説明

分析装置

【課題】分析装置において使用される液体の蒸発を確実かつ効率的に抑制することができる分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる分析装置1は、検体容器内11aに収容された検体と試薬とを反応容器9内に分注し検体と試薬との反応液を用いて検体を分析する分析装置であって、空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体であるHeガスが充填された状態で当該分析装置1において使用する検体を収容する検体収容部20を備え、分析装置1において使用される検体の蒸発を確実かつ効率的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体容器内に収容された検体と試薬とを反応容器内に分注し前記検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、検体および1種類以上の試薬を反応容器に分注し、検体と試薬との化学変化を生じさせた後、この検体と試薬との反応液の吸光度を測定して自動的に検体を分析する分析装置が知られている。
【0003】
検体、試薬、検体と試薬との反応液は、大気中にさらされた場合、大気中の酸素による酸化、二酸化炭素の溶解によるpH変化などが発生する。このため、従来においては、たとえば試薬収納庫に二酸化炭素除去したガスを充填させて試薬の劣化を低減した分析装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3255001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の分析装置においては、二酸化炭素による液体の劣化は低減できるものの検体、試薬および反応液などの液体の蒸発を防止することができなかった。この結果、従来の分析装置においては、液体における溶媒が蒸発するため、液体の濃縮が生じてしまい、この液体を用いることによって分析処理の精度劣化を招いてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、分析装置において使用される液体の蒸発を確実かつ効率的に抑制することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、検体容器内に収容された検体と試薬とを反応容器内に分注し前記検体を分析する分析装置において、空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体が充填された状態で当該分析装置において使用する使用液体を収容する収容機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記収容機構は、二つ以上の容器間で前記高蒸気圧気体を移動させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記収容機構は、前記高蒸気圧気体が充填された状態で前記使用液体を収容した液体容器を一つ以上収容可能である第1の容器と、前記第1の容器と接続して前記第1の容器との間で前記高蒸気圧気体を送受可能であるとともに前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに前記高蒸気圧気体を保持する第2の容器と、を備え、前記第1の容器が前記液体容器を収容するときに前記第2の容器が保持する前記高蒸気圧気体を前記第1の容器に送出する第1の送出処理と、前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに前記第1の容器内に充填された前記高蒸気圧気体を前記第2の容器に送出する第2の送出処理とを繰り返し、前記高蒸気圧気体を繰り返し利用することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記収容機構は、前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第1の容器と前記第2の容器との間で前記高蒸気圧気体を移動することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記第1の容器および前記第2の容器の容積は可変であり、前記収容機構は、前記高蒸気圧気体を一方の容器に送出する容器の容積を徐々に小さくしながら前記第1の容器と前記第2の容器との間で前記高蒸気圧気体を移動することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、前記第1の容器は、前記第1の容器を構成する側壁の一つが可動壁であり、該可動壁の移動によって容積が変化し、前記第2の容器は、前記第2の容器を構成する側壁の一つが可動壁であり、該可動壁の移動によって容積が変化することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる分析装置は、前記収容機構内への前記高蒸気圧気体の充填処理を制御する制御機構をさらに備え、前記収容機構は、前記第1の容器内の空気を吸い出す第1の真空ポンプと、前記第2の容器内の空気を吸い出す第2の真空ポンプと、を備え、前記制御機構は、前記第1の容器が前記液体容器を収容する前に、前記第1の真空ポンプに前記第1の容器内の空気を吸い出させた後に前記第1の容器と前記第2の容器とを接続して前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第2の容器が保持する前記高蒸気圧気体を前記第1の容器に送出させ、前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに、前記第2の真空ポンプに前記第2の容器内の空気を吸い出させた後に前記第1の容器と前記第2の容器とを接続して前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第1の容器に充填された前記高蒸気圧気体を前記第2の容器に送出させることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる分析装置は、前記第1の容器に設けられた出入口を介して前記液体容器を前記第1の容器内に移送する移送機構をさらに備え、前記第1の容器は、前記液体容器が前記移送機構によって前記第1の容器内に移送されるときにだけ開くシャッターを前記出入口に有することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分析装置は、前記移送機構は、前記第1の容器内に前記液体容器を該液体容器幅と前記シャッター幅とを合わせた幅分移送した時に前記液体容器の移送を一時停止し、前記シャッターは、前記移送機構による前記液体容器の一時移送停止時に閉まることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる分析装置は、前記シャッターは、前記出入口通過時の前記液体容器側に位置する端部が前記液体容器形状に沿う形状であることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる分析装置は、前記シャッターは、前記出入口通過時の前記液体容器側に位置する端部が緩衝性材料で形成されることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる分析装置は、前記第1の容器は、空気を吸着する空気吸着剤を内部に備えたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる分析装置は、前記高蒸気圧気体は、不活性ガスであることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる分析装置は、前記高蒸気圧気体は、Heであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体が充填された状態で当該分析装置において使用する使用液体を収容する収容機構を備えるため、該収容機構内に液体を収容することによって、分析装置において使用される液体の蒸発を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、血液や尿などの検体に対して分析を行なう分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0023】
図1は、本実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器9にそれぞれ分注し、反応容器9内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。図1においては、測定機構2の平面図を模式的に表す。また、図2は、測定機構2内部の要部を模式的に示した図であり、測定機構2内部を正面から見た図である。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体に対する生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を順次自動的に行う。
【0024】
まず、測定機構2について説明する。図1に示すように、測定機構2は、大別して反応テーブル10、検体移送部11、検体分注機構12、第1試薬庫13、第1試薬分注機構14、第2試薬庫15、第2試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18、洗浄部19および検体収容部20を備える。
【0025】
反応テーブル10は、反応容器9への検体や試薬の分注、反応容器9の攪拌、洗浄または測光を行うために反応容器9を所定の位置まで移送する。この反応テーブル10は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル10の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル10の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0026】
検体移送部11は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、たとえば図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置P1に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル10上に配列して搬送される反応容器9に分注される。また、検体移送部11内には、緊急に分析指示された検体である緊急検体を保冷する緊急検体用保冷庫11cが設けられている。
【0027】
検体分注機構12は、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム12aを備える。アーム12aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中反時計回りに旋回させ、反応テーブル10上の検体吐出位置に搬送された反応容器9に、分析対象である検体を吐出して分注を行う。
【0028】
第1試薬庫13は、反応容器9内に分注される2種類の試薬のうち、最初に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器13aを複数収納できる。第1試薬庫13には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には第1試薬容器13aが着脱自在に収納される。第1試薬庫13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫13の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第1試薬容器13aを第1試薬分注機構14による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫13の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、第1試薬庫13の下方には、恒温槽が設けられている。このため、第1試薬庫13内に第1試薬容器13aが収納され、蓋が閉じられたときに、第1試薬容器13a内に収容された試薬を恒温状態に保ち、第1試薬容器13a内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0029】
第1試薬容器13aの側面部には、第1試薬容器13aに収容された試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。記録媒体は、符号化された各種の情報を表示しており、光学的に読み取られる。
【0030】
第1試薬庫13の外周部には、この記録媒体を光学的に読み取る第1試薬読取部13bが設けられている。第1試薬読取部13bは、記録媒体に対して赤外光または可視光を発し、記録媒体からの反射光を処理することによって、記録媒体の情報を読み取る。また、第1試薬読取部13bは、記録媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記録媒体の情報を取得してもよい。
【0031】
第1試薬分注機構14は、第1試薬の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム14aを備える。アーム14aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。第1試薬分注機構14は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。第1試薬分注機構14は、第1試薬庫13上の所定位置に移動された第1試薬容器13a内の試薬をプローブによって吸引し、アーム14aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器9に、分析対象である検体に指示された分析項目に対応する第1試薬を吐出して分注を行う。
【0032】
第2試薬庫15は、反応容器9内に分注される2種類の試薬のうち検体が分注された後に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器15aを複数収納できる。第2試薬庫15には、第1試薬庫13と同様に、第2試薬容器15aが着脱自在に収納される複数の収納室が設けられている。第2試薬庫15は、第1試薬庫13と同様に、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第2試薬容器15aを第2試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫13と同様に、第2試薬庫15の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、第2試薬庫15の下方には、恒温槽が設けられている。第2試薬容器15aの側面部には、第1試薬容器13aと同様に、第2試薬容器15aに収容された第2試薬に関する試薬情報が記録された記録媒体が付されている。また、第2試薬庫15の外周部には、第1試薬読取部13bと同様の機能を有し第2試薬容器15aに付された記録媒体を光学的に読み取る第2試薬読取部15bが設けられている。
【0033】
第2試薬分注機構16は、第1試薬分注機構14と同様に、第2試薬の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム16aと、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備え、第2試薬庫15上の所定位置に移動された第2試薬容器15a内の試薬をプローブによって吸引後、反応テーブル10上の所定位置に搬送された反応容器9に分析対象である検体に指示された分析項目に対応する第2試薬を吐出して分注を行う。攪拌部17は、反応容器9に分注された第1試薬、検体および第2試薬の攪拌を行い、反応を促進させる。
【0034】
測光部18は、所定波長の光を反応容器9に発し、この反応容器9内の試薬と検体との反応液を通過した光を受光して分光強度測定を行なう。測光部18による測定結果は、制御部31に出力され、分析部33において分析される。
【0035】
洗浄部19は、図示しないノズルによって、測光部18による測定が終了した反応容器9内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。この洗浄した反応容器9は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器9を廃棄してもよい。
【0036】
さらに、測定機構2は、検体収容部20を備える。検体収容部20は、空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体であるとともに不活性ガスであるHeガスが充填された状態で当該分析装置において使用する使用液体を収容する収容機構として機能する。
【0037】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34および出力部35を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0038】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部31は、検体収容部20内へのHeガスの充填処理を制御する。
【0039】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。入力部32は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置から検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を取得してもよい。分析部33は、測光部18による測定結果をもとに吸光度などを演算し、検体内における検出対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。
【0040】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部34は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0041】
出力部35は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部35は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置に検体の分析結果を含む諸情報を出力してもよい。
【0042】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器9に対して、第1試薬分注機構14が第1試薬容器13a内の第1試薬を分注し、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、第2試薬分注機構16が第2試薬容器15a中の試薬を分注した後、攪拌部17が反応容器9内の液体を攪拌し、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の液体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器9を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0043】
つぎに、図1および図2を参照して、測定機構2内に設けられた検体収容部20について説明する。図1および図2に示すように、検体収容部20は、検体収容容器21、ガス供給容器22、接続管23、ガスボンベ24および真空ポンプ25a,25bを備える。
【0044】
検体収容容器21は、高蒸気圧気体であるHeガスが充填された状態で検体を収容した検体容器11aを一つ以上収容可能である。検体収容容器21は、複数の検体容器11aを保持可能である検体ラック11bを一つ以上収容可能である。検体収容容器21は、この検体収容容器21を構成する側壁の一つ、たとえば検体収容容器21の上面部分が可動壁21aであり、矢印Y21に示すように、この可動壁21aの移動によって容積を変化することができる。検体収容容器21は、検体容器を収容した検体ラック11bが出入り可能である出入口を、たとえば、図2に示す左側面に有する。なお、検体移送部11は、検体収容容器21に設けられた出入口を介して検体容器11aを収容した検体ラック11bを検体収容容器21内に移送する。
【0045】
ガス供給容器22は、検体収容容器21と接続して検体収容容器21との間でHeガスを送受可能である。ガス供給容器22は、検体収容容器21が検体容器11aを収容していないときに高蒸気圧気体であるHeガスを保持する。ガス供給容器22は、このガス供給容器22を構成する側壁の一つ、たとえばガス供給容器22の下面部分が可動壁22aであり、矢印Y22に示すように、この可動壁22aの移動によって容積を変化することができる。
【0046】
検体収容容器21とガス供給容器22とは、接続管23によって接続されている。接続管23には、供給用バルブ23aが設けられており、この供給用バルブ23aが開いたときに検体収容容器21およびガス供給容器22との間でHeガスの移動が可能となり、供給用バルブ23aが閉まったときは、検体収容容器21およびガス供給容器22との間は遮断されHeガスの移動が不可能となる。
【0047】
また、接続管23は、供給用バルブ23aよりも検体収容容器21側で、大気が流入可能である管23bと接続する。管23bには、バルブ23eが設けられており、バルブ23eが開いたときに、管23bから接続管23を介して検体収容容器21内に空気が流入する。バルブ23eが閉まっているときは、バルブ23eで遮断されるため、検体収容容器21内への空気流入は不可能である。また、接続管23は、供給用バルブ23aよりもガス供給容器22側で、大気が流入可能である管23cと接続する。管23cには、バルブ23fが設けられており、バルブ23fが開いたときに、管23cから接続管23を介してガス供給容器22内に空気が流入する。バルブ23fが閉まっているときは、バルブ23fで遮断されるため、ガス供給容器22内への空気流入は不可能である。供給用バルブ23a、バルブ23e,23fの開閉は、制御部31によって制御される。
【0048】
ガス供給容器22は、Heガスが充填されたガスボンベ24と接続する。ガスボンベ24からガス供給容器22内へのHeガスの供給は、制御部31によって制御される。また、検体収容容器21は、検体収容容器21内の空気を吸い出す真空ポンプ25aと接続する。また、ガス供給容器22は、ガス供給容器22内の空気を吸い出す真空ポンプ25bと接続する。この真空ポンプ25a,25bの駆動は、制御部31によって制御される。
【0049】
検体収容部20は、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差によって検体収容容器21とガス供給容器22との間で前記高蒸気圧気体を移動する。検体収容部20は、Heガスを一方の容器に送出する容器の容積を徐々に小さくしながら検体収容容器21とガス供給容器22との間でHeガスを移動する。
【0050】
制御部31は、検体収容容器21が検体ラック11bを収容する前に、真空ポンプ25aに検体収容容器21内の空気を吸い出させる。その後、制御部31は、供給用バルブ23aを開いて検体収容容器21とガス供給容器22とを接続し、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差によってガス供給容器22が保持する高蒸気圧気体を検体収容容器21に送出させる。また、制御部31は、検体収容容器21が検体ラック11bを収容していないときに、真空ポンプ25bにガス供給容器22内の空気を吸い出させる。その後、制御部31は、供給用バルブ23aを開いて検体収容容器21とガス供給容器22とを接続し、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差によって検体収容容器21に充填された高蒸気圧気体をガス供給容器22に送出させる。
【0051】
つぎに、分析装置1における検体収容部20への検体ラック11bの収容処理について説明する。図3は、分析装置1における検体収容部20への検体ラック11bの収容処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
図3に示すように、まず、制御部31は、入力部32から入力された指示情報などをもとに検体ラック11bの検体収容部20への収容指示があるか否かを判断する(ステップS2)。制御部31は、検体ラック11bの検体収容部20への収容指示があるまでステップS2の判断を繰り返す。
【0053】
そして、制御部31は、検体ラック11bの検体収容部20への収容指示があると判断した場合(ステップS2:Yes)、ガス供給容器22に接続する真空ポンプ25bを駆動し真空ポンプ25bによってガス供給容器22内の空気を吸い出させるガス供給容器真空処理を行なう(ステップS4)。ガス供給容器真空処理においては、図4に示すように、供給用バルブ23aおよびバルブ23fが閉まっているとともにガス供給容器22の可動壁22aがガス供給容器22の下端で固定されている状態で真空ポンプ25bが駆動する。このため、図4の矢印Y31に示すように、ガス供給容器22内の空気が真空ポンプ25bによって吸い出されて、ガス供給容器22内は、ほぼ真空状態となる。
【0054】
つぎに、制御部31は、ガス供給容器22内にHeガスを充填するガス供給容器He充填処理を行なう(ステップS6)。図5に示すように、制御部31は、供給用バルブ23aおよびバルブ23fが閉まっている状態で、ガスボンベ24を開栓する。この結果、図5の矢印Y33に示すように、ガス供給容器22内にガスボンベ24からHeガスが供給され、ガス供給容器22内にHeガスが充填される。
【0055】
そして、制御部31は、検体収容容器21に接続する真空ポンプ25aを駆動し真空ポンプ25aによって検体収容容器21内の空気を吸い出させる検体収容容器真空処理を行なう(ステップS8)。図6に示すように、検体収容容器真空処理においては、供給用バルブ23aおよびバルブ23eが閉まっているとともに検体収容容器21の可動壁21aが検体収容容器21の上端で固定されている状態で真空ポンプ25aが駆動する。このため、図6の矢印Y35に示すように、検体収容容器21内の空気が真空ポンプ25aによって吸い出されて、検体収容容器21内は、ほぼ真空状態となる。
【0056】
次いで、制御部31は、供給用バルブ23aを開栓する供給用バルブ開栓処理を行なう(ステップS10)。この場合、図7に示すように、制御部31は、バルブ23e,23fが閉まった状態であるとともにガス供給用容器22の可動壁22aの固定を解除した状態で、供給用バルブ23aを開栓する。検体収容容器21内は、ほぼ真空状態であり、ガス供給容器22内はHeガスで充填されているため、矢印Y37に示すように、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差を縮めるようにガス供給容器22からほぼ真空状態である検体収容容器21内にHeガスが流れ込む。この結果、検体収容部20においては、他に外的な力を加えることなく、容易にガス供給容器22内に充填されたHeガスを検体収容容器21内に移動することが可能になる。さらに、制御部31は、矢印Y38に示すように、ガス供給容器22の可動壁22aをガス供給容器22の上方向に向かって図示しない駆動手段により移動させる。このように、検体収容部20においては、可動壁22aをガス供給容器22の上方向に向かって移動させながら、ガス供給容器22内に充填されたHeガスを検体収容容器21内に移動するため、容器間のHeガスの移動効率を100%に近づけることができる。したがって、分析装置1は、ガス供給容器22から検体収容容器21内へのHeガスの移動を、容易かつ効率的に行なうことができる。
【0057】
そして、制御部31は、検体収容容器21内にガス供給容器22から供給されたHeガスが充填されたと判断した後に、供給用バルブ23aを閉栓する供給用バルブ閉栓処理を行なう(ステップS12)。つぎに、ガス供給容器22に空気を供給して可動壁22aをガス供給容器22下端に移動させるガス供給容器空気供給処理を行なう(ステップS14)。この場合、制御部31は、供給用バルブ23aを閉めた状態でバルブ23fを開栓する。この結果、図8の矢印Y40に示すように、ガス供給容器22内に管23cを介して空気が流入し、矢印Y41に示すように、可動壁22aが空気流入にともないガス供給容器22下端に移動する。その後、制御部31は、可動壁22aをガス供給容器22下端に固定する。
【0058】
つぎに、制御部31は、図8の矢印Y42に示すように、検体移送部11に検体収容容器21内への収容対象である検体ラック11bを検体収容容器21の出入口を介して検体収容容器21内に移送させて、検体収容容器21内に収容対象である検体ラック11bを収容する検体ラック収容処理を行なう(ステップS16)。
【0059】
次いで、制御部31は、入力部32から入力された指示情報などをもとに検体収容容器21内に収容された検体ラック11bの取出指示があるか否かを判断する(ステップS18)。制御部31は、検体収容容器21内の検体ラック11bの取出指示があるまでステップS18の判断を繰り返す。
【0060】
そして、制御部31は、検体収容容器21からの検体ラック11bの取出指示があると判断した場合(ステップS18:Yes)、検体移送部11に対して、取出対象である検体ラック11bを検体収容容器21の出入口を介して検体収容容器21外に移送させて、検体ラック11bを取り出す検体ラック取出処理を行なう(ステップS20)。
【0061】
つぎに、制御部31は、ステップS4と同様の処理手順で、供給用バルブ23aおよびバルブ23fが閉まっているとともにガス供給容器22の可動壁22aがガス供給容器22の下端で固定されている状態で真空ポンプ25bを駆動し真空ポンプ25bによってガス供給容器22内の空気を吸い出させるガス供給容器真空処理を行なう(ステップS22)。この結果、図9の矢印Y43に示すように、ガス供給容器22内の空気が真空ポンプ25bによって吸い出されて、ガス供給容器22内は、ほぼ真空状態となる。
【0062】
そして、制御部31は、供給用バルブ23aを開栓する供給用バルブ開栓処理を行なう(ステップS24)。供給用バルブ開栓処理においては、図10に示すように、制御部31は、バルブ23e,23fが閉まった状態であるとともに検体収容容器21の可動壁21aの固定を解除した状態で、供給用バルブ23aを開栓する。この場合、ガス供給容器22内はほぼ真空状態であり、検体収容容器21内はHeガスで充填されているため、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差を縮めるように、矢印Y45に示すように、検体収容容器21からほぼ真空状態であるガス供給容器22内にHeガスが流れ込む。さらに、制御部31は、矢印Y46に示すように、検体収容容器21の可動壁21aを検体収容容器21の下方向に向かって図示しない駆動手段により移動させる。この結果、検体収容部20においては、ガス供給容器22から検体収容容器21内へのHeガスの移動を容易かつ効率的に行なうことができる。
【0063】
そして、制御部31は、ガス供給容器22内に検体収容容器21から供給されたHeガスが充填されたと判断した後に、供給用バルブ23aを閉栓する供給用バルブ閉栓処理を行なう(ステップS26)。つぎに、検体収容容器21に空気を供給して可動壁21aを検体収容容器21上端に移動させる検体収容容器空気供給処理を行なう(ステップS28)。この場合、制御部31は、図11に示すように、供給用バルブ23aを閉めた状態でバルブ23eを開栓する。この結果、図11の矢印Y48に示すように、検体収容容器21内に管23bを介して空気が流入し、矢印Y49に示すように、可動壁21aが空気流入にともない検体収容容器21上端に移動する。その後、制御部31は、可動壁21aを検体収容容器21上端に固定する。
【0064】
次いで、制御部31は、検体ラック11bの検体収容部20への収容指示があるか否かを判断する(ステップS30)。制御部31は、検体ラック11bの検体収容部20への収容指示があると判断した場合(ステップS30:Yes)、ステップS8に進み、検体収容容器真空処理を行なう。一方、制御部31は、検体ラック11bの検体収容部20への収容指示がないと判断した場合(ステップS30:No)、分析処理が終了したか否かを判断する(ステップS32)。制御部31は、分析処理が終了していないと判断した場合(ステップS32:No)、ステップS30に進む。一方、制御部31は、分析処理が終了したと判断した場合(ステップS32:Yes)、分析装置1における分析処理を終了する。
【0065】
このように、本実施の形態にかかる分析装置1においては、空気よりも蒸気圧が高いHeガスが充填された検体収容容器21内に検体を収容するため、検体の溶媒の蒸発を確実に防止することができる。したがって、分析装置1によれば、検体の濃縮が抑制されるため、所望の分析精度を確保することが可能になる。さらに、分析装置1においては、不活性ガスであるHeガスが充填された検体収容容器21内に検体を収容するため、酸素および二酸化炭素に起因する検体の変質を抑制でき、所望の分析精度を確保することが可能になる。
【0066】
また、分析装置1においては、検体収容部20は、検体収容容器21が検体ラック11bを収容するときに図3のステップS8〜ステップS14に示すガス供給容器22が保持するHeガスを検体収容容器21に送出する処理と、検体収容容器21が検体ラック11bを収容していないときに図3のステップS22〜ステップS28に示す検体収容容器21内に充填されたHeガスをガス供給容器22に送出する処理とを繰り返すことによって、Heガスを繰り返し利用している。このため、分析装置1においては、検体収容容器21内に充填するHeガスを検体収容時ごとに供給する必要がないため、検体収容時ごとにHeガスを供給する場合と比較して、Heガスに要するコストを格段に下げることができる。さらに、分析装置1においては、Heガスを繰り返し利用できるため、検体取出時ごとにHeガスを外部に放出する場合と比較して、Heガスの外部への放出量を格段に低減でき、外部環境への負荷を低減することが可能になる。
【0067】
また、従来、一つの検体収容用の容器とこの容器にガスを供給する供給源とを備えた構成の場合、容器への検体移送ごとに漏れ出してしまうガスを常に補充しなければならず、容器に供給するガス供給源は大きなガス容量を確保する必要があった。このため、従来においては、このガス供給源の大きさが大きくなってしまい、これにともない分析装置サイズも大きくならざるを得なかった。これに対し、分析装置1においては、検体収容容器21とガス供給容器22との二つの容器を設けて、この二つの容器間でHeガスを移動させてHeガスの再利用を実現しているため、Heガスが漏れるのを格段に低減でき、Heガスを常に容器に補充しなくともよい。この結果、分析装置1においては、ガス供給源として大きなガス容量を確保する必要がないため、ガス供給源を小型化できる。したがって、分析装置1においては、省スペースでHeガスの再利用を実現することができ、検体収納部20を分析装置内に新たに設けた場合であっても装置サイズが大幅に大きくなることはない。
【0068】
また、分析装置1においては、検体収容容器21とガス供給容器22との内圧差を利用するため、他に外的な力を加えることなくしてHeガスを容易に移動させることができる。さらに、分析装置1においては、Heガスが充填された容器の可動壁を移動させて、この容器の体積を小さくさせながら、この容器から一方の容器へHeガスを移動させるため、容器間の移動効率を100%に近づけることができ、効率的なHeガスの移動を実現することが可能になる。
【0069】
つぎに、検体収容容器21における検体ラック11bの出入口について詳細に説明する。図12は、検体収容容器21の斜視図である。図12に示すように、たとえば、検体収容容器21の左側壁S1に検体収容容器21における検体ラック11bの出入口21jが設けられる。そして、出入口21jには、シャッター21bが設けられている。シャッター21bは、矢印Y51に示すように、検体ラック11bが検体移送部11によって検体収容容器21内に移送される時、または検体収容容器21内から検体収容容器21外に移送される時にだけ開き、検体ラック11bが検体移送部11によって検体収容容器21内に移送される時と検体収容容器21外に移送される時以外には閉まっている。このため、図13に示すように、検体収容容器21においては、検体ラック11bが検体移送部11によって検体収容容器21内または検体収容容器21外に移送される時以外は、シャッター21bによって出入口21jが遮断されることとなる。分析装置1においては、検体収容容器21の出入口21jにシャッター21bを設けて、検体ラック11bが検体収容容器21内または検体収容容器21外に移送されるときのみシャッター21bを開けることによって、検体収容容器21内への空気侵入を抑制し、Heガスによる検体の蒸発防止および変性低減を確実とすることができる。
【0070】
そして、このシャッター21bは、図14に示すように、出入口通過時の検体容器11aおよび検体ラック11b側に位置する端部が検体容器11aおよび検体ラック11bの形状に沿う形状となっている。検体ラック11bの出入口通過時にシャッター21bと検体ラック11bおよび検体容器11aとの間の隙間ができないように、シャッター21bは、検体ラック11bの高さ分だけ開く。さらにシャッター21bの下端部は、検体ラック11bおよび検体容器11aの上部端部形状に沿うように櫛形状になっている。具体的には、シャッター21bの下端は、検体ラック11bに収容された検体容器11a間の間隔D1と同じ幅であって検体ラック11bから検体容器11aが突出している高さと同じ高さを有する歯部分が突出して設けられている。この歯の間の隙間を通って、検体ラック11bに収容された検体容器11aは出入口を通過する。このように、シャッター21bは、検体ラック11bおよび検体容器11a上部の形に沿うように下端部を突出させることによって、検体収容容器21の出入口を開けるときに、必要最小限だけシャッター21bを開けることができる。このため、検体収容容器21内への外部からの空気の侵入を低減できるため、検体収容容器21内に収容した検体の蒸発、変質をさらに抑制することができる。
【0071】
さらに、検体移送部11は、検体収容容器21内に検体ラック11bおよび検体容器11aを移送する場合に、図15に示すように、検体収容容器21内に検体容器11aを収容した検体ラック11bを該検体ラック幅Drとシャッター21bの幅Dsとを合わせた幅Da分移送した時に検体ラック11bの移送を一時停止する。そして、シャッター21bは、矢印Y52に示すように、検体移送部11による検体ラック11bの一時移送停止時に閉まる。そして、シャッター21bが閉まった後に、検体移送部11は、矢印Y53に示すように、検体収容容器21奥に検体ラック11bを移送する。このように、分析装置1は、検体移送部11による検体ラック移送処理において、Heガスで満たされた検体収容容器21内への検体ラック11b移送直後に検体ラック11bを出入口の開口領域を塞ぐように一時停止させてシャッター21bを閉めている。このため、分析装置1においては、検体ラック11bが検体収容容器21内に移送されながらシャッター21bが閉まる場合よりも、検体ラック11bおよび検体容器11a自身の体積で阻害して検体収容容器21における出入口の開口面積を小さくすることができるため、検体収容容器21内への外部からの空気の侵入を低減でき、検体収容容器21内に収容した検体の蒸発、変質をさらに抑制することができる。なお、検体ラック11bを検体収容容器21外へ移送する場合も、検体移送部11は、開いたシャッター21bを介して検体ラック11bを該検体ラック幅とシャッター21bの幅とを合わせた幅分、検体収容容器21外へ移送した時に、検体ラック11bの移送を一時停止する。そして、シャッター21bは、検体移送部11による検体ラック11bの一時移送停止時に閉まり、シャッター21bが閉まった後に検体移送部11は、検体ラック11bの移送を再開する。
【0072】
また、図16に示すように、分析装置1においては、検体収容容器21に代えて、シャッター21bと同じ材質で上部分211cを形成するとともに検体容器11aおよび検体ラック11bと接触する下部分を緩衝部材211dで形成したシャッター211bを有する検体収容容器211としてもよい。緩衝部材211dは、シャッター21bと同様に、検体ラック11bおよび検体容器11aに沿う形状である。また、緩衝部材211dは、たとえば、クッション性のある部材である。すなわち、シャッター211bは、出入口通過時の検体ラック11b側に位置する端部が検体容器11aおよび検体ラック11bの上部形状に沿う形状であるとともに緩衝性材料で形成されている。さらに、緩衝部材211dは、検体容器11a間の間隔D1よりも微小幅広い幅D11を有する。そして、緩衝部材211dは、検体ラック11bから検体容器11aが突出している高さよりも微小だけ歯部分が長く突出している。このため、検体ラック11bおよび検体容器11aは、出入口通過時には、クッション性を有する緩衝部材211d間を押し広げるようにして、緩衝部材211dと接触しながら通過することとなる。シャッター211bの下端部をクッション性の緩衝部材で形成することによって、検体容器11aおよび検体ラック11bの上部とシャッター211bの下部との接触性が高くなり隙間が生じにくくなるため、検体収容容器21内への外部からの空気の侵入をさらに低減でき、検体収容容器21内に収容した検体の蒸発、変質をさらに抑制することができる。
【0073】
また、分析装置1においては、図17に示すように、内部に空気を吸着させる吸着剤212eを備えた検体収容容器212としてもよい。吸着剤212eは、空気の成分を選択的に吸着するものであり、空気を構成する窒素ガスや酸素ガスを吸着する。このため、検体収容容器212においては、矢印Y55に示すように検体ラック11b移送時に出入口と検体ラック11bおよび検体容器11aとの隙間から検体収容容器212内に空気が侵入した場合であっても、この空気を吸着剤212eが吸着するため、検体収容容器212内の空気を除外してHeガスの比率を高く保持することができる。この結果、検体収容容器212によれば、検体収容容器212内に収容した検体の蒸発、変質をさらに抑制することができる。
【0074】
また、分析装置1においては、図18に示すように、シャッター21bに加えて内部にシャッター213fをさらに備えた2重シャッター形式の検体収容容器213としてもよい。シャッター21bとシャッター213fとの間の第2室213g、シャッター213fで第2室213gと遮断される第1室213hの双方には、Heガスが充填されている。矢印Y57に示すように、検体ラック11bが検体移送部11によって第2室213gに移送されるときにシャッター21bが開くのに対し、シャッター213fは閉まり第1室213hと第2室213gとを遮断する。そして、図19の矢印Y58に示すように第2室213g内に検体ラック11bが移送されてシャッター21bが閉まった後に、矢印Y59に示すようにシャッター213fが開く。そして、矢印Y60に示すように、検体ラック11bが検体移送部11によって、検体収容領域となる第1室213h内に移送される。このように、2重シャッター形式の検体収容容器213とすることによって、検体収容領域となる第1室213h内への外部からの空気の侵入をさらに低減でき、検体収容容器21内に収容した検体の蒸発、変質をさらに抑制することができる。なお、検体ラック11bを検体収容容器213外に移送する場合、分析装置1は、シャッター21bが閉まった状態でシャッター213fを開け、検体移送部11に第1室から第2室に検体ラック11bを移送させる。そして、分析装置1は、シャッター213fを閉めシャッター21bを開けた後に、検体移送部11に対して第2室から検体収容容器213外に検体ラック11bを移送させる。
【0075】
なお、分析装置1においては、検体を保持する検体容器11aを収容する検体収容容器21,211,212,213を特許請求の範囲における収容機構として説明したが、もちろんこれに限らない。たとえば、図20に示すように、検体収容容器21は、検体または検体と試薬との反応液を収容する反応容器9を収容してもよい。この場合、検体移送部11の所定位置には、反応容器9を収容可能である反応容器用ラック9cが配置されており、反応容器移送機構27におけるアーム27aが、この反応容器用ラック9cに反応テーブル10における反応容器9を移送する。そして、検体移送部11は、反応容器9を収容した反応容器用ラック9cを、検体ラック11bを移送する場合と同様に、検体収容容器21の出入口を介して検体収容容器21内に移送する。このように、Heガスで充填された検体収容容器21内に反応液が収容された反応容器9を収容した場合も、反応液の蒸発および変質を確実に防止することが可能になる。なお、アーム27aは、先端部が反応容器9を挟み込み可能であり、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。
【0076】
また、図21に示すように、分析装置1においては、反応容器移送機構27に代えて、直接反応テーブル10と検体収容容器214内との間で反応容器9そのものを移送可能であるアーム271aを有する反応容器移送機構271としてもよい。この場合、検体収容容器214においては、検体収容容器214上面を形成する可動壁214aに反応容器9が通過できる開閉可能な開口部214iが設けられており、アーム271aによって反応容器9が移送される場合に、この開口部214iが開けられる。このように、アーム271aによって反応容器9が移送される時にだけ開く開口部214iを設けることによって、検体収容容器214への外部からの空気の侵入を低減して、検体収容容器214内に収容した検体または反応液の蒸発、変質を抑制することができる。
【0077】
また、分析装置1においては、特許請求の範囲における収容機構として検体を収容する検体収容部20について説明したが、もちろんこれに限らず、試薬を保持する試薬庫や反応容器9を収納して測光処理を行う反応テーブル10に対して、Heガスを充填し、このHeガスを再利用できる機構を適用してもよい。
【0078】
また、分析装置1においては、空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体として、Heガスを用いた場合を例に説明したが、もちろんこれに限らず、空気よりも蒸気圧が高い水素ガス、ネオンガスまたは窒素ガスを充填して検体の溶媒の蒸発を防止してもよい。また、分析装置1においては、特許請求の範囲における収納機構として、検体収容容器21とガス供給容器22との2つの容器を設けた場合について説明したが、もちろんこれに限らず、検体収容容器21またはガス供給容器22と接続し容積可変である容器をさらに設けて、この容器と検体収容容器21またはガス供給容器との間でHeガスの移動を行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す測定機構内部の要部を模式的に示した図である。
【図3】図1に示す検体収容部への検体ラックの収容処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図5】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図6】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図7】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図8】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図9】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図10】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図11】図1に示す検体収容部における検体ラックの収容処理を説明する図である。
【図12】図2に示す検体収容容器の斜視図である。
【図13】図12に示す検体収容容器の左側面図である。
【図14】図12に示す検体収容容器の左側面図である。
【図15】図12に示す検体収容容器の断面図である。
【図16】図12に示す検体収容容器の左側面図の他の例を示す図である。
【図17】図12に示す検体収容容器の断面図の他の例を示す図である。
【図18】図12に示す検体収容容器の断面図の他の例を示す図である。
【図19】図12に示す検体収容容器の断面図の他の例を示す図である。
【図20】図1に示す測定機構内部の要部の他の例を模式的に示した図である。
【図21】図1に示す測定機構内部の要部の他の例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
9 反応容器
9c 反応容器用ラック
10 反応テーブル
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
11c 緊急検体用保冷庫
12 検体分注機構
12a,14a,16a,27a,271a アーム
13 第1試薬庫
13a 第1試薬容器
13b 第1試薬読取部
14 第1試薬分注機構
15 第2試薬庫
15a 第2試薬容器
15b 第2試薬読取部
16 第2試薬分注機構
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
20 検体収容部
21,211,212,213,214 検体収容容器
21a,22a,214a 可動壁
21b,211b,213f シャッター
211d 緩衝部材
21j 出入口
212e 吸着剤
213h 第1室
213g 第2室
214i 開口部
22 ガス供給容器
23 接続管
23a 供給用バルブ
23b,23c 管
23e,23f バルブ
24 ガスボンベ
25a,25b 真空ポンプ
27,271 反応容器移送機構
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器内に収容された検体と試薬とを反応容器内に分注し前記検体を分析する分析装置において、
空気よりも蒸気圧が高い高蒸気圧気体が充填された状態で当該分析装置において使用する使用液体を収容する収容機構を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記収容機構は、二つ以上の容器間で前記高蒸気圧気体を移動させることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記収容機構は、
前記高蒸気圧気体が充填された状態で前記使用液体を収容した液体容器を一つ以上収容可能である第1の容器と、
前記第1の容器と接続して前記第1の容器との間で前記高蒸気圧気体を送受可能であるとともに前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに前記高蒸気圧気体を保持する第2の容器と、
を備え、前記第1の容器が前記液体容器を収容するときに前記第2の容器が保持する前記高蒸気圧気体を前記第1の容器に送出する第1の送出処理と、前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに前記第1の容器内に充填された前記高蒸気圧気体を前記第2の容器に送出する第2の送出処理とを繰り返し、前記高蒸気圧気体を繰り返し利用することを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記収容機構は、前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第1の容器と前記第2の容器との間で前記高蒸気圧気体を移動することを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第1の容器および前記第2の容器の容積は可変であり、
前記収容機構は、前記高蒸気圧気体を一方の容器に送出する容器の容積を徐々に小さくしながら前記第1の容器と前記第2の容器との間で前記高蒸気圧気体を移動することを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1の容器は、前記第1の容器を構成する側壁の一つが可動壁であり、該可動壁の移動によって容積が変化し、
前記第2の容器は、前記第2の容器を構成する側壁の一つが可動壁であり、該可動壁の移動によって容積が変化することを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記収容機構内への前記高蒸気圧気体の充填処理を制御する制御機構をさらに備え、
前記収容機構は、
前記第1の容器内の空気を吸い出す第1の真空ポンプと、
前記第2の容器内の空気を吸い出す第2の真空ポンプと、
を備え、
前記制御機構は、
前記第1の容器が前記液体容器を収容する前に、前記第1の真空ポンプに前記第1の容器内の空気を吸い出させた後に前記第1の容器と前記第2の容器とを接続して前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第2の容器が保持する前記高蒸気圧気体を前記第1の容器に送出させ、
前記第1の容器が前記液体容器を収容していないときに、前記第2の真空ポンプに前記第2の容器内の空気を吸い出させた後に前記第1の容器と前記第2の容器とを接続して前記第1の容器と前記第2の容器との内圧差によって前記第1の容器に充填された前記高蒸気圧気体を前記第2の容器に送出させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項8】
前記第1の容器に設けられた出入口を介して前記液体容器を前記第1の容器内に移送する移送機構をさらに備え、
前記第1の容器は、前記液体容器が前記移送機構によって前記第1の容器内に移送されるときにだけ開くシャッターを前記出入口に有することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項9】
前記移送機構は、前記第1の容器内に前記液体容器を該液体容器幅と前記シャッター幅とを合わせた幅分移送した時に前記液体容器の移送を一時停止し、
前記シャッターは、前記移送機構による前記液体容器の一時移送停止時に閉まることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記シャッターは、前記出入口通過時の前記液体容器側に位置する端部が前記液体容器形状に沿う形状であることを特徴とする請求項8または9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記シャッターは、前記出入口通過時の前記液体容器側に位置する端部が緩衝性材料で形成されることを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記第1の容器は、空気を吸着する空気吸着剤を内部に備えたことを特徴とする請求項3〜11のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項13】
前記高蒸気圧気体は、不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項14】
前記高蒸気圧気体は、Heであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−203197(P2008−203197A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42448(P2007−42448)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】