、デバイ長に対応する。
−de=dr
他の場合であり、特に、ナノチューブと分子とが、反対の符号の電荷によって静電気帯電する場合、もしくは、帯電しない場合である。
【0035】
チャンネルの有効直径deは、実際には、チャンネルと関係付けられる分子のみが通過可能であるように、選択され、さらに詳細には、分離される分子の流体力学直径Dhに対応するように選択される。従って、それは、分離される分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、付加分子のそれよりも小さいものとなる。有利には、有効直径は1nmから100nmの間となる。
【0036】
例えば、12nmの有効直径を有するナノチューブの内部チャンネルは、IgG分子(DhIgGが14nm)も含む溶液からBSA分子(DhBSAが6.8nm)を抽出することができる。
【0037】
さらに、内部チャンネルの有効直径deと、分子の流体力学直径Dhと、2つの直径deとDhとの間の関係とは、分子の静電気電荷と内部チャンネルの静電気電荷とに依存する。
【0038】
例えば、内部チャンネルの有効直径が、デバイ長を考慮して、前記分子の流体力学直径よりも大きい場合には、正電荷に帯電した内部チャンネルは、正電荷に帯電した分子をブロックすることができる。一方、内部チャンネルと前記分子とが反対の符号の電荷によって帯電している場合には、単に、分子の流体力学直径は、ナノチューブの内部チャンネルの実直径drよりも小さくならなければならない。
【0039】
さらに詳細には、内部チャンネルの表面を、制御された方法によって静電気帯電されるような機能的なものにする。それにより、分子の通過確率を増加させ、もしくは、減少させることを可能にする。
【0040】
さらに、分子の静電電荷は、溶液のpHに依存する。分子に対して求められている電荷に従って溶液のpHを調節することは可能であり、それによって、分子の通過能力を増加させ、もしくは、減少させることを可能にする。例えば、BSA分子は、7と等しいpHのもとでは、13eに帯電し、従って、10nmと等しい実直径を有する負電荷に帯電する内部チャンネルを通過することができない。
【0041】
循環チャンネルの使用に応じて、循環チャンネルは、液体サンプルが循環もしくは抽出される分子を除去することができるように、注入穴(inlet hole)、及び/又は、排出穴(outlet hole)を備えることができる。
【0042】
これにより、分離は、液体サンプルを循環チャンネルに注入することによって、効果的なものとされる。この場合、分離もしくは抽出される分子のみが、ナノチューブで形成され、且つ、ナノチューブの自由端(free end)において再生された内部チャンネルを、通過することができる。さらに、循環チャンネルは、ナノチューブの内部チャンネルの実直径よりも大きい、若しくは、同等の幅、及び/又は、高さ、(もしくは、循環チャンネルの断面の場合の直径)を有する。有利には、循環チャンネルは、数100マイクロメートルよりも小さい、もしくは、同等の、さらに詳細には、5nmから100μmの間の幅、及び/又は、高さを有する。しかしながら、循環チャンネルの幅の最大値は、厳密なものではない。例えば、循環チャンネルの幅は、流量が増加するように、特に、大量のサンプルのために、もしくは、分離が継続的に行われるように、数センチメートルのものとすることができる。他の実施形態においては、ナノチューブと関係付けられる分子がこのナノチューブの内部チャンネルに入ることができるように、液体サンプルを、基板の自由表面に、その高さが対応するナノチューブの高さよりも高くなるように、堆積することができる。そして、抽出された分子は、循環チャンネルによって、取り除かれる。
【0043】
チャンネルを有する分離装置は、有利には以下のチャンネルを、つまり、ナノメートルサイズのチャンネルであり、且つ、カーボンナノチューブのようなナノチューブの内部チャンネルによって形成されたチャンネルを、有する分離装置は、簡単に使用が出来るという利点を有し、その上、信頼性があり且つ効果的なものである。実際には、分離装置の製造工程において、さらに詳細には、ナノチューブの製造において、この内部チャンネルのディメンションは、完全に修得(mastered)し、制御される。1つのナノチューブを備えるかわりに、装置は複数のナノチューブを備えることができ、これによって、シンプルに製造される装置であることを確保しつつ、複合物の分離の実施を可能にする。装置は、異なる分子を分離するために、同一の実直径の内部チャンネル、及び/又は、異なる実直径の内部チャンネル、を有するナノチューブを備える。
【0044】
このような装置は、有利には、シンプルで、且つ、簡単に利用でき、少なくとも1つのカーボンナノチューブの制御形成と、形成されたカーボンナノチューブの内部チャンネルを使用して前記基板中における循環チャンネルの形成と、を行う、製造方法によって、得ることができる。
【0045】
例示として、図1から図7に、分離装置1の実施形態にかかる製造方法の異なるステップは示される。明確にするために、分離装置は、図1から図7に示され、以下のような、ナノチューブ、さらに正確には、カーボンナノチューブを備えるものとして説明される。当然、シングルナノチューブの形成のために説明される異なるステップは、同一のもしくは異なる直径の複数のナノチューブの形成に簡単に流用することができる。
【0046】
分離装置1は、図1に示されるように、基板2から作られる。基板2は、この実施形態においては、化学薬品の作用によって分解可能な材料によって形成される。例えば、基板は酸化シリコンで形成され、化学薬品はフッ酸(HF)となる。加えて、循環チャンネルの高さは、基板2の厚さEに依存し、有利には、それは5nmから1mmの間である。
【0047】
図1から図4で示される、カーボンナノチューブ3は、制御された方法によって、基板2の自由表面2aの上に、製造される。
【0048】
カーボンナノチューブ3の制御形成は、特に、カーボンナノチューブ3の直径Dを制御すること、さらに詳細には、ナノチューブ3の中に配置された内部チャンネル4の実直径dr(先に示したdrである)を制御することで、構成される。カーボンナノチューブ3は、例えば、あらかじめ基板2の上に形成された触媒粒子(catalyst particle)5からの触媒手段によって、制御されて、得ることができる。実際には、ナノチューブが成長するために用いられる触媒粒子5の直径Dは、内部チャンネル4の直径drとつりあうナノチューブ3の直径Dと、実質的に等しくなる。カーボンナノチューブ3の直径Dに対して求められるサイズに対応する所望のサイズに制御された触媒5の粒子もしくはドロップ(drop)の形成によって、カーボンナノチューブ3の内部チャンネル4の直径drの制御は、可能である。
【0049】
所望のサイズを有する触媒粒子5を得るためには主に2つの方法がある。
【0050】
Shintaro Satoらの“Novel approach to fabricating carbon nanotube via interconnects using size-controlled catalyst nanoparticles”(International Interconnect Technology Conference,2006,pages230-232)に記載されているように、1つの方法は、触媒ターゲットのレーザーアブレーションによって触媒粒子を形成することと、形成された粒子の中から所望のサイズに対応した粒子を選択することと、選択された粒子を堆積することと、から構成される。
【0051】
図1から図4に示されるように、他の方法は、基板2の自由表面2aの所定の領域に触媒6の薄膜(thin film)を堆積することと(図2)、高温アニールをすることと、から構成される。
【0052】
触媒6の薄膜は、例えば、ニッケル、鉄、コバルト及びこれらの化学元素の合金から選択される触媒によって、もしくは、ニッケル、鉄、コバルト及びこれらの化学元素の合金から選択される触媒によってそれぞれ形成された複数の独自の層によって、形成される。これは周知の手段によって堆積される。例えば、物理気相成長法によって、触媒を含むターゲットを用いるプラズマスパッタリング法によって、触媒を含むターゲットを用いる蒸着法によって、もしくは、特に電子(衝撃)(electronic(bombardment))の加熱によって、堆積される。図3に示されるように、高温アニールは、薄膜をドロップ、又は、粒子5に変形することができる。薄膜のアニールは、最初に、薄膜を基板の上に堆積し、抵抗、ランプ、又は、電気伝導フィラメントのような適切な加熱手段によって行われる。アニール温度は、有利には、400℃から1000℃、さらに有利には400℃から550℃である。
【0053】
薄膜の堆積とアニールとによって得られた触媒粒子5の直径Dは、事前に堆積された薄膜6のディメンションを前もって決定することによって、制御される。このことは、K B J Teo らの”Plasma enhanced chemical vapour deposition carbon nanotubes/nanofibres-how uniform do they grow?”(Institute of Physics Publishing, Nanotechnology 14(2003)204-211)に示されている。実際、直径Dは、前もって堆積された薄膜6の高さだけでなく、その幅にも依存する。さらに、基板2の中に触媒が拡散しない場合には、ドロップ5の体積は、薄膜6の事前の体積に対応するものとなる。
【0054】
例えば、水銀線(mercury line)I、又は、深紫外線(deep UV)照射を用いる安価なリソグラフィーによって、基板2の表面2aの上に、例えば、80nm以上の幅をもつ触媒の薄膜6の形成は、可能であり、さらに、触媒粒子5のアニールによって、成形(shaping)を行うことも可能である。従って、この粒子5は、事前に堆積された触媒の薄膜6のサイズに比例する直径Dを有する。例えば、幅100nm、高さ3nmの薄膜は、約30nmの直径Dを有する粒子を得ることが可能である。さらに、触媒の薄膜6のディメンションは、リソグラフィー、エッチング、もしくは、ストリッピングによっても調節することができる。触媒の薄膜の堆積の前に、薄膜6によって覆われることのないように設計された基板2の自由表面2aの部分の上にアルミニウムの層を堆積することによっても、触媒の薄膜6のディメンションを所望のものにすることができる。1つのカーボンナノチューブ3を基板2の自由表面2aの上に形成する場合、有利には、触媒の薄膜6を、150nm未満の直径を有する円筒形状とする。
【0055】
図4に示されるように、触媒粒子5の形成の後には、内部チャンネル4に配置されたカーボンナノチューブ3の成長工程が続く。成長は、有利には、化学気相成長法(CVD)によって、もしくは、特に、高周波(radio frequency)の、もしくは、マイクロ波(microwave)のプラズマの、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって、得ることができる。成長工程が完了することにより、ナノチューブの自由端と内部チャンネル4の開口部(opening)4aとを開放するための除去の前に、基板2の自由表面2aの上に事前に配置された触媒は、通常、カーボンナノチューブ(先端成長(tip growth))の自由端に位置することになる。例えば、触媒は、HNOを用いた化学処理工程によって、溶解することができる。
【0056】
最初に、カーボンナノチューブ3は、基板2の自由表面2aの上に形成され、循環チャンネル7は、図5から図7に示されるように、基板2の所定の領域を選択的に分解することができる化学薬品(例えば、フッ酸である)によって、形成される。
【0057】
化学薬品から、基板2の自由表面2aとカーボンナノチューブ3とを保護するために、化学薬品に対して不浸透性である薄層8は、基板2の自由表面2aの全体の上と、カーボンナノチューブ3の壁の上と、に事前に堆積される。さらに、薄層8は、カーボンナノチューブ3の内部チャンネル4の開口部4aを、ブロックしてはならない。例えば、開口部4aがふさがれてしまった場合、もしくは、ナノチューブ3を短くする場合には、内部チャンネル4の開口部4aを開放するために、循環チャンネル7の形成前に、化学機械平坦化(chemical mechanical polishing)工程を行う。
【0058】
化学薬品が基板2と集中的に接触するようにするために、さらに、ナノチューブの下に配置され、且つ、循環チャンネル7を形成するように設計された、基板2の所定の領域を選択的に分解するために、図6中の矢印F1に示されるように、化学薬品は、開口部4aを介して、ナノチューブ3の内部チャンネル4に導入される(図7)。分解可能な材料の基板の領域を選択的に分解するために、カーボンナノチューブの内部チャンネルの中に化学薬品を導入することは、金属接続構造(metal interconnection structure)と一体化するように設計された、ターゲット層の中の空気隙間(air gap)を形成するための、2007年5月15日に出願された仏国特許出願0703487号に既に記載されている。
【0059】
化学薬品に対して不浸透性である薄層8は、有利には、基板2の自由表面2aの上と、ナノチューブ3の自由表面の上とに、保持される。
【0060】
図1から図7で示される製造工程は、簡単に使用することができ、且つ、安価であるという利点を示し、これによって、工業化を行うことが可能である。例えば、ナノメートルサイズの幅で、循環チャンネルの上へ機械的(automatically)に開く、ナノメートルサイズの少なくとも1つのチャンネル(ナノチューブの内部チャンネル)は、リソグラフィーやエッチング等の様々なデリケートで、且つ、細心の注意を払う工程を必要とすることなしに、この方法によって、簡単に得ることができる。先行技術においては、約10ナノメートルのパターンに対する正確なディメンションの制御を行うには、コストがかかるリソグラフィー法で調整していた。しかしながら、本発明によれば、1つの内部チャンネルもしくは複数の内部チャンネルのサイズは、工業的方法において既に用いられているような、チューニング(tuning)を必要としないリソグラフィー工程を用いて可能であるような、特定の触媒粒子のサイズによって、制御され、所望のものとして形成される。さらに、この方法は、相対的に低い温度、特に、ナノポーラス膜を得るための従来技術による方法と比較して、相対的に低い温度において行われる。
【0061】
最終的には、このような方法は、複数のナノチューブを備える分離装置を、簡便で、再現可能で、且つ、制御可能な方法において形成することを可能にする。従って、基板2の表面2aに複数のナノチューブを形成した際には、化学薬品は、ナノチューブの異なる内部チャンネルの中に導入され、基板2の領域を選択的に分解し、有利には、循環チャンネルを形成するために、2つの内部チャンネル同士を接続する空気隙間を形成する。循環チャンネルの注入孔と排出孔とは、応用として、基板の側壁近傍のナノチューブに導入された化学薬品によって、得ることができる。従って、化学薬品は、孔を形成するために、前記側壁の領域を選択的に分解する。孔は、従来の場合には、リソグラフィー、エッチング、もしくは、スパッタリングによって、機械的に形成されていた。
【0062】
例えば、分離装置は、1つの同一の分子を分離するために複数のナノチューブを備えることができる。従って、これらのナノチューブは、所定の分子と関係付けられるナノチューブのシリーズ(series)を形成する。図8においては、例えば、分離装置1は、自由表面2aのような、化学薬品に対して不浸透性である材料で覆われている基板2の自由表面2aの上に形成された、3つの同一のカーボンナノチューブ3a、3b、3cのシリーズを備える。ナノチューブ3a、3b、3cは、それぞれ、内部チャンネル4a、4b、4cを備え、内部チャンネル4a、4b、4cは、循環チャンネル7に向かって開いており、同一の直径drを有する。ナノチューブ3a、3b及び3cは、特に、それぞれの対称軸と薄層8の自由表面の平面とが交差する点が、循環チャンネル7の長さ方向の軸Aと平行な軸に沿って配置されるようになる。このようなカーボンナノチューブの配置は、同じ循環チャンネル7に開いた同じシリーズのナノチューブとして、平行なアセンブリー(assembly)の特徴的な実例を形成する。
【0063】
有利には、カーボンナノチューブの場合には、カーボンナノチューブは電気伝導体であるため、分子弁(molecular valves)を形成するために、カーボンナノチューブに電位(アドレス信号)を印加することができる。図9には、例えば、金、窒化チタン、パラジウム、白金、鉄、又は、アルミニウムのような、電気伝導材料によって部分的に覆われているカーボンナノチューブ3を有する分離装置が、示されている。それによって、カーボンナノチューブ3は、電気伝導材料9によって少なくとも部分的に覆われている。さらに、図9においては、カーボンナノチューブ3の自由表面は、化学薬品に対して不浸透性である薄層8によって事前に覆われ、前記薄層は、循環チャンネル7が形成される際に用いられる。したがって、電気伝導材料9は、この実施形態においては、化学薬品に対して不浸透である材料の薄層8の上に、配置される。電気伝導材料9は、化学薬品に対して不浸透性である材料の薄層8によって事前に覆われたカーボンナノチューブ3の全周囲、又は、部分的にのみ、堆積することができる。
【0064】
電気伝導材料9によって、カーボンナノチューブ3の部分を少なくとも覆うことは、通過する分子もしくは通過しない分子に対して静電気的な作用をすることを可能にし、これによって、分子バルブを得ることができる。従って、バイオ・トランジスタ(biological transistor)手段における分子の通路を制御するために、このような電気伝導材料9は、電気的接続を少なくとも1つの内部チャンネル4の周りに形成することを可能にする。
【0065】
さらに、分離装置1は、異なるディメンションの内部チャンネルを有し、且つ、複数回の分離を順次行うことができる複数のナノチューブをも備えることができる。例えば、大きい、もしくは、小さいサイズを有するたんぱく質の混合物を、順次抽出することができる。分離装置の製造方法は、1つもしくはそれ以上のリソグラフィー工程を必要とし、しかしながら、これらのリソグラフィー工程は、アニール処理の際にドロップ状のものとして形成された触媒から作成された薄膜からナノチューブを形成するものとしては、相対的に低い分解能の工程である。
【0066】
分離装置は、特徴的なナノチューブのシリーズも備える。特徴的なシリーズの意味するところは、各シリーズは、同じ直径drの内部チャンネルを有する複数のナノチューブを備え、ナノチューブの第1シリーズの内部チャンネルの直径drは、ナノチューブの第2シリーズの内部チャンネルのそれとは異なるということである。有利には、2つのシリーズの間の直径の差は、少なくとも2nmとなる。
【0067】
例えば、図10においては、分離装置1は、同じ循環チャンネル7に開いた異なる3つの直径drの内部チャンネル4、12、13を有するカーボンナノチューブの3つのシリーズ3、10、11を備える。カーボンナノチューブの各シリーズは、分離される、もしくは、抽出される所定の分子と関係付けられている。従って、特定のシリーズの内部チャンネルの有効直径は、対応する分子の流体力学直径よりも大きいものとなる。さらに、特定のシリーズの内部チャンネルは、そのシリーズと関係付けられる分子の流体力学直径よりも、大きい流体力学直径を有する分子の通過を許すことはない。従って、特定のシリーズの内部チャンネルの有効直径は、前記シリーズと関係付けられる分子の量体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する最小分子の流体力学直径よりも、小さくなる。
【0068】
さらに、図10中に示されるように、ナノチューブのシリーズは、循環チャンネルの中の液体サンプルの循環の軸に沿って(矢印F2)、内部チャンネルの直径drに従って順番が増加するように配置される。図10においては、液体サンプルが、異なる流体力学直径を有する3つの抽出される分子を備える場合には、最も小さい流体力学直径の分子は、ナノチューブのシリーズ3によって抽出されることとなり、中間の流体力学直径の分子は、ナノチューブのシリーズ10によって抽出されることとなり、さらに、最も大きい流体力学直径の分子は、循環チャンネル7から下流(downstream)に配置されたナノチューブのシリーズ11によって抽出されることとなる。
【0069】
さらに、図10おいては、ナノチューブの各シリーズは、化学薬品に対して不浸透性である材料の薄層8の自由表面と、前記浸透性膜8の上に事前に形成される側壁15と、によって輪郭が形成される外部溝14の中に配置される。このような溝14は、付加循環チャンネル(additional circulation channel)を形成することができる。先に説明したように、触媒粒子の直径Dは、堆積された薄膜6の高さと幅とに依存する。堆積された薄膜の幅は、2つの側壁15が隔てられる距離によって定義される。従って、隣り合う2つの側壁15の間の距離と等しい外部溝14の幅は、例えば、対応するナノチューブの内部直径を定義するために用いることができるというような、触媒粒子の直径を定義するために用いることができる。
【0070】
図11に示されるように、2つのシリーズのナノチューブ3a、3b及び10a、10bは、内部チャンネル4a、4b及び12a、12bを備え、各内部チャンネルは、1つの同一の循環チャンネル7に対して開く孔を備える。3つの側壁15は、化学薬品に対して不浸透性である材料の薄層8の自由表面上に、平行に、配置される。さらに、3つの側壁は、循環チャンネル7の中の流れの方向と垂直の方向に配置された面内に、配置される。従って、隣り合う2つの側壁15は、薄層8の自由表面と、溝14内に配置されたナノチューブのシリーズ3a、3bもしくは10a、10bと、を用いて、溝14の輪郭を描く。ナノチューブを形成するために用いられる触媒の薄膜6の特徴的なシリーズの輪郭を描くためにナノチューブが形成される前に、壁15は形成されることができる。例えば、側壁15は、PMMAのような生体適合性(biocompatible)のある材料によって形成される。従って、このような装置においては、溝14も循環チャンネルを形成する。薄膜6の堆積の前に、すなわち、ナノチューブの成長の前に側壁を形成する際には、側壁が隔てられる距離は、触媒粒子の直径Dと、ナノチューブの内部直径と、を定義することができる。有利には、ナノチューブの直径を、側壁15の間の距離まで伸ばすことが可能である。この点から見ると、液体サンプルの分子のサイズに従って分離することは、側壁15の間の距離の作用として現れる。
【0071】
図10と図11とに示される分離装置においては、分離される分子を含む液体サンプルは、溝14中、もしくは、循環チャンネル7中、に流れる。例えば、図11中に示される分離装置においては、液体サンプルは、循環チャンネル7中を流れることができ、分離される異なる複数の分子は、その流体力学直径とそのサイズとに従って、異なる面で、仕分けられ、且つ、分離され、次いで、仕分けされた分子は、溝14中のカーボンナノチューブ3、10の内部チャンネル4、12の排出孔で回収される。
【0072】
図12に示される他の実施形態として、抽出する分子の純度を増加させるために、シリーズのナノチューブを、連続する(serial)アセンブリーに形成することもできる。このような連続するアセンブリーにおいては、複数の循環チャンネルは、同じ直径drのナノチューブの内部チャンネルによって、シリーズに接合される。例えば、図12においては、5つの循環チャンネルは、基板2の表面2aの上に形成された、ナノチューブ3の4つの内部チャンネル4によってシリーズに結合される。5つの循環チャンネルは、基板2中に配置された第1と第2の循環チャンネル7aと7bと、基板2の上側に配置された3つの付加チャンネル(additional channel)と、によって形成される。従って、化学薬品に対して不浸透性である材料の薄層8の自由表面と、上壁16(top wall)と、を用いて、2つの側壁15は、垂直の付加循環チャンネル17aと17bと、中間付加循環チャンネル(intermediate additional circulation channel)17cと、の輪郭を描く。それぞれ第1と第2の循環チャンネル7aと7bに対して開いている2つのナノチューブ3は、それぞれ、垂直な循環チャンネル17aと17bの中に、配置される。さらに、中間循環チャンネル17cは、それぞれ第1と第2の循環チャンネル7aと7bに対して開いている2つのナノチューブを備える。図12中の矢印F3は、このような分離装置における、液体サンプルの流れ方向を示す。
【0073】
分離プロセスを改善するために、複数の分離装置を、シングルもしくはマルチのものを、結合させることもできる。さらに、上記の他の実施形態を、結合させることもできる。従って、図9中に示される実施形態は、図10中もしくは図11中に示される実施形態と関連付けることができる。この場合、所定のナノチューブは、分極性電極(polarizable electrode)によって部分的に覆われる前に事前に磨くことができる。
【0074】
本発明にかかる分離装置は、有利には、生物学又は分析化学のためのたんぱく質の分離のための透析膜として用いることができる。
【0075】
ナノチューブは、基板を選択的に分解するために用いられる化学薬品と共に用いることができる材料である、TiO、BN、MoS、WS、CuS、NiCl、CdCl、CdI、AsS、AlSiGeO、金属酸化物から選択される材料から形成されるナノチューブであることもできる。
【0076】
少なくとも部分的にナノチューブの上端部を遮る触媒の除去は、必須のものではない。実際には、ナノチューブの側壁は、常に、水漏れをしないものではなく、例えば、分子がカーボンナノチューブのグラフェンシート(graphene sheet)を通過することは可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分子を、分離される前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つと、を含む液体サンプルから、分離する分離装置(1)であって、
−基板(2)と、
−前記基板(2)に配置される少なくとも1つの循環チャンネル(7)と、
−少なくとも1つのナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)であって、
前記ナノチューブは、分離される前記分子と関係付けられており、且つ、前記基板(2)の自由表面(2a)の上に形成されており、
前記ナノチューブは、内部チャンネル(4、4a、4b、4c、12、12a、12b、13)を備え、且つ、前記循環チャンネル(7)に対して開いており、且つ、所定の有効直径(de)を有しており、
前記所定の有効直径(de)は、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、前記付加分子の流体力学直径よりも小さいものである、
少なくとも1つのナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)と、
を備えることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記ナノチューブ(3)は、炭素、TiO、BN、MoS、WS、CuS、NiCl、CdCl、CdI、AsS、AlSiGeO及び酸化金属から選択される材料から形成されたナノチューブである、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基板(2)の前記自由表面(2a)の上に形成され、且つ、分離される複数の特定の分子とそれぞれが関係付けられている、複数のナノチューブ(3、10、11)を備え、前記ナノチューブの前記内部チャンネル(4、12、13)が、前記循環チャンネル(7)の中の前記液体サンプルの流れの軸に沿って、前記内部チャンネルの有効直径(de)に従って順番が増加するように配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ナノチューブ(3a、3b、3c及び10a、10b)のシリーズの少なくとも1つを備え、前記ナノチューブは、分離される前記分子と関係付けられる同一の有効直径である内部チャンネル(4a、4b、4c及び12a、12b)を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
ナノチューブ(3a、3b、3c及び10a、10b)の前記シリーズは、外部溝(14)の輪郭を描く側壁(15)の間に配置されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ナノチューブの前記シリーズの内部直径は、前記対応する外部溝(14)の前記側壁(15)を隔てる距離まで伸びることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記内部チャンネル(4、12、13)のそれぞれは、1つの同じ前記循環チャンネル(7)に対して開く孔を備えることを特徴とする請求項3から6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
ナノチューブ(3a、3b、3c及び10a、10b)の複数のシリーズを備え、前記シリーズのそれぞれは、分離される複数の特定の分子と関係付けられており、且つ、前記循環チャンネル(7)の中の前記液体サンプルの流れの軸に沿って、それらの有効直径(de)に従って順番が増加するように配置されている、ことを特徴とする請求項4から7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記側壁(15)によって付加循環チャンネル(17)の輪郭を描く上部壁(16)と、連続するアセンブリーとして、ナノチューブの内部チャンネルを介して接続する複数の循環チャンネル(7a、7b)と複数の付加循環チャンネル(17a、17b、17c)と、を備える、ことを特徴とする請求項3から6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つのナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)は、電気伝導材料(9)によって少なくとも部分的に覆われることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
分離装置(1)の製造方法であって、前記分離装置は、少なくとも1つの分子を、分離される前記分子と、分離される前記分子の流体力学直径よりも大きい流体力学直径を有する付加分子の少なくとも1つと、を含む液体サンプルから、分離するものであり、前記製造方法は、以下の連続するステップである、
−少なくとも1つのナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の制御形成であって、
前記ナノチューブは分離される前記分子と関係付けられており、前記制御形成は基板(2)の自由表面(2a)の上での形成であり、前記基板(2)は、化学薬品の作用によって分解可能な材料から形成されており、
前記ナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)は、所定の有効直径(de)を有する内部チャンネル(4、4a、4b、4c、12、12a、12b、13)を備え、
前記有効直径(de)は、分離しようとする前記分子の流体力学直径よりも大きく、且つ、前記付加分子の流体力学直径よりも小さい、
少なくとも1つのナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の制御形成と、
−前記基板(2)の前記自由表面(2a)の上と、前記ナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の前記自由表面の上と、への、化学薬品に対して不浸透性である材料の薄層(8)の形成と、
−前記ナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の前記内部チャンネル(4、4a、4b、4c、12、12a、12b、13)への前記化学薬品の導入、及び、前記基板(2)の所定領域の選択的分解、による、循環チャンネル(7)の形成と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記基板(2)は酸化シリコンから形成されており、前記化学薬品はフッ酸である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の制御形成は、前記基板(2)の前記自由表面(2a)の上に、前記内部チャンネル(4、4a、4b、4c、12、12a、12b、13)の前記有効直径(de)に比例する所定の直径(D)を有する触媒のドロップ(5)の形成と、
化学気相成長法、又は、プラズマ化学気相成長法によって、前記ドロップ(5)からの前記ナノチューブ(3、3a、3b、3c、10、10a、10b、12)の成長を行わせることと、
によって行われる、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
化学機械平坦化工程は、前記化学薬品が前記内部チャンネル(4、4a、4b、4c、12、12a、12b、13)に導入される前に実施されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−291777(P2009−291777A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−48253(P2009−48253)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】