説明

分子複製中のヌクレオチドの取り込みのラマン・モニタリングによる核酸配列決定

本明細書に開示された方法および装置は、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩基の検出、ならびに核酸配列決定のために有用である。本方法は、表面増強ラマン分光法(SERS)または表面増強コヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(SECARS)を使用した、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基の検出を含む。検出は、核酸配列決定反応のような核酸重合反応の間のデオキシヌクレオチド三リン酸の取り込みを検出する核酸配列決定反応の一部であり得る。合成された新生鎖の核酸配列および鋳型鎖の相補配列が、重合反応の間のヌクレオチドの取り込みの順序を追跡することにより決定され得る。塩基を糖部分から切断することによるヌクレオチドまたはヌクレオシドのSERSシグナルを増強する方法が提供される。さらに、単一塩基の繰り返しを検出する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生体分子の検出および分析に関し、より具体的には、核酸の検出および配列決定に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
遺伝子情報は、染色体へと組織化された極めて長いデオキシリボ核酸(DNA)分子の形態で保管されている。ヒト・ゲノムは、およそ30億塩基のDNA配列を含有している。このDNA配列情報が、各個体の多数の特徴を決定する。多くの一般的な疾患が、DNA配列の変動に、少なくとも一部、基づいている。
【0003】
完全ヒト・ゲノム配列の決定は、そのような疾患の遺伝学的基礎を同定するための基盤を提供した。しかしながら、各疾患に関連した遺伝子の変動を同定するためには、今後、多量の実験がなされなければならない。この実験は、疾患を促進するDNA配列の特異的変化を同定するための、そのような各疾患を示す個体または家系の染色体の一部のDNA配列決定を必要とする。遺伝子情報のプロセシングにおける中間分子リボ核酸(RNA)も、様々な疾患の遺伝学的基礎を同定するために配列決定され得る。
【0004】
現在の配列決定法は、多コピーの関心対象の鋳型核酸を作製し、オーバラップする断片へと切断し、配列決定し、その後、オーバラップするDNA配列を完全な遺伝子へと組み立てることを必要とする。この過程は、面倒で、高価で、非効率的で、かつ時間がかかる。また、典型的には、安全性および廃棄物処理の問題を引き起こす可能性がある、蛍光標識または放射標識の使用を必要とする。従って、現在の方法より安価で、効率的で、かつ安全な、改良された核酸配列決定法が必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
発明の詳細な説明
開示された方法および装置は、ヌクレオチドおよびヌクレオシドのようなプリンまたはピリミジン塩基を含む標的分子の迅速な自動化された検出のために有用である。その方法および装置は、比較的少ないコピー数、いくつかの場合においては単一コピーのプリンおよびピリミジン塩基が、SERSを使用して検出され得ることの発見に関する。さらに、その方法および装置は、特にピリミジン塩基の検出のため、検出前に標的分子からプリンまたはピリミジン塩基を切断することにより、かつ/またはコヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(CARS)をSERSと組み合わせて使用することにより、ピリミジンおよびプリン塩基を含む標的分子のラマン検出の感度を増加させ得ることの発見に関する。
【0006】
本明細書に開示された方法および装置は、典型的には、ヌクレオチド取り込みを測定する核酸配列決定反応において使用される。本明細書に開示された核酸配列決定反応は、配列データ入手のより速いスピード、配列データ一単位当たりに必要とされる減少した配列決定のコストおよびより高い作業時間の効率、ならびに一回の配列決定ランにおいて長い核酸配列を読み取る能力を含む、伝統的な配列決定反応に対する利点を提供する。さらに、ヌクレオチド取り込みを測定する核酸配列決定反応において、同一ヌクレオチドの連続リピートを検出するための改良された方法が、本発明において提供される。
【0007】
従って、プリンまたはピリミジン塩基が標的分子の残部から分離され、分離されたプリンまたはピリミジン塩基がラマン分光法を使用して検出される、プリンまたはピリミジン塩基を含む標的分子を検出する方法が提供される。ある種の局面において、ラマン分光法は、表面増強ラマン分光法(SERS)またはSECARSである。
【0008】
方法は、ある種の局面において、標的分子からプリン塩基またはピリミジン塩基を分離する前に、標的分子を単離する工程を含み得る。単離工程は、例えば、ラマン・シグナルを発生する他の分子を含む環境から標的分子が入手される局面において、含まれる。
【0009】
標的分子、典型的には、プリンまたはピリミジンが糖部分に結合している生体分子から、プリンまたはピリミジン塩基を分離する方法は、当技術分野において既知である。標的分子がヌクレオチドまたはヌクレオシドである局面において、「分離する」という用語は、ヌクレオチドまたはヌクレオシドの残部から塩基を除去するための全ての有機的および酵素的な手段を包含するために使用される。例えば、標的分子がヌクレオシドまたはヌクレオチドである場合、>60℃における20分間の0.2N HClを使用した脱グリコシルが、糖骨格から塩基を切断するために使用され得る。または、DNAグリコシラーゼ、ホスフォリラーゼ、またはヌクレオシド加水分解酵素のような酵素も使用され得る。脱グリコシルは、塩基がSERS基質に沈着させられる前に実施される。塩基は、SERS基質に沈着させられる前に、必ずしも糖部分から分離されなくてもよい。
【0010】
ある種の局面において、方法は、塩基を標的分子から分離する前に、または塩基を標的分子から分離した後、分離されたプリンもしくはピリミジン塩基をSERSを使用して検出する前に、プリン塩基またはピリミジン塩基を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程をさらに含む。ヌクレオチド、ヌクレオシド、ならびにプリンおよびピリミジン塩基をSERS基質に沈着させる方法は、さらに詳細に本明細書に記述される。
【0011】
これらの局面のための標的分子は、典型的には、標的分子のプリンまたはピリミジン塩基によるラマン・シグナル発生に干渉する干渉部分を含む。例えば、干渉部分は、リボースまたはデオキシリボース、例えば、2-デオキシリボースのような糖部分であり得る。本発明のこれらの態様のある種の局面において、標的分子は、ヌクレオチド・リン酸、ヌクレオチド、またはヌクレオシドである。その方法によって検出され得る標的分子の例には、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのような核酸が含まれ、さらにオキシヌクレオチド一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸、またはデオキシヌクレオチド一リン酸、二リン酸、もしくは三リン酸が含まれる。例えば、標的分子は、一つ以上のdNTPであり得る。さらに、標的分子は、プリンまたはピリミジン塩基として含むヌクレオシドであり得る。
【0012】
塩基を、標的分子からの分離の前または後に、SERS基質に沈着させる工程を含む態様のある種の局面において、方法は、分離されたプリンまたはピリミジン塩基をコヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(CARS)を使用して検出する工程をさらに含む。SERS基質に分子を沈着させた後のCARSを使用した検出を含む本発明の局面は、本明細書においてSECARSと呼ばれる。従って、標的分子をCARSにより検出する前に、標的分子を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程を含む、プリン塩基またはピリミジン塩基を含む標的分子を検出する方法が提供される。両方のSECARSによる検出を含む本発明の態様は、上に開示されたように、ラマン・シグナルを増強するため、検出前にプリンまたはピリミジン塩基を標的分子の残部から分離する工程を任意で含む。
【0013】
既知のように、CARSは、自発ラマン散乱の非線形の光学的類似現象であるコヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン散乱を検出する。この技術においては、特定のラマン遷移が、アンチ・ストークス・シグナル場を発生する二つのレーザー場、いわゆる「ポンプ・レーザー」および「ストークス・レーザー」により干渉的に誘導される(Mueller et al.,CARS microscopy with folded BoxCARS phasematching.J.Microsc.197:150-158,2000)。その過程の干渉性は、レーザー場の特定の振動モードへの効率的なカップリングを許容し、このモードからのシグナルを何桁も増加させる。
【0014】
その方法のある種の局面、特に、SECARSを使用した標的分子の検出を含む局面において、標的分子はピリミジン塩基を含む。例えば、標的分子は、チミン、ウラシル、またはシトシンのようなピリミジン塩基を含むヌクレオチド・リン酸、ヌクレオチド、またはヌクレオシドであり得る。本明細書の実施例に例示されるように、ピリミジンを検出するための単独のSERSの使用は、プリン塩基について入手されるシグナルのレベルと比較して低下したシグナル・レベルをもたらす。従って、SERS基質への沈着の後に分子を検出するCARSの使用は、単独のSERSより高感度のフォーマットを提供する。
【0015】
ある種の局面において、標的分子は、塩基「から本質的になる」。これらの局面において、ヌクレオチドにおいて通常塩基に付着していない他の基が、塩基に付着していてもよい。例えば、塩基は、付加的な官能基または標識を含んでいてもよい。
【0016】
ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、ある種の局面において、例えば直径約5〜200nmのナノストラクチャー化SERS基質のような、一つ以上の銀ナノ粒子に沈着させられる。これらの局面において、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、塩化リチウムのようなハロゲン化アルカリ金属塩および銀ナノ粒子の両方と接触させられ得る。塩化リチウムは、例えば、約50〜約150マイクロモーラー、約80〜約100マイクロモーラー、または、ある種のより具体的な態様において、約90マイクロモーラーの濃度で使用され得る。
【0017】
ある種の局面において、塩基、例えば、一分子のアデニンが検出される。例えば、塩基がピリミジンである態様において、塩基からのシグナルを増強するため、塩基はラマン標識と会合させられ得る。
【0018】
ある種の局面において、標的分子を検出する方法は、核酸配列決定法において使用される。例えば、これらの局面において、標的分子はデオキシヌクレオチド三リン酸である。従って、これらの態様において、デオキシヌクレオチド三リン酸のような標的分子は、プリンまたはピリミジン塩基が標的分子から分離され、SERS表面に沈着させられる前に、鋳型核酸を用いた配列決定反応において使用される。これらの局面においては、例えば、配列決定される鋳型核酸または配列決定プライマーが、固定化され、新生鎖に取り込まれていないデオキシヌクレオチド三リン酸分子を含む反応後混合物の中に標的核酸に相補的な新生鎖が形成されるよう、デオキシヌクレオチド三リン酸を含む配列決定反応混合物成分と接触させられる。新生鎖に取り込まれていないデオキシヌクレオチド三リン酸分子を含む反応後混合物が、SERS基質に沈着させられ、ラマン散乱が検出される。これらの態様においては、分離されたプリンまたはピリミジン塩基を検出する前に、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を単離する必要はない。反応後混合物において発生されたラマン・シグナルの強度が、予想された強度、または鋳型核酸以外の全ての反応物を含む反応前混合物において決定された強度と比較して減少していた場合、それは、dNTPのヌクレオチドが新生鎖に取り込まれたことを示し、それにより、相補的な鋳型核酸のヌクレオチド存在を明らかにする。
【0019】
ラマン標識は、dNTPまたはその他のヌクレオチドもしくはヌクレオシドにより発生されるシグナルを増加させるために使用され得る。ある種の局面において、ヌクレオチドは、ラマン分光法により検出される前に、ラマン標識、例えば、フルオロフォアまたはナノ粒子に付着させられる。プリンまたはピリミジン塩基は、標的分子の残部から分離される前または後に、ラマン標識に付着させられ得る。
【0020】
ある種の局面において、標的分子は、本明細書に提供された方法により検出される前に、生物学的試料から単離される。生物学的試料は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、大便、痰、脳脊髄液、涙、粘液等である。
【0021】
ある種の局面において、生物学的試料は、哺乳動物対象、例えばヒト対象に由来する。生物学的試料は、事実上任意の生物学的試料、特に、対象由来のRNAまたはDNAを含有している試料であり得る。生物学的試料は、例えば、1〜10,000,000個;1000〜10,000,000個;または1,000,000〜10,000,000個の体細胞を含有している組織試料であり得る。試料は、本明細書に提供された方法にとって十分なRNAまたはDNAを含有している限り、完全な細胞を含有している必要はなく、いくつかの局面においては、わずか一分子のRNAまたはDNAを必要とする。生物学的試料が哺乳動物対象由来である本発明の局面によると、生物学的試料または組織試料は、任意の組織に由来し得る。例えば、組織は、手術、生検、スワブ、大便、またはその他の収集法によって入手され得る。
【0022】
その他の局面において、生物学的試料は、病原体、例えば、ウイルス性または細菌性の病原体を含有している。ある種の局面において、鋳型核酸は、プローブと接触させられる前に、生物学的試料から精製される。単離された鋳型核酸は、増幅されずに、反応混合物と接触させられ得る。
【0023】
もう一つの態様において、より詳細に本明細書に記述されるように、反応後混合物が形成されるよう、既知のコピー数の鋳型核酸分子、典型的には、一本鎖鋳型核酸分子が、プライマー、ポリメラーゼ、および既知の初期濃度の第一のヌクレオチドを含む反応混合物と接触させられ、反応後混合物における第一のヌクレオチドの新生鎖への取り込みが定量され、複数コピーのヌクレオチドが標的位置に存在するか否かを決定するために使用される、鋳型核酸分子内の連続標的位置における同一ヌクレオチドを検出する方法が提供される。この方法によると、ポリメラーゼによる新生鎖の合成および反応後混合物の形成を可能にするインキュベーションの後、次いで、反応後混合物が、SERS基質に沈着させられ、反応後混合物中の第一のヌクレオチドの濃度が決定され、第一のヌクレオチドの新生核酸鎖への取り込みを検出するために使用され、反応後混合物のSERSシグナルを検出することにより決定される。プライマーまたは鋳型核酸が、反応チャンバの表面に固定化され、プライマーの3'末端が、連続標的位置の5'ヌクレオチドの上流で鋳型核酸分子と結合する。この方法は、例えば、SERSシグナルの減少が検出されるまで、付加的なヌクレオチドを用いて繰り返され得る。
【0024】
ある種の局面において、ヌクレオチドはdNTPである。例えば、dATPが第一のヌクレオチドであって、かつ方法の後続サイクルが、例えば、dGTP、dCTP、およびdTTPを個々に使用して実施されることができる。反応混合物は、当技術分野において既知のような核酸重合反応混合物である。反応混合物は、典型的には、本明細書に記述されるように、dNTPの形態のヌクレオチドを、プライマーおよびポリメラーゼと共に、緩衝液中に含む。
【0025】
ある種の局面において、第一のヌクレオチドは、SERS基質に沈着させられる前に、反応後混合物から単離され得る。さらに、プリンまたはピリミジン塩基は、SERS基質に沈着させられ、SERSにより検出される前に、本明細書に記述されるように、dNTPのリボースまたはデオキシリボース部分から分離されてもよい。
【0026】
鋳型核酸分子のコピー数およびヌクレオチドの濃度は、当技術分野において既知の方法を使用して決定され得る(例えば、Sambrook et al.,(1989)参照)。例えば、核酸定量は、260および280nmの波長における分光光度測定を使用して、または核酸へインターカレートした臭化エチジウム分子により放射される蛍光を測定することにより、決定され得る。その測定は、鋳型核酸分子およびヌクレオチドの濃度およびコピー数を推定するため、一連の既知の濃度の核酸の試料から得られた類似した測定と比較され得る。または、重合反応の前および後に測定されたSERSシグナル強度に基づく相対濃度が決定され得る。
【0027】
ある種の局面において、鋳型核酸分子のコピー数は、鋳型核酸分子と接触させられる第一のヌクレオチドのコピー数の1/20、1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、またはそれとほぼ同じ(即ち、10%以内)である。例えば、図9Aに示されるように、ほぼ同じコピー数の鋳型核酸分子60およびdNTP 50が提供され、鋳型核酸分子60が反応チャンバ80内の基質70に固定化されている局面において、反応後混合物におけるSERSシグナル(図9C)は、初期濃度のdNTPにより発生されるSERSシグナル(図9B)と比較して、はるかに少ないか、または検出不可能である。
【0028】
ある種の局面において、まず第一のヌクレオチドがSERSを使用して検出された後、付加的な第一のヌクレオチドが鋳型核酸分子と接触させられる。これは、例えば、第二の反応後混合物が形成されるよう、標的核酸分子を、第一の反応混合物と同一の第二の反応混合物と接触させることにより、達成される。次いで、第二の反応後混合物、または第二の反応後混合物から単離されたプリンもしくはピリミジン塩基が、SERS基質に沈着させられ、SERSを使用して検出される。
【0029】
連続標的位置における同一ヌクレオチドの検出は、鋳型核酸分子を付加的な第一のヌクレオチドの分子と接触させることにより促進される。例えば、鋳型核酸分子を、ほぼ同じコピー数の第一のヌクレオチドと接触させ、反応後混合物を沈着させ、SERSを使用して検出することができる。次いで、鋳型核酸分子を、第二の反応後混合物産物が形成されるよう、第二の反応混合物中の付加的な第一のヌクレオチドのコピーにより検出することができる。次いで、第二の反応混合物をSERS基質に沈着させ、再び第一のヌクレオチドをSERSを使用して検出する。予想されるSERSシグナルからのSERSシグナルの強度の減少は、鋳型核酸分子が連続標的位置に同一ヌクレオチドを含むことを示す。この例において、反応混合物中の第一のヌクレオチドの絶対濃度を決定する必要はなく、ラマン・シグナル強度に基づく相対濃度で十分である。この局面の様々な修飾が想像され得る。標的核酸分子を付加的なヌクレオチドと接触させることは、ポリメラーゼにより合成された鋳型鎖に相補的な鎖の全てのコピーへヌクレオチドが取り込まれたことを保証するのにも有用である。
【0030】
本発明のこの態様のある種の局面において、第一のヌクレオチドは、SECARS(即ち、第一のヌクレオチドをSERS基質に沈着させた後のコヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(CARS))を使用して検出される。上に示されたように、ある種の局面において、SECARSは、本発明において提供される方法において検出法として使用される。
【0031】
ある種の例において、さらに詳細に本明細書に記述されるように、ヌクレオチドのラマン・シグナルを増強するために、ラマン標識が各ヌクレオチドに付着させられる。ラマン標識は、全てのヌクレオチドに付着させられてもよいし、または、ラマン標識は、例えばピリミジン・ヌクレオチドにのみ付着させられてもよい。本発明のこの局面は、ある種の条件の下で、検出限界に到着するためには、プリン分子より多くのピリミジン分子が必要とされることを示す、本明細書の実施例に提供されるデータに関する。ある種の局面において、ラマン標識はフルオロフォアである。
【0032】
もう一つの態様において、反応チャンバにおいて、検出可能な数の鋳型核酸を反応混合物と接触させ、プライマーが鋳型核酸に結合し、反応後混合物が形成されるようインキュベートする工程、反応後混合物をSERS基質に沈着させる工程、ならびに反応後混合物中の第一のヌクレオチドをSERSを使用して検出する工程を含む、鋳型核酸分子、典型的には一本鎖核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定する方法が提供される。反応後混合物におけるラマン・シグナルの強度の減少は、伸長反応産物を同定し、それにより、標的位置におけるヌクレオチド存在を同定する。ある種の局面において、ラマン・シグナルを増強するため、反応後混合物からラマン・シグナルを発生させる前に、第一のヌクレオチドの切断産物が、表面増強ラマン分光法(SERS)表面に沈着させられる。
【0033】
反応混合物は、プライマー、ポリメラーゼ、および初期濃度の第一のヌクレオチド、典型的にはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む。プライマーまたは鋳型核酸は、典型的には、反応チャンバの表面に固定化される。
【0034】
ある種の局面において、方法は、ヌクレオチド存在が同定されるまで、異なるヌクレオチドを使用して繰り返される。例えば、dATPが第一のヌクレオチドであり、かつ方法の後続サイクルが、例えば、dGTP、dCTP、およびdTTPを個々に使用して実施されることができる。これらの局面において、基質は、典型的には、第二、第三、または第四のヌクレオチドと接触させられる前に洗浄される。任意で、dNTPが新生鎖に取り込まれた後、取り込まれたdNTPの付加的なコピーが、例えば、本明細書に記述されるように、ヌクレオチド・リピートを検出するために、鋳型核酸分子に導入されてもよい。次いで、任意で、例えば、鋳型核酸分子全体が配列決定されるまで、鋳型核酸分子の付加的な標的ヌクレオチドにおける付加的なヌクレオチド存在を同定するために、方法が繰り返される。
【0035】
本明細書に開示されるように、アッセイの感度を増加させるためにSECARSが使用され得る。他の局面において、塩基がSERSまたはSECARSにより検出される前に、プリンおよびピリミジン塩基は、ヌクレオチドの糖部分から分離される。
【0036】
ある種の局面において、初期反応前濃度のヌクレオチドの試料は、ヌクレオチドが反応混合物に含められる前に、またはヌクレオチドが鋳型核酸分子の非存在下で反応混合物に含められた後に、SERS基質に沈着させられ、SERSを使用して検出される。反応前濃度から決定されたSERSスペクトルの強度は、反応後濃度と比較される。反応後濃度と反応前濃度との間の統計的に有意な強度の減少は、伸長反応生成物を同定し、それにより、標的位置におけるヌクレオチド存在を同定する。本発明のこの局面は、ヌクレオチド、典型的にはdNTPの濃度が既知であり、よく制御されている場合には省略され得る。
【0037】
または、dNTPと内部対照分子との混合物が反応混合物において提供される。インキュベーションの後、dNTPおよび内部対照の両方のSERSスペクトルが検出され得る。dNTPおよび内部対照の相対強度は、dNTPの反応後濃度を決定するために測定され得る。内部対照分子は、ヌクレオチド存在を決定する方法において使用されない異なる型のヌクレオチドであり得る。そのような内部対照の例には、例えば、8-ブロモアデニン二リン酸(Altcorp,Lexington,KY)が含まれる。修飾された塩基を有し、従って異なるサインを有するその他のヌクレオチドも、使用され得る(例えば、Glen Research,Sterling,VAから入手可能)。そのような化合物は、伸長産物へ取り込まれ得ず、異なるラマン・スペクトルを有する。シグナルはリン酸の除去によって増強され得、従って、修飾された塩基は、方法の全工程のための内部対照として使用され得る。
【0038】
本発明のこの局面の方法において、反応後産物の形成のためのインキュベーション時間は、反応混合物成分が鋳型核酸に接触することを可能にするために十分なものである。反応混合物成分が鋳型核酸に接触する速度、従って、最小インキュベーション時間は、多数の要因により影響を受ける。これらの要因には、鋳型核酸の濃度、プライマーおよびヌクレオチドの濃度、反応物が反応チャンバ内を移動するスピード、ならびに反応チャンバのサイズおよび形が含まれる。これらの要因は、インキュベーション時間が、鋳型核酸分子が反応成分に接触することを可能にするために十分なものであることを保証するために改変され得る。
【0039】
上述の要因に依る反応産物の形成のためのインキュベーション時間は、1ミリ秒から1時間までの範囲であり得るが、典型的には、100ミリ秒〜10分の範囲である。例えば、ある種の局面において、インキュベーション時間は、100ミリ秒;1、2、3、4、5、10、15、20、30、45、もしくは60秒;または2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10分である。
【0040】
鋳型核酸のコピー数は、1コピー〜100,000コピーの範囲である。アデノシンおよびグアノシン部分のみが検出される本発明の局面において、鋳型コピーは、1コピー〜10,000コピーの範囲であり得る。本発明のある種の局面において、方法は、鋳型核酸の各鎖を用いて別々に反応を実施することにより、アデノシンおよびグアノシン・ヌクレオチドのみを使用して実施される。これらの局面においては、プリン含有ヌクレオチドのみが使用されるが、両方の鎖が分析されるため、鋳型位置における任意のヌクレオチド存在が検出され得る。
【0041】
方法において使用されるヌクレオチドがプリンおよびピリミジンを含む態様、例えば、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTPが使用される態様において、またはピリミジンのみが含まれる態様において、少なくとも10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、75,000、または100,000コピーの鋳型核酸分子が、典型的には、使用される。ある種の局面において、検出の感度を増加させるため、SERSおよびCARSの両方が、ピリミジン・ヌクレオチドを検出するために使用される。
【0042】
上に示されたように、鋳型核酸分子が反応混合物成分と接触するために必要なインキュベーション時間は、反応物が反応チャンバ内を移動するスピードにより影響を受ける。様々な力が、本明細書に示されるような反応チャンバにおいて反応物を移動させるために使用され得る。例えば、流体力学的、熱的、または電気的な力が使用され得る。さらに、圧力または真空が、反応物を反応チャンバ内を移動させるために使用され得る。
【0043】
上に示されたように、鋳型核酸分子が反応混合物成分に接触するために必要なインキュベーション時間は、反応チャンバの形およびサイズにより影響を受ける。本明細書に示されるように、鋳型核酸分子を分取し単離するために使用され得るマイクロフルイディクスまたはナノフルイディクスが、鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定する方法を含む、本明細書に開示された様々な態様の方法において使用される。これらの態様において、反応チャンバの寸法のうち少なくとも一つの寸法は、7ナノメートル〜100ミリメートルの範囲内である。一般に、これらの態様は、より大きな反応チャンバにおいて必要なインキュベーション時間を減少させる。ある種の局面において、反応チャンバの少なくとも一つの寸法は、100ナノメートル以下、例えば、50nm、25nm、20nm、15nm、10nm、9nm、8nm、または7nmである。
【0044】
本発明のもう一つの局面において、方法はプリン残基のみを使用して実施される。この方法は、本明細書の実施例に例示されるように、ある種の条件において、プリン残基がピリミジン残基より高い感度で検出され得ることの観察に基づく。本発明のこの局面における方法は、第一のヌクレオチドおよび第二のヌクレオチドとしてdATPおよびdGTPを一度に使用して、標的ヌクレオチド位置について二回分実施される。次いで、方法は、再び第一のヌクレオチドおよび第二のヌクレオチドとしてdATPおよびdGTPを一度に使用して、第二の反応チャンバに固定化された鋳型核酸分子の相補鎖を使用して繰り返される。この態様によると、標的位置の任意のヌクレオチド存在が、プリン・ヌクレオチドのみを使用して決定され得る。
【0045】
図10に例示されるように、本発明において提供される方法は、核酸配列決定用の器具、例えば、微少液体チップのような微少液体器具300において多重分析として実施され得、その器具は、それ自体、本発明のもう一つの態様を形成する。微少液体チップは、典型的には、ポリメラーゼ貯蔵所150、緩衝液貯蔵所160、一連のdNTP貯蔵所110、120、130、140、150、160を含み、任意でプライマーまたは鋳型核酸分子の貯蔵所155を含む、一連の試薬貯蔵所を含む。いくつかの例において、プライマーおよび/または鋳型核酸分子はチップに含まれ得る。器具は、さらに、一連の試薬貯蔵所と液体的に連絡している混合チャンバ180を含み、一連の試薬貯蔵所からの試薬は、反応混合物が形成されるよう、混合チャンバ180において混合される。さらに、器具は、固定化された鋳型核酸または固定化されたプライマーを含む一つ以上の反応チャンバ190を含む。一つ以上の反応チャンバ190は、混合チャンバ180と液体的に連絡している。ある種の局面において、一つ以上の反応チャンバ190の少なくとも一つの寸法は100ナノメートル未満であり、かつ/または一連のdNTP貯蔵所110、120、130、140、150、160は、プリンdNTP貯蔵所110、120のみを含む。さらなる局面において、器具は、dNTP貯蔵所110、120、130、140、150、160と混合チャンバ180との間;プライマーまたは鋳型核酸分子の貯蔵所155と反応チャンバ190との間、および/または混合チャンバ180と反応チャンバ190との間に、流れを制御するためのバルブ集団210を含む。
【0046】
図10に例示された器具において実施される本発明の方法は、インキュベーション・チャンバーとも呼ばれる反応チャンバ190において検出可能な数の鋳型核酸分子を反応混合物と接触させる工程を含む。反応混合物の成分は、任意のプライマー貯蔵所、ポリメラーゼ貯蔵所150、緩衝液貯蔵所160、ならびにdATP貯蔵所110、dGTP貯蔵所120、dCTP貯蔵所130、およびdTTP貯蔵所140を含む一連のデオキシヌクレオチド(dNTP)貯蔵所を含む一連の貯蔵所に含有されている。反応混合物成分の流れは、一連のバルブ210により制御される。四つのdNTPのうちの一つを含む反応混合物成分は、混合チャンバ180へ進み、そこから一連の反応チャンバ190のうちの一つへと流れる。各反応チャンバは、反応チャンバ表面に固定化された複数コピーの異なる一本鎖鋳型核酸分子を含み得る。反応チャンバは、上述のように、マイクロ・スケールまたはナノ・スケールのチャンバーであり得、例えば少なくとも一つの寸法が100nm以下であり得る。残余溶液チャンバーは、SERS基質およびLiCl溶液のための供給ラインを有していてもよい(示されていない)。または、溶液が廃棄物ラインに行く前に、検出チャンバーが存在してもよい(示されていない)。検出チャンバーにおいては、各残余溶液チャンバーからの残余溶液が連続的に流入し、SERS基質およびLiCl溶液と混合され、レーザー装置により検出される。過剰溶液は、残余溶液チャンバー200に捕獲され、廃棄物ライン170へと案内され得る。図11は、dNTP貯蔵所110、120、130、140(示されていない)およびポリメラーゼ貯蔵所150を含む貯蔵所からの試薬が、一連のバルブ210を通って流れ、混合チャンバ180に添加される前に、緩衝液貯蔵所160からの緩衝液と混合される、混合チャンバ180についての別の設計を例示している。ある種の局面において、dNTPは、別々に混合チャンバにおいてポリメラーゼと混合される。
【0047】
本発明の他の局面において、dNTP貯蔵所は、プリン・ヌクレオチド三リン酸、例えば、dGTP、dATPのみを含む。本発明の微少液体チップのこの局面は、本明細書に記述されるように、プリン残基のみを使用してヌクレオチド存在を検出する方法を実施するために使用され得る。
【0048】
もう一つの局面において、器具の反応チャンバは、表面増強ラマン分光法(SERS)基質を含むSERSチャンバーと液体的に連絡している。さらに、器具は、SERSチャンバー基質と光学的かつ/または機能的に連絡しているラマン光源およびラマン分光計を含む検出系の一部であり得る。ある種の局面において、ラマン光源およびラマン分光計は、CARS分析用に設計されている。CARS分析用に設計されたラマン光源およびラマン分光計は、当技術分野において既知である。
【0049】
当技術分野において既知であり、より詳細に本明細書に記述されるように、光源は、典型的には、レーザー光である。光源からの光がSERS基質に投射され、SERS分光計内の検出ユニットが、dNTP、または遊離のプリンもしくはピリミジン塩基のようなそれらの切断産物のような反応後産物からのラマン・シグナルを検出する。本発明のある種の局面において、ラマン検出ユニットは、アデノシンのような少なくとも一つのヌクレオチドまたは塩基を一分子レベルで検出することができる。さらに、ある種の局面において、ヌクレオチドは、反応チャンバを通ってSERSチャンバを形成するチャンネルへと流れ込む。チャンネルの内表面は、銀、金、白金、銅、またはアルミニウムのメッシュを含んでいてもよい。
【0050】
もう一つの態様において、反応混合物が形成されるよう、一つ以上の鋳型核酸分子を、プライマー、ヌクレオチド、およびポリメラーゼと接触させる工程、ヌクレオチドから一つ以上の相補鎖を合成する工程、ならびにヌクレオチドをラマン分光法を使用して検出する工程(相補鎖の合成後の反応混合物中のヌクレオチドの濃度の減少は、ヌクレオチドが相補鎖へ取り込まれたことを示す)を含む、核酸を配列決定する方法が提供される。鋳型核酸の配列は、相補鎖へ取り込まれたヌクレオチドから決定される。
【0051】
標的位置におけるヌクレオチド存在を決定することを目的とした方法において、標的位置は、例えば、一塩基多型(SNP)のような多型の部位であり得る。多型とは、集団内に存在する対立遺伝子バリアントである。多型は、遺伝子座に存在する単一のヌクレオチドの差違であってもよいし、または一つもしくは少数のヌクレオチドの挿入もしくは欠失であってもよい。そのため、一塩基多型(SNP)は、ヒト・ゲノムのようなゲノムの特定の遺伝子座における1個、2個、3個、または4個のヌクレオチド存在(即ち、アデノシン、シトシン、グアノシン、またはチミジン)の集団内の存在を特徴とする。本明細書に示されるように、本発明の方法は、ある種の局面において、SNP位置におけるヌクレオチド存在の検出、または哺乳動物のような二倍体生物のためのSNP位置における両方のゲノムにおけるヌクレオチド存在の検出を提供する。さらに、複数個のSNP位置、例えば2、3、4、5、10、15、20、25、50、またはそれ以上のSNP位置におけるヌクレオチド存在が、一回の反応で決定され得る。例えば、SNP位置は、SNP位置の集団であり得る。
【0052】
ある種の局面において、より詳細に本明細書に記述されるように、ヌクレオチド濃度が測定される前に、ヌクレオチドが鋳型核酸分子から分離される。さらに、ある種の例において、一度に単一の型のヌクレオチドが鋳型に曝される。または、四つの型全てのヌクレオチドが同時に鋳型に曝されてもよい。
【0053】
ある種の例において、さらに詳細に本明細書に記述されるように、ヌクレオチドのラマン・シグナルを増強するために、ラマン標識が各ヌクレオチドに付着させられる。ラマン標識は、全てのヌクレオチドに付着させられてもよいし、または、ラマン標識は、例えばピリミジン・ヌクレオチドにのみ付着させられてもよい。本発明のこの局面は、ある種の条件の下で、検出限界に到着するためには、プリン分子より多くのピリミジン分子が必要とされることを示す、本明細書の実施例に提供されるデータに関する。
【0054】
方法は、2、3、4、5、10、15、20、25、50、100、150、250、500、1000、2000、2500、5000ヌクレオチドのヌクレオチド配列または鋳型核酸全体が決定されるまで、繰り返され得る。ある種の局面において、方法は、上に開示された接触、インキュベーション、および検出の工程を任意で繰り返す前に、基質を洗浄する工程を含む。ある種の局面において、鋳型核酸の一つ以上の集団が基質に固定化される。全ての新生核酸分子において核酸分子の次の位置に相補的なヌクレオチドが付加されたことを保証するために、一つ以上の核酸分子が、3'ヌクレオチドの付加的なコピーと接触させられてもよい。
【0055】
ある種の局面において、基質に固定化された核酸の量が決定され、反応混合物に含まれる第一のヌクレオチドの数が決定される。上述のように、これらの決定はヌクレオチド・リピートを検出するために使用され得る。
【0056】
本明細書に記述されるように、本発明のある種の局面において、第一のヌクレオチドの反応後濃度は、表面増強ラマン分光法(SERS)を使用した第一ヌクレオチドの測定に基づき決定される。さらに、ある種の局面において、ヌクレオチドは、鋳型核酸と接触させられる前の反応混合物において検出される。鋳型核酸分子との接触の前および後の反応混合物のSERSスペクトルは、本発明のある種の局面において、ヌクレオチドが新生鎖に取り込まれたか否かを決定するために使用される。これらの局面において、第一のヌクレオチドの反応後濃度は、反応後混合物におけるヌクレオチドのラマン・シグナルを、鋳型核酸と接触させられる前の反応混合物におけるヌクレオチドのラマン・シグナルと比較することにより、決定される。
【0057】
ある種の局面において、本明細書に記述されるように、反応混合物は内部対照分子を含む。内部対照分子は、第一のヌクレオチドにより発生されるラマン・シグナルから検出可能に区別され得るラマン・シグナルを発生する。内部対照を利用する本発明の局面において、第一のヌクレオチドの反応後濃度は、反応後混合物におけるヌクレオチドのラマン・シグナルを、内部対照分子のラマン・シグナルと比較することにより決定される。
【0058】
もう一つの態様において、固定化表面に付着した一つ以上の核酸分子を含有している反応チャンバ、反応チャンバと液体的に連絡しているチャンネル;およびチャンネルに機能的に連結されたラマン検出ユニットを含む装置が提供される。本発明のある種の局面において、ラマン検出ユニットは、dAMPまたはアデニンのような少なくとも一つのヌクレオチドまたは塩基を一分子レベルで検出することができる。さらに、ある種の局面において、ヌクレオチドは、反応チャンバを通ってチャンネルへと流れ込む。装置は、ある種の例において、銀、金、白金、銅、またはアルミニウムのメッシュをチャンネルの内部に含んでいてもよい。
【0059】
反応混合物が形成されるよう、一つ以上の鋳型核酸分子を、ヌクレオチドおよびポリメラーゼと接触させる工程、ならびにヌクレオチドから一つ以上の相補鎖を合成し、次いで、ヌクレオチドの濃度をラマン分光法により検出する工程を含む、核酸を配列決定する方法が提供される。相補鎖の合成後の反応混合物中のヌクレオチドの濃度の減少は、ヌクレオチドが相補鎖へ取り込まれたことを示す。鋳型核酸の配列は、相補鎖へ取り込まれたヌクレオチドから決定される。
【0060】
ある種の局面において、より詳細に本明細書に記述されるように、ヌクレオチド濃度が測定される前に、ヌクレオチドが鋳型核酸分子から分離される。さらに、一度に単一の型のヌクレオチドが鋳型に曝され得る。または、四つの型全てのヌクレオチドが同時に鋳型に曝されてもよい。
【0061】
もう一つの態様において、固定化表面に付着した一つ以上の核酸分子を含有している反応チャンバ、反応チャンバと液体的に連絡しているチャンネル、およびチャンネルに機能的に連結されたラマン検出ユニットを含む装置が提供される。ある種の局面において、ラマン検出ユニットは、少なくとも一つのヌクレオチドを一分子レベルで検出することができる。さらに、ある種の局面において、ヌクレオチドは、反応チャンバを通って、銀、金、白金、銅、またはアルミニウムのSERS基質を含んでいてもよいチャンネルへと流れ込む。
【0062】
もう一つの態様において、一つ以上の鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および初期濃度の第一のヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる工程、ならびに反応後混合物中の第一のヌクレオチドの濃度をラマン分光法を使用して検出する工程(第一のヌクレオチドの反応後濃度の減少は、ヌクレオチドが一つ以上の新生核酸分子の3'末端に付加されたことを示す)を含む、一つ以上の鋳型核酸のヌクレオチド配列を決定する方法が提供される。典型的には、反応後混合物、および鋳型核酸の少なくとも一部に相補的な一つ以上の新生核酸分子が形成されるよう、鋳型核酸が反応混合物中でインキュベートされる間、鋳型核酸またはプライマーのいずれかが固体支持体に固定化されている。上記の方法は、任意で、一つ以上の新生核酸分子の3'ヌクレオチドが同定され、それにより、一つ以上の核酸分子のヌクレオチド配列が決定されるまで、異なるヌクレオチドを用いて繰り返される。
【0063】
ある種の局面において、ヌクレオチドは、ラマン分光法により検出される前に、ラマン標識、例えば、フルオロフォアまたはナノ粒子に付着させられる。ラマン分光法は、例えば、表面増強ラマン分光法(SERS)を使用して実施され得る。
【0064】
ある種の局面において、鋳型分子は、本明細書に開示された方法により検出される前に、生物学的試料から単離される。生物学的試料は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、大便、痰、脳脊髄液、涙、粘液等である。
【0065】
もう一つの態様において、反応後混合物が形成されるよう、鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および初期濃度の第一のヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる工程(プライマーの3'ヌクレオチドが、標的ヌクレオチド位置に隣接して鋳型核酸と結合する)、ならびに反応後混合物中の第一のヌクレオチドの濃度をラマン分光法を使用して決定する工程(第一のヌクレオチドの反応後濃度の減少は、伸長反応産物を同定し、ヌクレオチドが標的位置におけるヌクレオチドと相補的であることを示し、それにより標的位置におけるヌクレオチド存在を同定する)を含む、鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定する方法が提供される。典型的には、標的核酸分子またはプライマーのいずれかが、基質に固定化される。方法は、任意で、ヌクレオチド存在が同定されるまで、異なるヌクレオチドを用いて繰り返される。
【0066】
もう一つの態様において、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基を、金属ナノ粒子を含む基質、金属コーティングされたナノストラクチャー、またはアルミニウムを含む基質に沈着させた後、沈着したヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基にレーザー・ビームを照射する工程、および生じたラマン散乱を検出する工程を含む、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基を検出する方法が提供される。本検出法は、例えば、本明細書に開示された核酸の配列決定の方法において有用である。
【0067】
ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、ある種の例において、一つ以上の直径約5〜20nmの銀ナノ粒子に沈着させられる。例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、銀ナノ粒子に沈着させられる。これらの局面において、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、ハロゲン化アルカリ金属塩および銀ナノ粒子と接触させられ得る。ハロゲン化アルカリ金属塩は、例えば、塩化リチウムである。これらの局面において、例えば、塩化リチウムは、約50〜約150マイクロモーラー、約80〜約100マイクロモーラー、または約90マイクロモーラーの濃度で使用され得る。
【0068】
ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基は、ある種の局面において、アデニンを含み、ある種の例において、一分子のアデニンが検出される。塩基は、ある種の例において、ラマン標識と会合させられ得る。
【0069】
もう一つの態様において、一つ以上の鋳型核酸分子を入手し、ヌクレオチドを使用した一つ以上の相補鎖の合成を可能にするためにヌクレオチドおよびポリメラーゼを鋳型に提供する工程、ならびにラマン分光法を使用してヌクレオチドの濃度を測定する工程を含む、核酸を配列決定する方法が提供される。相補鎖へ取り込まれたヌクレオチドから、鋳型核酸の配列が決定される。
【0070】
もう一つの態様において、固定化表面に付着した単一の鋳型核酸分子またはプライマーを含有している反応チャンバ;反応チャンバと液体的に連絡しているチャンネル;およびチャンネルに機能的に連結されたラマン検出ユニットを含む装置が提供される。
【0071】
本明細書で提供される方法を使用すると、単一の核酸分子を使用した一回の配列決定ランで、配列情報が入手され得る。または、核酸配列を確認するため、または完全な配列データを入手するため、複数コピーの核酸分子を平行してまたは連続的に配列決定してもよい。別法において、配列情報の精度を確認するため、核酸分子およびその相補鎖の両方を配列決定することができる。配列決定される核酸は、DNAであり得るが、RNAまたは合成ヌクレオチド・アナログを含むその他の核酸も配列決定され得る。
【0072】
配列決定される核酸は、共有結合的または非共有結合的に表面に付着させられ得る。または、配列決定される核酸は、光トラッピング(optical trapping)(例えば、Goodwin et al.,1996,Acc.Chem.Res.29:607-619;米国特許第4,962,037号;第5,405,747号;第5,776,674号;第6,136,543号;第6,225,068号参照)のような非付着法によって、適所に拘束され得る。核酸の付着またはその他の局在化は、核酸からのバックグラウンド・シグナルなしに、ラマン分光法によりヌクレオチドが検出されることを可能にする。例えば、ヌクレオチドの連続流または不連続流が、核酸合成のために提供され得る。ヌクレオチドの濃度が、合成反応の上流および下流で決定され得る。ヌクレオチド濃度の差違は、新たに合成された相補核酸鎖に取り込まれたヌクレオチドを表す。または、核酸鋳型、プライマー、およびポリメラーゼが、反応チャンバのサブコンパートメントに拘束され得る。ラマン検出器は、核酸、ポリメラーゼ、およびプライマーからのバックグラウンド・シグナルなしに、反応チャンバの異なる部分におけるヌクレオチド濃度を検出するよう配置され得る。ヌクレオチドは、受動拡散または能動的な混合の過程により、反応チャンバの異なる部品間で平衡化され得る。
【0073】
以下の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載された方法および装置についてのより詳細な理解を提供するための多数の具体的な詳細を含有している。しかしながら、これらの具体的な詳細を含まない装置および/または方法が実施され得ることは、当業者には明白であろう。その他、当技術分野において周知の装置、方法、手法、および個々の成分は、本明細書に詳細には記載されていない。
【0074】
図1は、反応チャンバ11およびラマン検出ユニット12を含む、核酸配列決定のための装置10の非制限的な例を例示する。反応チャンバ11は、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼ15と共に、固定化表面14に付着した核酸(鋳型)分子13を含有している。鋳型分子13に配列が相補的なプライマー分子16が、鋳型分子13にハイブリダイズさせられる。ヌクレオチド17が、反応チャンバ11内の溶液中に存在する。新生DNA鎖16の合成のため、ヌクレオチド17は、デオキシアデノシン-5'-三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン-5'-三リン酸(dGTP)、デオキシシトシン-5'-三リン酸、および/またはデオキシチミジン-5'-三リン酸(dTTP)を含み得る。4つのヌクレオチド17の各々が、同時に溶液中に存在することができる。または、異なる型のヌクレオチド17が、連続的に反応チャンバ11に添加されてもよい。さらに、特に新生鎖がRNA分子である場合には、ウリジン-5'-三リン酸(UTP)のようなその他のヌクレオチドが利用され得る。伝統的な核酸配列決定において使用されるもののような非天然ヌクレオチドも使用され得る。これらには、標準的な配列決定または標識反応により使用されている、全ての蛍光色素標識ヌクレオチド、例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、TAMRA、R6G(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CA;またはNEN Life Science Products,Boston,MAより入手可能)が含まれる。これらの色素は、SERSにより検出され得る。
【0075】
配列決定反応を開始させるため、ポリメラーゼ15は、一度に一つのヌクレオチド分子17をプライマー16の3'末端に付加し、プライマー分子16を伸長させる。プライマー分子16が伸長するとき、それは新生鎖16と呼ばれる。毎回の伸長で、単一のヌクレオチド17が新生鎖16に取り込まれる。ヌクレオチド17の取り込みは、鋳型鎖13とのワトソン-クリック型塩基対相互作用により決定されるため、成長中の新生鎖16の配列は、鋳型鎖13の配列に相補的であるであろう。ワトソン-クリック型塩基対合においては、一方の鎖のアデノシン(A)残基が、他方の鎖のチミジン(T)残基と対合する。同様に、一方の鎖のグアニン(G)残基は、他方の鎖のシトシン(C)残基と対合する。従って、鋳型鎖13の配列は、新生鎖16の配列から決定され得る。
【0076】
図1は、単一の核酸分子13が反応チャンバ11内に含有されている方法および装置10を例示している。または、二つ以上の同一配列の鋳型核酸分子13が、単一の反応チャンバ11内に存在してもよい。一つ以上の鋳型核酸13が反応チャンバ11内に存在する場合、ラマン放射シグナルは、反応チャンバ11内の全ての新生鎖16に取り込まれたヌクレオチド17の平均を反映するであろう。熟練した当業者であれば、既知のデータ分析技術を使用して、反応チャンバ内で起こっている反応の大部分に遅延しているまたは先行している合成反応について所定の時点で入手されたシグナルを補正することができるであろう。
【0077】
図1に例示された非制限的な例は、鋳型鎖13、プライマー16、およびポリメラーゼ15と同じ反応チャンバ11内にラマン分光法により検出されるヌクレオチド17を示している。干渉ラマン・シグナルを低下させるため、反応チャンバ11および検出ユニット12を、ヌクレオチド17のみが励起され検出されるよう、配置することができる。例えば、反応チャンバ11を二つの部分に分割し、表面14への固定化により、低分子量カットオフ・フィルタの使用により、光トラッピングにより、または当技術分野において既知のその他の方法により(例えば、Goodwin et al.,1996,Acc.Chem.Res.29:607-619;米国特許第4,962,037号;第5,405,747号;第5,776,674号;第6,136,543号;第6,225,068号参照)、チャンバー11の一方の部分に、鋳型13、プライマー16、およびポリメラーゼ15を閉じこめることが可能である。検出ユニット12は、チャンバー11の第二の部分にあるヌクレオチド17のみが、励起されラマン・シグナルを放射するよう、配置され得る。または、反応チャンバ11は、微少溶液(microfluidic)チャンネル、マイクロキャピラリー、またはナノチャンネルのようなフロースルー・システムに付着させられ得る。ヌクレオチド17が、反応チャンバ11に入り、新生鎖16に取り込まれ得る。残りの未取り込みのヌクレオチド17が、反応チャンバ11から第二のチャンネルへ進み、そこでラマン分光法により検出され得る。鋳型13、プライマー16、およびポリメラーゼ15は、付着、フィルタの使用、光トラッピング、またはその他の既知の方法によって、反応チャンバ11に閉じこめられ得る。ヌクレオチド17が、鋳型13、プライマー16、およびポリメラーゼ15とは別のコンパートメントにおいて検出されるため、干渉ラマン・シグナルは最小限に抑えられる。新生鎖16に取り込まれたヌクレオチド17は、反応チャンバ11に入るヌクレオチド17および反応チャンバ11を去るヌクレオチド17の濃度の差違によって同定され得る。そのような別法においては、デュプリケートの検出ユニット12が、反応チャンバ11の前後に位置付けられ得る。または、反応チャンバ11に入るヌクレオチド17の濃度が既知である場合には、反応チャンバ11から出るヌクレオチド17の濃度を測定するため、単一の検出ユニット12が反応チャンバ11の下流に位置付けられ得る。
【0078】
熟練した当業者であれば、使用されるポリメラーゼ15の型によっては、新生鎖16が、新たに取り込まれた塩基が鋳型鎖13の対応する塩基と正確に水素結合していないミスマッチ塩基を数パーセント含有しているかもしれないことを了解するであろう。少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、またはそれ以上の精度が観察され得る。ある種のポリメラーゼ15は、鋳型鎖13と不正確に塩基対合した新たに取り込まれたヌクレオチド17を除去するよう作用するエラー修正活性(3'エキソヌクレアーゼまたはプルーフリーディング活性とも呼ばれる)を有していることが既知である。プルーフリーディング活性を有するポリメラーゼ15、または有していないポリメラーゼ15が、開示された方法において利用され得る。可能な限り低いエラー率を有するポリメラーゼ15が、特定の適用のため使用され得る。ポリメラーゼ15のエラー率は、当技術分野において既知である。
【0079】
検出ユニット12は、レーザーのような励起源18およびラマン分光検出器19を含む。励起源18は、反応チャンバ11またはチャンネルに励起ビーム20を照射する。励起ビーム20は、ヌクレオチド17と相互作用し、より高いエネルギー状態へと電子を励起する。電子がより低いエネルギー状態に戻るとき、それらは、ラマン検出器19により検出されるラマン放射シグナルを放射する。4つの型のヌクレオチド17の各々からのラマン放射シグナルは区別され得るため、検出ユニット12は、反応チャンバ11および/またはチャンネル内の各型のヌクレオチド17の量を測定することができる。
【0080】
成長中の新生鎖16へのヌクレオチド17の取り込みは、反応チャンバ11からのヌクレオチド17の枯渇をもたらす。合成反応を継続させるためには、新鮮なヌクレオチド17の供給源が必要とされるかもしれない。この供給源は、分子ディスペンサ21として図1に例示されている。分子ディスペンサ21は、配列決定装置10の一部であってもよいし、またはそうでなくてもよい。
【0081】
分子ディスペンサ21は、新生鎖16の合成速度に対して較正された等しい量で4つのヌクレオチド17の各々を放出するよう設計され得る。しかしながら、核酸13は、必ずしも、A、T、G、およびC残基の均一な分布を示さない。特に、DNA13が入手される種および配列決定されるDNA分子13の特有の領域に依って、DNA分子13のある種の領域は、ATリッチであるかもしれないしまたはGCリッチであるかもしれない。分子ディスペンサ21からのヌクレオチド17の放出は、比較的一定の濃度の各型のヌクレオチド17が反応チャンバ11内に維持されるよう制御され得る。
【0082】
データは、分光計またはモノクロメーター・アレイのような検出器19から収集され、情報処理および制御システムに提供され得る。情報処理および制御システムは、特定のラマン・サインを特定のヌクレオチド17に関連付けるデータベースを維持することができる。情報処理および制御システムは、検出器19により検出されたサインを記録し、そのサインを既知のヌクレオチド17のサインと相関させることができる。情報処理および制御システムは、鋳型分子13の配列を示すヌクレオチド17取り込みの記録を維持することもできる。情報処理および制御システムは、バックグラウンド・シグナルの差し引きのような、当技術分野において既知の標準的な手法を実施することもできる。
【0083】
新生鎖16がDNAを含む場合、鋳型鎖13はRNAまたはDNAのいずれかであり得る。RNA鋳型鎖13を用いた場合、ポリメラーゼ15は逆転写酵素であり得、逆転写酵素の例は当技術分野において既知である。鋳型鎖13がDNA分子である場合、ポリメラーゼ15はDNAポリメラーゼであり得る。
【0084】
または、新生鎖16はRNA分子であり得る。これは、ポリメラーゼ15が、プライマー16が必要とされないRNAポリメラーゼであることを必要とする。しかしながら、鋳型鎖13は、RNAポリメラーゼ15に結合し、かつRNA新生鎖16の転写を開始させるのに有効なプロモーター配列を含有しているべきである。プロモーター配列の正確な組成は、使用されるRNAポリメラーゼ15の型に依る。効率的な転写の開始を可能にするプロモーター配列の最適化は、当技術分野におけるルーチンの技術の範囲内である。本方法は、使用される鋳型分子13の型、合成される新生鎖16の型、または利用されるポリメラーゼ15の型に関して制限されない。鋳型鎖13に配列が相補的な核酸分子16の合成を支持することができる事実上任意の鋳型13および任意のポリメラーゼ15が、使用され得る。
【0085】
ヌクレオチド17は、ラマン標識で化学的に修飾され得る。標識は、一般的なヌクレオチド17の各々について区別可能な、特有の高度に可視の光学サインを有し得る。標識は、また、ラマン放射シグナルの強さを増加させるよう、またはヌクレオチド17に対するラマン検出器19の感度もしくは特異性を増強するよう機能し得る。ラマン分光法のために使用され得るタグ分子の非制限的な例は、下に開示される。ラマン分光法における標識の使用は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第5,306,403号および第6,174,677号)。熟練した当業者であれば、ラマン標識が、異なるヌクレオチド17と結合した時に区別可能なラマン・スペクトルを発生させ得ること、または一つの型のヌクレオチド17のみと結合するよう、異なる標識が設計され得ることを了解するであろう。
【0086】
鋳型分子13は、官能化ガラス、シリコン、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、銀もしくはその他の金属でコーティングされた表面、石英、プラスチック、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ラテックス、ナイロン、ニトロセルロース、ガラス・ビーズ、磁性ビーズ、またはアミノ、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル、またはディールズ・アルダー反応体のような官能基を表面に取り込むことができる当技術分野において既知のその他の任意の材料に付着させられ得る。
【0087】
官能基は、鋳型鎖13とポリメラーゼ15との間の結合相互作用が立体障害なしに起こり得るよう、架橋剤に共有結合的に付着させられ得る。典型的な架橋基には、エチレングリコール・オリゴマーおよびジアミンが含まれる。付着は、共有結合性または非共有結合性の結合によることができる。核酸分子13を表面14に付着させる様々な方法が、当技術分野において既知であり、利用され得る。
【0088】
本明細書において使用されるように、「一つの(a)」または「一つの(an)」とは、一つまたは複数の項目を意味し得る。
【0089】
「核酸」とは、一本鎖、二本鎖、または三本鎖のDNA、RNA、およびそれらの任意の化学的修飾を意味する。事実上任意の核酸の修飾が企図される。「核酸」は、10、20、30、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、500、600、700、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、15,000、20,000、30,000、40,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、500,000、1,000,000、1,500,000、2,000,000、5,000,000塩基、またはそれ以上から、全長染色体DNA分子まで、ほぼ任意の長さのものであり得る。
【0090】
ヌクレオシドは、デオキシリボース、リボースのようなペントース糖、またはペントース糖の誘導体もしくはアナログに共有結合的に付着したプリンまたはピリミジン塩基を含む分子である。「ヌクレオチド」とは、ペントース糖に共有結合的に付着した少なくとも一つのリン酸基をさらに含むヌクレオシドをさす。ポリメラーゼにより新生鎖に取り込まれ得るのであれば、ヌクレオチドの構造に様々な置換または修飾が施され得ることが企図される。例えば、リボースまたはデオキシリボース部分は、もう一つのペントース糖またはペントース糖アナログと置換され得る。リン酸基は、ホスホン酸、硫酸、またはスルホン酸のような様々な基により置換され得る。新生鎖に取り込まれたヌクレオチドの配列が鋳型鎖の配列を反映しているのであれば、天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基が、他のプリンもしくはピリミジンまたはそれらのアナログにより置換されてもよい。
【0091】
鋳型分子は、当業者に既知の任意の技術により調製され得る。鋳型分子は、天然に存在するDNAまたはRNA分子、例えば、染色体DNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)であり得る。以下に制限はされないが、染色体DNA、ミトコンドリアDNA、もしくは葉緑体DNA、またはリボソームRNA、トランスファーRNA、ヘテロ核RNA、もしくはメッセンジャーRNAを含む、事実上任意の天然に存在する核酸が、開示された方法によって調製され配列決定され得る。配列決定される核酸は、当技術分野において既知の標準的な方法により、原核生物または真核生物の起源から入手され得る。
【0092】
様々な型の細胞の核酸を調製し単離する方法は、既知である(例えば、Guide to Molecular Cloning Techniques,eds.Berger and Ibmmel,Academic Press,New York,NY,1987;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,eds.Sambrook,Fritsch and Maniatis,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989参照)。一般には、配列決定される核酸を含有している細胞、組織、またはその他の起源材料が、まず、例えば、液体窒素で凍結させた後、乳鉢および乳棒で破砕することにより、ホモジナイズされる。ある種の組織は、ワーリング・ブレンダー、バーティス(Virtis)ホモジナイザー、ダウンス(Dounce)ホモジナイザー、またはその他のホモジナイザーを使用してホモジナイズされ得る。粗ホモジネートは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトンX-100、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)、オクチルグルコシド、または当技術分野において既知のその他の界面活性剤のような界面活性剤により抽出され得る。別法として、または、さらに、抽出は、イソチオシアン酸グアニジニウム(guanidinium isothiocyanate)のようなカオトロピック剤、またはフェノールのような有機溶媒を使用することができる。例えば、プロテイナーゼKによるプロテアーゼ処理が、細胞タンパク質を分解するために使用され得る。粒状夾雑物は、遠心分離または超遠心分離(例えば、約5,000〜10,000×gで10〜30分、または約50,000〜100,000×gで30〜60分)により除去され得る。低イオン強度の水性緩衝液に対する透析は、塩またはその他の可溶性の夾雑物を除去するのに有用である。核酸は、−20℃のエタノールの添加により、または酢酸ナトリウム(pH6.5、約0.3M)および0.8倍容量の2-プロパノールの添加により、沈殿し得る。沈殿した核酸は、遠心分離により収集され得、または染色体DNAの場合には、ガラス・ピペットもしくはその他のプローブで沈殿したDNAを巻き取ることにより収集され得る。
【0093】
熟練した当業者であれば、上に挙げられた手法が、例示に過ぎず、配列決定される核酸の特定の型に依って、多くのバリエーションが使用され得ることを了解するであろう。例えば、ミトコンドリアDNAは、しばしば、段階勾配を使用した塩化セシウム密度勾配遠心分離により調製され、mRNAは、しばしば、Promega(Madison,WI)またはClontech(Palo Alto,CA)のような商業的な供給元からの調製用カラムを使用して調製される。そのようなバリエーションは、当技術分野において既知である。
【0094】
熟練した当業者であれば、調製される鋳型核酸の型によって、様々なヌクレアーゼ阻害剤が使用され得ることを了解するであろう。例えば、バルク溶液中のRNase夾雑はジエチルピロカルボネート(diethyl pyrocarbonate)(DEPC)による処理により排除され得、市販のヌクレアーゼ阻害剤が、Promega(Madison,WI)またはBRL(Gaithersburg,MD)のような標準的な供給元から入手され得る。精製された核酸は、TE(トリス-EDTA)(エチレンジアミン四酢酸)のような水性緩衝液に溶解させられ、使用まで、−20℃または液体窒素中で保管され得る。
【0095】
一本鎖DNA(ssDNA)が配列決定される場合、ssDNAは、標準的な方法により二本鎖DNA(dsDNA)から調製され得る。最も単純には、dsDNAを、ssDNAへと自然に分離するアニーリング温度より高く加熱することができる。代表的な条件は、92〜95℃での5分間以上の加熱を含み得る。例えば、GC含有量および分子の長さに基づく、dsDNAを分離するための条件を決定する式は、当技術分野において既知である。または、一本鎖DNAは、二本鎖DNAの一方の鎖とのみ結合するプライマーを使用して、当技術分野において既知の標準的な増幅技術により二本鎖DNAから調製され得る。例えば、配列決定される二本鎖核酸をM13のような複製型ファージへと挿入し、ファージに鋳型の一本鎖コピーを産生させることによる、一本鎖DNAを調製するその他の方法は、当技術分野において既知である。
【0096】
RNAまたはDNAポリメラーゼのための鋳型として機能し得る事実上任意の型の核酸が、配列決定される可能性を有している。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCRTM)増幅のような様々な増幅技術により調製された核酸が分析され得る(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号参照)。または、配列決定される核酸は、プラスミド、コスミド、BAC(細菌人工染色体)、またはYAC(酵母人工染色体)のような標準的なベクターにクローニングされてもよい(例えば、Berger and Kimmel,1987;Sambrook et al.,1989参照)。核酸インサートは、例えば、適切な制限エンドヌクレアーゼによる切り出しの後、アガロース・ゲル電気泳動および臭化エチジウム染色によってベクターDNAから単離され得る。選択されたサイズ分画された核酸は、例えば、低融点アガロースの使用により、またはゲル・スライスからの電気溶出により、ゲルから取り出され得る。インサート単離の方法は、当業者に既知である。
【0097】
ある種の局面において、配列決定される核酸は、一分子のssDNAまたはssRNAであり得る。少数(例えば、1000分子以下)の核酸鋳型が含まれる局面に関しては、負の電荷の表面への付加(例えば、Braslavsky et al.,Natl.Acad.Sci.,100:3960-3964,2003参照)のような、反応槽および基質の表面への核酸の結合を最小限に抑えるための手法が含まれ得る。
【0098】
単一のssDNAまたはssRNA分子の選択および操作のための多様な方法、例えば、流体力学的フォーカシング(hydrodynamic focusing)、マイクロ・マニピュレータ連結、光トラッピング、またはこれらおよび類似の方法の組み合わせ(例えば、Goodwin et al.,1996,Acc.Chem.Res.29:607-619;米国特許第4,962,037号;第5,405,747号;第5,776,674号;第6,136,543号;第6,225,068号参照)が、使用され得る。
【0099】
本発明の特定の態様において、方法および装置は、1,000塩基超、2,000塩基超、5,000塩基超、10,000塩基超、20,000塩基超、50,000塩基超、100,000塩基超、またはそれ以上の長さの極めて長い核酸分子の配列を入手するのに適している。しかしながら、ある種の態様において、方法および装置は、500、400、300、200、150、100、50、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1ヌクレオチド長である比較的短い核酸分子の配列を提供する。この比較的短い核酸分子は、試料から直接単離されてもよいし、またはより長い核酸分子のプロセシングに起因してもよい。
【0100】
マイクロフルイディクスまたはナノフルイディクスは、鋳型核酸を分取し単離するために使用され得る。流体力学は、マイクロチャンネル、マイクロキャピラリー、またはマイクロポアへと核酸を操作するために使用され得る。流体力学的な力は、単一の核酸分子を分離するため、櫛構造を横切るように核酸分子を移動させるために使用され得る。核酸分子が分離された後は、流体力学的フォーカシングが、分子を位置付けるために使用され得る。熱または電位、圧力または真空も、核酸の操作のための原動力を提供するために使用され得る。米国特許第5,867,266号および第6,214,246号に開示されているように、配列決定のための鋳型核酸の操作は、微細加工チャンネルおよび組み込まれたゲル材料を取り込んだチャンネル・ブロック設計の使用を含み得る。
【0101】
または、核酸鋳型を含有している試料は、固定化表面にカップリングされる前に希釈され得る。固定化表面は、磁性ビーズもしくは非磁性ビーズまたはその他の別々の構造単位の形態をとり得る。適切な希釈率において、各ビーズは、0個または1個の核酸分子と結合している統計的確率を有するであろう。一個の核酸分子が付着しているビーズは、例えば、蛍光色素およびフローサイトメーター分取、または磁気的分取を使用して同定され得る。ビーズおよび核酸の相対サイズおよび均一性によっては、単一の結合核酸分子を含有しているビーズを分離するために磁気フィルタおよび質量分離を使用することが可能であるかもしれない。別法において、単一のビーズまたはその他の固定化表面に付着した多数の核酸が、配列決定され得る。
【0102】
さらなる別法において、コーティングされたファイバー・チップが、配列決定のための一分子核酸鋳型を作成するために使用され得る(例えば、米国特許第6,225,068号)。一分子のアビジンまたはその他の架橋剤を含有している固定化表面が調製され得る。そのような表面は、単一のビオチン化プライマーを付着させることができ、そのプライマーは、配列決定される単一の鋳型核酸とハイブリダイズすることができる。これは、アビジン-ビオチン結合系に制限されず、当技術分野において既知の任意のカップリング系に適応し得る。
【0103】
別法において、光トラップが、配列決定のための一分子核酸鋳型の操作のために使用され得る(例えば、米国特許第5,776,674号)。例示的な光トラッピング系は、Cell Robotics,Inc.(Albuquerque,NM)、S+L GmbH(Heidelberg,Germany)、およびP.A.L.M.Gmbh(Wolfratshausen,Germany)から商業的に入手可能である。
【0104】
配列決定される核酸分子は、固体表面に付着させられ得る(または固定化され得る)。核酸分子の固定化は、核酸分子と表面との間の非共有結合性または共有結合性の付着を含む多様な方法により達成され得る。例えば、固定化は、ストレプトアビジンまたはアビジンで表面をコーティングし、その後、ビオチン化ポリヌクレオチドを付着させることにより達成され得る(Holmstrom et al.,Anal.Biochem.209:278-283,1993)。固定化は、ポリE-Lys(リジン)でシリコン、ガラス、またはその他の基質をコーティングした後、二官能性架橋試薬を使用して、アミノまたはスルフヒドリルで修飾された核酸を共有結合的に付着させることによっても起こり得る(Running et al.,BioTechniques 8:276-277,1990;Newton et al.,Nucleic Acids Res.21:1155-62,1993)。アミン残基は、架橋のためのアミノシランの使用を通して表面へ導入され得る。
【0105】
固定化は、5'リン酸化核酸の、化学的に修飾された表面への直接の共有結合性付着により行われ得る(Rasmussen et al.,Anal.Biochem.198:138-142,1991)。核酸と表面との間の共有結合は、水溶性カルボジイミドを用いた縮合により形成される。この方法は、主に、5'-リン酸を介した核酸の5'-付着を容易にする。
【0106】
DNAは、一般的には、まず、ガラス表面をシラン処理し、次いで、カルボジイミドまたはグルタルアルデヒドにより活性化することにより、ガラスと結合させられる。別の手法は、分子の3'または5'末端のいずれかに取り込まれたアミノ・リンカーを介して連結されたDNAと共に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOP)またはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)のような試薬を使用することができる。DNAは、紫外線を使用して、膜表面に直接結合させられ得る。核酸の固定化技術のその他の非制限的な例は、米国特許第5,610,287号、第5,776,674号、および第6,225,068号に開示されている。
【0107】
核酸の固定化のために使用される表面の型は、制限されない。固定化表面は、材料が核酸配列決定反応を起こすために十分に耐久性があり不活性である限り、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、平面状表面、点付きの表面、またはその他の任意のコンフォメーションのほぼ任意の材料を含む固体表面であり得る。使用され得る表面の非制限的な例には、ガラス、シリカ、ケイ酸、PDMS、銀、またはその他の金属によりコーティングされた基質、ニトロセルロース、ナイロン、活性化石英、活性化ガラス、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、またはポリ(ジメチルシロキサン)のようなその他の重合体、ならびに核酸分子との共有結合性の結合を形成することができるニトレン、カルベン、およびケチル・ラジカルのような光反応性種を含有しているフォトポリマー(米国特許第5,405,766号および第5,986,076号参照)が含まれる。
【0108】
二官能性架橋試薬は、核酸分子を表面に付着させるのに有用であり得る。二官能性架橋試薬は、官能基、例えば、アミノ、グアニジノ、インドール、またはカルボキシルに特異的な基の特異性によって分類され得る。これらのうち、遊離アミノ基に差し向けられる試薬は、市販されており、合成が容易であり、かつ温和な反応条件で適用され得るため、頻用されている。例示的な分子架橋法は、米国特許第5,603,872号および第5,401,511号に開示されている。架橋試薬には、グルタルアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミドが含まれる。
【0109】
ある種の方法において、配列決定反応は、DNAポリメラーゼのようなポリメラーゼのプライマー分子との結合、およびプライマーの3'末端へのヌクレオチドの触媒された付加を含み得る。有用であるかもしれないポリメラーゼの非制限的な例には、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびRNA依存性RNAポリメラーゼが含まれる。「プルーフリーディング」活性、ならびにプライマーおよびプロモーター配列が必要であるかまたは必要でないかに関するこれらのポリメラーゼの差違は、本明細書に記述されており、当技術分野において既知である。RNAポリメラーゼが使用される場合、配列決定される鋳型分子は、二本鎖DNAであり得る。ミスマッチ・ヌクレオチドの取り込みによるエラーは、例えば、最初の鋳型の両方の鎖を配列決定することにより、または複数コピーの同一鎖を配列決定することにより、修正され得る。
【0110】
使用され得るポリメラーゼの非制限的な例には、サーマトガ・マリティマ(Thermatoga maritima)DNAポリメラーゼ、AmplitaqFS3 DNAポリメラーゼ、Taquenase3 DNAポリメラーゼ、ThermoSequenase3、Taq DNAポリメラーゼ、Qbeta3レプリカーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィルス(Thermus Thermophilus)DNAポリメラーゼ、RNA依存性RNAポリメラーゼ、およびSP6 RNAポリメラーゼが含まれる。
【0111】
Boehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis,TN)のPwo DNAポリメラーゼ; Bio-Rad Laboratories(Hercules,CA)のBstポリメラーゼ; Epicentre Technologies(Madison,WI)のIsoTherm3 DNAポリメラーゼ; Promega(Madison,WI)のモロニー・マウス白血病ウイルス逆転写酵素、Pfu DNAポリメラーゼ、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素、サーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl)DNAポリメラーゼ、およびサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ; Amersham Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ)のRAV2逆転写酵素、HIV-1逆転写酵素、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ大腸菌、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ+/-3'→3 5'エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノウ酵素、サーマス・ユビキタス(Thermus'ubiquitous')DNAポリメラーゼ、およびDNAポリメラーゼIを含む、多数のポリメラーゼが市販されている。しかしながら、ヌクレオチドの鋳型依存的な重合のための、当技術分野において既知の任意のポリメラーゼが、使用され得る(例えば、Goodman and Tippin,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1(2):101-9,2000;米国特許第6,090389号参照)。
【0112】
熟練した当業者であれば、検出ユニットによるヌクレオチドの分析の最適速度と一致するよう、ポリメラーゼ活性の速度が操作され得ることを了解するであろう。反応チャンバ内の温度、圧力、pH、塩濃度、二価陽イオン濃度、またはヌクレオチド濃度の調整を含む、ポリメラーゼ活性の速度の調整のための様々な方法が既知である。ポリメラーゼ活性の最適化の方法は、当業者に既知である。
【0113】
プライマーは、当技術分野において既知の任意の方法により入手され得る。一般に、プライマーは10〜20塩基長であるが、より長いプライマーも利用され得る。プライマーは、鋳型の固定化表面との付着部位に近いかもしれない、鋳型核酸分子の既知の部分に配列が正確に相補的であるよう設計され得る。例えば、ホスホラミダイト化学を利用した、自動核酸合成装置を使用した、配列のプライマーの合成のための方法が既知であり、そのような装置は、Applied Biosystems(Foster City,CA)のような標準的な供給元から入手され得る。
【0114】
その他の方法は、既知のプライマー結合部位の非存在下での核酸の配列決定を含む。そのような場合には、新生鎖の重合を開始させるために、ランダム六量体、または7、8、9、10、11、12、13、14、15塩基、またはそれ以上の長さのランダム・オリゴマーのようなランダム・プライマーを使用することが可能であるかもしれない。ハイブリダイズしていないプライマーは、合成反応を開始させる前に除去され得る。
【0115】
ハイブリダイズしていないプライマーの除去は、例えば、ストレプトアビジンのような結合剤でコーティングされた固定化表面を使用することにより達成され得る。ビオチンのような相補的結合剤が鋳型分子の5'末端に付着させられ、鋳型分子が固定化表面に固定化され得る。プライマーと鋳型との間のハイブリダイゼーションを起こした後、固定化表面に結合していないプライマー分子が除去され得る。鋳型鎖にハイブリダイズしたプライマーのみが、鋳型依存性のDNA合成のためのプライマーとして機能するであろう。別の態様において、多数のプライマー分子が固定化表面に付着させられてもよい。鋳型分子が添加され、相補的なプライマーと水素結合させられ得る。次いで、鋳型依存性ポリメラーゼが、新生鎖合成を開始させるよう作用することができる。
【0116】
光活性化可能な架橋剤のような、その他の型の架橋は、各鋳型鎖に一つのプライマーのみを選択的に保持するために使用され得る。上述のように、多数の架橋剤が当技術分野において既知であり、使用され得る。架橋剤は、プライマーと鋳型との間の水素結合に干渉する固定化表面による立体障害の可能性を回避するため、リンカー・アームを通して固定化表面に付着させられてもよい。
【0117】
ある種の方法は、検出ユニットによる測定を容易にするため、標識をヌクレオチドへ組み込むことを含み得る。ラマン標識は、以下に制限はされないが、合成分子、色素、フィコエリトリンのような天然に存在する顔料、C60、バッキーボール、およびカーボン・ナノチューブのような有機ナノストラクチャー、金または銀のナノ粒子またはナノ・プリズムのような金属ナノストラクチャー、ならびに量子ドットのようなナノスケール半導体を含む、検出可能なラマン・シグナルを生ずることができる任意の有機または無機の分子、原子、複合体、または構造であり得る。ラマン標識の多数の例は、下に開示される。熟練した当業者であれば、そのような例が制限的ではなく、ラマン分光法により検出され得る当技術分野において既知の任意の有機または無機の原子、分子、化合物、または構造が、ラマン標識に包含されることを了解するであろう。
【0118】
ラマン分光法のため使用され得る標識の非制限的な例には、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシル・ファースト・バイオレット(cresyl fast violet)、クレシル・ブルー・バイオレット(cresyl blue violet)、ブリリアント・クレシル・ブルー(brilliant cresyl blue)、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、およびアミノアクリジンが含まれる。当技術分野において既知であるように、多環式芳香族化合物は、一般に、ラマン標識として機能し得る。これらおよびその他のラマン標識は、商業的供給元(例えば、Molecular Probes,Eugene,OR)より入手され得る。
【0119】
有用であるかもしれないその他の標識には、シアニド、チオール、塩素、臭素、メチル、リン、および硫黄が含まれる。カーボン・ナノチューブも、ラマン標識として有用であるかもしれない。ラマン分光法における標識の使用は、既知である(例えば、米国特許第5,306,403号および第6,174,677号)。熟練した当業者であれば、ラマン標識が、異なる型のヌクレオチドと結合した時に、区別可能なラマン・スペクトルを生ずるべきであることを了解するであろう。
【0120】
標識は、ヌクレオチドに直接付着させられてもよいし、または様々なリンカー化合物を介して付着させられてもよい。または、ラマン標識に共有結合的に付着したヌクレオチド前駆物質が、標準的な商業的な供給元(例えば、Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN;Promega Corp.,Madison,WI;Ambion,Inc.,Austin,TX;Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)より入手可能である。ヌクレオチドのような他の分子と共有結合的に反応するよう設計された反応性基を含有しているラマン標識が、市販されている(例えば、Molecular Probes,Eugene,OR)。標識されたヌクレオチドを調製し、それらを核酸へ組み込む方法は、既知である(例えば、米国特許第4,962,037号;第5,405,747号;第6,136,543号;第6,210,896号参照)。ある種の局面において、ラマン標識は、ピリミジン・ヌクレオチドに付着させられる。
【0121】
本明細書で提供される装置は、チャンネルを含む。ある種の局面において、ヌクレオチドの濃度は、それらがチャンネルを流れる際に、ラマン分光法により測定される。ある種の局面において、チャンネルは、銀、金、白金、銅、またはアルミニウムのメッシュを含む。チャンネルは、例えば、微少液体チャンネル、マイクロチャンネル、マイクロキャピラリー、またはナノチャンネルである。さらに、ある種の例において、反応チャンバおよびチャンネルは、単一のチップへ組み込まれる。
【0122】
ある種の例において、装置は、さらに、チャンネル内に金属ナノ粒子を含む。本発明のある種の局面において、ナノ粒子はチャンネルを流れる。ある種の局面において、チャンネルの直径は、約5、10、20、25、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、および300マイクロメートルである。例えば、チャンネルの直径は、直径約100〜約200マイクロメートルである。その他の局面において、チャンネルは円形である。
【0123】
本明細書で提供される装置は、典型的には、反応チャンバを含む。反応チャンバは、水性環境中に固定化表面、核酸鋳型、プライマー、ポリメラーゼ、および/またはヌクレオチドを保持するよう設計され得る。反応チャンバは、例えば、ペルチエ素子または当技術分野において既知のその他の方法の取り込みにより、温度制御されるよう設計され得る。核酸重合において使用される低容量液体のための温度制御法は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第5,038,853号、第5,919,622号、第6,054,263号、および第6,180,372号参照)。
【0124】
反応チャンバ、および、例えば、分子ディスペンサ、検出ユニット、廃棄物ポート、ローディング・ポート、またはヌクレオチドの供給源との接続を提供するための関連する液体チャンネルは、コンピュータ・チップ製造またはマイクロキャピラリー・チップ製造の領域において既知であるようなバッチ加工法で製造され得る。反応チャンバおよび装置のその他の部品は、単一の集積チップとして製造され得る。そのようなチップは、フォトリソグラフィおよびエッチング、レーザー・アブレーション、射出成形、鋳造、分子線エピタキシー、ディップペン・ナノリソグラフィ、化学蒸着(CVD)加工、電子線もしくは収束イオン・ビーム技術、またはインプリンティング技術のような、当技術分野において既知の任意の方法によって製造され得る。非制限的な例には、プラスチックまたはガラスのような流動可能な光学的に透明な材料を用いた従来の成形;二酸化ケイ素のフォトリソグラフィおよびドライ・エッチング;二酸化ケイ素上にアルミニウム・マスクをパターン形成するためのポリメタクリル酸メチル・レジストを使用した電子線リソグラフィ、それに続く反応性イオン・エッチングが含まれる。微少液体チャンネルは、Andersonら("Fabrication of topologically complex three-dimensional microfluidic systems in PDMS by rapid prototyping",Anal.Chem.72:3158-3164,2000)に従い、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を成型することにより作成され得る。ナノ電子機械システムの製造の方法が、使用され得る(例えば、Craighead,Science 290:1532-36,2000参照)。微細加工されたチップは、Caliper Technologies Inc.(Mountain View,CA)およびACLARA BioSciences Inc.(Mountain View,CA)のような供給元より市販されている。
【0125】
シリコン、二酸化ケイ素、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、プラスチック、ガラス、石英等を含む、集積チップにおいて使用するための任意の既知の材料が、開示された装置において使用され得る。装置の一部または全部が、ガラス、シリコン、石英、またはその他の任意の光学的に透明な材料のように、ラマン分光法のために使用される励起および放射の周波数における電磁放射に対して透明であるよう選択され得る。反応チャンバ、微少液体チャンネル、ナノチャンネル、またはマイクロチャンネルのような、核酸および/またはヌクレオチドに曝され得る、液体が充填されたコンパートメントについて、そのような分子に曝される表面は、例えば、表面を疎水性表面から親水性表面へと改質するため、かつ/または表面への分子の吸着を減少させるため、コーティングにより修飾され得る。ガラス、シリコン、および/または石英のような一般的なチップ材料の表面修飾は既知である(例えば、米国特許第6,263,286号)。そのような修飾には、以下に制限はされないが、市販されているキャピラリー・コーティング(Supelco,Bellafonte,PA)、ポリエチレンオキシドもしくはアクリルアミドのような様々な官能基を有するシラン、または当技術分野において既知のその他の任意のコーティングによるコーティングが含まれ得る。
【0126】
検出されるヌクレオチドは、微少液体チャンネル、ナノチャンネル、またはマイクロチャンネルの下方へ移動させられ得る。マイクロチャンネルまたはナノチャンネルは、約3nm〜約1μmの直径を有し得る。チャンネルの直径は、励起レーザー・ビームよりサイズがわずかに小さくなるよう選択され得る。チャンネルは、マイクロキャピラリー(例えば、ACLARA BioSciences Inc.,Mountain View,CAより入手可能)または液体集積回路(例えば、Caliper Technologies Inc.,Mountain View,CAより入手可能)を含み得る。そのような微少液体プラットフォームは、わずかナノリットル容量の試料を必要とする。ヌクレオチドは、溶媒のバルク・フローにより、電気浸透により、または当技術分野において既知のその他の任意の技術により、微少液体チャンネルの下方へ移動し得る。
【0127】
または、マイクロキャピラリー電気泳動が、ヌクレオチドを輸送するために使用され得る。マイクロキャピラリー電気泳動は、一般に、特定の分離媒体が充填されていてもよいし、または充填されていなくてもよい、細いキャピラリーまたはチャンネルの使用を含む。負の電荷を有するヌクレオチドのような適切な電荷を有する分子種の電気泳動が、かけられた電場に応答して起こる。電気泳動は、マイクロキャピラリーに同時に添加される成分の混合物のサイズ分離のためにしばしば使用されるが、核酸分子から連続的に放出される類似サイズのヌクレオチドを輸送するためにも使用され得る。プリン・ヌクレオチドはピリミジン・ヌクレオチドより大きく、従って、より遅く泳動するため、ディファレンシャルな泳動がヌクレオチドの順序を混合するのを防止するために、様々なチャンネルの長さおよび対応する検出器の通過時間は、最小限に維持され得る。または、マイクロキャピラリーに充填される分離媒体が、プリン・ヌクレオチドおよびピリミジン・ヌクレオチドの泳動速度が類似するかまたは同一となるよう選択され得る。マイクロキャピラリー電気泳動の方法は、例えば、WoolleyおよびMathies(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11348-352,1994)により開示されている。
【0128】
マイクロキャピラリー電気泳動装置を含む微少液体装置の微細加工は、例えば、Jacobsenら(Anal.Biochem,209:278-283,1994);Effenhauserら(Anal.Chem.66:2949-2953,1994);Harrisonら(Science 261:895-897,1993)、および米国特許第5,904,824号に記述されている。典型的には、これらの方法は、シリカ、シリコン、またはその他の結晶性の基質もしくはチップにおけるミクロン・スケール・チャンネルのフォトリソグラフィック・エッチングを含み、開示された方法および装置において使用するため容易に適合化され得る。ナノチャンネルのような、より小さい直径のチャンネルは、直径を狭くするためのマイクロチャンネル内部のコーティング、またはナノリソグラフィー、収束電子線、収束イオン・ビーム、もしくは収束原子レーザー技術の使用のような既知の方法によって調製され得る。
【0129】
ナノチャンネルは、例えば、ハイスループット電子線リソグラフィ・システムを使用して作成され得る。電子線リソグラフィは、シリコンチップ上に5nmもの小さい形を描画するために使用され得る。シリコン表面にコーティングされたポリメタクリル酸メチルのような感受性レジストは、マスクの使用なしにパターン形成され得る。電子線アレイは、電子線の安定性を増加させ、低電流での操作を可能にするために、フィールド・エミッター・クラスター(field emitter cluster)をマイクロチャンネル増幅器(microchannel amplifier)と組み合わせることができる。SoftMask3コンピュータ制御システムが、シリコンまたはその他のチップにおけるナノスケールの形の電子線リソグラフィを制御するために使用され得る。
【0130】
または、ナノチャンネルは、収束原子レーザーを使用して作製され得る(例えば、Bloch et al.,"Optics with an atom laser beam",Phys.Rev.Lett.87:123-321,2001)。標準的なレーザーまたは収束電子線のような収束原子レーザーが、リソグラフィーのために使用され得る。そのような技術は、チップ上にミクロンスケールまたはナノスケールの構造を作製するために使用され得る。ディップペン・ナノリソグラフィーも、ナノチャンネルを形成させるために使用され得る(例えば、Ivanisevic et al.,"Dip-pen' Nanolithography on Semiconductor Surfaces",J.Am.Chem.Soc.,123:7887-7889,2001)。ディップペン・ナノリソグラフィーは、シリコン・チップのような表面に分子を沈着させるために原子間力顕微鏡検を使用する。15nmもの小さいサイズの形が、10nmの空間分解能で形成され得る。ナノスケール・チャンネルは、ディップペン・ナノリソグラフィーを通常のフォトリソグラフィー技術と組み合わせて使用することにより形成され得る。例えば、レジスト層におけるミクロンスケールの線が、標準的なフォトリソグラフィにより形成され得る。ディップペン・ナノリソグラフィーを使用して、レジストの端部に付加的なレジスト化合物を沈着させることにより、線の幅(および対応するエッチング後のチャンネルの直径)を狭くすることができる。より細い線のエッチングの後、ナノスケール・チャンネルが形成され得る。または、原子間力顕微鏡検が、ナノメートル・スケールの形を形成させるためフォトレジストを除去するために使用され得る。
【0131】
イオン・ビーム・リソグラフィも、チップ上にナノチャンネルを作出するために使用され得る(例えば、Siegel,"Ion Beam Lithography",VLSI Electronics,Microstructure Science,Vol.16,Einspruch and Watts eds.,Academic Press,New York,1987)。微細な収束イオン・ビームは、マスクを使用せずに、ナノチャンネルのような形をレジスト層に直接描画するために使用され得る。または、広いイオン・ビームが、100nmもの小さいスケールの形を形成させるため、マスクと組み合わせて使用され得る。例えば、フッ化水素酸による化学エッチングは、レジストにより保護されていない露出したシリコンを除去するために使用され得る。熟練した当業者であれば、上に開示された技術が制限的ではなく、当技術分野において既知の任意の方法によってナノチャンネルが形成され得ることを了解するであろう。
【0132】
非制限的な例において、Borofloatガラス・ウエハ(Precision Glass & Optics,Santa Ana,CA)を、濃縮HF(フッ化水素酸)の中で、短時間、プレエッチングし、清浄化した後、プラズマ増強化学蒸着(PECVD)システム(PEII-A,Technics West,San Jose,CA)におけるアモルファス・シリコン犠牲層の沈着を行うことができる。ウエハは、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を塗布され、フォトレジスト(Shipley 1818,Marlborough,MA)をスピンコーティングされ、ソフトベーキング(soft-baked)され得る。コンタクト・マスク・アライナー(contact mask aligner)(Quintel Corp.San Jose,CA)が、一つ以上のマスク設計を有するフォトレジスト層を露出させるために使用され、露出したフォトレジストが、マイクロポジット・デベロッパー(Microposit developer)濃縮液(Shipley)と水の混合物を使用して除去され得る。現像されたウエハがハードベーキング(hard-baked)され、露出したアモルファス・シリコンがPECVDリアクタにおいてCF4(四フッ化炭素)プラズマを使用して除去され得る。ウエハは、反応チャンバおよびチャンネルを作製するために濃縮HFにより化学エッチングされ得る。残りのフォトレジストがストリッピングされ、アモルファス・シリコンが除去され得る。
【0133】
ダイヤモンド・ドリル・ビット(Crystalite,Westerville,OH)により、エッチングされたウエハにアクセス孔を空けることができる。プログラム可能な真空炉(Centurion VPM,J.M.Ney,Yucaipa,CA)において、エッチングされ孔を空けられたプレートを、同じサイズの平らなウエハと熱で接着させることにより、完成したチップが調製され得る。または、チップは、2枚のエッチングされたプレートを相互に接着させることにより調製され得る。反応チャンバ・チップの加工のための別の例示的な方法は、米国特許第5,867,266号および第6,214,246号に開示されている。
【0134】
ある種の局面において、本明細書で提供される装置は、分子ディスペンサを含む。分子ディスペンサは、ヌクレオチドを反応チャンバへ放出するよう設計され得る。分子ディスペンサは、等しい量で各型のヌクレオチドを放出することができる。単一の分子ディスペンサが、4つのヌクレオチド全てを反応チャンバへ放出するために使用され得る。または、例えば、単一の型のヌクレオチドを各々放出する複数の分子ディスペンサを使用することにより、4つの型のヌクレオチドの放出の速度が独立に制御されてもよい。ある種の方法において、一度に単一の型のヌクレオチドがチャンバーへ放出され得る。または、4つの型全てのヌクレオチドが同時に反応チャンバに存在してもよい。
【0135】
分子ディスペンサは、ポンピング装置の形態をとり得る。使用され得るポンピング装置には、当技術分野において既知の多様な微細機械加工されたポンプが含まれる。例えば、圧電気スタックおよび二つの逆止め弁により動力供給される、膨張隔壁を有しているポンプは、米国特許第5,277,556号、第5,271,724号、および第5,171,132号に開示されている。熱空気力学的要素により動力供給されるポンプは、米国特許第5,126,022号に開示されている。連続した多数の膜を使用した圧電気蠕動ポンプ、または給与電圧により動力供給される蠕動ポンプは、米国特許第5,705,018号に開示されている。公開されたPCT出願WO94/05414は、ミクロン・スケール・チャンネルにおける液体の輸送のためのラム波ポンプの使用を開示している。熟練した当業者であれば、分子ディスペンサが、本明細書に開示されたポンプに制限されず、当技術分野において既知の極低容量の液体の測定された排出のための任意の設計を取り込み得ることを了解するであろう。
【0136】
分子ディスペンサは、電気流体力学的ポンプの形態をとり得る(例えば、Richter et al.,Sensors and Actuators 29:159-165 1991;米国特許第5,126,022号)。典型的には、そのようなポンプは、チャンネルまたは反応/ポンピング・チャンバの一つの表面を横切るように配置された一連の電極を利用する。電極を横切る電場の適用は、試料中の電荷を有する種の電気泳動的移動をもたらす。インジウム・スズ酸化物フィルムは、基質表面、例えば、ガラスまたはシリコン基質の上に電極をパターン形成するのに特に適しているかもしれない。これらの方法は、反応チャンバへヌクレオチドを誘引するためにも使用され得る。例えば、電極は、分子ディスペンサの表面にパターン形成され、電極の表面にヌクレオチドをカップリングするための適当な官能基により修飾され得る。分子ディスペンサの表面上の電極と対立する電極との間に電流を適用することにより、ヌクレオチドが反応チャンバへと電気泳動的に移動する。
【0137】
検出ユニットは、ラマン分光法によりヌクレオチドを検出しかつ/または定量するために設計され得る。ラマン分光法によるヌクレオチドの検出のための様々な方法は、当技術分野において既知である(例えば、米国特許第5,306,403号;第6,002,471号;第6,174,677号参照)。表面増強ラマン分光法(SERS)または表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)のバリエーションが開示されている。SERSおよびSERRSにおいて、銀、金、白金、銅、もしくはアルミニウムの表面のような粗化金属表面、またはナノストラクチャー化表面に吸着された分子では、ラマン検出の感度が106倍以上増強される。
【0138】
検出ユニットの非制限的な例は、米国特許第6,002,471号に開示されている。この態様において、励起ビームは、532nm波長のNd:YAGレーザーまたは365nm波長の周波数二倍化Ti:サファイア・レーザーのいずれかにより発生される。しかしながら、励起波長は、本発明の方法を制限することなく、大きく変動し得る。例えば、本明細書の実施例に例示されるように、ある種の局面において、励起ビームは約750〜約950nmの波長で送達される。パルス・レーザー・ビームまたは連続レーザー・ビームが使用され得る。励起ビームは、共焦点レンズおよび顕微鏡対物レンズを通り抜けて、反応チャンバーへ収束する。ヌクレオチドからのラマン放射光は、顕微鏡対物レンズおよび共焦点レンズにより収集され、スペクトルの解離のためモノクロメーターに連結される。共焦点レンズは、バックグラウンド・シグナルを低下させるための二色フィルター、バリア・フィルター、共焦点ピンホール、レンズ、およびミラーの組み合わせを含んでいる。標準的な全視野レンズが、共焦点レンズと同様に使用され得る。ラマン放射シグナルは、ラマン検出器により検出される。検出器は、シグナルの計数およびディジタル化のためコンピュータとインターフェース接続されたアバランシェ・フォトダイオードを含む。ある種の態様において、銀、金、白金、銅、またはアルミニウムを含むメッシュが、表面増強ラマンまたは表面増強ラマン共鳴による増加したシグナルを提供するために、反応チャンバーまたはチャンネルの中に含まれ得る。または、ラマン活性金属を含んでいるナノ粒子が含まれ得る。
【0139】
単光子計数モードで作動するガリウム砒素光電子増倍管を装備したSpex Model 1403二重格子分光光度計(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を含む、検出ユニットの別の態様は、例えば、米国特許第5,306,403号に開示されている。励起源は、SpectraPhysicsモデル166からの514.5nmライン・アルゴン-イオン・レーザーおよびクリプトン-イオン・レーザーの647.1nmライン(Innova 70,Coherent)である。
【0140】
別の励起源には、337nmの窒素レーザー(Laser Science Inc.)および325nmのヘリウム-カドミウム・レーザー(Liconox)(米国特許第6,174,677号)が含まれる。励起ビームは、バンドパス・フィルター(Corion)によりスペクトル的に精製され得、6×対物レンズ(Newport,Model L6X)を使用して反応チャンバーに収束させられ得る。対物レンズは、励起ビームおよび放射されたラマン・シグナルについて直角幾何学を生ずるため、ホログラフィック・ビーム・スプリッター(Kaiser Optical Systems,Inc.,Model HB 647-26N18)を使用することにより、ヌクレオチドを励起するためにも、ラマン・シグナルを収集するためにも使用され得る。ホログラフィック・ノッチ・フィルター(Kaiser Optical Systems,Inc.)は、レイリー散乱放射を低下させるために使用され得る。別のラマン検出器には、赤色増強型強化型(red-enhanced intensified)電荷結合素子(RE-ICCD)検出システムを装備したISA HR-320スペクトログラフ(Princeton Instruments)が含まれる。電荷注入素子、フォトダイオード・アレイ、またはフォトトランジスター・アレイのような、その他の型の検出器も使用され得る。
【0141】
以下に制限はされないが、通常のラマン散乱、共鳴ラマン散乱、表面増強ラマン散乱、表面増強共鳴ラマン散乱、コヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン(coherent anti-Stokes Raman)分光法(CARS)、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導利得(stimulated gain)ラマン分光法、ハイパーラマン散乱、モレキュラー・オプティカル・レーザー・イグザミナー(molecular optical lase examiner)(MOLE)またはラマン・マイクロプローブまたはラマン顕微鏡検または共焦点ラマン顕微分光法、三次元または走査型ラマン、ラマン飽和分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマン・デカップリング分光法、またはUV-ラマン顕微鏡検を含む、当技術分野において既知の任意の適当な型または配置のラマン分光法または関連技術が、ヌクレオチドの検出のために使用され得る。
【0142】
本明細書で提供される態様において、検出される特定のヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基によって、異なる数の分子が検出され得る。典型的には、ピリミジンよりプリンの方が、そしてヌクレオチドより塩基の方が、より少ない数の分子が検出され得る。例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基がアデニンを含む場合、10分子以下、5分子以下、または1分子のヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基が検出され得る。
【0143】
ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基がグアニンを含む例においては、例えば、約50〜約100分子、例えば、約60分子のグアニン塩基が検出される。ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基がシトシンを含む例においては、約1000〜10000分子、例えば、5000分子および7000分子が検出され得る。ヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基がチミンを含む例においては、約1000〜10000分子、より具体的には、例えば約5000〜約7000分子が検出され得る。
【0144】
ある種の態様において、本明細書に開示された方法を実施するために必要なプローブ、ヌクレオチド、ヌクレオシド、標的分子、酵素、ならびに/またはその他の分子および試薬を含むキットが提供される。
【0145】
実施例1
ヌクレオチドのラマン検出
方法および装置
非制限的な例において、ラマン検出ユニットの励起ビームは、近赤外線波長(750〜950nm)のチタン:サファイア・レーザー(CoherentによるMira)または785nmもしくは830nmのアルミニウム・ガリウム砒素ダイオード・レーザー(Process InstrumentsによるPI-ECLシリーズ)により発生された。パルス・レーザー・ビームまたは連続ビームが使用された。励起ビームは、二色ミラー(Kaiser Opticalによるホログラフィック・ノッチ・フィルターまたはChromaもしくはOmega Opticalによる二色干渉フィルター)から、収集されたビームを含む同一直線上の幾何学へと通された。透過ビームは、顕微鏡対物レンズ(Nikon LUシリーズ)を通り抜け、標的アナライト(ヌクレオチドまたはプリンもしくはピリミジン塩基)が位置しているラマン活性基質へと収束した。
【0146】
アナライトからのラマン散乱光は、同じ顕微鏡対物レンズにより収集され、ラマン検出器へと二色ミラーを通過した。ラマン検出器は、焦点レンズ、スペクトログラフ、およびアレイ検出器を含んでいた。焦点レンズは、スペクトログラフの入射スリットを通してラマン散乱光を収束させた。スペクトログラフ(Acton Research)は、その波長により光を分散させる格子を含んでいた。分散光は、アレイ検出器(Roperscientificによるback-illuminated deep-depletion CCDカメラ)へと画像化された。アレイ検出器は、データ転送および検出器機能の制御のためコンピュータに接続されたコントローラー回路に接続されていた。
【0147】
表面増強ラマン分光法(SERS)のため、ラマン活性基質は、金属ナノ粒子または金属コーティングされたナノストラクチャーからなっていた。5〜200nmの範囲のサイズの銀ナノ粒子は、LeeおよびMeisel(J.Phys.Chem.,86:3391,1982)の方法により作成された。または、試料は、顕微鏡対物レンズ下のアルミニウム基質に置かれた。下記の数字は、アルミニウム基質上の静止試料において収集された。検出された分子の数は、照射された試料の光学的な収集容量により決定された。一分子レベルまでの検出感度が証明された。
【0148】
100μmまたは200μmの微少液体チャンネルを使用したSERSによっても、単一のヌクレオチドが検出され得る。ヌクレオチドは、微少液体チャンネル(約5〜200μm幅)を通ってラマン活性基質へと送達され得る。微少液体チャンネルは、Andersonら("Fabrication of topologically complex three-dimensional microfluidic systems in PDMS by rapid prototyping",Anal.Chem.72:3158-3164,2000)に開示された技術を使用して、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を成型することにより作成され得る。
【0149】
SERSが銀ナノ粒子の存在下で実施される場合、ヌクレオチド、プリン、またはピリミジン・アナライトは、LiCl(90μM最終濃度)およびナノ粒子(0.25M最終濃度銀原子)と混合された。SERSデータは、室温アナライト溶液を使用して収集された。
【0150】
ヌクレオシド一リン酸、プリン塩基、およびピリミジン塩基を、上に開示された系を使用して、SERSにより分析した。表1は、様々な関心対象のアナライトについての本発明の検出限界を示す。
【0151】
(表1)ヌクレオシド一リン酸、プリン、およびピリミジンのSERS検出

【0152】
アデニン・ヌクレオチドについてのみ、条件を最適化した。LiCL(90μM最終濃度)が、アデニン・ヌクレオチドの最適なSERS検出を提供することが決定された。その他のヌクレオチドの検出は、NaCl、KCl、RbCl、またはCsClのような他のハロゲン化アルカリ金属塩の使用により容易になるかもしれない。特許請求の範囲に記載された方法は、使用される電解質溶液により制限されず、MgCl2、CaCl2、NaF、KBr、LiI等のようなその他の型の電解質溶液が有用であることが企図される。熟練した当業者であれば、強力なラマン・シグナルを示さない電解質溶液は、ヌクレオチドのSERS検出に対する最小の干渉を提供するであろうということを了解するであろう。結果は、上に開示されたラマン検出系および方法が、一分子のヌクレオチド塩基およびプリン塩基を検出し同定し得たことを証明している。
【0153】
実施例2
ヌクレオチド、プリン、およびピリミジンのラマン放射スペクトル
様々な関心対象のアナライトのラマン放射スペクトルが、示された修飾と共に実施例1のプロトコルを使用して入手された。図2は、表面増強の非存在下かつラマン標識なしでの、4つのヌクレオシド一リン酸の各々の100mM溶液のラマン放射スペクトルを示す。LiClは溶液に添加されなかった。10秒データ収集時間が使用された。励起は514nmで起こった。より低い濃度のヌクレオチドは、より長い収集時間、電解質の添加、および/または表面増強により検出され得る。以下の数字の各々について、785nmの励起波長が使用された。図2に示されるように、非増強ラマン・スペクトルは、4つの未標識ヌクレオシド一リン酸の各々について特徴的な放射ピークを示した。
【0154】
図3は、LiClおよび銀ナノ粒子の存在下での1nmグアニン溶液のSERSスペクトルを示す。グアニンは、Nucleic Acid Chemistry,Part 1,L.B.Townsend and R.S.Tipson(eds.),Wiley-Interscience,New York,1978に記述されたような酸処理により、dGMPから入手された。SERSスペクトルは、100msecデータ収集時間を使用して入手された。
【0155】
図4は、100nMシトシン溶液のSERSスペクトルを示す。データは1秒収集時間を使用して収集された。
【0156】
図5は、100nMチミン溶液のSERSスペクトルを示す。データは100msec収集時間を使用して収集された。
【0157】
図6は、100pMアデニン溶液のSERSスペクトルを示す。データは1秒間収集された。
【0158】
図7は、dATP(下方トレース)およびフルオレセイン標識dATP(上方トレース)の500nM溶液のSERSスペクトルを示す。dATP-フルオレセインは、Roche Applied Science(Indianapolis,IN)から購入された。数字は、フルオレセイン標識によるSERSシグナルの強力な増加を示している。データは、100msec間、収集された。
【0159】
図8は、0.9nMアデニン溶液のSERSを示す。検出容量は、推定60分子のアデニンを含有している100〜150フェムトリットルであった。データは、100msec間、収集された。
【0160】
実施例3
ヌクレオチドのSERS検出
銀ナノ粒子形成
SERS検出のために使用された銀ナノ粒子は、LeeおよびMeisel(1982)に従い作製された。18ミリグラムのAgNO3を、100mL(ミリリットル)の蒸留水に溶解させ、煮沸した。1%クエン酸ナトリウム溶液10mLを、10分間かけてAgN03溶液に滴下した。その溶液をさらに1時間煮沸した。得られた銀コロイド溶液を冷却し保管した。
【0161】
アデニンのSERS検出
ラマン検出系は、実施例1に開示されたようなものであった。1mLの銀コロイド溶液を、2mLの蒸留水で希釈した。希釈された銀コロイド溶液(160μL)(マイクロリットル)を、アルミ・トレー上で、10nM(ナノモーラー)アデニン溶液20μLおよびLiCl(0.5モーラー)40μLと混合した。LiClは、アデニンのためのラマン増強剤として作用した。試料中のアデニンの最終濃度は、推定60分子のアデニンを含有している約100〜150フェムトリットルの検出容量において、0.9nMであった。ラマン放射スペクトルを、100ミリ秒の収集時間により、785nm励起の励起源を使用して収集した。図8に示されるように、この手法は、60分子のアデニンの検出を証明し、約833nm〜877nmで強力な放射ピークが検出された。実施例1に記述されるように、開示された方法および装置を使用した一分子のアデニンの検出が示された。
【0162】
核酸配列決定
ヒト染色体DNAを、Sambrookら(1989)に従い精製する。BamHIによる消化の後、ゲノムDNA断片を、pBluescript(登録商標)IIファージミド・ベクター(Stratagene,Inc.,La Jolla,CA)のマルチプル・クローニング・サイトへ挿入し、大腸菌において複製させる。アンピシリン含有アガロース・プレートに播種した後、単一のコロニーを配列決定のため選択し培養する。ゲノムDNAインサートの一本鎖DNAコピーを、ヘルパー・ファージによる同時感染により救済する。プロテイナーゼK:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液における消化の後、DNAをフェノール抽出し、次いで、酢酸ナトリウム(pH6.5、約0.3M)および0.8倍容量の2-プロパノールの添加により沈殿させる。DNA含有ペレットを、トリス-EDTA緩衝液に再懸濁させ、使用するまで−20℃で保管する。アガロース・ゲル電気泳動は、精製されたDNAの単一のバンドを示す。
【0163】
ゲノムDNAインサートの隣に位置する、既知のpBluescript(登録商標)配列に相補的なM13フォワード・プライマーは、Midland Certified Reagent Company(Midland,TX)から購入される。プライマーを、オリゴヌクレオチドの5'末端に付着したビオチン部分を含有するよう共有結合的に修飾する。ビオチン基を、(CH26スペーサーを介してプライマーの5'リン酸に共有結合的に連結させる。ビオチン標識されたプライマーを、pBluescript(登録商標)ベクターから調製されたssDNA鋳型分子にハイブリダイズさせる。次いで、Dorreら(Bioimaging 5:139-152,1997)に従い、プライマー-鋳型複合体を、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに付着させる。適切なDNA希釈率で、単一のプライマー-鋳型複合体を単一のビーズに付着させる。単一のプライマー-鋳型複合体を含有しているビーズを、配列決定装置の反応チャンバへ挿入する。
【0164】
プライマー-鋳型を、修飾されたT7 DNAポリメラーゼ(United States Biochemical Corp.,Cleveland,OH)と共にインキュベートする。ポリメラーゼは、光トラッピング(Goodwin et al.,1996,Acc.Chem.Res.29:607-619)により、反応チャンバに閉じこめられる。反応混合物は未標識のデオキシアデノシン-5'-三リン酸(dATP)およびデオキシグアノシン-5'-三リン酸(dGTP)、ジゴキシゲニンで標識されたデオキシウリジン-5'-三リン酸(ジゴキシゲニン-dUTP)、およびローダミンで標識されたデオキシシチジン-5'-三リン酸(ローダミン-dCTP)を含有している。重合反応を37℃で進行させる。
【0165】
4つのヌクレオチド全ての連続流を、反応チャンバを通して送る。ヌクレオチド濃度を、SERSにより、反応チャンバの前後で測定する。反応チャンバを出るヌクレオチドの濃度の減少により、相補鎖へのヌクレオチドの取り込みを決定する。ヌクレオチドの時間依存的な取り込みを、鋳型鎖の配列を導出するために使用する。
【0166】
別の方法においては、一度に単一の型のヌクレオチドのみが反応チャンバに提供される。4つの各型のヌクレオチドが、反応チャンバに連続的に添加される。提供されるヌクレオチドの量は、反応チャンバ中の鋳型核酸の量に比例する。ヌクレオチドが鋳型鎖内の次の塩基に相補的である場合、反応チャンバを出るフロースルー・チャンネルにおいてヌクレオチド濃度の大きな枯渇が観察される。他の3つの型のヌクレオチドが添加されても、ヌクレオチド濃度の変化はほとんど観察されない。核酸配列を決定するため、鋳型鎖内の各塩基についてこの過程が繰り返される。
【0167】
実施例4
鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在の決定
この実施例は、図12A〜Dに例示されるような、鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定する方法を例示する。検出可能なコピー数の鋳型核酸分子60、

なる配列を有する一本鎖核酸分子を、反応チャンバにおいて反応混合物と接触させる。反応混合物は、配列5'AGACATA3'(配列番号:2)を有しているプライマー90、ポリメラーゼ95、および初期濃度の第一のヌクレオチド(dATP 50)を含む。鋳型核酸50は、反応チャンバの表面70に固定化される。反応混合物は、図12Aに示されるような、プライマーの鋳型核酸分子へのハイブリダイゼーション、および鋳型-プライマー複合体を含む反応後混合物の形成を可能にするためにインキュベートされる。dATP 50は標的位置65におけるヌクレオチドに相補的でないため、dATP 50は溶液中に残る。次いで、第一の反応混合物が収集され、表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させられ、SERSを使用して検出される(示されていない)。dATP 50が、相補鎖(即ち、新生鎖)へ取り込まれなかったため、反応後混合物におけるdATP 50(即ち、第一のヌクレオチド)のラマン・シグナルの強度の減少は観察されない。dATP 50のラマン・シグナルが減少しないため、標的位置にチミジン残基は存在しないとの結論が下され、鋳型-プライマー複合体は緩衝溶液で洗浄される。
【0168】
鋳型核酸分子は、任意で、残余dATPを除去するため、この時点で緩衝液により洗浄される。この洗浄工程のための緩衝液条件は、例えば、プライマーが鋳型核酸分子と結合したままであることを許容する。
【0169】
図12Cに示されるように、dATP 50シグナルの減少が観察されないため、次いで、第二の反応混合物が形成されるよう、第二のヌクレオチド(例えば、dTTP 51)が、ポリメラーゼ95および任意でさらなるプライマー90と共に導入される。十分な時間のインキュベーションの後、dTTPおよびポリメラーゼは鋳型に接触し、鋳型-プライマー複合体と伸長産物とを含む反応後混合物を形成する。即ち、第二のヌクレオチドが、鋳型核酸分子60の標的位置におけるヌクレオチドに相補的であるため、新生鎖の3'末端、ハイブリダイズしたプライマーの3'側に隣接する、標的位置65にハイブリダイズする位置に、チミジン残基が組み込まれる。次いで、第二の反応混合物が収集され表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させられSERSを使用して検出される(示されていない)。dTTP 51が、相補鎖(即ち、新生鎖)へ取り込まれたため、反応後混合物におけるdTTP 50(即ち、第二のヌクレオチド)のラマン・シグナルの強度の減少が観察される。dTTP 50のラマン・シグナルが減少するため、標的位置におけるヌクレオチド存在はアデノシン残基であるとの結論が下される。
【0170】
この時点で、任意で、全ての新生核酸分子にチミジンが取り込まれていることを保証するために、付加的なdTTP 51が導入される。さらに、第二の反応混合物に添加されたdTTP 51、および任意の付加的な工程において添加されたdTTP 51の量が既知であり、かつ反応チャンバに固定化された鋳型核酸分子の数が既知である場合には、鋳型核酸分子上の標的ヌクレオチドおよび3'隣接ヌクレオチドに、連続するA残基が見出されるか否かを決定するため、任意の付加的な工程における付加的なdTTPが、SERS基質に沈着させられ、SERSを使用して検出され得る。
【0171】
次いで、必要であれば、dATP、dTTP、さらにdCTPおよびdGTPを一度に一つずつ使用して、上記の方法を繰り返し、次のヌクレオチドにおけるヌクレオチド存在を同定するため、配列決定を継続することができる。この過程は、鋳型核酸分子のヌクレオチド配列全体が入手されるまで繰り返され得る。
【0172】
実施例5
dAMPのSERSおよびCARS分析
この実施例は、SECARSを使用したdAMPの光学的分析を例示する。Lee and Meisel(1982)に従い、上に開示されたようなSECARS検出のために使用される銀ナノ粒子を作製した。銀コロイド溶液を希釈し、dAMPおよびLiCIと混合し、90pM dAMP、24mM Ag、および90mM LiClの最終試料を得た。ラマン・スペクトルを100ミリ秒間収集した。ポンプおよびストークス・レーザーは、〜2ピコ秒のパルスであった。ポンプ・レーザーの平均出力は〜500mWであり、ストークス・レーザーの平均出力は〜300mWであった。ラマン発光スペクトルを、100ミリ秒の収集時間で、785nm励起の励起源を使用して収集した。
【0173】
図13に示されるように、この手法は、約737cm-1における強力なラマン・シフト・ピークにより、dAMPの検出を証明した。図14に示されるように、dAMPが添加されなかったことを除きdAMP試料と同一の対照試料で入手された結果は、観察されたラマン・シフト放射ピークが、dAMPから発生されたものであるとの結論を支持している。さらに、これらの条件の下で、SERSまたはCARSを単独で使用した場合には、90pM dAMPは検出され得なかった。
【0174】
上記の実施例に関連して本発明が説明されたが、修飾およびバリエーションが、本発明の本旨および範囲に包含されることが理解されるであろう。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】核酸合成中の溶液からのヌクレオチド17の取り込みをモニタリングすることにより核酸13が配列決定される、DNA配列決定のための例示的な装置10(一定の縮小比ではない)および方法を例示する。
【図2】10秒データ収集時間を使用した、100mM濃度における4つのデオキシヌクレオチド一リン酸(dNTP)全てのラマン・スペクトルを示す。異なる各型のヌクレオチドについて、特徴的なラマン放射ピークが示される。データは、表面増強またはヌクレオチド標識なしで収集された。
【図3】Nucleic Acid Chemistry,Part 1,L.B.Townsend and R.S.Tipson(Eds.),Wiley-Interscience,New York,1978による酸処理によりdGMPから入手された1nMグアニンのSERS検出を示す。
【図4】100nMシトシンのSERS検出を示す。
【図5】100nMチミンのSERS検出を示す。
【図6】100pMアデニンのSERS検出を示す。
【図7】フルオレセインで共有結合的に標識されたデオキシアデノシン三リン酸(dATP-フルオレセイン)(上方トレース)および未標識dATP(下方トレース)の500nM溶液の比較SERSスペクトルを示す。dATP-フルオレセインは、Roche Applied Science(Indianapolis,IN)より入手された。SERSシグナルの強力な増加が、フルオレセインで標識されたdATPにおいて検出された。
【図8】0.9nM(ナノモーラー)アデニン溶液のSERS検出を示す。検出容量は、およそ60分子のアデニンを含有している約100〜150フェムトリットルであると推測された。
【図9】図9AはdATP 50を使用した、固体基質70に固定化された鋳型核酸分子60の集団の標的位置のヌクレオチド存在の決定を例示する。dATPのSERSシグナルが検出されている、反応前混合物から検出されたSERSシグナルが、図9Bに示される。図9Cは、シグナルが検出されていない、反応後混合物からのSERSシグナルを示す。
【図10】多重配列決定のための微少液体チップの概略図である。
【図11】混合チャンバ180の別の設計の概略図である。
【図12】図12A〜Bは鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定するための本明細書に開示された方法の具体例を例示する。図12Aは、基質70に固定化された鋳型鎖60を示し、鋳型鎖60にハイブリダイズしたプライマー90を示す。プライマー結合部位の3'側に隣接するヌクレオチドが標的位置65である。図12Bにおいて、dATP 50およびポリメラーゼ95が核酸鋳型鎖60に添加される。図12Cにおいて、dTTP 51およびポリメラーゼ95が、プライマー90がハイブリダイズしている鋳型鎖60に添加される。図12Dは、鋳型核酸鎖60の標的位置65に付加されたチミジン(T)ヌクレオチドを示す。
【図13】(およそ6分子に相当する)90pM dAMPのSECARSスペクトルを示す。
【図14】銀/塩溶液対照のSECARSスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、ヌクレオチドまたはヌクレオシドを検出する方法:
a)ヌクレオチドまたはヌクレオシドのリボースまたはデオキシリボース部分からプリンまたはピリミジン塩基を分離する工程;
b)分離されたプリン塩基またはピリミジン塩基を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程;および
c)分離されたプリンまたはピリミジン塩基をSERSを使用して検出する工程。
【請求項2】
デオキシヌクレオチド三リン酸を検出する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プリンまたはピリミジン部分からプリンまたはピリミジン塩基を分離する前に、デオキシヌクレオチド三リン酸を核酸配列決定反応混合物の中に含める工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
プリンまたはピリミジン塩基が、SERSにより検出される前に、ラマン標識と会合させられる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ヌクレオチドまたはヌクレオシドがプリン塩基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
塩基が本質的にアデニンからなる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
塩基が本質的にグアニンからなる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
表面増強ラマン分光法が、表面増強コヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(SECARS)である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ヌクレオチドまたはヌクレオシドがピリミジン塩基を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ヌクレオチドまたはヌクレオシドがチミンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ヌクレオチドまたはヌクレオシドがウラシルを含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
ヌクレオチドまたはヌクレオシドがシトシンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
標的分子が銀ナノ粒子に沈着させられる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
標的分子がハロゲン化アルカリ金属塩と接触させられる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ハロゲン化アルカリ金属塩が塩化リチウムである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
以下の工程を含む、プリン塩基またはピリミジン塩基を含む標的分子を検出する方法:
a)標的分子を単離する工程;
b)標的分子を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程;
c)照射された標的分子からのラマン散乱を、表面増強コヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(SECARS)を使用して検出し、それにより、標的分子を検出する工程。
【請求項17】
標的分子が生物学的試料から単離される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
標的分子がヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
標的分子が本質的にピリミジン塩基からなる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
標的分子が本質的にチミンからなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
塩基が本質的にウラシルからなる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
塩基が本質的にシチジンからなる、請求項19記載の方法。
【請求項23】
標的分子がヌクレオチド三リン酸である、請求項16記載の方法。
【請求項24】
以下の工程を含む、鋳型核酸分子内の連続標的位置における同一ヌクレオチドを検出する方法:
a)反応後混合物が形成されるよう、既知のコピー数の鋳型核酸分子を、プライマー、ポリメラーゼ、および既知の初期濃度の第一のヌクレオチドを含む反応混合物と接触させる工程(プライマーまたは鋳型核酸は反応チャンバの表面に固定化されており、プライマーの3'末端は連続標的位置の5'ヌクレオチドの上流で鋳型核酸分子と結合する);
b)反応後混合物を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程;
c)第一のヌクレオチドをSERSを使用して検出する工程;ならびに
d)複数個の第一のヌクレオチドが連続標的位置に付加されたか否かを決定する工程。
【請求項25】
鋳型核酸分子の既知のコピー数が、反応混合物中の第一のヌクレオチド分子の既知の数とほぼ同じである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
鋳型核酸分子の既知のコピー数が、反応混合物中の第一のヌクレオチド分子の既知の数の約半分である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
第一のヌクレオチドを検出した後、付加的な第一のヌクレオチドを反応混合物に添加する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
ヌクレオチドから塩基を切断する工程、および塩基をSERSを使用して検出する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項29】
SERS検出が表面増強コヒーレント・アンチ・ストークス・ラマン分光法(SECARS)である、請求項24記載の方法。
【請求項30】
異なるヌクレオチドを用いて工程a〜dを繰り返すことをさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
ヌクレオチドが、SERSにより検出される前に、ラマン標識に付着させられる、請求項24記載の方法。
【請求項32】
内部対照が反応混合物に含まれ、SERSを使用して検出される、請求項24記載の方法。
【請求項33】
複数個のヌクレオチドが連続標的位置に付加されたか否かを決定するために、内部対照およびヌクレオチドのSERSシグナルが比較される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
以下の工程を含む、鋳型核酸分子の標的位置におけるヌクレオチド存在を決定する方法:
a)反応チャンバにおいて、検出可能な数の鋳型核酸を、プライマー、ポリメラーゼ、および初期濃度の第一のヌクレオチド三リン酸を含む反応混合物と接触させる工程(プライマーまたは鋳型核酸は、反応チャンバの表面に固定化されている);
b)プライマーが鋳型核酸に結合し、反応後混合物が形成されるよう、反応混合物をインキュベートする工程;
c)反応後混合物またはその成分を表面増強ラマン分光法(SERS)基質に沈着させる工程;ならびに
d)第一のヌクレオチドからのラマン・シグナルをSERSを使用して検出する工程(反応後混合物における第一のヌクレオチドのラマン・シグナルの強度の減少は、伸長反応産物を同定し、それにより標的位置におけるヌクレオチド存在を同定する)。
【請求項35】
ヌクレオチド存在が同定されるまで、異なるヌクレオチドを用いて工程a〜dを繰り返す工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
任意で工程a〜dを繰り返す前に基質を洗浄する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
インキュベーション時間が約1秒〜10分である、請求項34記載の方法。
【請求項38】
反応チャンバの少なくとも一つの寸法が100nm未満である、請求項34記載の方法。
【請求項39】
鋳型核酸分子と接触する前に、第一のヌクレオチドに対して反応前SERS分析が実施される、請求項34記載の方法。
【請求項40】
反応前混合物と比較された反応後混合物における第一のヌクレオチドのSERSシグナルの強度の減少が、伸長反応産物を同定する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
第一のヌクレオチドおよび第二のヌクレオチドとしてdATPおよびdGTPを一度に使用して、標的ヌクレオチド位置について二回分の方法が実施される、請求項34記載の方法。
【請求項42】
鋳型核酸分子の相補鎖が第二の反応チャンバに固定化されており、再び第一のヌクレオチドおよび第二のヌクレオチドとしてdATPおよびdGTPを一度に使用して、さらに二回分の方法が実施される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
内部対照が反応混合物に含まれ、SERSを使用して検出される、請求項34記載の方法。
【請求項44】
標的位置におけるヌクレオチド存在を同定するため、内部対照およびヌクレオチドのSERSシグナルが比較される、請求項43記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2007−520215(P2007−520215A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547472(P2006−547472)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043633
【国際公開番号】WO2005/066369
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】