説明

分注装置および自動分析装置

【課題】良好な分注精度を維持することができる分注装置および自動分析装置を提供する。
【解決手段】液体を収容するシリンダー12aの内径よりも小さい径を有し、シリンダー12aの内部で進退動作され、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生する棒状のプランジャー12bと、シリンダー12aとプランジャー12bとの間に介在し、プランジャー12bを摺動自在に挿通する摺動部12cと、を備える。プランジャー12bは、プランジャー駆動部18によって直動駆動または増速駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分注する分注装置、および当該分注装置を備えて検体試料の分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の液体を吐出させる技術として、シリンダーとプランジャーとを有し、プランジャーの先端に液漏れ防止用のシール部材が設けられた先端シールキャップ方式のシリンジに関する技術が知られている。このうち、下記特許文献1では、リニアモーターの可動子をプランジャーロッドに接続してプランジャーを駆動させる技術が開示されている。この技術では、リニアモーターが動作することによってプランジャーを押圧し、このプランジャーがシリンダー内部を移動することによってシリンジの先端に接続された針から所定量の液体を吐出させている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−180828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分注用シリンジを構成するシリンダーのような円筒形状の部品は、一般的にその内径面の真円度および真直度を高くすることが困難であるとともに、若干の個体差を有する。このため、上述した従来技術では、プランジャーがシリンダーの内壁を摺動しながら進退動作を行う際の摺動抵抗が不均一であるという問題があった。また、上述した従来技術では、シール部材とシリンダーの内壁の接触面積が大きく、シール部材が磨耗等による経時的変化を生じ、分注精度が下がってしまう恐れもあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、長期間にわたって良好な分注精度を維持することができる分注装置および自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る分注装置は、液体を収容するシリンダーと、前記シリンダーの内径よりも小さい径を有し、直接駆動または増速駆動を行う駆動部によって前記シリンダー内部で進退動作させられ、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生するプランジャーと、前記シリンダーと前記プランジャーとの間に介在し、前記プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記摺動部は、弾性部材が埋め込まれた樹脂からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記摺動部は、前記シリンダーと一体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記駆動部は、前記分注対象の液体を外部へ吐出するための前記プランジャーの前記シリンダーへの進入動作を40msec以内に完了させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記駆動部は、リニアモーターを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る自動分析装置は、検体を分注する検体分注部と、試薬を分注する試薬分注部とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、前記検体分注部または前記試薬分注部は、上記いずれかの発明に記載の分注装置を用いてそれぞれ構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分注装置および自動分析装置によれば、液体を収容するシリンダーの内径よりも小さい径を有し、直接駆動または増速駆動を行う駆動部によってシリンダー内部で進退動作させられ、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生するプランジャーと、シリンダーとプランジャーとの間に介在し、プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、を備えたことにより、プランジャーの進退動作時における摺動抵抗を均一なものとすることができ、プランジャーと摺動部との接触面積も少なくて済む。したがって、従来のように磨耗等による経時的変化を生じにくく、長期間にわたって良好な分注精度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面はあくまでも模式的なものであり、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る分注装置の構成を示す図である。同図に示す分注装置1は、液体の吸引および吐出を行うノズル11と、液体の流路をなすチューブ41を介してノズル11に接続され、ノズル11からの液体を吸引または吐出するための圧力を発生するシリンジ12と、分注装置1における液体の吸引および吐出を含む各種動作を制御する制御部13と、を備える。なお、ここでいう「液体」には、固体成分をわずかに含有する液体も含まれる。
【0015】
シリンジ12は、略円筒形状をなして所定の液体を収容するガラス製のシリンダー12aと、シリンダー12aの内径よりも小さい径を有し、シリンダー12aに収容される液体の圧力の加減を行う棒状の金属製のプランジャー12bとを有する。また、シリンジ12は、シリンダー12aとプランジャー12bとの間に、シリンダー12aに収容される液体の漏れを防止するとともに、シリンダー12aと一体に設けられたプランジャー12bを摺動自在に挿通する摺動部12cを有する。
【0016】
シリンダー12aは、チューブ41を介してノズル11に接続され、液体がシリンダー12aの外部へ吐出される際の流路をなす吐出口121と、そのシリンジ12の側面部に設けられ、シリンダー12aの内部に液体が注入される際の流路をなす注入口122とを有する。
【0017】
プランジャー12bは、円筒研磨加工によって形成される。このため、ガラス製のシリンダー12aの内径面よりも高い真円度、真直度を実現しており、研磨面の加工精度は10μm以下である。
【0018】
摺動部12cは、4フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂に、金属製のばね部材が埋め込まれてなる。このため、摺動部12cはばね性を有し、プランジャー12bの外周に対する圧力を上げ、シリンダー12a内部からの液漏れを低減できるとともに、プランジャー12bの進退動作による磨耗に対して長期間にわたって抗しうる高い耐久性を実現している。また、本実施の形態に係る分注装置1では、シリンダー12aの内径面は高精度の加工が不要であるとともに、プランジャー12bの進退動作においてシール部材の摺動を受けることがないため、シリンダー12aとして、例えばアクリル樹脂等のガラス以外の材質を用いることも可能である。
【0019】
図2は、シリンダー12aの構成を示す部分拡大図である。図2に示すように、プランジャー12bは、シリンダー12aの長手方向の中心軸(吐出口121の中心軸に一致)に沿って進退可能である。図2では、プランジャー12bがシリンダー12a内で最も退避した状態(以後、最退避状態と称する)を実線で表示するとともに、プランジャー12bがシリンダー12a内で最も進入した状態(以後、最進入状態と称する)を2点鎖線で表示している。このうち、プランジャー12bの最退避状態において、注入口122は、吐出口121に対して、プランジャー12bの先端よりも遠方に位置している。
【0020】
図3は、図2に示す軸X−Xを含む図2の水平面を切断面としたときの断面図であり、プランジャー12bが最退避状態にある場合の断面図である。軸X−Xは、注入口122によって形成される液体の流路の中心軸である。以後の説明では、この軸X−Xのことを「注入軸X−X」と称する。図3に示すように、注入軸X−Xは、シリンダー12aの長手方向の中心軸Y−Yと交わらない方向を指向している。
【0021】
注入口122には、液体がシリンジ12の外部からシリンダー12aに注入される際の流路をなすチューブ42が接続されている。このチューブ42には、注入される液体の流れを制御する電磁弁14およびポンプ15が順次介在している。チューブ42のシリンジ12側の端部と異なる端部は、チューブ42を流れる液体を収容するタンク16に達しており、タンク16内に収容されている圧力伝達用の液体を吸引することができる。
【0022】
ノズル11、プランジャー12b、および電磁弁14は、制御部13の制御のもと、ノズル駆動部17、プランジャー駆動部18、および電磁弁駆動部19によって駆動される。
【0023】
プランジャー12bの進退動作は、ボールねじを用いて実現される。プランジャー12bの摺動部12cに挿通されない端部は、プランジャー駆動部18に取り付けられる。プランジャー駆動部18は、プランジャー12bの端部を固定する固定部181と、固定部181に回転自在に挿通されたボールねじ182と、ボールねじ182の一端に図示しない可動子が取り付けられた回転モーター183とを有する。このような構成を有する分注装置1は、制御部13の制御のもと、回転モーター183の回転動作がボールねじ182に伝達され、ボールねじ182の回転が固定部181の直動(図1の上下動)に変換される。その結果、固定部181の直動に伴ったプランジャー12bの進退動作が実現される。
【0024】
回転モーター183としては、例えばステッピングモータを用いることができる。ステッピングモータを用いた場合には、プランジャー12bを40msec程度で前進させることにより、ノズル11の先端からの微量の液体の吐出を実行させることができる。
【0025】
以上の構成を有する分注装置1が分注対象の液体の吸引または吐出を行う際には、電磁弁14を開いてポンプ15によってタンク16に収容される圧力伝達用の液体を吸引し、ノズル11、シリンジ12、チューブ41および42をその圧力伝達用の液体で充填した後、電磁弁14を閉じる。その後、ノズル11において分注対象の液体の吸引または吐出を行うときには、制御部13の制御のもと、シリンジ12のプランジャー12bがシリンダー12aの内部で進退動作を行うことにより、圧力伝達用の液体を介してノズル11の先端部に適当な吸引圧または吐出圧を印加する。このとき、ノズル11の先端部では、圧力伝達用の液体と分注対象の液体との間に空気層が介在するため、異なる種類の液体が混合することはない。
【0026】
タンク16に収容される圧力伝達用の液体は、イオン交換水、蒸留水、脱気水、逆浸透膜投下水などの非圧縮性流体が適用される。かかる液体は、ノズル11の内部の洗浄を行う洗浄液としても適用可能である。
【0027】
本実施の形態1においては、分注装置1が、1μLよりも少ない微量の液体を分注することを想定している。ここで、シリンジ12として、内径φが2〜4mmのシリンダー12aを適用し、0.5μLの分注を行う場合を考える。この場合、プランジャー12bの移動量は、0.04mm(φ=4の場合)〜0.15mm(φ=2の場合)程度となる。この移動量は、従来の分注装置が自動分析装置上で実行可能な最小分注量である2μL程度の分注時のプランジャー12bの移動量の1/4程度である。
【0028】
上述したような、プランジャー12bの移動距離が微小である微量分注において分注対象の液体を確実に吐出させるためには、ノズル11の開口端から離脱する液体の速度が重要である。すなわち、分注対象の液体を、ノズル11の開口端の液面の表面張力やノズル11の内壁の粘性抵抗に抗して吐出するためには、特に吐出開始時の液体の初速が重要であるとともに、液体の吐出に必要なプランジャー12bのシリンダー12aへの進入動作を40msec以内に完了させる必要がある。実際、これよりも液体の吐出に費やされる時間が長いと、微量の液体がノズル11の先端から離脱しないことが実験的にわかっている。
【0029】
図4は、回転モーター183としてステッピングモータを用いるとともに、内径3mmのシリンダー12aを用い、プランジャー12bを0.043mm移動させることによって0.3μLの液体の分注を試みた実験例を示す図である。
【0030】
まず、図4の曲線L1は、プランジャー12bの移動距離が0.043mmに到達するまでの時間、すなわち応答時間を40msecとしてプランジャー12bを駆動した場合のプランジャー移動量と時間との関係を示す曲線である。実験によれば、この曲線L1にしたがってプランジャー12bを移動させた場合、0.3μLの液滴をノズル11の先端から確実に離脱させることができた。
【0031】
これに対して、図4の曲線L2は、応答時間を110msecとしてプランジャー12bを駆動した場合のプランジャー移動量と時間との関係を示す曲線である。この曲線L2にしたがってプランジャー12bを移動させた場合、プランジャー12bが0.043mm移動してもノズル11の先端からの液滴の離脱はなかった。
【0032】
この実験結果から、プランジャー12bの移動が遅いと、ノズル11の先端から液滴を吐出することができず、液滴をノズル11の先端から外部へ吐出するためには、プランジャー12bのシリンダー12aへの進入動作を40msec程度で完了させる必要があることがわかる。
【0033】
なお、プランジャー駆動部18は、分注対象の液体をノズル11の先端から40msec以内に外部へ吐出させることができる性能を有していればよく、ラック&ピニオン等の回転−直動変換手段と回転モータとの組み合わせからなる駆動手段を用いて構成してもよい。
【0034】
以上の構成を有する分注装置1において、液体の分注動作を繰り返し行うと、シリンダー12aの内径面や、プランジャー12bの表面部分に気泡が付着することがある。このような場合には、プランジャー12bを最進入状態で静止させて電磁弁14を開き、注入口122から所定の圧力で液体をシリンダー12aに注入する。これにより、注入口122からシリンダー12aに注入された液体は、プランジャー12bの周りを旋回するようにして吐出口121の方向へ流れていく。したがって、シリンダー12aの内壁やプランジャー12bの表面に付着した気泡を旋回流によって除去することができる。
【0035】
なお、プランジャー12bの最進入状態で液体を注入する代わりに、プランジャー12bのストロークの途中で液体を注入してもよい。これは、例えばノズル11での分注量が微量である場合のように、プランジャー12bを最退避状態まで退避させることがない場合などに適用可能である。この場合にも、注入口122から注入される液体は、注入口122付近で発生した旋回流が吐出口121に向かって流れるので、シリンダー12aの内壁やプランジャー12bの表面に付着した気泡を上記同様に除去することが可能となる。
【0036】
上記の如くシリンダー12aの内部で旋回流を発生することによってシリンジ12の内部に付着した気泡を除去するには、少なくとも注入軸とシリンダーの中心軸とが交わっていなければよい。この意味では、注入口122の位置は必ずしも図1や図2に示す場合に限定されるわけではなく、他の適当な位置に設けることも可能である。また、注入軸とシリンダーの中心軸とが直交していなくてもよい。
【0037】
本実施の形態1に係る分注装置1は、検体と試薬とを反応させることによって検体の成分の分析を行う自動分析装置に適用することができる。図5は、分注装置1を備えた自動分析装置要部の構成を示す説明図である。同図に示す自動分析装置100は、血液や体液等の検体(試料)とその検体の検査項目に応じた試薬とを所定の反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で反応した液体に対して光学的な測定を行う測定ユニット101と、測定ユニット101を含む自動分析装置100の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット201とを有し、これら二つのユニットが連携することによって複数の検体の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0038】
まず、測定ユニット101について説明する。測定ユニット101は、検体が収容された検体容器51を保持する複数の検体容器保持具52を順次移送する検体移送部102と、試薬容器61を保持する試薬容器保持部103と、検体と試薬とを反応させる反応容器71を保持する反応容器保持部104とを備える。また、測定ユニット101は、検体移送部102上の検体容器51に収容された検体を反応容器71に分注する検体分注部105と、試薬容器保持部103上の試薬容器61に収容された試薬を反応容器71に分注する試薬分注部106と、反応容器71の内部に収容された液体を攪拌する攪拌部107と、光源から照射されて反応容器71内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部108と、洗浄液を用いて反応容器保持部104上の反応容器71の洗浄を行う反応容器洗浄部109と、を備える。
【0039】
試薬容器保持部103および反応容器保持部104は、試薬容器61および反応容器71をそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する(図示せず)。各容器保持部の内部は予め設定された温度に保たれている。なお、生化学的な分析を行う際には、一つの検体に対して2種類の試薬を用いることが多いため、第1試薬用の試薬容器保持部103と第2試薬用の試薬容器保持部103とを別個に設けるとともに、各試薬容器保持部103に対応する試薬分注部106を別個に設けてもよい。
【0040】
検体分注部105および試薬分注部106は、本実施の形態1に係る分注装置1によって構成される。
【0041】
ところで、図5では、測定ユニット101の主要な構成要素を模式的に示すことを主眼としているため、構成要素間の位置関係は必ずしも正確ではない。測定ユニット101の正確な構成要素間の位置関係は、試薬容器保持部103の数や分注動作のインターバルにおける反応容器保持部104のホイールの回転態様などの各種条件に応じて定められる。
【0042】
次に、データ処理ユニット201の構成を説明する。データ処理ユニット201は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。データ処理ユニット201は、キーボードやマウスなどを有し、検体の分析に必要な情報や自動分析装置100の動作指示信号などを含む情報等の入力を受ける入力部202と、液晶等のディスプレイ装置を有し、検体の分析に関する情報等を表示出力する出力部203と、自動分析装置100が有する各機能または各手段の制御を行う制御部204と、検体の分析に関する各種情報を記憶する記憶部205と、を備える。
【0043】
制御部204は、測定ユニット101の測定結果に基づいた分析演算を行い、検体の分析データを生成する演算部241を有する。演算部241は、具体的な分析演算として、記憶部205で記憶する検量線を用いることにより、測光部108で測定した吸光度を濃度に変換する演算を行う。また、制御部204は、検体分注部105や試薬分注部106として適用される分注装置1の制御部13の機能を兼備している。
【0044】
以上の構成を有する自動分析装置100によれば、本実施の形態に係る分注装置1を検体分注部105または試薬分注部106として備えたため、検体や試薬に対する良好な分注精度を長期間にわたって維持することができる。
【0045】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、液体を収容するシリンダーの内径よりも小さい径を有し、ボールねじを用いた増速駆動を行う駆動部(プランジャー駆動部)によってシリンダー内部で進退動作させられ、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生するプランジャーと、シリンダーとプランジャーとの間に介在し、プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、を備え、高い加工精度を容易に実現可能なプランジャーと摺動部との間に摺動抵抗を発生させる構成としたため、プランジャーの進退動作時における摺動抵抗を均一なものとすることができる上、プランジャーと摺動部との接触面積も少なくすることができる。したがって、従来のように磨耗等による経時的変化を生じにくく、長期間にわたって良好な分注精度を維持することが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態1によれば、ボールねじによる回転−直動変換機構が、減速に伴う回転モーターのトルク増大機構としても作用するため、プランジャーの摺動抵抗の変動の不均一さの影響を受けにくく、液体の吐出を高速で行うことが可能となる。
【0047】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る分注装置の構成を示す図である。同図に示す分注装置2は、プランジャー12dの進退動作がラック&ピニオンによって実現される。プランジャー12dの摺動部12cに挿通されない端部には、ラック12dLが形成されている。プランジャー12dを駆動するプランジャー駆動部28は、ラック12dLと噛み合うピニオン281と、ピニオン281を介してプランジャー12dを駆動する回転モーター282とを有する。回転モーター282は、ピニオン281と噛み合う増速用ギア282aを有する。このような構成を有する分注装置2は、制御部13の制御のもと、回転モーター282の回転動作をプランジャー12dの進退動作に変換する。
【0048】
なお、プランジャー12dおよびプランジャー駆動部28以外の分注装置2の構成は、上記実施の形態1に係る分注装置1と同じである。このため、分注装置1と同じ構成部位については、図1と同じ符号を付してある。
【0049】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、液体を収容するシリンダーの内径よりも小さい径を有し、ラック&ピニオンを用いた増速駆動を行う駆動部(プランジャー駆動部)によってシリンダー内部で進退動作され、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生する棒状のプランジャーと、シリンダーとプランジャーとの間に介在し、プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、を備え、高い加工精度を容易に実現可能なプランジャーと摺動部との間に摺動抵抗を発生させる構成としたため、プランジャーの進退動作時における摺動抵抗を均一なものとすることができる上、プランジャーと摺動部との接触面積も少なくすることができる。したがって、従来のように磨耗等による経時的変化を生じにくく、長期間にわたって良好な分注精度を維持することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態2によれば、ラック&ピニオンによる回転−直動変換機構が、減速に伴う回転モーターのトルク増大機構としても作用するため、プランジャーの摺動抵抗の変動の不均一さの影響を受けにくく、液体の吐出を高速で行うことができる。
【0051】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る分注装置の構成を示す図である。同図に示す分注装置3では、プランジャー駆動部38が、ボールねじやラック&ピニオン等の回転−直動変換手段を介さずに直接プランジャーを進退可能なリニアモータを用いて構成され、ノズル11の先端からの分注対象の液体を外部へ吐出するためのプランジャー12eのシリンダー12aへの進入動作が40msec以内の時間で完了するように、プランジャー12eを高速で駆動する機能を有する。なお、図7では、プランジャー12eの一端がリニアモータの可動子に直結されている場合を想定しているが、プランジャー12eのリニアモーターへの取付態様がこれに限られるわけではない。
【0052】
本実施の形態3では、プランジャー駆動部38として、プランジャー12eの前進動作を40msec程度で完了させ、分注対象の液体をノズル11の先端から40msec以内に外部へ吐出させることが可能であり、減速機構を有しないリニアモーターを適用しているため、加減速時間の短縮を実現し、高い加速度のもと、液体の微量の分注を高精度で行うことができる。
【0053】
なお、プランジャー12eおよびプランジャー駆動部38以外の分注装置3の構成は、上記実施の形態1に係る分注装置1と同じである。このため、分注装置1と同じ構成部位については、図1と同じ符号を付してある。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、液体を収容するシリンダーの内径よりも小さい径を有し、リニアモータ等を用いた直接駆動を行う駆動部(プランジャー駆動部)によってシリンダー内部で進退動作させられ、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生するプランジャーと、シリンダーとプランジャーとの間に介在し、プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、を備え、高い加工精度を容易に実現可能なプランジャーと摺動部との間に摺動抵抗を発生させる構成としたため、プランジャーの進退動作時における摺動抵抗を均一なものとすることができる上、プランジャーと摺動部との接触面積も少なくすることができる。したがって、従来のように磨耗等による経時的変化を生じにくく、長期間にわたって良好な分注精度を維持することが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態3によれば、プランジャーをリニアモータ等の直接駆動の駆動部によって駆動することにより、高応答の分注装置を実現することができ、1μLよりも少ない微量の液体の分注を精度よく実現することが可能となる。特に、本実施の形態3に係る分注装置は、プランジャーと摺動部との摺動抵抗の経時的変化が少ない構成を有しているため、負荷抵抗の変化に敏感なリニアモータを用いても、安定した吐出を実現することができる。
【0056】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜3を詳述してきたが、本発明はそれらの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。すなわち、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る分注装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る分注装置の一部であるシリンダーの構成を示す部分拡大図である。
【図3】図2に示す注入軸を含む水平面を切断面としたときの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る分注装置における微量分注の実験例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置要部の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る分注装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る分注装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3 分注装置
11 ノズル
12 シリンジ
12a シリンダー
12b、12d、12e プランジャー
12c 摺動部
12dL ラック
13、204 制御部
14 電磁弁
15 ポンプ
16 タンク
17 ノズル駆動部
18、28、38 プランジャー駆動部
19 電磁弁駆動部
51 検体容器
61 試薬容器
71 反応容器
100 自動分析装置
101 測定ユニット
102 検体移送部
103 試薬容器保持部
104 反応容器保持部
105 検体分注部
106 試薬分注部
107 攪拌部
108 測光部
109 反応容器洗浄部
121 吐出口
122 注入口
181 固定部
182 ボールねじ
183、282 回転モーター
201 データ処理ユニット
281 ピニオン
282a 増速用ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するシリンダーと、
前記シリンダーの内径よりも小さい径を有し、直接駆動または増速駆動を行う駆動部によって前記シリンダー内部で進退動作させられ、分注対象の液体を外部へ吐出する圧力を発生するプランジャーと、
前記シリンダーと前記プランジャーとの間に介在し、前記プランジャーを摺動自在に挿通する摺動部と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記摺動部は、弾性部材が埋め込まれた樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記摺動部は、前記シリンダーと一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記分注対象の液体を外部へ吐出するための前記プランジャーの前記シリンダーへの進入動作を40msec以内に完了させることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項5】
前記駆動部は、リニアモーターを有することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項6】
検体を分注する検体分注部と、試薬を分注する試薬分注部とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
前記検体分注部または前記試薬分注部は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分注装置を用いてそれぞれ構成されたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−134159(P2008−134159A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320733(P2006−320733)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】