説明

分版条件決定装置、方法及びプログラム

【課題】局所領域毎に画像が最適化された印刷物を形成可能な分版条件決定装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】複数の画素から注目画素102を抽出し、注目画素102の色と注目画素102の少なくとも1つの周辺画素104の各色との配置関係下における、注目画素102に与える視覚的効果の影響度(σ、EV)を推定し、注目画素102内におけるインク22の総使用量を推定する。視覚的効果の影響度(σ、EV)と、インク22の総使用量とに基づいて、注目画素102での分版条件SCfixを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定する分版条件決定装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インクジェット技術の飛躍的進歩に伴い、インクジェット方式の画像形成装置による高速・高画質を両立したカラー大判印刷が可能になりつつある。インクジェット方式では、記録媒体上に複数種のインク(例えばCMYKインク)の液滴を吐出して多数のドットを形成することで、印刷物を得ることができる。この装置は、特にサイン・ディスプレイ用途において幅広い分野で用いられ、例えば、店頭POP(Point Of Purchase)や壁面ポスター、屋外広告・看板等の印刷にも適用可能である。この場合、コンテンツの種類には、テキストのみならず、自然画、イラスト、グラフ、コンピュータグラフィクス等があり、多岐にわたる。そこで、入力画像信号の局所的な特徴からコンテンツの種類を判別し、それに適した色変換を行うための画像処理技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の画素からなるブロック内の各濃度の関係から、文字・網点領域(あるいは下地・印画紙領域)をそれぞれ判別し、各領域に適したLUT(Look Up Table)を選択する装置及び方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、入力画像データから文字領域、写真領域及び網点領域を分離判定し、各領域に適した階調特性を段階的・連続的に変化させる装置及び方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4197346号公報
【特許文献2】特開平8−65514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、同種類のコンテンツであっても、画像によって、色分布や空間周波数分布がそれぞれ異なる。特許文献1及び2の装置及び方法では、判別された各領域に一律の色変換処理を施すにとどまり、更なる最適化の余地があった。
【0007】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、局所領域毎に画像が最適化された印刷物を形成可能な分版条件決定装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分版条件決定装置は、n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定する装置であって、前記複数の画素から注目画素を抽出する注目画素抽出部と、前記注目画素抽出部により抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部と、前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定する使用量推定部と、前記影響度推定部により推定された前記視覚的効果の影響度と、前記使用量推定部により推定された前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定する分版条件決定部とを有することを特徴とする。
【0009】
このように、抽出された注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部を設けたので、周辺画素を含む巨視的レベルでの画像の特性を把握できる。また、注目画素内におけるn種類の色材の総使用量を推定する使用量推定部を設けたので、注目画素単体での微視的レベルでの画像の特性を把握できる。換言すれば、巨視的レベル及び微視的レベルの双方の画像特性に基づいて分版条件を決定可能であり、局所領域毎に画像が最適化された印刷物を形成できる。
【0010】
また、前記視覚的効果の影響度には、人間の視覚における、空間周波数応答特性、色分解能、明度対比効果、彩度対比効果、色相対比効果、及び補色対比効果のうち少なくとも1つが含まれることが好ましい。
【0011】
さらに、前記分版条件決定部は、前記第1色信号における前記注目画素の色が、前記第2色信号における前記注目画素の色に、デバイス非依存色空間上で略一致するように前記分版条件を決定することが好ましい。
【0012】
さらに、前記影響度推定部は、前記画像形成装置の出力解像度に応じて異なる数の前記周辺画素を用いて、前記視覚的効果の影響度を推定することが好ましい。
【0013】
さらに、前記分版条件決定部は、前記画像形成装置の出力特性及び前記第1色信号に基づいて前記影響度推定部によりそれぞれ推定された前記視覚的効果の影響度である、基準分版条件の下での基準影響度と、比較分版条件の下での比較影響度とを比較することで前記比較分版条件の適否を判別する適否判別部を備えることが好ましい。
【0014】
さらに、前記影響度推定部に供給しようとする前記比較分版条件を前記適否判別部による判別結果に応じて変更する分版条件変更部を有することが好ましい。
【0015】
さらに、前記分版条件決定部は、分版条件に対する所定の適合条件を設定する適合条件設定部をさらに備え、前記適合条件設定部により設定された前記適合条件に従って、前記分版条件変更部による前記比較分版条件の変更、前記影響度推定部による前記視覚的効果の影響度の推定、及び前記適否判別部による適否の判別を順次繰り返して前記分版条件を決定することが好ましい。
【0016】
さらに、前記影響度推定部は、人間の視覚応答特性に応じた粒状度を用いて前記視覚的効果の影響度を推定することが好ましい。
【0017】
さらに、前記影響度推定部は、前記画像形成装置の出力特性に基づいて前記出力画像の色再現を模擬する模擬画像を作成する模擬画像作成部と、前記模擬画像作成部により作成された前記模擬画像に基づいて前記粒状度を算出する粒状度算出部と、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
さらに、前記模擬画像作成部は、前記第1色信号よりも高い解像度を有する前記模擬画像を作成することが好ましい。
【0019】
さらに、前記粒状度算出部は、前記模擬画像の画素毎に前記出力画像の測色値をそれぞれ予測し、各前記測色値に基づいて前記粒状度を推定することが好ましい。
【0020】
さらに、前記影響度推定部は、前記出力画像に関する少なくとも1つの画像評価値と、前記粒状度とを用いて前記視覚的効果の影響度を推定することが好ましい。
【0021】
さらに、前記少なくとも1つの画像評価値には、前記n種類の色材の総使用量が含まれることが好ましい。
【0022】
さらに、前記少なくとも1つの画像評価値には、ジャギーの視認度を定量化した評価値が含まれることが好ましい。
【0023】
本発明に係る分版条件決定方法は、n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定する方法であって、前記複数の画素から注目画素を抽出するステップと、抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定するステップと、前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定するステップと、それぞれ推定された前記視覚的効果の影響度と、前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定するステップとを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るプログラムは、n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定するためのプログラムであって、コンピュータを、前記複数の画素から注目画素を抽出する注目画素抽出部、前記注目画素抽出部により抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部、前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定する使用量推定部、前記影響度推定部により推定された前記視覚的効果の影響度と、前記使用量推定部により推定された前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定する分版条件決定部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る分版条件決定装置、方法及びプログラムによれば、抽出された注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定するようにしたので、周辺画素を含む巨視的レベルでの画像の特性を把握できる。また、注目画素内におけるn種類の色材の総使用量を推定するようにしたので、注目画素単体での微視的レベルでの画像の特性を把握できる。換言すれば、巨視的レベル及び微視的レベルの双方の画像特性に基づいて分版条件を決定可能であり、局所領域毎に画像が最適化された印刷物を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態に係る分版条件決定装置としての画像処理装置を組み込んだ画像形成システムの概略説明図である。
【図2】図1に示す画像処理装置の電気的な概略ブロック図である。
【図3】図2に示す分版条件設定部の詳細な機能ブロック図である。
【図4】図1に示す画像処理装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図5】図5Aは、第1色信号が表す画像を可視化した模式図である。図5Bは、図3の注目画素抽出部により注目画素を抽出した結果を表す模式図である。
【図6】図4のステップS5及びS7における詳細フローチャートである。
【図7】図7A〜図7Cは、第1色信号の画像領域中の第1演算領域において、画像の印刷濃度を予測する方法を表す概略説明図である。
【図8】図8A〜図8Cは、第1色信号の画像領域中の第2演算領域において、画像の印刷濃度を予測する方法を表す概略説明図である。
【図9】物理量としてのRMSと、心理物理量としての粒状度との対応関係を例示するグラフである。
【図10】図10Aは、各分版処理前におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図10Bは、GCR分版処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図10Cは、IGCR分版処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。
【図11】図11Aは、グレー系統の色に対する基準分版テーブルを用いた分版処理結果を例示するグラフである。図11Bは、グレー系統の色に対するGCR分版テーブルを用いた分版処理結果を例示するグラフである。図11Cは、グレー系統の色に対するIGCR分版テーブルを用いた分版処理結果を例示するグラフである。
【図12】第1変形例に係る分版条件設定部の詳細な機能ブロック図である。
【図13】第1変形例に係る画像処理装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図14】図14Aは、第1色信号が表す画像を可視化した模式図である。図14Bは、画像領域を分割した結果を表す模式図である。図14Cは、所定の分割領域の構成を説明する模式図である。
【図15】図15Aは、基準分版条件の下での第1色信号の粒状度マップを表すグラフである。図15Bは、比較分版条件の下での第1色信号の粒状度マップを表すグラフである。
【図16】第3変形例に係る分版処理方法を示す概略説明図である。
【図17】図16に示す分版条件設定部の詳細な機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る分版条件決定方法についてそれを実施する分版条件決定装置及び画像形成システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書において、画像を形成することを「印刷」という場合がある。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る分版条件決定装置としての画像処理装置12を組み込んだ印刷システム10(画像形成システム)の概略説明図である。印刷システム10は、画像処理装置12と、画像形成装置14と、DTP(Desktop Publishing)装置16と、データベースサーバ18とを基本的に備える。画像処理装置12、DTP装置16及びデータベースサーバ18は、有線又は無線によって相互に電気的に接続されている。
【0029】
画像処理装置12は、外部装置からの入力画像データ(デバイス色信号又はページ記述データ)を、画像形成装置14での印刷に適したデバイス色信号に変換する。また、画像処理装置12は、変換された前記デバイス色信号を画像形成装置14側に出力する。ここで、デバイス色信号とは、デバイス依存データで定義された色信号を意味し、例えば、4色(CMYK)或いは3色(RGB)のカラーチャンネルを有するラスタ形式データ(TIFF、ビットマップ、RAW等)である。また、画像形成装置14に供給されるデバイス色信号として、任意のヘッダを付加した独自のフォーマットデータを用いてもよい。
【0030】
画像形成装置14は、画像処理装置12に電気的に接続されている。この接続には、例えば、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェースや、セントロニクス等のパラレルインターフェースを適用することができる。
【0031】
画像形成装置14は、図示しないメディア(記録媒体)を所定方向に搬送させながら、記録ヘッド20からインク滴を吐出させることで前記メディア上に画像を形成する、いわゆるインクジェットプリンタである。前記メディアの基材には、合成紙・厚紙・アルミ蒸着紙等の紙類、塩化ビニル・PET等の樹脂やターポリン等を用いることができる。
【0032】
記録ヘッド20は、色が異なる4種類の色材{Cインク22c(有彩色材)、Mインク22m(有彩色材)、Yインク22y(有彩色材)、Kインク22k(無彩色材)}の液滴を吐出するための4つのラインヘッド24c、24m、24y、24kで構成される。以下、Cインク22c、Mインク22m、Yインク22y、Kインク22kを総称してインク22という場合がある。
【0033】
各ラインヘッド24c、24m、24y、24kには、前記メディアの幅方向に沿って配設された図示しない複数のノズルが形成されている。Cインク22c、Mインク22m、Yインク22y、Kインク22kは、容器としてのインクタンク26c、26m、26y、26kにそれぞれ収容されている。ラインヘッド24cは、インクタンク26cから供給されたCインク22cを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24mは、インクタンク26mから供給されたMインク22mを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24yは、インクタンク26yから供給されたYインク22yを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24kは、インクタンク26kから供給されたKインク22kを前記複数のノズルを介して吐出させる。
【0034】
なお、記録ヘッド20によるインク滴の吐出機構として、種々の方式を採り得る。例えば、ピエゾ素子(圧電素子)等で構成されるアクチュエータの変形によってインク滴を吐出する方式を適用してもよい。また、ヒータ等の発熱体を介してインク22を加熱することで気泡を発生させ、その圧力でインク滴を吐出するサーマルジェット方式を適用してもよい。また、記録ヘッド20は、ラインヘッドに限定されることなく、前記メディアの幅手方向に往復走査しながら画像を形成させるマルチパス方式であってもよい。
【0035】
画像形成装置14は、各ラインヘッド24c、24m、24y、24kを吐出制御するための制御信号を生成する。画像形成装置14は、この制御信号の生成のため、分版処理、解像度変換処理、ハーフトーン処理等の各種画像処理を実行可能である。以下、本明細書中における「分版処理」とは、m(mは、m≧1を満たす整数である。)種類の色版からなる第1色信号を、n(nは、n≧2を満たす整数である。)種類の色版からなる第2色信号に変換する処理を意味する。第1色信号及び/又は第2色信号は、デバイス依存データで定義される色信号であってもよいし、デバイス非依存データで定義される色信号であってもよい。また、C(シアン)及びLC(ライトシアン)のように、同系色であって濃度が異なる色に関して、それぞれ異なる色版として区別してもよい。
【0036】
画像形成装置14は、前記分版処理に際して、画像処理装置12から供給された第1色信号を、画像(印刷物28)の形成に供される第2色信号に分版する。演算のデータ量及び処理時間の観点から、m≧2、及び/又は、m<nである場合、本発明においてより好ましい。一例として、第1色信号がRGB色信号(m=3)であり、且つ、第2色信号がCMYK色信号(n=4)である場合が挙げられる。
【0037】
また、第2色信号は、画像形成装置14での各インク22の使用量とそれぞれ対応付けられている。この対応付けは、カラーチャンネル毎に任意に設計することができる。例えば、最低の階調レベルでは使用量0%を割り当て、最高の階調レベルでは使用量100%を割り当て、その中間レベルでは使用量を線形的に割り当ててもよい。
【0038】
DTP装置16は、文字、図形、絵柄や写真等から構成される素材を編集可能であり、該素材をページ毎に配置することで、ページ記述言語(以下、PDLという。)による電子原稿を生成する。ここで、PDLとは、印刷や表示等の出力単位である「ページ」内で文字、図形等の書式情報、位置情報、色情報(濃度情報を含む)等の画像情報を記述する言語である。DTP装置16は、PDL形式の電子原稿に対してラスタライズ処理を施す。このラスタライズ処理には、PDL形式からラスタ形式に変換するラスタライズ処理と、ICC(International Color Consortium)プロファイルを用いた色変換処理とが含まれる。
【0039】
データベースサーバ18は、電子原稿のジョブチケット{例えば、JDF(Job Definition Format)ファイル}、色見本データ、ターゲットプロファイル、又は画像形成装置14及びメディアの組合せに適した印刷プロファイル等のデータの登録・管理を行う装置である。
【0040】
図2は、図1に示す画像処理装置12の電気的な概略ブロック図である。図3は、図2に示す分版条件設定部40の詳細な機能ブロック図である。
【0041】
画像処理装置12は、第1インターフェース30(色信号入力部)と、メモリ32と、制御部34と、第2インターフェース36とを備える。メモリ32には、本実施の形態に係る分版条件決定装置として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0042】
第1インターフェース30は、外部装置からの電気信号を送受信する。例えば、DTP装置16で編集・作成されたデバイス色信号やPDLデータを取得する。また、データベースサーバ18で登録・管理されたICCプロファイル等の各種情報を取得する。
【0043】
第2インターフェース36は、外部装置に電気信号を送受信する。例えば、入力されたデバイス色信号、本発明に係る分版条件決定方法により決定された分版条件に関する各種情報(以下、分版条件情報という。)等を画像形成装置14に供給する。
【0044】
ここで、分版条件情報には、例えば、入出力された色信号の色版の種類や数、分版テーブル(変換LUT)、変換行列の係数、変換式の形・係数、学習モデルの変数等が含まれる。以下、分版テーブルを用いて分版処理を行う実施形態を中心に説明する。
【0045】
CPU等の情報処理装置で構成される制御部34は、ラスタライズ処理部38と、分版条件設定部40とを備えている。
【0046】
ラスタライズ処理部38は、DTP装置16と同様のラスタライズ機能を有する。ラスタライズ処理部38は、入力データの種類に応じて該入力データにラスタライズ処理を施す。なお、デバイス色信号が第1インターフェース30側に直接入力された場合、本構成要素によるラスタライズ処理は不要である。
【0047】
分版条件設定部40は、第1色信号を第2色信号に色変換するための分版条件SCfixを設定する。分版条件設定部40は、評価条件指定部42と、演算領域抽出部44と、分版処理部46と、影響度推定部48と、色材使用量推定部50(使用量推定部)と、分版条件決定部52とを備える。
【0048】
図2及び図3に示すように、評価条件指定部42は、印刷物28として形成される予定の画像を総合的に評価するための所定の分版条件を指定する。評価条件指定部42は、基準となる分版条件(以下、基準分版条件SCsという。)を決定する基準分版条件決定部60と、比較対象となる分版条件(以下、比較分版条件SCcという。)を変更する分版条件変更部62(後述する、分版条件作成部64及び等色判定部66を含む。)とを備える。なお、本実施の形態では、評価条件指定部42は、人間の視覚応答特性に応じた粒状度(以下、単に粒状度σという場合がある。)に基づいて画像を評価する。
【0049】
演算領域抽出部44は、影響度推定部48による推定演算の対象である演算領域106(図5B参照)を、第1色信号が表す画像領域100の中から抽出する。演算領域抽出部44は、画像領域100内の複数の画素から注目画素102(同参照)を抽出する注目画素抽出部68と、注目画素抽出部68により抽出された注目画素102の周辺に配される少なくとも1つの周辺画素104(同参照)を抽出する周辺画素抽出部70とを備える。
【0050】
分版処理部46は、評価条件指定部42で指定された1つの分版条件(基準分版条件SCs又は比較分版条件SCc)に基づいて、第1色信号(例えば、RGB色信号)を第2色信号(例えば、CMYK色信号)に分版する。
【0051】
影響度推定部48は、第1色信号(又は第2色信号)における注目画素102の色と、周辺画素104の各色との配置関係下における、注目画素102に与える視覚的効果の影響度(以下、単に影響度という場合がある。)を推定する。影響度推定部48は、演算領域抽出部44により抽出された演算領域106(図5B参照)に対応する第1色信号、画像形成装置14の出力特性(詳細は後述する。)及び1つの分版条件に基づいて印刷物28の色再現を模擬する模擬画像を作成する模擬画像作成部72と、該模擬画像作成部72により作成された模擬画像に基づいて粒状度σを算出する粒状度算出部74{後述する、測色値変換部76、物理量算出部78及び視覚補正部80を含む。}とを備える。
【0052】
以下、両者の区別のため、基準分版条件SCs下で算出された粒状度σを「基準粒状度σs」といい、比較分版条件SCc下で算出された粒状度σを「比較粒状度σc」という場合がある。
【0053】
色材使用量推定部50は、分版処理部46から供給された第2色信号に基づいて、注目画素102内におけるインク22の総使用量を推定する。
【0054】
分版条件決定部52は、色材使用量推定部50により推定されたインク22の総使用量と、影響度推定部48により推定された視覚的効果の影響度(粒状度σ)とに基づいて、注目画素102での分版条件SCfixを決定する。分版条件決定部52は、比較分版条件SCcの適合条件を設定する適合条件設定部82と、該適合条件設定部82により設定された適合条件に従って比較分版条件SCcの適否を判別する適否判別部84と、適否判別部84による判別結果に応じて現時点でのインク22の総使用量に対する調整量を決定する調整量決定部86とを備える。
【0055】
メモリ32は、基準分版条件SCsに対応する基準分版テーブル54と、第1色信号に対応する各色を定義するための複数種のターゲットプロファイル56と、第2色信号から所望の各色を再現するための複数種の出力プロファイル58とを記録する。メモリ32は、その他、第1色信号、第2色信号、本発明に係る分版条件決定の演算に要する各種情報を記録してもよい。
【0056】
図1に示す画像形成装置14のように、複数の有彩色材であるCインク22c、Mインク22m、Yインク22yを組み合わせることで、無彩色材であるKインク22kによる印刷物28上の色を再現可能である場合、GCR(Gray-Component Replacement)分版処理及びIGCR(Inverse Gray-Component Replacement)分版処理は効果的である。なお、GCR分版処理及びIGCR分版処理の詳細については後述する。
【0057】
本実施の形態に係る画像処理装置12は以上のように構成される。続いて、画像処理装置12の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0058】
先ず、画像処理装置12は、第1インターフェース30を介して、第1色信号を入力する(ステップS1)。例えば、2つの入力形態が想定される。
【0059】
第1の形態として、DTP装置16は、所定の編集処理を経て作成したPDL形式の電子原稿に対し、さらにラスタライズ処理を施すことで、デバイス色信号(例えば、RGB色信号)を予め作成しておく。そして、画像処理装置12は、第1インターフェース30を介して、DTP装置16から供給されたデバイス色信号を入力する。
【0060】
第2の形態として、DTP装置16は、所定の編集処理を経てPDL形式の電子原稿を作成し、該電子原稿をPDL形式のまま画像処理装置12側に供給する。その後、ラスタライズ処理部38は、メモリ32に格納されたターゲットプロファイル56、出力プロファイル58等のデータを読み出し、入力された電子原稿(PDL形式)に対してラスタライズ処理を施すことで、デバイス色信号(例えば、RGB色信号)を作成する。
【0061】
次いで、画像処理装置12は、第1インターフェース30を介して、画像形成装置14の出力特性を取得する(ステップS2)。ここで、画像形成装置14の出力特性とは、第1色信号に基づく画像出力に関わる種々の特性を意味し、例えば、形成されるドットの種類(色、サイズ、形状等)や出力解像度等の物理的特性のみならず、前記物理的特性に対応付けられた各種情報(画像形成装置14の種類、図示しないメディアの種類等)が含まれる。この取得の際は、前記出力特性を画像形成装置14から直接取得してもよいし、予め登録・管理されたデータベースサーバ18から取得してもよい。
【0062】
次いで、評価条件指定部42は、評価対象である分版条件として基準分版条件SCsを指定する(ステップS3)。例えば、基準分版条件決定部60は、メモリ32(図2参照)から基準分版テーブル54を読み出し、これを基準分版条件SCsとして決定する。
【0063】
次いで、注目画素抽出部68は、第1色信号が表す複数の画素のうち、未だ抽出されていない注目画素102を1つ抽出する(ステップS4)。
【0064】
図5Aは、第1色信号が表す画像を可視化した模式図である。画像領域100には、女性の上半身が略中央に描かれた自然画が表記されている。これに対し、図5Bは、注目画素抽出部68により注目画素102を抽出した結果を表す模式図である。ここで、注目画素102は、ハッチングが付された最小単位の矩形領域(1つの画素)に相当する。
【0065】
次いで、影響度推定部48(粒状度算出部74)は、基準分版条件SCsの下での画像の粒状度σsを推定する(ステップS5)。この推定方法について、図6のフローチャートを参照しながらさらに詳細に説明する。
【0066】
先ず、周辺画素抽出部70は、第1色信号の画像領域100の中から、注目画素102の周辺画素104を少なくとも1つ抽出する(ステップS51)。図5B例では、注目画素102を中心とする横方向に3画素分、縦方向に5画素分の矩形領域を演算領域106として予め決定しておく。この場合、周辺画素抽出部70は、演算領域106内の15画素から注目画素102を除いた残余の14画素を周辺画素104として抽出する。
【0067】
なお、周辺画素抽出部70は、数又は位置を一定にして周辺画素104を抽出してもよいし、必要に応じてこれらを変更してもよい。例えば、周辺画素抽出部70は、画像形成装置14の出力解像度に応じて(具体的には、演算領域106の出力サイズが略一定になるように)、周辺画素104(すなわち、演算領域106内の全画素)の数を変更してもよい。
【0068】
次いで、模擬画像作成部72は、画像形成装置14の出力特性を用いて、演算領域106における模擬画像を作成する(ステップS52)。模擬画像の作成に先立ち、分版処理部46は、基準分版条件SCsの下で、演算領域106に対応する第1色信号に対して分版処理を施し、得られた第2色信号の一部を影響度推定部48側に供給する。そして、模擬画像作成部72は、画像形成装置14で実際に施される各種処理を模擬することで、印刷物28の画像の色を擬似的に再現する。前記各種処理には、解像度変換処理、ハーフトーン処理、各色版の重ね合わせ処理、ドット形成過程等が含まれる。模擬画像のデータ定義は、後述するRMSの算出方法(ステップS54参照)に応じて予め決定しておく。本実施の形態では、基準分版条件SCsの下でCMYK色信号(第2色信号)に分版し、画像形成装置14の出力解像度と同一の解像度(例えば、1200dpi)を有する模擬画像を作成する。なお、画像の再現性を向上させるため、模擬画像の解像度は、第1色信号よりも高い解像度であることが好ましく、更には、画像形成装置14よりも高い解像度であってもよい。
【0069】
次いで、測色値変換部76は、演算領域106内の画素(注目画素102及び少なくとも1つの周辺画素104)毎に出力画像の測色値を予測し、模擬画像のデータ定義を変換する(ステップS53)。ここで、測色値とは、三刺激値XYZ、均等色空間上の各値L等のみならず、波長に対する光学物性値の分布、例えば、分光放射分布(分光分布)、分光感度分布、分光反射率又は分光透過率が含まれる。この測色値の種類は問わないが、本実施の形態では印刷濃度を採用している。
【0070】
画素毎の印刷濃度は、種々の数理モデルに基づく関係から予測することができる。この予測精度を高めるべく、出力プロファイル58等を用いて、数理モデルの最適化を予め行ってもよい。この数理モデルは、例えば、線形モデルでも非線形モデルでもよく、LUT等のデータ構造で関連付けてもよく、モンテカルロ法、ニューラルネットワーク、ブースティングアルゴリズム、遺伝的アルゴリズム等を適用してもよい。なお、画像形成装置14の出力特性の差異、例えば、インク22の種類又は図示しないメディアの種類に応じて、予測方法を種々変更してもよい。
【0071】
例えば、図7Aに示すように、演算領域抽出部44は、画像領域100の左上隅の背景領域(第1演算領域106a)を抽出したとする。図7Bは、図7Aに示す第1演算領域106aの矢印上に存在する第1注目画素102aの拡大正面図である。このように、複数の色を有するドットが複数形成されることで、巨視的には単一の色が再現される。
【0072】
図7Cは、図7Aに示す矢印方向に沿った印刷濃度のプロファイルである。本図に示すプロットは、図7Bの第1注目画素102aにおける位置及び印刷濃度に相当する。一点鎖線で示す曲線は、実際のプロファイル(実線)に対し所定の幅で移動平均して得られた平滑化曲線108aである。平滑化曲線108aは、印刷濃度の平均値110aに略一致する。このように、第1演算領域106aでの印刷濃度は、巨視的には平坦であり、微視的には略周期的に変動する特性を有している。
【0073】
一方、図8Aに示すように、演算領域抽出部44は、画像領域100の略中央部の顔領域(第2演算領域106b)を抽出したとする。図8Bは、図8Aに示す第2演算領域106bの矢印上に存在する第2注目画素102bの拡大正面図である。図8Cは、図8Aに示す矢印方向に沿った印刷濃度のプロファイルである。
【0074】
図8Cにおいて、破線で示す曲線は、実際のプロファイル(実線)に対して、図7Cの場合と同一の幅で移動平均して得られた平滑化曲線108bである。また、一点鎖線で示す直線は、印刷濃度の平均値110bである。このように、第2演算領域106bでの印刷濃度は、巨視的には上に凸状に緩やかに変動し、微視的には図7Cと同等の振幅及び周期で変動する特性を有している。
【0075】
以下、観察者である人間の視覚的効果の影響について、図7A〜図8C例に沿って説明する。人間の視覚は、中心位置のみならず、その周辺領域も含めて平滑化して画像を認識する傾向がある。例えば、図7Aに示す第1演算領域106a内において、各周辺画素104aでの印刷濃度が巨視的に略均一である。このため、第1注目画素102aでの微視的な粒状度が、各周辺画素104aに比べて相対的に高い場合、観察者にとって、第1注目画素102aでのザラツキ感が際立って視認される傾向がある。
【0076】
一方、図8Aに示す第2演算領域106b内において、各周辺画素104bでの印刷濃度が巨視的に変動している。このため、第2注目画素102bの微視的な粒状度が、各周辺画素104aと比べて相対的に高い場合であっても、観察者にとって、第2注目画素102bでのザラツキ感が視認されにくい傾向がある。
【0077】
次いで、図6に戻って、物理量算出部78は、演算領域106内における印刷濃度でのRMS(Root Mean Square)、すなわち標準偏差を算出する(ステップS54)。ここでは、演算領域106a、106b全体の平均値110a、110b(図7C及び図8C参照)を除去した状態でのRMSを算出する。すなわち、算出されるRMSは、平滑化曲線108a、108b(図7C及び図8C参照)の傾向をも加味した数値である。
【0078】
次いで、視覚補正部80は、印刷濃度でのRMSに対して視覚補正することで、粒状度σを取得する(ステップS55)。粒状度σは、画像の視認性と対応付けられた心理物理量であり、観察者(人間)が感受する粒状感に対して略線形的な特性を有する。以下、本明細書において、粒状度σは、この値が小さくなるほど粒状性が良好であるものとする。
【0079】
図9は、物理量としてのRMSと、心理物理量としての粒状度σとの対応関係を例示するグラフである。このグラフによれば、RMSの値が小さい領域において曲線の勾配が急俊である。そして、RMSの値が大きくなるにつれて勾配は徐々に緩やかになる。例えば、2つの画像の粒状度σの見え方の違いが同じ(Δσ)であっても、その見え方の違いに対応するRMSの差分値(ΔRMS1、ΔRMS2)が異なっている。すなわち、本図に例示する変換曲線を用いてRMSを補正することで、RMSと粒状度σとが適切に対応付けられる。
【0080】
なお、この変換曲線は、画像の属性(反射画像/透過画像)、光源の種類、画像の観察距離等に応じて種々変更してもよい。また、ステップS54で算出したRMSの物理量の種類に応じて変更してもよい。
【0081】
このようにして、影響度推定部48(粒状度算出部74)は、基準分版条件SCs下での基準粒状度σsを推定する(図4のステップS5)。
【0082】
図4に戻って、評価条件指定部42は、基準分版条件SCsと同一の又は異なる分版条件、すなわち比較分版条件SCcを指定する(ステップS6)。
【0083】
評価条件指定部42は、予め決定された分版条件の変更方針に従って比較分版条件SCcを設定する。分版条件の変更方針とは、例えば、画質を重視するか、コスト(インク22の総使用量の低減)を重視するかの方針である。また、評価条件指定部42は、基準粒状度σsの値に応じて、分版条件の変更方針を決定してもよい。
【0084】
以下、GCR分版処理及びIGCR分版処理の概要について、図10A〜図11Cを参照しながら説明する。
【0085】
図10Aは、基準分版処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図10Bは、GCR分版処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図10Cは、IGCR分版処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。
【0086】
図10Bでは、図10Aと比べて、Cインク22c、Mインク22m及びYインク22yをそれぞれΔC、ΔM及びΔYだけ減量させている。そして、各インク22の減量に起因する濃度低下を相殺するため、Kインク22kをΔKだけ増量させている。これにより、印刷物28(図1参照)上での色再現を略一定にしつつも、(ΔC+ΔM+ΔY−ΔK)だけインク22の総使用量を減らすことができる。
【0087】
図10Cでは、図10Aと比べて、Cインク22c、Mインク22m及びYインク22yをそれぞれΔC、ΔM及びΔYだけ増量させている。そして、各インク22の増量に起因する濃度上昇を相殺するため、Kインク22kをΔKだけ減量させている。これにより、印刷物28(図1参照)上での色再現を略一定にしつつも、(ΔC+ΔM+ΔY−ΔK)だけインク22の総使用量が増える。これにより、形成されるドットの被覆率が高くなることで、総じて粒状性が抑制される。
【0088】
続いて、GCR分版処理に使用されるGCR分版テーブル、及び、IGCR分版処理に使用されるIGCR分版テーブルの特性について、基準分版テーブル54と対比させて説明する。図11A〜図11Cは、グレー系統の色(R=G=Bである色)に対する各分版テーブルを用いた分版処理結果を表すグラフである。各グラフの横軸はグレーの階調レベル(単位%)を表しており、各グラフの縦軸は各分版処理後の色信号値(単位%)を表す。
【0089】
図11Aは、基準分版テーブル54を用いた分版処理結果を例示するグラフである。このグラフは、等値変換(Y=X)ではなく、勾配が1よりも僅かに小さい直線を示す。これは、インク22の総使用量を400%未満に制限しているためである。グレーの各階調レベルにおいて、各インク22の使用量は同じである。
【0090】
図11Bは、GCR分版テーブルを用いた分版処理結果を例示するグラフである。K値に関して、0≦K≦Th1の範囲では、等値変換(Y=X)である。K≧Th1では曲線の勾配が急になり、色信号値が高い範囲において100(%)に近い状態で飽和する。他色(例えばC値)に関して、0≦C≦Th1の範囲では、等値変換(Y=X)である。K≧Th1では曲線の勾配が緩やかになり、最大範囲(100%)まで単調に増加する。Th1を超える範囲では、Kの比率が、他色(C、M、Y)の比率よりも大きくなっている。つまり、図11Bから諒解されるように、GCR変換テーブルは、Th1〜100(%)の範囲において、インク22の総使用量を低減させる効果を有する。
【0091】
図11Cは、IGCR分版テーブルを用いた分版処理結果を例示するグラフである。K値に関して、0≦K≦Th2の範囲では、常に0(%)である。K≧Th2では非0となり、急激に増大する。他色(例えばC値)に関して、0≦C≦Th2の範囲では、上に凸状の単調増加関数であり、C=Th2で最大値(100%)となる。そして、K≧Th2では緩やかに減少する。全範囲にわたって、Kの比率が、他色(C、M、Y)の比率よりも小さくなっている。つまり、図11Cから諒解されるように、IGCR分版テーブルは、0〜100(%)の範囲において、インク22の総使用量を増加させる効果を有する。
【0092】
例えば、粒状度σの悪化(上昇)を許容範囲内に抑えつつも、インク22の総使用量を可能な限り低減させる方針の下、分版条件作成部64は、GCR分版テーブルを新たに作成する。そして、評価条件指定部42は、分版条件作成部64により作成されたGCR分版テーブルを、比較分版条件SCcとして指定する(ステップS6)。
【0093】
次いで、影響度推定部48(粒状度算出部74)は、比較分版条件SCc下での画像の粒状度σ(比較粒状度σc)を推定する(ステップS7)。具体的な推定方法は、ステップS5の場合と同様であるが、基準分版条件SCsに代替して比較分版条件SCcを用いる点が異なる。
【0094】
次いで、適否判別部84は、ステップS5で推定された基準粒状度σsと、ステップS7で推定された比較粒状度σcとを比較・評価する(ステップS8)。例えば、適合条件設定部82により閾値Th(正値)が予め設定された場合、適否判別部84は、判別条件(−Th≦σc−σs≦Th)を満たすとき、比較分版条件SCcを適用可能であると判別する。一方、適否判別部84は、上記した判別条件を満たさない場合、比較分版条件SCcを適用不可であると判別する。
【0095】
次いで、適否判別部84は、現時点での比較分版条件SCcを採用するか否かを判別する(ステップS9)。適否判別部84は、ステップS8において適用可能と判別された比較分版条件SCcについての採否、すなわち、第1色信号に対する分版処理に実際に使用するか否かを判別する。
【0096】
採用しないと判別された場合、ステップS6に戻って、評価条件指定部42(分版条件変更部62)は、既に指定された比較分版条件SCcとは異なる新たな比較分版条件SCcを指定する(ステップS6)。指定に先立ち、調整量決定部86は、適否判別部84による判別結果に応じて、現時点(直近の比較分版条件SCc下)でのインク22の総使用量に対する調整量、例えば増減量を決定する。そして、分版条件作成部64は、分版条件決定部52からの不採用の旨の通知及び調整量に基づいて、比較分版条件SCcを作成する。
【0097】
なお、色再現特性を十分に担保するため、等色判定部66は、遂次作成された比較分版条件SCc(分版テーブル)によって、基準分版テーブル54と同等の色再現が可能であるか否かを判定するように構成してもよい。等色判定部66は、例えば、L座標系等のデバイス非依存色空間上での等色範囲(例えば、色差Δe<0.5)を予め定めておき、全部又は一部のガマット範囲において前記等色範囲に収まるか否かを判定する。これにより、分版条件決定部52は、第1色信号における注目画素102の色が、第2色信号における注目画素102の色に、デバイス非依存色空間上で略一致するように、分版条件SCfixを決定することができる。
【0098】
このように、比較分版条件SCcの指定・変更(ステップS6)、比較粒状度σcの推定(ステップS7)、及び、比較分版条件SCcの適否の判別(ステップS9)を順次繰り返すことで、適合条件設定部82により設定された適合条件に沿う最適な分版条件SCFfixを決定できる。なお、分版条件の探索アルゴリズムは上記手法に限られず、種々の手法を採り得ることはいうまでもない。
【0099】
次いで、分版条件決定部52は、最終的に採用された比較分版条件SCcを、分版条件CSfixとして決定する(ステップS10)。そして、制御部34は、分版条件CSfixに関する分版条件情報をメモリ32に一時的に記録させるとともに、必要に応じて分版処理の実行先(例えば、画像形成装置14)にこの分版条件情報を供給する。
【0100】
次いで、分版条件設定部40は、画像領域100内の全画素での分版条件SCfixが決定したか否かを確認する(ステップS11)。決定していない場合、ステップS4に戻って、全画素での分版条件SCfixが決定するまで、ステップS4〜S10を順次繰り返す。
【0101】
以上のように、抽出された注目画素102の色と注目画素102の少なくとも1つの周辺画素104の各色との配置関係下における、注目画素102に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部48を設けたので、周辺画素104を含む巨視的レベルでの画像の特性を把握できる。また、注目画素102内におけるインク22の総使用量を推定する色材使用量推定部50を設けたので、注目画素102単体での微視的レベルでの画像の特性を把握できる。換言すれば、巨視的レベル及び微視的レベルの双方の画像特性に基づいて分版条件SCfixを決定可能であり、局所領域毎に画像が最適化された印刷物28を形成できる。
【0102】
続いて、本実施の形態に係る分版条件設定部40の変形例について、図12〜図15を参照しながら説明する。なお、本実施の形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
[第1変形例]
本実施の形態では、単一の評価項目(画像の粒状度σ)を考慮して視覚的効果の影響度を推定している(図3の影響度推定部48を参照)。以下説明する第1変形例のように、粒状度σ以外の他の評価項目をも考慮に入れてもよい。
【0104】
図12に示すように、第1変形例に係る分版条件設定部120は、評価条件指定部42、演算領域抽出部44、分版処理部46、及び色材使用量推定部50のほか、注目画素102に与える視覚的効果の影響度を総合評価値EV(基準総合評価値EVs、比較総合評価値EVcを含む。)として推定する影響度推定部122と、該影響度推定部122により推定された総合評価値EVに基づいて分版条件を決定する分版条件決定部124とをさらに備える。
【0105】
影響度推定部122は、上記した模擬画像作成部72及び粒状度算出部74のほか、画像中の所定のオブジェクトを抽出してジャギーの視認性(発生程度)を定量化するジャギー視認度算出部126と、明度、彩度、色相、補色等の各種対比効果の影響度を定量化する対比効果算出部128と、印刷物28の生成に要するインク22のコストを算出する色材コスト算出部130と、前記粒状度算出部74等により算出された各値に基づいて総合評価値EVを算出する評価演算部132とを備えている。
【0106】
図13は、本変形例に係る分版条件設定部120を備える画像処理装置12の動作説明に供されるフローチャートである。本フローチャートは、図4と基本的には同様であるが、ステップS5A及びS7A(総合評価値EVの算出)並びにS8A(総合評価値EVの比較評価)の点が異なる。
【0107】
ステップS5Aにおいて、影響度推定部122は、粒状度σsを算出するのみならず、他の項目も併せて定量化する。例えば、ジャギー視認度算出部126は、印刷物28の特定のオブジェクトを抽出した後、そのオブジェクトのジャギーの視認度を推定し、第1の画像評価値に換算する。ここで、ジャギーとは、画像のエッジ部における接線方向の凹凸である。この定量化の際には、ラジェッドネス評価値等の指標を種々適用できる。
【0108】
また、対比効果算出部128は、注目画素102の色と、周辺画素104の色とを比較し、明度、彩度、色相、補色等の各種対比効果が発生し得るか否かを判別する。発生し得ると判別された場合、対比効果算出部128は、視覚的に悪影響が出ることを考慮して、減点した評価値(第2の画像評価値)を与える。さらに、色材コスト算出部130は、色材使用量推定部50から取得したインク22の総使用量に基づいて、印刷物28の形成に要するコストを推定した後、第3の画像評価値に換算する。
【0109】
その後、評価演算部132は、粒状度算出部74により得られた基準粒状度σsと、ジャギー視認度算出部126により得られた第1の画像評価値と、対比効果算出部128により得られた第2の画像評価値と、色材コスト算出部130により得られた第3の画像評価値とに基づいて、基準分版条件SCs下での基準総合評価値EVsを算出する(ステップS5A)。
【0110】
ステップS7Aにおいて、評価演算部132は、ステップS5Aと同様に、比較分版条件SCc下での比較総合評価値EVcを算出する。
【0111】
ステップS8Aにおいて、分版条件決定部124は、ステップS5Aで算出された基準総合評価値EVsと、ステップS7Aで算出された比較総合評価値EVcとを比較・評価する。その後、分版条件決定部124(図3の適否判別部84)は、現時点での比較分版条件SCcを採用するか否かを判別する(ステップS9A)。
【0112】
なお、影響度推定部122は、上記した粒状度、ジャギーの視認性、対比効果、インク22のコストのみならず、他の評価項目を考慮してもよい。また、評価演算部132は、種々の演算手法を用いて、総合評価値EVを算出してもよい。
【0113】
このように、分版条件設定部120は、粒状度σを少なくとも含む複数の評価値に基づいて分版条件SCfixを設定するように構成したので、入力された色信号に応じて、粒状性を少なくとも含む複数の項目(品質・品位等)を両立した印刷物28を形成できる。
【0114】
[第2変形例]
本実施の形態では、注目画素102(単一の画素)毎に分版条件SCfixを決定している(図3の影響度推定部48を参照)。以下説明する第2変形例のように、複数の画素で構成されるブロック単位で分版条件SCfixを決定してもよい。
【0115】
図14Aは、第1色信号が表す画像を可視化した模式図であり、図5Aと同じ図面である。これに対し、図14Bは、所定のブロック単位で画像領域100を分割した結果を表す模式図である。画像領域100は、同じサイズを有する36個の分割領域140にそれぞれ分割されている。なお、演算領域抽出部44は、画像領域100を任意の領域数及び領域サイズに分割してもよい。
【0116】
図14Cに示すように、1つのブロックは、縦方向に5画素、横方向に4画素20個のサイズを有する。例えば、左上隅の画素を注目画素142とすると、残余の画素(19個の画素)を周辺画素144とする。
【0117】
そして、粒状度算出部74は、分割領域140毎に推定された粒状度σを用いて、粒状度σの二次元分布である粒状度マップを作成する。以下、基準分版条件SCs下に算出された粒状度マップのことを基準粒状度マップGMs(基準粒状度)という。
【0118】
図15Aは、基準分版条件SCsの下における画像の粒状度マップ(基準粒状度マップGMs)を表すグラフである。なお、グラフのX軸及びY軸は、各分割領域140の位置を表している。この基準粒状度マップGMsは、画像領域100の各位置に応じた粒状度σの基準値に相当する。一方、図15Bは、比較分版条件SCcの下における画像の粒状度マップ(基準粒状度マップGMs)を表すグラフである。図15A及び図15Bを対比すると、画像領域100全体にわたって粒状度σが大きいことが諒解される。
【0119】
そして、適否判別部84(図3参照)は、比較分版条件SCcでの比較粒状度マップGMcが、許容範囲に収まっているか否かを判別する。適否判別部84は、例えば、すべての分割領域140に対して適否を判別してもよいし、一部の分割領域140に対して適否を判別してもよい。
【0120】
このように、粒状度マップ(基準粒状度マップGMs、比較粒状度マップGMc)を用いて分版条件の適否を判別することで、画像全体のバランスを考慮しながら分版条件SCfixを決定できる。
【0121】
[第3変形例]
本実施の形態では、入力されたデバイス依存データ(RGB色信号)を、別の種類のデバイス依存データ(CMYK色信号)に分版している。以下説明する第3変形例のように、本分版処理を、他の色変換処理と直列して実行してもよい。本変形例に係る分版条件設定部152について、図16及び図17を参照しながら説明する。
【0122】
図16に示すように、制御部34(図2参照)は、第0色信号(例えば、CMYK色信号)を第1色信号(例えば、L色信号)に変換する色変換処理部150と、第0色信号及び第1色信号に基づいて分版条件SCfixを設定する分版条件設定部152と、分版条件設定部152により設定された分版条件SCfixを用いて、色変換処理部150により変換された第1色信号を、第2色信号(例えば、CMYK色信号)に分版する分版処理部154とを備える。
【0123】
図17に示すように、分版条件設定部152は、分版条件設定部40(図3参照)と比べて、基準分版条件SCsを決定・評価するための構成要素を欠いている。具体的には、分版条件設定部152は、基準分版テーブル54、ターゲットプロファイル56、及び基準分版条件決定部60を要しない。その代わりに、影響度推定部48(又は、色材使用量推定部50)は、第0色信号を直接入力することで、基準粒状度σsを算出(又は、インク22の総使用量を推定)する構成を採っている。この場合における基準分版条件SCsは、第2色信号が第0色信号に一致する条件、すなわち、無変換処理に相当する分版条件である。
【0124】
粒状度算出部156は、本実施の形態(図6のステップS53〜S55参照)に係る評価手法とは別に、公知の評価手法を用いて粒状度σを算出してもよい。例えば、明度、色度等に関するノイズウィナースペクトルに対して、視覚の空間周波数特性(例えば、Dooley−ShawのVTF関数)を乗算した後、積分した値であってもよい。また、この値に平均明度に応じた補正を加えることで、主観評価との相関性が更に高まる。
【0125】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0126】
例えば、本実施の形態では、メモリ32に格納された複数の分版テーブルを選択するようにしたが、種々の方法を適用してもよい。例えば、評価条件指定部42は、設定の都度、分版テーブルを作成(又は補正)するようにしてもよい。
【0127】
また、デバイス色信号はCMYK(4つの色版)に限定されることなく、任意の色版の種類及び版数に設計変更できる。例えば、CMYKの標準インクと、LC、LM等の淡色やW(白色)等のオプションインクとを組み合わせてもよい。
【0128】
さらに、画像形成装置14は、インクジェットプリンタに限られず、メディア上に色材を付着させてドットを形成する方式であれば、本発明を適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0129】
10…印刷システム 12…画像処理装置
14…画像形成装置 16…DTP装置
18…データベースサーバ 22…インク
30…第1インターフェース 32…メモリ
34…制御部 36…第2インターフェース
40、120、152…分版条件設定部 48、122…影響度推定部
50…色材使用量推定部 52、124…分版条件決定部
62…分版条件変更部 68…注目画素抽出部
70…周辺画素抽出部 72…模擬画像作成部
74、156…粒状度算出部 84…適否判別部
100…画像領域 102、142…注目画素
104、144…周辺画素 106…演算領域
126…ジャギー視認度算出部 128…対比効果算出部
130…色材コスト算出部 132…評価演算部
140…分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定する分版条件決定装置であって、
前記複数の画素から注目画素を抽出する注目画素抽出部と、
前記注目画素抽出部により抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部と、
前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定する使用量推定部と、
前記影響度推定部により推定された前記視覚的効果の影響度と、前記使用量推定部により推定された前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定する分版条件決定部と
を有することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記視覚的効果の影響度には、人間の視覚における、空間周波数応答特性、色分解能、明度対比効果、彩度対比効果、色相対比効果、及び補色対比効果のうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記分版条件決定部は、前記第1色信号における前記注目画素の色が、前記第2色信号における前記注目画素の色に、デバイス非依存色空間上で略一致するように前記分版条件を決定することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記影響度推定部は、前記画像形成装置の出力解像度に応じて異なる数の前記周辺画素を用いて、前記視覚的効果の影響度を推定することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記分版条件決定部は、
前記画像形成装置の出力特性及び前記第1色信号に基づいて前記影響度推定部によりそれぞれ推定された前記視覚的効果の影響度である、基準分版条件の下での基準影響度と、比較分版条件の下での比較影響度とを比較することで前記比較分版条件の適否を判別する適否判別部を備える
ことを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記影響度推定部に供給しようとする前記比較分版条件を前記適否判別部による判別結果に応じて変更する分版条件変更部を有することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記分版条件決定部は、分版条件に対する所定の適合条件を設定する適合条件設定部をさらに備え、
前記適合条件設定部により設定された前記適合条件に従って、前記分版条件変更部による前記比較分版条件の変更、前記影響度推定部による前記視覚的効果の影響度の推定、及び前記適否判別部による適否の判別を順次繰り返して前記分版条件を決定する
ことを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記影響度推定部は、人間の視覚応答特性に応じた粒状度を用いて前記視覚的効果の影響度を推定することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記影響度推定部は、
前記画像形成装置の出力特性に基づいて前記出力画像の色再現を模擬する模擬画像を作成する模擬画像作成部と、
前記模擬画像作成部により作成された前記模擬画像に基づいて前記粒状度を算出する粒状度算出部と、をさらに備える
ことを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記模擬画像作成部は、前記第1色信号よりも高い解像度を有する前記模擬画像を作成することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置において、
前記粒状度算出部は、前記模擬画像の画素毎に前記出力画像の測色値をそれぞれ予測し、各前記測色値に基づいて前記粒状度を推定することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記影響度推定部は、前記出力画像に関する少なくとも1つの画像評価値と、前記粒状度とを用いて前記視覚的効果の影響度を推定することを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記少なくとも1つの画像評価値には、前記n種類の色材の総使用量が含まれることを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の装置において、
前記少なくとも1つの画像評価値には、ジャギーの視認度を定量化した評価値が含まれることを特徴とする分版条件決定装置。
【請求項15】
n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定する分版条件決定方法であって、
前記複数の画素から注目画素を抽出するステップと、
抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定するステップと、
前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定するステップと、
それぞれ推定された前記視覚的効果の影響度と、前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定するステップと
を備えることを特徴とする分版条件決定方法。
【請求項16】
n(nは、2以上の整数である。)種類の色材を用いて、画像形成装置により出力画像を形成すべく、m(mは、1以上の整数である。)種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第1色信号を、前記各色材の使用量にそれぞれ対応付けられたn種類のカラーチャンネルで構成される複数の画素を表す第2色信号に色変換するための分版条件を決定するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記複数の画素から注目画素を抽出する注目画素抽出部、
前記注目画素抽出部により抽出された前記注目画素の色と前記注目画素の少なくとも1つの周辺画素の各色との配置関係下における、前記注目画素に与える視覚的効果の影響度を推定する影響度推定部、
前記注目画素内における前記n種類の色材の総使用量を推定する使用量推定部、
前記影響度推定部により推定された前記視覚的効果の影響度と、前記使用量推定部により推定された前記n種類の色材の総使用量とに基づいて、前記注目画素での分版条件を決定する分版条件決定部
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−21517(P2013−21517A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153403(P2011−153403)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】