説明

分散電源連系システムおよび系統連系保護装置

【課題】 各分散電源保有設備内の分散電源を活用して、配電系統の電圧低下抑制のために従来設けられていた機器を減らすことができる技術を提供する。
【解決手段】 分散電源28および負荷29をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備20が第1群と第2群に分類されて配電系統に接続された構成の分散電源連系システムにおいて、両群の各設備20は、自設備の配電系統から受電している消費電力Pを測定する消費電力測定器70を備えている。両群の各設備20の電流注入装置は、自設備の消費電力測定器70が測定する消費電力Pに応じた大きさの注入電流Iinj を配電系統に注入する。更に両群の各設備20は、自設備の分散電源28を制御して、注入周波数電圧測定装置60が測定する注入周波数電圧Vinj に応じた大きさの遅相無効電力Qを自設備の分散電源28から出力させる遅相無効電力制御回路80を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分散電源および負荷をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が配電系統に接続された構成の分散電源連系システムに関する。より具体的には、配電系統の負荷増大に伴う電圧低下を抑制する手段に関する。更に、当該分散電源連系システムの一員となる後続の分散電源保有設備のための系統連系保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15に示すような分散電源連系システムが既に提案されている(例えば特許文献1参照)。この分散電源連系システムの構成は次のとおりである。
【0003】
(a)分散電源および負荷をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備200が配電系統1に接続された構成の分散電源連系システムであって、
(b)複数の分散電源保有設備200は第1群と第2群との2群に分類されていて、
(c)数1、表1にも示すように、うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差Δfは両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数f11、f12、f21、f22はそれぞれ異なると共に配電系統1の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(d)第1群に属する各分散電源保有設備200は、第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を配電系統1に注入する電流注入装置と、自設備と配電系統1との連系点における電圧であって第2組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、
(e)第2群に属する各分散電源保有設備200は、第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を配電系統1に注入する電流注入装置と、自設備と配電系統1との連系点における電圧であって第1組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、
(f)かつ両群の各分散電源保有設備200は、自設備が属する方の群を自群、自設備が属さない方の群を他群と呼ぶと、自設備の電流注入装置が注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備の電流注入装置が注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御装置をそれぞれ備えている。
【0004】
[数1]
|f11−f12|=|f21−f22|=Δf
11≠f12≠f21≠f22
【0005】
【表1】

【0006】
配電系統1は、この例では、上位系統2に変電所4の変圧器6および遮断器8を介して高圧配電線10が接続され、この高圧配電線10に配電用変圧器(例えば柱上変圧器)14を介して低圧配電線16が接続された構成をしていて、この低圧配電線16に各分散電源保有設備200が接続されている。自動電圧調整器12については後述する。
【0007】
上記分散電源連系システムによれば、自設備の注入電流が生じさせるうなりと、他群の注入電流が生じさせるうなりとを同期させることを利用して、同一の群に属する複数の分散電源保有設備200から配電系統1に注入する同一周波数の複数の注入電流をそれぞれ同期させることができる。従って同期信号ラインや外部同期信号源を用いなくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−11142号公報(段落0018−0020、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記分散電源連系システムにおいては、各分散電源保有設備200が配電系統1から受電(買電)して電力を消費すると、通常の配電系統の場合と同様に、配電系統1における電圧降下によって連系点の電圧が低下する。例えば、分散電源保有設備200内の分散電源が太陽光発電設備の場合は、夜間には発電が0になるので、分散電源保有設備200の消費電力は全て配電系統1から受電する電力となる。
【0010】
この出願において、単に「消費電力」と呼んでいる場合は、分散電源保有設備が配電系統1から受電(買電)して消費する電力(有効電力)のことを指す。
【0011】
連系点の電圧は、電気事業法等によって定められた所定の下限値(例えば、標準電圧が100Vの場合は95V)より低下しないようにする必要があり、その対策として従来は、通常の配電系統の場合と同様に、変電所4の変圧器6を自動電圧調整機能付きの変圧器(例えば負荷時タップ切換変圧器)にしてバンク一括の電圧調整を行うだけでなく、それから引き出されている高圧配電線10の途中に自動電圧調整器12を設けて電圧を持ち上げること等を行っており、従って電圧低下抑制のために設けられる機器が比較的多いという課題がある。
【0012】
そこでこの発明は、各分散電源保有設備内の分散電源を活用して、配電系統の電圧低下抑制のために従来設けられていた機器を減らすことができる技術を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る分散電源連系システムは、(1)(a)分散電源および負荷をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が配電系統に接続された構成の分散電源連系システムであって、(b)前記複数の分散電源保有設備は第1群と第2群との2群に分類されていて、(c)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、(d)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって前記第2組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、(e)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって前記第1組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、(f)かつ両群の各分散電源保有設備は、自設備が属する方の群を自群、自設備が属さない方の群を他群と呼ぶと、自設備の前記電流注入装置が注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備の前記電流注入装置が注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御装置をそれぞれ備えている、分散電源連系システムにおいて、(2)両群の各分散電源保有設備は、自設備の前記配電系統から受電している消費電力を測定する消費電力測定器をそれぞれ備えており、(3)両群の各分散電源保有設備の前記電流注入装置は、自設備の前記消費電力測定器が測定する前記消費電力に応じた大きさの前記注入電流を前記配電系統にそれぞれ注入するものであり、(4)更に両群の各分散電源保有設備は、自設備の分散電源を制御して、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数電圧に応じた大きさの遅相無効電力を自設備の分散電源から出力させる遅相無効電力制御回路をそれぞれ備えている、ことを特徴としている。
【0014】
この分散電源連系システムの作用の概要は次のとおりである。
【0015】
上記従来技術と同様に、同期制御装置による制御によって、同期信号ライン等を用いなくても、同一群内の同一周波数の複数の注入電流を同期させることができ、これによって、同期した注入電流の合計値に応じた大きさの注入周波数電圧が配電系統に発生する。
【0016】
しかも、この発明では、各分散電源保有設備の電流注入装置は自設備の消費電力に応じた大きさの注入電流を配電系統に注入するので、配電系統に発生する上記注入周波数電圧の大きさは、同一群内の複数の分散電源保有設備の消費電力の合計値に応じた大きさになる。
【0017】
従って、他群の分散電源保有設備の電流注入装置が注入する注入周波数の電圧を自設備の注入周波数電圧測定装置で測定することによって、他群の分散電源保有設備の消費電力の合計値を知ることができる。ひいては、自群と他群の分散電源保有設備のおおよその台数割合は予め分かっているので、第1群および第2群の分散電源保有設備の合計のおおよその消費電力を知ることができる。
【0018】
そしてその合計の消費電力に応じて、第1群および第2群の全ての分散電源保有設備の遅相無効電力制御回路は、自設備の受電点の電圧の高低に拘わらず、自設備の分散電源から遅相無効電力(系統側から見て進相無効電力。この関係については後述する)を出力させる。これによって、配電系統の電圧低下を、全ての分散電源保有設備が協力して全体的に抑制することができる。
【0019】
仮に、連系点の電圧が前記下限値を下回っている分散電源保有設備だけが遅相無効電力を出力するようにすると、通常は配電系統の末端に近いほど電圧低下が大きいので末端に近い分散電源保有設備ほど大きな遅相無効電力を出力しなければならなくなり、当該設備の負担が大きくなるだけでなく、出力できる遅相無効電力には自ずと限界があるので連系点の電圧を前記下限値以上にすることができないことが起こり、大きな不平等が生じる。この発明はこのような問題をも解決することができる。
【0020】
この発明によれば、各分散電源保有設備内の分散電源を活用して、上記のような作用によって、配電系統の電圧低下を、全ての分散電源保有設備が協力して全体的に抑制することができるので、配電系統の電圧低下抑制のために従来設けられていた機器を減らすことが可能になる。
【0021】
前記複数の分散電源保有設備には、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数の電圧を監視して、当該電圧の増大から、自設備の分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転監視装置を備えている分散電源保有設備が含まれていても良い。
【0022】
この発明に係る系統連系保護装置は、この発明に係る前記分散電源連系システムの前記配電系統に接続されて、前記第1群および第2群の分散電源保有設備の内の一方の群の一員となる後続の分散電源保有設備のための系統連系保護装置であって、当該後続の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が一員となる方の分散電源保有設備の群を自群、当該自設備が一員とならない方の分散電源保有設備の群を他群と呼ぶと、(a)自設備の前記配電系統から受電している消費電力を測定する消費電力測定器と、(b)前記第1組および第2組の内の一方の組の注入周波数の電流組を含む注入電流であって、自設備の前記消費電力測定器が測定する前記消費電力に応じた大きさの注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、(c)自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって、前記第1組および第2組の内の他方の組の注入周波数を構成している少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置と、(d)自設備の前記電流注入装置が注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備の前記電流注入装置が注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御装置と、(e)自設備の分散電源を制御して、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数電圧に応じた大きさの遅相無効電力を自設備の分散電源から出力させる遅相無効電力制御回路とを備えている、ことを特徴としている。
【0023】
この系統連系保護装置の前記電流注入装置が前記第1組の注入電流を注入し、前記注入周波数電圧測定装置が前記第2組の注入周波数を構成している少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する場合は、前記後続の分散電源保有設備は第1群の分散電源保有設備の一員となる。反対に、前記電流注入装置が前記第2組の注入電流を注入し、前記注入周波数電圧測定装置が前記第1組の注入周波数を構成している少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する場合は、前記後続の分散電源保有設備は第2群の分散電源保有設備の一員となる。
【0024】
前記系統連系保護装置は、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数の電圧を監視して、当該電圧の増大から、自設備の分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転監視装置を更に備えていても良い。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、各分散電源保有設備内の分散電源を活用して、配電系統の電圧低下を、全ての分散電源保有設備が協力して全体的に抑制することができるので、配電系統の電圧低下抑制のために従来設けられていた機器を減らすことが可能になる。
【0026】
しかも、全ての分散電源保有設備から遅相無効電力を出力して全ての分散電源保有設備が協力して電圧低下を抑制するので、一部の分散電源保有設備の負担が特に大きくなって不平等になるという問題をも解消することができる。
【0027】
請求項3、6に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、単独運転監視装置によって、自設備の分散電源が単独運転になったことを検出することができる。分散電源連系システムにおける主要な課題の一つに分散電源の単独運転検出があるけれども、この発明によれば、配電系統の電圧低下抑制と分散電源の単独運転検出とに、前記電流注入装置、注入周波数電圧測定装置および同期制御装置を兼用することができるので、そのぶん構成の簡素化を図ることができる。ひいては装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る分散電源連系システムの一実施形態を示す単線接続図である。
【図2】各分散電源保有設備の構成の一例を示す図である。
【図3】この出願において配電系統の電圧低下を抑制する観点から採用している電力の表記方向を示す図である。
【図4】電流注入装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】注入周波数電圧測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】同期制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】遅相無効電力制御回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】複数の分散電源保有設備が配電系統に接続されている場合の、実施例による電圧低下抑制の概略例を示す図である。
【図9】シミュレーションに用いた分散電源連系システムのモデルを示す図である。
【図10】シミュレーションにおいて、各分散電源保有設備の消費電力を変化させた一例を示す図である。
【図11】図10に示す消費電力変化の場合において、比較例として、各分散電源保有設備から遅相無効電力を供給しない場合の各連系点の電圧の変化の一例を示す図である。
【図12】図10に示す消費電力変化の場合において、実施例として、各分散電源保有設備が遅相無効電力制御を行った場合の各分散電源保有設備から供給する無効電力の変化の一例を示す図である。
【図13】図10に示す消費電力変化の場合において、実施例として、各分散電源保有設備が遅相無効電力制御を行った場合の各連系点の電圧の変化の一例を示す図である。
【図14】単独運転監視装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】従来の分散電源連系システムの一例を示す単線接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1)配電系統の電圧降下と、有効電力および無効電力の表記方向
まず、配電系統の電圧降下と、有効電力および無効電力の表記方向について説明する。
【0030】
一般的な話として、系統電源と負荷との間にインピーダンスr+jx(rは抵抗、xはリアクタンス)がありそこに電力が流れると、その間における電圧降下ΔVは、受電端電圧を1[pu]とすると、次式で表される。
【0031】
[数2]
ΔV=P・r+Q・x [pu]
ここで、Pは有効電力であり、系統側から見て負荷へ流入する方向が正である。Qは無効電力であり、系統側から見て遅れ無効電力が正、進み無効電力が負である。
【0032】
上記から分かるように、系統側から見て進み無効電力(負のQ)を供給すると、数2の右辺の第2項は負になるので、電圧降下ΔVを小さくして配電系統の電圧低下を抑制することができる。
【0033】
これを、図1に示す分散電源連系システムにおいて、負荷を有する分散電源保有設備20側から見て言えば、見る方向が系統側からとは反対になって進みと遅れが逆転するので、分散電源保有設備20から遅れ無効電力(遅相無効電力)を供給すると、電圧降下ΔVを小さくして配電系統の電圧低下を抑制することができる。本発明はこの原理を利用するものである。なお、見る方向が反対になると、進みと遅れが逆転することは、この技術分野において公知である(例えば下記の非特許文献1の31頁参照)。
【0034】
非特許文献1:「系統連系規程」、JEAC 9701−2006、社団法人日本電気協会 系統連系専門部会、平成18年8月30日第4版第2刷発行
【0035】
以上のことを踏まえて、この出願において配電系統の電圧低下を抑制する観点から採用している電力の表記方向を図3にまとめて示す。また、これ以降の説明において、特に断わりがない場合は、有効電力(消費電力)Pは配電系統1側から見たものであり、遅相無効電力Qは分散電源保有設備20側から見たものである。
【0036】
(2)分散電源連系システム全体について
図1は、この発明に係る分散電源連系システムの一実施形態を示す単線接続図である。簡単に言えば、図15に示した従来の分散電源連系システムとは、各分散電源保有設備20の構成が異なる。またこの発明の効果の例として、前述した自動電圧調整器12を省略している。
【0037】
この分散電源連系システムは、分散電源および負荷をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備20が配電系統1に接続された構成をしている。より具体的には、配電系統1は、この実施形態では、上位系統2に変電所4の変圧器6および遮断器8を介して高圧配電線10が接続され、この高圧配電線10に配電用変圧器14を介して低圧配電線16が接続された構成をしていて、この低圧配電線16に各分散電源保有設備20が接続されている。例えば、多数の分散電源保有設備20が高い密度で接続されている(これを低圧高密度連系と言う)。
【0038】
高圧配電線10の電圧は例えば6.6kV、低圧配電線16の電圧は例えば105Vであるが、これらに限られるものではない。各配電用変圧器14は、例えば6600V/105Vの柱上変圧器である。
【0039】
変電所4の変圧器6は、この実施形態では従来例と同様に、自動電圧調整機能付きの変圧器(例えば負荷時タップ切換変圧器)であり、これによって当該変圧器6のバンク一括の電圧調整を行うことができる。
【0040】
この実施形態のように、一つの配電用変圧器14に複数の分散電源保有設備20が接続されていても良い。より具体的には、一つの低圧配電線16に、例えば図8、図9に示す例のように、複数の分散電源保有設備20が上流側から下流側に向けて間隔をあけて順に並んで接続されていても良く、このようなものがより現実に近い。
【0041】
各分散電源保有設備20の構成の一例を図2に示す。この分散電源保有設備20は、負荷(構内負荷)29、分散電源28およびスイッチ22を有していて、連系点18において、低圧配電線16に接続されている。
【0042】
この分散電源保有設備20は、更に、配電系統1(具体的にはその低圧配電線16)に後述する注入周波数の注入電流Iinj を注入する電流注入装置40と、連系点18における電圧Vd に含まれている注入周波数の電圧Vinj を測定する注入周波数電圧測定装置60と、うなりの同期制御を行う同期制御装置50と、配電系統1から受電している消費電力Pを測定する消費電力測定器70と、分散電源28から遅相無効電力Qを出力させる制御を行う遅相無効電力制御回路80とを備えている。これら40、50、60、80の構成の例は後述する。また単独運転監視装置30についても後述する。
【0043】
連系点18の電圧Vd の測定のために、必要に応じて計器用変圧器を設けても良い。分散電源28からの出力電流Iout は、この例では計器用変流器23を用いて測定される。
【0044】
分散電源28は、この実施形態では、太陽電池27と、その出力を交流電力に変換するインバータ(逆変換装置)24とを有している。即ち、太陽光発電設備(略称PV)である。但しこれに限られるものではなく、他の例は後述する。
【0045】
インバータ24は、直流電力/交流電力の変換を行うインバータ部25と、それを制御して、当該インバータ24から出力する電力(具体的には上記遅相無効電力Qおよび有効電力等)等の制御を行う制御回路26とを有している。制御回路26には、当該インバータ24の出力電流Iout 、連系点18の電圧Vd 、遅相無効電力制御回路80からの後述する遅相無効電力指令値Qcom 等が供給される。
【0046】
インバータ24には、公知のインバータ(例えば非特許文献1の16−17頁参照)を利用することができる。制御回路26によって、インバータ24から出力する遅相無効電力Qおよび有効電力等を制御する技術には、公知の技術(例えば特開平7−46852号公報、特開平11−346441号公報、特開平6−54545号公報参照)を利用することができる。
【0047】
この分散電源連系システムでは、複数の分散電源保有設備20は、この実施形態のように低圧配電線16に接続されている場合は、配電用変圧器14単位で2群に分類されている。即ち、同じ配電用変圧器14に接続されるものは同一群にするという条件の下で第1群と第2群との2群に分類されている。他群に属する分散電源保有設備20全体からの注入電流との間で同期を取りやすくするためである。
【0048】
第1群および第2群を構成する分散電源保有設備20の数は、それぞれ、少なくとも2台ずつ以上あれば良い。分散電源連系システムを構築した後に、第1群および/または第2群を構成する分散電源保有設備20の数を変更(増加または減少)しても良い。
【0049】
そしてこの分散電源連系システムは、先に数1、表1にも示したように、うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差Δfは両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数f11、f12、f21、f22はそれぞれ異なる第1組および第2組の注入周波数を用いる。
【0050】
この四つの周波数f11、f12、f21、f22は、いずれも、配電系統1の基本波周波数(例えば60Hz)とは異なる周波数にする。当該基本波周波数と区別(分離)を容易にするためである。各組を成す周波数は、うなりを生じさせる程度に互いに近い周波数にする。周波数差Δfは、うなりの周波数でもある。
【0051】
なお、この出願では、符号に添字11を有する物理量(周波数等)と添字12を有する物理量とが第1組を示し、添字21を有する物理量と添字22を有する物理量とが第2組を示している。
【0052】
上記四つの周波数f11、f12、f21、f22を、それらと一定の関係(即ち、ω=2πfの関係)にある四つの角周波数ω11、ω12、ω21、ω22で表しても良いし、配電系統1の基本波に対する四つの次数で表しても良い。
【0053】
上記第1組および第2組の注入周波数を構成する各注入周波数は、いずれも、配電系統1の基本波周波数の1倍よりも大きい非整数倍(即ち帯小数倍)の周波数にするのが好ましい。そのようにすると、配電系統1に本来は存在しない(存在しても極めて僅かな)、基本波周波数の非整数倍の周波数を用いることになるので、注入電流による電圧を測定することが容易になる。即ち、SN比が良くなる。その結果、後述する電流注入装置40の小容量化を図ることができる。
【0054】
例えば、上記四つの周波数f11、f12、f21、f22は、それぞれ、132Hz(2.2次)、144Hz(2.4次)、156Hz(2.6次)、168Hz(2.8次)である。括弧内は、配電系統1の基本波(例えば60Hz=1次)に対する次数で表したものである。以下における実施形態では、全て、ここに例示した周波数を用いている。但しこれに限られるものではない。
【0055】
第1群に属する各分散電源保有設備20の電流注入装置40は、自設備が接続された低圧配電線16に上記第1組の周波数f11、f12の電流組を含む注入電流Iinj を注入し、同分散電源保有設備20の注入周波数電圧測定装置60は、自設備の連系点18における電圧Vd に含まれている電圧であって上記第2組の注入周波数f21、f22の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧Vinj を測定する。
【0056】
第2群に属する各分散電源保有設備20の電流注入装置40は、自設備が接続された低圧配電線16に上記第2組の周波数f21、f22の電流組を含む注入電流Iinj を注入し、同分散電源保有設備20の注入周波数電圧測定装置60は、自設備の連系点18における電圧Vd に含まれている電圧であって上記第1組の注入周波数f11、f12の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧Vinj を測定する。
【0057】
両群の各分散電源保有設備20の同期制御装置50は、自設備から注入する注入電流Iinj を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流Iinj が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備20から注入する注入電流Iinj の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる。
【0058】
従ってこの分散電源連系システムも、自設備20の注入電流Iinj が生じさせるうなりと、他群の注入電流Iinj が生じさせるうなりとを同期させることを利用して、同一の群に属する複数の分散電源保有設備20から配電系統1に注入する同一周波数の複数の注入電流をそれぞれ同期させることができる。従って同期信号ラインや外部同期信号源を用いなくて済む。
【0059】
しかも、上記のように複数の注入電流を同期させることによって、個々の分散電源保有設備20の電流注入装置40から注入する注入電流が小さくても、それらの電流が加算されるので、同一群全体として見れば、それから大きな注入電流を配電系統1に注入することができる。その結果、各分散電源保有設備20を構成する電流注入装置40の容量が小さくて済む。しかも、大きな注入電流によって、配電系統1に注入周波数の大きな電圧を発生させることが可能になるので、各注入周波数電圧測定装置60による注入周波数電圧測定の精度、信頼性等を高めることができる。この効果は、同一群に属する分散電源保有設備20の数が多くなるほど高まる。即ち、分散電源保有設備20が配電系統1に高密度連系されている場合に、より大きな効果を発揮する。
【0060】
消費電力測定器70は、配電系統1から受電(買電)している、即ち配電系統1側から分散電源保有設備20に流入する上記消費電力(有効電力)Pを測定して、その測定結果を電流注入装置40に与える。この消費電力Pは、基本的には、負荷29が消費するものである。消費電力測定器70は、例えば電力計である。
【0061】
なお、分散電源保有設備20から配電系統1側へ向かう有効電力の流れ(これは逆潮流と呼ばれる)がある連系の場合は、逆潮流に対しては上記消費電力測定器70の測定値は0となる。逆潮流の電力は、上記消費電力測定器70とは別の電力計で測定される。
【0062】
また、両群の各分散電源保有設備20の電流注入装置40は、従来の電流注入装置と違って、自設備20の消費電力測定器70が測定する消費電力Pに応じた(この実施形態では比例した)大きさの注入電流Iinj を配電系統1に注入する。
【0063】
更に両群の各分散電源保有設備20の遅相無効電力制御回路80は、自設備20の分散電源28を制御して、より具体的にはその制御回路26に遅相無効電力指令値Qcom を与えて、自設備の注入周波数電圧測定装置60が測定する注入周波数電圧Vinj に応じた(この実施形態では比例した)大きさの遅相無効電力Qを自設備の分散電源28から出力させる。
【0064】
この分散電源連系システムにおける配電系統1の電圧低下抑制作用を説明すると次のとおりである。
【0065】
前述したように、同期制御装置50による制御によって、同期信号ライン等を用いなくても、同一群内の複数の分散電源保有設備20から配電系統1に注入する同一周波数の複数の注入電流を同期させることができ、これによって、同期した注入電流の合計値に応じた(具体的には比例した)大きさの注入周波数電圧Vinj が配電系統1に発生する。
【0066】
しかも、前述したように、各分散電源保有設備20の電流注入装置40は自設備の消費電力Pに応じた大きさの注入電流Iinj を配電系統1に注入するので、配電系統1に発生する上記注入周波数電圧Vinj の大きさは、同一群内の複数の分散電源保有設備20の消費電力Pの合計値P1totalに応じた(具体的には比例した)大きさになる。これを簡単に式で表すと次式となる。K1 は係数であり、これは具体的には配電系統1のインピーダンスに比例した係数である。
【0067】
[数3]
inj =K1 ・P1total
【0068】
従って、他群の分散電源保有設備20の電流注入装置40が注入する注入周波数の電圧Vinj を自設備の注入周波数電圧測定装置60で測定することによって、他群全体の消費電力の合計値P1totalを知ることができる。これを式で表すと、上記数3を変形して次式となる。
【0069】
[数4]
1total=(1/K1 )・Vinj
【0070】
一方、自群全体と他群全体の分散電源保有設備20のおおよその台数割合は、当該分散電源連系システムの構成内容によって予め分かっている。換言すれば、両群全体の中の他群の分散電源保有設備20のおおよその台数割合R1 は予め分かっている。例えば、高密度集中連系で分散電源保有設備20の数が多い場合は、第1群と第2群とはほぼ同数設置されていると見ることができるので、上記台数割合R1 は約0.5である。
【0071】
また、第1群の分散電源保有設備20全体と第2群の分散電源保有設備20全体の消費電力の割合は、同じ時刻では、概ね上記台数割合R1 に等しいと言うことができる。これは、個々の分散電源保有設備20を見れば消費電力に差があるとしても、群全体としては消費電力が平滑化(平均化)されるからである。
【0072】
従って、上記数4に示した他群全体の消費電力の合計値P1totalを上記台数割合R1 で逆算すれば、そのときの両群全体のおおよその消費電力P2totalを知ることができる。これを式で示すと次式となる。K2 は係数である。
【0073】
[数5]
2total=(1/R1 )・P1total
=(1/K1 1 )・Vinj
=K2 ・Vinj
【0074】
上記両群全体の消費電力P2totalに応じて(例えば比例して)、第1群および第2群の全ての分散電源保有設備20の遅相無効電力制御回路80は、自設備の連系点18の電圧Vd の高低に拘わらず、自設備の分散電源28から遅相無効電力Qを平等に出力させる。これを式で表すと次式となる。K3 、K4 (=K3 ・K2 )は係数である。従ってこの係数K4 を、当該分散電源連系システムの構成に応じて予め決めておいて、それを遅相無効電力制御回路80に設定、保存すれば良い。
【0075】
[数6]
Q=K3 ・P2total
=K3 ・K2 ・Vinj
=K4 ・Vinj
【0076】
遅相無効電力Qを、上記のように両群全体の消費電力P2totalに応じた量、具体的には数6に示すように注入周波数電圧Vinj に応じた(例えば比例した)量にすることによって、遅相無効電力Qを適度なものにすることができる。遅相無効電力Qが多過ぎると、両群の各分散電源保有設備20の電流注入装置40から出力する遅相無効電力が不必要に多過ぎることになるので、不経済である。遅相無効電力Qが少な過ぎると、遅相無効電力出力による電圧低下抑制効果が小さくなる。
【0077】
但し上記説明からも分かるように、遅相無効電力Qは必ずしも厳密に定める必要はないので、上記台数割合R1 および上記両群全体の消費電力P2totalを必ずしも厳密に知る必要はなく、ひいては上記係数K4 を必ずしも厳密に定める必要はなく、ある程度の範囲に入っていれば良い。
【0078】
両群の分散電源保有設備20から上記遅相無効電力Qを配電系統1に供給することによって、配電系統1の電圧低下を、全ての分散電源保有設備20が平等に協力して全体的に抑制することができる。遅相無効電力Qの供給によって配電系統1の電圧降下ΔVを小さくして電圧低下を抑制することができることは、先に数2、図3を参照して説明したとおりである。
【0079】
上記電圧低下抑制効果の概略例を図8を参照して説明すると、配電系統1(この例では低圧配電線16)の電圧が、従来技術では二点鎖線L1 で示すように低下していたのを、この分散電源連系システムによれば、実線L2 で示す例のように、電圧を全体的に持ち上げて電圧低下を抑制することができる。
【0080】
仮に、連系点18の電圧Vd が前記下限値(例えば95V)を下回っている分散電源保有設備20だけが遅相無効電力Qを出力するようにすると、通常は図8に示す例のように配電系統1の末端に近いほど電圧低下が大きいので末端に近い分散電源保有設備20ほど大きな遅相無効電力Qを出力しなければならなくなり、当該設備20の負担が大きくなる(例えば、遅相無効電力Qは分散電源28におけるロスを増加させる)だけでなく、出力できる遅相無効電力Qには自ずと限界があるので連系点18の電圧Vd を前記下限値以上にすることができないことが起こり、大きな不平等が生じる。この発明に係る分散電源連系システムはこのような問題をも解決することができる。
【0081】
この分散電源連系システムによれば、各分散電源保有設備20内の分散電源28を活用して、上記のような作用によって、配電系統1の電圧低下を、全ての分散電源保有設備20が平等に協力して全体的に抑制することができるので、配電系統1の電圧低下抑制のために従来設けられていた機器を減らすことが可能になる。例えば、図1に示す例のように、高圧配電線10の途中に従来設けられていた自動電圧調整器12(図15参照)や、それと同様の機能を有する電圧調整器等を省くことが可能になる。
【0082】
(3)分散電源保有設備20の構成要素の具体例
以下の説明では、第1群の分散電源保有設備20の構成要素(即ち、第1組の注入周波数f11、f12の電流組I11、I12を含む注入電流Iinj を注入し、第2組の注入周波数f21、f22の電圧V21、V22を測定するもの)を例にしているが、第2群の分散電源保有設備20の構成要素も、周波数の組が反対になる以外は、以下に説明するものと同じである。
【0083】
なお、注入電流Iinj 、電圧V11、V12、V21、V22等は、時間的に変化する(即ち時間tによって変化する)物理量であるが、この出願では特に必要がない限り、時間的に変化する量であることを表す(t)や、ベクトル量であることを表す符号は省略している。
【0084】
上記電流注入装置40の構成の一例を図4に示す。この電流注入装置40は、クロック装置42、位相発生器43、44、注入信号発生器45、46、加算器47、増幅器41、掛算器48および注入電流形成器49を備えている。増幅器41および掛算器48を有している以外は、特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。
【0085】
クロック装置42は、時刻tを表す信号を発生してそれを位相発生器43、44に与える。
【0086】
位相発生器43、44は、上記時刻t、一致位相θe および同期制御装置50から与えられる位相一致時刻Te を用いて、数7に示す位相θ11、θ12をそれぞれ発生させる。両位相θ11、θ12は、図6に示す同期制御装置50にも供給される。
【0087】
位相一致時刻Te は、図6を参照して説明する自設備うなりの位相Δθinj が0度となる時刻(即ち、組を成す電流I11、I12の位相が一致する時刻)である。一致位相θe は、自設備うなりの位相Δθinj が0度となる時刻Te での組を成す電流I11、I12の位相が一致するときの位相であり、同一群内で共通の値(例えば0度)にする。ω11=2πf11、ω12=2πf12である。
【0088】
[数7]
θ11=ω11・(t−Te )+θe
θ12=ω12・(t−Te )+θe
【0089】
注入信号発生器45、46は、上記各位相を用いて、数8に示す正弦波交流信号S11、S12をそれぞれ発生させる。S11p 、S12p は、それぞれの振幅のピーク値である。
【0090】
[数8]
11=S11p・sinθ11
12=S12p・sinθ12
【0091】
加算器47は、両注入信号発生器45、46からの信号を加算して、注入信号Sinj (=S11+S12)を形成して出力する。
【0092】
増幅器41は、上記消費電力測定器70から与えられる消費電力Pに係数Kinj を掛けた信号Kinj・Pを出力し、掛算器48は増幅器41からの信号と加算器47からの注入信号Sinj とを掛けた信号Sinj・Kinj・Pを出力する。
【0093】
注入電流形成器49は、例えば増幅器であり、掛算器48から与えられる信号を増幅して、数9に示す注入電流Iinj を出力する。I11p 、I12p は、それぞれのピーク値であり、数10で表される。
【0094】
[数9]
inj =I11p・sinθ11+I12p・sinθ12
=I11+I12
【0095】
[数10]
11p =S11p・Kinj・P
12p =S12p・Kinj・P
【0096】
以上のような構成および作用によって、電流注入装置40は、自設備20の消費電力測定器70が測定する消費電力Pに応じた(この例では比例した)大きさの注入電流Iinj を出力してそれを配電系統1に注入することができる。
【0097】
係数Kinj は、上記注入電流Iinj の注入によって、他群に属する分散電源保有設備20の連系点18における電圧Vd に含まれる注入周波数電圧Vinj の含有率が所望程度(例えば0.02%程度)になる値を選定すれば良い。一例を挙げると、消費電力Pの最大値が4kWの場合に、注入電流形成器49から0.4Aの注入電流Iinj を出力するような値にすれば良い。但しこの値に限定されるものではない。
【0098】
上記注入周波数電圧測定装置60の構成の一例を図5に示す。この注入周波数電圧測定装置60は、特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。
【0099】
この注入周波数電圧測定装置60は、その出力を同期制御装置50でも用いるようにして構成の簡素化を図ると共に、ノイズの影響をより受けにくくして(即ちSN比をより高めて)測定の精度、信頼性等をより高めるために、上記第1組を成す二つの注入周波数f11、f12の電圧V11、V12の両方を測定するように構成されているが、それに限られるものではない。
【0100】
この注入周波数電圧測定装置60は、A/D変換器62、離散フーリエ変換器64、65、絶対値演算器66、67および平均値演算器68を備えている。
【0101】
A/D変換器62は、上記連系点18の電圧Vd をディジタル信号に変換して離散フーリエ変換器64、65に与える。
【0102】
離散フーリエ変換器64、65は、A/D変換器62からの信号を離散フーリエ変換して、上記注入周波数f21、f22の電圧V21、V22をそれぞれ抽出して出力する。両電圧V21、V22は、図6に示す同期制御装置50にも供給される。
【0103】
絶対値演算器66、67は、上記電圧V21、V22の絶対値|V21|、|V22|をそれぞれ演算して出力し、平均値演算器68は、次式に従って上記二つの絶対値|V21|、|V22|の平均値を演算して、それを注入周波数電圧Vinjaとして出力する。
【0104】
[数11]
inja=(|V21|+|V22|)/2
【0105】
なお、図2においては、包括的に、注入周波数電圧測定装置60から注入周波数電圧Vinj を出力するように図示しているけれども、この注入周波数電圧Vinj は、より具体的には、図5に示す例の場合は、単独運転監視装置30に供給するものが上記二つの絶対値|V21|、|V22|であり、遅相無効電力制御回路80に供給するものが平均化処理された上記注入周波数電圧Vinjaである。
【0106】
上記同期制御装置50の構成の一例を図6に示す。この同期制御装置50は、特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。
【0107】
この同期制御装置50は、位相演算器52、減算器54、56および位相一致時刻発生器58を備えている。
【0108】
位相演算器52は、注入周波数電圧測定装置60から与えられる二つの電圧V21、V22の商を取り、かつその商の偏角argを取り出して、次式で表される他群うなりの位相Δθm を演算して出力する。
【0109】
[数12]
Δθm =arg(V12/V11)=θ12−θ11
【0110】
減算器54は、電流注入装置40から与えられる二つの位相θ11、θ12の差を求めて、次式で表される自設備うなりの位相Δθinj を演算して出力する。
【0111】
[数13]
Δθinj =θ12−θ11
【0112】
減算器56は、位相演算器52から与えられる他群うなりの位相Δθm と減算器54から与えられる自設備うなりの位相Δθinj との差であるうなり位相差dθを次式に従って演算して出力する。
【0113】
[数14]
dθ=Δθm −Δθinj
【0114】
位相一致時刻発生器58は、減算器56から与えられるうなり位相差dθに基づいて次式で表される積分を行って、前述した位相一致時刻Te を演算して出力する。Kは係数である。
【0115】
[数15]
e =∫K・dθ(t)
【0116】
そしてこの同期制御装置50は、上記位相一致時刻Te を電流注入装置40(より具体的にはその位相発生器43、44)に与えることによって、組を成す位相θ11、θ12を、自設備うなりの位相Δθinj に対して同一群内で共通した一定の位相関係(即ち一致位相θe )に保ちつつ、それらの位相θ11、θ12を進めたり遅らせたりして、自設備うなりの位相Δθinj を他群うなりの位相Δθm に同期させることができる。
【0117】
上記遅相無効電力制御回路80の構成の一例を図7に示す。この遅相無効電力制御回路80は、増幅器82を備えている。
【0118】
増幅器82は、注入周波数電圧測定装置60から与えられる上記注入周波数電圧Vinjaに所定の定数Kq を掛けて、次式で表される遅相無効電力指令値Qcom を演算して出力する。これが前記数6をより具体化したものである。係数Kq は上記係数K4 に相当する。この係数Kq は、例えば1×105 であるが、これに限られるものではない。
【0119】
[数16]
com =Kq ・Vinja
【0120】
そして、この遅相無効電力指令値Qcom を分散電源28(具体的にはそのインバータ24、より具体的にはその制御回路26)に与えて、当該分散電源28から出力する遅相無効電力Qを当該指令値Qcom の値に制御する。これによって、自設備の注入周波数電圧測定装置60が測定する注入周波数電圧Vinjaに応じた(この例では比例した)大きさの遅相無効電力Qを自設備の分散電源28から出力させることができる。
【0121】
なお、上記遅相無効電力指令値Qcom によって、インバータ24から出力する遅相無効電力Qを当該指令値Qcom と実質的に同じ値に制御する技術には、例えば上記特開平7−46852号公報、特開平11−346441号公報、特開平6−54545号公報等に記載されている公知の技術を利用することができる。
【0122】
(4)電圧低下抑制のシミュレーション結果
図9に示すように、前記配電系統1の低圧配電線16に5台の分散電源保有設備20(上流側から1号〜5号)が接続されているモデルを用いて、低圧配電線16の電圧低下抑制制御のシミュレーションを行った。
【0123】
シミュレーションの条件として、高圧配電線10の電圧Vs を配電用変圧器14の2次側(低圧側)に換算した電圧を99Vとした。配電用変圧器14の容量を20kVA、そのインピーダンスを0.016+j0.021Ωとした。低圧配電線16の各区間のインピーダンスZ1 を(0.011+j0.012)/4Ωとした。
【0124】
5台の分散電源保有設備20は、全て同一群に属するものとした。各分散電源保有設備20内の負荷(図2中の負荷29に相当)は抵抗負荷(即ち力率1)とし、その最大消費電力を4kWとした。そして、図10に示すように、1号〜5号の分散電源保有設備20(これを1号機〜5号機と簡略化して呼ぶ場合がある)の消費電力P1 〜P5 を、いずれも時刻0秒から1kW/秒で増加させて、4秒後以降は4kWに固定した。
【0125】
他群の分散電源保有設備も、自群と同数あり自群と同様に消費電力を増大させるものとして、その際の他群の分散電源保有設備の注入電流による上記注入周波数電圧Vinj を模擬するために、各分散電源保有設備20が測定する連系点電圧Vd 中の注入周波数電圧Vinj を時刻0秒から0.005%/秒で増大させ、4秒以降は0.02%に固定した。%は標準電圧100Vに対する割合である。また、上記数16中の係数Kq は、上記注入周波数電圧Vinj が0.02%のときに、遅相無効電力Qが2kVarとなる係数(即ち1×105 )とした。
【0126】
そして上記のような消費電力変化の場合の各連系点18の電圧Vd1〜Vd5等を測定した。それを以下に説明する。
【0127】
比較例として、各分散電源保有設備20から遅相無効電力Qを供給しない場合(即ち従来の分散電源保有設備200と同じ場合)の各連系点18の電圧Vd1〜Vd5の変化の一例を図11に示す。1号機、2号機の連系点18の電圧Vd1、Vd2は、4秒後の時点でも前記下限値(95V)以上あるが、それよりも下流側になるほど連系点18の電圧低下が大きく、5号機の連系点18の電圧Vd5は約3.5秒の時点t1 で、4号機の連系点18の電圧Vd4は約3.6秒の時点t2 で、3号機の連系点18の電圧Vd3は約3.8秒の時点t3 で、いずれも下限値95Vを下回っている。
【0128】
実施例として、図10に示す消費電力変化の場合において、各分散電源保有設備20が上記遅相無効電力制御回路80に相当するものによって遅相無効電力Qの制御を行った場合の、1号〜5号の分散電源保有設備20から供給する無効電力Q1 〜Q5 の変化を図12に示し、各連系点18の電圧Vd1〜Vd5の変化を図13に示す。なお、図12において無効電力Q1 〜Q5 が負(進み)になっているのは、このシミュレーションでは系統側から見たものを示しているからである(図3およびその説明参照)。
【0129】
図12に示すように、1号〜5号の分散電源保有設備20は、平等に無効電力Q1 〜Q5 を出力している。これによって、全ての分散電源保有設備20が協力して、低圧配電線16の電圧低下を全体的に抑制しているのである。4秒後以降では、皆平等に2kVarの無効電力Q1 〜Q5 を出力している。
【0130】
図13に示すように、各連系点18の電圧Vd1〜Vd5の低下が抑制されており、しかも末端の5号機の連系点18の電圧Vd5でも、4秒後以降も下限値95Vよりも大きい電圧が維持されている。
【0131】
上記シミュレーションによって、実施例のように遅相無効電力Qの制御を行うことによって、低圧配電線16の電圧低下を、全ての分散電源保有設備20が協力して全体的に抑制することができることが確かめられた。
【0132】
(5)分散電源28の他の例
分散電源28は、上記例の太陽光発電設備以外のものでも良い。例えば、インバータを用いる例を挙げると、分散電源28は、燃料電池と上記インバータ24のようなインバータとを有する燃料電池発電設備等でも良い。その場合の上記遅相無効電力制御回路80による当該分散電源28(より具体的にはそのインバータ)の制御は前記と同様である。
【0133】
あるいは、交流発電機を有していてインバータを用いない例を挙げると、分散電源28は、コージェネレーション発電設備、風力発電設備等でも良い。上記遅相無効電力制御回路80からの遅相無効電力指令値Qcom に応答して、交流発電機から出力する遅相無効電力を指令値に制御する技術は、公知の技術(例えば特開平10−191569号公報、特開平8−223809号公報参照)を利用することができる。簡単に説明すれば、交流発電機の界磁を制御して出力電圧の大きさを制御することによって、遅相無効電力を制御することができる。
【0134】
(6)単独運転監視装置30の説明
上記複数の分散電源保有設備20には、自設備の注入周波数電圧測定装置60が測定する注入周波数の電圧Vinj を監視して、当該電圧の増大から、自設備の分散電源28が単独運転になったことを検出する単独運転監視装置30を備えている分散電源保有設備20が含まれていても良い。単独運転とは、変電所4の遮断器8が開放されて上位系統2からの電力供給がない状態において、分散電源保有設備20内の分散電源28だけで発電を継続して配電系統1に電力を供給している状態を言う。このような単独運転を防止する必要があることは、例えば上記非特許文献1の42−57頁にも記載されている。
【0135】
上記単独運転監視装置30の構成の一例を図14に示す。この単独運転監視装置30は、特許文献1に記載の技術とほぼ同様のものである。この単独運転監視装置30は、判定器36、37、AND回路38および継続時間判定器39を備えている。
【0136】
判定器36、37は、それぞれ、注入周波数電圧測定装置60から与えられる上記注入周波数電圧の絶対値|V21|、|V22|を所定の判定値J1 、J2 と比較して、絶対値|V21|、|V22|が判定値J1 、J2 を超えれば、検出信号S1 、S2 をそれぞれ出力する。
【0137】
両判定値J1 、J2 は、互いに同じ値にしても良いし、異なる値にしても良い。例えば、単独運転が発生していない状態、即ち連系運転時(換言すれば系統健全時)の絶対値|V21|、|V22|の2〜3倍程度にそれぞれ設定しておけば良い。
【0138】
AND回路38は、両検出信号S1 、S2 の論理積を取り、両信号S1 、S2 が共に出力されているときに検出信号S3 を出力する。
【0139】
自設備20の分散電源28が単独運転になると、自設備20の連系点18から見た配電系統1のアドミタンスが小さくなって上記注入周波数の電圧V21、V22が上昇するので、検出信号S3 が出力される。
【0140】
上記検出信号S3 を単独運転検出信号としてこの単独運転監視装置30からそのまま出力するよりも、この例のように、継続時間判定器39によって、検出信号S3 が所定の継続確認時間T0 継続していることを判定して継続したときに単独運転検出信号S4 を出力するようにするのが好ましい。そのようにすると、単独運転以外の何らかの原因による電圧Vd 等の瞬時の変動による誤検出を防止することができる。この継続確認時間T0 は、それを長くすると、その分、単独運転検出が遅くなるので、例えば0.05秒程度にすれば良い。この例ではこの単独運転検出信号S4 の出力によって、単独運転監視装置30は、最終的に、それが設けられている自設備20内の分散電源28が単独運転になったことを検出したことになる。
【0141】
単独運転監視装置30による単独運転検出後に分散電源28の解列を行うには、例えば、上記単独運転検出信号S4 によって図2に示すスイッチ22を開放すれば良い。
【0142】
なお、この例の単独運転監視装置30のように、一組の注入周波数の両方の注入周波数の電圧を測定して検出信号S1 、S2 のAND条件で検出信号S3 、単独運転検出信号S4 を出力するようにすると、単独運転検出を慎重に行って誤検出をより確実に防止することができるので好ましいけれども、いずれか一方の注入周波数の電圧のみを測定して単独運転検出を行うようにしても良い。
【0143】
分散電源保有設備20が単独運転監視装置30をも備えていることによって、配電系統1の電圧低下抑制と分散電源28の単独運転検出とに、前記電流注入装置40、注入周波数電圧測定装置60および同期制御装置50を兼用することができるので、そのぶん構成の簡素化を図ることができる。ひいては装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0144】
(7)系統連系保護装置100の説明
各分散電源保有設備20内の上記電流注入装置40、同期制御装置50、注入周波数電圧測定装置60、消費電力測定器70および遅相無効電力制御回路80に着目すれば、これらの装置40、50、60、70および80は、当該分散電源保有設備20用の、電圧低下抑制機能を有する系統連系保護装置100(図2参照)を構成している、と言うことができる。換言すれば、各分散電源保有設備20は、上記電流注入装置40、同期制御装置50、注入周波数電圧測定装置60、消費電力測定器70および遅相無効電力制御回路80を有する系統連系保護装置100をそれぞれ備えている、と言うことができる。
【0145】
この系統連系保護装置100は、上述したように、上記単独運転監視装置30を更に備えていても良い。その場合は、各系統連系保護装置100は、自設備20内の分散電源28の単独運転を検出する単独運転検出機能をも有していることになる。
【0146】
分散電源28がインバータ24を有している場合は、このインバータ24と系統連系保護装置100とを一体にして、パワーコンディショナ(略称PCS)と呼ばれる装置にしても良い。消費電力測定器70はパワーコンディショナとは別に設けても良い。
【0147】
(8)後続の分散電源保有設備用の系統連系保護装置
前述したように、上記分散電源連系システムを構築した後に、上記第1群および/または第2群を構成する分散電源保有設備20の数を変更(以下では増加に着目)しても良い。所要の分散電源保有設備20を、修理等のために別の(例えば新しい)分散電源保有設備と交換しても良い。
【0148】
このような増加、交換等のために、上記分散電源連系システムの配電系統1に接続されて、上記第1群および第2群の分散電源保有設備の内の一方の群の一員となる分散電源保有設備を後続の分散電源保有設備と呼ぶことにすると、当該後続の分散電源保有設備は、例えば、上記分散電源保有設備20と実質的に同じ構成のものにすれば良い。
【0149】
あるいは、系統連系保護装置に着目して、後続の分散電源保有設備用の系統連系保護装置を、上記分散電源保有設備20用の系統連系保護装置100(上記(7)項参照)と実質的に同じ構成にしても良い。要は、後続の分散電源保有設備用に、上記分散電源保有設備20用の系統連系保護装置100と実質的に同じ構成の系統連系保護装置を設けておけば良い。
【0150】
即ち、この後続の分散電源保有設備およびそれ用の系統連系保護装置に、図2等に示した例と同じ符号を付して説明すると、後続の分散電源保有設備20用に上述したような系統連系保護装置100を設けておけば良い。この系統連系保護装置100は、上述したように、単独運転監視装置30を備えていても良い。この分散電源保有設備20および系統連系保護装置100の具体例は、前述したとおりであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0151】
上記のようにすれば、後続の分散電源保有設備20は、先行の(即ち先行して存在する)上記分散電源連系システムの一員となって、上記分散電源保有設備20および系統連系保護装置100について説明したのと同様の作用効果を奏することができる。
【0152】
その場合、後続の分散電源保有設備20用の上記電流注入装置40に上記第1組の注入周波数f11およびf12が設定され、上記注入周波数電圧測定装置60に上記第2組の注入周波数f21およびf22が設定されている場合は、当該後続の分散電源保有設備20は第1群の分散電源保有設備の一員となる。反対に、後続の分散電源保有設備20用の上記電流注入装置40に上記第2組の注入周波数f21およびf22が設定され、上記注入周波数電圧測定装置60に上記第1組の注入周波数f11およびf12が設定されている場合は、当該後続の分散電源保有設備20は第2群の分散電源保有設備の一員となる。
【0153】
換言すれば、後続の分散電源保有設備20を上記第1群の分散電源保有設備の一員にしたければ、後続の分散電源保有設備20用の上記電流注入装置40に上記第1組の注入周波数f11およびf12を設定し、上記注入周波数電圧測定装置60に上記第2組の注入周波数f21およびf22を設定しておけば良い。反対に、後続の分散電源保有設備20を上記第2群の分散電源保有設備の一員にしたければ、後続の分散電源保有設備20用の上記電流注入装置40に上記第2組の注入周波数f21およびf22を設定し、上記注入周波数電圧測定装置60に上記第1組の注入周波数f11およびf12を設定しておけば良い。
【0154】
なお、後続の系統連系保護装置100を構成する同期制御装置50における上記一致位相θe は、先行の自群の分散電源保有設備20内の同期制御装置50における上記一致位相θe と同じ値にすれば良い。それによって後続装置用の同期制御装置50は、上述した作用によって、自設備20の電流注入装置50が注入する注入電流Iinj を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流Iinj が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備20の電流注入装置40が注入する注入電流Iinj の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
この発明は、例えば太陽光発電設備等の複数の分散電源を配電系統に接続して、分散電源連系システムを構成する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0156】
1 配電系統
16 低圧配電線
18 連系点
20 分散電源保有設備
28 分散電源
30 単独運転監視装置
40 電流注入装置
50 同期制御装置
60 注入周波数電圧測定装置
70 消費電力測定器
80 遅相無効電力制御回路
100 系統連系保護装置
d 連系点の電圧
inj 注入電流
inj 注入周波数の電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)分散電源および負荷をそれぞれ有する複数の分散電源保有設備が配電系統に接続された構成の分散電源連系システムであって、
(b)前記複数の分散電源保有設備は第1群と第2群との2群に分類されていて、
(c)うなりを生じさせる二つの注入周波数からそれぞれ成る2組の注入周波数であって、各組を成す二つの注入周波数間の周波数差は両組で互いに同じであり、かつ両組を構成する四つの注入周波数はそれぞれ異なると共に前記配電系統の基本波周波数とも異なる第1組および第2組の注入周波数を用いて、
(d)前記第1群に属する各分散電源保有設備は、前記第1組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって前記第2組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、
(e)前記第2群に属する各分散電源保有設備は、前記第2組の注入周波数の電流組を含む注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって前記第1組の注入周波数の内の少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置とをそれぞれ備えており、
(f)かつ両群の各分散電源保有設備は、自設備が属する方の群を自群、自設備が属さない方の群を他群と呼ぶと、自設備の前記電流注入装置が注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備の前記電流注入装置が注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御装置をそれぞれ備えている、分散電源連系システムにおいて、
(2)両群の各分散電源保有設備は、自設備の前記配電系統から受電している消費電力を測定する消費電力測定器をそれぞれ備えており、
(3)両群の各分散電源保有設備の前記電流注入装置は、自設備の前記消費電力測定器が測定する前記消費電力に応じた大きさの前記注入電流を前記配電系統にそれぞれ注入するものであり、
(4)更に両群の各分散電源保有設備は、自設備の分散電源を制御して、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数電圧に応じた大きさの遅相無効電力を自設備の分散電源から出力させる遅相無効電力制御回路をそれぞれ備えている、ことを特徴とする分散電源連系システム。
【請求項2】
前記複数の分散電源保有設備には、太陽電池と、当該太陽電池の出力を交流電力に変換するインバータとを有して成る分散電源を備えている分散電源保有設備が含まれており、
前記インバータを有する分散電源保有設備の前記遅相無効電力制御回路は、前記インバータを制御するものである請求項1記載の分散電源連系システム。
【請求項3】
前記複数の分散電源保有設備には、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数の電圧を監視して、当該電圧の増大から、自設備の分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転監視装置を備えている分散電源保有設備が含まれている請求項1または2記載の分散電源連系システム。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の分散電源連系システムの前記配電系統に接続されて、前記第1群および第2群の分散電源保有設備の内の一方の群の一員となる後続の分散電源保有設備のための系統連系保護装置であって、当該後続の分散電源保有設備を自設備、当該自設備が一員となる方の分散電源保有設備の群を自群、当該自設備が一員とならない方の分散電源保有設備の群を他群と呼ぶと、
(a)自設備の前記配電系統から受電している消費電力を測定する消費電力測定器と、
(b)前記第1組および第2組の内の一方の組の注入周波数の電流組を含む注入電流であって、自設備の前記消費電力測定器が測定する前記消費電力に応じた大きさの注入電流を前記配電系統に注入する電流注入装置と、
(c)自設備と前記配電系統との連系点における電圧であって、前記第1組および第2組の内の他方の組の注入周波数を構成している少なくとも一方の注入周波数の電圧を測定する注入周波数電圧測定装置と、
(d)自設備の前記電流注入装置が注入する注入電流を構成する電流組の各電流の位相を、当該注入電流が生じさせるうなりである自設備うなりの位相に対して同一群内で共通した一定の位相関係に保つと共に、当該自設備うなりを、他群に属する分散電源保有設備の前記電流注入装置が注入する注入電流の総体が生じさせる電圧のうなりである他群うなりに同期させる同期制御装置と、
(e)自設備の分散電源を制御して、自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数電圧に応じた大きさの遅相無効電力を自設備の分散電源から出力させる遅相無効電力制御回路とを備えている、ことを特徴とする系統連系保護装置。
【請求項5】
自設備の前記分散電源は、太陽電池と、当該太陽電池の出力を交流電力に変換するインバータとを有しており、
前記遅相無効電力制御回路は、前記インバータを制御するものである請求項4記載の系統連系保護装置。
【請求項6】
自設備の前記注入周波数電圧測定装置が測定する前記注入周波数の電圧を監視して、当該電圧の増大から、自設備の分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転監視装置を更に備えている請求項4または5記載の系統連系保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−36067(P2011−36067A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181425(P2009−181425)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】