説明

分析の調製および実行方法

【課題】本発明は、定量的PCR分析を調製および実行する方法、新しい密封デバイスならびに新しい用途に関する。
【解決手段】本発明により、分析されるべき試料を含む試料容器は、容器上に平面の密封デバイスを配置して、試料を覆い、次いで、分析される試料につき光屈折幾何学的形状を個々に形成するように密封デバイスを変形させるために密封デバイスに圧力を適用することにより密封される。本発明は、容器を密封し、同時に試料に関する分析改善用光学レンズを形成する簡便な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムの(定量的)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等を調製および実行する方法に関する。リアルタイムPCRにおいて、生体材料は容器中で処理され、プロセス中に光学的に分析される。また、本発明は、マイクロプレート等のための新規な密封デバイスおよび新しい用途に関係する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的PCR反応および熱サイクルDNA配列決定のごとき分析技術の実行において、多数の生物学的試料を熱的に同時に循環させる。これは、グリッド様の幾何学的形状(geometry)において複数の個々の反応溶液を提供できる複数ウェル容器を用いて典型的に行われる。かかる容器は、「マイクロプレート」または「マイクロタイタープレート」として一般的に知られている。マイクロプレートのいくつかの変形は当該技術分野においてよく知られている。
【0003】
分析物水溶液は、約35℃〜72℃の低温から通常90℃〜95℃である高温まで熱循環させる。典型的な分析において、最低および最高温度間の20〜50の熱サイクルが行なわれる。ある形態の密封デバイスがなければ、水相は、水蒸気の損失を介して容量的に急速に低下する。これは、反応成分の濃度を変更し、試験結果を無効にするか、さらに悪いことには反応を失敗させるかのいずれかである。従って、気密シールは反応空間を密封し、かつ蒸発を回避するために反応容器に提供される。密封デバイスのもう一つの機能は試料の相互汚染を防止することである。
【0004】
公知の2つの密封デバイスが、WO2002/087763および米国第5721136号に記載されている。前者の刊行物は、マイクロプレート上に配置するためのカバーを開示し、そのカバーは、プレートに配置された場合にウェルに伸びるように適合した突出部を有する。その目的は、試料分析の改善のためにウェル中の空隙を低減することである。後者の刊行物は、圧力を用いて容器と接触する、裏打ち層およびシール層を有する多層の構造に依拠する。そのシール層は、容器にシール層をより強固に付着させる粘着性添加剤を含有し得る。
【0005】
これらの技術の延長は、疾患検出およびモニタリング用の重要なツールになっている生物学的試験である。生物学的試験分野において、典型的な試験プロトコールは定量的PCRである。定量的PCRはリアルタイム検出を利用する。リアルタイム検出において、容器ウェル中の試料反応の分子は、色素をその消光剤分子から遊離するある種の生物学的プロセスが生じない限りは典型的には消光する蛍光エネルギー転移色素で典型的にタグ付けされ、かくして、色素が発光するより低い帯域幅の光の励起波長によって励起された場合に、蛍光シグナルを発するのを可能とする。これは、検出が複数の熱循環プロトコール工程が生じる期間中に生じるために、リアルタイム検出と呼ばれる。
【0006】
かくして、問題が、密封ウェル内外への透明な光路も可能として、励起光の進入および発光シグナルの進出を促す気密シールを形成するための密封デバイスを提供することに依拠することを認めることができる。また、当業者は、容器の各試料ウェルにわたる光シグナルを平行および集中する傾向があるレンズ効果が、発光されたシグナルを増強し、それによりアッセイの感度を増加させるように機能するであろうことを認めることができる。
【0007】
チューブの密封およびチューブ内外への光の通過を可能とする先行技術のいくつかの例が存在する。これらのうちの1つは、反応容器またはマイクロプレートに付着または結合し得る商業的に入手可能な光学的に透明な密封フィルムの使用である。これらの種類のフィルムは、それらが余分な労働を必要とする個別の密封工程を必要とし、その結果、シールを貧弱に形成し、かくして、効率を低下しかねないので、不利である。
【0008】
WO2005/001434は、キャップが各試料ウェルにつき不可欠な光学レンズを個々に含み、それにより、分析のシグナル強度を増強する光学的な集束効果(focusing effect)が達成される密封キャップシステムを開示する。同様の基礎的な教示の代替的な具体例として、事前に形成されたレンズは、キャップの一部分または、試料を含む実際の容器の一部分となり得る。他の先行技術と同様に、この方法は、キャップを挿入しなければならないという個別の望ましくない密封工程を必要とし、また、レンズタイプの密封キャップまたはレンズタイプの容器の余分な費用を必要とする欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
少なくともいくつかの先行技術の問題を回避すること、ならびに容器を密封し、定量的PCRが単純化された効率的な方法で行なわれることを可能にする新規な方法を提供することが本発明の目的である。
【0010】
また、新規な方法でレンズ−増強した定量的PCRを行なう方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は密封デバイスを用いるアイデアに基づき、その密封デバイスは、最初はレンズを含まないが、密封デバイスに適用された圧力および/または熱により密封段階中に各試料ウェルにつき光学レンズを個々に形成する特性を有する。
【0012】
かくして、複数ウェル容器に適用すると、定量的PCR分析を調製するための本方法は、
− 開放端および閉端を有する複数の個々の試料空間を含む容器を供し、
− 容器上に平面の密封デバイスを配置して、試料空間の開放端を覆い、
− 密封デバイスに圧力および所望により熱を適用して、各試料空間につき光屈折の、典型的には集光の幾何学的形状を個々に形成するために密封デバイスを変形させる
工程を含む
【0013】
結果的に、密封デバイスは、所望により密封デバイスに伝えられたさらなる熱の存在下で、試料容器に対してプレスされた場合に光屈折幾何学的形状を形成する能力を有する材料の少なくとも1つの光学的に透明または半透明の層を含む。かかる密封デバイスは、より詳細に後記されるように、単一材層で構成されるか、あるいは1つを他方上に付着させた2以上の層を含むこともできる。
【0014】
1つの具体例により、密封デバイスは、容器の開放端に対して配置されたシール層を含み、そのシール層は、容器の形と密接に一致し、容器に結合し、冷却後にその形を保持するように、加熱および圧力下で変形できる熱可塑性エラストマー(TPE)で調製される。
【0015】
1つの有利な具体例により、シール層はポリプロピレン系分子構造を有する。かかる熱可塑性材料において、比較的低温下で、架橋は一時的に壊れ、自由分子のいくつかが、容器のポリプロピレンと弱い化学的結合を形成するのを可能とする。冷却に際して、材料は再び架橋し、従って、密封プロセス中に獲得した形を保持する。
【0016】
定量的PCR分析を行うための対応する方法は、
− 密封段階中に試料容器に光屈折幾何学的形状を形成できる密封デバイスで生物学的試料を含む試料容器を密封し、
− 容器に含まれた試料をPCRプロトコールによる温度循環措置(regime)に付し、
− 該密封デバイスの該光屈折幾何学的形状を介して光学的に試料からの情報を得る
ことを含む。
【0017】
また、複数ウェルプレートに代えて、その方法は、単一の試料チューブのごとき個々の試料空間に含まれた試料を密封し、その試料用のレンズを調製し、試料を分析するために用いることができる。しかしながら、本発明が適用されるであろう典型的な容器は、マイクロタイタープレートまたはその変形についてのSBS基準に準拠する試料容器である。
【0018】
本発明による方法は、主として請求項1および請求項13の特徴部分に記載されたものによって特徴付けられる。密封デバイスは、請求項15の特徴部分に記載されたものにより特徴付けられる。その使用は、請求項20に特徴付けられる。
【0019】
本発明は相当な利点を提供する。第1に、「インサイツ(in-situ)」での分析の開始におけるレンズの調製は、安価でかつ頑強である。さらに、それは、単一工程においてレンズ調製およびマイクロプレートの密封を行なう簡便な方法を提供する。すなわち、材料節減を生じ、効率的な結合を達成するのをより困難にするレンズを事前に加工する必要がない。同時に、優れた気密性を持つシールが達成される。これらの両現象の、密封およびレンズ成形は、密封デバイスに用いた材料、好ましくは、少なくとも透明な熱可塑性ゴムの変形可能な性質を利用する。
【0020】
本発明によって形成されたレンズは、光学的分析デバイスおよび試料間の集束光学ビームのために改善された試料分析を提供する。
【0021】
本発明のさらなる目的およびゴールはその有利な具体例により得られる。
【0022】
発明者らは、すべての場合において、試料蒸気の濃縮を防止するプロセス中に容器に配置されるサーモサイクラー装置の加熱プレートでさえシールの結合およびレンズ調製を同時に行なうことができることを見出した。結果的に、試料の汚染の危険性は低減され、機器費用は減少し、アッセイの調製に必要な時間はかなり短縮される。
【0023】
依然として、本種類のシールを除去可能に結合し、接着剤フィルムを用いる利点を提供できるか、またはシールを「ニードルおよび隔壁」の概念を用いて、試料への一貫したアクセスを可能にする特性を有する材料で調製できる。
【0024】
特に有利な具体例において、レンズ調製および密封は、熱サイクラーの加熱した蓋によって行なわれ、実際のPCRプロセス、好ましくは、リアルタイム分析を行なうために用いることもできる。その場合において、好ましくは、加熱した蓋は、その蓋を介して試料の光学的分析を可能にする光学的手段を含む。
【0025】
好ましい具体例により、容器の上部デッキ幾何学的形状の形を、形成されたレンズの形を規定するために用いた。すなわち、密封パッドがデッキに対してプレスされるので、レンズ部分は容器のウェル内部にわずかに突き出す。あるいは、拘束手段は、他の形のレンズを形成するために密封デバイスに統合し得る。
【0026】
透明または半透明の材料によって、発明者らは定量的PCRに光学的に適する材料、すなわち、用いた少なくとも1つの波長についてのかなりの透過係数および十分な光学的な均一性を有する材料を意味する(すなわち、レンズ効果は内部散乱効果等を支配する)。換言すれば、材料は、かかる分析が行なわれることを可能にするための少なくとも1つの光学的なバンドにつき十分に透明でなければならない。言及するまでもなく、発明者らは、定量的PCRについてのシールの満足な光学的な質が、本方法によって、特に、透明な熱可塑性ゴムを用いて達成できることを見出した。
【0027】
変形可能な材料によって、発明者らは、本明細書に開示されたように用いた場合、光屈折形状を形成するように形において変形する特性を有する材料を意味する。堅固に結合したシールを形成するのに好ましい80℃およびそれを超える高温で行なわれた変形は、天然において典型的には持続性である。最も有利には、120℃未満、好ましくは85℃〜110℃の範囲内の温度でポリプロピレンと熱作動結合を形成できる材料を、密封およびレンズ調製が、熱サイクラー中で実行されるのを可能とするために用いる。熱可塑性ゴム(またはエラストマー、TPE)はこの点で好ましいが、熱硬化性材料も用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の具体例および利点は、添付図面を参照してより詳しく記載され、ここに、
図1aは、不等角投影図における1層の密封デバイスを示し、
図1bは、不等角投影図における2層の密封デバイスを示し、
図2は、模式的側面図における熱サイクラー中の同時のマイクロプレートの密封およびレンズ成形の具体例を示し、
図3aは、マイクロプレート上に形成されたシールおよびレンズ構造の具体例(レンズ効果を誇張)を示し、
図3bは、マイクロプレート上に形成されたシールおよびレンズ構造のもう一つの具体例(レンズ効果を誇張)を示し、および
図4は、詳細図におけるマイクロプレート上のレンズ構造を示す。
【0029】
この記載は、熱循環容器のごとき生物学的試薬を含むために用いたマイクロプレートおよび種々の他の容器の密閉、ならびに熱循環容器からの蒸気の相互汚染および漏れを防止するために使用された密封システムに関する。特に、記載された具体例は、密封能力を有する密封デバイスに指向され、各試料ウェルにて光集束幾何学的形状をその使用中に形成できる。
【0030】
特に、発明者らは、0.5mm〜3.00mmの厚みに及ぶ透明な熱可塑性ゴムパッドを利用する反応容器を密封する新規な方法をここに教示し、熱可塑性パッドは、熱循環器具加熱蓋プラテン(platen)の加熱および温度の存在下で、器具の圧力および温度下の密封チューブの内径によって規定された領域において一様に変形し、かかる変形は、各ウェル上の平行/集中幾何学的形状を形成するように機能する。熱可塑性ゴムは、ショーア00スケールでの3からショーアAスケールでの35の剛性の範囲に有り得る。有利な幾何学的形状の変更を形成するための適当な変形は、(顕微鏡ガラスサイズのマイクロプレートにつき)材料の硬度に依存して5〜100ニュートンの力の下で生じるであろう。
【0031】
定量的PCR分析を調製するための同時の密封およびレンズ成形は、
− 少なくとも1つの試料空間を含む容器を供し、
− 容器上に平面の密封デバイスを配置して、少なくとも1つの試料空間を覆い、次いで
− 少なくとも1つの試料空間につき光屈折幾何学的形状を個々に形成するように、密封デバイスを変形させるために圧力を密封デバイスに適用することを含む。
【0032】
かくして、レンズ成形は、サーモサイクラー装置の加熱した頂部プラテンによって供された80℃およびそれを超える、特に、85℃〜110℃の高温においても行なわれる。
【0033】
形成された光屈折幾何学的形状は、容器の上部表面の試料空間開口部の末端により少なくとも部分的に典型的に規定される。しかしながら、形成もされたそれらは、少なくとも部分的に密封デバイスに含まれた、拘束手段によって、および/または容器に対して密封デバイスをプレスするために用いた手段の表面幾何学的形状によって少なくとも部分的に規定される。
【0034】
定量的PCR分析の実行は、
− 各試料につき光屈折幾何学的形状を個々に形成できる密封デバイスで生物学的試料を含む試料容器を密封し、ここに、密封デバイスは、該光屈折幾何学的形状を形成するための密封段階において容器に対してプレスされ、
− 容器に含まれた試料をPCRプロトコールによる温度循環措置に付し、次いで、
− 該密封デバイスを介して光学的に試料からの情報を得る
ことにより行うことができる。
【0035】
図1aを参照すると、最も単純な具体例において、密封パッド10aは、単一(典型的には均一)の熱可塑性ゴムの層12aよりなることができる。
【0036】
図1bを参照すると、もう一つの具体例において、密封器具の加熱したプラテンの熱に対する曝露に耐え、プラテンおよびパッド10b間のインターフェース層として作用するであろうポリカーボネートフィルムのごとき透明な材料または同様の材料の支持層14bをゴム層12a上に設けることもできる。
【0037】
図2は、サーモサイクラー装置の加熱したプラテン28およびマイクロプレート25の間に位置した密封デバイス20を示す。プラテンは、シャフト29または他の適当な移動手段の援助によって垂直に移動可能である。容器は、デッキ部分26および、その開放端が密封デバイス20に直面するようになる複数のウェル部分27を含む。
【0038】
依然としてもう一つの具体例において、ポリエステル層のごときコンプライアント(compliant)フィルム層をパッドの両側で有することもでき、そのフィルム層は、インターフェース層として作用し、ならびに変形拘束として作用する方法によりパッドの全体の可能な変形を規定する。
【0039】
1つの具体例により、配置において試料容器ウェルの整列に対応する穴の整列がある材料の下方のフィルムまたは層が提供される。フィルムまたは層の穴は、歪んだレンズの位置を規定するように機能し、レンズの整列内の個々のレンズの幾何学的形状の形成に大きな均一性を与える目的を供給できる。
【0040】
前記または組み合わせたまたは変形した具体例を用いると、ほとんどいずれのタイプのレンズも本方法によって形成できる。この文脈において最も有用なレンズは、図3aおよび3bに示された平凸および両凸レンズを特に含めた集光レンズである。図3aは、平面のプラテン38を用いて形成された平凸レンズを示す。図3bは、上方へもパッド材料の突起を可能にする適当な凹部を含むプラテン38によって形成された両凸レンズを示す。
【0041】
図4は、レンズ形成の寸法的により現実的であるが、依然として模式図を示す。図中に示されたように、通常、レンズ41は相互に間隔を空け、その結果、ウェルの内部壁45aがデッキ46で実際に合わないが、わずかに分離される。試料49に集中するように形成されたレンズにより屈折した探査ビームは、参照数字48で示される。
【0042】
シール層についての適当な材料の例は、限定されるものではないが、熱可塑性ゴム(またはエラストマー、TPE)として知られている化合物のファミリー、特に、最も有利にはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を含むブロック共重合体TPEを含む。言及されたように、必要な性能特性を所有する代替材料から調製されたシール層は、本発明の範囲内で同様に用いることができる。シール層、例えば、ポリエチレンフィルムから容易に除去できる除去可能な剥離ライナーは、シール層に最初に付着し得る。
【0043】
すなわち、好ましい具体例により、熱可塑性エラストマーの可逆的架橋分子構造がシールおよびレンズ成形に利用される。シリコーンゴムおよび押出し中に共有結合で架橋した他の熱硬化性の材料のごとき従来のゴムとは対照的に、これは、容器へのシールの同時に有効な一致および結合の利点を提供する。可逆的な架橋は、それらを一緒に結合するポリマー鎖間の非共有または二次的相互作用を用いる。これらの相互作用は、水素結合およびイオン結合を含む。架橋を形成するために非共有相互作用を用いると、材料の加熱の結果、エラストマーの架橋およびフローが壊れ、同様の分子構造の対材料との弱い化学的結合の形成さえ壊れる。これは、材料が処理されるのを可能とし、本願で最も重要なことには、種々の対合幾何学的形状に流動および適合し、ならびに循環容器に結合するのを可能とする。材料が再び冷却される場合、架橋は材料中で再形成され、シールがその新しい形を保持することを可能にする。
【0044】
熱可塑性成型および押出しプロセスを、それらが架橋工程を回避し、非常に速いサイクル期間を達成できるために熱可塑性エラストマーに用いた。例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体シールパッドは、熱循環器具の加熱したプラテンの熱および圧力下、20秒未満で再形成、結合および密封できる。
【0045】
2つの分子アプローチを用いて、TPE、アイオノマーおよびブロック共重合体を処方し、ブロック共重合体アプローチは、それらの低温一致性および良好な結合特性によりこの文脈においてより有利である。ブロック共重合体は、コモノマーがポリマー骨格鎖の長いセクションに分離された共重合体である。ブロックと呼ばれるこれらの各セクションはいわばホモポリマーのようなものである。ブロック共重合体である非常に共通した熱可塑性エラストマーは、SBSゴムである。SBSが短鎖のポリスチレンに続いて、長鎖のポリブタジエンに続いて、もう一つの短鎖のポリスチレンから構成されるために、SBSはスチレン−ブタジエン−スチレンを表わす。
【0046】
また、1種だけのモノマーから調製されたブロック共重合体を用いて、適当な熱可塑性エラストマーを調製することが可能である。例えば、異なる立体規則性のブロックを有するポリプロピレンを調製できる。メタロセン触媒重合として知られるプロセスによって生成されたかかるポリプロピレンは、アタクチックブロックおよびアイソタクチックブロックを所有するであろう。これらのブロックは、それらがSBSゴム中で行うと同時に加熱された場合、分離する。アイソタクチックブロックが結晶を形成するが、アタクチックブロックは非晶質であるために、それらは分離する。従って、SBSゴムが作用するのと同じ理由のためにそれはエラストマーとして挙動する。同じ理由のために、ポリプロピレンブロックが分離し、従って、自由であるが多少反応性であるという事実は、材料が対となるポリプロピレン表面と弱い化学的結合を形成することを可能にする。
【0047】
本発明による密封デバイスの平面形状は、典型的には、確立したマイクロプレート基準(SBS基準)に準拠するか、またはそのフラクションであるマイクロプレートのフットプリントに対応する。特に、デバイスは、3.5mmまたはそれ未満、特に、2.25mmまたはそれ未満のウェル間ピッチを有する約25mm×76mmの顕微鏡ガラスサイズのプレートによく適することが判明した。かかるプレートは、特許出願PCT/FI2006/050379に開示されている。
【0048】
当業者は、前記の詳細な記載およびその図は、例示目的だけのものであり、記載された具体例に対する変形は容易に構築されることを認める。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】図1aは、不等角投影図における1層の密封デバイスを示す。
【図1b】図1bは、不等角投影図における2層の密封デバイスを示す。
【図2】図2は、模式的側面図における熱サイクラー中の同時のマイクロプレートの密封およびレンズ成形の具体例を示す。
【図3a】図3aは、マイクロプレート上に形成されたシールおよびレンズ構造の具体例(レンズ効果を誇張)を示す。
【図3b】図3bは、マイクロプレート上に形成されたシールおよびレンズ構造のもう一つの具体例(レンズ効果を誇張)を示す。
【図4】図4は、詳細図におけるマイクロプレート上のレンズ構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1つの試料空間を含む容器を供し、
− 容器上に平面の密封デバイスを配置して、少なくとも1つの試料空間を覆うことを含む定量的PCR分析を調製する方法であって、
− 圧力が、密封デバイスを変形させるために密封デバイスに適用されて、少なくとも1つの試料空間につき光屈折幾何学的形状を個々に形成することを特徴とする該方法。
【請求項2】
密封デバイスが、容器に対してプレスされた場合に光屈折幾何学的形状を形成する能力を有する材料の少なくとも1つの光学的に透明または半透明の層を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
圧力に加えて、好ましくは80℃またはそれを超える、または特に85℃〜110℃の高温で密封デバイスの変形を行なうために、熱が、密封デバイスに適用されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
サーモサイクラー装置の加熱した頂部プラテンが、密封デバイスに圧力および熱を適用するために用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1記載の方法。
【請求項5】
形成された光屈折幾何学的形状が、容器の上部表面で開いている試料空間の端により少なくとも部分的に規定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1記載の方法。
【請求項6】
形成された光屈折幾何学的形状が、密封デバイスに含まれた拘束手段によって少なくとも部分的に規定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の方法。
【請求項7】
形成された光屈折幾何学的形状が、容器に対して密封デバイスをプレスするために用いた手段の表面幾何学的形状によって少なくとも部分的に規定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1記載の方法。
【請求項8】
複数の試料空間を含むマイクロプレートが用いられ、それにより、光屈折幾何学的形状が、該圧力によって各試料空間につき個々に形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1記載の方法。
【請求項9】
容器への密封デバイスの結合が同時に行なわれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1記載の方法。
【請求項10】
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体の層を好ましくは含む光学的に透明な熱可塑性エラストマー、特に、ブロック共重合体熱可塑性エラストマーの層を含む密封デバイスが用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1記載の方法。
【請求項11】
熱可塑性ゴムの光学的に透明なシール層、およびそのシール層を支持する光学的に透明な裏打ち層を含む密封デバイスが用いられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1記載の方法。
【請求項12】
密封デバイスが、試料空間に集光レンズ構造を形成することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1記載の方法。
【請求項13】
− 生物学的試料を含む試料容器を密封デバイスで密封し、
− 容器に含まれた試料をPCRプロトコールによる温度循環措置に付し、
− 該密封デバイスを介して試料からの光学的に情報を得る
ことを含む定量的PCR分析を行なう方法であって、
各々の該試料につき光屈折幾何学的形状を個々に形成できる密封デバイスを用い、密封デバイスが、該光屈折幾何学的形状を形成する密封段階において容器に対してプレスされることを特徴とする該方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかの方法によって密封が行なわれることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
光学的に透明または半透明の材料の少なくとも1つの層を含む、定量的PCR分析用の試料容器を密封するための密封デバイスであって、
材料の該層が、容器に対してプレスされた場合に光屈折幾何学的形状を形成する能力を有することを特徴とする該密封デバイス。
【請求項16】
材料の該層を適合させて、圧力下、および好ましくは80℃またはそれを超える、特に85℃〜110℃の高温で該光屈折幾何学的形状を形成する請求項15記載の密封デバイス。
【請求項17】
該高温にてポリプロピレン製容器と化学結合を形成できる請求項16記載の密封デバイス。
【請求項18】
材料の該層が、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を好ましくは含む熱可塑性エラストマー、特に、ブロック共重合体熱可塑性エラストマーから形成される請求項15〜17のいずれか1記載の密封デバイス。
【請求項19】
材料の該層が、ポリプロピレン系分子構造を有する請求項15〜18のいずれか1記載の密封デバイス。
【請求項20】
密封手段で試料容器の試料空間を密封し、同時に該試料空間につき密封手段から光学レンズを個々に形成するための熱循環装置の加熱した頂部プラテンの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−249708(P2008−249708A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−75207(P2008−75207)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(507286172)
【氏名又は名称原語表記】Bioinnovations Oy
【Fターム(参考)】