説明

分析装置の保護回路

【課題】定電流駆動される負荷のケーブルのアースへの短絡などローサイドによる検出では保護できない負荷の異常が発生しても、確実に定電流ICの内部回路や負荷そのものの保護を可能とする。
【解決手段】 定電流IC2の電源のハイサイドには過電流検出回路1が組み込まれている。停止動作回路として機能する制御部4は、通常はCPU5の制御信号をそのまま定電流IC2へ入力し、バルブまたはモータなどで構成される負荷3を定電流制御するが、過電流が検出された場合は、定電流IC2を強制停止させ内部回路をシャットダウンしトランジスタまたは負荷3の破損を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バルブまたはモータなどの負荷を備えた分析装置に関し、負荷および駆動回路の破損を防止する保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフあるいは液体クロマトグラフなどの分析装置では、気体や液体の制御にバルブなどを使い、ICP発光分光分析装置や分光光度計などの分析装置では、波長の選択にモータなどを使用している。また、これらのバルブやモータを駆動する集積回路が各種製造され、使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図2は、Hブリッジ方式で負荷を双方向で定電流駆動する一例を示す図である。図2において、20は定電流ICで、Hブリッジ方式で負荷22を定電流駆動する集積回路である。負荷22はバルブまたはモータなどで構成される。電源のローサイド(0V側)に接続された検出抵抗Rで電流を検出し、それをフィードバックさせながらトランジスタQ1、Q4をオンにし、トランジスタQ2、Q3をオフにすると、負荷22のB端子からA端子に定電流が流れる。電流の方向を切替えてA端子からB端子に定電流を流す場合は、トランジスタQ2、Q3をオンにし、トランジスタQ1、Q4をオフにする。制御回路21は前記フィードバックの回路と前記トランジスタQ1〜Q4のオン、オフを制御する回路などで構成される。
【0004】
図3は、FETで負荷を単方向で定電流駆動する一例を示す図である。負荷32はバルブまたはモータなどで構成される。電源のローサイド(0V側)に接続された検出抵抗Rで電流を検出し、それをフィードバックさせながらFET(Q)をオンにすると、負荷32のB端子からA端子に定電流が流れる。制御回路31は前記フィードバックの回路と前記FET(Q)のオン、オフを制御する回路などで構成される。
【0005】
従来、定電流駆動の集積回路の過電流検出と回路の保護は、次の方法による。すなわち、図2および図3において、電源のローサイドに接続された検出抵抗Rによる電流検出機能を使用して、過電流を検出し、この検出信号により内部回路のシャットダウンなどをし、またエラー信号を発信する。
【特許文献1】特開平11−103524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2において、負荷22のB端子が、その配線が装置の金属筐体に挟み込まれるなどの不具合によりアースに短絡した場合、トランジスタQ1がオンすると24Vと0Vの間がトランジスタQ1で短絡し、トランジスタQ1は焼損する。また、負荷22のA端子が、アースに短絡した場合、トランジスタQ1がオンすると、トランジスタQ1が焼損すると共に、大電流が流れるため負荷22そのものが損傷する。
また、負荷22のA端子とB端子が、その配線被覆が破損して芯線どうしが接触するなどの不具合により短絡した場合、トランジスタQ1、Q4あるいはトランジスタQ2、Q3がオンするとき、負荷22が短絡状態のためトランジスタQ1〜Q4に設計値以上の過電流が流れる。実際のテストによると、アースとの短絡と相違して直ちにトランジスタQ1〜Q4は焼損しないが、発熱して最後には焼損した。
【0007】
図2において、電源のハイサイド(24V側)にヒューズまたはポリスイッチ(正の温度係数を持つサーミスタで構成される過電流保護素子)などの過電流保護素子を挿入した場合、上記のような負荷のケーブルのアースへの短絡などの異常が発生すると、前記過電流保護素子の温度上昇に時間がかかり保護機能が生起する前に、トランジスタなどが破損する。
【0008】
図3において、負荷32のA端子をアースに短絡させると、FET(Q)は破損しないが、負荷32が損傷する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、制御回路との間で制御データの授受を行って駆動される負荷を定電流制御する回路および負荷そのものを破損から保護する機能を備えた分析装置の保護回路において、電源ハイサイド側に組み込まれた過電流検出回路と、この過電流検出に伴って過電流を停止させる停止動作回路を備える。負荷とは、例えば流体の流量を制御するためのバルブや、光学系を作動させるためのモータなどである。
【発明の効果】
【0010】
電源のハイサイドで高速に過電流を検出することにより、負荷のケーブルのアースへの短絡などローサイドによる検出では保護できない負荷の異常が発生しても、確実に内部回路や負荷そのものの保護が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
過電流検出回路の動作時間と、過電流検出に伴い動作する回路の動作時間を合わせた時間は、異常が発生してから負荷または駆動回路が破損に至るまでの時間より十分短い。
【0012】
過電流検出回路で検出された過電流検出信号が分析装置の表示部に送信され、定電流制御する駆動回路で過電流が生起したことが表示される。この表示は分析者がリセットするまで消去されない。
【実施例】
【0013】
以下本発明の実施例を説明する。図1は本発明の保護回路の構成を示す図である。図1において、1は過電流検出回路であり、過電流を検出した場合その出力信号をLowレベルにする。コンデンサCを充電する時間は放電する時間に比べて極端に短くなるように抵抗R1、R2、R3の値が決められる。2は定電流ICで、Hブリッジ方式で負荷3を定電流駆動する集積回路であり、その内部構成は図2の定電流IC20に示すものである。
【0014】
定電流IC2の電源のハイサイドには過電流検出回路1が組み込まれている。負荷3はバルブまたはモータなどで構成される。4は制御部であり、停止動作回路として機能する。制御部4は、通常はCPU5の制御信号をそのまま定電流IC2へ入力し、負荷3を定電流制御するが、過電流が検出された場合は、定電流IC2を強制停止させ内部回路をシャットダウンしトランジスタまたは負荷3の破損を防止する。
【0015】
本発明は以上の構成であるから、本発明の保護回路は次のように動作する。
(1)正常時は、電流Iは例えば100mA程度であり、検出用Tr(トランジスタ)のVbe(ベース−エミッタ間電圧)は−0.13V(=1.3Ω×100mA)程度で検出用Trはオフのままであり、過電流検出回路1の出力信号はHighレベルである。この場合は、強制停止状態ではなく、制御部4はCPU5の制御信号をそのまま定電流IC2へ入力し、負荷3が定電流制御される。
【0016】
(2)負荷3のB端子(図2の負荷22のB端子参照)がアースに短絡して、例えば、電流Iが462mA以上の過電流になると、検出用TrのVbeは−0.6V以下となり検出用Trはオンし、コンデンサCを充電すると同時に過電流検出回路1の出力信号はLowレベルとなる。この場合は、強制停止状態であり、制御部4はCPU5の制御信号を無視し、定電流IC2を強制停止させ内部回路をシャットダウンしトランジスタおよび負荷3の破損を防止する。実際の試験では、内部回路のシャットダウンまでに要した時間は30μ秒程度である。
【0017】
(3)定電流IC2が強制停止させられ、内部回路をシャットダウンさせられると、電流Iが減少し、検出用TrのVbeが0V程度となり、検出用Trはオフとなるが、コンデンサCに充電された残存電荷によりインバータHC04の入力電圧はHighレベルを維持する。該入力電圧が、放電によりHigh入力閾値を下回るまで、過電流検出回路1の出力信号はLowレベルを保ち、強制停止状態を継続する。
【0018】
(4)該入力電圧が、放電によりHigh入力閾値を下回ると、過電流検出回路1の出力信号はHighレベルとなり、定電流IC2は強制停止状態を解除され、CPU5からの制御信号により負荷3を定電流制御する。
【0019】
(5)定電流制御が開始されたとき、負荷3のB端子がアースに短絡しているなどの過電流を生起する原因が修復されていない場合は、(2)に戻る。原因が修復されない間は(2)から(5)を繰り返す。しかし、(3)は(2)+(4)+(5)に比べて動作時間が極端に長いためトランジスタあるいは負荷3の破損は生じない。
【0020】
図1に示す実施例においては、過電流を検出した場合、定電流IC2を強制停止させ内部回路をシャットダウンしトランジスタあるいは負荷3の破損を防止しているが、リレーなどでハイサイド電源を直接遮断することも本発明は適用可能であり保護回路は図示例に限定されない。
【0021】
また、過電流検出回路1は検出用Trなどにより回路が構成されているが、市販のハイサイド過電流検出用集積回路で置き換えることもできる。
実施例では、過電流の原因が修復されなくても強制停止の状態は間歇的に解除されるが、ラッチ回路を備え、過電流検出信号を該ラッチ回路に入力し強制停止の状態を保持させる。保持された強制停止の状態は、電源の再投入時か分析者のリセット操作により解除される。
図1では、検出用Trのエミッタ−ベース間に挿入される抵抗は1.3Ωであるが、これは一例であり、例えば600mAのときの電流を過電流として検出する場合は、1.0Ωである。
【0022】
実施例では、定電流IC2は、Hブリッジ方式で定電流駆動する集積回路(図2参照)であるが、これは一例であり、FETで負荷を単方向で定電流駆動する駆動回路(図3参照)で置き換えることもできる。このように保護回路は種々の構成とすることができ、本発明はこれら変形例を包含する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
バルブまたはモータなどの負荷を備えた分析装置に関し、負荷および駆動回路の破損を防止する保護回路に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の保護回路の構成を示す図である。
【図2】Hブリッジ方式で負荷を双方向で定電流駆動する一例を示す図である。
【図3】FETで負荷を単方向で定電流駆動する一例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 過電流検出回路
2 定電流IC
3 負荷
4 制御部
5 CPU
20 定電流IC
21 制御回路
22 負荷
31 制御回路
32 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路との間で制御データの授受を行って駆動される負荷を定電流制御する回路および負荷そのものを破損から保護する機能を備えた分析装置の保護回路において、電源ハイサイド側に組み込まれた過電流検出回路と、この過電流検出に伴って過電流を停止させる停止動作回路を備えたことを特徴とする分析装置の保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−336688(P2007−336688A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165406(P2006−165406)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】