説明

分散機およびペーストの製造方法

【課題】異物量が少なく、分散性に優れ、部品の損傷がない分散機。
【解決手段】
中心軸方向の一方の端部近傍にミルベースの供給口を、他方の端部近傍にミルベースの出口を備え、前記中心軸に垂直な方向の内面の断面形状が円である筒状容器内に、外周部に前記中心軸と平行な溝が複数形成された、回転可能なローターを有し、前記溝内に自公転可能に配された複数のローラーを有する分散機であって、前記複数のローラーのうちの一部に、長手方向に垂直な断面が円であり、中央部における断面の直径Rと、ミルベース供給口側先端部の直径rが下式(1)の関係を満たすテーパー形状を有するローラーを用いることを特徴とする分散機とする。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、印刷インキ、ペースト、磁性塗料等の高粘度材料(以下、ミルベースという)を微細に分散させるのに好適な分散機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高粘度のミルベースを微細に分散させる分散機として、ロールミルやサンドミルが多用されているが、ロールミルは装置が開放形であるために溶媒が蒸発することによる作業環境の悪化、作業環境からの異物の混入の問題があり、ロスも多い。また、機械操作にも熟練を必要とし、ロールの間隙の不均一性に起因する分散不良の問題もある。一方、サンドミルは密封構造とすることができ、連続処理も可能であるが、粉砕媒体の摩耗や破壊による交換頻度が高く、高粘度ミルベースでは出口部分に配置されているスクリーンやギャップセパレータに媒体が集中し、運転ができなくなる問題もあった。
【0003】
これらに代わるものとして、ローラーを用いた分散機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。筒状容器と同軸上の配置した回転軸に、半径方向外方に移動可能で、かつ自転可能なようにローラーを支持し、このローラーを遠心力で容器内壁面に押し付けて自転しながら筒状容器内を公転させることにより分散を行う。しかしながら、ミルベースの通過部分がきわめて広大であるため、ローラーが自転しながら容器内を公転することにより容器内壁の分散領域で補足分散される量よりもミルベースが未処理のまま通過してしまう量の方が多く、充分に処理されないまま通過してしまうショートパスの問題が生じる。
【0004】
この他にも、環状ローラーを用いた分散機として、テーパーローラーベアリングを用いた分散機もある(例えば、特許文献2参照)。筒状容器内に複数のテーパーローラーベアリングを配置し、ベアリングローラーの転動による転動面での押圧により分散を行う。しかし、この場合も、見掛けの回転速度の割にはミルベースの流動性が上がらず、この結果、ミルベースが充分に処理されないまま通過してしまうショートパスの問題が生じる。また、ベアリングローラーを保持するためのリテーナーが必要であり、このリテーナーがあるためにミルベースの流動が著しく阻害され、ミルベースの均一化が妨げられることになる。さらに、ベアリングを回転軸に密着させて取り付けたとしても、隣接するベアリングローラー間には必ず隙間が生じるため、取り付け効率が悪いだけでなく、ベアリングローラー間ではミルベースが分散されないという事態を生じる。このように、少なくともミルベースが充分に処理されないまま通過してしまう、いわゆるショートパスの問題が生じることは明らかであり、連続処理分散機としての機能を充分に果たしてはいない。
【0005】
さらに、連続処理分散機としてローターと自公転可能なローラーを有する分散機が提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4)。前記分散機においては、円筒容器と同軸状に、回転軸と平行な溝を複数形成した回転可能なローターを有し、前記溝内に自公転可能なローラーを有し、ローターが回転することによりミルベースがローラーと円筒容器の内壁の間、及びローラーとローターの溝内面との間での圧縮、剪断作用により分散を行う。ここで、ミルベースの通過部分は、円筒容器の内壁面とローターの外周面との間の隙間部分およびローターに形成された溝とローラーのわずかな隙間である。しかしながら、粘度が数十Pa・s以上の高粘度なミルベースを分散させた場合、ローターに形成された溝とローラーとの間の隙間にミルベースが浸透しにくくなり、ローラーの自転が妨げられる場合がある。また、予備混合において十分な混合が行われなかった場合、ミルベースに含まれる粒子の凝集体が溝とローラーとの隙間に挟まり、ローラーの自転が妨げられる場合がある。このようにローラーの自転が妨げられる場合、ミルベースがローラーによる剪断作用を充分に受けることができず、微細に分散されることなく通過してしまうショートパスの問題が生じる。さらに、ローラーが自転しない状態でローターの回転を継続した場合、ローラー、ローターおよび円筒容器の削れや欠けによるミルベースへの異物混入の問題や、部品の破損により運転不能となる問題が発生する場合もある。
【特許文献1】特開平5−096197号公報
【特許文献2】特公昭53−003110号公報
【特許文献3】特開平11−197479号公報
【特許文献4】特開2004−905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ミルベースが充分に処理されないまま通過してしまう、いわゆるショートパスの問題を解消し、粘度が数十Pa・s以上の高粘度のミルベースでも充分な分散を行うことができ、さらに各部品の削れ、欠けによる損傷がない連続処理分散機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、以下の構成の分散機とする。すなわち、中心軸方向の一方の端部近傍にミルベースの供給口を、他方の端部近傍にミルベースの吐出口を備え、前記中心軸に垂直な方向の内面の断面形状が円である筒状容器内に、外周部に前記中心軸と平行な溝が複数形成された、回転可能なローターを有し、前記溝内に自公転可能に配された複数のローラーを有する分散機であって、前記複数のローラーのうちの一部に、長手方向に垂直な断面が円であり、中央部における断面の直径Rと、ミルベース供給口側先端部の直径rが下式(1)の関係を満たすテーパー形状を有するローラーを用いることを特徴とする分散機である。
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【発明の効果】
【0008】
本発明の分散機を用いた場合、高粘度ミルベースにおいてもショートパスを起こすことなく均一に分散され、部品の損傷がなく、異物混入のないミルベースを製造することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の最も好ましい形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明による分散機の一例を示した横断面模式図、図2は本発明による分散機の一例を示す縦断面図である。また、図3は図2のローラー付近を示す拡大断面図である。
【0011】
本発明の分散機は、中心軸方向の一方の端部近傍にミルベースの供給口9を、他方の端部近傍にミルベースの吐出口10を備え、前記中心軸に垂直な方向の内面の断面形状が円である筒状容器1を有する。後述のローター2およびローラー5が筒状容器内部で回転し、ローター2およびローラー5と筒状容器1内面の距離を一定に保つため、前記中心軸に垂直な方向の内面の断面形状が円である必要がある。内面の断面形状が円でない場合、十分な分散効果を得ることができなくなる。筒状容器の内面形状は円柱であっても良いし、両端のミルベースの供給口9または吐出口10近傍で前記内面の断面が小さくなるようなテーパー形状であっても良い。
【0012】
また、本発明の筒状容器は中心軸方向の一方の端部近傍にミルベースの供給口9を、他方の端部近傍にミルベースの吐出口10を備える。このことによって、供給口9から筒状容器1内に導入されたミルベースが筒状容器1の内面に沿って吐出口に至るまで分散処理を受け、十分な分散効果を得ることができる。
【0013】
前記筒状容器1内に、これと同軸状に回転可能なローター2を配置する。該ローター2の外周部にはその回転軸3と平行な溝4を複数形成し、各溝4内にローラー5を配置する。
ローター2が筒状容器内1内で回転すると、遠心力によりローター2の各溝4内に封入されているローラー5が筒状容器1の内壁面に当接して自転しながら筒状容器1内を公転する。そして、供給口9から筒状容器1内に強制的に導入されたミルベースは、隙間7においてローラー5により筒状容器1の内壁面に押し付けられ、また、図3で示すように、遠心力により溝4の内壁とローラー5の外周面との間に形成されたわずかな隙間6において、圧縮、剪断作用を繰り返し受けながら吐出口10へと押し出され、吐出口10から吐出される。
【0014】
本発明においては、ローラー5がローター2の溝4内に挿入されているため、ローター2の回転速度がローラー5の公転速度となる。ローラー5が公転することによってミルベースは各ローラー5によって筒状容器1の内壁面に強く押し付けられることになり、圧縮、剪断作用を繰り返し受けることになる。
【0015】
さらに図3に示すように、遠心力により、溝4の内壁とローラー5の外周面とのわずかな隙間6が形成され、供給口9から強制的に圧送されたミルベースが溝4の内壁とローラー5の外周面とのわずかな隙間6全体に浸透することにより、その潤滑作用によってローラー5は自転しながら公転することができる。この結果、溝4内で自転するローラー5により、上述の隙間7およびわずかな隙間6でミルベースは強力な圧縮作用と剪断作用を受ける。
【0016】
このように、本発明では、筒状容器1内のあらゆる場所で、ミルベースが満遍無く圧縮、剪断、すり作用を受け、ショートパスを起こすことなく均一に分散されたミルベースを製造することができる。
【0017】
ローラー5の大きさは、溝4にほぼ内接しながら筒状容器1の内壁面にほぼ接する程度の径とするのが好ましく、溝4とローラー5との間に形成されたわずかな隙間6が0.5〜1.5mmとなる程度の径とするのがより好ましい。
【0018】
ローラー5は1つの溝4に対して1つ配置される形でもよいが、図1に示すように、中心軸方向に複数配列して配置されることが、メンテナンスの面から有利である。その場合、ローラー5の長さは15〜100mmが好ましい。一方、溝4はローター2に対して複数形成されていればよいが、図2に示すように放射状に多数、好ましくは8以上形成されているのが好ましい。また、溝4の断面形状は図3に示すような略C字形(円弧)としてもよいが、略U字形(底部が円弧であり、側部が直線である形状)としても構わない。
【0019】
本発明においては、ローラー5として、複数のローラー5の少なくとも一部に、長手方向に垂直な断面が円であり、中央部における断面の直径Rとミルベース供給口9側の先端部の直径rが下式(1)の関係を満たすテーパー形状を有するローラーを用いることを特徴とする。
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上記のテーパー形状を有するローラーを用いることによって、円筒形のローラーのみを用いる場合と比較して、高粘度ミルベースを用いる場合であってもわずかな隙間6にミルベースが十分浸透しやすくなる。また、予備混合において十分な混合が行われなかった場合であっても、ミルベースに含まれる粒子の凝集体がテーパー部分で徐々に分散され、凝集体の噛み混みよりローラーの自転が妨げられることがなく、わずかな隙間6にミルベースが浸透しやすくなる。このようにわずかな隙間6にミルベースが浸透することによって、その潤滑効果によってローラーの自転が円滑に行われ、ミルベースが十分な圧縮作用、剪断作用を受けることができるため、ショートパスの問題は発生しにくくなる。
【0020】
テーパー形状を有するローラーは直径が一定の円筒部分と、該円筒部分より直径が小さいテーパー部分からなる形状であることが好ましい。テーパー部分の長さlは3.5〜15mmとするのが好ましい。ただし、テーパー部分の断面の径が細すぎると、ローラーの強度が低下し、ローラーが折損しやすくなってしまう。そのため、テーパー部分の断面の直径がローラー中央部における断面の直径Rの0.5倍以下となる部分が5mm以内であることが好ましい。テーパー部分の形状は中心軸に対して垂直な方向の断面が円である形状であればどのような形状であっても構わないが、図4に示すような円錐台形状、図5に示すような球の一部からなる形状、または図6に示すような回転楕円体の一部からなる形状であることが好ましい。
【0021】
テーパー部分の形状を円錐台形状とする場合は、ローラー中央部における断面の直径Rに対し、先端部における断面の直径rの比率が0.3〜0.8倍であることが好ましい。また、テーパー部の角度θが5〜45度とするのが好ましい。
【0022】
テーパー部分の形状を球の一部とする場合、球面の曲率半径が円柱部分の半径の1.0〜2.0倍の範囲であることが好ましいが、1.0倍、すなわちテーパー部分の形状が半球状である場合が最も好ましい。
【0023】
テーパー部分の形状を回転楕円体の一部とする場合は、円柱部分とテーパー部分の中心軸が同一で、回転楕円体の短径が円柱部分の半径の1.0〜2.0倍、長径が短径の1.0倍より大きく2.0倍以下であることが好ましい。本発明のテーパー形状を有するローラーは円柱部分の両側にテーパー部分を有する形状であっても良いが、分散性能を高くするためには円柱部分の片側にのみテーパー部分を有する形状であることが好ましい。円柱部分の片側にのみテーパー部分を有する形状とする場合は、テーパー部分がミルベースの供給口9側を向くように配置する。
【0024】
本発明の分散機においては、ローラーの一部にのみテーパー形状を有するローラーを用いることができるが、前記複数のローラーにおいて、少なくとも前記ローターのミルベース供給口側の端部から最も近いローラーと、その一部が該ローターの該ローラーが含まれる円周方向領域に少なくともその一部がかかっているローラーが、前記のテーパー形状を有しているか、前記の溝のミルベース供給口側の端部は、前記中心軸の垂直な面に並ぶように実質的に揃えられており、少なくとも該溝の最もミルベース供給口側にあるローラーが前記のテーパー形状を有していることが好ましい。テーパー形状を有するローラーは全てのローラーのうち半数以上用いることがより好ましく、ローラーの全数をテーパー形状を有するローラーとすることが最も好ましい。
【0025】
テーパー形状を有するローラーは1つの溝4に対して中心軸方向に配列して複数配置されているのが好ましい。テーパー形状を有するローラーが1つの溝に対してローター2の幅方向に複数装入されていると、筒状容器1内の内壁面全体を分散領域とすることができる。そして、1つの溝4内に装入された各テーパー形状を有するローラーがそれぞれ独立して回転することにより、ミルベースは各テーパー形状を有するローラーにより筒状容器1の内壁面前全体にわたってそれぞれ独立した圧縮、剪断、すり作用を受ける。この結果、より均一に分散されたミルベースを得ることができる。本発明の分散機においては、筒状容器1の外周に、冷却水あるいは熱水、温水を通過させるジャケット8を形成することが好ましい。このジャケット8が形成されていると、冷却水あるいは熱水、温水がジャケット8を通過することにより、ミルベースを冷却したり、加温しながら分散させることができる。
【0026】
本発明の分散機においては、耐摩耗性を向上させることために、筒状容器1、ローター2、ローラー5は超硬材料やジルコニア、サイアロン等のセラミックス材で作製するのが好ましい。
【0027】
ミルベースは図1に示すように、定量ポンプ11を用いて供給することが好ましい。定量ポンプ11の具体例としては、渦巻ポンプ、タービンポンプなどの遠心ポンプ、軸流ポンプなどのプロペラポンプ、渦流ポンプなどの粘性ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプなどの往復動ポンプ、ギアーポンプ、偏心ネジポンプ、ベーンポンプ、ローラーポンプなどの回転ポンプが挙げられる。粘度の高いミルベースを供給するのには、ダイヤフラムポンプ、偏心ネジポンプが好ましい。定量ポンプ11を用いることで、ミルベースの分散性を安定させることができる。また、接液部がジルコニア、サイアロンなどのセラミックス材で作製されていることが、耐摩耗性を向上できるため好ましい。
【0028】
図1〜3に示した分散機は、容器の空間容積も比較的小さいため、容器内に残留する量も少なくなる。従って、分散終了時やミルベース切り替え時に生じるロスも少なく、構造も簡単であるから洗浄も容易である。また、密封構造であるため、溶媒の飛散も少なく、メンテナンスもほとんど必要とせず、高粘度のミルベースを連続処理する際も部品の損傷により運転に支障を来すことがない。また、本分散機を用いることによって、異物混入の少ない、分散性の優れたミルベースを得ることができる。
【0029】
本発明のペーストの製造方法は、上述の分散機を用いることを特徴とする。本発明は高濃度の無機粒子とバインダーポリマー等の有機成分を有するペースト、特にプラズマディスプレイの製造に用いる蛍光体ペーストの製造に、特に好適である。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例に使用したミルベースにはプラズマディスプレイパネル用部材の製造に使用するペースト3種(赤色蛍光体ペースト、青色蛍光体ペースト、緑色蛍光体ペースト)を用いた。
(ペースト組成)
(1)赤色蛍光体ペースト
平均粒径3μmの(Y,Gd,Eu)BO3(赤色蛍光体)粉末35重量%、エチルセルロース7重量%、およびテルピネオール(有機溶剤)58重量%。
(2)緑色蛍光体ペースト
平均粒径2.5μmの(Zn,Mn)2SiO2(緑色蛍光体)粉末33.5重量%、エチルセルロース6.5重量%、およびテルピネオール(有機溶剤)60重量%。
(3)青色蛍光体ペースト
平均粒径2μmの(Ba,Eu)MgAl1017(青色蛍光体)粉末33.5重量%、エチルセルロース6.5重量%、およびテルピオネール(有機溶剤)60重量%。
(ペーストの評価方法)
(1)粘度
装置:フィールド型の粘度計(ブルックフィールド社製、モデルDV−III)
測定:回転数3rpm、測定温度25℃
(2)分散性
装置:グラインドゲージ(エリクセン製、0〜50μm)
評価:ペースト900kgを連続分散し、吐出開始後450kg吐出した時点の分散処理後のペースト50gをサンプルとし、サンプリングした分散後のペースト中に存在する凝集粒子からなるつぶの大きさを観察し、密集したつぶが現れた箇所の目盛りを読みとった。ただし、密集したつぶの境界線が目盛りと目盛りの中間に現れたとき、または2本の溝の数値が異なるときは、数値の大きい方の目盛りを読みとり、3回の測定値の中央をペーストの分散度とした。
【0031】
判定:数値が大きいことは分散性が悪いことを示す。
(3)異物量
ペースト900kgを連続分散し、吐出開始後450〜470kgの分散後のペースト20kgを293mmφのディスクフィルター(濾過圧:0.2MPa、フィルター:500メッシュ)で濾過した後、フィルターをクリーン容器に入れ、クリーンアセトンで浸し、超音波洗浄機で30分間洗浄した。洗浄後、その洗浄液を更に25mmφのディスクフィルター(濾過圧:0.05MPa、フィルター:ナイロンネット(孔径11μm))で濾過し、フィルター上に残った異物量を精密天秤で測定した。
判定:異物量が多いことは分散性が悪いかあるいは分散機の円筒容器、ローラーおよびローターなどの摩耗粉の混入を示す。
(ローラー摩耗の評価方法)
(1)ローラー欠けの本数
ペースト900kgを連続分散し、ローラーの摩耗による削れおよび、ローラーが欠けた本数を数えた。
(2)ローラー削れ量
ペースト分散後、ローラーをクリーン容器に入れ、クリーンアセトンで浸し、超音波洗浄機で30分間洗浄した。洗浄後、ローラーをクリーンベンチで24時間乾燥させ、ローラーの重量を精密天秤で測定し、分散前のローラー重量と比較した。実施例1〜4と比較例1、2として図1、2に示した分散機を用いた。筒状容器、ローターおよびローラーの材質、形状を表1に示す。この分散機の実容量は1.5Lであった。
【0032】
各ペーストを所定量計量後、プラネタリーミキサー(井上製作所製)で予備混合した。この時の条件は、60rpmで60分行った。予備混合終了後、ミキサーの下釜に上蓋をセットし、定量ポンプを介して1.5S(内径35.7mm)の金属配管で筒状容器内にローラーが装入された分散機と接続した。ミキサーの釜に圧空0.2MPaをかけ、ミキサー釜内のペーストを筒状容器内に押し出した。分散機の運転条件は300rpmとした。
【0033】
各ペーストの分散処理後の分散度、粘度、ディスクフィルター上の異物量を測定した結果と、ローラーの欠けた本数、削れた本数を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1〜4で分散処理したペーストは、異物量が少なく、分散性も良好であった。また、ローラーの欠けもなく、削れも少なかった。比較例1〜2で分散処理したペーストは、分散性は良好であったが、異物量が多く見られた。また、ローラーの欠けが発生し、削れも多かった。
【図面の簡単な説明】
【0036】

【図1】本発明による分散機の一例を示した横面模式図である。
【図2】本発明による分散機の一例を示した縦断面模式図である。
【図3】図2のローラー付近の拡大断面図である。
【図4】テーパー形状を有するローラーの形状の一例を示した正面図および側面図である。
【図5】テーパー形状を有するローラーの形状の別の例を示した正面図および側面図である。
【図6】テーパー形状を有するローラーの形状のさらに別の例を示した正面図および側面図である。
【符号の説明】
【0037】

1:筒状容器
2:ローター
3:回転軸
4:溝
5:テーパー形状を有するローラー
6:わずかな隙間
7:隙間
8:ジャケット
9:供給口
10:吐出口
11:定量ポンプ
12:下釜
13:上蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸方向の一方の端部近傍にミルベースの供給口を、他方の端部近傍にミルベースの吐出口を備え、前記中心軸に垂直な方向の内面の断面形状が円である筒状容器内に、外周部に前記中心軸と平行な溝が複数形成された、回転可能なローターを有し、前記溝内に自公転可能に配された複数のローラーを有する分散機であって、前記複数のローラーの全部または一部に、長手方向に垂直な断面が円であり、中央部における断面の直径Rと、ミルベース供給口側先端部の直径rが下式(1)の関係を満たすテーパー形状を有するローラーが用いられてることを特徴とする分散機。
r/R<0.8 (1)
【請求項2】
前記複数のローラーにおいて、少なくとも前記ローターのミルベース供給口側の端部から最も近いローラーと、その一部が該ローターの該ローラーが含まれる円周方向領域に少なくともその一部がかかっているローラーが、前記のテーパー形状を有している請求項1に記載の分散機。
【請求項3】
前記の溝のミルベース供給口側の端部は、前記中心軸の垂直な面に並ぶように実質的に揃えられており、少なくとも該溝の最もミルベース供給口側にあるローラーは、前記のテーパー形状を有している請求項1に記載の分散機。
【請求項4】
前記テーパー形状を有するローラーが円柱部分と円錐台形状からなるテーパー部分からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散機。
【請求項5】
前記テーパー形状を有するローラーが円柱部分と球の一部または回転楕円体の一部からなるテーパー部分からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の分散機を用いて被分散物の分散を行うペーストの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−260486(P2007−260486A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85194(P2006−85194)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】