説明

分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置

【課題】プロセス入出力機能のエンジニアリングにかかる作業工数を削減する。
【解決手段】サブシステムの構成情報が表示される第1の表示領域と、サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示される第2の表示領域とを表示部162に割り付けて表示する表示制御部16eと、第1の表示領域に表示されたサブシステムの構成情報をプロセス入出力機能のフォーマット規則にしたがい変換して第2の表示領域に出力する変換出力部16bと、サブシステムの構成情報から割り当てが不要なサブシステムの入出力データをフィルタリングするフィルタリング演算部16cと、を備え、表示制御部16eは、フィルタリング演算部16cでフィルタリングされた入出力データを表示部162の第2の表示領域上でグレーアウト表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置であって、詳しくは、プロセス制御分野における分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)に別プロトコル通信によるサブシステムが接続された構成において、DCSとサブシステムとの間の入出力データ交換のためのインターフェースとなるプロセス入出力機能のエンジニアリング手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプロセス制御分野では、例えば、図6(a)に示すように、DCS100(DCSコントローラ101、入出力通信モジュール102)に対し、各フィールド機器10a〜10nが物理的に1台ずつ接続される構成がとられていた。このため、DCS100は、各フィールド機器10a〜10nとの間で直接的に入出力データの取得及び設定を行なうことができた。なお、図6(a)中、符号103は、上位バス104経由で接続される操作監視PC(Personal Computer)である。
【0003】
これに対し、近年では、オープンでマルチベンダ化対応の通信システムが普及し、メーカ依存のフィールドバス仕様のDCSに、これとは規格が異なるフィールド機器が接続される、例えば、図6(b)に示すサブシステム構成が採用されるようになった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6(b)に示すシステム構成によれば、DCS(DCSコントローラ200)は、別プロトコル用のフィールド機器20a〜20nが接続される入出力デバイス#1(201)を、サブシステム通信モジュール#1(202)によりサブシステムとして取り込み、物理的に接続されている不図示のフィールド機器と同様に扱うことが出来るようにしている。なお、図6(b)において、符号205は、上位バス207を介して接続される操作監視用PC、符号206は、エンジニアリングの際にユーザにより操作されるエンジニアリング装置である。
【0005】
しかしながら、上記したサブシステム構成をとるDCSでは、DCSコントローラ200とサブシステム#1(202)のフィールド機器20a〜20nとが物理的に接続されておらず、このため、入出力データの交換を直接的に行うことができない。また、サブシステム#1(202)、#2(204)・・・のそれぞれには入出力デバイス#1(201)、#2(203)・・・を介して複数のフィールド機器20a〜20nが接続されており、サブシステム#1(202)、#2(204)・・・毎に大容量の入出力データを取り扱っている。
【0006】
このため、例えば、図7に示すように、サブシステム#1(202)、#2(204)・・の入出力データを、DCS200のメモリ領域200aに入出力デバイス#1(201)、#2(203)・・・毎にマッピング(マッピング操作)することで論理的にDCS200とフィールド機器20a〜20nとを接続し、入出力データの取得、および設定が行なわれていた。このDCS200とサブシステム#1(202)、#2(204)・・・のインターフェースを担う機能をプロセス入出力(PIO)機能と呼ぶ。なお、符号202aは、サブシステム通信モジュール#1(202)の入出力データを示す。
【0007】
ここで、図8を参照しながら、FA(Factory Automation)におけるフィールドバス通信の標準規格であるPROFIBUS(Process Field Bus)通信システムを例示して従来のプロセス入出力機能のエンジニアリング手順について説明する。なお、図8において、図6に示すブロックと同じ符号が付されたブロックは図6に示すそれと同じ名称、機能を有するブロックである。
【0008】
まず、ユーザは、エンジニアリングPC206を操作して、サブシステム通信モジュール#1(マスターデバイス)用に設計されたPROFIBUS通信システム専用のコンフィギュレーションツール206aを用いてコンフィギュレーションを行う(ステップS91)。次に、ユーザはコンフィギュレーションした入出力デバイス#1(スレーブ)のIOモジュール(PROFIBUS通信システムにおいて入出力データに相当)に関する情報を参照し(ステップS92)、参照した情報をプロセス入出力(PIO)機能用のフォーマットにユーザ自身でデータを変換する(ステップS93)。最後に、ユーザがDCS200の2プロセス入出力エンジニアリング機能206bを使用して、データ変換した情報を手入力でDCS200のメモリ領域200aにマッピングを行う(ステップS94)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−290714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来技術によれば、DCS200に接続するサブシステム#1(202)、#2(204)・・・の種類が増えてくると、サブシステム#1(202)、#2(204)のコンフィグレーションツールを全てDCSベンダが作成することは困難であり、この場合、各ベンダが提供するコンフィグレーションツールを使用するケースが増えてくる。このため、プロセス入出力機能のエンジニアリングを行うDCSのエンジニアリング機能と、サブシステムのコンフィギュレーションツールとは疎な関係になる。
【0011】
このため、マッピング作業に手間取り、プロセス入出力機能のエンジニアリング工数が増大する。すなわち、サブシステムの入出力データ毎にユーザ自身が一つずつプロセス入出力機能用のフォーマットに変換し、手入力でマッピング作業を行っていたため、作業時間が長く、ユーザの負担が大きい。また、この方法は入力ミスを誘発する可能性が高く、後戻り工程が発生し、無駄な作業時間を費やす。実際上、PROFIBUS通信システムにおいて、エンジニアリングにかかる総作業時間の40%以上がプロセス入出力機能のエンジニアリング作業で占められており、また、大規模なシステムになるほどエンジニアリング総作業時間に対するプロセス入出力機能のエンジニアリング時間の割合が増える傾向にあった。
【0012】
また、基本的なエンジニアリング作業手順は、サブシステムのコンフィギュレーションツールで定義した入出力データの情報を参照しながら、プロセス入出力定義ビルダに入力するというものである。つまり、入出力データマッピング設定する項目には、サブシステムのコンフィギュレーションツールで設定する項目があることを意味するのに対し、同一項目を複数回定義することが要求されるため、エンジニアリング作業全体の流れからみると非効率的である。
【0013】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、プロセス入出力機能のエンジニアリングにかかる作業工数を削減した、分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するために本発明は、規格が異なるフィールド機器が接続されるサブシステム毎に入出力データを分散型制御システムの記憶領域に割り当てることで、前記分散型制御システムと前記フィールド機器とを論理的に接続し、入出力データの取得を行う分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置であって、前記サブシステムの構成情報が表示される第1の表示領域と、前記サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示される第2の表示領域とを同一画面上に割り付けて表示する表示制御部と、前記第1の表示領域に表示されたサブシステムの構成情報をプロセス入出力機能のフォーマット規則にしたがい変換して前記第2の表示領域に出力する変換出力部と、前記サブシステムの構成情報から前記割り当てが不要なサブシステムの入出力データをフィルタリングするフィルタリング演算部と、を備え、前記表示制御部は、前記フィルタリング演算部でフィルタリングされた入出力データを前記第2の表示領域上でグレーアウト表示することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、同一画面上に、サブシステムの構成情報と、サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示され、したがって、ユーザは、プロセス入出力機能への割り当て状況の把握が容易になるため、操作性が向上する。また、第1の表示領域に表示されたサブシステムの構成情報は、プロセス入出力機能のフォーマット規則にしたがい自動変換され、第2の表示領域に表示されるため、これまで手作業で行っていた構成定義にかかるユーザの負担が軽減されると共に誤り操作を回避できる。また、サブシステムの構成情報から割り当てが不要なサブシステムの入出力データがフィルタリングされ、該当の入出力データが第2の表示領域でグレーアウト表示されるため、ユーザは、割り当て可能な入出力データの選択が容易になり、一層操作性が向上する。
【0016】
本発明において、プロセス入出力定義情報と前記サブシステムの構成情報とを比較する不整合判定部を備え、前記表示制御部は、前記不整合判定部で予め定義された不整合の判定条件を満たす場合に、前記第2の領域に表示される該当入出力データを他の入出力データとは異なる形態で表示することを特徴とする。本発明によれば、不整合判定部が予め用意された判定条件に基づき不整合の判定を行い、不整合がある場合は、例えば、背景色を変更する等、他の入出力データとは別形態で表示するため、ユーザは、構成定義の設定誤りの早期発見が可能であり、後戻り工程を減少させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プロセス入出力機能のエンジニアリングにかかる作業工数を削減した、分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置のプロセス入出力定義の流れを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置が生成する画面構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置のプロセス入出力定義の流れを示す模式図である。
【図6】従来の分散型制御システムに係る構成の2例を示す図である。
【図7】図6に示す分散型制御システムにおける入出力データのマッピングの一例をメモリ上に展開して示した図である。
【図8】従来例における分散型制御システムのエンジニアリング装置のプロセス入出力定義の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0020】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置のプロセス入出力定義の流れを示す図である。図1によれば、サブシステム構成をとるDCS1が例示されており、DCS1(DCSコントローラ10)は、別プロトコル用のフィールド機器19a〜19nがフィールドバス18経由で接続される入出力デバイス11を、サブシステム通信モジュール12を介してサブシステムとして取り込み、物理的に接続されている不図示のフィールド機器と同様に扱うことが出来るようにしている。
【0021】
なお、図1において、符号15は、上位バス14を介して接続される操作監視用PC、符号16は、エンジニアリングの際にユーザにより操作されるエンジニアリングPCである。
【0022】
ここでは、プロセス入出力機能(PIO機能)のエンジニアリングに入出力データマッピングツール30を用いる。以下、代表的なサブシステムであるPROFIBUS通信システムを例示し、この入出力データマッピングツール30を用いたプロセス入出力機能のエンジニアリング手順について説明する。
【0023】
まず、ユーザは、エンジニアリングPC16を操作してサブシステム通信モジュール12のコンフィギュレーションを行う(ステップS11)。ここで、コンフィギュレーションツール20は、コンフィギュレーションした入出力デバイス11(スレーブデバイス)に関し、スレーブデバイス名、IOモジュール名、ステーションアドレス、スロット番号、インデックス番号、データサイズ、データ要素を記述したPROFIBUS定義情報ファイル13Aをエクスポートする(ステップS12)。
【0024】
次に、入出力データマッピングツール30が、エクスポートされたPROFIBUS定義情報ファイル13Aのデータを読み込み(ステップS13)、読み込んだデータを、表示画面上段に割り当てられたサブシステム構成情報表示領域(第1の表示領域)に表示する。なお、このとき、入出力データマッピングツール30は、読み込んだデータをチェックして、既にマッピング済みの入出力モジュールやマッピング不要な入出力モジュールについては、上記したサブシステムコンフィギュレーション情報表示領域にグレーアウト表示する(ステップS14)。
【0025】
次に、ユーザは、入出力データマッピングツール30により生成される表示画面上段に表示される、サブシステムコンフィギュレーション情報表示領域からマッピングしたいスレーブデバイスの入出力モジュール(PROFIBUS通信システムにおいて入出力データに相当)を選択し、画面下段に割り当てられ表示される入出力データマッピング領域にドラッグアンドドロップする(ステップS15)。これを受けて入出力データマッピングツール30は、選択された入出力モジュールの情報をプロセス入出力機能用のフォーマットに変換する(ステップS16)。ここで変換されたデータは、入出力データマッピング領域の該当欄に自動で入力されることにより(ステップS17)、入出力モジュールがマッピングされる。
【0026】
続いて、入出力データマッピングツール30は、定義エラーの有無をチェックする(ステップS18)。定義エラーの有無は、予め定義された不整合の判定条件を満たす場合に、入出力データマッピング領域に表示される該当入出力データを他の入出力データとは異なる形態で表示する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る分散型制御システムのエンジニアリング装置の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、入出力データマッピングツールを用いてDCS1のエンジニアリングを行うエンジニアリングPC16は、制御部160と、記憶部161と、表示部162と、により構成される。ここで、制御部160は、入出力データマッピングツールのプログラム構造が機能展開されて示されているように、主制御部16aと、変換出力部16bと、フィルタリング演算部16cと、不整合判定部16dと、表示制御部16eとを含み、構成される。
【0028】
変換出力部16bは、後述する表示部162の画面上に割り当てられるサブシステム構成情報表示領域(第1の表示領域)に表示されたサブシステムのコンフィグレーション情報を、記憶部161に格納されたプロセス入出力機能のフォーマット規則(変換ルール16f)にしたがい変換して入出力データマッピング領域(第2の表示領域)に出力する機能を有する。フィルタリング演算部16cは、サブシステムのコンフィグレーション情報から割り当てが不要なサブシステムの入出力データをフィルタリングする演算機能を有する。
【0029】
表示制御部16eは、サブシステムのコンフィグレーション情報が表示されるサブシステム構成情報表示領域と、サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示される入出力データマッピング領域とを表示部162の画面上に割り付けて表示する他に、フィルタリング演算部16cでフィルタリングされた入出力データを入出力データマッピング領域上でグレーアウト表示する機能を有する。
【0030】
不整合判定部16dは、サブシステムのコンフィグレーション情報と割り当てられた入出力データとを、記憶部161に格納された判定条件16gにしたがい比較する機能を有する。表示制御部16eは、不整合判定部16dで予め定義された不整合の判定条件16gを満たす場合に、表示部162の入出力データマッピング領域に表示される該当入出力データに関して背景色を変える等、他の入出力データとは異なる形態で表示する。なお、点滅、強調、判定表示等によってもよい。
【0031】
主制御部16aは、制御部160が、サブシステムの構成情報が表示されるサブシステム構成情報表示領域と、サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示される入出力データマッピング領域とを表示部162の画面上に割り付けて表示すると共に、表示されたサブシステムのコンフィグレーション情報をプロセス入出力機能のフォーマット規則にしたがい変換して入出力データマッピング領域に出力し、また、サブシステムの構成情報から割り当てが不要なサブシステムの入出力データをフィルタリングし、当該フィルタリングされた入出力データを表示部162の入出力データマッピング領域にグレーアウト表示する機能を実現するために、上記した変換出力部16bと、フィルタリング演算部16cと、表示制御部16eのシーケンス制御を行う。
【0032】
また、主制御部16aは、不整合判定部16dで予め定義された不整合の判定条件を満たす場合に、入出力データマッピング領域Bに表示される該当入出力データを他の入出力データとは異なる形態で表示するために、不整合判定部16dと表示制御部16eのシーケンス制御を行う。
【0033】
記憶部161には、サブシステム定義情報16h、入出力マッピング情報16iの他に、変換出力部16bにより参照される変換ルールと、不整合判定部16dにより参照される、例えば、以下の<判定ルール>で示す不整合の種類とその内容、およびPROFIBUS通信システムの場合における判定条件、とが割り当てられ記憶される。記憶部161は、dRAM(dynamic Random Access Memory)等の大容量半導体メモリや、HD(Hard Disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の大容量不揮発性メモリで構成される。
【0034】
【表1】

【0035】
表示部162には、エンジニアリングPC16で生成される各種データが表示される。例えば、図3にその画面構成の一例が示されるように、サブシステム構成情報表示領域Aと、入出力データマッピング領域に区画分けされ、制御部160(表示制御部16e)による制御の下で、それぞれの領域に、サブシステム構成情報、と入出力マッピングデータが表示される。表示部162は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Organic Electro
Luminescence)等の表示デバイスで構成される。
【0036】
(実施形態の動作)
図4は、本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置の動作を示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートを参照しながら、図2に示すエンジニアリング装置(エンジニアリングPC16)の動作について詳細に説明する。
【0037】
まず、ユーザは、エンジニアリングPC16を操作してサブシステム、ここではPROFIBUS通信システムのコンフィギュレーションを行う(ステップS101)。このとき、制御部160(主制御部16a)は、コンフィギュレーションしたスレーブデバイス(入出力デバイス11)に関して、スレーブデバイス名、IOモジュール名、ステーションアドレス、スロット番号、インデックス番号、データサイズ、データ要素を記述したPROFIBUS定義情報ファイルをエクスポートする。そして、エクスポートしたPROFIBUS定義情報ファイルのデータを読み込み(ステップS102)、当該読み込んだデータを、表示制御部16eにより、表示部162の画面上段に割り当てられたサブシステム構成情報表示領域A(第1の表示領域)に表示する(ステップS103)。
【0038】
次に、主制御部16aはフィルタリング演算部16cに制御を移し、これを受けてフィルタリング演算部16cは、読み込んだデータをチェックし(ステップS104)、既にマッピング済みの入出力モジュールやマッピング不要な入出力モジュールをフィルタリングして表示制御部16eに出力する。このとき表示制御部16eは、フィルタリング演算部16cでフィルタリングされた既にマッピング済みの入出力モジュールやマッピング不要な入出力モジュールを(ステップS104“NO”)、表示部162のサブシステム構成情報表示領域Aにグレーアウト表示する(ステップS105)。
【0039】
次に、ユーザが、表示部162の画面上段に表示される、サブシステムコンフィギュレーション情報表示領域Aからマッピングしたいスレーブデバイスの入出力モジュール(PROFIBUS通信システムにおいて入出力データに相当)を選択し、表示部162の画面下段に割り当てられ表示される入出力データマッピング領域Bにドラッグアンドドロップすると(ステップS106“YES”)、主制御部16aはこれを検知して変換出力部16bに制御を移す。これを受けて変換出力部16bは、記憶部161に記憶された変換ルール16fにしたがい、選択されドラッグアンドドロップされた入出力モジュールの情報をプロセス入出力機能用のフォーマットに変換する(ステップS107)。ここで変換されたデータは表示部162の入出力データマッピング領域Bの該当欄に自動で入力されることで入出力モジュールがマッピングされる(ステップS108)。
【0040】
続いて、主制御部16aは不整合判定部16dに制御を移し、不整合判定部16dは、サブシステムの構成情報と入出力マッピング領域Bに表示された入出力データとを、記憶部161に格納された判定条件16gにしたがい比較することにより、不整合の有無(定義エラーの有無)をチェックする(ステップS109)。定義エラーの有無は、予め定義された不整合の判定条件、例えば、プロセス入出力定義において、データタイプが入力データで、データサイズが、プロセス入出力定義<PROFIBUS通信定義の場合、あるいは、データタイプが出力データで、プロセス入出力定義<PROFIBUS通信定義、等である。これらプロセス入出力定義情報とサブシステムコンフィグレション情報に不整合がある場合(ステップS109“YES”)、表示制御部16eは、表示部16の出力データマッピング領域Bに表示される該当入出力データを、点滅、強調、反転、色表示等により、他の入出力データとは異なる形態で表示する。
【0041】
なお、主制御部16aは、表示にあたり、不整合の内容がシステムの稼働に影響があるか否かを判定し(ステップS110)、システムの稼働に影響が無い場合は(ステップS110“YES”)、警告にとどめ(ステップS111)、影響がある場合は(ステップS110“NO”)、表示部162にエラー表示を行う(ステップS112)。
【0042】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置によれば、エンジニアリング作業の大半を占めるプロセス入出力機能のエンジニアリング工数の削減が可能となり、操作性、選択性が大幅に向上し、作業速度と入力ミスの軽減、定義エラーの早期発見が可能になる。
【0043】
具体的に、PROFIBUS通信システムを例示すれば、表示部162の画面上段のサブシステム構成情報表示領域AにはコンフィギュレーションツールからエクスポートされたPROFIBUS定義情報ファイルの情報が表示される。つまり、コンフィギュレーションされたスレーブデバイス(入出力デバイス11)の情報が表示される。また、画面下段の入出力データマッピング領域Bは、プロセス入出力機能へのデータマッピング作業用のスペースになっている。このGUI(Graphical User Interface)画面を提供することで、プロセス入出力機能へのマッピング状況が容易に把握できるため、操作性が向上し、スムーズなエンジニアリング作業が可能になる。
【0044】
また、フィルタリング演算部16cで、サブシステムコンフィギュレーション情報からマッピング不要または不可の入出力モジュール(マッピング済みの入出力モジュール等)をフィルタリングすることで、表示制御部16eは、該当入出力モジュールを表示部162のサブシステム構成情報表示領域B上でグレーアウト表示する。したがって、マッピングが可能な入出力モジュールの選択が容易になり、二重定義の防止にも繋がる。
【0045】
また、従来は、プロセス入出力機能のエンジニアリングは全て手入力で行われていたが、本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置によれば、変換出力部16bが、サブシステムの入出力データを変換ルール16fによりプロセス入出力機能用のフォーマットに自動変換し、表示制御部16eが変換された入出力データを取得して表示部162の入出力データマッピング領域Bに表示する。このため、作業速度が格段に向上すると共に入力ミスの軽減も可能になる。
【0046】
また、本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置によれば、不整合判定部16dは、PROFIBUS通信のコンフィギュレーション情報と入出力データマッピング情報を比較して、不整合の有無をチェックする。ここで、不整合があった場合は、その旨を警告、あるいはエラー表示等によりユーザに伝えるために、入出力データマッピング領域の該当入出力データの背景色を変える等、他と区別して表示することにより、注意喚起が可能である。したがって、定義ミスの早期発見が可能で、後戻り工程を減少させることができる。
【0047】
すなわち、本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置によれば、プロセス入出力機能のエンジニアリングにかかる作業工数を削減した、分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置を提供することができる。
【0048】
なお、本実施形態に係る分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置では、サブシステム通信モジュール12として、PROFIBUS通信システムのみ例示して説明したが、入出力データマッピングツールはPROFIBUS通信システム以外のサブシステムでも可能である。また、図5に示すように、入出力データマッピング領域Bは固定して、サブシステム構成情報表示領域Aに他のサブシステムのコンフィギュレーション情報ファイル13Bを表示させることで、同一の操作でプロセス入出力機能のエンジニアリングが可能になる。但し、この場合、各サブシステムの仕様に応じて、サブシステム構成情報表示領域Aに表示する項目やデータ変換処理、定義エラーチェック処理を変更する必要がある。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1・・・分散型制御システム(DCS)、10・・・DCSコントローラ、11・・・入出力デバイス、12・・・サブシステム通信モジュール、13A、13B・・・PROFIBUS定義情報ファイル、14・・・上位バス、15・・・操作監視PC、16・・・エンジニアリングPC(エンジニアリング装置)、160・・・制御部、16a・・・主制御部、16b・・・変換出力部、16c・・・フィルタリング演算部、16d・・・不整合判定部、16e・・・表示制御部、18・・・PROFIバス、19a〜19n・・・フィールド機器、20・・・コンフィグレーションツール、30・・・入出力データマッピングツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規格が異なるフィールド機器が接続されるサブシステム毎に入出力データを分散型制御システムの記憶領域に割り当てることで、前記分散型制御システムと前記フィールド機器とを論理的に接続し、入出力データの取得を行う分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置であって、
前記サブシステムの構成情報が表示される第1の表示領域と、前記サブシステム毎に割り当てられた入出力データが表示される第2の表示領域とを同一画面上に割り付けて表示する表示制御部と、前記第1の表示領域に表示されたサブシステムの構成情報をプロセス入出力機能のフォーマット規則にしたがい変換して前記第2の表示領域に出力する変換出力部と、前記サブシステムの構成情報から前記割り当てが不要なサブシステムの入出力データをフィルタリングするフィルタリング演算部と、を備え、
前記表示制御部は、
前記フィルタリング演算部でフィルタリングされた入出力データを前記第2の表示領域上でグレーアウト表示することを特徴とする分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置。
【請求項2】
プロセス入出力定義情報と前記サブシステムの構成情報とを比較する不整合判定部を備え、
前記表示制御部は、
前記不整合判定部で予め定義された不整合の判定条件を満たす場合に、前記第2の領域に表示される該当入出力データを他の入出力データとは異なる形態で表示することを特徴とする請求項1記載の分散型制御システムにおけるエンジニアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3652(P2013−3652A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131194(P2011−131194)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】