説明

分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法および酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法

【課題】 指触乾燥性、現像性、硬化塗膜の柔軟性に優れる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製法を提供すること。
【解決手段】 芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)及び/又は前記(A1)、(A2)以外の芳香族二官能エポキシ樹脂(B)、及びリン系触媒(C)を含有する混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて、水酸基、アクリロイル基及びエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)を含有する反応混合物を得る第一工程と、前記反応混合物に不飽和モノカルボン酸を加え、前記反応混合物中のエポキシ基と前記不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基とを反応させる第二工程とを含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製膜時の指触乾燥性と、現像性と、硬化塗膜の柔軟性に優れ、特に、塗料用、インキ用、接着剤用として好適な熱硬化とエネルギー線硬化が可能な酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法と、この製造に用いる分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、熱硬化性樹脂あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂として塗料、接着剤、インキ、電子基板、封止材料等多方面に利用されている。例えば、電子基板の一例である多層プリント配線基板において層間絶縁層と導体回路層の密着性を改善する目的で用いるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂類の場合、樹脂成分として、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に酸無水物を反応させた酸ペンダント型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とエポキシ樹脂とを必須成分とした樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この樹脂組成物を用いた硬化物は耐熱性は改善されるものの、製膜時の指触乾燥性と、現像性と、硬化塗膜の柔軟性が劣るものであった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−094261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れる塗料、接着剤等を得ることができる分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法と、製膜時の指触乾燥性と、現像性と、硬化塗膜の柔軟性に優れるレジストインキ等を得ることができる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の知見(1)〜(6)を得た。
(1)芳香族二官能エポキシ樹脂とアクリル酸とを反応させる芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(芳香族二官能エポキシアクリレート樹脂)の製造に際して、必要により有機溶剤の存在下で、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がアクリル酸中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させ、反応系内のアクリル酸を消費させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレートと、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂を含有する反応系とすることができる。さらに、この反応系をリン系触媒の存在下で維持し続けると、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート中の水酸基(芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基とアクリル酸中のカルボキシル基の反応により生成した水酸基)がアクリロイル基の炭素−炭素二重結合に付加する反応が繰り返し進行して高分子量化し、水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する新規な分岐ポリエーテル樹脂(X)が生成する。その結果、分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する樹脂組成物〔反応混合物(I)〕が得られる。
【0006】
(2)前記反応混合物(I)中のエポキシ基含有樹脂成分〔分岐ポリエーテル樹脂(X)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂〕中のエポキシ基に不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基を反応させることにより、水酸基と不飽和基を有する新規な分岐ポリエーテル樹脂(Y)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)を容易に製造することができる。得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は安定性、活性エネルギー線硬化性、製膜時の指触硬化性および硬化塗膜の柔軟性に優れる。
【0007】
(3)前記分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)とポリカルボン酸無水物とを混合して、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の水酸基〔分岐ポリエーテル樹脂(Y)および芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステル中の水酸基〕とポリカルボン酸無水物中の無水酸基とを反応させることにより、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)と酸ペンダント型芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を容易に製造することができる。得られた酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、希アルカリ水溶液で現像可能で、熱硬化性およびエネルギー線硬化性を有し、製膜時の指触乾燥性と現像性と硬化塗膜の柔軟性にも優れる。
【0008】
(4)前記(1)に記載のリン系触媒の存在下における芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート中の水酸基のアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合への付加反応は、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がアクリル酸中のカルボキシル基に対して過剰でない場合や、反応系内に芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂等のエポキシ基含有芳香族化合物が存在しない場合や、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いた場合などでは進行しにくい。
【0009】
(5)前記反応混合物(I)および分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)を用いる酸ペンダント型ポリエーテル樹脂組成物(III)の製造方法は自由度が高い、例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂の分子量、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基とアクリル酸中のカルボキシル基のモル比、リン系触媒の使用量、反応温度、反応時間等を変更することにより、得られる分岐ポリエーテル樹脂(X)や分岐ポリエーテル樹脂(Y)の分子量、水酸基、不飽和基およびエポキシ基の導入量、導入密度、導入比率等を広範囲に調整することができる。
【0010】
(6)前記(1)に記載の芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート中の水酸基がアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合に付加する反応による反応混合物(I)の製造は、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレートと、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂を含有し、かつ、リン系触媒が存在下する反応系であれば進行する。このため、反応混合物(I)の製造は、前記(1)のように芳香族二官能エポキシ樹脂とアクリル酸の反応から開始させて連続で製造する必要はなく、例えば、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(ただし、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または芳香族二官能エポキシ樹脂を含有していてもよい。)と、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレートおよび/または未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂と、リン系触媒を用いても行うことができる(ただし、この反応の際、反応系は、さらに芳香族モノエポキシ化合物のモノアクリレートおよび/または芳香族モノエポキシ化合物を含有していてもよい。)。
【0011】
本発明は、このような知見に基づくものである。
即ち、本発明は、(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)
および/または
(1−2−2)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)、
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および
(1−B−3)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物を得る第一工程と、
前記反応混合物に不飽和モノカルボン酸を加え、前記反応混合物中のエポキシ基と前記不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基とを反応させる第二工程とを含有することを特徴とする分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0012】
さらに本発明は、前記した分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物とポリカルボン酸無水物とを混合し、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物中の水酸基と、ポリカルボン酸無水物中の無水酸基とを反応させることを特徴とする酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れる塗料、接着剤等を得ることができる分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法を提供できる。また、製膜時の指触乾燥性と、現像性と、硬化塗膜の柔軟性に優れるレジストインキ等を得ることができる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法も提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法が含有する第一工程は、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)
および/または
(1−2−2)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)、
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および
(1−B−3)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物〔以下、反応混合物(I)と言う。〕を得る工程である。
【0015】
前記反応混合物(I)中の水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)は、

芳香族二官能エポキシ樹脂ジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて得られる分岐状のポリエーテル樹脂であり、芳香族二官能ジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族エポキシ化合物(B)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分は、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と、リン系触媒(C)を含有する混合物内(反応系内)での分岐ポリエーテル樹脂(X)の合成反応を行なった後の未反応樹脂成分である。
【0016】
前記第一工程で用いる前記芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)は、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中の2個のエポキシ基がアクリル酸(a)でアクリル化されているものである。ここで用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(b)としては、例えば、
テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性の芳香族二官能エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂;芳香族二価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;キシレノールから誘導された二官能エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂をジシクロペンタジエンで変性したエポキシ樹脂;これら芳香族二官能エポキシ樹脂をジカルボン酸類で変性したエステル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
前記エステル変性エポキシ樹脂としては、芳香族二官能エポキシ樹脂中のエポキシ基がジカルボン酸類中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で変性して得られるものが挙げられる。ここで用いるジカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0018】
前記ジカルボン酸類は1種または2種以上を用いることが可能である。また、一部に安息香酸の様な芳香族モノカルボン酸やプロピオン酸、ステアリリル酸等の脂肪族モノカルボン酸も使用することが可能である。芳香族二官能エポキシ樹脂をジカルボン酸類で変性する場合は、エポキシ基に対して少ないモル量のカルボン酸を反応させ、分子中にエポキシ基を残存させることが必要である。
【0019】
芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)の調製に用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族エポキシ化合物(B)としては、例えば、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中の2個のエポキシ基のうち1個のエポキシ基がアクリル酸でアクリル化されている芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)の単独、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)の単独、または、これらの混合物が挙げられる。ここで用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(b)としては、前記芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)の調製に用いるものと同じものを使用しても良いし、異なるものを使用しても良い。また、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)の調製に用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0021】
第一工程において反応混合物(I)を得るには、例えば、それぞれ別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と、リン系触媒(C)とを含有する混合物中で、必要により有機溶剤または反応性希釈剤の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させる、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させれば良い。反応させる時の温度は通常100〜170℃、好ましくは100〜150℃である。反応させる時間は通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間である。なお、この際には、別途製造した芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)が芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有してなる混合物であってもよく、またゲル化を生じない範囲であれば、必要に応じて3官能以上の芳香族多官能エポキシ樹脂のアクリレートを併用してもよい。さらに、この際、芳香族モノエポキシ化合物のモノアクリレートおよび/または芳香族モノエポキシ化合物を併用してもよい。
【0022】
前記したように、前記反応混合物(I)を得るには芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と、リン系触媒(C)を含有する混合物を用いるが、これら(A2)と(A1)および/または(B)として、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有する反応系とした(以下、この工程を「工程1」と略記することがある。)ものを用いると、以後の反応混合物(I)の製造を続いて実施できることから好ましい。
【0023】
この工程1では、なかでも容易に実施できることから、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)を含有する反応系〔ただし、未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有していてもよい。〕、すなわち、前記(A2)と(A1)からなる反応系、または前記(A2)と(A1)と(B)からなる反応系とすることが好ましい。
【0024】
前記工程1により得られた反応系を用いて、前記反応混合物(I)を製造するには、さらにこの反応系内の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを、リン系触媒(C)の存在下で反応させる。そして、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)及び芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)を高分子量化してなる、水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族二官能エポキシ樹脂(B)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する反応混合物とする(以下、この工程を「工程2」と略記することがある。)。
【0025】
前記工程1により得られた反応系にリン系触媒(C)を存在させ、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と、リン系触媒(C)と含有する混合物とするには、例えば、以下の方法を好ましい例示としてあげる事ができる。
【0026】
方法1:前記工程1の終了後にリン系触媒(C)を添加する。具体的には、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)
および/または
(1−2−2)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)
を含有する反応系とし、続いて該反応系にリン系触媒(C)を添加することにより混合物を得る。
【0027】
方法2:前記工程1の反応に際してリン系触媒(C)を添加する。具体的には、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、リン系触媒(C)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させることにより混合物を得る。
【0028】
本発明においては、第一工程で用いる混合物を得るには前記方法2がより好ましい。
【0029】
尚、本発明で用いる芳香族二官能エポキシ樹脂(B)は前記(A1)および(A2)以外のエポキシ樹脂である。前記工程1では、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させるので、アクリル酸(a)と反応せずに残った芳香族二官能エポキシ樹脂(b)が存在する。この残存する芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)との反応物である芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)や芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)と異なる。従って、残存する芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は(A1)および(A2)以外の芳香族二官能エポキシ樹脂(B)となる。
【0030】
本発明で用いるリン系触媒(C)としては、例えば、ホスフィン類、ホスホニウム塩類等が挙げられる。中でも、ホスフィン類が最も好ましい。
【0031】
前記ホスフィン類としては、トリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリアルキルフェニルホスフィン等が挙げられ、なかでも反応制御が容易なことからトリフェニルホスフィンが特に好ましい。
【0032】
リン系触媒(C)の使用量としては、触媒量が多いほど混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基との反応が進行しやすいが、ゲル化しやすくなることおよび組成物の安定性が悪化することを考慮すると、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)の合計重量に対して10〜30,000ppmの範囲が好ましい。
【0033】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)や芳香族二官能エポキシ樹脂(B)としては、なかでも硬化性に優れる樹脂組成物が得られることから、エポキシ当量が135〜2,000g/当量であるものが好ましく、エポキシ当量が135〜500g/当量であるものがより好ましい。また、硬化物の機械物性に優れる樹脂組成物が得られることから、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂または1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が最も好ましい。
【0034】
なお、前記工程1および工程2により反応混合物(I)を製造する場合、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)として芳香族二官能エポキシ樹脂をジカルボン酸類で変性したエステル変性芳香族二官能エポキシ樹脂を用いる代わりに、前記工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(b)およびアクリル酸(a)に変性用のジカルボン酸類を併用することにより芳香族二官能エポキシ樹脂(b)のジカルボン酸類による変性を行ってもよい。
【0035】
前記工程1において、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰である範囲としては、特に限定されないが、なかでも前記工程2において芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基の反応、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基の反応が円滑に進行することから、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基とアクリル酸(a)中のカルボキシル基の当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)〕が1.1〜5.5となる範囲であることが好ましい。また、得られる分岐型ポリエーテル樹脂の分子量調整が容易になることから、前記当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)〕は、なかでも1.25〜3.0となる範囲であることがより好ましい。
【0036】
なお、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)の反応から始まる反応は、例えば下記の図のような反応スキームで進行すると考えられる。
【0037】
【化1】

〔式中、Arは芳香族二官能エポキシ樹脂(b)から1つのグリシジルエーテル基を除いた残基、Arはそれぞれ独立に芳香族二官能エポキシ樹脂(b)から1つのグリシジルエーテル基を除いた残基または芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)から1つのグリシジルエーテル基を除いた残基であり、またRはそれぞれ独立に下記構造式(1)または(2)で表される2種の連結基のいずれかである。〕
【0038】
【化2】

【0039】
前記工程1の方法1において芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)との反応には必要に応じて触媒を使用しても良い。使用される触媒としては塩基性触媒が好ましく、これらの中では非ハロゲン系触媒またはハロゲン系触媒を使用することができる。
【0040】
前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、ジエタノールアミン等の3級アミン類;テトラメチルアンモニュウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニュウムハイドロオキサイド等の4級アンモニュウムヒドロキシド類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジエチルアミン塩酸塩、ジアザビスシクロウンデセン等の窒素化合物類;トリフェニルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;テトラ−n−ブチルホスホニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルホスホニウムハイドロオキサイド類;ナフテン酸クロムなどの金属塩類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類等のハロゲン系触媒;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機触媒が挙げられる。
【0041】
これらの触媒としては、非ハロゲン系触媒が好ましく、さらに3級アミン類、4級アンモニュウム塩類等の窒素化合物類;ホスフィン類、ホスホニウム塩類等のリン系触媒等が好ましい。これらのなかでも、第一工程で必須の触媒として使用できることから、ホスフィン類、ホスホニウム塩類等のリン系触媒がより好ましく、ホスフィン類が最も好ましい。
【0042】
前記ホスフィン類としては、トリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリアルキルフェニルホスフィン等が挙げられ、なかでも反応制御が容易なことからトリフェニルホスフィンが特に好ましい。
【0043】
前記触媒の使用量としては、触媒量が多いほど前記工程1および2での反応が進行しやすいが、ゲル化しやすくなることおよび組成物の安定性が悪化することを考慮すると、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)の合計重量に対して10〜30,000ppmの範囲が好ましい。また、リン系触媒であれば工程1で使用した触媒をそのまま工程2で使用してもよく、さらに工程2で追加あるいは異なるリン系触媒を添加しても良いし、反応途中で追加しても良い。
【0044】
前記工程1では、通常、攪拌を行いながら温度70〜170℃、好ましくは100〜150℃で反応させる。このとき重合禁止剤や酸化防止剤を使用してもよく、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルハイドロキノン、2−6−ジターシャリブチル−4−メトキシフェノール、銅塩類、フェノチアジン等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸エステル類、亜リン酸ジエステル類等が挙げられる。
【0045】
前記工程1では芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)との反応中において水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合との反応はほとんど進行せず、アクリル酸(a)中のカルボキシル基が芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基との反応で消費された工程1の終了の時点で水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合との反応によりエーテル結合が形成されて高分子量化が進行するようになり、前記工程2が開始される。
【0046】
前記工程2では、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と、リン系触媒(C)を含有する混合物中で、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合が反応して、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合が反応して、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)が高分子量化された、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)が高分子量化された新規な水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)となる。そして、この反応系はこの分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族二官能エポキシ樹脂(B)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分を含有する反応混合物(I)となる。
【0047】
ところで、前記したとおり、工程1で用いる混合物としては、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)を含有する混合物〔ただし、未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有していてもよい。〕が好ましい。すなわち、前記(A2)と(A1)を含有する混合物、または前記(A2)と(A1)と(B)を含有する混合物が好ましい。これらの混合物を用いてそれぞれ工程2を行うことにより、下記の反応混合物が得られる。
【0048】
混合物として(A2)と(A1)を含有する混合物を用いたときには、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジアクリレート(A2)および
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノアクリレート(A1)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分を含有する反応混合物が得られる。
【0049】
混合物として(A2)と(A1)と(B)を含有する混合物を用いたときには、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および
(1−B−3)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物が得られる。
【0050】
尚、工程2において水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合の反応は、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)や芳香族二官能エポキシ樹脂(B)等のエポキシ基含有芳香族化合物が存在しないと起こらない。これは、エポキシ基含有芳香族化合物が工程2における水酸基とアクリロイル基の有する炭素−炭素二重結合の反応の触媒の一種として働いているからだと本発明者らは考えている。
【0051】
次いで、第二工程へ進む。第2工程は、前記第一工程で得られた反応混合物(I)と不飽和モノカルボン酸とを混合し、前記反応混合物中のエポキシ基と前記不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基とを反応させる工程である。前記反応混合物(I)中のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基を反応させることにより、エポキシ基の大部分または全部が消費されて、水酸基とアクリロイル基含有不飽和モノカルボン酸エステル構造を有する分岐ポリエーテル樹脂(Y)となり、反応系はこの分岐ポリエーテル樹脂(Y)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)を得ることができる(以下、この工程を「工程3」と略記することがある。)。
【0052】
反応混合物(I)は、水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)と、芳香族二官能ジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族エポキシ化合物(B)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分を含有している為、不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基が実際に反応するのは、分岐ポリエーテル樹脂(X)中のエポキシ基と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中のエポキシ基と芳香族エポキシ化合物(B)中のエポキシ基である。
【0053】
そして前記工程3で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、分岐ポリエーテル樹脂(X)と不飽和モノカルボン酸の反応物である水酸基とアクリロイル基含有不飽和モノカルボン酸エステル構造を有する分岐ポリエーテル樹脂(Y)ならびに、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)と不飽和モノカルボン酸の反応物である芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステル、芳香族二官能エポキシ樹脂(B)と不飽和モノカルボン酸の反応物である芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルおよび芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)からなる群から選ばれる1種以上の芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有するものとなる。ここで、不飽和モノカルボン酸が(メタ)アクリル酸の場合は、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する分岐ポリエーテル樹脂(Y1)と芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートを含有するものとなる。
【0054】
第二工程(前記工程3)で用いる不飽和モノカルボン酸としては、例えば、重合性不飽和基とカルボキシル基をそれぞれ1個有する化合物等が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、モノ(2−エチルヘキシル)マレート、ソルビン酸等を通常用いるが、さらにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロへキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の様な水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とジカルボン酸無水物との反応による得られる不飽和ハーフエステル化物、重合性不飽和基と1個のカルボキシル基を有する化合物にε−カプロラクトンを反応させたラクトン変性不飽和モノカルボン酸、アクリル酸のダイマー等であってもよい。これらの中でも、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましい。
【0055】
また、第二工程(前記工程3)においては、前記反応混合物(I)と不飽和モノカルボン酸を、前記反応混合物(I)中のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基の当量比(エポキシ基/カルボキシル基)が0.9/1〜1/0.9となる範囲で反応させることが経時安定性、硬化性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)が得られることから好ましい。さらに、前記工程3においては、活性エネルギー線硬化性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)が得られることから、不飽和モノカルボン酸としてはアクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましい。
【0056】
前記第二工程(工程3)において、反応温度は通常80〜160℃であるが、なかでも合成時の安定性が良好なことから100〜140℃であることが好ましい。また、工程3の反応時間は、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間である。この時、反応触媒として、前記した触媒を追加添加しても良い。
【0057】
更に、前記第一工程において、混合物として、メタクリロイル基を含有する混合物を用いると耐熱性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物を製造することができるので好ましい。
【0058】
メタクリロイル基を含有する混合物を用いて反応混合物(I′)を得るには、例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)と、リン系触媒(C)を含有する混合物を用いるが、これら(A2′)と(A1′)および/または(B)として、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)及びメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有する反応系とした(以下、この工程を「工程1′」と略記することがある。)ものを用いると、以後の反応混合物(I′)の製造を続いて実施できることから好ましい。ここで、芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)は前記(A2′)及び(A1′)以外の芳香族二官能エポキシ樹脂である。尚、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの総称を意味する。
【0059】
この工程1′では、なかでも容易に実施できることから、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)を含有する反応系〔ただし、未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)を含有していてもよい。〕、すなわち、前記(A2′)と(A1′)からなる反応系、または前記(A2′)と(A1′)と(B′)からなる反応系とすることが好ましい。
【0060】
前記工程1′により得られた反応系を用いて、前記反応混合物(I′)を製造するには、さらにこの反応系内の芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)
中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)中の水酸基とアクリロイル基とを、リン系触媒(C)の存在下で反応させて、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)を高分子量化してなる、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)を高分子量化してなる、水酸基とアクリロイル基とエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)および芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とを含有する反応混合物とすればよい(以下、この工程を「工程2′」と略記することがある。)。
【0061】
前記工程1′により得られた反応系にリン系触媒(C)を存在させ、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)と、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)と、リン系触媒(C)と含有する混合物とするには、例えば、以下の方法を好ましい例示としてあげる事ができる。
【0062】
方法3:前記工程1′の終了後にリン系触媒(C)を添加する。具体的には、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)
および/または
(1−2−2)前記(A1′)および(A2′)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)
を含有する反応系とし、続いて該反応系にリン系触媒(C)を添加することにより得る。
【0063】
方法4:前記工程1′の反応に際してリン系触媒(C)を添加する。具体的には、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させることにより得る。
【0064】
本発明においては、第一工程で用いる混合物を得るには前記方法4がより好ましい。
【0065】
尚、前記芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)は前記(A1′)および(A2′)以外のエポキシ樹脂である。前記工程1では、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させるので、アクリル酸(a)及びメタクリル酸(a′)と反応せずに残った芳香族二官能エポキシ樹脂(b)が存在する。この残存する芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)及びメタクリル酸(a′)との反応物である芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2′)や芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1′)と異なる。従って、残存する芳香族二官能エポキシ樹脂(b)は(A1′)および(A2′)以外の芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)となる。
【0066】
前記工程1′において、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)及びメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰である範囲としては、特に限定されないが、なかでも前記工程2′において芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)中の水酸基とアクリロイル基の反応が円滑に進行することから、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基と、アクリル酸(a)及びメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基の当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)〕が1.1〜5.5となる範囲であることが好ましい。また、得られる分岐型ポリエーテル樹脂の分子量調整が容易になることから、前記当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)〕は、なかでも1.25〜3.0となる範囲であることがより好ましい。
【0067】
ところで、前記したとおり、工程1′で用いる混合物としては、芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)を含有する混合物〔ただし、未反応の芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)を含有していてもよい。〕が好ましい。すなわち、前記(A2′)と(A1′)からなる混合物、または前記(A2′)と(A1′)と(B′)からなる混合物が好ましい。これらの混合物を用いてそれぞれ工程2を行うことにより、下記の反応混合物が得られる。
【0068】
混合物として(A2′)と(A1′)を含有する混合物を用いたときには、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジ(メタ)アクリレート(A2′)および
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分を含有する反応混合物が得られる。
【0069】
混合物として(A2′)と(A1′)と(B′)を含有する混合物を用いたときには、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジ(メタ)アクリレート(A2′)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)および
(1−B−3)前記(A1′)および(A2′)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物が得られる。
【0070】
尚、前記混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート(A2′)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させる際には、メタクリロイル基は水酸基とは反応しない。よって、得られる分岐ポリエーテル樹脂(X)はメタクリロイル基を含有しない系と同じ反応機構により得られる。
【0071】
次いで、光パターニングの性能を付与させる目的で、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)とポリカルボン酸無水物とを混合し、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)に含有されている水酸基〔分岐ポリエーテル樹脂(Y)中の水酸基と芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステル中の水酸基〕と、モノカルボン酸無水物中の無水酸基とを反応させることにより、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)と酸ペンダント型芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を得ることができる(以下、この工程を「工程4」と略記することがある。)。
【0072】
前記ポリカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、なかでも現像性に優れる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)が得られることから、ジカルボン酸無水物が好ましく、脂肪族ポリカルボン酸無水物(環式脂肪族ポリカルボン酸無水物を含む。)がより好ましい。
【0073】
前記脂肪族ポリカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、4−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0074】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)とポリカルボン酸無水物との反応割合は、分岐ポリエーテル樹脂組成物中のエポキシ基1モルに対して0.1〜1モルとなるように反応させるのが好ましい。
【0075】
前記工程4における分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の水酸基と、ポリカルボン酸無水物中の無水酸基の反応は、無水酸基の開環によるエステル化反応により1個の無水酸基と1個の水酸基が反応するものであり、反応温度は通常50〜160℃であるが、なかでも合成時の安定性が良好なことから80〜120℃であることが好ましい。また、工程4の反応時間は、通常1〜20時間、好ましくは2〜10時間である。
【0076】
このように得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、樹脂成分中にカルボキシル基が導入されているため希アルカリ水溶液に溶解可能となる。そのため、所望のパターンを有するマスクを用いて紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、紫外線の照射された部位は、硬化反応を起こすので希アルカリ水溶液に不溶となる(現像できない)。反対にマスクによって紫外線が照射されない部位は、希アルカリ水溶液に溶解する(現像できる)。つまり本発明の製造方法で得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を用いることにより、所望のパターンを反転させたネガパターンを得ることができる。
【0077】
前記工程4で酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を得るにあたり、現像性に優れることから、樹脂固形分酸価が30〜140(mgKOH/g)となるまで分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の水酸基とポリカルボン酸無水物とを反応させるのが好ましく、50〜120(mgKOH/g)となるまで反応させるのがより好ましい。
【0078】
また、前記工程1〜4での反応は、無溶剤、有機溶剤存在下および/または反応性希釈剤存在下で行うことが可能である。なお、前記(X)と、前記(A2)、(A1)および(B)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とからなる樹脂成分や前記(X)と、前記(A2′)、(A1′)および(B′)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分とからなる樹脂成分に対する有機溶剤、反応性希釈剤量が多くなることで工程1〜4での反応速度は遅くなる為、合成中の樹脂成分の割合は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0079】
前記溶剤、反応性希釈剤としては、種々のものが使用することが可能であり、有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエーテル系溶剤や酢酸エステル類等が挙げられる。また、反応性希釈剤としては、各種アクリレートやメタクリレートのモノマー、オリゴマー、ビニルモノマー等を使用することが可能である。
【0080】
前記工程1および工程2により得られる分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量は、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基とアクリル酸(a)およびメタクリル酸(a′)中のカルボキシル基の当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)〕、触媒種類、触媒量、反応温度、反応時間等に影響を受ける。前記工程2での反応温度は、充分な反応速度がとれることから通常100℃以上であるが、急激な重合が生じにくく反応の制御が良好なことから170℃以下が好ましく、とくに100〜150℃の範囲にあることが好ましい。
【0081】
また、前記工程1、工程1′、工程2及び工程2′の反応時間は温度との影響を受ける。前記した温度範囲では、工程1、工程1′がそれぞれ0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。工程2、工程2′がそれぞれ1〜20時間、好ましくは2〜15時間である。
【0082】
本発明の製造方法で用いる反応混合物(I)やこれに含有されている分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量を調整するためには、例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)に対する芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)のモル比〔工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基のアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対する過剰率〕、リン系触媒(C)の使用量、反応温度、反応時間等を適宜調整すればよい。例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)に対する芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)のモル比(A1/A2)を小さくする(例えば、モル比を0〜1にする)こと〔工程1において芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基のアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対するモル比(B/a)過剰率を小さくする(例えば、b/a=1.25〜3とする)こと〕、リン系触媒(C)の使用量を大きくすること、反応温度を高くすること、反応時間を長くすること、反応系中の樹脂成分の濃度を高くすること等により、より分子量の大きい分岐型ポリエーテル樹脂が得られる。
【0083】
また、前記反応混合物(I)中の分岐ポリエーテル樹脂(X)が有するアクリロイル基とエポキシ基の導入量を調整するには、例えば、反応系内のアクリル酸が有するカルボキシル基に対するエポキシ基の過剰率、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)のエポキシ当量の大きさを適宜調整すればよい。例えば、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)として、エポキシ当量の小さい芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレートやモノアクリレートを用いること等により、アクリロイル基とエポキシ基の導入量(含有率)の高い分岐型ポリエーテル樹脂が得られるし、また、反応系内のエポキシ基のカルボキシル基に対する過剰率を調整することでポリエーテル樹脂中のアクリロイル基とエポキシ基の導入量を調整できる。
【0084】
本発明の製造方法では、反応混合物(I)やこれに含有されている分岐ポリエーテル樹脂(X)は、各種応用の面で要求される性能を満たすのに十分な分子量となるように合成することができるが、各種のアプリケーション適性を満足させる為には、反応混合物(I)中の樹脂成分〔分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに、芳香族二官能ジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族エポキシ化合物(B)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分からなる組成物をいう。以下同様。〕の平均分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で800〜10,000の範囲内となるように芳香族二官能ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させることが好ましく、800〜5,000の範囲内となるように反応させることがより好ましい。また、樹脂成分の平均分子量がポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で1,000〜50,000の範囲内となるように芳香族二官能ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させることが好ましく、重量平均分子量(Mw)で2,000〜30,000の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
また、分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で1,500〜10,000の範囲内となるように芳香族二官能ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させることが好ましく、1,500〜8,000の範囲内となるように反応させるのがより好ましい。分岐ポリエーテル樹脂(X)の分子量が、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で3,000〜100,000の範囲内となるように芳香族二官能ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させることが好ましく、3,000〜50,000の範囲内となるように反応させるのがより好ましい。
【0086】
本発明の製造方法では、硬化性や硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)となることから反応混合物(I)中の樹脂成分のエポキシ当量が250〜10,000g/当量となるように原料の仕込比、触媒量、反応条件等を種々調整するのが好ましく、エポキシ当量が400〜5,000g/当量となるように種々調整するのがより好ましい。また、硬化性や硬化物の機械物性に優れる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)となることから、分岐ポリエーテル樹脂(X)のエポキシ当量が500〜10,000g/当量となるように原料の仕込比、触媒量、反応条件等を種々調整するのが好ましく、エポキシ当量が800〜8,000g/当量となるように種々調整するのがより好ましい。
【0087】
また、本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)の平均分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で1,000〜12,000の範囲内であることが好ましく、1,000〜7,000の範囲内であることがより好ましい。本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)の平均分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で2,000〜60,000の範囲内であることが好ましく、3,000〜40,000の範囲内であることがより好ましい。
【0088】
また、分岐ポリエーテル樹脂(Y)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)の分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で2,000〜15,000の範囲内
であることが好ましく、2,500〜10,000の範囲内であることがより好ましい。分岐ポリエーテル樹脂(Y)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で4,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、5,000〜70,000の範囲内であることがより好ましい。
【0089】
分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中のエポキシ基や分岐ポリエーテル樹脂(Y)中のエポキシ基は、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)の安定性が良好となることから不飽和モノカルボン酸との反応で全て消費されていることが好ましいが、一部未反応のエポキシ基が残存していてもよい。エポキシ基が残存している場合の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)のエポキシ当量は、10,000g/当量以上であることが分岐ポリエーテル樹脂組成物の安定性が良好なことから好ましく、さらに15,000g/当量以上であることがより好ましい。また、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y)もエポキシ当量は10,000g/当量以上であることが分岐ポリエーテル樹脂組成物の安定性が良好なことから好ましく、さらに15,000g/当量以上であることがより好ましい。
【0090】
さらに、本発明で用いる反応混合物(I)は、樹脂成分1g当たりのアクリロイル基含有量が0.2〜4.0ミリモルであることが好ましく、中でも0.3〜3.5ミリモルがより好ましい。本発明で用いる反応混合物(I)は、樹脂成分1g当たりの水酸基含有量が0.2〜4.0ミリモルであることが好ましく、0.3〜3.5ミリモルであることがより好ましい。また、分岐ポリエーテル樹脂(X)は、樹脂1g当たりのアクリロイル基含有量が0.2〜3.5ミリモルであることが好ましく、中でも0.3〜3.3ミリモルがより好ましい。分岐ポリエーテル樹脂(X)は、樹脂1g当たりの水酸基含有量が0.2〜3.5ミリモルであることが好ましく、0.3〜3.3ミリモルであることがより好ましい。
【0091】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂成分1g当たりの不飽和基含有量が1.0〜4.2ミリモルであることが好ましく、中でも1.5〜4.0ミリモルがより好ましい。本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから、樹脂成分1g当たりの水酸基含有量が1.0〜4.2ミリモルであることが好ましく、1.5〜4.0ミリモルであることがより好ましい。
【0092】
また、分岐ポリエーテル樹脂(Y)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂1g当たりの不飽和基含有量が0.5〜3.5ミリモルであることが好ましく、中でも1.0〜3.3ミリモルであることがより好ましい。分岐ポリエーテル樹脂(Y)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂1g当たりの水酸基含有量が0.5〜3.5ミリモルであることが好ましく、なかでも1.0〜3.3ミリモルであることがより好ましい。
【0093】
本発明で得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂成分1g当たりの不飽和基含有量が0.8〜3.8ミリモルであることが好ましく、中でも1.0〜3.5ミリモルであることがより好ましい。本発明で得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂成分1g当たりの水酸基含有量が3.5ミリモル以下(0であってもよい。)であることが好ましく、3.0ミリモル以下(0であってもよい。)であることがより好ましい。
【0094】
また、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂1g当たりの不飽和基含有量が0.4〜3.2ミリモルであることが好ましく、中でも0.8〜2.8ミリモルであることがより好ましい。酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)は、硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂1g当たりの水酸基含有量が2.8ミリモル以下(0であってもよい。)であることが好ましく、なかでも2.3ミリモル以下(0であってもよい。)であることがより好ましい。
【0095】
さらに、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、現像性に優れることから樹脂固形分酸価が30〜140(mgKOH/g)であることが好ましく、なかでも50〜120(mgKOH/g)であることがより好ましい。また、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)は、現像性に優れることから樹脂固形分酸価が50〜120(mgKOH/g)であることが好ましく、なかでも60〜110(mgKOH/g)であることがより好ましい。
【0096】
本発明で用いる反応混合物(I)は、分岐ポリエーテル樹脂(X)を必須成分として含有するものであり、含有されている樹脂成分の合計100重量%中に分岐ポリエーテル樹脂(X)を20〜90重量%含有しているものが好ましい。また、この樹脂組成物(I)は、分岐ポリエーテル樹脂(X)以外に、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族エポキシ化合物(B)からなる群から選ばれる1種以上の未反応樹脂成分を含有する。これら1種以上の未反応樹脂成分は、樹脂組成物(I)中の樹脂成分の合計100重量%中に合計で10〜80重量%含有するものが好ましく、さらに芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)を5〜50重量%、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A1)を5〜30重量%〔ただし、前記芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)と芳香族二官能エポキシ樹脂のモノメタクリレート(A1)の合計で10〜80重量%〕、芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を0〜30重量%含有するものが好ましい。なお、この樹脂組成物(I)に未反応樹脂成分として芳香族二官能エポキシ樹脂(B)を含有させる場合、芳香族二官能エポキシ樹脂(B)の含有率は5〜30重量%であることがより好ましい。
【0097】
本発明で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、分岐ポリエーテル樹脂(Y)を必須成分として含有するものであり、製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから、含有されている樹脂成分の合計100重量%中に分岐ポリエーテル樹脂(Y)を30〜95重量%含有しているものが好ましく、なかでも50〜90重量%含有しているものがより好ましい。この分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、分岐ポリエーテル樹脂(Y)以外の主要樹脂成分として、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族二官能エポキシ樹脂(B)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分中のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基を反応させて得られる芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する。前記芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステルは、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の樹脂成分の合計100重量%中に5〜70重量%含有するものが好ましく、なかでも10〜50重量%含有しているものがより好ましい。
【0098】
本発明で得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、前記分岐ポリエーテル樹脂(Y)中の水酸基にポリカルボン酸無水物中の無水酸基を反応させることによりカルボン酸をペンダントさせた酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)を必須成分として含有するものであり、製膜時の指触乾燥性と、硬化性と、硬化塗膜の柔軟性に優れることから、含有されている樹脂成分の合計100重量%中に分岐ポリエーテル樹脂(Z)を30〜95重量%含有しているものが好ましく、なかでも50〜90重量%含有しているものがより好ましい。この酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)は、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)以外の主要樹脂成分として、前記芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(不飽和モノカルボン酸)エステル中の水酸基にポリカルボン酸無水物中の無水酸基を反応させることによりカルボン酸をペンダントさせた酸ペンダント型芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(不飽和モノカルボン酸)エステルを含有する。前記酸ペンダント型芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(不飽和ポリカルボン酸無水物)エステルは、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)中の樹脂成分の合計100重量%中に5〜70重量%含有するものが好ましく、なかでも10〜50重量%含有しているものがより好ましい。
【0099】
前記工程1〜4を経て得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)中の酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)としては、例えば、アクリロイル基等の不飽和基とカルボキシル基と下記一般式(3)で示される構造と下記一般式(4)で示される構造を有する重量平均分子量が4,000〜100,000の酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z1)等が挙げられる。
【0100】
【化3】

〔一般式(1)中、Rは下記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。〕
【0101】
【化4】

【0102】
【化5】

〔一般式(4)中、Rは2価の芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基を示す。〕
【0103】
前記酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z1)としては、なかでも製膜時の指触乾燥性と、硬化性と、硬化塗膜の柔軟性に優れることから、数平均分子量が2,000〜15,000、重量平均分子量が4,000〜100,000、酸価が50〜120(KOH−mg/g)であることがそれぞれ好ましく、数平均分子量が2,500〜10,000、重量平均分子量が5,000〜70,000、酸価が60〜110(KOH−mg/g)であることがそれぞれより好ましい。
【0104】
また、前記酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z1)としては、なかでも硬化性に優れることから樹脂1g当たりの不飽和基含有量が0.4〜3.2ミリモル、樹脂1g当たりの水酸基含有量が2.8ミリモル以下(0であってもよい。)であることがそれぞれ好ましく、前記不飽和基含有量が0.8〜2.8ミリモル、前記水酸基含有量が2.3ミリモル以下(0であってもよい。)であることがそれぞれより好ましい。
【0105】
さらに、前記酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z1)としては、下記一般式(5)で示される酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z2)であることも好ましい。
【0106】
【化6】

〔一般式(5)中、nは2〜100の繰り返し単位数を表し、このn個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記n個の繰り返し単位中および繰り返し単位外におけるArはそれぞれ独立に下記一般式(6)または(7)で表される構造を示す。〕
【0107】
【化7】

〔一般式(6)、(7)中、Rは芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基を示し、p、qはそれぞれ独立に0〜20の繰り返し単位を示す。Rは、不飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基構造を示し、不飽和モノカルボン酸がアクリル酸の場合は一般式(6)は一般式(7)と同一の構造となる。また、Rはそれぞれ独立に水素原子、下記一般式(8)で表される構造またはジカルボン酸無水物と水酸基のハーフエステル化により得られる構造、例えば下記一般式(9)で示される構造を示す。〕
【0108】
【化8】

〔一般式(8)中、rは1〜50の繰り返し単位を示し、このr個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記r個の繰り返し単位中のArはそれぞれ独立に前記一般式(6)または(7)で表される構造を示すが、この一般式(6)または(7)中のRとして前記一般式(8)で表される構造がさらに連結して分岐を繰り返している構造であってもよい。〕
【0109】
【化9】

〔一般式(9)中、Rは炭素数2〜12のカルボキシル基を有しても良い飽和または不飽和の炭化水素を示す。〕
【0110】
なお、前記一般式(4)、(6)および(7)中のR〔芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基〕としては、ナフチレン基または下記一般式(10)で表される構造の芳香族連結基であることが好ましい。
【0111】
【化10】

〔一般式(10)中、Rは単結合又は2価の連結基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。〕
【0112】
なお、前記酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)の製造の際に用いる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y)としては、例えば、アクリロイル基等の不飽和基と水酸基と前記一般式(3)で示される構造と前記一般式(4)で示される構造を有する重量平均分子量が4,000〜100,000の分岐ポリエーテル樹脂(Y1)が挙げられる。
【0113】
前記分岐ポリエーテル樹脂(Y1)としては、なかでも製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから、数平均分子量が2,000〜15,000、重量平均分子量が4,000〜100,000、エポキシ当量が10,000g/当量以上であることがそれぞれ好ましく、数平均分子量が2,500〜10,000、重量平均分子量が5,000〜70,000、エポキシ当量が15,000g/当量以上であることがそれぞれより好ましい。
【0114】
また、前記分岐ポリエーテル樹脂(Y1)としては、なかでも硬化性に優れ、耐熱性と柔軟性のバランスが良好な硬化物が得られることから樹脂1g当たりの不飽和基含有量が0.5〜3.5ミリモル、樹脂1g当たりの水酸基含有量が0.5〜3.5ミリモルであることがそれぞれ好ましく、前記不飽和基含有量が1.0〜3.3ミリモル、前記水酸基含有量が1.0〜3.3ミリモルであることがそれぞれより好ましい。
【0115】
さらに、前記分岐ポリエーテル樹脂(Y1)としては、下記一般式(11)で示される分岐ポリエーテル樹脂(Y2)であることも好ましい。
【0116】
【化11】

〔一般式(11)中、nは2〜100の繰り返し単位数を表し、このn個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記n個の繰り返し単位中および繰り返し単位外におけるArはそれぞれ独立に下記一般式(12)または(13)で表される構造を示す。〕
【0117】
【化12】

〔一般式(12)、(13)中、Rは芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基を示し、p、qはそれぞれ独立に0〜20の繰り返し単位を示す。Rは、不飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基構造を示し、不飽和モノカルボン酸がアクリル酸の場合は一般式(12)は一般式(13)と同一の構造となる。また、Rは水素原子または下記一般式(14)で表される構造を示す。〕
【0118】
【化13】

〔一般式(14)中、rは1〜50の繰り返し単位を示し、このr個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記r個の繰り返し単位中のArはそれぞれ独立に前記一般式(12)または(13)で表される構造を示すが、この一般式(12)または(13)中のRとして前記一般式(14)で表される構造がさらに連結して分岐を繰り返している構造であってもよい。〕
【0119】
なお、前記分岐ポリエーテル樹脂(Y2)の場合も、前記一般式(4)、(12)および(13)中のR〔芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基〕としては、ナフチレン基または前記一般式(10)で表される構造の芳香族連結基であることが好ましい。
【0120】
また、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)の製造の際に用いる樹脂組成物(I)中の分岐ポリエーテル樹脂(X)としては、例えば、水酸基とアクリロイル基とエポキシ基と前記一般式(3)で示される構造と前記一般式(4)で示される構造を有する重量平均分子量が3,000〜1000,000の分岐ポリエーテル樹脂(X1)が挙げられる。
【0121】
前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、なかでも製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから、数平均分子量が1,500〜10,000、重量平均分子量が3,000〜100,000、エポキシ当量が500〜10,000g/当量であることがそれぞれ好ましく、数平均分子量が1,500〜8,000、重量平均分子量が3,000〜50,000、エポキシ当量が800〜8,000g/当量であることがそれぞれより好ましい。
【0122】
また、前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、なかでも製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから樹脂1g当たりの不飽和基含有量が0.2〜3.5ミリモル、樹脂1g当たりの水酸基含有量が0.2〜3.5ミリモルであることがそれぞれ好ましく、前記不飽和基含有量が0.3〜3.3ミリモル、前記水酸基含有量が0.3〜3.3ミリモルであることがそれぞれより好ましい。
【0123】
さらに、前記分岐ポリエーテル樹脂(X1)としては、下記一般式(15)で示される分岐ポリエーテル樹脂(X2)であることも好ましい。
【0124】
【化14】

〔一般式(15)中、nは2〜100の繰り返し単位数を表し、このn個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記n個の繰り返し単位中および繰り返し単位外におけるArはそれぞれ独立に下記一般式(16)または(17)で表される構造を示す。〕
【0125】
【化15】

〔一般式(16)、(17)中、Rは芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基を示し、p、qはそれぞれ独立に0〜20の繰り返し単位を示す。また、Rは水素原子または下記一般式(18)で表される構造を示す。〕
【0126】
【化16】

〔一般式(18)中、rは1〜50の繰り返し単位を示し、このr個の繰り返し単位中のRはそれぞれ独立に前記構造式(1)または(2)で表される連結基を示す。また、前記r個の繰り返し単位中のArはそれぞれ独立に前記一般式(16)または(17)で表される構造を示すが、この一般式(16)または(17)中のRとして前記一般式(18)で表される構造がさらに連結して分岐を繰り返している構造であってもよい。〕
【0127】
なお、前記分岐ポリエーテル樹脂(X2)の場合も、前記一般式(4)、(16)および(17)中のR〔芳香族二官能エポキシ樹脂(B)から2個のグリシジルエーテル基を除いた構造の芳香族連結基〕としては、ナフチレン基または前記一般式(10)で表される構造の芳香族連結基であることが好ましい。
【0128】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)には、さらに必要に応じて前記芳香族二官能エポキシ樹脂(B)以外の他のエポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応物等を添加しても良いが、その場合でも全樹脂成分100重量%中における分岐ポリエーテル樹脂(Y)の含有率は20〜90重量%であることが製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから好ましい。なお、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)には、他のエポキシ化合物(b)を添加することも可能である。
【0129】
また、本発明の製造方法で得られる酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)には、さらに必要に応じて前記他のエポキシ化合物や、他のエポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応物を添加しても良いが、その場合でも全樹脂成分100重量%中における酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z)の含有率は20〜90重量%であることが製膜時の指触乾燥性と硬化塗膜の柔軟性に優れることから好ましい。
【0130】
前記前記芳香族二官能エポキシ樹脂(B)以外の他のエポキシ化合物としては、特に限定されず、モノエポキシ化合物から多官能エポキシ樹脂のいずれもが使用可能である。前記他のエポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物;ビフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型エポキシ樹脂;各種ビスフェノール類を用いたノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、キシレノールノボラック等各種ノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性の芳香族エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン類をエポキシ化してなるジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂やジヒドロキシナフタレン類のノボラック体をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂;多価カルボン酸のグリシジルエステル型樹脂;。キシレノールから誘導されたエポキシ樹脂、フェノールアラルキルエポキシ樹脂やナフタレンアラルキルエポキシ樹脂、その他ザイロック型エポキシ樹脂;上記芳香族エポキシ化合物の水添化物;脂肪族、脂環族、エーテル骨格などのエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0131】
また、前記他のエポキシ化合物との反応に用いる不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート。モノ(2−エチルヘキシル)マレート、ソルビン酸等が挙げられる。
【0132】
本発明の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)および酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、いずれも加熱硬化用および/または光硬化用の樹脂としてそのまま用いてもよく、ウレタン化やその他の化学修飾をほどこすことも可能である。
【0133】
前記分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)および酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)は、加熱硬化用および/または光硬化用の樹脂として用いる場合、更に硬化剤を含有させてもよい。
【0134】
前記硬化剤としては、特に限定はなく、例えば分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)の光硬化を行う場合は、光開始剤、光増感剤を含有させることができる。また、これらを加熱硬化させる場合は、パーオキサイド等のラジカル発生剤を添加することができる。さらにエポキシ樹脂を熱硬化成分として添加し、エポキシ樹脂用硬化剤を併用して熱硬化させることもできる。特に酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を光パターニング材料として使用する場合は、エポキシ樹脂および/またはエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤の併用にて光硬化後に希アルカリ水溶液で現像を行ってパターン形成させた後、熱硬化を行うことで優れた耐熱性や耐久性を有する硬化物を得ることもできる。さらにイソシアネート基含有の硬化剤を添加してウレタン硬化を行うことも可能である。
【0135】
前記エポキシ樹脂用硬化剤としては、各種のエポキシ樹脂用硬化剤がいずれも使用でき、例えば、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン類;ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環族ポリアミン類;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;ノボラック型フェノール樹脂類;メチルヘキサハイドロフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の多塩基酸無水物類;ポリアミドアミン樹脂およびその変性物;イミダゾール、ジシアンジアミド、三弗化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等の潜在性硬化剤などが挙げられる。これら硬化剤の中でも、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ノボラック型フェノール樹脂、ジシアンジアミド、多塩基酸無水物が好ましい。これらの硬化剤は単独であっても2種類以上の併用でもかまわない。
【0136】
前記エポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、硬化剤中のアミノ基またはイミノ基、フェノール性水酸基等の活性水素を有する硬化剤の場合は、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)に添加されたエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たり、活性水素が0.3〜1.2当量となる範囲で使用することが好ましい。また、酸無水物の場合は、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物(II)や酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)に添加されたエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たり、酸無水基が0.3〜1.2当量となる範囲で使用することが好ましい。
【0137】
また、エポキシ樹脂用硬化剤を用いる際には、硬化促進剤を適宜使用することができる。使用できる硬化促進剤は、特に限定されるものではなく、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として常用されているものはいずれも使用でき、例えば、ジメチルベンジンアミンの様な3級アミン、2−チメルイミダゾールの様なイミダゾール系化合物、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物等が挙げられる。
【0138】
前記光開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーズケトン、ベンジン、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインメチルエ−テル類、α−アシロキシムエステル、チオキサントン類、アンスラキノン類及びそれらの各種誘 導体等が挙げられる。
【0139】
前記光開始剤の具体例としては、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル、ベンゾイン;ベンゾインベンゾエート、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェノイルフォスフィンオキシド、ビス(2,6)−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0140】
さらに、これらの光開始剤に各種の光増感剤を併用することができ、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物又はニトリル類もしくはその他の含窒素化合物などが挙げられる。
【0141】
光開始剤の使用量としては、組成物中の樹脂分100重量部に対して0.5〜25重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲内である。
【0142】
本発明の製造方法で得られる分岐型ポリエーテル樹脂組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、着色剤、難燃剤、離型剤、熱可塑性樹脂シランカップリング剤等の各種添加剤も添加配合させることができる。
【0143】
前記充填剤として代表的なものには、シリカ粉、珪酸ジルニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、酸化ジルコニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、アスベスト粉またはミルド・グラスなどが挙げられる。また、着色剤として代表的なものにはカーボンブラックなどが、難燃剤として代表的なものには三酸化アンチモン等が挙げられ、離型剤として代表的なものにはカルナバワックス等が挙げられ、シランカップリング剤として代表的なものにはアミノシランまたはエポキシシラン等が挙げられる。
【0144】
また、本発明の製造方法で得られる分岐型ポリエーテル樹脂組成物は、電気・電子部品封止材料、絶縁ワニス、積層板、絶縁粉体塗料等の電気絶縁材;プリント配線基板用積層板およびプリブレグ、導電性接着材およびハニカムパネルの如き構造材料用等の接着剤;ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種強化繊維を用いた繊維強化プラスチックおよびそのプリプレグ;レジストインキ等の用途に利用できる。
【0145】
酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)をレジストインキ等の光パターニング材料として使用する場合は、例えば、使用する基板に酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III)を用いてなる光パターニング材料を乾燥膜厚で5〜100μm程度に塗布し、必要であれば溶剤乾燥を行い、その後フォトマスク越しに紫外線を照射する。フォトマスクから通過した部位は、この紫外線により硬化反応を起こし、またフォトマスクで紫外線が通過しない個所は硬化反応が生じない。このマスク越しに紫外線照射された塗膜を希アルカリ水溶液の現像液で現像し、欲する画像を形成するこが可能である。この時、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等無機アルカリの水溶液や、テトラメチルアンモニュウムヒドロキシド等の有機アルカリ水溶液を使用することができる。また、現像液の濃度は、0.2〜5重量%程度で使用することができ、界面活性剤を含有させても良い。こうした現像は、画像形成のために浸漬、振とう浸漬あるいはスプレー塗布等による塗布を行い、現像することができる。
【実施例】
【0146】
次いで、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。なお、以下に記載の%および部は、特に断りがない限り重量基準である。また、以下の表中の粘度、酸価、エポキシ当量の単位は、それぞれ、Pa・S、mgKOH/g、g/当量である。
【0147】
実施例1
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート24.9gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、アクリル酸36.1g(0.5mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン0.446g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点を0時間として、0、2、6、8および10時間後のサンプリングを行いながら同温度で10時間反応を続けて、分岐ポリエーテル樹脂(X1)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−1)を得た。なお、サンプリングした5種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表1−1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
得られた反応混合物(I−1)は、そのGPCから下記表1−2に示す組成を有するものであった。また、下記表1−2中の各成分の含有率と前記表1−1中の経過時間10時間後の反応混合物(I−1)のエポキシ当量(固形分)から算出された分岐ポリエーテル樹脂(X1)のエポキシ当量(固形分)は1,148g/当量であった。なお、この分岐ポリエーテル樹脂(X1)のエポキシ当量(固形分)は、100/〔反応混合物(I−1)のエポキシ当量〕={(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有率)/(そのエポキシ当量)+(エポキシ基含有ビスフェノールA型エポキシモノメタクリレート含有率)/(そのエポキシ当量)+〔分岐ポリエーテル樹脂(X1)の含有率〕/(そのエポキシ当量)}、即ち100/533=〔(19.3/188)+(15.5/448)+(57.8/分岐ポリエーテル樹脂(X1)のエポキシ当量)〕から算出した。
【0150】
【表2】

【0151】
次いで、この反応混合物(I−1)の固形分224.1gに対して、さらにアクリル酸30.4g(0.42モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート38.7gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y1)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−1)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−1)のエポキシ当量(固形分)は18500g/当量、酸価(固形分)は0.2(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−1)の組成とポリスチレン標準試料換算での数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表1−3に示す。
【0152】
【表3】

【0153】
実施例2
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート26.5gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、アクリル酸50.68g(0.7mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン0.477g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点を0時間として、0、2、4、6、8および10時間後の6回のサンプリングを行いながら同温度で10時間反応を続けて、分岐ポリエーテル樹脂(X2)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−2)を得た。なお、サンプリングした6種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表2−1に示す。
【0154】
【表4】

【0155】
得られた反応混合物(I−2)は、そのGPCから下記表2−2に示す組成を有するものであった。また、下記表2−2中の各成分の含有率と前記表2−1中の経過時間10時間後の反応混合物(I−2)のエポキシ当量(固形分)から実施例1と同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂(X2)のエポキシ当量(固形分)は2,240g/当量であった。
【0156】
【表5】

【0157】
さらにIRによる分析を行った。前記反応混合物(I−2)の赤外吸収スペクトルを図1に示す。図1から、3300〜3600cm−1のブロードな水酸基の吸収と2800〜3100cm−1のアルキル基の吸収の相対強度を比較すると反応混合物(I−2)の水酸基量は少なく、水酸基が消費されていることがわかる。また、1410cm−1のアクリロイル基と755cm−1の1置換ベンゼン環との相対強度を比較するとほぼ50%のアクリロイル基が消失していることが判った。また、同様に1120cm−1付近のエーテルの吸収が増大しておりアクリロイル基と水酸基との反応によりエーテル結合が生成したことがわかる。次いで、水酸基当量とアクリロイル基の濃度を測定した結果、赤外スペクトルと同様に、50モル%の水酸基とアクリロイル基が反応したことが確認できた。
【0158】
次いで、この反応混合物(I−2)の固形分238.7gに対して、さらにアクリル酸17.3g(0.24モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート37.5gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y2)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−2)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−2)のエポキシ当量(固形分)は21100g/当量、酸価(固形分)は0.15(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−2)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表2−3に示す。
【0159】
【表6】

【0160】
さらに、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−2)の固形分256gに対して、エチルカルビトールアセテート78.5gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、テトラヒドロ無水フタル酸76.6g(0.504モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてテトラヒドロ無水フタル酸が分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−2)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y2)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂のジアクリレートに反応したことを確認し、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z2)を含有する酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−2)を得た。なお、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−2)の酸価(固形分)は84.8(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−2)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を表2−4に示す。
【0161】
【表7】

【0162】
実施例3
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート27.32gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、アクリル酸を57.92g(0.8mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン0.49g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で110℃まで昇温した。110℃に温度が到達した時点を0時間として、2、4、6および8時間後の4回のサンプリングを行いながら同温度で8時間反応を続けて、分岐ポリエーテル樹脂(X3)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−3)を得た。なお、サンプリングした4種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表3−1に示す。
【0163】
【表8】

【0164】
得られた反応混合物(I−3)は、そのGPCから下記表3−2に示す組成を有するものであった。また、下記表3−2中の各成分の含有率と前記表3−1中の経過時間8時間後の反応混合物(I−3)のエポキシ当量(固形分)から実施例1と同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂(X3)のエポキシ当量(固形分)は4,448g/当量であった。
【0165】
【表9】

【0166】
次いで、この反応混合物(I−3)の固形分245.9g(樹脂溶液として273.2g)に対してさらにアクリル酸9.3g(0.128モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート36.5gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y3)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−3)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−3)のエポキシ当量(固形分)は24200g/当量で、酸価(固形分)は0.16(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−3)の組成と、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表3−3に示す。
【0167】
【表10】

【0168】
さらに、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−3)の固形分255.2gに対して、エチルカルビトールアセテート78.3gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、テトラヒドロ無水フタル酸76.4g(0.502モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてテトラヒドロ無水フタル酸が分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−3)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y3)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂のジアクリレートに反応したことを確認し、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z3)を含有する酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−3)を得た。なお、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−3)の酸価(固形分)は85.8(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−3)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を表3−4に示す。
【0169】
【表11】

【0170】
実施例4
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート58.5gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量476g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON1050)476gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1gを加えた後、アクリル酸50.68g(0.7mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン1.05g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点を0時間として、0、2、4、6および8時間後の5回のサンプリングを行いながら同温度で8時間反応を続けて、分岐ポリエーテル樹脂(X4)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−4)を得た。なお、サンプリングした5種のサンプルは、それぞれ酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表4−1に示す。
【0171】
【表12】

【0172】
得られた反応混合物(I−4)は、そのGPCから下記表4−2に示す組成を有するものであった。また、下記表4−2中の各成分の含有率と前記表4−1中の経過時間8時間後の反応混合物(I−4)のエポキシ当量(固形分)から実施例1と同様に算出された分岐型ポリエーテル樹脂のエポキシ当量(固形分)は3,895g/当量であった。
【0173】
【表13】

【0174】
次いで、この反応混合物(I−4)の固形分526.7g(樹脂溶液として585.2g)に対して、さらにアクリル酸17.7g(0.245モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート77.6gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y4)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−4)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−4)のエポキシ当量(固形分)は19800g/当量、酸価(固形分)は0.11(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−4)の組成と、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表4−3に示す。
【0175】
【表14】

【0176】
さらに、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−4)の固形分544.4gに対して、エチルカルビトールアセテート167.0gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、テトラヒドロ無水フタル酸162.9g(1.072モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてテトラヒドロ無水フタル酸が分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−4)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y4)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂のジアクリレートに反応したことを確認し、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂(Z4)を含有する酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−4)を得た。なお、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−4)の酸価(固形分)は85.2(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−4)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を表4−4に示す。
【0177】
【表15】

【0178】
実施例5
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート26.3gを入れ、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量186g/当量;ジャパンエポキシレジン社製YX−4000)186gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン1部を加えた後、アクリル酸50.4g(0.7mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン0.236g(樹脂分の0.1%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温し、130℃に温度が到達してから4時間後と7時間後に、さらにトリフェニルホスフィン0.236gをそれぞれ添加した。なお、サンプリングは130℃に温度が到達した時点を0時間として、0、1、5、8および10時間後の5回のサンプリングを行いながら同温度で10時間反応を続けて、分岐ポリエーテル樹脂(X5)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−5)を得た。なお、サンプリングした5種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表5−1に示す。
【0179】
【表16】

【0180】
得られた反応混合物(I−5)は、そのGPCから下記表5−2に示す組成を有するものであった。また、下記表5−2中の各成分の含有率と前記表5−1中の経過時間10時間後の反応混合物(I−5)のエポキシ当量(固形分)から実施例1と同様に算出された分岐ポリエーテル樹脂(X5)のエポキシ当量(固形分)は1,776g/当量であった。
【0181】
【表17】

【0182】
次いで、この反応混合物(I−5)の固形分236.4g(樹脂溶液として262.7g)に対して、さらにアクリル酸17.2g(0.238モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート37.1gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y5)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−5)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−5)のエポキシ当量(固形分)は20900g/当量、酸価(固形分)は0.20(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−5)の組成と、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表5−3に示す。
【0183】
【表18】

【0184】
さらに、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−5)の固形分253.6gに対して、エチルカルビトールアセテート77.8gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、テトラヒドロ無水フタル酸75.9g(0.5モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてテトラヒドロ無水フタル酸が分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−5)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y5)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂のジアクリレートに反応したことを確認し、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−5)を得た。なお、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−5)の酸価(固形分)は85.7(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−5)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を表5−4に示す。
【0185】
【表19】

【0186】
実施例6
実施例2で得られた反応混合物(I−2)の固形分238.7gに対して、さらにメタクリル酸20.6g(0.24モル:残存エポキシ基に1モル対して1モルに相当する。)とエチルカルビトールアセテート38.3gを添加し、130℃で5時間反応させて、分岐ポリエーテル樹脂(Y6)を含有する淡黄色透明の樹脂状の分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−6)を得た。この時、エポキシ当量(固形分)は24100g/当量、酸価(固形分)は0.25(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−6)の組成と、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表6−1に示す。
【0187】
【表20】

【0188】
さらに、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−6)の固形分259gに対して、エチルカルビトールアセテート72.7gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、ヘキサヒドロ無水フタル酸61.5g(0.4モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてヘキサヒドロ無水フタル酸が分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−6)中の分岐ポリエーテル樹脂(Y6)およびビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートに反応したことを確認し、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−6)を得た。なお、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−6)の酸価(固形分)は71.1(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−6)の組成と、平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を表6−2に示す。
【0189】
【表21】

【0190】
実施例7
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてBHT(2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール)1gを加えた後、アクリル酸28.8g(0.4mol)とメタクリル酸34.4g(0.4mol)を仕込んだ。触媒としてトリフェニルホスフィン1.26g(樹脂分の0.5%)を添加し、攪拌を行いながら1時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点を0時間として、0、1、3、5時間後のサンプリングを行いながら同温度で5時間反応を続けて分岐ポリエーテル樹脂(X7)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物(I−7)を得た。なお、サンプリングしたサンプルは、それぞれ粘度〔ガードナー法(25℃、E型粘度計を使用)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた結果を下記表7−1に示す。
【0191】
【表22】

【0192】
得られた反応混合物(I−7)は、そのGPCから下記表7−2に示す組成を有するものであった。また、下記表7−2中の各成分の含有率と前記表7−1中の経過時間10時間後の反応混合物(I−7)のエポキシ当量から算出された分岐ポリエーテル樹脂(X7)のエポキシ当量は2604であった。なお、この分岐ポリエーテル樹脂(X7)のエポキシ当量は、100/(分岐ポリエーテル樹脂組成物1のエポキシ当量)=〔(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有率)/(そのエポキシ当量)+(エポキシ基含有ビスフェノールA型エポキシモノ(メタ)アクリレート含有率)/(そのエポキシ当量)+(分岐ポリエーテル樹脂(X1)の含有率)/(そのエポキシ当量)〕、即ち100/1570=〔(1.4/188)+(13.1/455)+(71.5/分岐ポリエーテル樹脂(X1)のエポキシ当量)〕から算出した。ただしエポキシ基含有ビスフェノールA型エポキシモノ(メタ)アクリレートのエポキシ当量は、ビスフェノールA型エポキシモノアクリレートとビスフェノールA型エポキシモノメタクリレートが等モル分子存在している仮定にて平均のエポキシ当量として計算した。
【0193】
さらにIR(赤外線吸収スペクトル)による分析を行った。分析の結果、3300〜3600cm−1のブロードな水酸基の吸収と2800〜3100cm−1のアルキル基の吸収の相対強度を比較すると反応混合物(I−7)の水酸基量は少なく、水酸基が消費されていることがわかった。また、1410cm−1のアクリロイル基の相対強度からもほぼ50%のアクリロイル基が消失していることが判った。また、同様に1120cm−1付近のエーテルの吸収が増大しておりアクリロイル基と水酸基との反応によりエーテル結合が生成したことがわかった。
【0194】
【表23】

【0195】
ついでこの反応混合物(I−7)にエチルジグリコールアセテート(EDGA)66.2gとメタクリル酸13.7g(0.16モル)を添加し、130℃で8時間反応を行い、分岐ポリエーテル樹脂(Y7)を含有する分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−7)を得た。この時、分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−7)のエポキシ当量(固形分は)23000g/当量、酸価(固形分)は、0.5(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布の測定結果から分岐ポリエーテル樹脂組成物の組成と数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mn)を求めた。得られた結果を下記表7−3に示す。
【0196】
【表24】

【0197】
この分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−7)の樹脂固形分100gに対してエチルジグリコールアセテート3gと芳香族石油系溶剤(ソルベッソ150)28gとテトラヒドロ無水フタル酸30gとを仕込み、100℃で10時間反応を行い、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−7)を得た。赤外吸収スペクトルより1850cm−1の酸無水物基の吸収は完全に消失していた。また、固形分換算の酸価は、86mg−KOH/gであった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の組成と数平均分子量及び重量平均分子量(Mn)を求めた。
【0198】
【表25】

【0199】
比較例1
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート28.9gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン0.5gを加えた後、アクリル酸72g(1mol)とトリフェニルホスフィン0.52g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点を0時間として、1、3、4.5、6、8および10時間後の6回のサンプリングを行いながら同温度で10時間反応を続けた後、フラスコから取り出し、淡黄色透明の樹脂状の樹脂(R−1)を得た。なお、サンプリングした6種のサンプルは、それぞれ粘度〔E型粘度計(25℃)〕と、酸価(固形分)と、エポキシ当量(固形分)を測定すると共に、GPCによる分子量分布測定結果から数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。GPCの分析結果から、分子量も反応開始直後と反応開始後10時間後で大きな変化が認められず、前記樹脂(R−1)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の末端のエポキシ基とアクリル酸とが反応したジアクリレートであることが判った。つまり、反応系に芳香族2官能エポキシ樹脂のジアクリレートのみが存在し、芳香族2官能エポキシ樹脂のモノアクリレートまたは芳香族2官能エポキシ樹脂が存在していなかったため、芳香族2官能エポキシ樹脂のジアクリレート中の水酸基とアクリロイル基との反応が起こらず、水酸基、アクリロイル基及びエポキシ基を有する分岐ポリエーテル樹脂の合成が起こらず、本発明の製造方法で得られた前記反応混合物(I−2)とは異なる樹脂であった。得られた結果を下記表1′−1に示す。
【0200】
【表26】

【0201】
前記比較対照用樹脂(R−1)の赤外吸収スペクトルを図2に示す。図2から、3300〜3600cm−1のブロードな水酸基の吸収と2800〜3100cm−1のアルキル基の吸収の相対強度を比較すると、前記反応混合物(I−2)の水酸基の吸収強度と比較して、図2に示された比較対照用樹脂(R−1)の水酸基の吸収強度が高く、水酸基が前記反応混合物(I−2)に比べ多く残留していることが判る。また、1410cm−1のアクリロイル基と755cm−1の1置換ベンゼン環との相対強度を比較するとアクリロイル基の多くが未反応で残っていることが判った。
【0202】
次いで、この比較対照用樹脂(R−1)の固形分260gに対して、エチルカルビトールアセテート79.8gを添加し、系内の温度を100℃まで低下させてから、テトラヒドロ無水フタル酸77.8g(0.512モル)を添加し、100℃で反応を8時間行った。赤外吸収スペクトルから酸無水物に起因する吸収である1780cm−1が消滅していてテトラヒドロ無水フタル酸が比較対照用樹脂(R−1)に反応したことを確認し、酸ペンダント型ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(RZ−1)を得た。なお、RZ−1の酸価(固形分)は85.1(mgKOH/g)であった。GPCによる分子量分布測定結果から、酸ペンダント型ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(RZ−1)の平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた結果、数平均分子量は780で、重量平均分子量は960であった。
【0203】
比較例2
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート428gを入れ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)188gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン0.5gを加えた後、アクリル酸144g(2mol)とトリフェニルホスフィン0.52g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した後約1時間で激しい発熱とともにゲル化した。
【0204】
比較例3
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、エチルカルビトールアセテート72gを入れ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLONN−673)215gを溶解し、重合禁止剤としてハイドロキノン0.5gを加えた後、アクリル酸72g(1mol)とトリフェニルホスフィン0.52g(樹脂分の0.2%)を添加し、攪拌を行いながら2時間で120℃まで昇温した。120℃に温度が到達した後約15時間反応させてクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂を得た。次いで、100℃まで温度を下げてからテトラヒドロ無水フタル酸91.2g(0.6mol)を添加し、この温度で10時間反応を行った。赤外スペクトルで無水物の吸収が消失したことを確認した後取り出し、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂(RZ−3)を得た。尚、酸価(固形分)は91mgKOH/gであった。
【0205】
応用例1〜7および比較応用例1〜2
実施例2〜7で得た酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−2)〜(III−7)、比較例1と3で得た樹脂(RZ−1)と樹脂(RZ−3)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔EPICLON N−680:エポキシ当量214g/当量(以下、N680と略す。)〕のエチルカルビトールアセテート不揮発分70%溶液、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、DPHAと略す。)、および、イルガキュア907(チバガイギー社製光重合開始剤)を用いて、下記表8および表9に示す配合のレジストインキ組成物(W−1)〜(W−6)および(RW−1)〜(RW−2)を調製した。なお、比較例2での樹脂はゲル化した為、比較応用例としての評価はできなかった。
【0206】
【表27】

【0207】
【表28】

【0208】
次いで、得られたレジストインキ組成物(W−1)〜(W−5)および(RW−1)〜(RW−2)の指触乾燥性、現像性、感度、溶剤乾燥時の安定性、塗膜の柔軟性及び塗膜の耐熱性の評価を行った。評価方法を以下に示す。
【0209】
(1)指触乾燥性1
ガラスエポキシ基板に塗膜の乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各レジストインキ組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、室温(23℃)に冷却後、塗膜の指触時のタック性を以下の基準にて評価した。
評価基準 ○:タックなし。
△:タック若干あり。
×:タック性あり。
【0210】
(2)指触乾燥性2
ガラスエポキシ基板に塗膜の乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各レジストインキ組成物を塗装し、80℃で30分間乾燥させ、室温(23℃)に冷却後、感度評価用のステップタブレット(コダック株式会社製ステップタブレットNo.2)を乾燥塗膜面上に置き、この状態で紫外線照射を行った。紫外線照射は、7KWのメタルハライドランプ(株式会社ハイテック社製HTE−106−M07)にて真空減圧下で行い、積算光量800mJ/cmの紫外線照射後に常圧に戻し、ステップタブレットを塗膜面から剥離する時に発生するタック性を下記の基準にて評価した。
評価基準 ○:タック感なく、ステップタブレットが容易に剥離可能。
△:タック感若干あり、ステップタブレットが引っかかるが剥離可能。
×:タック性あり、ステップタブレットにインキが付着し剥離し難い。
【0211】
(3)現像性
ブリキ基板に乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各レジストインキ組成物を塗装し、80℃の乾燥器中に30分間放置して溶剤を揮散させ、常温に放置した後、30℃の1%炭酸ソーダ水溶液に120秒間浸漬し、基板上に塗膜が残存する度合いを下記の基準により評価した。
評価基準 ○:基板上の塗膜が全く残っていない。
△:基板上の塗膜が一部残存する。
×:基板上の塗膜が溶解せず、ほとんど残存する。
【0212】
(4)感度(レジストインキの感度)
ガラスエポキシ基板上に各レジストインキ組成物をスクリーン印刷した試料を80℃の乾燥器中に30分間放置して溶剤を揮散させ、塗膜上にステップタブレット(コダック株式会社製ステップタブレットNo.2)を乗せ、7KWのメタルハライドランプ(株式会社ハイテック社製HTE−106−M07)を用い、積算光量400mJ/cm、600mJ/cm、800mJ/cmの紫外線を照射した後、ステップタブレットを試料表面から取り外し、試料を30℃の1%炭酸ソーダ水溶液に120秒間浸漬し、ステップタブレット法で評価を行った。表中の数字はステップタブレットの段数を示し、数字が大きい程硬化性(感度)が優れていることを示す。
【0213】
(5)溶剤乾燥時の安定性(乾燥管理幅)
各レジストインキ組成物を乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて塗布したブリキ板(テストピース)を90℃の乾燥器中に30分間、40分間、50分間放置して溶剤を揮散させ、30℃の1%炭酸ソーダ水溶液に120秒間浸積して現像し、乾燥管理幅(溶剤乾燥時の安定性)を下記の基準で目視にて下記の基準で評価した。
評価基準 ○:基板上の塗膜が全く残っていない。
△:基板上の塗膜が一部残存する。
×:基板上の塗膜が溶解せず、ほとんど残存する。
【0214】
(6)塗膜の柔軟性(エリクセン試験)
各レジストインキ組成物を乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて塗布したブリキ板(テストピース)を90℃の乾燥器中で30分間乾燥した後、7KWのメタルハライドランプ(株式会社ハイテック社製 HTE−106−M07)で積算光量800mJ/cmの紫外線照射を行い、さらに150℃で1時間加熱硬化を行った。この試料を5cm角の大きさにブリキ基板ごと切断し、上島製作所製の自動エリクセンにて23℃の条件下でエリクセン試験を行った。評価は、塗膜がポンチにて押し出されブリキ基板から浮きや剥がれ、あるいは、割れが生じたところでポンチの上昇を停止し、ポンチの上昇高さを機器より読み取り4回の平均値を結果として得た。
【0215】
(7)塗膜の耐熱性(ハンダ耐熱性)
テストパターンが施された銅箔付きガラスエポキシ基板上にレジストインキ組成物1を乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷にて塗布したテストピースを80℃の乾燥器中で30分間乾燥した後、7KWのメタルハライドランプで紫外線を800mJ/cm照射し、さらに150℃で1時間加熱硬化を行った。ついでこの硬化させたテストピースにロジン系フラックスを塗布し、260℃で溶融されたハンダの槽に30秒浸漬させ、外観の観察と粘着テープを用いて剥離操作を3回行う剥離試験により性能を評価した。
評価基準 ◎:外観の異常なし、かつセロテープ(登録商標)での剥離個所なし。
○:外観の異常なし、セロテープ(登録商標)での剥離が一部見られる。
×:膨れ、剥がれ等外観の異常あり、セロテープ(登録商標)で剥離が顕著に見られる。
【0216】
【表29】

【0217】
【表30】

【0218】
また、実施例2〜7で得た酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物(III−2)〜(III−7)を用いて得られたレジストインキ組成物(W−1)〜(W−6)は、指触乾燥性ですべての配合物が良好な結果を示し、現像性についても良好な結果であった。さらに感度に関しては、合格のレベルにあり、乾燥管理幅に関しても、ほぼ50分間以上の現像が可能であるという結果が得られている。エリクセンに関しては、実施例で4mm以上あり、付着性や塗膜の伸度に優れる結果が得られている。一方、比較例1および3で得た樹脂(RZ−1)と樹脂(RZ−3)を用いて得られたレジストインキ組成物(RW−1)および(RW−2)は、上記の項目でバランスのとれた組成は得られなかった。
【0219】
応用例7〜9および比較応用例3〜4
実施例1〜3で得られた分岐ポリエーテル樹脂組成物(II−1)〜(II−3)および比較例1と3で得た樹脂(R−1)と樹脂(R−3)を用いて下記表12に示す光硬化性組成物を調製し、得られた光硬化性樹脂組成物の指触乾燥性、耐折り曲げ性の評価を下記評価方法に従って評価した。得られた結果を表12に示す。
【0220】
(7)指触乾燥性3
ブリキ基板に塗膜の乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて各光硬化性樹脂組成物を塗装し、90℃で30分間乾燥させ、室温(23℃)に冷却後の塗膜を指触時のタック性を以下の基準にて評価した。
評価基準 ○:タックなし。
△:タック若干あり。
×:タック性あり。
(8)耐折り曲げ性
各光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が40μmになるようにアプリケーターにて塗布したブリキ板(テストピース)を90℃の乾燥器中で30分間乾燥した後、7KWのメタルハライドランプ(株式会社ハイテック社製 HTE−106−M07)で積算光量1000mJ/cmの紫外線照射を行い、指触での硬化性を確認後、幅1cm長さ5cmの短冊状に硬化塗膜を切り出し、ブリキ板から単離した。この短冊状硬化塗膜を長手方向に塗膜表面が重なり合うように180°に折り曲げた際の破断有無を以下の基準で評価を行った。
評価基準 ○: 4個の短冊状硬化塗膜のすべてが破断しない。
△: 4個の短冊状硬化塗膜の内、1または2個が破断した。
×: 4個の短冊状硬化塗膜の内、3個以上が破断した。
【0221】
【表31】

【0222】
参考例1
モデル物質としてフェニルグリシジルエーテルとアクリル酸との反応を行った結果を以下に示す。
【0223】
工程1;攪拌装置のついたフラスコにフェニルグリシジルエーテル150g(1モル)とアクリル酸57.92g(0.8モル)と重合禁止剤としてBHT(2,6−ジターシャリィブチル−4−メチルフェノール)0.667gを加え、攪拌しながら130℃まで昇温した。130℃に温度が到達した時点で酸価は0.3mgKOH/gとなり、アクリル酸はほぼ消失した。
【0224】
工程2;更に、反応を続行すると系の粘度は上昇した。反応開始後2、3、4時間後の赤外吸収スペクトルを図3に示す。実施例2と同様に、水酸基と炭素−炭素二重結合が減少し、エーテル結合が増加していることが判る。130℃で5時間反応を行い、フェニルグリシジルエーテルのアクリレート化物の重合体(ポリエーテル樹脂、以下PPGE−Aと略す。)を含むポリエーテル樹脂組成物(PPGE−A)を取り出した。GPC分析の結果、前記PPGE−Aとしては、高分子量化反応が進行し5量体以上の成分が生成していることが確認された。
【0225】
更に、C13−NMRによる構造同定を行った結果、下記に示される反応スキームで示される反応によりフェニルグリシジルエーテルのアクリレート化物が高分子量化したことが判明した。
【0226】
【化17】

〔式中、Rは、それぞれ独立に下記構造式(1)または(2)で表される2種の連結基のいずれかである。〕
【0227】
【化18】

【0228】
比較参考例1
比較対照として、同様にフェニルグリシジルエーテル150g(1モル)とアクリル酸72.4g(1モル)と重合禁止剤としてBHT(2,6−ジターシャリィブチルー4−メチルフェノール)0.667gを加え攪拌しながら130℃まで昇温した。130℃に温度が到達してから3時間後に酸価は0.35mgKOH/gとなり、アクリル酸は消失した。さらに反応を続行しても粘度は上昇しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】実施例2で得られた樹脂状物質の赤外吸収スペクトルである。
【図2】比較例1で得られた樹脂状物質の赤外吸収スペクトルである。
【図3】参考例1における反応生成物の経時変化を示す赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)
および/または
(1−2−2)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)、
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)中の水酸基とアクリロイル基とを、或いは、芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて、
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および
(1−B−3)前記(A1)および(A2)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物を得る第一工程と、
前記反応混合物と不飽和モノカルボン酸とを混合し、前記反応混合物中のエポキシ基と前記不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基とを反応させる第二工程とを含有することを特徴とする分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一工程で用いる混合物を、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、リン系触媒(C)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させることにより得る請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第一工程が、混合物として芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、リン系触媒(C)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)中のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)、
(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物を用い、該混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂のジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて
(1−A)水酸基、アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジアクリレート(A2)および
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノアクリレート(A1)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物を得る工程である請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第一工程で用いる混合物として、更にメタクリロイル基を含有する混合物を用いる請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第一工程が、混合物として、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、リン系触媒(C)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)およびメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)、
(1−2)(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)および/または
(1−2−2)前記(A1′)および(A2′)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物を用い、該混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート(A2′)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて
(1−A)水酸基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジ(メタ)アクリレート(A2′)、
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)および
(1−B−3)前記(A1′)および(A2′)以外の
芳香族二官能エポキシ樹脂(B′)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物を得る工程である請求項3に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第一工程が、混合物として芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とメタクリル酸(a′)とを、リン系触媒(C)の存在下、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基がアクリル酸(a)およびメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基に対して過剰となる条件で反応させて、
(1−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート(A2′)、
(1−2−1)芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)
および
(1−3)リン系触媒(C)
を含有する混合物を用い、該混合物中の芳香族二官能エポキシ樹脂ジ(メタ)アクリレート(A2′)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート(A1′)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させて
(1−A)水酸基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基を有する
分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに
(1−B)(1−B−1)芳香族二官能エポキシ樹脂の
ジ(メタ)アクリレート(A2′)および
(1−B−2)芳香族二官能エポキシ樹脂の
モノ(メタ)アクリレート(A1′)
からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分
を含有する反応混合物を得る工程である請求項3に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第二工程が、反応混合物と不飽和モノカルボン酸とを、前記反応混合物中のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸中のカルボキシル基の当量比(エポキシ基/カルボキシル基)が0.9/1〜1/0.9となる範囲で反応させる工程である請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記不飽和モノカルボン酸としてアクリル酸および/またはメタクリル酸を用いる請求項6に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(B)および/または芳香族二官能エポキシ樹脂(b)としてエポキシ当量135〜500g/当量の芳香族二官能エポキシ樹脂(B1)を用いる請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(B1)としてジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂またはビスフェノール型エポキシ樹脂を用いる請求項8に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基とアクリル酸(a)中のカルボキシル基との当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)が1.1〜5.5となる範囲で反応させる請求項2に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記芳香族二官能エポキシ樹脂(b)とアクリル酸(a)メタクリル酸(a′)とを、芳香族二官能エポキシ樹脂(b)中のエポキシ基とアクリル酸(a)およびメタクリル酸(a′)中の合計のカルボキシル基との当量比〔(エポキシ基当量)/(カルボキシル基当量)が1.1〜5.0となる範囲で反応させる請求項3に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記リン系触媒(C)としてホスフィン類系触媒を用いるである請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記反応混合物中の樹脂成分〔分岐ポリエーテル樹脂(X)ならびに芳香族二官能ジアクリレート(A2)、芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)および芳香族エポキシ化合物(B)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂成分〕の重量平均分子量が1,000〜50,000で、かつ、エポキシ当量が250〜10,000となるように芳香族二官能ジアクリレート(A2)および芳香族二官能エポキシ樹脂のモノアクリレート(A1)中の水酸基とアクリロイル基とを反応させる請求項1に記載の分岐型ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法で得られる分岐ポリエーテル樹脂組成物とポリカルボン酸無水物とを混合し、前記分岐ポリエーテル樹脂組成物中の水酸基と、ポリカルボン酸無水物中の無水酸基とを反応させることを特徴とする酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記分岐ポリエーテル樹脂組成物中の水酸基と前記ポリカルボン酸無水物中の無水酸基とを樹脂固形分の酸価が50〜120mgKOH/gとなるまで反応させる請求項14に記載の酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
ポリカルボン酸無水物として脂肪族ジカルボン酸無水物を用いる請求項14に記載の酸ペンダント型分岐ポリエーテル樹脂組成物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−199942(P2006−199942A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363100(P2005−363100)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】