説明

分散質−補強材料の製造方法

本発明は、分散質−補強材料を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、第1の実施態様において、(i)金属粒子を提供し、その際、金属は、白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択されており、(ii)金属粒子を、分散質の前駆化合物および溶剤と混合し、(iii)溶剤を除去し、それによって、前駆化合物を備えた金属粒子が得られ、かつ(iv)前駆化合物を備えた金属粒子を圧縮して、分散質−補強材料を得て、その際、前駆化合物が、圧縮操作中に分散質に変換する。第2の実施態様において、(i)金属粒子を提供し、その際、金属は、白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択され、かつ前記金属粒子は、切削加工、フライス加工、旋削およびやすり加工から選択された機械的工程によって製造されており、(ii)金属粒子を、分散質または分散質の前駆化合物ならびに溶剤と一緒に混合し、(iii)溶剤を除去し、かつ、(iv)工程(iii)で得られた金属粒子を圧縮して、分散質−補強材料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散質−補強材料の製造方法に関する。
【0002】
特定の貴金属、たとえば特に白金族金属、金および銀は、その優れた化学的安定性にもかかわらず、専ら限られた適用に適しており、それというのも、その機械的特性は十分なものでないためである。機械的特性を改善するための一つの可能性は、たとえば、高められた温度での強度であって、これは、分散質−補強(dispersoid-strengthening)、さらには分散液−補強(dispersion-strengthening)として知られている。得られた材料において、機械的特性の改善は、貴金属と、その中に微分散された非金属粒子(分散質)との組合せをベースとし、この場合、これらは構造化されたマトリックスを安定化させることができる。マトリックスの構造は、前駆材料の製造中で変形によって得られる。
【0003】
分散質−補強材料を製造することは公知技術の範囲内である。ごく初期の方法の一つは、粉末冶金学的方法であり、この方法において、分散質−補強材料は、金属粉末と、微分散された耐熱性粒子とを混合させ、その後に混合物を圧縮することによって製造される。他の方法は、たとえばGB-B 1 280 815中に記載された方法である噴霧方法ならびにたとえばDE-A 178 30 74中で開示されている内部酸化である。
【0004】
しかしながら、これらの公知方法は、複雑かつ高価であるといった欠点を有する。さらに、これらは、高められた温度または制御された作業環境の使用を必要とする。したがって、分散質−補強材料を、簡単かつ廉価に製造することができる方法が要求されている。
第1の実施態様において、本発明は、分散質−補強材料を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、
(i)金属粒子を提供し、その際、金属は白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅、ならびにこれらの合金から選択されており、
(ii)金属粒子を、分散質の前駆化合物および溶剤と混合し、
(iii)溶剤を除去することで、前駆化合物を備えた金属粒子を得て、かつ、
(iv)前駆化合物を備えた金属粒子を圧縮することで、分散質−補強材料を得ることができ、その際、前駆化合物を、圧縮操作中の分散質に変換する、
工程を含む。
【0005】
第2の実施態様において、本発明は、分散質−補強材料を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、
(i)金属粒子を提供し、その際、金属は白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択され、かつ、その際、金属粒子は、切削加工、フライス加工、旋削およびやすり加工から選択された機械的工程によって製造されており、
(ii)金属粒子を、分散質または分散質の前駆化合物ならびに溶剤と混合し、
(iii)溶剤を除去し、かつ、
(iv)工程(iii)で得られた金属粒子を圧縮して、分散質−補強材料を得る、
工程を含む。
【0006】
これら2種の実施態様を組合せることは、当然可能である。さらに、これら方法の一方または双方を、常用の方法と組み合わせることができる。
【0007】
さらに本発明は、この方法によって得ることが可能な分散質−補強材料に関する。
【0008】
最初に、方法の工程(i)において、金属粒子を提供する。金属は、白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択されてもよい。使用される金属は、好ましくは白金属金属または白金族金属を含有する合金である。白金および白金含有合金、たとえば白金、白金−ロジウム合金、白金−イリジウム合金および白金−金合金が特に好ましい。
【0009】
最初の実施態様において、金属から成る粒子は、任意の好ましい方法において製造することができる。圧縮金属成形品から金属粒子を製造するための可能な方法の例は、熱的方法に加えて、たとえばアトマイゼーションおよび溶射、さらには、化学的方法、たとえば沈降法および機械的方法、たとえば切削加工、フライス加工、旋削およびやすり加工である。特に、以下の理由のために、機械的方法が好ましい。
【0010】
第2の実施態様において、金属粒子は、機械的方法、たとえば切削加工、フライス加工、旋削およびやすり加工によって、圧縮金属成形品から製造される。これらの方法は、熱的方法、たとえばアトマイゼーションおよび溶射とは異なって、あるいは機械的方法、たとえばフライス加工は、金属粒子上の不規則な表面構造および材料中の高い転位密度を導く。材料中に生じる空孔は、特に有利な特性、たとえば特に高いクリープ破壊強度に導く。
【0011】
金属粒子は任意の適した大きさであってもよい。しかしながら、これらは、一般には10μm〜10mm、好ましくは20μm〜5mmの大きさである。
【0012】
本発明の第1の実施態様において、金属粒子を、その後に分散質の前駆化合物および溶剤と一緒に混合する。本発明の第2の実施態様において、二者択一的に、金属粒子を、分散質および溶剤と一緒に混合することができる。
【0013】
分散質の前駆化合物は、固体粒子の形で溶剤中に存在していてもよいか(すなわち、懸濁液の形で)、あるいは、溶剤中に溶解されていてもよい。
【0014】
分散質−補強材料のための適した分散質は、すべての公知の分散質である。これらは、特に、周期律表の第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族および第VB族(IUPAC 1985)またはランタニド族の元素の化合物を含む。ジルコニウム、イットリウム、トリウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素およびこれら分散質の混合物をベースとする分散質が好ましく、その際、ジルコニウム、イットリウム、トリウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの分散質の混合物をベースとする分散質は特に好ましい。分散質は、酸化物および窒化物の形であってもよいが、しかしながら特に酸化物の形である。
【0015】
これら分散質の適した前駆化合物は、本発明の方法の工程(iv)中での圧縮の間に、分散質に変換されるすべての化合物であり、この場合、これらは、直接的に、あるいは、以下に示すように、他の前駆化合物への変換後であってもよい。前駆化合物は、好ましくは、分散質に完全に変換するか、あるいは、分散質および揮発性材料、たとえばガスまたは高揮発性物質(たとえば、工程(iv)中で使用された条件下で、材料の前駆体から揮発される物質)を形成するよう、変換すべきである。分散質の適した前駆化合物は、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩、特に炭酸塩および炭酸水素塩である。
【0016】
本発明の第1の実施態様において、分散質−補強材料が分散質の混合物を含有する場合には、すべての分散質を、本発明の第1の実施態様による方法を用いて、前駆化合物によって導入することは、必須ではない。むしろ、本発明の第1の実施態様を用いて1種またはそれ以上の分散質を導入し、かつ1種またはそれ以上の他の分散質を、任意の方法で材料中に導入することも可能である。これは、本発明の第2の実施態様にも適用され、これは、工程(ii)中で、金属粒子を前駆化合物および溶剤と混合する場合である。
【0017】
本発明の第2の実施態様において、さらに本発明の第2の実施態様による方法の工程(ii)または工程(iii)中で、好ましい分散質に変換される分散質の前駆化合物を選択することも可能である。本発明の第2の実施態様による方法の工程(ii)中で、好ましい分散質に変換することができる前駆化合物の例は、金属粒子上に沈澱させることができるすべての化合物である。このような例の一つは、炭酸カルシウムである。分散質の前駆化合物は、本発明の第2の実施態様による方法の工程(iii)中で、分散質に変換することができる。この場合、適した前駆化合物は、溶剤を除去した際に、好ましい分散質に変換されるすべての化合物である。この下位の実施態様において、分散質への変換は、特に高められた温度によって支持される。
【0018】
分散質−補強材料が、分散質の混合物を含有する場合には、1種またはそれ以上の分散質を、分散質の前駆化合物で導入し、かつ、1種またはそれ以上の分散質を、すでに分散質の形で材料中に導入することができる。
【0019】
分散質の前駆化合物が、懸濁液中の粒子の形である場合には、分散質の前駆化合物の粒子の大きさは、最終材料中の分散質粒子の大きさに影響を与えうるものであり、かつ適切に選択すべきである。分散質の前駆化合物の粒子の大きさは、典型的には1nm〜50μm、好ましくは10nm〜1μmである。これは、最終材料中での分散質の粒径を、たとえば1nm〜50μm、好ましくは10nm〜1μmで得ることを可能にする。
【0020】
本発明の第2の実施態様において、懸濁液が、分散質の形ですでに存在する分散質を含有する場合には、懸濁液中の分散質の粒径は、典型的には1nm〜50μm、好ましくは10nm〜1μmである。これは、最終材料中の分散質の粒径を、たとえば1nm〜50μm、好ましくは10nm〜1μmの大きさで製造することを可能にする。
【0021】
分散質またはその前駆化合物に加えて、懸濁液または溶液は、さらに溶剤を含有する。溶剤は特に限定的なものではない。職務上の安全規制および環境保護の法規制に適合し、かつ簡単に残留物の放出なく除去することができる溶剤を選択することが好ましい。相溶性である溶剤を選択するのが好ましく、かつ簡単に除去することができ、かつ脱離基を有することがない。このような溶剤の例はアルコール(たとえばC〜C−アルコール)、水およびすべての他の極性溶剤を含む。水が好ましい。
【0022】
懸濁液または溶液中の分散質または分散質の前駆化合物の濃度は、厳密なものではない。一方で、濃度は、懸濁液または溶液が、金属粒子と混合するのに適した粘度を有するように選択されるべきである。他方で、溶剤の量は、あまり大きい量で選択すべきではなく、それというのも、溶剤の除去に含まれる時間および/またはコストの点で、あまりにも高くなるためである。適した濃度は、たとえば0.1〜50%、好ましくは1〜10%である。
【0023】
混合工程中で、分散質または分散質の前駆化合物と、金属粒子との量比は、懸濁液または溶液中の分散質または分散質の前駆化合物の濃度よりもより重要である。比は、最終的な材料中の分散質の好ましい濃度が達成されるように、選択すべきである。最終材料中の分散質の濃度は、特に制限されるものではなく、かつ分散質の型、存在しうる任意の他の分散質の選択、材料の用途等に依存ずる。最終的な材料中の分散質の典型的な濃度は、材料の全体積に対して0.001〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%、特に好ましくは0.1〜5体積%である。
【0024】
金属粒子および懸濁液または溶液は、任意の好ましい方法を用いて混合することができ、この目的は、金属粒子と分散質または分散質の前駆化合物との均質な混合を達成することである。一つの可能性は、懸濁液または溶液を、金属粒子上に噴霧することである。他の可能性は、金属粒子および懸濁液または溶液を、ミキサ、たとえば撹拌機またはニーダー中で混合することである。
【0025】
混合のために選択される条件は、特に制限されることはなく、かつ典型的には、懸濁液または溶液のために選択された金属粒子および成分に基づいて選択される。周囲条件(すなわち、室温(約20℃〜約30℃)および空気雰囲気)が好ましくは、方法をコスト効率的にするために選択される。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0026】
金属粒子および懸濁液または溶液を混合した後に、溶剤を除去する。溶剤を除去するために使用される方法は、特に制限されるものではない。たとえば、溶剤は、室温または高められた温度で除去することができる。減圧下で、溶剤を除去することも可能である。
【0027】
溶剤を除去した後に、その表面上に分散質(第2の実施態様)または分散質の前駆化合物(第1または第2の実施態様)を有する金属粒子が得られる。
【0028】
金属粒子表面の一部または全部の表面上に存在する分散質の前駆化合物は、懸濁液または溶液中に含まれる前駆化合物と同一であってもよいか、あるいは、異なる他の前駆化合物であってもよい。これは、以下の実施態様に基づいて説明する。しかしながら、挙げられた分散質およびその前駆化合物の型は、本発明の理解を容易にすることを意図するものに過ぎず、構成上の任意の制限として解釈されるべきものではない。さらに実施態様は、他の分散質および他の前駆化合物を用いて実行することができる。
【0029】
第1の下位の実施態様(本発明の第1の実施態様および第2の実施態様)によれば、懸濁液は、前駆化合物として炭酸塩化合物を含有していてもよい。溶剤を除去した後に、炭酸塩化合物を備えた金属粒子が得られる。その後に、炭酸塩化合物を、分散質として好ましい酸化物に変換する。
【0030】
第2の下位の実施態様(本発明の第1の実施態様および第2の実施態様)によれば、たとえば、炭酸水素塩化合物を、前駆化合物として懸濁液中に導入することができる。溶剤の除去は、他の前駆化合物として炭酸塩化合物を備えた金属粒子を提供する。その後に、炭酸塩化合物は、分散質として好ましい酸化物に変換される。
【0031】
第3の下位の実施態様(本発明の第2の実施態様)によれば、懸濁液は、好ましい酸化物分散質を含有し、その結果、金属粒子は、表面上に酸化物粒子を備えることとなる。
【0032】
第4の下位の実施態様(本発明の第1の実施態様および第2の実施態様)によれば、分散質の前駆化合物の溶液を、金属粒子と一緒に混合する。沈澱剤を添加し、その結果、分散質(第2の実施態様)または分散質の前駆化合物(第1の実施態様および第2の実施態様)を、金属粒子上に沈澱させる。分散質の前駆化合物が、金属粒子上に沈澱する場合には、この前駆化合物は、適切な後続の工程中で分散質に変換することができる。
【0033】
第5の下位の実施態様(本発明の第1の実施態様および第2の実施態様)によれば、分散質の前駆化合物の溶液を、金属粒子と一緒に混合する。溶剤を除去する場合には、たとえば高められた温度で、分散質(第2の実施態様)または分散質の前駆化合物(第1および第2の実施態様)を、金属粒子上に沈澱する。分散質の前駆化合物が、金属粒子上に沈澱する場合には、この前駆化合物は、適切な後続の工程中で分散質に変換することができる。
【0034】
得られた金属粒子を、その後に圧縮し、好ましい分散質−補強材料を形成する。圧縮を、任意の好ましい方法を用いて実施することができる。一般に、少なくとも2個の工程を有する方法を実施する。最初に、分散質または前駆化合物を備えた金属粒子を、前圧縮し、その後にこれらをさらに圧縮する。
【0035】
前圧縮は、たとえば、等方圧プレスまたは軸プレスによって実施することができる。これに関する公知方法は、冷間等方圧プレスである。さらなる圧縮は、一般には高められた温度で、かつ適切である場合には制御された雰囲気下で(たとえば窒素、水素またはアルゴン)実施する。使用することができる方法は、鍛造および熱間等方圧プレスを含む。圧縮方法は当業者に、たとえば、Kishor M. Kulkarni, "Powder Metallurgy for Full Density Products", New Perspectives in Powder Metallurgy, Vol. 8, Metal Powder Industries Federation, Princeton, New Jersey, 08540, 1987から公知である。
【0036】
本発明の第1の実施態様および本発明の第2の実施態様の変法において、分散質の前駆化合物を、圧縮操作中において分散質に変換する。これは、多段階圧縮方法の場合には、任意の好ましい圧縮工程中で生じうる。多段階圧縮方法を使用する場合には、他の圧縮の間に、前駆化合物を分散質に変換させることが好ましく、それというのも、材料の温度は、方法のこの段階において上昇するためである。適した方法を使用する場合には、個々の工程の発熱性を利用することが可能であり、たとえば鍛造、熱間等方圧プレス(HIP)、熱間プレス、衝撃押出しまたは熱間押出しを使用して、分散質の前駆化合物を分散質に変換することが可能である。
【0037】
圧縮工程中で、分散質の前駆化合物を分散質に変換する方法は、特に有利であり、それというのも、分散質の前駆化合物を分散質に変換するための付加的な工程の必要がないためである。これは工程を簡単にするだけではなく、さらに方法のコストを削減し、それというのも、変換に提供すべき任意の付加的なエネルギーを必要としないためである。
【0038】
本発明にしたがって製造される分散質−補強材料は、すべての適用領域中で使用することができ、この場合、これは、特に高い化学的安定性に加えて、高い温度に対する耐性が要求される領域である。典型的な使用領域は、高温適用および/または高い化学的不活性
性を要求する領域中での構造材料として、である。例は、ガラス工業、フッ素工業および半導体工業において使用される溶融るつぼおよび部材を含む。
【0039】
本発明による方法は、以下の実施例に基づいて例証される。しかしながら、これらの例は、請求項によって定められる本発明の減縮を意図したものではない。
【実施例】
【0040】
例1
白金、白金−ロジウム(10%)合金および白金−金(5%)合金のそれぞれの鋳造インゴットは、金属粒子を製造するためにやすり加工によって削られた。削り粉末をふるいがけし、1mm未満の分級物を得た。蒸留水中の炭酸水素カルシウムの蒸留水中10質量%懸濁液を製造した。削り粉末1000gおよび懸濁液50gを、ニーダーミキサ中で、削る粉末表面が、懸濁液によって均一に被覆されるまで混合した。水を120℃に加熱することにより除去することにより、炭酸カルシウムで被覆された金属粒子を製造した。炭酸カルシウムで被覆された金属粒子を前圧縮して、等方圧プレス中で、室温で、かつ4000バールで、圧縮体を形成し、その後にさらに、鍛造プレスにより1400℃で圧縮して、均質な成形体を成形した。炭酸カルシウムの酸化カルシウムおよび二酸化炭素への変換は、この場合、さらなる圧縮の間に放出された工程エネルギーによって実施された。1mmの厚さのワイヤを、鍛造インゴットから、多段階圧延および延伸によって製造した。分散質は、ワイヤの全体積に対して、ワイヤの1体積%を構成するものであった。ワイヤについては、それぞれ、1400℃で100時間に亘ってのクリープ破壊試験をおこなった。結果は第1表に示す。
【0041】
【表1】

アトマイゼーションによる粉末、フライス加工によるチップおよび旋削によるチップについての試験も同様に良好におこなった。
【0042】
例2
白金、白金−ロジウム(10%)合金および白金−金(5%)合金のそれぞれの鋳造インゴットは、金属粒子を製造するためにやすり加工によって削られた。削り粉末をふるいがけし、1mm未満の分級物を得た。水中でケイ酸ジルコニウム10質量%の溶液を製造した。1000gの削り粉末および50gの溶液を、ニーダーミキサ中で混合した。1μm未満の粒径を有する酸化ジルコニウムが、削り粉末表面上に、100mlの10%水酸化ナトリウム溶液を導入することによって沈澱した。水を120℃に加熱することにより除去し、それによって、酸化ジルコニウムで被覆された金属粒子を製造した。酸化ジルコニウムで被覆された金属粒子を前圧縮して、4000バールで、等方圧プレス中で、圧縮体を形成し、その後さらに、1400℃で、鍛造プレスにより圧縮して、均質な成形体を成形した。1mmの厚さのワイヤを、鍛造インゴットから、多段階圧延および延伸により製造した。分散質は、ワイヤの全体積に対して、ワイヤの1体積%を構成するものであった。ワイヤについては、それぞれ、1400℃で100時間に亘って、クリープ破壊試験をおこなった。結果は第2表に示す。
【0043】
【表2】

フライス加工によるチップおよび旋削によるチップを用いての試験も同様に、良好におこなった。
【0044】
例3
白金、白金−ロジウム(10%)合金および白金−金(5%)合金のそれぞれの鋳造インゴットは、金属粒子を製造するためにやすり加工によって削られた。削り粉末をふるいがけし、1mm未満の分級物を得た。酸化ハフニウム2質量%、酸化カルシウム2質量%、酸化マグネシウム2質量%、酸化イットリウム2質量%および酸化ジルコニウム2質量%の水中での懸濁液を製造した。粒径は、それぞれの場合において、せいぜい1μmであった。1000gの削り粉末および50gの懸濁液を、ニーダーミキサ中で、削り粉末の表面が懸濁液で均一に被覆されるまで混合した。水を120℃に加熱することにより除去し、それによって、分散質混合物で被覆された金属粒子を製造した。得られた金属粒子を前圧縮して、等方圧プレス中で、4000バールで圧縮体を形成し、かつさらに、1400℃で鍛造プレスによって圧縮し、均質な成形体に成形した。1mmの厚さのワイヤを、鍛造インゴットから、多段階の圧延および延伸によって製造した。分散質は、ワイヤの全体積に対して、ワイヤの1.5体積%を構成するものであった。ワイヤについては、それぞれ、1400℃で1000時間に亘って、クリープ破壊試験をおこなった。結果は第3表に示す。
【0045】
【表3】

フライス加工によるチップおよび旋削によるチップを用いての試験も同様に、良好におこなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散質−補強材料の製造方法において、
(i)金属粒子を提供し、その際、金属は、白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択されており、
(ii)金属粒子を、分散質の前駆化合物および溶剤と混合し、
(iii)溶剤を除去し、それによって、前駆化合物を備えた金属粒子が得られ、かつ
(iv)前駆化合物を備えた金属粒子を圧縮して、分散質−補強材料を得、その際、前駆化合物は、圧縮操作中に分散質に変換される、ことを特徴とする、分散質−補強材料の製造方法。
【請求項2】
分散質−補強材料の製造方法において、
(i)金属粒子を提供し、その際、金属は、白金族金属、金、銀、ニッケルおよび銅ならびにこれらの合金から選択され、かつ前記金属粒子は、切削加工、フライス加工、旋削およびやすり加工から選択された機械的方法によって製造されており、
(ii)金属粒子を、分散質または分散質の前駆化合物ならびに溶剤と一緒に混合し、
(iii)溶剤を除去し、かつ、
(iv)工程(iii)で得られた金属粒子を圧縮して、分散質−補強材料を得る、ことを特徴とする、分散質−補強材料の製造方法。
【請求項3】
前駆化合物が、炭酸塩および炭酸水素塩から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
金属が、白金族金属および白金族金属を含有する合金から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分散質が、1種またはそれ以上の酸化物を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分散質が、周期律表の第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族および第VB族からの元素またはランタニド族の元素を含む、1種またはそれ以上の化合物を含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
分散質が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムおよびこれらの混合物から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
分散質が、材料の全体積に対して0.001〜5体積%の量で材料中に存在する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)中の混合を、周囲条件下での混合によって実施する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
圧縮を、少なくとも2段階で実施する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能な、分散質−補強材料。

【公表番号】特表2008−510884(P2008−510884A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528741(P2007−528741)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009144
【国際公開番号】WO2006/021438
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】