説明

分散アンテナシステム、基地局装置、無線リソース制御方法

【課題】 端末位置に応じてアンテナを選択する分散アンテナシステムにおいて、通信品質の劣化を低減しつつ、各アンテナを使用する端末数の偏りを低減すること。
【解決手段】 システム内に多数のアンテナが分散配置される分散アンテナシステムにおいて、端末の位置に応じて通信品質の良い複数のアンテナで構成されるアンテナグループを選択すると共に、負荷の集中したアンテナ1−6を用いる端末2−1に対し、現在のアンテナグループの通信品質および負荷状態と、現在のアンテナグループの一部のアンテナを変更した場合の、変更後アンテナグループの通信品質および負荷状態に基づいて、端末2−1が通信するアンテナグループ3−1の一部のアンテナを変更してアンテナグループ3−6とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散アンテナシステム、基地局装置、無線リソース制御方法に係り、特にアンテナを分散配置する分散アンテナシステム、分散アンテナシステムにおける基地局装置、及び、無線リソース制御方法に関する。

【背景技術】
【0002】
セルラシステムにおいては更なる通信速度向上が求められており、最大通信速度が100Mbit/sを超えるLTE(Long Term Evolution)規格に準拠した無線通信システムが実用化され始めている。LTEでは、下りアクセスにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、上りアクセスにSC−FDMA(Single Carrier−Frequency Division Multiple Access)を用いることで、マルチパス耐性を向上している。加えて、送受信機で複数のアンテナを用いるMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送の導入によって周波数利用効率の向上を図っている。
セルラシステムは、所望信号を送信する基地局から距離が離れたセルエッジ端末は、距離減衰による所望信号電力の低下と隣接基地局との距離が近づくことによる干渉電力の増大が原因で、通信品質が劣化するという課題を有している。
LTEの発展規格であるLTE-Advancedでは、このようなセルエッジ端末の通信品質の劣化、すなわち、通信品質の場所依存性を低減する技術として、基地局間での協調送受信によってセル間干渉を低減するCoMP技術(Coordinated Multi Point transmission and reception)や、基地局からの信号を中継してカバレッジエリアを拡張するRelay技術が検討されている。LTE−Advanced規格については非特許文献1に開示されている。
通信品質の場所依存性を低減するその他の技術として、分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna System)が知られている。
【0003】
図1に、分散アンテナシステムの例を示す。分散アンテナシステムでは、多数の基地局アンテナ1−1〜1−12をサービスエリア内に分散配置する。各端末2−1〜2−6は、複数のアンテナから構成されるアンテナグループを用いて通信を行う。ここで、このアンテナグループをクラスタ3と呼ぶ。分散アンテナシステムは、基地局アンテナと端末間の距離を短縮することで、距離減衰による所望信号電力の低下を防ぐことができる。そのため、端末位置による通信品質の変動を低減できる。しかし、図1に示すようなクラスタ3のカバレッジエリアが固定(固定クラスタ)の分散アンテナシステムでは、例えば、図1における端末2−4のように、クラスタ間の境界に位置する端末は、従来のセルラシステムと同様に、隣接のクラスタから大きな干渉を受け、通信品質が劣化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−53768号公報
【特許文献2】特開平5−344048号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP,“Feasibility study for Further Advancementsfor E−UTRA (LTE−Advanced)(Release 9)”,TR 36.912,V9.3.0,2010/06,pp17−20,http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36912.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端末位置に依存しない通信品質を達成するためには、分散アンテナシステムに加えて、各端末の位置に応じて適切なアンテナグループを選択する必要がある。すなわち、各端末に合わせて動的に変化するクラスタを形成する必要がある。その結果、所望信号の伝搬ロスを減らすことに加え、他の端末が通信している干渉信号の伝搬ロスを増やすことができ、所望信号対干渉+雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を向上できる。つまり、端末位置に依存しない通信品質を提供できる。
端末毎に適切なアンテナ選択を行う方法は、特許文献1に開示されている。特許文献1の方法によれば、端末毎の適切なアンテナ選択によって、システム容量を向上することができる。
一方、端末毎のスループットの決定要因として、通信品質の他に、端末当りに利用可能な時間周波数リソースの量がある。LTEのようにOFDMAやSC−FDMAを用いるセルラシステムでは、同一のセルに所属する端末間で、時間または周波数リソースを分割して通信を行う。そのため、各セルに所属する端末数に反比例して、端末当りに利用可能な時間周波数リソースが減少する。これは、図1のような固定クラスタの分散アンテナシステムでも同様である。つまり、同一のクラスタに所属する端末数に反比例して、端末当りの時間周波数リソースは減少する。
【0007】
一方、端末位置に応じて自由なアンテナ選択を行う動的クラスタの分散アンテナシステムの場合、各端末に対して形成したクラスタの内、一部のアンテナのみが重複する場合がある。つまり、複数のクラスタが一つのアンテナを共有するという現象が発生する。同一のアンテナにおいて、同一時間周波数リソースを用いて複数端末のデータを送信すると互いに大きな干渉となる場合がある。そのため、同一のアンテナを共有するクラスタ間においても、時間周波数リソースを分割する必要がある。その結果、端末当りに利用可能な時間周波数リソースは、同一クラスタに所属する端末数に加え、一部のアンテナのみが重複する異なるクラスタを選択した端末の数にも依存することになる。
ここで、複数のクラスタが同一のアンテナを共有する場合、あるアンテナを使用する総端末数は、当該アンテナを共有する全てのクラスタに所属する端末数の和となる。一般に、クラスタ内のアンテナ毎に、当該アンテナを使用する総端末数は異なる。したがって、動的クラスタの分散アンテナシステムにおいては、端末当りの時間周波数リソースは、クラスタ内の各アンテナを使用する総端末数の最大値に反比例して減少する。その結果、1つのアンテナを多くの端末が選択した場合、当該アンテナを選択した端末は、端末当りに利用可能な時間周波数リソースが減少する。すなわち、適切なアンテナ選択によって通信品質は向上するが、時間周波数リソースの減少によって、スループットが減少してしまう場合が想定される。
【0008】
従来のセルラシステムにおいて、特定の基地局やセルまたはセクタに端末(つまり、負荷)が集中した場合に、負荷分散を行う方法は特許文献2に開示されている。特許文献2に記載の方法では、基地局装置とアンテナとの接続を切り替えることで、負荷分散を実現している。つまり、負荷が集中した基地局は、接続するアンテナ数を減少することで、カバレッジエリアを縮小し、当該基地局に接続する端末を減少させる。さらに、負荷が少ない基地局は、接続するアンテナ数を増加することで、カバレッジエリアを拡大し、当該基地局に接続する端末を増加させる。
しかしながら、従来の基地局間の負荷分散制御方法によって、セルまたはセクタのカバレッジエリアの面積や形状を変化させると、それまでエリアの中心に位置していた端末が、新たなエリアではエリアの境界に位置する可能性がある。その結果、通信品質が劣化してしまう場合がある。つまり、負荷分散を行っても、通信品質の劣化によって、スループットが低下してしまうことも考えられる。また、エリア面積や形状の変更によって、新たなセルまたはセクタのカバレッジエリアに入った端末は、新たに所属するセルまたはセクタにハンドオーバする必要がある。そのため、複数の端末が一斉にハンドオーバすることになり、制御トラヒックの増大を招く場合がある。
また、従来の負荷分散制御方法では、複数のセルまたはセクタが同時に一部のアンテナを共有するという状態は意図していないため、端末位置に応じたアンテナ選択を実施する分散アンテナシステムには適用できないという課題がある。
この課題を解決するため、通信品質を維持しつつ、各アンテナを使用する総端末数の偏りを低減することで、端末当りに利用可能な時間周波数リソースを改善し、端末が達成可能なスループットを向上するシステムが必要となる。

【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、分散アンテナシステムにおいて、端末の位置に応じてアンテナグループを選択することで、当該端末の通信品質を向上することを目的のひとつとする。また、本発明は、通信品質の劣化を抑えつつ、端末数の偏りを低減し、その結果、端末当りに利用可能な時間周波数リソースを向上し、スループットを改善することを他の目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様として、多数のアンテナが分散配置される基地局装置を備える分散アンテナシステムにおいて、端末に応じて通信品質の良い複数のアンテナで構成されるアンテナグループを選択する場合、当該アンテナグループを構成するアンテナの負荷に基づいて、当該アンテナグループ及び他のアンテナグループの少なくとも一のアンテナグループに含まれるアンテナの構成を変更する。
例えば、基地局装置は、負荷の集中したアンテナを使用する端末に対し、現在のアンテナグループの通信品質および負荷状態と、現在のアンテナグループの一部のアンテナを変更した場合の、変更後アンテナグループの通信品質および負荷状態に基づいて、当該端末が通信するアンテナグループの一部のアンテナを変更する。
【0011】
また、本発明の別の態様によると、
複数のアンテナが配置され、前記複数のアンテナを用いてデータを送受信する基地局装置を備え、端末の位置に応じて前記複数のアンテナの一部のひとつ又は複数のアンテナから構成されるクラスタを複数形成し、少なくとも二つのクラスタが少なくとも一つのアンテナを共有する分散アンテナシステムにおいて、
前記基地局装置は、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする分散アンテナシステムが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、
複数のアンテナが配置され、前記複数のアンテナを用いてデータを送受信する基地局装置を備え、端末の位置に応じて前記複数のアンテナの一部のひとつ又は複数のアンテナから構成されるクラスタを複数形成し、少なくとも二つのクラスタが少なくとも一つのアンテナを共有する分散アンテナシステムにおける基地局装置であって、
アンテナ毎の負荷状態又は通信品質又はスループット若しくは伝送速度に応じて端末と通信する複数のアンテナの一部のアンテナを変更するための無線リソース制御部
を備え、
前記無線リソース制御部は、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする基地局装置が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、
複数のアンテナが配置され、前記複数のアンテナを用いてデータを送受信する基地局装置を備え、端末の位置に応じて前記複数のアンテナの一部のひとつ又は複数のアンテナから構成されるクラスタを複数形成し、少なくとも二つのクラスタが少なくとも一つのアンテナを共有する分散アンテナシステムにおける無線リソース制御方法であって、
前記基地局装置は、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする無線リソース制御方法が提供される。
【0014】
また、上述のような分散アンテナシステムにおいて、
新規通信端末によるアンテナ変更における前記仮決定では、
前記仮決定の前に、
前記基地局装置は、第1の端末からの初期アクセス信号を受信すると、初期アクセス信号のアンテナ毎の受信電力を推定し、第1の端末へ応答信号を返信し、
前記基地局装置は、第1の端末から端末固有の識別信号を受信することで、第1の端末を特定し、第1の端末からの初期アクセス信号を基に推定されたアンテナ毎の受信電力に基づき、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ(a、a)、第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)を前記仮決定する
ことができる。
【0015】
上述のような分散アンテナシステムにおいて、
端末の移動によるアンテナ変更(基地局側で検出)における前記仮決定では、
前記仮決定の前に、
第1の端末と第2の端末がそれぞれ、第0及び第2のアンテナ(a、a)および第1及び第3のアンテナ(a、a)を用いて、前記基地局装置と通信を行っている状態において、
前記基地局装置は、第1及び第2の端末から定期的に又は所定タイミングで送信された参照信号を基に、各端末の変更先候補のアンテナの受信品質を推定し、
第1の端末が移動し、アンテナ毎の受信品質が変化した場合、前記基地局装置は、変更先候補のアンテナの推定結果に基づき、第1の端末にとって、現在通信中の第0のアンテナ(a)よりも変更先候補の第1のアンテナ(a)の受信品質が良くなったことを検出すると、前記基地局装置は、第1の端末用の変更先のアンテナを第1及び第2のアンテナ(a、a)に、変更先のクラスタを第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)に前記仮決定する
ことができる。
【0016】
上述のような分散アンテナシステムにおいて、
端末側の移動によるアンテナ変更(端末側で検出)における前記仮決定では、
前記仮決定の前に、
前記基地局装置は、アンテナ毎に区別できるように下り参照信号を送信し、
各端末は、前記基地局装置から送信される下り参照信号を用いて、現在通信中のクラスタのアンテナに加え、変更先候補のアンテナの受信品質を測定し、
第1の端末は、現在通信中の第0のアンテナ(a)よりも第1のアンテナ(a)の受信品質が良くなったことを検出すると、第1の端末は、現在通信中の複数アンテナの識別情報及び受信品質と、変更先候補のアンテナの識別情報及び受信品質を報告し、
前記基地局装置は、第1の端末から報告されるアンテナ毎の受信品質の測定結果を基に、第1の端末用の変更先のアンテナを第1及び第2のアンテナ(a、a)に、変更先のクラスタを第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)に前記仮決定する
ことができる。

【発明の効果】
【0017】
本発明の一の態様によると、分散アンテナシステムにおいて、端末の位置に応じて伝搬減衰の少ないアンテナグループを選択することで、当該端末の通信品質を向上できる。また、本発明の一態様によると、各アンテナを使用する端末数の偏りに応じて、通信品質が最適なアンテナグループの内、一部のアンテナのみを準最適なアンテナに変更することで、通信品質の劣化を抑えつつ、端末数の偏りを低減できる。その結果、本発明によると、端末当りに利用可能な時間周波数リソースを向上し、スループットを改善できる。
また、本発明によると、当該端末への通信アンテナグループの変更を、アンテナ識別子の通知によって行うことで、ハンドオーバの処理を行わずに端末数の偏りを低減することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】固定クラスタの分散アンテナシステム。
【図2】端末位置に応じて動的なクラスタを形成する分散アンテナシステム。
【図3】クラスタへの時間周波数リソース割当ての例。
【図4】本実施の形態のアンテナ変更による無線リソース制御方法の概念図。
【図5】アンテナ変更実施後のクラスタ構成における時間周波数リソース割当ての例。
【図6】新規端末の発生から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第1の例(1)。
【図7】端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第2の例(1)。
【図8】端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第3の例(1)。
【図9】本実施の形態による無線リソース制御方法を実現する集中基地局装置の構成図。
【図10】本実施の形態の無線リソース制御方法のフローチャートの第1の例。
【図11】本実施の形態の無線リソース制御方法のフローチャートの第2の例。
【図12】端末IDと変更先候補のアンテナの管理テーブルの例。
【図13】クラスタとアンテナの対応関係とアンテナ毎およびクラスタ毎の負荷情報を管理する無線リソース管理テーブルの例。
【図14】クラスタ毎の所属端末を管理するクラスタ管理テーブルの例。
【図15】新規端末の発生から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第1の例(2)。
【図16】端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第2の例(2)。
【図17】端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第3の例(2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.分散アンテナシステム

図2は、端末毎に通信品質に応じてアンテナ1−1から1−12の中から複数のアンテナを選択する動的クラスタの分散アンテナシステムの例を示す。
端末2−1から2−6は、システム内に分散配置された多数のアンテナ1−1から1−12の中の、複数のアンテナから構成されるアンテナグループを用いてデータ通信を行う。図2では、端末2−1から2−6は、それぞれ2アンテナを用いて通信を行う。このアンテナグループをクラスタ3−1〜3−5と呼ぶ。各アンテナは光ファイバなどの有線回線4を通じて集中基地局装置5と接続されている。下りリンクでは、集中基地局装置5で生成した複数端末宛のデータが、同一時間周波数(同一時間及び同一周波数を表す。以下同様。)を用いて複数のアンテナから送信される。上りリンクでは、同一時間周波数を用いて複数の端末から送信された信号が複数のアンテナで受信され、集中基地局装置5へと転送される。
各端末のクラスタ3−1から3−5は、端末の位置に応じて伝搬減衰の小さいアンテナで構成されるものが選択される。その結果、所望信号の受信電力が向上し、他の端末に対する信号(干渉信号)の受信電力が低下する。そのため、所望信号に対するSINR(Signal to Interference plus Noise power Ratio)を向上することができる。
複数の端末に対し、それぞれ自由なアンテナ選択を行うと、図2のように端末間で選択したアンテナの一部または全部が重複する。例えば、端末2−1はアンテナ1−5と1−6から構成されるクラスタ3−1を選択している。また、端末2−2と端末2−3は、いずれもアンテナ1−2と1−6から構成されるクラスタ3−2を選択している。したがって、クラスタ3−1と3−2はアンテナ1−6のみが重複している。同一のアンテナから同一の時間周波数を用いて、複数端末宛のデータを送信すると、大きな干渉を及ぼす。したがって、全てのアンテナが重複する、すなわち同一のクラスタに所属する端末間では、従来のセルラシステムと同様に、時間周波数リソースを分割する必要がある。例えば、クラスタ3−2では、端末2−2と端末2−3の間で、時間周波数リソースを分割する。さらに、一部のアンテナのみを共有するクラスタ間においても、時間周波数リソースを分割する必要がある。例えば、クラスタ3−1と3−2の間で時間周波数リソースを分割する。ただし、アンテナが重複しないクラスタ同士は、空間的な周波数効率向上のため、同一時間周波数を用いて通信を行う。例えば、クラスタ3−1とクラスタ3−5では、同一時間周波数を用いて通信を行う。
【0020】
図3は、図2のクラスタ構成におけるクラスタ間の時間周波数リソース分割の例を示している。以降では、時間周波数リソースは、システム全体で利用可能な時間周波数リソースが1になるように正規化したものとして説明する。
図2では、アンテナ1−6はクラスタ3−1、3−2、3−3、3−4が共有しており、各クラスタに所属する端末数はそれぞれ、1、2、1、1である。したがって、アンテナ1−6を使用する総端末数は5である。このように、複数のクラスタが同一のアンテナを共有する場合、あるアンテナを使用する総端末数は、当該アンテナを共有する全てのクラスタに所属する端末数の和となる。例えば、アンテナ1−6を共有する各クラスタ(3−1〜3−4)に対し、各クラスタに所属する端末数に比例した時間周波数リソースを割当てるものとする。その場合、クラスタ3−1、3−2、3−3、3−4の時間周波数リソースは、図3に示すように、それぞれ、1/5、2/5、1/5、1/5となる。クラスタ3−1、3−3、3−4に所属する端末数は、いずれも1である。したがって、当該クラスタに所属する端末2−1、2−4、2−5が利用可能な時間周波数リソースも1/5となる。一方、クラスタ3−2に所属する端末数は2である(端末2−2と2−3)。このとき、クラスタ3−2に割当てられた時間周波数リソース2/5を、端末2−2と2−3の間で等しく分割するものとすると、端末2−2と2−3が利用可能な時間周波数リソースは、いずれも1/5となる。一方、アンテナを共有するクラスタがないクラスタ3−5の時間周波数リソースは1である。また、所属する端末も端末2−6のみであるため、端末2−6の時間周波数リソースも1となる。
このように、複数のクラスタが少なくとも1つのアンテナを共有する場合、クラスタ当りに利用可能な時間周波数リソースが、システム全体で利用可能な時間周波数リソースに比べて減少する。さらに、各クラスタにおいて利用可能な時間周波数リソースが、同一のクラスタに所属する端末間で分割される。その結果、1つのアンテナに多数の端末が集中すると、端末当りの時間周波数リソースが減少し、端末のスループットが低下する。ここで、図3では、クラスタ間で時間リソースを分割しているが、周波数リソースを分割しても良く、その両方を組み合わせて分割してもよい。以降、説明のため、一部のアンテナを共有するクラスタ間では時間リソースを分割して通信を行うものとする。
【0021】
図4は、本実施の形態の無線リソース制御方法の概念図である。
集中基地局装置5では、各アンテナを使用する総端末数などの負荷状態を監視する。そして、あるアンテナが過負荷状態になったと判断すると、当該アンテナから端末を移動させる処理を行う。ただし、現在通信しているクラスタは、端末にとって通信品質の良いものであるため、強制的なクラスタ変更、すなわちアンテナ変更は、端末の通信品質の大きな劣化を引き起こす可能性がある。そこで、集中基地局装置5は、現在端末が通信しているクラスタの内、一部のアンテナのみを変更する。その結果、通信品質の劣化を抑えつつ、過負荷となったアンテナの負荷を低減する。
例えば、図4では、多数の端末がアンテナ1−6を選択しており、アンテナ1−6に負荷が集中している。そこで、集中基地局装置5は、負荷の集中したアンテナ1−6を用いる端末2−1、2−2、2−3、2−4、2−5の中からアンテナ変更を行う端末を選択する。図4では、端末2−1をアンテナ変更の対象として選択し、端末2−1のクラスタをクラスタ3−1(アンテナ1−5、1−6)からクラスタ3−6(アンテナ1−1、1−5)に変更している。つまり、アンテナ1−5を維持しつつ、負荷の集中したアンテナ1−6を負荷の少ないアンテナ1−1に変更している。アンテナ1−5は、端末2−1との距離が小さく、受信電力が支配的なアンテナである。そのため、変更後のクラスタ3−6においても、端末2−1の通信品質の劣化は抑えられている。また、端末2−2〜2−5のクラスタは変化していないため、当該端末の通信品質の劣化はほとんど生じない。一方で、端末2−1が移動したことで、アンテナ1−6を使用する総端末数は減少し、負荷が低減される。このように、本実施の形態の無線リソース制御方法は、端末の一部のアンテナのみを変更することと、端末単位のアンテナ変更を実施することによって、通信品質の劣化を抑えつつ、負荷低減を実現することを特徴とする。
【0022】
図5は、図4において、アンテナ変更を実施した後のクラスタ間のリソース分割の例を示している。
図4において、端末2−1の変更先のクラスタ3−6では、アンテナ1−1、1−5共に同アンテナを用いる端末が存在しない。そのため、端末2−1はシステム内で利用可能な全時間周波数リソースを使用できる。その結果、端末2−1の時間周波数リソースは、アンテナ変更前の1/5から1に向上する。加えて、端末2−1が移動した結果、アンテナ1−6を使用する総端末数が5から4へと減少する。その結果、クラスタ3−2、3−3、3−4に割当てる時間リソースは、それぞれ、2/4、1/4、1/4に増加する。したがって、端末2−2、2−3、2−4、2−5の時間周波数リソースも1/5から1/4に改善する。
【0023】
2.アンテナ変更のシーケンス

図6は、新規通信端末の発生によりアンテナの負荷状態が変化し、集中基地局装置5が負荷低減のためのアンテナ変更を実施する場合のシーケンス図の第1の例(1)を示す。
新規端末の初期アクセス手順の基本的な動作は、例えば、LTEシステムのものに準拠する。ただし、新規端末の初期アクセス時はデータ通信を行うクラスタが決定されていない。そのため、初期アクセス手順において、データ通信に用いるアンテナ識別子(アンテナID)を通知するまでの処理は、予め定められた又は任意の所定のアンテナを用いて行われる。最も簡単には、システム内の全アンテナで、初期アクセス手順に関する信号をブロードキャストしてもよく、固定のクラスタパターンを用いて送信ダイバーシチを行っても良い。
新規端末uは、まず、システム内にブロードキャストされる同期信号とシステム情報を受信し、同期捕捉およびシステム情報の取得を行う。その後、初期アクセス信号を送信する(S2)。システム情報には、例えば、送信タイミング、周波数および信号系列、最初にアクセスするとき等においてシステムが使用する帯域幅を含むことができる。初期アクセス信号は、システム情報から定められる送信タイミング、周波数および信号系列を用いて送信する。初期アクセス信号はLTEではRandom Access Preambleに対応する。集中基地局装置5は、初期アクセス信号を受信して新規端末uが存在することを検出する。さらに、集中基地局装置5は、初期アクセス信号のアンテナ毎の受信電力を推定する(S3)。新規端末が検出できた場合、集中基地局装置5は、例えば全てのアンテナから、新規端末uへ応答信号を返信する(S4)(応答信号はLTEではRandom Access Responseに対応する)。応答信号を受信した新規端末uは、応答信号で指定される周波数や変調方式、符号化方式に従って、端末固有の識別信号を送信する(S5)(識別信号はLTEではMsg3と呼ばれる信号に対応する)。集中基地局装置5は、当該識別信号の受信に成功することで、新規端末uを特定する。そして、初期アクセス信号を基に推定されたアンテナ毎の受信電力を用いて新規端末uの初期クラスタを仮決定する(S6)。初期クラスタは、例えば、受信電力の大きい方からP個のアンテナが選択される。図6では、一例として、P=2、初期クラスタとして、アンテナa、aから構成されるクラスタnが選択されている。なお、クラスタID nは、集中基地局装置5の内部でクラスタ管理を行うために用いられる。以下、P=2の場合を例に説明するが、Pがこれ以外でもよい。
新規端末uが新たにアンテナa、aを選択することで、アンテナa、aの負荷状態が変化する。そのため、集中基地局装置5は、アンテナa、aの過負荷判定を行う(詳細は図10、図11等で後述)(S7)。例えば、アンテナaが過負荷であると判定されると、集中基地局装置5は、負荷低減のためにアンテナaから端末(既通信端末又は新規端末)を移動させる処理を試行する。そして、アンテナ変更の対象となる端末ID、変更先アンテナIDおよびクラスタIDを決定する(詳細は図10、図11等で後述)(S8)。図6では、集中基地局装置5は、アンテナ変更の対象となる端末として、それまでアンテナa、aを用いて通信中(S1)であった既通信端末uを選択している。そして、既通信端末uのアンテナaの変更先アンテナとして、アンテナaを決定している。つまり、既通信端末uの通信アンテナが、アンテナa、aからアンテナa、aに変更される。その後、集中基地局装置5は、新規端末uのクラスタを、初期クラスタを仮決定したクラスタnに確定する(S9)。次いで、集中基地局装置5は、新規端末uに選択されたアンテナID(a、a)を通知する(S10)。新規端末uは、通知されたアンテナを用いて以降の通信を行う(S11)。加えて、集中基地局装置5は、負荷低減のためのアンテナ変更対象となった既通信端末uに対し、変更先のアンテナID(a、a)を通知する(S12)。既通信端末uは、通知されたアンテナを用いて以降の通信を行う(S13)。
【0024】
なお、ここでは、新規端末と負荷低減のためのアンテナ変更を行う端末は異なるものとして述べているが、同じ端末となる場合もある。その場合、仮決定した初期クラスタが、アンテナ変更処理によって変更される。そして、新規端末には変更後のアンテナIDが初期クラスタのアンテナIDとして通知される。さらに、端末uに対するアンテナ変更の通知は実施されない。
図15に、この場合の、新規端末の発生から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第1の例(2)を示す。
上述のようなステップS6までの処理の後、アンテナaが過負荷であると判定すると(S7)、負荷低減のために、端末u用の通信アンテナをアンテナa、aに変更し、クラスタをアンテナa、aを含むクラスタnに決定し(S8)、端末u用のクラスタを、クラスタnに確定し(S9)、端末uに、確定したアンテナa、aの識別情報及び/又はクラスタnの識別情報を通知し(S10)、を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う。
【0025】
図7は、端末の移動に伴ってアンテナ毎の負荷状態が変化し、集中基地局装置5が負荷低減のためのアンテナ変更を実施する場合のシーケンス図の第2の例(1)を示す。
図7では、端末uと端末uがそれぞれ、アンテナa、aおよびアンテナa、aを用いて、集中基地局装置5と通信を行っている状態を初期状態とする(S21、S22)。
各端末は、現在通信中のクラスタにおけるCQI(Channel Quality Indicator)および上りリンク受信品質推定用の既知系列であるReference Signalを定期的に又は所定タイミングで送信する。集中基地局装置5では当該CQIとReference Signalを基に、各端末の変更先の候補となる(すなわち、現在通信中のクラスタの周囲の)アンテナの受信品質を推定する(S23)。例えば、現在アンテナa、aを用いて通信している端末uが移動し、アンテナ毎の受信品質が変化した場合を例に挙げる。当該推定結果(詳細は後述)に基づき、集中基地局装置5は、端末uにとって、現在通信中のアンテナaよりもアンテナaの受信品質が良くなったことを検出する(S24)。次いで、当該端末uに対し移動に伴うアンテナ変更処理を実施する。まず、集中基地局装置5は、端末uの変更先クラスタ(アンテナa、a)を仮決定する(S25)。前述のように、例えば、受信電力の大きい方からP個(一例として、P=2)のアンテナが選択される。その結果、アンテナaの負荷状態が変化する。次に、集中基地局装置5は、アンテナaの過負荷の判定を行う(詳細は図10、図11等で後述)(S26)。
端末uの変更先のアンテナaが過負荷となると判定された場合、新規端末の発生の場合と同様に、集中基地局装置5は、当該アンテナaから負荷低減のために端末を移動させる処理を試行する。そして、アンテナ変更の対象となる端末IDと変更先アンテナIDおよびクラスタIDを決定する(詳細は図10、図11等で後述)(図7では、端末ID u、変更先アンテナID(a、a)、クラスタID nが決定されている)(S27)。その後、集中基地局装置5は、移動によってアンテナ変更を実施する端末uおよび負荷低減のためにアンテナ変更を実施する端末uに対し、変更後のアンテナIDを通知し、処理が終了する(S28〜S32)。
【0026】
図7においても、移動によるアンテナ変更を行う端末と、負荷低減のためのアンテナ変更を行う端末は異なるものとしているが、同じとなる可能性もある。
その場合、仮決定した変更先クラスタが、アンテナ変更処理によって変更される。そして、端末uには変更後のアンテナIDが初期クラスタのアンテナIDとして通知される。さらに、端末uに対するアンテナ変更の通知は実施されない。
図16に、端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第2の例(2)を示す。
上述のようなステップS6までの処理の後、アンテナaが過負荷であると判定すると(S26)、負荷低減のために、端末u用の通信アンテナをアンテナa、aに変更し、アンテナa、aを含むクラスタnを変更先に決定し(S27)、端末u用のクラスタを、クラスタnに確定し(S28)、端末uに、確定したアンテナa、aの識別情報及び/又はクラスタnの識別情報を通知し(S29)、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う。
【0027】
図8は、端末の移動に伴ってアンテナ毎の負荷状態が変化し、集中基地局装置5が負荷低減のためのアンテナ変更を実施する場合の第3の例(1)を示す。
図7と図8が異なる点は、図7では、端末のアンテナ毎の受信品質を、上りReference Signalを用いて集中基地局装置5で推定するのに対し、図8では、端末側でアンテナ毎の受信品質を測定し、当該測定結果を集中基地局装置5に報告する点である。なお、端末がアンテナ毎の受信品質を測定し、集中基地局装置5に報告する動作は、例えば、LTEにおけるMeasurement機能に類似している。LTEにおけるMeasurementについては、TS(Technical Specification)36.331に開示されている。本動作と、LTEにおけるMeasurementとの違いは、LTEのMeasurementはあるCell IDを持つCell毎に行われ、アンテナの区別を行わないのに対し、本動作では、同一のCell IDであってもアンテナIDごとにMeasurementを行い、アンテナ毎の受信品質を報告する点である。
各端末は、集中基地局装置5から送信される下りReference Signalを用いて、現在通信中のクラスタのアンテナに加え、変更先候補となるアンテナの受信品質を測定する。図8では、変更先候補のアンテナをNeighbourアンテナと呼んでいる。当該受信品質は、フィルタリング等を用いて平均化される。ただし、集中基地局装置5は、下りReference SignalをアンテナID毎に区別できるように送信する。各端末は、周期的または基地局側から指定されるEventが発生した場合に、当該受信品質の測定結果および各測定結果に対応するアンテナIDを報告する。指定のEventは、変更先の候補となるNeighbourアンテナの受信品質が、現在通信中のアンテナよりも良くなった場合に対応する。さらに、現在通信中のアンテナの受信品質がある閾値を下回った場合などを指定してもよい。
【0028】
図8では、端末uは、アンテナのMeasurementを行い、現在通信中のアンテナaよりもアンテナaの受信品質が良くなったことを検出する(S43)。その結果、周期的又は基地局指定のEventが発生した場合、端末uは、現在通信中のアンテナとNeighbourアンテナの受信品質を報告する(S44)。この報告には、例えば、通信中アンテナa、aのID、通信中アンテナa、aの受信品質、変更先候補アンテナaのIDと受信品質を含むことができる。集中基地局装置5では、端末uから報告されるアンテナa、a、a毎の受信品質の測定結果を基に、端末uにアンテナ変更が必要であるか否かを判断する(詳細は図10、図11等で後述)(S45)。アンテナ変更が必要であると判定された場合は、集中基地局装置5は、端末uの変更先アンテナの仮決定を行う(詳細は図10、図11等で後述)(S46)。次いで、変更先アンテナaの過負荷判定を行う(詳細は図10、図11等で後述)(S47)。その後の動作手順は図7と同様である。
【0029】
図8においても、移動によるアンテナ変更を行う端末と、負荷低減のためのアンテナ変更を行う端末は異なるものとしているが、同じとなる可能性もある。その場合、仮決定した変更先クラスタが、アンテナ変更処理によって変更される。そして、端末uには変更後のアンテナIDが初期クラスタのアンテナIDとして通知される。さらに、端末uに対するアンテナ変更の通知は実施されない。
図17に、端末移動に伴うアンテナ変更から負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのシーケンス図の第3の例(2)を示す。
上述のようなステップS46までの処理の後、アンテナaが過負荷であると判定すると(S47)、負荷低減のために、端末u用の通信アンテナをアンテナa、aに変更し、アンテナa、aを含むクラスタnを変更先に決定し(S48)、端末u用のクラスタを、クラスタnに確定し(S49)、端末uに、確定したアンテナa、aの識別情報及び/又はクラスタnの識別情報を通知し(S50)、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う。
【0030】
3.集中基地局装置

図9は、本実施の形態を実現する分散アンテナシステムの集中基地局装置5の構成図である。
アンテナ1(RRH:Remote Radio Headとも呼ばれる)はシステム内に面上に多数配置される。各アンテナ1は、光ファイバ等の有線回線4を介して、アンテナ接続切り替え部104と接続している。各アンテナ1は、集中信号処理部101から出力される下り信号の送信と端末から送信される上り信号の受信を行う。
アンテナ接続切り替え部104は、集中信号処理部101のクラスタ信号処理部102−1、102−2のインターフェースである論理アンテナポート103−1、103−2とアンテナ1間の接続を自由に切り替えるルータ機能を有する。クラスタ信号処理部102−1、102−2の論理アンテナポート103−1、103−2とアンテナ1間の接続制御情報はクラスタスケジューラ106から入力される。集中基地局装置5は、本接続を切り替えることで、通信するクラスタを時間と共に変化させ、通信端末に応じて動的に変化するクラスタ形成を実現する。
クラスタスケジューラ106は、無線リソース制御部107からアンテナ1のアンテナIDとクラスタIDの対応関係と、クラスタ毎およびアンテナ毎の負荷情報を取得する。そして、各クラスタに割当てる時間リソースの割合および同一時間周波数を用いて通信を行う複数クラスタの組合せを決定する。クラスタスケジューラ106は、同一時間に通信を行う複数のクラスタとして、重複するアンテナがないものを選択する。ある時間に通信するクラスタとアンテナの対応関係(これをクラスタスケジューリング結果と呼ぶ)は、ユーザスケジューラ105とアンテナ接続切り替え部104に通知される。
【0031】
ユーザスケジューラ105は、クラスタスケジューラ106からクラスタスケジューリング結果を受信し、ある時間に通信を行うクラスタの組合せの情報を取得する。そして、当該クラスタに所属する端末の情報に基づき、各クラスタにおいて通信する端末や当該端末の通信方法(周波数、変調方式、符号化率など)を決定する。端末の情報は、CQIやバッファ残量などである。ユーザスケジューリングの方法としては、Round Robinスケジューリングや、Proportional Fairnessスケジューリングなどの従来のセルラシステムに用いられているものと同様のスケジューリング方法を用いることができる。ある時間に通信を行うクラスタIDと、端末IDおよび通信方法(これをユーザスケジューリング結果と呼ぶ)は、集中信号処理部101に通知される。
集中信号処理部101では、ゲートウェイ110から受信する端末データと集中信号処理部101内で生成した制御情報、無線リソース制御部107からのアンテナID変更通知情報をバッファに格納する。そして、ユーザスケジューリング結果に応じて、端末データおよび制御信号をトランスポートブロックとして結合し、クラスタ信号処理部102−1、102−2へと入力する。ただし、同一のクラスタに所属する端末宛のトランスポートブロックは、同一のクラスタ信号処理部に入力される。
【0032】
クラスタ信号処理部102−1、102−2では、各端末宛のトランスポートブロックに対し、符号化、変調、レイヤマッピングやプリコーディング等のMIMO処理、周波数マッピングなどの信号処理を施す。クラスタ信号処理部102−1、102−2は、以上の信号処理を行って、それぞれP個の信号系列を生成する。P個の信号系列は、クラスタ内のP個のアンテナが送信する信号系列に対応する。そして、クラスタ信号処理部102−1、102−2で生成したP個の信号系列は、それぞれ、論理アンテナポート103−1、103−2から出力される。クラスタ内の各アンテナのアンテナIDと論理アンテナポート103−1、103−2の対応関係は、アンテナIDが小さい方から論理アンテナポート番号の0、1、・・・、P−1と対応させればよい。ただし、端末側でも信号処理が上記対応関係に基づいて行われることを把握しておく必要がある。また、各端末の信号処理は、ユーザスケジューリング結果に従って行われる。
無線リソース制御部107は、本実施の形態におけるアンテナ変更による負荷低減を実施するキーコンポーネントである。無線リソース制御部107は、無線リソース管理部108とアンテナ変更制御部109を備える。無線リソース管理部108は、クラスタとアンテナの対応関係、アンテナ毎およびクラスタ毎の負荷情報、各端末の接続情報を管理するメモリである。各端末の接続情報は、通信中クラスタおよび変更先候補のアンテナのID、通信品質情報などに対応する。なお、メモリについては、後述の、図12「アンテナ管理テーブル」、図13「リソース管理テーブル」、図14「クラスタID−端末IDテーブル」で説明する。アンテナ変更制御部109は、各アンテナの過負荷状態の判定を行う。さらに、過負荷と判定された場合は、当該アンテナを用いる端末の中から、アンテナ変更を実施する端末ID、変更先アンテナIDおよびクラスタIDを決定する。アンテナ変更を実施する端末IDと当該端末の変更先アンテナIDは、集中信号処理部101に当該端末宛の制御情報として通知される。また、アンテナ変更を実施する端末ID、変更先アンテナIDおよびクラスタIDは、無線リソース管理部108へ通知される。無線リソース管理部108は、当該情報に基づいて、負荷情報や端末の接続情報を更新する。
【0033】
4.過負荷判定から変更先の決定のフローチャート

図10は、無線リソース制御部107のアンテナ変更制御部109において、アンテナ毎の過負荷状態の判定から、負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのフローチャートの第1の例を示す。
アンテナ変更制御部109は、各アンテナを使用する総端末数が閾値を超えるかどうかによって、過負荷であるか否かを判定する(S101)。あるアンテナを使用する総端末数が閾値を超えた場合、アンテナ変更制御部109は、当該アンテナを用いる端末の内、当該アンテナを第2アンテナ以降とする端末に対し、アンテナ変更を行う。ここで、各端末にとっての第1アンテナ、第2アンテナ、・・・、第Pアンテナは、例えば、上りReference Signalから基地局で推定した受信品質または端末から報告される受信品質の良い順に決定される。当該アンテナを第1アンテナとする端末をアンテナ変更の候補から除外するのは、第1アンテナの変更が、当該端末にとって通信品質の大幅な劣化を招く可能性が高いためである。アンテナ変更制御部109は、過負荷と判定したアンテナを用いる端末の、変更先の候補となる全アンテナに対し、当該アンテナを使用する総端末数を計算する。そして、当該動作を、過負荷と判定したアンテナを第2アンテナ以降とする全端末に対して行う。そして、変更先アンテナを使用する総端末数が最小となる端末IDと当該端末の変更先アンテナIDおよびクラスタIDを記憶する(S102)。変更先候補のアンテナIDおよび当該アンテナを使用する総端末数は、無線リソース管理部108より取得する。変更先アンテナを使用する総端末数が、変更前アンテナを使用する総端末数よりも少ない場合は、負荷低減が可能となる。そのため、アンテナ変更が実施される(S103)。変更先アンテナを使用する総端末数が最小となる端末が複数存在した場合、ランダムに又は予め定められた適宜の手法で1端末が選択される(S104、S105)。以上の手順によって、アンテナ変更制御部109は、アンテナ変更の対象となる端末ID、変更先アンテナID、クラスタIDを決定する(S106)。さらに、当該端末のアンテナ変更情報を無線リソース管理部108に通知する。無線リソース管理部108は、当該情報に基づき、端末の接続情報および負荷情報を更新する。また、アンテナ変更制御部109は、当該端末宛のアンテナ変更を通知する制御情報を集中信号処理部に通知する。
【0034】
図10の方法は、アンテナ変更の対象を過負荷アンテナを第2アンテナ以降とする端末に制限することで、アンテナ変更による通信品質の劣化を防いでいる。しかし、アンテナ変更を実施するか否かの判定は、各アンテナを使用する総端末数のみによって行っている。通常、端末数の少ないアンテナに変更することによる端末当りの時間周波数リソースの向上と、変更前アンテナに比べ通信品質が劣るアンテナを用いることによる通信品質の劣化はトレードオフである。そのため、逆に、アンテナ変更後にスループットが低下してしまう可能性がある。これを防ぐためには、アンテナ変更後に端末から報告されるCQIまたはアンテナ変更後の一定期間において、当該端末が達成したスループットを監視する必要がある。そして、同CQIまたはスループットがアンテナ変更前よりも大幅に劣化している場合には、元のアンテナに戻し、別の端末に対し再度アンテナ変更を試行するという処理が必要となる。
【0035】
しかし、次の実施例のように、変更後のスループットを可能な限り予測してアンテナ変更を実施し、アンテナ変更の再試行が行われる確率を最小限にする方が望ましい。また、クラスタ毎および端末毎の時間周波数リソースは、ユーザスケジューラ105およびクラスタスケジューラ106に依存する。そのため、当該スケジューラのスケジューリング方法を考慮することでより正確な変更後スループットが予測できると考えられる。
図11は、無線リソース制御部107のアンテナ変更制御部109において、アンテナ毎の過負荷状態の判定から、負荷低減のためのアンテナ変更が実施されるまでのフローチャートの第2の例を示す。
過負荷状態の判定は、端末毎の評価関数の閾値判定によって行われる。評価関数は例えば、数式(1)で表わされる。

(n)=C(n)Rcluster(n)R(n) (1)

ここで、C(n)は、端末uのクラスタnにおける受信品質に依存する項であり、シャノンのチャネル容量またはSINRと対応づけてテーブル化した周波数利用効率などを用いることができる。チャネル容量やSINRは端末から報告されるCQIとアンテナ毎の受信電力、または、上りReference Signalから推定した受信電力を基に計算する。Rcluster(n)はクラスタnに割当てる時間周波数リソースに依存する項であり、クラスタスケジューラに依存して決定される。R(n)は、クラスタnにおいて、端末uに割当てられる時間周波数リソースに依存する項であり、ユーザスケジューラに依存して決定される。したがって、Rcluster(n)* R(n)は端末当りの時間周波数リソースを表わす。
【0036】
数式(1)のような評価関数を用いた場合、評価関数E(n)は、各端末のスループットの期待値を表わす。すなわち、あるアンテナを用いる総端末数が増加すると、Rcluster(n)やR(n)が減少し、当該アンテナを用いる端末のスループット又は伝送速度の期待値が減少する。一方、アンテナ毎の受信品質が低下すると、C(n)が減少し、同様に端末のスループットの期待値は減少する。本実施の形態による無線リソース制御方法は、ある端末のアンテナ変更によって、C(n)の減少を抑えつつ、Rcluster(n)* R(n)を増加させ、当該端末が達成可能なスループットを向上する。加えて、当該端末のアンテナ変更によって、変更元のアンテナを用いる端末はRcluster(n)* R(n)が増加する。一方で、C(n)は変化しないため、変更元アンテナを用いる端末もスループットが向上する。
cluster(n)やR(n)には、例えば以下のような値を用いることができる。
【0037】
図3や図5のように、各クラスタに所属する端末数に比例した時間リソースを割当てるクラスタスケジューリングを行う場合、Rcluster(n)は数式(2)で与えられる。

【数1】

ただし、nはクラスタnの論理アンテナポートpに対応するアンテナID、Pはクラスタnの論理アンテナポート数、Ucluster(n)はクラスタnに所属する端末数、UAnt(n)はアンテナnを使用する総端末数である。
また、ユーザスケジューリングにRound RobinスケジューリングやProportional Fairnessを用いる場合、端末に割当てられる時間周波数リソースは、同一クラスタに所属する端末間でほぼ均等となる。したがって、R(n)は数式(3)のようにクラスタnに所属する端末数分の1となる。

(n)=1/Ucluster(n) (3)

【0038】
別の実施形態として、アンテナを共有するクラスタ間で時間リソースを等分割するクラスタスケジューリングを行う場合、Rcluster(n)は数式(4)で表わすことができる。

【数2】

ただし、N(np)はアンテナnを共有するクラスタ数である。また、Pは、ひとつの端末が使う基地局側のアンテナ数である。なお、Pは固定としても、可変としてもよい。例えば、端末毎にシステムで固定としたり、受信品質や受信強度が所定閾値以上又は所定閾値範囲内にあるアンテナ数と定めて可変とすることもできる。
また、各クラスタに所属する端末の総バッファ残量に比例した時間リソースを割当てるクラスタスケジューリングを行う場合、Rcluster(n)は数式(5)で表わすことができる。同様に、各端末のバッファ残量に比例した時間周波数リソースを割当てるユーザスケジューリングを行う場合、R(n)は数式(6)で表わすことができる。

【数3】

ただし、Bcluster(n)はクラスタnに所属する端末の総バッファ量、BAnt(n)はアンテナnを用いる端末の総バッファ量、Buは端末uのバッファ量である。
【0039】
アンテナ変更制御部109は、端末毎に上述のような評価関数が閾値を下回るか否かを判定する(S111)。ある端末の評価関数が閾値を下回った場合、当該端末が用いるいずれかのアンテナが過負荷状態にあると判断する。そして、アンテナ変更制御部109は、当該端末が所属するクラスタのアンテナの中で、総端末数UAnt(n)または総バッファ量BAnt(n
が最大のアンテナを過負荷アンテナとして選択する(S112)。アンテナ変更制御部109では、無線リソース管理部108に格納された情報に基づき、当該アンテナを用いる端末に対し、当該アンテナを変更先候補のアンテナに変更した場合の評価関数を計算する(S113)。評価関数は、当該端末の全変更先候補のアンテナについて計算する。さらに、同様の計算を、過負荷と判定したアンテナを用いる全端末に対して行う。そして、アンテナ変更後の評価関数をアンテナ変更前の評価関数で除算したもの(つまり、アンテナ変更による評価関数の増加率)が最大となる端末IDおよび変更後のアンテナID、クラスタIDを記憶する(S114)。なお、ステップS113等で評価関数を計算するとき、評価関数の増加率(変更後評価関数/変更前評価関数)の値を後述の図12のようなテーブルに記憶しておき、ステップS114でこのテーブルを参照して、最大又は所定閾値以上となる、端末ID、及び、変更先候補アンテナID等クラスタIDを求めてもよい。
アンテナ変更制御部109は、当該端末のアンテナ変更後の評価関数が、アンテナ変更前に比べて改善する場合には、負荷低減のためのアンテナ変更を実施する(S115)。そして、変更対象の端末ID、変更先アンテナID、クラスタIDを記憶したものに決定する(S116)。評価関数が改善しない場合には、元のクラスタで通信した方が良いスループットが達成できると判断し、アンテナ変更は実施しない。
このように、第1、第2アンテナという各アンテナの品質の順番のみでなく、スループット又は伝送速度の期待値を示す評価関数を用いて、アンテナ変更実施後の当該端末のスループットを予測することで、アンテナ変更によって逆にスループットが劣化する確率を減少することができる。
また、評価関数は数式(1)とは別の方法を用いて計算されてもよい。例えば、変更元となる過負荷アンテナの共有クラスタ数や総バッファ量の減少率に応じて重み付けしても良い。
【0040】
5.無線リソース管理部のテーブル

図12は、無線リソース管理部108において、変更先候補のアンテナを管理する変更先候補のアンテナ管理テーブルを示す。変更先候補のアンテナ管理テーブルは、端末ID、現在および変更先候補のアンテナID、アンテナ変更後の評価関数の増加率を含む。変更先候補のアンテナは、各端末にとって受信品質の良いほうから一定数のアンテナ、または、受信品質が現在通信中のアンテナから一定閾値の範囲内にあるアンテナである。当該受信品質情報を受信または推定した場合や、各端末の通信アンテナの変更時に、変更先候補のアンテナIDおよび評価関数の増加率が更新される。
図13は、無線リソース管理部108において、クラスタIDとアンテナIDの対応関係およびクラスタ毎、アンテナ毎の時間周波数リソースを管理するためのリソース管理テーブルの例を示す。
リソース管理テーブルは、クラスタIDとアンテナID、アンテナ毎およびクラスタ毎の負荷情報、クラスタ毎および端末毎の時間周波数リソースを含む。クラスタとアンテナの対応関係は、アンテナIDを行、クラスタIDを列とした行列によって管理する。各行列成分は、当該クラスタの負荷情報を示し、各クラスタの列に対応するアンテナの行に情報を格納する(図13では端末数としているが、バッファ残量でもよい)。すなわち、各クラスタは行成分の存在するアンテナで構成されることを示している。例えば、クラスタID1は、アンテナID(5、6)から構成され、端末数は1である。また、各行成分の和は、当該アンテナを使用する総端末数(端末数/アンテナ)を示す。クラスタ当りの時間周波数リソース(リソース/クラスタ)は、クラスタスケジューラの方式によって、数式(2)、(4)、(5)などで与えられるものである。図13では、数式(2)を用いている。各クラスタにおける端末当りの時間周波数リソース(リソース/端末)は数式(3)や(6)で与えられるものである(図13では数式(3)を用いている)。新規端末の発生、端末移動に伴うアンテナ変更および負荷低減のためのアンテナ変更によって、テーブルの各成分は更新される。選択されるアンテナIDの組合せが、既存のクラスタIDに存在しない場合、新規のクラスタIDの列が追加される。もし、以前選択されたことがあるクラスタIDであって、現在の端末数が0である場合は、当該クラスタIDの列における当該アンテナIDの行成分は0とする。また、システムに新たなアンテナが追加された場合も、アンテナIDの行を追加する。
以上では、各端末にとって選択されるアンテナIDの組合せに応じて、適応的にクラスタIDを追加する例を示した。もしくは、クラスタIDとアンテナIDの組合せを事前に決定しておき、端末が選択できるアンテナIDの組合せを、事前に決定したクラスタIDによって制限してもよい。
【0041】
クラスタスケジューラ106は、上記リソース管理テーブルにおける、クラスタIDとアンテナIDの行列表を基に、同一時間周波数を用いて通信を行う複数のクラスタを、アンテナIDが重複しないように選択する。つまり、行列表において、行が重複しない複数のクラスタを選択する。
図14は、各クラスタにおける所属端末のIDを管理する、クラスタID‐端末IDテーブルを示す。本テーブルは、クラスタIDと当該クラスタに所属する端末IDを含む。そして、ユーザスケジューラ105や、無線リソース制御部108において各クラスタに所属する端末を参照するために用いられる。

【符号の説明】
【0042】
1…アンテナ
2…端末
3…クラスタ
4…有線回線
5…集中基地局装置
101…集中信号処理部
102…クラスタ信号処理部
103…論理アンテナポート
104…アンテナ接続切り替え部
105…ユーザスケジューラ
106…クラスタスケジューラ
107…無線リソース制御部
108…無線リソース管理部
109…アンテナ変更制御部
110…ゲートウェイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散アンテナシステムであって、
複数のアンテナが配置され、端末の位置に応じて前記複数のアンテナの一部のひとつ又は複数のアンテナから構成されるクラスタを複数形成し、少なくとも二つのクラスタが少なくとも一つのアンテナを共有し、前記複数のアンテナを用いてデータを送受信する基地局装置を備え、、
前記基地局装置は、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項2】
請求項1に記載の分散アンテナシステムにおいて、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1の端末用のアンテナを第2及び第4のアンテナに決定し、クラスタを第2及び第4のアンテナを含む第3のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、第2及び第4のアンテナと第3のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第2及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第3のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項3】
請求項1に記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記仮決定の前に、
前記基地局装置は、第1の端末からの初期アクセス信号を受信すると、初期アクセス信号のアンテナ毎の受信電力を推定し、第1の端末へ応答信号を返信し、
前記基地局装置は、第1の端末から端末固有の識別信号を受信することで、第1の端末を特定し、第1の端末からの初期アクセス信号を基に推定されたアンテナ毎の受信電力に基づき、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ(a、a)、第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)を前記仮決定する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項4】
請求項1に記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記仮決定の前に、
第1の端末と第2の端末がそれぞれ、第0及び第2のアンテナ(a、a)および第1及び第3のアンテナ(a、a)を用いて、前記基地局装置と通信を行っている状態において、
前記基地局装置は、第1及び第2の端末から定期的に又は所定タイミングで送信された参照信号を基に、各端末の変更先候補のアンテナの受信品質を推定し、
第1の端末が移動し、アンテナ毎の受信品質が変化した場合、前記基地局装置は、変更先候補のアンテナの推定結果に基づき、第1の端末にとって、現在通信中の第0のアンテナ(a)よりも変更先候補の第1のアンテナ(a)の受信品質が良くなったことを検出すると、前記基地局装置は、第1の端末用の変更先のアンテナを第1及び第2のアンテナ(a、a)に、変更先のクラスタを第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)に前記仮決定する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項5】
請求項4に記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記参照信号は、CQI(Channel Quality Indicator)及び上りリンク受信品質推定用の既知系列であるReference Signalである
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項6】
請求項1に記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記仮決定の前に、
前記基地局装置は、アンテナ毎に区別できるように下り参照信号を送信し、
各端末は、前記基地局装置から送信される下り参照信号を用いて、現在通信中のクラスタのアンテナに加え、変更先候補のアンテナの受信品質を測定し、
第1の端末は、現在通信中の第0のアンテナ(a)よりも第1のアンテナ(a)の受信品質が良くなったことを検出すると、第1の端末は、現在通信中の複数アンテナの識別情報及び受信品質と、変更先候補のアンテナの識別情報及び受信品質を報告し、
前記基地局装置は、第1の端末から報告されるアンテナ毎の受信品質の測定結果を基に、第1の端末用の変更先のアンテナを第1及び第2のアンテナ(a、a)に、変更先のクラスタを第1及び第2のアンテナ(a、a)を含む第1のクラスタ(n)に前記仮決定する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項7】
請求項6に記載の分散アンテナシステムにおいて、
各端末は、周期的、または、変更先候補のアンテナの受信品質が現在通信中のアンテナよりも良くなった場合、現在通信中のアンテナの受信品質がある閾値を下回った場合のいずれかに、現在通信中の複数アンテナの識別情報及び受信品質と、変更先候補のアンテナの識別情報及び受信品質を報告する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記仮決定では、
仮決定において、前記基地局装置は、クラスタは、受信電力の大きい方から予め定められた数のアンテナを選択する、又は、所定閾値以上若しくは所定範囲内の受信電力のアンテナを選択する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記基地局装置は、
各アンテナを使用する総端末数が閾値を超えるかどうかによって、過負荷であるか否かを判定し、
あるアンテナを使用する総端末数が閾値を超えた場合、過負荷と判定したアンテナを用いる端末の、変更先の候補となる全アンテナ及び過負荷と判定したアンテナを第2アンテナ以降とする全端末に対し、当該アンテナを使用する総端末数を計算し、
変更先アンテナを使用する総端末数が最小となる端末の識別情報と当該端末の変更先アンテナの識別情報およびクラスタの識別情報を記憶し、
変更先アンテナを使用する総端末数が、変更前アンテナを使用する総端末数よりも少ない場合は、アンテナ変更の対象となる端末の識別情報、変更先アンテナの識別情報、クラスタの識別情報を決定する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記基地局装置は、
端末毎に各端末のスループット又は伝送速度の期待値を表わす評価関数が閾値を下回るか否かを判定し、
ある端末の評価関数が閾値を下回った場合、当該端末が所属するクラスタのアンテナの中で、総端末数または総バッファ量が最大のアンテナを過負荷アンテナとして選択し、
当該アンテナを用いる端末に対し、当該アンテナを変更先候補のアンテナに変更した場合の評価関数を、当該端末の全変更先候補のアンテナ及び過負荷と判定したアンテナを用いる全端末に対して計算し、
アンテナ変更による評価関数の増加率が最大となる端末の識別情報および変更後のアンテナの識別情報、クラスタの識別情報を記憶し、
当該端末のアンテナ変更後の評価関数が、アンテナ変更前に比べて改善する場合には、変更対象の端末の識別情報、変更先アンテナの識別情報、クラスタの識別情報を記憶したものに決定する
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項11】
請求項10に記載の分散アンテナシステムにおいて、
過負荷状態の判定で用いられる評価関数は、
評価関数E(n)=C(n)Rcluster(n)R(n)
ここで、
(n)は、端末uのクラスタnにおける受信品質に依存する項、
cluster(n)はクラスタnに割当てる時間周波数リソースに依存する項、
(n)は、クラスタnにおいて、端末uに割当てられる時間周波数リソースに依存する項
で表わされる
ことを特徴とする分散アンテナシステム。

【請求項12】

基地局装置であって、
端末の位置に応じてクラスタを形成し、少なくとも二つの前記クラスタに共有され、端末とデータを通信する複数のアンテナと、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う無線リソース制御部と、を有する、
ことを特徴とする基地局装置。

【請求項13】
請求項12に記載の基地局装置において、
さらに、
複数の論理アンテナポートを有し、複数クラスタの信号処理を行う集中信号処理部と、
同一時間及び同一周波数を用いて通信する複数のクラスタを決定するクラスタスケジューラと、
各クラスタにおいて通信する端末と通信方法を決定するユーザスケジューラと、
クラスタスケジューラのスケジューリング結果に応じて、前記集中信号処理部の複数の論理アンテナポートと複数のアンテナの接続を切り替えるアンテナ接続切り替え部と、
を備えたことを特徴とする基地局装置。

【請求項14】
複数のアンテナが配置され、前記複数のアンテナを用いてデータを送受信する基地局装置を備え、端末の位置に応じて前記複数のアンテナの一部のひとつ又は複数のアンテナから構成されるクラスタを複数形成し、少なくとも二つのクラスタが少なくとも一つのアンテナを共有する分散アンテナシステムにおける無線リソース制御方法であって、
前記基地局装置は、
新規に通信を発生すること又は端末が移動したことにより、第1の端末用の第1及び第2のアンテナ、及び、第1及び第2のアンテナを含む第1のクラスタを仮決定し、
仮決定された第1及び第2のアンテナの各アンテナが過負荷であるかどうか過負荷判定を行い、
第1のアンテナが過負荷であると判定すると、負荷低減のために、第1及び第3のアンテナと通信中の第2の端末用の変更先通信アンテナを第3及び第4のアンテナに決定し、変更先クラスタを第3及び第4のアンテナを含む第2のクラスタに決定し、
第1の端末用のアンテナとクラスタを、仮決定した第1及び第2のアンテナと第1のクラスタに確定し、
第1の端末に、確定した第1及び第2のアンテナの識別情報及び/又は第1のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行い、
第2の端末に、変更先に決定した第3及び第4のアンテナの識別情報及び/又は第2のクラスタの識別情報を通知し、通知したアンテナを用いて以降の通信を行う
ことを特徴とする無線リソース制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−169741(P2012−169741A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27128(P2011−27128)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】