分離した熱交換要素を備えた熱交換カテーテル
【課題】 分離した熱交換要素を備えた熱交換カテーテルを提供する。
【解決手段】 本発明は、シャフト(52)と複数の熱交換要素(58)を有する熱交換領域(56)とを有するカテーテル(50)であり、熱交換要素(58)は、それぞれが一定の長さを有し、対向端の少なくとも一方がシャフトに連結されており、かつ流体を含有する流動性体腔内に挿入されたときに、体液が各熱交換要素の外周を取り囲むように配置されている。カテーテルは内部に流体循環路を備えており、流体循環路は各熱交換要素内に中空管腔を有するのが望ましい。熱交換要素は、マニホルド(70,72)を用いてシャフトに沿って2箇所で連結され得る。あるいは、熱交換要素は、1箇所だけで連結されて、浮動し得るようにされてもよい。シャフトに沿って、バルーン(204)などの断熱部材を配置してもよいし、各熱交換要素にリブ(204)を設けてもよい。
【解決手段】 本発明は、シャフト(52)と複数の熱交換要素(58)を有する熱交換領域(56)とを有するカテーテル(50)であり、熱交換要素(58)は、それぞれが一定の長さを有し、対向端の少なくとも一方がシャフトに連結されており、かつ流体を含有する流動性体腔内に挿入されたときに、体液が各熱交換要素の外周を取り囲むように配置されている。カテーテルは内部に流体循環路を備えており、流体循環路は各熱交換要素内に中空管腔を有するのが望ましい。熱交換要素は、マニホルド(70,72)を用いてシャフトに沿って2箇所で連結され得る。あるいは、熱交換要素は、1箇所だけで連結されて、浮動し得るようにされてもよい。シャフトに沿って、バルーン(204)などの断熱部材を配置してもよいし、各熱交換要素にリブ(204)を設けてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して医療装置及び方法に関する。より詳細には、フィラメント又は管状部材の性質を有する複数の分離した熱交換要素を組み込む熱交換カテーテルの使用を通じて、患者の体液に熱を付与するか又は患者の体液から熱を除去することにより、患者の身体又は患者の身体の一部の温度を選択的に制御するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
通常の情況下では、健常者の身体には温度調節メカニズムが存在し、身体を約37℃(98.6°F)の一定温度(時には平熱と呼ばれる状態)に保持している。平熱を保持するために、温度調節メカニズムは環境に奪われた熱が体内の代謝活性により発生した同量の熱に置き換わるように作動する。種々の理由から、ヒトは正常を下回る体温、すなわち低体温として知られる状態を生じ得る。
【0003】
環境への熱の喪失が内部に熱を発生させる身体能力を超える場合、あるいはヒトの温度調節能力が、傷害、疾病、又は麻酔により低減された場合に、偶発的な低体温が生じ得る。偶発的な低体温は、一般に重篤な医学的な結果を有し得る危険な状態である。例えば、低体温は、血液を揚送する心臓の能力、又は血液が正常に凝固する能力を妨げ得る。低体温は、結果として生じる代謝的結果及び生化学的結果により、体内における種々の温度感受性酵素反応をも妨害することもあり、免疫反応の障害、および感染発生率の増加に関係している。
【0004】
低体温を治療する簡単な方法は、非常に早くから知られている。そのような方法には、患者を毛布でくるむこと、温かい流体を経口投与すること、及び患者を温水浴に浸漬することがある。低体温がそれほど重篤でない場合には、これらの方法は効果的であり得る。しかし、患者を毛布でくるむことは、熱を発生して身体を再加温する患者自身の身体能力に依存している。温流体の経口投与は、患者の嚥下能力に頼るものであり、摂取する液体の温度、および制限期間内に投与され得る流体量は制限される。患者を温水に浸漬することは、特に患者が外科手術又はその他の医療処置を同時に受けている場合には、非実用的であることが多い。
【0005】
より最近では、低体温は、患者の皮膚に熱を加える加温毛布の適用により治療され得る。しかし、熱を患者の皮膚に加えることは、患者の身体の芯部に熱を与えるためには非効率的である可能性がある。特に患者が、加温毛布と身体の芯部との間にかなりの脂肪層を有している場合には、皮膚に加えられる熱は、緩慢かつ非効率的となり得る伝導又は放射により、皮膚を介して伝達されなければならない。
【0006】
逆説的に、温水中への浸漬又は加温毛布の適用のいずれにしても、低温症患者の皮膚に加温するのは、実際には問題を悪化させる可能性があり、ショックを誘発することさえあり得る。身体は、体芯に熱を保持するよう働く、寒さに対する特定の温度調節反応、特に血管収縮及び動静脈シャント(AVシャント)を有する。心臓により揚送される血液のほとんどが、皮膚及び四肢よりもむしろ体芯を循環するように、皮膚及び四肢の毛細血管及びその他の血管が収縮する場合に、血管収縮が起きる。同様にAVシャントでは、皮膚及び四肢の毛細血管床に血液を提供する一部の動脈とそれらの毛細血管床から血液を戻す静脈との間に、自然に生じた血管シャントが存在する。体が冷えると、シャントが開いて血液を全てそれらの毛細血管床に迂回させることができる。こうして、体が冷えると、四肢
及び特に体表面の組織は、流れ込む血液をほとんど有さず、体芯の温度に比べかなり低温になり売る。
【0007】
低体温患者の皮膚に熱が加えられると、皮膚の温度センサーが血管収縮を逆行させて、AVシャントを閉鎖させ得る。これが起きると、体芯からの血液が体表面及び四肢の非常に低温な組織に流れ込み、その結果、血液は熱をそれらの組織に奪われ、その熱は体表面の加温により加えられる熱の量をかなり上回る場合が多い。その結果、犠牲となった体芯の温度が急降下し得、患者がショック状態に陥る可能性さえある。
【0008】
体表面に熱を加えることが不適当であることに部分的に応えて、内部的手法により患者の体に熱を加える方法が開発された。呼吸ガスを与えられている患者、例えば麻酔下の患者は、加温された呼吸ガスを摂取し得る。この方法は効果的であり得るが、肺を損傷することなく取り込まれ得る熱の量は制限される。同様に、静脈内投与流体を受ける患者が加温した液体を摂取してもよいし、あるいは加温した液体のボーラスを静脈内投与してもよい。これは軽度の低体温の場合には効果的となり得るが、静脈内投与流体の温度は、一般に約41℃〜49℃である血液に害を与える温度と、各患者への投与が許容される液体量とによって制限される。
【0009】
特に心臓外科手術の場合、より侵襲的な方法を用いて、患者の血液を加熱し得る。血液は患者から取り出されて、心肺バイパス(CPB)システムを介して循環させられ、患者の体内に再導入される。血液は、患者に再導入される前に、加熱又は冷却され得る。このCPB法は、患者に熱を付与するか又は患者から熱を除去することにおいては迅速且つ効果的であるが、複雑な機器の使用及び高度に訓練された走者者チームを必要とする非常に侵襲的な医療処置を含むという不都合を有しており、一般に外科的環境においてのみ利用可能である。CPB法は、一般に血液組織に非常に危険な血液の機械的揚送も伴い、結果として身体からの血液の取り出し、血液の機械的揚送、並びに種々の機械及び管による血液の輸送に関連する細胞毒性及び血栓崩壊の問題を生じる。
【0010】
外部の機械的ポンプによる血液の揚送を含まない体芯の加温法が示唆されている。例えば、患者の血流内に置かれた熱交換カテーテルにより、低体温又は高体温を治療する方法が、ジンスバーグ(Ginsburg)に付与された米国特許第5,486,208号に記載されており、その全ての開示は、本明細書に援用される。その特許は、熱交換フィンを備えたバルーンを含む熱交換領域を有する熱交換カテーテルを患者の血流内に挿入して、熱交換液をバルーンに循環させるとともに、バルーンが血液と接触して血流に熱を加えるか又は同血流から熱を除去する、低体温を治療又は誘発する方法を開示している(ここに用いられるバルーンは、容易に圧力下で膨張し、真空下で収縮する構造である)。一定の条件下では、熱を放散する身体能力を超えて、体内で熱が発生するか、又は環境から熱が加えられると、ヒトは異常に高体温な状態、すなわち高体温として知られる状態を生じる。この状態の例は、高温及び高湿環境又は周囲への暴露、過剰労作(overexertion)、あるいは薬物又は疾患により体の温度調節メカニズムが機能していない時の日光への暴露に起因し得る。加えて、傷害又は疾患の結果として、多くの場合、ヒトは約37℃の正常温度を上回るセットポイント温度を確立し得る。セットポイント温度は、体の温度調節メカニズムが作動して保持する温度である。通常の情況下では、これは約37℃であるが、発熱などの別の場合には、体は異なるセットポイント温度を確立して、その温度を保持しようと作用し得る。
【0011】
低体温と同様に高体温は、時には致命的となり得る重篤な状態である。詳細には高体温は、それ自体でも、あるいは卒中などの他の健康問題を伴う場合でも、神経破壊性であることが見出されており、その場合、卒中又は外傷性脳傷害を伴う正常を超えた体温は劇的な増悪をもたらすことが分かっている。
【0012】
低体温と同様に、冷水浴及び冷却毛布などその状態を治療する同等の簡便法が存在し、CPB時の冷却呼吸ガス及び冷却血液など、より効果的ではあるが複雑で侵襲的な方法も存在する。しかしこれらは、低体温に関連して上に記載されたような制限及び複雑さを含んでいる。加えて、血管収縮、AVシャント、及び身震いなどの温度調節反応が直接作用して、患者を冷やそうと奮闘し、それにより高体温を治療する努力が無効にされる可能性がある。これは、体が平熱より高いセットポイント温度を設定して体の発熱温度を平熱に下げようとする努力に積極的に抵抗し得る発熱の場合に特に当てはまる。
【0013】
低体温及び高体温は、両者とも有害で治療を必要とする場合もあるが、高体温及び特に低体温は、健康維持に役立つか、さもなければ有益となる場合もあり、それゆえ意図的に誘発する場合もある。例えば、心筋梗塞及び心臓手術における心停止期間は、脳障害又はその他の神経的障害を生じる可能性がある。低体温は、医療の世界では許容される神経保護法(neuroprotectant)として認識されており、それゆえ患者は、心血管手術の際、低体温を誘発された状態に保持されることが多い。同様に、低体温は、神経手術の際の神経保護法として誘発される場合もある。
【0014】
頭部外傷、脊髄損傷、及び出血性又は虚血性卒中のような一定の神経疾患又は障害の有害作用を治療するか又は最小限に抑える目的で、全身又は部分的低体温を誘発することが望ましい場合もある。加えて、脳、脊髄、若しくは生命器官(vital organs)への血流が中断されるか又は損なわれる可能性がある、開心術、動脈瘤修復術、血管内動脈瘤修復処置、脊髄手術、又はその他の手術のような特定の外科的処置または介入処置の有害作用を軽減するか又は最小限に抑える目的で、全身又は部分的に低体温を誘発することが望ましい場合もある。低体温は、心筋梗塞(MI)の後の心筋組織を保護するために有益であることも見出されている。
【0015】
脳又は脊髄のような神経組織は、特に虚血性又は出血性の卒中のような、しかしこれらに限定されない、血管疾患の進行、心停止、大脳内又は頭蓋内の出血、大脳内又は頭蓋内の遮断などいずれかの理由による血液遮断、及び頭部外傷により損傷を受ける。これらの各例では、脳虚血、頭蓋内圧の上昇、浮腫、又はその他の過程により脳組織への損傷が起きる可能性があり、その結果、大脳機能の喪失、及び恒久的な神経学的欠損がもたらされることが多い。神経保護の厳密なメカニズムは、完全には理解されていないが、脳の温度の低下は、虚血性卒中の後に生じる神経伝達物質(例えばグルタミン酸塩)の濃度上昇の鈍化、大脳代謝速度の低下、細胞内カルシウム輸送/代謝の低減、細胞内蛋白質合成の虚血性阻害(ischemia−induced inhibitions)の予防、及び/又はフリーラジカル形成に加えてその他の酵素カスケード及び遺伝子反応の低下など、複数のメカニズムを介して神経保護を行うものと予測されている。こうして、意図的に誘発された低体温は、手術の際、又は卒中、大脳内出血、及び外傷の結果、脳又はその他の神経組織への障害の一部を防止し得る。
【0016】
低体温を意図的に誘発することは、一般に体体表冷却又はバイパスポンピングにより試みられてきた。除去されるべき体温が体芯から体表面に伝達されなければないため、体表冷却は一般に許容できないほど遅いことが立証されている。また、体の温度調節メカニズムが、体表面の冷却による体芯の温度の低下を防ぐよう働くため、全般的には有効でない場合もあった。例えば、血管収縮及びAVシャントは、体芯に発生する熱が血液により表面に伝達されるのを防ぐことができる。こうして、体表冷却は、皮膚及び組織表面の冷却に成功するに過ぎず、患者の体芯の温度を低下させて低体温状態を誘発することには成功しないことがある。
【0017】
体表冷却により体芯の温度を低下させる試みを妨げ得る別の温度調節メカニズムが、身
震いである。体表面には、数多くの温度センサーがあり、これらは、身体に身震いを開始するようにさせ得る。身震いは、かなりの量、すなわち標準の5倍の代謝熱発生をもたらし、血液は、大幅に収縮した体表面に移行するため、患者の温度を低下させ得るのは、もしあるとしても冷却毛布のみであり、それは非常に遅い。患者が発熱することにより上昇したセットポイント温度を有し、よって平熱を上回る体温で身震いした場合、冷却毛布では患者の温度を平熱にさえも下げ得ないことが多いことが分かっている。
【0018】
加えて、冷却毛布を当てることによる、患者の表面から体芯への熱伝達は遅く非効率的であるため、体表冷却による患者の体芯の温度の制御は、不可能でなくとも非常に困難である。患者の体温は、所望の低温を「行き過ぎる」傾向があり、患者の体芯の温度を特に中等度か又は高度に低下させる場合に、破局的な問題となり得る。体表冷却により体芯の温度を急速に調節することは、特に正確な制御が必要な場合には困難であるか又は不可能でさえある。
【0019】
体から取り出した血液を加温して、それを体内に戻すCPB機器を使用する場合と同様に、バイパスは迅速であり、特に大量の血液がそのシステムを介して非常に急速に揚送される場合には、比較的正確に制御することができる。しかし、これまで述べたように、この方法は、複雑でコストがかかり、侵襲的であり、特にかなりの期間継続した場合には、一般に血液に傷害を及ぼす。
【0020】
意図的に誘発した低体温又は高体温の他にも、患者の体温を制御して、患者を平熱(つまり約37℃という正常な体温)に保持することが望ましい場合もある。例えば、一般的な麻酔下にある患者では、体の正常な温度調節センサー及びメカニズムは、全く機能できず、麻酔医は、直接熱を加えるか又は除去して患者の体温を制御することを所望し得る。同様に、患者は、例えば大手術の際に、並外れた量の熱を環境に奪われる可能性があり、助力を受けていない患者の身体は、熱の喪失を補償するだけの十分な熱を発生し得ない。これは、手術の際使用される麻酔の結果、患者の正常な温度調節反応が、低下又は排除される場合に特に当てはまる。平熱を保持するために熱を加えるか又は除去することにより体温を制御するための装置及び方法が望ましいことになる。
【0021】
加えて、患者は、セットポイントの上昇を引き起こす疾患又は外傷を受けているか、あるいは体内に導入されたある物質を有し得、その結果、感染又は炎症のように、発熱する。助力を受けていない身体は、その後は37℃を上回る体温を保持するよう作用し得、体表冷却は体の温度調節活性を奮起させて平熱を再設定するには非効果的であり得る。例えば卒中の際、発熱の存在が、非常に負の結果と相関することが分かっており、平熱を保持することが非常に望ましくなり得る。
【0022】
一般に、哺乳類の身体は、平熱で最も効果的に機能する。それゆえ、脳又は心臓のような身体の一部で低体温を保持しながら、身体の残部を平熱に保持することによる目標組織の保護、例えば体の残部を正常体温で機能させながらの脳の神経保護、又は心筋の保護がもたらされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述の理由から、表面熱交換の不適正さと、患者の体から血液を揚送し、血液を加熱又は冷却して、その後その血液を患者に戻す必要があるCPB法の危険性とを回避しながら、効果的且つ効率的手法で患者の身体に対して熱を加えるか又は熱を除去する方法が望まれている。患者の身体又は患者の体内の目標組織の温度がある目標値に変化されるか、又はある目標温度に保持され得るように、迅速、高率的、且つ制御的に患者の血液と熱を交換する手段が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の概要)
本発明は、複数の熱交換要素(例えば、チューブ又はフィラメントのような分離した部材)を備える熱交換領域を有する熱交換カテーテル、及びそのようなカテーテルの熱交換領域を、患者の血流内に置いて、患者の温度を変化させるのに十分な割合、かつ十分な長時間にわたって血流と熱を交換することにより患者の体を加熱又は冷却する方法を提供する。
【0025】
さらに本発明によれば、本発明の熱交換カテーテルは、基端及び先端を有する可撓性のカテーテル本体又はシャフトを備え得、そのようなカテーテルシャフトの先端は、哺乳類患者の脈管構造又は体腔に経皮的に挿入されるように適合されている。熱交換領域は、ある長さと対向する端部とを有する複数の非透過性熱交換要素を備えるカテーテルシャフト上に設けられており、各要素は少なくとも一端でカテーテルシャフトに取り付けられている。血管又はその他の体腔に挿入する場合、体液が各熱交換要素を取り囲み得る。カテーテルのシャフトは、好ましくは流体循環路すなわち管腔を備える。各熱交換要素は、好ましくは両端でシャフトに取り付けられ、カテーテルシャフトの流体循環路すなわち管腔と流体連通している流体循環路又は管腔を組み込んでいる。このように、各熱交換要素は、体液に外周を取り囲まれているため、熱交換液は、各熱交換要素の中に、又はそれを介して循環され得る。別法として、各熱交換要素は袋小路状のフィラメントを組み込んでもよく、これにより一端のみでカテーテルシャフトに取り付けられていてもよい。
【0026】
さらに本発明の一部の実施態様によれば、熱交換領域は、カテーテルシャフトの半分の長さよりも小さくてよく、カテーテルシャフトの先端又はその近傍に位置し得る。そのような実施態様において、カテーテルシャフトの基端部へ、又は同部からの望まない熱伝達を減少させるために、熱交換領域の基端側のカテーテルシャフト上に断熱部分が形成されていてもよい。
【0027】
さらに本発明によれば、体液による熱交換のためのシステムが提供される。該システムは、a)液状熱交換媒体と、b)複数の分離した長尺状熱交換要素を有する熱交換カテーテルとを有する。カテーテルは、基端及び先端を有するシャフトを備え、先端は体腔に経皮的に挿入されるように適合されている。シャフトは、内部を通して熱交換媒体を循環させるために、その内部に循環経路を有している。分離した熱交換要素は、カテーテルが体腔に挿入されると、体液が各要素を取り囲むように、カテーテルに取り付けられる。
【0028】
前記システムは、患者の状態、例えば患者の温度に関するフィードバックを提供するために、患者に取り付けられているか又は患者の体内に挿入された1つ以上のセンサーをさらに備え得る。それらのセンサーは、望ましくは、センサーからのフィードバックに基づいて熱交換カテーテルを制御するコントローラと連絡している。
【0029】
本発明の目的は、低体温症に罹患した患者に熱を加えるための効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、低体温症に罹患した患者の血流から熱を除去するための効果的方法を提供することにある。
【0030】
本発明の更なる目的は、患者に熱を加えるか又は患者から熱を除去し、正常体温を誘発する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、正常体温を保持するための効果的方法を提供することにある。
【0031】
本発明の更なる目的は、患者を目標温度に冷却して、その温度を制御して保持する効果
的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、有利な構成を有する冷却カテーテルを提供することにある。
【0032】
本発明の更なる目的は、患者の目標部分を冷却することにある。
本発明の更なる目的は、患者を目標温度に保持することにある。
本発明の更なる目的は、血流への制限を最小限に抑えて、カテーテルを通過する血液を連続して流しながら、患者の血液と効率的に熱を交換させるよう配置された熱交換カテーテルを提供することにある。
【0033】
本発明の更なる目的は、複数の熱交換バルーンを有する熱交換カテーテルを提供することにある。
本発明の更なる目的は、マルチフィラメントを備える熱交換領域を有する熱交換カテーテルを提供することにある。
【0034】
本発明の更なる目的は、絶縁されたシャフトを有する熱交換カテーテルを提供することにある。
本発明の更なる目的は、体液の温度を制御する効果的方法を提供することにある。
【0035】
本発明の更なる目的は、体液を加温する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、体液を冷却する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、低体温を誘発するための効果的方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のシステムを用いて治療を受けている患者の斜視図。
【図2】本発明の熱交換カテーテルの1実施形態が内部に挿入されている患者血管の断面図。
【図3】先端部分に熱交換媒体を流動させるための多重中空離散要素を有する本発明の熱交換カテーテルの例示的実施形態の立面図。
【図4A】図3のカテーテル基端部の線4A−4Aに沿った断面図。
【図4B】代替カテーテルの図4Aと類似の断面図。
【図5A】6つの熱交換要素を示す、図3のカテーテルの先端側熱交換部分の線5−5に沿った断面図。
【図5B】3つの熱交換要素を有するカテーテルの代替熱交換部分の、図5Aと類似の断面図。
【図6】図5Aの線6−6に沿った、図3のカテーテルの先端熱交換部分の縦断面図。
【図7】カテーテルの全長に沿って配置された熱交換媒体を流動させるための多重中空離散要素を有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の縦断面図。
【図8】基端断熱領域と先端熱交換領域とを有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の立面図。
【図8A】中央流体送出用シャフトと外部バルーンとの間に挿入された支柱を有する、図8のカテーテルの断熱領域の線8A−8Aに沿った断面図。
【図8B】中央流体送出用シャフトと外部スリーブとの間に複数の膨脹式スペーサーを有する代替断熱領域配置の、図8Aと類似の断面図。
【図9】カテーテルに一方の端が連結された複数の可撓性熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の先端部分の立面図。
【図9A】内部に流体循環路を有する、図9のカテーテルの熱交換要素の線9A−9Aに沿った断面図。
【図10A】熱交換を高めるためのらせん状フィンを有する本発明の離散熱交換要素の一部の詳細図。
【図10B】熱交換を高めるための外周フィンを有する本発明の離散熱交換要素の一部の詳細図。
【図11】熱交換媒体を流動させるための複数の蛇行離散要素を有する本発明の代替熱交換カテーテルの先端部分の立面図。
【図12】非円形形状および増大熱交換表面積を有する本発明の中空熱交換要素の断面図。
【図13】流体を流動させるように適合された、一方の端がカテーテルに連結された複数の可撓性熱交換要素を有する、本発明の代替熱交換カテーテルの断面図。
【図14】図13に示されている可撓性熱交換要素の1つの線14−14に沿った断面図。
【図15】同軸熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの側面図。
【図16】図15の熱交換カテーテルの基端側マニホルドの断面図。
【図17】同軸熱交換要素の1つの先端チップの拡大断面図。
【図18】図15の線18−18に沿った、熱交換カテーテルの基端シャフト部分の断面図。
【図19】図18の線19−19に沿った、熱交換カテーテルの基端側マニホルドの前板の平面図。
【図20】図16の線20−20で示されている熱交換カテーテルの基端側マニホルドの仕切板の平面図。
【図21】単ループ熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの側面図。
【図22】図21の熱交換カテーテルの基端側マニホルドの断面図。
【図23】単ループ熱交換要素の先端チップの拡大断面図。
【図24】図21の線24−24に沿った、熱交換カテーテルの基端シャフト部分の断面図。
【図25】図22の線25−25に沿った、熱交換カテーテルの基端側マニホルドの前板の平面図。
【図26】図22の線25−25に沿った、単ループ熱交換カテーテルの基端側マニホルドの仕切板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、カテーテルの全体的な断面サイズを増大させることなく、それぞれの体液との熱交換表面積を増大させる改良型熱交換カテーテルを提供する。本発明は主として患者の血液温度を調節するために血流中で用いることを意図しているが、当業者には、本発明のカテーテルを種々の他の用途にも利用し得ることが理解されよう。さらに、本発明は、内部体液温度の制御以外の用途も有し得るので、特許請求の範囲は内部体液温度制御に限定されるべきではない。
【0038】
好ましい用途においては、患者の全身温度を調節するため、または患者の身体の局限領域温度を調節するために、本発明の1つ以上のカテーテルを患者の脈管系内に配置して血液と熱交換させる。本発明のカテーテルは、例えば、脳に向かって流れる動脈血と熱交換して脳を冷却することによって、そうしなければ卒中または他の損傷の結果生じ得る脳組織に対する損傷を防止したり、あるいは、心臓に向かって流れる静脈血を冷却して心筋層を冷却し、そうしなければMIもしくは他の類似事象後に生じ得る組織損傷を防止したりするのに適当であろう。
【0039】
本明細書に開示されている熱交換カテーテルは、患者または患者の身体の特定領域の温度を調節するのに適した熱交換システムで利用し得る。本明細書に開示されているカテーテルのいずれかを利用するそのような熱交換カテーテルシステム20の1つの実施例が図
1に示されている。システム20は、カテーテル制御ユニット22と、少なくとも1つの熱交換セクション44を備えて形成された熱交換カテーテル24とを有し得る。カテーテル24の、セクション26で示されている患者内挿入部分には、1つまたは複数の熱交換セクションが配置される。この挿入部分は、カテーテルの全長より短く、カテーテルを完全に挿入したときの患者の直ぐ内側のカテーテル位置からカテーテル先端部まで及ぶ。カテーテル制御ユニット22は、熱交換流体または媒体をカテーテル24内で循環させるための流体ポンプ28と、熱交換システム20内で循環する流体を加熱かつ/または冷却するための熱交換構成部材とを有し得る。制御ユニット22には、生理食塩水、代用血漿液、または他の生体親和性流体などの熱交換流体の供給源となる容器すなわち流体バッグ30が連結され得る。カテーテル内の熱交換流循環路はそれぞれ、熱交換流体を循環させて選択された体領域内で流体流を冷却するためのポンプ28の流入導管32と流出導管34とに連結され得る。類似の配置で、選択された体領域の加熱とシステム部品の冷却とを同時または別個に実施し得る。
【0040】
制御ユニット22は、例えば、カテーテルからのフィードバックを供給する固体熱電対、および深部温度または身体の選択された器官もしくは部分の温度を表す患者の温度情報を供給する種々のセンサーであり得る様々なセンサーからデータをさらに受信し得る。例えば、センサーは、脳または頭部領域温度プローブ36、直腸温度プローブ38、鼓膜温度プローブ40、食道温度プローブ(図示せず)、膀胱温度プローブ(図示せず)などを含み得る。
【0041】
制御ユニット22は、探知された温度および状態に応答して、カテーテルの加熱または冷却を誘導し得る。制御ユニット22は、熱交換器を第1探知温度で作動させたり、熱交換器を第1探知温度に比べて高いかもしくは低い温度または任意の他の所定温度であり得る第2探知温度で作動停止させたりし得る。制御ユニット22は、複数の体領域で所望または予め選択された温度を達成するために、複数の選択された熱交換セクションを独立して加熱または冷却し得ることは勿論である。同様に、制御ユニット22は、患者の身体の複数の特定領域の温度を制御するために2つ以上の熱交換器を作動させ得る。制御ユニットはまた、探知温度に応答して、他の装置、例えば、外部加温ブランケットなどを作動または作動停止させ得る。熱交換カテーテルまたは他のデバイス上で実施される調節は、簡単なオンオフ制御の場合もあるし、加熱度または冷却度の調節、加熱または冷却ランプ速度、熱交換領域の温度または患者の体温が目標温度に近づくのに対応した比例制御などを含む、かなり複雑な制御計画の場合もある。
【0042】
カテーテル制御ユニット22はさらに、閉ループカテーテルシステム内の同一または異なる伝熱媒体を用いて加熱と冷却とを共に実施するように選択的に作動させられる熱電クーラーおよびヒーター(ならびに関連流路導管)を有し得る。例えば、少なくとも1つの温度調節カテーテル24の挿入部分26に配置された第1伝熱セクション42は、頭部隣接領域、または、頚動脈もしくは脳に通じる他の血管内で冷溶液を循環させ得る。頭部温度は、患者の比較的外表面に近い部分または選択された体領域に配置された温度センサー36を用いて局所的にモニターされ得る。同様に挿入部分26に配置されたカテーテル24の別の伝熱セクション44は、折りたたみ可能なバルーン内で加熱溶液を循環させるか、さもなければ、加熱要素または本発明の他の態様に従って記載されている他の機構を介して他の体位置に熱を供給し得る。熱交換カテーテル24は、神経保護のために脳領域に局所低体温をもたらし得るが、身体の他の部分は、不快感、悪寒、血液凝固傷害、免疫不全などの有害な副作用を回避または最小限にし得るように比較的温かく保ち得る。さらに、首から上の頭部領域を冷却してい間において、首から下の身体の加温は、概して断熱するか、または身体の首から下を加熱パッドもしくはブランケット46で包むことによって行なわれる。勿論、カテーテル24の複数の熱交換セクションは、全身を冷却または加温して身体の深部温度を変化させるように改変し得るものと理解されたい。
【0043】
図2は、体腔、この場合には血管BV内に挿入された本発明の1つの特定の熱交換カテーテル50を示している。血流Fは右方向の矢印で示されている。熱交換カテーテル50は、刺創54を介して血管BV内に達するように適合された長尺状シャフト52を有している。カテーテル50は、体外に残る基端部と、体腔内に挿入される先端部とを有する。
【0044】
カテーテル50の血流に浸漬される先端部分に沿って熱交換領域56が設けられている。熱交換領域56は、図1に関して上述した熱交換領域42または44のいずれかに相当する。示されている実施形態は、図3〜図6にさらに詳細に示されており、後に説明するように、カテーテルのシャフト52に連結された、血液との熱交換を高めるための複数の熱交換要素58を備えている。熱交換領域56は、本出願に開示されている他の実施形態のいずれと置き換えてもよい。
【0045】
図3を参照すると、熱交換カテーテル50は、先端部に熱交換領域56を有し、基端部に複数のポート60が設けられた上述の長尺状シャフト52を有している。特に、カテーテル50は、流体流入ポート60aと、流体流出ポート60bと、ガイドワイヤ挿入ポート60cとを備えている。
【0046】
図4Aは、図3の線4A−4Aに沿った、長尺状シャフト52の断面を示しており、シャフト内には3つの管腔が設けられている。ガイドワイヤ管腔62は、概して、2つの伝熱流体循環管腔64および66の間に配置されている。一方の循環管腔64は流体流入ポート60aと流体連通しており、他方の循環管腔66は流体流出ポート60bと流体連通している。しかし、例えば、以下に説明するような血流との向流を達成するために、反対方向の流れが望ましい場合には、いずれかの管腔を流入管腔として機能させ、他方の管腔を流出管腔として機能させ得ることが容易に理解されよう。したがって、流れ方向は、容易かつ所望の通りに反対方向に変更し得る。
【0047】
図4Bは、長尺状シャフト52の代替断面を示しており、中央に配置されたガイドワイヤ管腔62′は、2つの伝熱流体循環管腔64′,66′の間に配置されている。
シャフト52の断面形状は、カテーテルのハブ68との接合部から先端部69までに及んでいるのが好ましい。あるいは、カテーテルの最先端部分は、ガイドワイヤ管腔またはその延長部だけからなっていてよい。図3の図は、破断線によって示されているようにいくぶん省略されており、この実施形態のカテーテル50は、長さが60〜150cmの範囲であり得る。
【0048】
熱交換領域56は、流出マニホルド70から始まって、そこから先端側に配置されている流入マニホルド72で終端する。流入マニホルド70と流出マニホルド72の間には、複数の上述の熱交換要素58がシャフト52に隣接し、かつほぼ平行に伸びている。各要素58は、その少なくとも一方の端が熱交換領域56に連結されており、かつ内部に体液を含有する体液体腔内に挿入したときに体液が各熱交換要素の外周を取り囲むように、その長さの少なくとも一部がシャフト52から横方向に離間されて配置される。用語「外周を取り囲む」とは、各熱交換要素58の断面が円形であることを意味するのではなく、横断面で見たときに、各熱交換要素の周縁が体液で取り囲まれることを意味する。こうすることによって、カテーテル50の有効伝熱表面積が大きくなり、体液との熱交換が容易になる。
【0049】
図5Aの断面に見られるように、カテーテルのシャフト52の外周に沿って6つのそのような熱交換要素58が均一に分散配置されている。以下の説明から理解されるであろうように、本発明のカテーテル50を用いると、2つ程度の熱交換要素58を設けるだけで熱交換を改良することができる。例えば、図5Bは、3つの熱交換要素58′を有する代
替実施形態を示している。示されているように、熱交換要素58は、シャフト52の外周の周りに均一に分散配置されているが、図8に示されているものなどの他の配置も可能である。
【0050】
本発明の熱交換カテーテル50は、図6で最もよく分るように、内部に循環流体流路を備えている。示されている実施形態では、循環流体流路は、長尺状熱交換要素58全体に伸びている。図6では、上管腔64は熱交換媒体流入管腔として機能している。しかし、下管腔66は熱交換媒体流出管腔として機能している。熱交換要素内の熱交換流体の流れ方向を示されているものと反対方向にしたい場合には、これら2つの管腔の機能を逆にすることにより容易に達成され得る。
【0051】
カテーテル50の熱交換領域56の循環流路は、図6では流れ矢印74,75で示されている。特定的に言えば、熱交換媒体は、流入管腔64を通って先端方向に流れ、流入マニホルド72内に画定された内空間78と流体連通しているポート76に達する。各熱交換要素58は、内空間78と流体連通している流入オリフィス80を有する中空チューブとして形成するのが望ましい。同様に、各熱交換要素58は、流出マニホルド70内に画定された内空間84と流体連通している流出オリフィス82を有している。流出管腔66は、流出オリフィス82から流出する熱交換媒体を受容するポート86を有している。流出管腔66内に設けられた栓部材88は、熱交換媒体が流出マニホルド70を通過して先端方向に流れ続けるのを阻止し、一方、栓部材89は、管腔64および66の先端部を閉鎖している。循環流路を反復するために、熱交換媒体は、流入管腔64を通って先端方向(矢印74)に流れ、ポート76から流れ出て、流入マニホルド72内の空間78に入り、空間78内を流れて各熱交換要素58の流入オリフィス80に入り、熱交換要素を通って基端方向(矢印75)に流れ、流出オリフィス82から流出マニホルド70内に形成された空間84内に流れ込み、ポート86を通過し、熱交換媒体をカテーテル50の基端部に送り返す流出管腔66に入る。この場合も、熱交換要素を通る熱交換流体の流れは、カテーテル挿入法に応じて、先端方向または基端方向であってよく、流れは血流の流れ方向に対して並流(con−current)でも向流でもよい。
【0052】
流入マニホルド70および流出マニホルド72は、薄肉フレア型ジャケットが示されているが、様々な構造で形成され得る。マニホルド70,72は、一方の端でシャフト52の外側と接続するように移行し、そこでシールされている。対向端では、各マニホルド内の開放領域が熱交換要素58の先端を受容し、適切な接着剤であり得る注封材料90が、循環流路の外面から内空間78,84をシールしている。このように、熱交換要素58は、各マニホルド70,72と注封材料との間で液密シールされている。勿論、フレア型ジャケットの代わりに成形ポリマーまたは収縮包装材料などの他の構造を用いてもよいし、注封材料の代わりにシールリングなどの他の構造を用いてもよい。
【0053】
熱交換要素58は、カテーテルのシャフト52から外側にわずかに湾曲した状態で示されている。このように配置することにより、図2に見られるように、所与の流体流速に対する伝熱性能が大きく高められるように、使用時に要素58が体液で取り囲まれることが保証される。すなわち、熱交換媒体は、カテーテルの先端部で分かれ、それぞれが連続外面を有する複数の熱交換要素58を通過する複数の平行路を通って基端方向に流れる。この配置は、図5Aおよび図5Bに最もよく示されている。さらに、流入管腔64と外部体液との間でシャフト52の壁を介してある程度の熱交換が行われる。
【0054】
熱交換要素58とシャフト52とを確実に分離する1つの手段は、図6に92で示されているものなどのばね部材を熱交換要素58とシャフト52との間に設けることである。ばね部材92は、各熱交換要素58の半径方向内側部分に連結され、シャフト52に向かって片持梁のように突き出て、シャフト52と接触状態になっているのが好ましい。カテ
ーテル50の挿入時には、外力によって熱交換要素58が内側に押されてばね部材92を圧迫し、ばね部材92はシャフト52に対して摺動する。適切な体腔内に配置されると、ばね部材92が拡がって、熱交換要素58を半径方向外側に最適な熱交換位置に移動させる。ばね部材92は、血液流路内で比較的小さな外形を有し、それによって血流に対する妨害を最小限にするのが有利である。
【0055】
使用時に熱交換要素58とシャフト52との分離を確実にする別の構造は、熱交換要素として膨脹式薄肉チューブを設けることである。これらの要素は、流入マニホルド70と流出マニホルド72との間の間隔よりわずかに長い。例えば、患者に挿入する際に、要素58を収縮させると、要素58は、シャフトに平らに折りたたまれて低プロフィールとなる。使用時には、例えば加圧したり熱交換流体を流動させたりして要素58を拡張させると、要素58はシャフトから離れて外側に湾曲する。例えば、図3および図8を参照されたい。これに代わって、流入マニホルド70と流出マニホルド72の間の間隔は、シャフト52上で作動する引張ワイヤ(図示せず)または他のそのような手段を介して変えることができる。例えば、シャフト52を入れ子セクションとして構成したり、曲げられるようにしてもよく、そのようにすると、引張ワイヤを作動させて、流入マニホルド70と流出マニホルド72の間の間隔を短くすることができる。このように、要素58は、初期には、長尺状シャフト52に対して配置されているが、その後、短縮されたシャフトから離れて外側に湾曲する。
【0056】
符号58で示されているような複数の可撓性熱交換要素を備えることの別の利点は、熱交換領域56の断面輪郭が容易に蛇行した体腔と合致することである。すなわち、図5Aで最も良く分るように、個々の熱交換要素58それぞれの間に設けられている外周ギャップによって、熱交換要素58が一方側または他方側に集まるように、熱交換要素が半径方向および円周方向に移動し得る。この位置移動達成能力によって、熱交換領域56を狭い体腔または蛇行した体腔内に配置し、熱交換流体流を作動させて、熱交換領域の周囲の血流を過度に制限することなく、熱交換要素を膨脹させる能力が大いに高められる。一般に、熱交換要素による通路妨害が血管の断面積の50%以下であれば、血管内で適切な流れが保たれることが判明した。
【0057】
本発明の熱交換カテーテル100の代替実施形態が図7に示されている。カテーテル100は、熱交換媒体循環路が内部に設けられており、かつカテーテルのシャフト104から離れた複数の長尺状熱交換要素102が循環路の一部を構成しているという点で先に説明したカテーテル50と類似している。しかし、図7の実施形態において、熱交換領域106は、カテーテルのシャフト104の全長に沿って延びている。
【0058】
各熱交換要素102は、長尺状中空フィラメントとして形成するのが好ましい。熱交換カテーテル100は、内部シャフト104内に形成された内管腔もしくは管腔108と、カテーテルの先端部に設けられたマニホルド112内に形成された空間110とを有する循環路を内部に有しており、熱交換要素102の中空管腔は空間110と流体連通している。内部シャフト104の基端部は、管腔108と連絡する内部チャンバ116を有する流入管継ぎ手114内に嵌合している。内部シャフト104は、流出管継ぎ手120内に形成されたチャンバ118を通って延び、熱交換要素102の基端部は注封材料122を用いてチャンバ118と流体連通した状態でシールされている。このように、チャンバ116に入る流体は、矢印124で示されているように管腔108内に誘導され、かつ矢印126で示されているようにカテーテル100を通って先端方向に流れる。先端側マニホルド112では、流体は熱交換要素102の中空管腔内に180°方向が変えられる。この場合も、空間110内の要素102の先端部のシールには注封材料128が用いられている。流体は、矢印130で示されているように、要素102を通って基端方向に流れ、熱交換要素から出て、チャンバ118内に入り、矢印132で示されているように、該チ
ャンバから排出される。
【0059】
カテーテル100の全長に沿って熱交換領域106を設けることの利点は、体液との熱交換容量が大きくなることである。さらに、カテーテル100が、その長さの100%にわたって熱交換領域106を有していると、全身加熱または冷却をより効率的に提供し得る。さらに、先に説明したカテーテルの場合、カテーテルの熱交換領域部分ではない基端部分を介して体液との間である程度の熱交換が行われ得る。他方、図7の実施形態の場合、カテーテル全体が体液と熱交換するように設計されている。
【0060】
図8は、先端部分に熱交換領域152を有し、基端部分に断熱領域154を有する熱交換カテーテル150のさらなる実施形態を示している。例示されている実施形態において、熱交換領域152および断熱領域154は、長さがほぼ等しく、どちらもカテーテル150の全長の約50%である。好ましい実施形態において、断熱領域154は、熱交換領域152より実質的に長く、好ましくは、カテーテル150の長さの少なくとも75%である。熱交換領域152と断熱領域154を合わせた長さがカテーテル100の全長にほぼ等しいのが望ましい。1つの特定の実施例においては、断熱領域がカテーテルの全長の約85〜90%に及び、残りの10〜15%が熱交換領域である。勿論、断続的な断熱領域および点在する断熱領域と、熱交換領域とを含む種々の代替配置も考えられる。
【0061】
先に述べたように、図8のカテーテル150は、熱交換媒体流入ポート160と、熱交換媒体流出ポート162とを備えている。長尺状シャフト164内には、流体循環路(図示せず)が設けられている。熱交換領域152内のシャフト164と平行に、但し離間されて複数の長尺状熱交換要素166が配置されている。熱交換要素166は、カテーテル150内の流体循環路の個別部分を構成する中空フィラメントであるのが好ましい。このために、先端側マニホルド168は、熱交換要素166の先端部を受容し、基端側マニホルド170は基端部を受容する。マニホルド168,170は、内部で流体流空間を画定しており、先端側マニホルド168内の空間は、流入ポート160と流体連通しており、基端側マニホルド170内の空間は流出ポート162と流体連通している。このように、液体熱交換媒体は、ポート160内に流入してカテーテル150の先端部に流れた後、中空熱交換要素166を介して流出ポート162に戻る。
【0062】
断熱領域154は、シャフト164の周りに長手方向に配置された断熱部材172を有している。断熱部材172は、固体スリーブまたは液体充填バルーンを含む様々な構造であり得る。好ましい実施形態において、断熱部材172は、拡張ポート173と連絡する内空間を有する膨脹式バルーンを備える。窒素ガスまたは二酸化炭素ガスなどの適当な断熱流体でバルーン172をシャフト164の側面から離れて膨脹させる。このように、シャフト164の全長が体液に浸漬しても、熱交換領域152のみで体液との効率的な熱伝達が行われる。
【0063】
図8Aに見られるように、シャフト164は、例えば、シャフトが膨脹した断熱部材172の側面に押し付けられるのを阻止し、かつ断熱部材の断熱容量を構成する折りたたみ可能な支柱175によって断熱部材172内に断熱部材から離間されて中心に配置し得る。支柱175は、カテーテルの挿入または抜出時に断熱部材を収縮させると、断熱部材がカテーテル全体のプロフィールを有意に増大することなく、シャフトに折りたたまれるように、比較的薄く、可撓性であり得る。
【0064】
これに代わって、図8Bに示されているように、断熱部材は、シャフト164を挿入する中央管腔と、中央管腔を取り囲む膨脹式断熱管腔179とを有する多管腔薄肉バルーンであり得る。断熱領域全体を断熱スリーブ181で取り囲んでもよい。
【0065】
断熱領域と熱交換領域とを有する図8の配置は、脳に流れる血液を冷却してカテーテルの冷却作用を局所誘導するのに特に有用であろう。血液の冷却または加温の有効性は、一部には、血液と接触する熱交換領域表面の温度と、血液温度との温度差に依存する。本明細書において、この温度差はΔTと称される。カテーテル150は、例えば、大腿動脈に挿入され、血管系を介して、例えば、大動脈まで通過させて、熱交換領域152を頚動脈内に配置され得る。熱交換流体はカテーテル150内を循環し、断熱領域154のおかげで熱交換領域152に達するまで冷たいままに保たれ、ゆえに、最大ΔTが維持される。断熱領域154が無ければ、熱交換媒体の有効性は減少し、所望の位置、この場合には頚動脈における血液の冷却度が有意に低下し得る。
【0066】
さらに、局所冷却作用は、後続して所望の体領域に循環しない血液との熱交換によっても低下し得る。上記の脳を局所的に冷却する実施例において、断熱領域154は、冷たい熱交換流体が患者の体幹および脚に循環される大腿動脈および下行大動脈の動脈系内の血液と熱交換するのを阻止する。このように、後続して身体の他の領域に循環する血液を冷却すると、全身が全体的に冷却され得る。この全体冷却はある種の用途には望ましいかもしれないが、心臓または脳の局所または限局冷却を実施しようとする場合などの他の用途には望ましくないであろう。この点で、そのような全体冷却により、悪寒などの不快感、または局所冷却により回避し得る全身低体温の他の不快な副作用が患者に発生し得る。
【0067】
ここまでにおいて、熱交換要素は、流体流路の一部を構成し、カテーテルのシャフトに両端が連結された中空フィラメントとして説明してきた。しかし、本発明は、複数の相異なる熱交換要素がその両端でシャフトに連結されなくてもよく、その代わりに、熱交換要素の自由端が体液内に自由に浮動し得るようにシャフトに関してその長さの一部に沿って拘束され得るという点で、より一般的な性質を有するものである。自由浮動する要素は、内部「袋小路」(cul−de−sac)型流体流路を画定するのが望ましい。
【0068】
特に、図9は、長尺状シャフト182と、シャフトに取り付けられた複数の熱交換要素184とを有する本発明の熱交換カテーテル180を示している。熱交換要素184は、先端部がシャフト182に連結されており、先端チップ186で略自由浮動している。これらの要素184は、カテーテル180の挿入および抜出時にシャフト182の外側に押し付けられて低プロフィールとなるように、可撓性かつ折りたたみ可能であるのが好ましい。さらに、要素184が可撓性であることによって、蛇行通路における配置および通過が容易になり、膨脹させたときに血管を通る血流に対する制限が最小限になる。任意の1つのカテーテル180に沿った複数の要素184は異なる長さを有していてよいことに留意されたい。カテーテル180はさらに、上述のような単または多管腔バルーンであり得る基端断熱部材188を有していてよい。
【0069】
熱交換要素184は、様々な構造で設けることができる。熱交換要素184はそれぞれ内部で流体を循環させ得る。図9Aの断面図は、流体流入路190と、それに平行する流体流出路192とを有する熱交換要素184を示している。流路190、192は、シャフト182内に設けられた主循環路と流体連通状態で配置されている。このように、熱交換要素184は、第1実施形態に関して上述した要素58にいくぶん類似しているが、体液内での自由浮動度がいくぶん高い。さらに、要素184は、一方の端だけで連結されているために、蛇行通路を通ってカテーテル180を進める際に要素184がシャフト182の外周の周囲でより自由に移動し得る。この特質を有するさらなる実施形態が図13および図14に見られる。
【0070】
体液と本明細書に記載の熱交換要素との熱交換をさらに容易にするために、各要素に、流動中断リブまたは他の中断部(discontinuity)を備え得る。流体流路内の物体周囲の層流境界層を減少させると、物体と流体とのポテンシャル熱交換が増大する
ことは周知の熱交換原理である。例えば、図10Aは、らせん状リブ202が上に巻かれた管状熱交換要素200を示している。図10Bに見られるように、熱交換要素206上の円周方向リブ204を含む他のそのような配置も可能である。
【0071】
熱交換要素と体液との熱交換をさらに容易にするために、カテーテルの全断面積を有意に変えることなく、それらの要素の表面積をいくつかの方法で増大させることができる。例えば、図11は、複数の波型熱交換要素212が、シャフト218上に設けられた先端側マニホルド214から基端側マニホルド216まで延びる、本発明のカテーテル上の熱交換領域210を示している。換言すると、要素212は、少なくとも1つの反曲点を有する非直線形路をなして延びている。この配置によって、各熱交換要素212の表面積は、上述の要素58,102,166の低い凸面のものより大きくなる。さらに、各要素212をシャフト218に略平行かつ離間して配置することによって、狭い体腔または蛇行した体腔を通ってカテーテルを進める際に、各要素212をシャフトの外周周囲に押し付けたりかつ/またはシャフトの周囲で移動させたりすることができる。
【0072】
各熱交換要素の表面積を増大させるための別の手段は、熱交換要素の断面を完全円形断面形状から変更することである。図12は、複数の交互に外側に突出する領域222と溝224とを有する熱交換要素220の断面を示している。全断面のフットプリントは、言うなれば、仮想円220に適合するが、外部表面積は大きい。当業者には、全断面足跡を増大させずに表面積を増大させるという二重要件を満足する多くの熱交換要素断面形状が可能であることが理解されよう。
【0073】
熱交換要素の代替構造が図13および図14に示されている。カテーテルのシャフト240内には、流入流体流動管腔242と流出流体流動管腔244とが設けられている。複数の熱交換要素246は、それらを取り囲む体液中で自由に浮動し得るように、シャフト240の長さに沿って一方の端だけで連結されている。各熱交換要素246は、内側細管250とそれを取り囲む外側細管248とを含んでいる。外側細管248の先端部は閉鎖されており、内側細管250の先端部は開放され、外側細管の先端部に達しないところで終端している。内側細管250は内部で、流入管腔242と流体連通している管腔を画定している。さらに、流出管腔244は、内側細管250と外側細管248の間の環状空間と流体連通している。このように、カテーテルシャフトの流入管腔242を通って流れる熱交換流体は、矢印252で示されているように、流入細管管腔に入り、矢印254で示されているように、内側細管と外側細管の間を通って、シャフトの流出管腔244内に流れ込む。この場合の熱交換媒体循環路は、いわゆる袋小路型熱交換要素を包含する。外側細管の外面は、体液、例えば血液で取り囲まれており、したがって、熱交換流体が細管を通って循環すると、熱交換流体と体液の間で熱伝達が行われ得る。流体の流れ方向は逆にすることが可能であり、流れ構造は例示されているものと全く同じである必要はない。例えば、シャフト内の流入管腔と流出管腔は同軸である必要はなく、他の配置も可能である。
【0074】
熱交換要素のさらなる代替構造が図15〜図20に示されている。この実施形態は、基端側マニホルド300と複数の熱交換要素302とを有しており、個々の熱交換要素302の基端部分は、束ねられるか、またはシャフトもしくはスリーブ306内に配置される。熱交換要素302の先端部分は、スリーブ306の先端部から突出し、先端部を越えて自由に延びる。
【0075】
特に図15を参照すると、カテーテルは、基端側マニホルド300を通り、熱交換要素302の先端部を越えて延びるガイドワイヤチューブ304を有している。スリーブ306は、カテーテルの実質的に全長に沿って、(可撓性チューブを包含する)複数の熱交換要素302とガイドワイヤ304とを実質的に取り囲む可撓性管状構造を包含し得る。熱
交換要素の、スリーブ304の先端部を越えて突出する部分は、本発明のこの特定実施形態の熱交換領域を画定している。場合により、管状スリーブ306は、複数の熱交換要素302を単一の小さな輪郭のチューブ内に収束させやすくするように、基端部308でフレア型にされ得る。
【0076】
熱交換要素302は、拘束されておらず、管状スリーブ306の先端部310を越えて体液に任せて自由浮動する。示されている実施形態は、8つの熱交換要素302を示しているが、それ以外の数も可能である。ガイドワイヤチューブ304は、概して熱交換要素302より剛性である。先ず、熱交換要素302のルース部分とガイドワイヤチューブ304とを連結させる一時連結手段(図示せず)を設けるか、または熱交換要素をガイドワイヤチューブにゆるく連結させる一時的接着剤を適用する。そのような連結手段は、熱交換要素302およびガイドワイヤチューブ304の全体を取り巻くゴム弾性バンドの形態であり得る。そのような弱い一時連結部は、カテーテルの操作中に要素302を膨脹させたときに広げられるが、または他の適当な手段で分離され得る。
【0077】
図17の詳細図および図18の断面図に見られるように、熱交換要素302は、それぞれが内側管腔312と外側管腔314とを有する複数の同軸チューブを含んでなる。各要素302の先端部316で外側管腔314は閉鎖され、内側管腔はこの先端部に達しないところで終端している。流れ矢印は、内側管腔312を先端方向に通過し、先端部316で方向を変え、外側管腔314を通って基端方向に流れる熱交換媒体を示している。
【0078】
図16に見られるように、基端側マニホルド300は、概して2つの等しいチャンバ、すなわち流入チャンバ318と流出物チャンバ320とに分れた容器を含んでなる。流入チャンバ318は流体流入ポート322を有し、流出物チャンバ320は流体流出ポート324を有している。2つのチャンバ318、320は仕切板326によって分離されている。熱交換要素302はそれぞれマニホルド300の前板328を通過する。
【0079】
図16および図17に見られるように、内側管腔312は、流入チャンバ318で終端する流入チューブ330内で画定されている。同様に、外側管腔314は、流出チャンバ320で終端する流出チューブ332内で画定されている。流入チューブ330と流出チューブ332は、図19に見られるように、前板328に形成された通し孔334を通過する。各通し孔334は、チューブ330,332の周りで液密シールされている。前板328には、ガイドワイヤチューブ304を通すための中央孔335も設けられている。ガイドワイヤチューブ304はシールされた状態で中央孔335を通って延びている。図20を参照すると、仕切板326は、ガイドワイヤチューブ304の周りで液密シールされた中央孔338を有している。ガイドワイヤチューブ304はマニホルド300の裏板に設けられた単一孔340を通過して延びている。各流入チューブ330は、仕切板326の孔336を通過し、孔336に関して液密シールされている。
【0080】
使用時には、カテーテルを血管内に挿入し、熱交換流体を流入ポート322を介して流入チャンバ318内に導入する。次いで、熱交換流体は各流入チューブ330の開放基端部へ、次いで各熱交換要素302の内側管腔312内に流入する。流体は、各熱交換要素302の長さに沿って先端部316まで流れ、そこで方向を変えて外側管腔314に内に流れ込む。次いで、流体は、図17に見られるように、外側管腔314を通って基端方向に流れ、各流出チューブ332の開放基端部に達する。熱交換要素302が初期に折り畳まれた状態にある場合、熱交換流体の流れによって熱交換要素が膨脹し、それによって、連結手段が分断され、次いで各要素が分離し得る。最後に、流体は流出チャンバ320内に流れ込み、流出ポート324を介してマニホルド300から流出する。このように、熱交換流体は熱交換カテーテル内を循環し得る。熱交換流体が外側管腔314を通って基端方向に戻るとき、熱交換流体は、熱交換要素302の外壁を介して熱交換要素表面を通り
越して流れる血液と熱交換する。
【0081】
示されている実施例は、内側管腔312を通って先端方向に、また外側管腔314を通って基端方向に循環する流体を示しているが、当業者には、熱交換流体を流入チャンバ内に導入し、熱交換流体を流出チャンバから排出させるだけで、流れ方向を逆にし得ることも理解されよう。一般に、向流熱交換、すなわち、血流が外側管腔314内の熱交換流体の流れと反対方向であるのが望ましい。熱交換要素302の先端部が下流になるように熱交換要素が血流中に存在し、血液がカテーテル表面に沿って基端側から先端側に流れている場合、熱交換流体の流入流は内側管腔312を通るのが望ましく、流出流は外側管腔314を通るのが望ましい。この流れ配置は、血液が先端側から基端側に流れても、熱交換要素がカテーテルの基端部に向かって後向きに脱出かつ浮動する傾向があるために、先端部に自由浮動熱交換要素を有するカテーテルには好ましい。そのような配置において、熱交換流体がカテーテルから外側管腔314を通って逆に流れる場合に向流が達成される。
【0082】
図26〜図31に示されている代替実施形態を参照すると、本発明の熱交換カテーテル350は、カテーテルの全長に及ぶ、単管腔チューブループからなる複数の熱交換要素を備えている。各単管腔チューブの流入端は、マニホルドの流入貯蔵部に向かって開いており、その流出端は流出物貯蔵部に向かって開いている。熱交換流体は各熱交換要素の全長に沿って循環する。
【0083】
特に図21を参照すると、単ループ熱交換カテーテル350は、その基端領域に、基端側マニホルド352と、複数の同軸熱交換要素354と、ガイドワイヤチューブ356と、熱交換要素を取り囲む基端管状スリーブ358とを備えている。示されているカテーテル350は、それぞれが長い単管腔チューブループからなる8本のそのような熱交換要素354を示している。勿論、当業者には、熱交換要素の数は様々であり得ることが理解されよう。管状スリーブ358の基端部360は、複数の熱交換要素354を単一の小さな輪郭のチューブに収束させやすくするためにフレア型にされ得る。
【0084】
スリーブの先端部362では、熱交換要素354は拘束されておらず、自由浮動し得る。ガイドワイヤチューブ356は、概して熱交換要素354より剛性であり、熱交換要素との間で一時的に緩い連結部(図示せず)を形成し得る。例えば、熱交換要素354とガイドワイヤチューブ356の全体の周りに、ゴム弾性バンドなどの連結手段を用い得る。あるいは、その代わりに、熱交換要素354を膨脹させると広がるような任意の弱い連結手段を用いてもよい。
【0085】
図22に見られるように、基端側マニホルド352は、内部で、2つの貯蔵部、すなわち流入貯蔵部368および流出物貯蔵部370を画定している。仕切板372が2つの貯蔵部368,370を分離している。流入ポート374は流入貯蔵部368と連絡し、流出ポート376は流出物貯蔵部370と連絡している。図25の正面図に見られるように、前板378は、マニホルド352の前面を構成している。
【0086】
熱交換要素354は、それぞれが内部に単管腔364を画定している複数の長い薄肉チューブを含んでなる。各チューブは、流入貯蔵部368内に配置されている開放端366を有し、仕切板372のシールされた孔380(図26参照)を通過して先端方向に延びている。チューブは、流出物貯蔵部370を通過し、前板378のシールされた孔382(図25参照)を通過する。チューブは、先端方向に延び、管状スリーブ358のフレア型部分360で収束し、先端部362から出る。各熱交換要素354は、先端部362からある距離延びて、図23に示されている先端側屈曲部384に至る。したがって、先端の熱交換流体の流れは、先端側屈曲部384で基端方向に向きを変える。戻りチューブは再び前板378の孔382の1つを通過し、流出物貯蔵部370内で終端する。
【0087】
ガイドワイヤチューブ356は、基端ガイドワイヤ孔388、仕切板372の中央孔390、および前板378の中央孔392を通って延びて、マニホルド352を完全に通過する。ガイドワイヤチューブ356は、マニホルド352の両貯蔵部368,370からシールされている。
【0088】
使用時には、(種々の図において矢印で表されている)熱交換流体は、流入ポート374を介して流入貯蔵部368内に導入される。加圧流体は、各熱交換要素チューブ354の開放端内に流れ込み、チューブの全長を流れて、屈曲部384で向きを変え、次いで基端方向に流れ、流出物貯蔵部370内に移る。次いで、熱交換流体は、流出ポート376から流出する。先に述べたように、当業者には、本発明の基本原理を変えることなく、流れ方向を容易に逆にし得ることが理解されよう。しかし、この実施形態においては、熱交換流体は、血流と接触しているチューブ内を両方向に流れており、したがって、並流と向流が共に存在するであろう。それゆえ、チューブを通る流れの方向は、上記同軸配置の場合ほど重要な意味はない。
【0089】
本発明の熱交換要素は、主に生体親和性を考慮に入れているが、種々の材料から形成され得る。熱交換要素は、流体不透過性の、好ましくは、特定の形態のポリマーであり、かつ可撓性である。特に有用な材料の1種は、押出しおよび吹き込みにより薄肉中空フィラメントを形成し得るポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0090】
ここまで、例示のために本発明の特定の実施形態を説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明から逸脱することなく、細部に関して多くの変形を実施し得ることは明らかであろう。例として、但しそれには限定されないが、本発明のカテーテル内で流動する熱交換流体と流動する血液との間のような、2種の流動流体間で熱交換させる場合、熱交換は、両流体間に向流が散在する場合、すなわち、両流体が反対方向に流れる場合により効率的であることが判明した。本明細書に記載した実施例において、血液は、カテーテル挿入手段に応じて、熱交換フィラメントを基端側から先端側にまたは先端側から基端側に通り過ぎて流動し得る。例えば、頚静脈切開部を介してカテーテルを下大静脈内に挿入すると、血液は、カテーテルの先端部から基端部に向かって(すなわち、逆方向の流れ)熱交換領域を越えて流れるであろうし、カテーテルを大腿静脈切開部から下大静脈内に挿入すると、血液は、基端側から先端側に向かって(すなわち、前方へ)熱交換領域を越えて流れるであろう。血液と熱交換流体との向流を達成するために、記載されている本発明から逸脱することなく、シャフトの流入管腔と流出管腔とを逆にし得る。同様に、記載されている実施形態の他の変形も、権利請求されている本発明の範囲内で予測される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して医療装置及び方法に関する。より詳細には、フィラメント又は管状部材の性質を有する複数の分離した熱交換要素を組み込む熱交換カテーテルの使用を通じて、患者の体液に熱を付与するか又は患者の体液から熱を除去することにより、患者の身体又は患者の身体の一部の温度を選択的に制御するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
通常の情況下では、健常者の身体には温度調節メカニズムが存在し、身体を約37℃(98.6°F)の一定温度(時には平熱と呼ばれる状態)に保持している。平熱を保持するために、温度調節メカニズムは環境に奪われた熱が体内の代謝活性により発生した同量の熱に置き換わるように作動する。種々の理由から、ヒトは正常を下回る体温、すなわち低体温として知られる状態を生じ得る。
【0003】
環境への熱の喪失が内部に熱を発生させる身体能力を超える場合、あるいはヒトの温度調節能力が、傷害、疾病、又は麻酔により低減された場合に、偶発的な低体温が生じ得る。偶発的な低体温は、一般に重篤な医学的な結果を有し得る危険な状態である。例えば、低体温は、血液を揚送する心臓の能力、又は血液が正常に凝固する能力を妨げ得る。低体温は、結果として生じる代謝的結果及び生化学的結果により、体内における種々の温度感受性酵素反応をも妨害することもあり、免疫反応の障害、および感染発生率の増加に関係している。
【0004】
低体温を治療する簡単な方法は、非常に早くから知られている。そのような方法には、患者を毛布でくるむこと、温かい流体を経口投与すること、及び患者を温水浴に浸漬することがある。低体温がそれほど重篤でない場合には、これらの方法は効果的であり得る。しかし、患者を毛布でくるむことは、熱を発生して身体を再加温する患者自身の身体能力に依存している。温流体の経口投与は、患者の嚥下能力に頼るものであり、摂取する液体の温度、および制限期間内に投与され得る流体量は制限される。患者を温水に浸漬することは、特に患者が外科手術又はその他の医療処置を同時に受けている場合には、非実用的であることが多い。
【0005】
より最近では、低体温は、患者の皮膚に熱を加える加温毛布の適用により治療され得る。しかし、熱を患者の皮膚に加えることは、患者の身体の芯部に熱を与えるためには非効率的である可能性がある。特に患者が、加温毛布と身体の芯部との間にかなりの脂肪層を有している場合には、皮膚に加えられる熱は、緩慢かつ非効率的となり得る伝導又は放射により、皮膚を介して伝達されなければならない。
【0006】
逆説的に、温水中への浸漬又は加温毛布の適用のいずれにしても、低温症患者の皮膚に加温するのは、実際には問題を悪化させる可能性があり、ショックを誘発することさえあり得る。身体は、体芯に熱を保持するよう働く、寒さに対する特定の温度調節反応、特に血管収縮及び動静脈シャント(AVシャント)を有する。心臓により揚送される血液のほとんどが、皮膚及び四肢よりもむしろ体芯を循環するように、皮膚及び四肢の毛細血管及びその他の血管が収縮する場合に、血管収縮が起きる。同様にAVシャントでは、皮膚及び四肢の毛細血管床に血液を提供する一部の動脈とそれらの毛細血管床から血液を戻す静脈との間に、自然に生じた血管シャントが存在する。体が冷えると、シャントが開いて血液を全てそれらの毛細血管床に迂回させることができる。こうして、体が冷えると、四肢
及び特に体表面の組織は、流れ込む血液をほとんど有さず、体芯の温度に比べかなり低温になり売る。
【0007】
低体温患者の皮膚に熱が加えられると、皮膚の温度センサーが血管収縮を逆行させて、AVシャントを閉鎖させ得る。これが起きると、体芯からの血液が体表面及び四肢の非常に低温な組織に流れ込み、その結果、血液は熱をそれらの組織に奪われ、その熱は体表面の加温により加えられる熱の量をかなり上回る場合が多い。その結果、犠牲となった体芯の温度が急降下し得、患者がショック状態に陥る可能性さえある。
【0008】
体表面に熱を加えることが不適当であることに部分的に応えて、内部的手法により患者の体に熱を加える方法が開発された。呼吸ガスを与えられている患者、例えば麻酔下の患者は、加温された呼吸ガスを摂取し得る。この方法は効果的であり得るが、肺を損傷することなく取り込まれ得る熱の量は制限される。同様に、静脈内投与流体を受ける患者が加温した液体を摂取してもよいし、あるいは加温した液体のボーラスを静脈内投与してもよい。これは軽度の低体温の場合には効果的となり得るが、静脈内投与流体の温度は、一般に約41℃〜49℃である血液に害を与える温度と、各患者への投与が許容される液体量とによって制限される。
【0009】
特に心臓外科手術の場合、より侵襲的な方法を用いて、患者の血液を加熱し得る。血液は患者から取り出されて、心肺バイパス(CPB)システムを介して循環させられ、患者の体内に再導入される。血液は、患者に再導入される前に、加熱又は冷却され得る。このCPB法は、患者に熱を付与するか又は患者から熱を除去することにおいては迅速且つ効果的であるが、複雑な機器の使用及び高度に訓練された走者者チームを必要とする非常に侵襲的な医療処置を含むという不都合を有しており、一般に外科的環境においてのみ利用可能である。CPB法は、一般に血液組織に非常に危険な血液の機械的揚送も伴い、結果として身体からの血液の取り出し、血液の機械的揚送、並びに種々の機械及び管による血液の輸送に関連する細胞毒性及び血栓崩壊の問題を生じる。
【0010】
外部の機械的ポンプによる血液の揚送を含まない体芯の加温法が示唆されている。例えば、患者の血流内に置かれた熱交換カテーテルにより、低体温又は高体温を治療する方法が、ジンスバーグ(Ginsburg)に付与された米国特許第5,486,208号に記載されており、その全ての開示は、本明細書に援用される。その特許は、熱交換フィンを備えたバルーンを含む熱交換領域を有する熱交換カテーテルを患者の血流内に挿入して、熱交換液をバルーンに循環させるとともに、バルーンが血液と接触して血流に熱を加えるか又は同血流から熱を除去する、低体温を治療又は誘発する方法を開示している(ここに用いられるバルーンは、容易に圧力下で膨張し、真空下で収縮する構造である)。一定の条件下では、熱を放散する身体能力を超えて、体内で熱が発生するか、又は環境から熱が加えられると、ヒトは異常に高体温な状態、すなわち高体温として知られる状態を生じる。この状態の例は、高温及び高湿環境又は周囲への暴露、過剰労作(overexertion)、あるいは薬物又は疾患により体の温度調節メカニズムが機能していない時の日光への暴露に起因し得る。加えて、傷害又は疾患の結果として、多くの場合、ヒトは約37℃の正常温度を上回るセットポイント温度を確立し得る。セットポイント温度は、体の温度調節メカニズムが作動して保持する温度である。通常の情況下では、これは約37℃であるが、発熱などの別の場合には、体は異なるセットポイント温度を確立して、その温度を保持しようと作用し得る。
【0011】
低体温と同様に高体温は、時には致命的となり得る重篤な状態である。詳細には高体温は、それ自体でも、あるいは卒中などの他の健康問題を伴う場合でも、神経破壊性であることが見出されており、その場合、卒中又は外傷性脳傷害を伴う正常を超えた体温は劇的な増悪をもたらすことが分かっている。
【0012】
低体温と同様に、冷水浴及び冷却毛布などその状態を治療する同等の簡便法が存在し、CPB時の冷却呼吸ガス及び冷却血液など、より効果的ではあるが複雑で侵襲的な方法も存在する。しかしこれらは、低体温に関連して上に記載されたような制限及び複雑さを含んでいる。加えて、血管収縮、AVシャント、及び身震いなどの温度調節反応が直接作用して、患者を冷やそうと奮闘し、それにより高体温を治療する努力が無効にされる可能性がある。これは、体が平熱より高いセットポイント温度を設定して体の発熱温度を平熱に下げようとする努力に積極的に抵抗し得る発熱の場合に特に当てはまる。
【0013】
低体温及び高体温は、両者とも有害で治療を必要とする場合もあるが、高体温及び特に低体温は、健康維持に役立つか、さもなければ有益となる場合もあり、それゆえ意図的に誘発する場合もある。例えば、心筋梗塞及び心臓手術における心停止期間は、脳障害又はその他の神経的障害を生じる可能性がある。低体温は、医療の世界では許容される神経保護法(neuroprotectant)として認識されており、それゆえ患者は、心血管手術の際、低体温を誘発された状態に保持されることが多い。同様に、低体温は、神経手術の際の神経保護法として誘発される場合もある。
【0014】
頭部外傷、脊髄損傷、及び出血性又は虚血性卒中のような一定の神経疾患又は障害の有害作用を治療するか又は最小限に抑える目的で、全身又は部分的低体温を誘発することが望ましい場合もある。加えて、脳、脊髄、若しくは生命器官(vital organs)への血流が中断されるか又は損なわれる可能性がある、開心術、動脈瘤修復術、血管内動脈瘤修復処置、脊髄手術、又はその他の手術のような特定の外科的処置または介入処置の有害作用を軽減するか又は最小限に抑える目的で、全身又は部分的に低体温を誘発することが望ましい場合もある。低体温は、心筋梗塞(MI)の後の心筋組織を保護するために有益であることも見出されている。
【0015】
脳又は脊髄のような神経組織は、特に虚血性又は出血性の卒中のような、しかしこれらに限定されない、血管疾患の進行、心停止、大脳内又は頭蓋内の出血、大脳内又は頭蓋内の遮断などいずれかの理由による血液遮断、及び頭部外傷により損傷を受ける。これらの各例では、脳虚血、頭蓋内圧の上昇、浮腫、又はその他の過程により脳組織への損傷が起きる可能性があり、その結果、大脳機能の喪失、及び恒久的な神経学的欠損がもたらされることが多い。神経保護の厳密なメカニズムは、完全には理解されていないが、脳の温度の低下は、虚血性卒中の後に生じる神経伝達物質(例えばグルタミン酸塩)の濃度上昇の鈍化、大脳代謝速度の低下、細胞内カルシウム輸送/代謝の低減、細胞内蛋白質合成の虚血性阻害(ischemia−induced inhibitions)の予防、及び/又はフリーラジカル形成に加えてその他の酵素カスケード及び遺伝子反応の低下など、複数のメカニズムを介して神経保護を行うものと予測されている。こうして、意図的に誘発された低体温は、手術の際、又は卒中、大脳内出血、及び外傷の結果、脳又はその他の神経組織への障害の一部を防止し得る。
【0016】
低体温を意図的に誘発することは、一般に体体表冷却又はバイパスポンピングにより試みられてきた。除去されるべき体温が体芯から体表面に伝達されなければないため、体表冷却は一般に許容できないほど遅いことが立証されている。また、体の温度調節メカニズムが、体表面の冷却による体芯の温度の低下を防ぐよう働くため、全般的には有効でない場合もあった。例えば、血管収縮及びAVシャントは、体芯に発生する熱が血液により表面に伝達されるのを防ぐことができる。こうして、体表冷却は、皮膚及び組織表面の冷却に成功するに過ぎず、患者の体芯の温度を低下させて低体温状態を誘発することには成功しないことがある。
【0017】
体表冷却により体芯の温度を低下させる試みを妨げ得る別の温度調節メカニズムが、身
震いである。体表面には、数多くの温度センサーがあり、これらは、身体に身震いを開始するようにさせ得る。身震いは、かなりの量、すなわち標準の5倍の代謝熱発生をもたらし、血液は、大幅に収縮した体表面に移行するため、患者の温度を低下させ得るのは、もしあるとしても冷却毛布のみであり、それは非常に遅い。患者が発熱することにより上昇したセットポイント温度を有し、よって平熱を上回る体温で身震いした場合、冷却毛布では患者の温度を平熱にさえも下げ得ないことが多いことが分かっている。
【0018】
加えて、冷却毛布を当てることによる、患者の表面から体芯への熱伝達は遅く非効率的であるため、体表冷却による患者の体芯の温度の制御は、不可能でなくとも非常に困難である。患者の体温は、所望の低温を「行き過ぎる」傾向があり、患者の体芯の温度を特に中等度か又は高度に低下させる場合に、破局的な問題となり得る。体表冷却により体芯の温度を急速に調節することは、特に正確な制御が必要な場合には困難であるか又は不可能でさえある。
【0019】
体から取り出した血液を加温して、それを体内に戻すCPB機器を使用する場合と同様に、バイパスは迅速であり、特に大量の血液がそのシステムを介して非常に急速に揚送される場合には、比較的正確に制御することができる。しかし、これまで述べたように、この方法は、複雑でコストがかかり、侵襲的であり、特にかなりの期間継続した場合には、一般に血液に傷害を及ぼす。
【0020】
意図的に誘発した低体温又は高体温の他にも、患者の体温を制御して、患者を平熱(つまり約37℃という正常な体温)に保持することが望ましい場合もある。例えば、一般的な麻酔下にある患者では、体の正常な温度調節センサー及びメカニズムは、全く機能できず、麻酔医は、直接熱を加えるか又は除去して患者の体温を制御することを所望し得る。同様に、患者は、例えば大手術の際に、並外れた量の熱を環境に奪われる可能性があり、助力を受けていない患者の身体は、熱の喪失を補償するだけの十分な熱を発生し得ない。これは、手術の際使用される麻酔の結果、患者の正常な温度調節反応が、低下又は排除される場合に特に当てはまる。平熱を保持するために熱を加えるか又は除去することにより体温を制御するための装置及び方法が望ましいことになる。
【0021】
加えて、患者は、セットポイントの上昇を引き起こす疾患又は外傷を受けているか、あるいは体内に導入されたある物質を有し得、その結果、感染又は炎症のように、発熱する。助力を受けていない身体は、その後は37℃を上回る体温を保持するよう作用し得、体表冷却は体の温度調節活性を奮起させて平熱を再設定するには非効果的であり得る。例えば卒中の際、発熱の存在が、非常に負の結果と相関することが分かっており、平熱を保持することが非常に望ましくなり得る。
【0022】
一般に、哺乳類の身体は、平熱で最も効果的に機能する。それゆえ、脳又は心臓のような身体の一部で低体温を保持しながら、身体の残部を平熱に保持することによる目標組織の保護、例えば体の残部を正常体温で機能させながらの脳の神経保護、又は心筋の保護がもたらされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述の理由から、表面熱交換の不適正さと、患者の体から血液を揚送し、血液を加熱又は冷却して、その後その血液を患者に戻す必要があるCPB法の危険性とを回避しながら、効果的且つ効率的手法で患者の身体に対して熱を加えるか又は熱を除去する方法が望まれている。患者の身体又は患者の体内の目標組織の温度がある目標値に変化されるか、又はある目標温度に保持され得るように、迅速、高率的、且つ制御的に患者の血液と熱を交換する手段が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(発明の概要)
本発明は、複数の熱交換要素(例えば、チューブ又はフィラメントのような分離した部材)を備える熱交換領域を有する熱交換カテーテル、及びそのようなカテーテルの熱交換領域を、患者の血流内に置いて、患者の温度を変化させるのに十分な割合、かつ十分な長時間にわたって血流と熱を交換することにより患者の体を加熱又は冷却する方法を提供する。
【0025】
さらに本発明によれば、本発明の熱交換カテーテルは、基端及び先端を有する可撓性のカテーテル本体又はシャフトを備え得、そのようなカテーテルシャフトの先端は、哺乳類患者の脈管構造又は体腔に経皮的に挿入されるように適合されている。熱交換領域は、ある長さと対向する端部とを有する複数の非透過性熱交換要素を備えるカテーテルシャフト上に設けられており、各要素は少なくとも一端でカテーテルシャフトに取り付けられている。血管又はその他の体腔に挿入する場合、体液が各熱交換要素を取り囲み得る。カテーテルのシャフトは、好ましくは流体循環路すなわち管腔を備える。各熱交換要素は、好ましくは両端でシャフトに取り付けられ、カテーテルシャフトの流体循環路すなわち管腔と流体連通している流体循環路又は管腔を組み込んでいる。このように、各熱交換要素は、体液に外周を取り囲まれているため、熱交換液は、各熱交換要素の中に、又はそれを介して循環され得る。別法として、各熱交換要素は袋小路状のフィラメントを組み込んでもよく、これにより一端のみでカテーテルシャフトに取り付けられていてもよい。
【0026】
さらに本発明の一部の実施態様によれば、熱交換領域は、カテーテルシャフトの半分の長さよりも小さくてよく、カテーテルシャフトの先端又はその近傍に位置し得る。そのような実施態様において、カテーテルシャフトの基端部へ、又は同部からの望まない熱伝達を減少させるために、熱交換領域の基端側のカテーテルシャフト上に断熱部分が形成されていてもよい。
【0027】
さらに本発明によれば、体液による熱交換のためのシステムが提供される。該システムは、a)液状熱交換媒体と、b)複数の分離した長尺状熱交換要素を有する熱交換カテーテルとを有する。カテーテルは、基端及び先端を有するシャフトを備え、先端は体腔に経皮的に挿入されるように適合されている。シャフトは、内部を通して熱交換媒体を循環させるために、その内部に循環経路を有している。分離した熱交換要素は、カテーテルが体腔に挿入されると、体液が各要素を取り囲むように、カテーテルに取り付けられる。
【0028】
前記システムは、患者の状態、例えば患者の温度に関するフィードバックを提供するために、患者に取り付けられているか又は患者の体内に挿入された1つ以上のセンサーをさらに備え得る。それらのセンサーは、望ましくは、センサーからのフィードバックに基づいて熱交換カテーテルを制御するコントローラと連絡している。
【0029】
本発明の目的は、低体温症に罹患した患者に熱を加えるための効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、低体温症に罹患した患者の血流から熱を除去するための効果的方法を提供することにある。
【0030】
本発明の更なる目的は、患者に熱を加えるか又は患者から熱を除去し、正常体温を誘発する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、正常体温を保持するための効果的方法を提供することにある。
【0031】
本発明の更なる目的は、患者を目標温度に冷却して、その温度を制御して保持する効果
的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、有利な構成を有する冷却カテーテルを提供することにある。
【0032】
本発明の更なる目的は、患者の目標部分を冷却することにある。
本発明の更なる目的は、患者を目標温度に保持することにある。
本発明の更なる目的は、血流への制限を最小限に抑えて、カテーテルを通過する血液を連続して流しながら、患者の血液と効率的に熱を交換させるよう配置された熱交換カテーテルを提供することにある。
【0033】
本発明の更なる目的は、複数の熱交換バルーンを有する熱交換カテーテルを提供することにある。
本発明の更なる目的は、マルチフィラメントを備える熱交換領域を有する熱交換カテーテルを提供することにある。
【0034】
本発明の更なる目的は、絶縁されたシャフトを有する熱交換カテーテルを提供することにある。
本発明の更なる目的は、体液の温度を制御する効果的方法を提供することにある。
【0035】
本発明の更なる目的は、体液を加温する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、体液を冷却する効果的方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、低体温を誘発するための効果的方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のシステムを用いて治療を受けている患者の斜視図。
【図2】本発明の熱交換カテーテルの1実施形態が内部に挿入されている患者血管の断面図。
【図3】先端部分に熱交換媒体を流動させるための多重中空離散要素を有する本発明の熱交換カテーテルの例示的実施形態の立面図。
【図4A】図3のカテーテル基端部の線4A−4Aに沿った断面図。
【図4B】代替カテーテルの図4Aと類似の断面図。
【図5A】6つの熱交換要素を示す、図3のカテーテルの先端側熱交換部分の線5−5に沿った断面図。
【図5B】3つの熱交換要素を有するカテーテルの代替熱交換部分の、図5Aと類似の断面図。
【図6】図5Aの線6−6に沿った、図3のカテーテルの先端熱交換部分の縦断面図。
【図7】カテーテルの全長に沿って配置された熱交換媒体を流動させるための多重中空離散要素を有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の縦断面図。
【図8】基端断熱領域と先端熱交換領域とを有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の立面図。
【図8A】中央流体送出用シャフトと外部バルーンとの間に挿入された支柱を有する、図8のカテーテルの断熱領域の線8A−8Aに沿った断面図。
【図8B】中央流体送出用シャフトと外部スリーブとの間に複数の膨脹式スペーサーを有する代替断熱領域配置の、図8Aと類似の断面図。
【図9】カテーテルに一方の端が連結された複数の可撓性熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの代替実施形態の先端部分の立面図。
【図9A】内部に流体循環路を有する、図9のカテーテルの熱交換要素の線9A−9Aに沿った断面図。
【図10A】熱交換を高めるためのらせん状フィンを有する本発明の離散熱交換要素の一部の詳細図。
【図10B】熱交換を高めるための外周フィンを有する本発明の離散熱交換要素の一部の詳細図。
【図11】熱交換媒体を流動させるための複数の蛇行離散要素を有する本発明の代替熱交換カテーテルの先端部分の立面図。
【図12】非円形形状および増大熱交換表面積を有する本発明の中空熱交換要素の断面図。
【図13】流体を流動させるように適合された、一方の端がカテーテルに連結された複数の可撓性熱交換要素を有する、本発明の代替熱交換カテーテルの断面図。
【図14】図13に示されている可撓性熱交換要素の1つの線14−14に沿った断面図。
【図15】同軸熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの側面図。
【図16】図15の熱交換カテーテルの基端側マニホルドの断面図。
【図17】同軸熱交換要素の1つの先端チップの拡大断面図。
【図18】図15の線18−18に沿った、熱交換カテーテルの基端シャフト部分の断面図。
【図19】図18の線19−19に沿った、熱交換カテーテルの基端側マニホルドの前板の平面図。
【図20】図16の線20−20で示されている熱交換カテーテルの基端側マニホルドの仕切板の平面図。
【図21】単ループ熱交換要素を有する本発明の熱交換カテーテルの側面図。
【図22】図21の熱交換カテーテルの基端側マニホルドの断面図。
【図23】単ループ熱交換要素の先端チップの拡大断面図。
【図24】図21の線24−24に沿った、熱交換カテーテルの基端シャフト部分の断面図。
【図25】図22の線25−25に沿った、熱交換カテーテルの基端側マニホルドの前板の平面図。
【図26】図22の線25−25に沿った、単ループ熱交換カテーテルの基端側マニホルドの仕切板の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、カテーテルの全体的な断面サイズを増大させることなく、それぞれの体液との熱交換表面積を増大させる改良型熱交換カテーテルを提供する。本発明は主として患者の血液温度を調節するために血流中で用いることを意図しているが、当業者には、本発明のカテーテルを種々の他の用途にも利用し得ることが理解されよう。さらに、本発明は、内部体液温度の制御以外の用途も有し得るので、特許請求の範囲は内部体液温度制御に限定されるべきではない。
【0038】
好ましい用途においては、患者の全身温度を調節するため、または患者の身体の局限領域温度を調節するために、本発明の1つ以上のカテーテルを患者の脈管系内に配置して血液と熱交換させる。本発明のカテーテルは、例えば、脳に向かって流れる動脈血と熱交換して脳を冷却することによって、そうしなければ卒中または他の損傷の結果生じ得る脳組織に対する損傷を防止したり、あるいは、心臓に向かって流れる静脈血を冷却して心筋層を冷却し、そうしなければMIもしくは他の類似事象後に生じ得る組織損傷を防止したりするのに適当であろう。
【0039】
本明細書に開示されている熱交換カテーテルは、患者または患者の身体の特定領域の温度を調節するのに適した熱交換システムで利用し得る。本明細書に開示されているカテーテルのいずれかを利用するそのような熱交換カテーテルシステム20の1つの実施例が図
1に示されている。システム20は、カテーテル制御ユニット22と、少なくとも1つの熱交換セクション44を備えて形成された熱交換カテーテル24とを有し得る。カテーテル24の、セクション26で示されている患者内挿入部分には、1つまたは複数の熱交換セクションが配置される。この挿入部分は、カテーテルの全長より短く、カテーテルを完全に挿入したときの患者の直ぐ内側のカテーテル位置からカテーテル先端部まで及ぶ。カテーテル制御ユニット22は、熱交換流体または媒体をカテーテル24内で循環させるための流体ポンプ28と、熱交換システム20内で循環する流体を加熱かつ/または冷却するための熱交換構成部材とを有し得る。制御ユニット22には、生理食塩水、代用血漿液、または他の生体親和性流体などの熱交換流体の供給源となる容器すなわち流体バッグ30が連結され得る。カテーテル内の熱交換流循環路はそれぞれ、熱交換流体を循環させて選択された体領域内で流体流を冷却するためのポンプ28の流入導管32と流出導管34とに連結され得る。類似の配置で、選択された体領域の加熱とシステム部品の冷却とを同時または別個に実施し得る。
【0040】
制御ユニット22は、例えば、カテーテルからのフィードバックを供給する固体熱電対、および深部温度または身体の選択された器官もしくは部分の温度を表す患者の温度情報を供給する種々のセンサーであり得る様々なセンサーからデータをさらに受信し得る。例えば、センサーは、脳または頭部領域温度プローブ36、直腸温度プローブ38、鼓膜温度プローブ40、食道温度プローブ(図示せず)、膀胱温度プローブ(図示せず)などを含み得る。
【0041】
制御ユニット22は、探知された温度および状態に応答して、カテーテルの加熱または冷却を誘導し得る。制御ユニット22は、熱交換器を第1探知温度で作動させたり、熱交換器を第1探知温度に比べて高いかもしくは低い温度または任意の他の所定温度であり得る第2探知温度で作動停止させたりし得る。制御ユニット22は、複数の体領域で所望または予め選択された温度を達成するために、複数の選択された熱交換セクションを独立して加熱または冷却し得ることは勿論である。同様に、制御ユニット22は、患者の身体の複数の特定領域の温度を制御するために2つ以上の熱交換器を作動させ得る。制御ユニットはまた、探知温度に応答して、他の装置、例えば、外部加温ブランケットなどを作動または作動停止させ得る。熱交換カテーテルまたは他のデバイス上で実施される調節は、簡単なオンオフ制御の場合もあるし、加熱度または冷却度の調節、加熱または冷却ランプ速度、熱交換領域の温度または患者の体温が目標温度に近づくのに対応した比例制御などを含む、かなり複雑な制御計画の場合もある。
【0042】
カテーテル制御ユニット22はさらに、閉ループカテーテルシステム内の同一または異なる伝熱媒体を用いて加熱と冷却とを共に実施するように選択的に作動させられる熱電クーラーおよびヒーター(ならびに関連流路導管)を有し得る。例えば、少なくとも1つの温度調節カテーテル24の挿入部分26に配置された第1伝熱セクション42は、頭部隣接領域、または、頚動脈もしくは脳に通じる他の血管内で冷溶液を循環させ得る。頭部温度は、患者の比較的外表面に近い部分または選択された体領域に配置された温度センサー36を用いて局所的にモニターされ得る。同様に挿入部分26に配置されたカテーテル24の別の伝熱セクション44は、折りたたみ可能なバルーン内で加熱溶液を循環させるか、さもなければ、加熱要素または本発明の他の態様に従って記載されている他の機構を介して他の体位置に熱を供給し得る。熱交換カテーテル24は、神経保護のために脳領域に局所低体温をもたらし得るが、身体の他の部分は、不快感、悪寒、血液凝固傷害、免疫不全などの有害な副作用を回避または最小限にし得るように比較的温かく保ち得る。さらに、首から上の頭部領域を冷却してい間において、首から下の身体の加温は、概して断熱するか、または身体の首から下を加熱パッドもしくはブランケット46で包むことによって行なわれる。勿論、カテーテル24の複数の熱交換セクションは、全身を冷却または加温して身体の深部温度を変化させるように改変し得るものと理解されたい。
【0043】
図2は、体腔、この場合には血管BV内に挿入された本発明の1つの特定の熱交換カテーテル50を示している。血流Fは右方向の矢印で示されている。熱交換カテーテル50は、刺創54を介して血管BV内に達するように適合された長尺状シャフト52を有している。カテーテル50は、体外に残る基端部と、体腔内に挿入される先端部とを有する。
【0044】
カテーテル50の血流に浸漬される先端部分に沿って熱交換領域56が設けられている。熱交換領域56は、図1に関して上述した熱交換領域42または44のいずれかに相当する。示されている実施形態は、図3〜図6にさらに詳細に示されており、後に説明するように、カテーテルのシャフト52に連結された、血液との熱交換を高めるための複数の熱交換要素58を備えている。熱交換領域56は、本出願に開示されている他の実施形態のいずれと置き換えてもよい。
【0045】
図3を参照すると、熱交換カテーテル50は、先端部に熱交換領域56を有し、基端部に複数のポート60が設けられた上述の長尺状シャフト52を有している。特に、カテーテル50は、流体流入ポート60aと、流体流出ポート60bと、ガイドワイヤ挿入ポート60cとを備えている。
【0046】
図4Aは、図3の線4A−4Aに沿った、長尺状シャフト52の断面を示しており、シャフト内には3つの管腔が設けられている。ガイドワイヤ管腔62は、概して、2つの伝熱流体循環管腔64および66の間に配置されている。一方の循環管腔64は流体流入ポート60aと流体連通しており、他方の循環管腔66は流体流出ポート60bと流体連通している。しかし、例えば、以下に説明するような血流との向流を達成するために、反対方向の流れが望ましい場合には、いずれかの管腔を流入管腔として機能させ、他方の管腔を流出管腔として機能させ得ることが容易に理解されよう。したがって、流れ方向は、容易かつ所望の通りに反対方向に変更し得る。
【0047】
図4Bは、長尺状シャフト52の代替断面を示しており、中央に配置されたガイドワイヤ管腔62′は、2つの伝熱流体循環管腔64′,66′の間に配置されている。
シャフト52の断面形状は、カテーテルのハブ68との接合部から先端部69までに及んでいるのが好ましい。あるいは、カテーテルの最先端部分は、ガイドワイヤ管腔またはその延長部だけからなっていてよい。図3の図は、破断線によって示されているようにいくぶん省略されており、この実施形態のカテーテル50は、長さが60〜150cmの範囲であり得る。
【0048】
熱交換領域56は、流出マニホルド70から始まって、そこから先端側に配置されている流入マニホルド72で終端する。流入マニホルド70と流出マニホルド72の間には、複数の上述の熱交換要素58がシャフト52に隣接し、かつほぼ平行に伸びている。各要素58は、その少なくとも一方の端が熱交換領域56に連結されており、かつ内部に体液を含有する体液体腔内に挿入したときに体液が各熱交換要素の外周を取り囲むように、その長さの少なくとも一部がシャフト52から横方向に離間されて配置される。用語「外周を取り囲む」とは、各熱交換要素58の断面が円形であることを意味するのではなく、横断面で見たときに、各熱交換要素の周縁が体液で取り囲まれることを意味する。こうすることによって、カテーテル50の有効伝熱表面積が大きくなり、体液との熱交換が容易になる。
【0049】
図5Aの断面に見られるように、カテーテルのシャフト52の外周に沿って6つのそのような熱交換要素58が均一に分散配置されている。以下の説明から理解されるであろうように、本発明のカテーテル50を用いると、2つ程度の熱交換要素58を設けるだけで熱交換を改良することができる。例えば、図5Bは、3つの熱交換要素58′を有する代
替実施形態を示している。示されているように、熱交換要素58は、シャフト52の外周の周りに均一に分散配置されているが、図8に示されているものなどの他の配置も可能である。
【0050】
本発明の熱交換カテーテル50は、図6で最もよく分るように、内部に循環流体流路を備えている。示されている実施形態では、循環流体流路は、長尺状熱交換要素58全体に伸びている。図6では、上管腔64は熱交換媒体流入管腔として機能している。しかし、下管腔66は熱交換媒体流出管腔として機能している。熱交換要素内の熱交換流体の流れ方向を示されているものと反対方向にしたい場合には、これら2つの管腔の機能を逆にすることにより容易に達成され得る。
【0051】
カテーテル50の熱交換領域56の循環流路は、図6では流れ矢印74,75で示されている。特定的に言えば、熱交換媒体は、流入管腔64を通って先端方向に流れ、流入マニホルド72内に画定された内空間78と流体連通しているポート76に達する。各熱交換要素58は、内空間78と流体連通している流入オリフィス80を有する中空チューブとして形成するのが望ましい。同様に、各熱交換要素58は、流出マニホルド70内に画定された内空間84と流体連通している流出オリフィス82を有している。流出管腔66は、流出オリフィス82から流出する熱交換媒体を受容するポート86を有している。流出管腔66内に設けられた栓部材88は、熱交換媒体が流出マニホルド70を通過して先端方向に流れ続けるのを阻止し、一方、栓部材89は、管腔64および66の先端部を閉鎖している。循環流路を反復するために、熱交換媒体は、流入管腔64を通って先端方向(矢印74)に流れ、ポート76から流れ出て、流入マニホルド72内の空間78に入り、空間78内を流れて各熱交換要素58の流入オリフィス80に入り、熱交換要素を通って基端方向(矢印75)に流れ、流出オリフィス82から流出マニホルド70内に形成された空間84内に流れ込み、ポート86を通過し、熱交換媒体をカテーテル50の基端部に送り返す流出管腔66に入る。この場合も、熱交換要素を通る熱交換流体の流れは、カテーテル挿入法に応じて、先端方向または基端方向であってよく、流れは血流の流れ方向に対して並流(con−current)でも向流でもよい。
【0052】
流入マニホルド70および流出マニホルド72は、薄肉フレア型ジャケットが示されているが、様々な構造で形成され得る。マニホルド70,72は、一方の端でシャフト52の外側と接続するように移行し、そこでシールされている。対向端では、各マニホルド内の開放領域が熱交換要素58の先端を受容し、適切な接着剤であり得る注封材料90が、循環流路の外面から内空間78,84をシールしている。このように、熱交換要素58は、各マニホルド70,72と注封材料との間で液密シールされている。勿論、フレア型ジャケットの代わりに成形ポリマーまたは収縮包装材料などの他の構造を用いてもよいし、注封材料の代わりにシールリングなどの他の構造を用いてもよい。
【0053】
熱交換要素58は、カテーテルのシャフト52から外側にわずかに湾曲した状態で示されている。このように配置することにより、図2に見られるように、所与の流体流速に対する伝熱性能が大きく高められるように、使用時に要素58が体液で取り囲まれることが保証される。すなわち、熱交換媒体は、カテーテルの先端部で分かれ、それぞれが連続外面を有する複数の熱交換要素58を通過する複数の平行路を通って基端方向に流れる。この配置は、図5Aおよび図5Bに最もよく示されている。さらに、流入管腔64と外部体液との間でシャフト52の壁を介してある程度の熱交換が行われる。
【0054】
熱交換要素58とシャフト52とを確実に分離する1つの手段は、図6に92で示されているものなどのばね部材を熱交換要素58とシャフト52との間に設けることである。ばね部材92は、各熱交換要素58の半径方向内側部分に連結され、シャフト52に向かって片持梁のように突き出て、シャフト52と接触状態になっているのが好ましい。カテ
ーテル50の挿入時には、外力によって熱交換要素58が内側に押されてばね部材92を圧迫し、ばね部材92はシャフト52に対して摺動する。適切な体腔内に配置されると、ばね部材92が拡がって、熱交換要素58を半径方向外側に最適な熱交換位置に移動させる。ばね部材92は、血液流路内で比較的小さな外形を有し、それによって血流に対する妨害を最小限にするのが有利である。
【0055】
使用時に熱交換要素58とシャフト52との分離を確実にする別の構造は、熱交換要素として膨脹式薄肉チューブを設けることである。これらの要素は、流入マニホルド70と流出マニホルド72との間の間隔よりわずかに長い。例えば、患者に挿入する際に、要素58を収縮させると、要素58は、シャフトに平らに折りたたまれて低プロフィールとなる。使用時には、例えば加圧したり熱交換流体を流動させたりして要素58を拡張させると、要素58はシャフトから離れて外側に湾曲する。例えば、図3および図8を参照されたい。これに代わって、流入マニホルド70と流出マニホルド72の間の間隔は、シャフト52上で作動する引張ワイヤ(図示せず)または他のそのような手段を介して変えることができる。例えば、シャフト52を入れ子セクションとして構成したり、曲げられるようにしてもよく、そのようにすると、引張ワイヤを作動させて、流入マニホルド70と流出マニホルド72の間の間隔を短くすることができる。このように、要素58は、初期には、長尺状シャフト52に対して配置されているが、その後、短縮されたシャフトから離れて外側に湾曲する。
【0056】
符号58で示されているような複数の可撓性熱交換要素を備えることの別の利点は、熱交換領域56の断面輪郭が容易に蛇行した体腔と合致することである。すなわち、図5Aで最も良く分るように、個々の熱交換要素58それぞれの間に設けられている外周ギャップによって、熱交換要素58が一方側または他方側に集まるように、熱交換要素が半径方向および円周方向に移動し得る。この位置移動達成能力によって、熱交換領域56を狭い体腔または蛇行した体腔内に配置し、熱交換流体流を作動させて、熱交換領域の周囲の血流を過度に制限することなく、熱交換要素を膨脹させる能力が大いに高められる。一般に、熱交換要素による通路妨害が血管の断面積の50%以下であれば、血管内で適切な流れが保たれることが判明した。
【0057】
本発明の熱交換カテーテル100の代替実施形態が図7に示されている。カテーテル100は、熱交換媒体循環路が内部に設けられており、かつカテーテルのシャフト104から離れた複数の長尺状熱交換要素102が循環路の一部を構成しているという点で先に説明したカテーテル50と類似している。しかし、図7の実施形態において、熱交換領域106は、カテーテルのシャフト104の全長に沿って延びている。
【0058】
各熱交換要素102は、長尺状中空フィラメントとして形成するのが好ましい。熱交換カテーテル100は、内部シャフト104内に形成された内管腔もしくは管腔108と、カテーテルの先端部に設けられたマニホルド112内に形成された空間110とを有する循環路を内部に有しており、熱交換要素102の中空管腔は空間110と流体連通している。内部シャフト104の基端部は、管腔108と連絡する内部チャンバ116を有する流入管継ぎ手114内に嵌合している。内部シャフト104は、流出管継ぎ手120内に形成されたチャンバ118を通って延び、熱交換要素102の基端部は注封材料122を用いてチャンバ118と流体連通した状態でシールされている。このように、チャンバ116に入る流体は、矢印124で示されているように管腔108内に誘導され、かつ矢印126で示されているようにカテーテル100を通って先端方向に流れる。先端側マニホルド112では、流体は熱交換要素102の中空管腔内に180°方向が変えられる。この場合も、空間110内の要素102の先端部のシールには注封材料128が用いられている。流体は、矢印130で示されているように、要素102を通って基端方向に流れ、熱交換要素から出て、チャンバ118内に入り、矢印132で示されているように、該チ
ャンバから排出される。
【0059】
カテーテル100の全長に沿って熱交換領域106を設けることの利点は、体液との熱交換容量が大きくなることである。さらに、カテーテル100が、その長さの100%にわたって熱交換領域106を有していると、全身加熱または冷却をより効率的に提供し得る。さらに、先に説明したカテーテルの場合、カテーテルの熱交換領域部分ではない基端部分を介して体液との間である程度の熱交換が行われ得る。他方、図7の実施形態の場合、カテーテル全体が体液と熱交換するように設計されている。
【0060】
図8は、先端部分に熱交換領域152を有し、基端部分に断熱領域154を有する熱交換カテーテル150のさらなる実施形態を示している。例示されている実施形態において、熱交換領域152および断熱領域154は、長さがほぼ等しく、どちらもカテーテル150の全長の約50%である。好ましい実施形態において、断熱領域154は、熱交換領域152より実質的に長く、好ましくは、カテーテル150の長さの少なくとも75%である。熱交換領域152と断熱領域154を合わせた長さがカテーテル100の全長にほぼ等しいのが望ましい。1つの特定の実施例においては、断熱領域がカテーテルの全長の約85〜90%に及び、残りの10〜15%が熱交換領域である。勿論、断続的な断熱領域および点在する断熱領域と、熱交換領域とを含む種々の代替配置も考えられる。
【0061】
先に述べたように、図8のカテーテル150は、熱交換媒体流入ポート160と、熱交換媒体流出ポート162とを備えている。長尺状シャフト164内には、流体循環路(図示せず)が設けられている。熱交換領域152内のシャフト164と平行に、但し離間されて複数の長尺状熱交換要素166が配置されている。熱交換要素166は、カテーテル150内の流体循環路の個別部分を構成する中空フィラメントであるのが好ましい。このために、先端側マニホルド168は、熱交換要素166の先端部を受容し、基端側マニホルド170は基端部を受容する。マニホルド168,170は、内部で流体流空間を画定しており、先端側マニホルド168内の空間は、流入ポート160と流体連通しており、基端側マニホルド170内の空間は流出ポート162と流体連通している。このように、液体熱交換媒体は、ポート160内に流入してカテーテル150の先端部に流れた後、中空熱交換要素166を介して流出ポート162に戻る。
【0062】
断熱領域154は、シャフト164の周りに長手方向に配置された断熱部材172を有している。断熱部材172は、固体スリーブまたは液体充填バルーンを含む様々な構造であり得る。好ましい実施形態において、断熱部材172は、拡張ポート173と連絡する内空間を有する膨脹式バルーンを備える。窒素ガスまたは二酸化炭素ガスなどの適当な断熱流体でバルーン172をシャフト164の側面から離れて膨脹させる。このように、シャフト164の全長が体液に浸漬しても、熱交換領域152のみで体液との効率的な熱伝達が行われる。
【0063】
図8Aに見られるように、シャフト164は、例えば、シャフトが膨脹した断熱部材172の側面に押し付けられるのを阻止し、かつ断熱部材の断熱容量を構成する折りたたみ可能な支柱175によって断熱部材172内に断熱部材から離間されて中心に配置し得る。支柱175は、カテーテルの挿入または抜出時に断熱部材を収縮させると、断熱部材がカテーテル全体のプロフィールを有意に増大することなく、シャフトに折りたたまれるように、比較的薄く、可撓性であり得る。
【0064】
これに代わって、図8Bに示されているように、断熱部材は、シャフト164を挿入する中央管腔と、中央管腔を取り囲む膨脹式断熱管腔179とを有する多管腔薄肉バルーンであり得る。断熱領域全体を断熱スリーブ181で取り囲んでもよい。
【0065】
断熱領域と熱交換領域とを有する図8の配置は、脳に流れる血液を冷却してカテーテルの冷却作用を局所誘導するのに特に有用であろう。血液の冷却または加温の有効性は、一部には、血液と接触する熱交換領域表面の温度と、血液温度との温度差に依存する。本明細書において、この温度差はΔTと称される。カテーテル150は、例えば、大腿動脈に挿入され、血管系を介して、例えば、大動脈まで通過させて、熱交換領域152を頚動脈内に配置され得る。熱交換流体はカテーテル150内を循環し、断熱領域154のおかげで熱交換領域152に達するまで冷たいままに保たれ、ゆえに、最大ΔTが維持される。断熱領域154が無ければ、熱交換媒体の有効性は減少し、所望の位置、この場合には頚動脈における血液の冷却度が有意に低下し得る。
【0066】
さらに、局所冷却作用は、後続して所望の体領域に循環しない血液との熱交換によっても低下し得る。上記の脳を局所的に冷却する実施例において、断熱領域154は、冷たい熱交換流体が患者の体幹および脚に循環される大腿動脈および下行大動脈の動脈系内の血液と熱交換するのを阻止する。このように、後続して身体の他の領域に循環する血液を冷却すると、全身が全体的に冷却され得る。この全体冷却はある種の用途には望ましいかもしれないが、心臓または脳の局所または限局冷却を実施しようとする場合などの他の用途には望ましくないであろう。この点で、そのような全体冷却により、悪寒などの不快感、または局所冷却により回避し得る全身低体温の他の不快な副作用が患者に発生し得る。
【0067】
ここまでにおいて、熱交換要素は、流体流路の一部を構成し、カテーテルのシャフトに両端が連結された中空フィラメントとして説明してきた。しかし、本発明は、複数の相異なる熱交換要素がその両端でシャフトに連結されなくてもよく、その代わりに、熱交換要素の自由端が体液内に自由に浮動し得るようにシャフトに関してその長さの一部に沿って拘束され得るという点で、より一般的な性質を有するものである。自由浮動する要素は、内部「袋小路」(cul−de−sac)型流体流路を画定するのが望ましい。
【0068】
特に、図9は、長尺状シャフト182と、シャフトに取り付けられた複数の熱交換要素184とを有する本発明の熱交換カテーテル180を示している。熱交換要素184は、先端部がシャフト182に連結されており、先端チップ186で略自由浮動している。これらの要素184は、カテーテル180の挿入および抜出時にシャフト182の外側に押し付けられて低プロフィールとなるように、可撓性かつ折りたたみ可能であるのが好ましい。さらに、要素184が可撓性であることによって、蛇行通路における配置および通過が容易になり、膨脹させたときに血管を通る血流に対する制限が最小限になる。任意の1つのカテーテル180に沿った複数の要素184は異なる長さを有していてよいことに留意されたい。カテーテル180はさらに、上述のような単または多管腔バルーンであり得る基端断熱部材188を有していてよい。
【0069】
熱交換要素184は、様々な構造で設けることができる。熱交換要素184はそれぞれ内部で流体を循環させ得る。図9Aの断面図は、流体流入路190と、それに平行する流体流出路192とを有する熱交換要素184を示している。流路190、192は、シャフト182内に設けられた主循環路と流体連通状態で配置されている。このように、熱交換要素184は、第1実施形態に関して上述した要素58にいくぶん類似しているが、体液内での自由浮動度がいくぶん高い。さらに、要素184は、一方の端だけで連結されているために、蛇行通路を通ってカテーテル180を進める際に要素184がシャフト182の外周の周囲でより自由に移動し得る。この特質を有するさらなる実施形態が図13および図14に見られる。
【0070】
体液と本明細書に記載の熱交換要素との熱交換をさらに容易にするために、各要素に、流動中断リブまたは他の中断部(discontinuity)を備え得る。流体流路内の物体周囲の層流境界層を減少させると、物体と流体とのポテンシャル熱交換が増大する
ことは周知の熱交換原理である。例えば、図10Aは、らせん状リブ202が上に巻かれた管状熱交換要素200を示している。図10Bに見られるように、熱交換要素206上の円周方向リブ204を含む他のそのような配置も可能である。
【0071】
熱交換要素と体液との熱交換をさらに容易にするために、カテーテルの全断面積を有意に変えることなく、それらの要素の表面積をいくつかの方法で増大させることができる。例えば、図11は、複数の波型熱交換要素212が、シャフト218上に設けられた先端側マニホルド214から基端側マニホルド216まで延びる、本発明のカテーテル上の熱交換領域210を示している。換言すると、要素212は、少なくとも1つの反曲点を有する非直線形路をなして延びている。この配置によって、各熱交換要素212の表面積は、上述の要素58,102,166の低い凸面のものより大きくなる。さらに、各要素212をシャフト218に略平行かつ離間して配置することによって、狭い体腔または蛇行した体腔を通ってカテーテルを進める際に、各要素212をシャフトの外周周囲に押し付けたりかつ/またはシャフトの周囲で移動させたりすることができる。
【0072】
各熱交換要素の表面積を増大させるための別の手段は、熱交換要素の断面を完全円形断面形状から変更することである。図12は、複数の交互に外側に突出する領域222と溝224とを有する熱交換要素220の断面を示している。全断面のフットプリントは、言うなれば、仮想円220に適合するが、外部表面積は大きい。当業者には、全断面足跡を増大させずに表面積を増大させるという二重要件を満足する多くの熱交換要素断面形状が可能であることが理解されよう。
【0073】
熱交換要素の代替構造が図13および図14に示されている。カテーテルのシャフト240内には、流入流体流動管腔242と流出流体流動管腔244とが設けられている。複数の熱交換要素246は、それらを取り囲む体液中で自由に浮動し得るように、シャフト240の長さに沿って一方の端だけで連結されている。各熱交換要素246は、内側細管250とそれを取り囲む外側細管248とを含んでいる。外側細管248の先端部は閉鎖されており、内側細管250の先端部は開放され、外側細管の先端部に達しないところで終端している。内側細管250は内部で、流入管腔242と流体連通している管腔を画定している。さらに、流出管腔244は、内側細管250と外側細管248の間の環状空間と流体連通している。このように、カテーテルシャフトの流入管腔242を通って流れる熱交換流体は、矢印252で示されているように、流入細管管腔に入り、矢印254で示されているように、内側細管と外側細管の間を通って、シャフトの流出管腔244内に流れ込む。この場合の熱交換媒体循環路は、いわゆる袋小路型熱交換要素を包含する。外側細管の外面は、体液、例えば血液で取り囲まれており、したがって、熱交換流体が細管を通って循環すると、熱交換流体と体液の間で熱伝達が行われ得る。流体の流れ方向は逆にすることが可能であり、流れ構造は例示されているものと全く同じである必要はない。例えば、シャフト内の流入管腔と流出管腔は同軸である必要はなく、他の配置も可能である。
【0074】
熱交換要素のさらなる代替構造が図15〜図20に示されている。この実施形態は、基端側マニホルド300と複数の熱交換要素302とを有しており、個々の熱交換要素302の基端部分は、束ねられるか、またはシャフトもしくはスリーブ306内に配置される。熱交換要素302の先端部分は、スリーブ306の先端部から突出し、先端部を越えて自由に延びる。
【0075】
特に図15を参照すると、カテーテルは、基端側マニホルド300を通り、熱交換要素302の先端部を越えて延びるガイドワイヤチューブ304を有している。スリーブ306は、カテーテルの実質的に全長に沿って、(可撓性チューブを包含する)複数の熱交換要素302とガイドワイヤ304とを実質的に取り囲む可撓性管状構造を包含し得る。熱
交換要素の、スリーブ304の先端部を越えて突出する部分は、本発明のこの特定実施形態の熱交換領域を画定している。場合により、管状スリーブ306は、複数の熱交換要素302を単一の小さな輪郭のチューブ内に収束させやすくするように、基端部308でフレア型にされ得る。
【0076】
熱交換要素302は、拘束されておらず、管状スリーブ306の先端部310を越えて体液に任せて自由浮動する。示されている実施形態は、8つの熱交換要素302を示しているが、それ以外の数も可能である。ガイドワイヤチューブ304は、概して熱交換要素302より剛性である。先ず、熱交換要素302のルース部分とガイドワイヤチューブ304とを連結させる一時連結手段(図示せず)を設けるか、または熱交換要素をガイドワイヤチューブにゆるく連結させる一時的接着剤を適用する。そのような連結手段は、熱交換要素302およびガイドワイヤチューブ304の全体を取り巻くゴム弾性バンドの形態であり得る。そのような弱い一時連結部は、カテーテルの操作中に要素302を膨脹させたときに広げられるが、または他の適当な手段で分離され得る。
【0077】
図17の詳細図および図18の断面図に見られるように、熱交換要素302は、それぞれが内側管腔312と外側管腔314とを有する複数の同軸チューブを含んでなる。各要素302の先端部316で外側管腔314は閉鎖され、内側管腔はこの先端部に達しないところで終端している。流れ矢印は、内側管腔312を先端方向に通過し、先端部316で方向を変え、外側管腔314を通って基端方向に流れる熱交換媒体を示している。
【0078】
図16に見られるように、基端側マニホルド300は、概して2つの等しいチャンバ、すなわち流入チャンバ318と流出物チャンバ320とに分れた容器を含んでなる。流入チャンバ318は流体流入ポート322を有し、流出物チャンバ320は流体流出ポート324を有している。2つのチャンバ318、320は仕切板326によって分離されている。熱交換要素302はそれぞれマニホルド300の前板328を通過する。
【0079】
図16および図17に見られるように、内側管腔312は、流入チャンバ318で終端する流入チューブ330内で画定されている。同様に、外側管腔314は、流出チャンバ320で終端する流出チューブ332内で画定されている。流入チューブ330と流出チューブ332は、図19に見られるように、前板328に形成された通し孔334を通過する。各通し孔334は、チューブ330,332の周りで液密シールされている。前板328には、ガイドワイヤチューブ304を通すための中央孔335も設けられている。ガイドワイヤチューブ304はシールされた状態で中央孔335を通って延びている。図20を参照すると、仕切板326は、ガイドワイヤチューブ304の周りで液密シールされた中央孔338を有している。ガイドワイヤチューブ304はマニホルド300の裏板に設けられた単一孔340を通過して延びている。各流入チューブ330は、仕切板326の孔336を通過し、孔336に関して液密シールされている。
【0080】
使用時には、カテーテルを血管内に挿入し、熱交換流体を流入ポート322を介して流入チャンバ318内に導入する。次いで、熱交換流体は各流入チューブ330の開放基端部へ、次いで各熱交換要素302の内側管腔312内に流入する。流体は、各熱交換要素302の長さに沿って先端部316まで流れ、そこで方向を変えて外側管腔314に内に流れ込む。次いで、流体は、図17に見られるように、外側管腔314を通って基端方向に流れ、各流出チューブ332の開放基端部に達する。熱交換要素302が初期に折り畳まれた状態にある場合、熱交換流体の流れによって熱交換要素が膨脹し、それによって、連結手段が分断され、次いで各要素が分離し得る。最後に、流体は流出チャンバ320内に流れ込み、流出ポート324を介してマニホルド300から流出する。このように、熱交換流体は熱交換カテーテル内を循環し得る。熱交換流体が外側管腔314を通って基端方向に戻るとき、熱交換流体は、熱交換要素302の外壁を介して熱交換要素表面を通り
越して流れる血液と熱交換する。
【0081】
示されている実施例は、内側管腔312を通って先端方向に、また外側管腔314を通って基端方向に循環する流体を示しているが、当業者には、熱交換流体を流入チャンバ内に導入し、熱交換流体を流出チャンバから排出させるだけで、流れ方向を逆にし得ることも理解されよう。一般に、向流熱交換、すなわち、血流が外側管腔314内の熱交換流体の流れと反対方向であるのが望ましい。熱交換要素302の先端部が下流になるように熱交換要素が血流中に存在し、血液がカテーテル表面に沿って基端側から先端側に流れている場合、熱交換流体の流入流は内側管腔312を通るのが望ましく、流出流は外側管腔314を通るのが望ましい。この流れ配置は、血液が先端側から基端側に流れても、熱交換要素がカテーテルの基端部に向かって後向きに脱出かつ浮動する傾向があるために、先端部に自由浮動熱交換要素を有するカテーテルには好ましい。そのような配置において、熱交換流体がカテーテルから外側管腔314を通って逆に流れる場合に向流が達成される。
【0082】
図26〜図31に示されている代替実施形態を参照すると、本発明の熱交換カテーテル350は、カテーテルの全長に及ぶ、単管腔チューブループからなる複数の熱交換要素を備えている。各単管腔チューブの流入端は、マニホルドの流入貯蔵部に向かって開いており、その流出端は流出物貯蔵部に向かって開いている。熱交換流体は各熱交換要素の全長に沿って循環する。
【0083】
特に図21を参照すると、単ループ熱交換カテーテル350は、その基端領域に、基端側マニホルド352と、複数の同軸熱交換要素354と、ガイドワイヤチューブ356と、熱交換要素を取り囲む基端管状スリーブ358とを備えている。示されているカテーテル350は、それぞれが長い単管腔チューブループからなる8本のそのような熱交換要素354を示している。勿論、当業者には、熱交換要素の数は様々であり得ることが理解されよう。管状スリーブ358の基端部360は、複数の熱交換要素354を単一の小さな輪郭のチューブに収束させやすくするためにフレア型にされ得る。
【0084】
スリーブの先端部362では、熱交換要素354は拘束されておらず、自由浮動し得る。ガイドワイヤチューブ356は、概して熱交換要素354より剛性であり、熱交換要素との間で一時的に緩い連結部(図示せず)を形成し得る。例えば、熱交換要素354とガイドワイヤチューブ356の全体の周りに、ゴム弾性バンドなどの連結手段を用い得る。あるいは、その代わりに、熱交換要素354を膨脹させると広がるような任意の弱い連結手段を用いてもよい。
【0085】
図22に見られるように、基端側マニホルド352は、内部で、2つの貯蔵部、すなわち流入貯蔵部368および流出物貯蔵部370を画定している。仕切板372が2つの貯蔵部368,370を分離している。流入ポート374は流入貯蔵部368と連絡し、流出ポート376は流出物貯蔵部370と連絡している。図25の正面図に見られるように、前板378は、マニホルド352の前面を構成している。
【0086】
熱交換要素354は、それぞれが内部に単管腔364を画定している複数の長い薄肉チューブを含んでなる。各チューブは、流入貯蔵部368内に配置されている開放端366を有し、仕切板372のシールされた孔380(図26参照)を通過して先端方向に延びている。チューブは、流出物貯蔵部370を通過し、前板378のシールされた孔382(図25参照)を通過する。チューブは、先端方向に延び、管状スリーブ358のフレア型部分360で収束し、先端部362から出る。各熱交換要素354は、先端部362からある距離延びて、図23に示されている先端側屈曲部384に至る。したがって、先端の熱交換流体の流れは、先端側屈曲部384で基端方向に向きを変える。戻りチューブは再び前板378の孔382の1つを通過し、流出物貯蔵部370内で終端する。
【0087】
ガイドワイヤチューブ356は、基端ガイドワイヤ孔388、仕切板372の中央孔390、および前板378の中央孔392を通って延びて、マニホルド352を完全に通過する。ガイドワイヤチューブ356は、マニホルド352の両貯蔵部368,370からシールされている。
【0088】
使用時には、(種々の図において矢印で表されている)熱交換流体は、流入ポート374を介して流入貯蔵部368内に導入される。加圧流体は、各熱交換要素チューブ354の開放端内に流れ込み、チューブの全長を流れて、屈曲部384で向きを変え、次いで基端方向に流れ、流出物貯蔵部370内に移る。次いで、熱交換流体は、流出ポート376から流出する。先に述べたように、当業者には、本発明の基本原理を変えることなく、流れ方向を容易に逆にし得ることが理解されよう。しかし、この実施形態においては、熱交換流体は、血流と接触しているチューブ内を両方向に流れており、したがって、並流と向流が共に存在するであろう。それゆえ、チューブを通る流れの方向は、上記同軸配置の場合ほど重要な意味はない。
【0089】
本発明の熱交換要素は、主に生体親和性を考慮に入れているが、種々の材料から形成され得る。熱交換要素は、流体不透過性の、好ましくは、特定の形態のポリマーであり、かつ可撓性である。特に有用な材料の1種は、押出しおよび吹き込みにより薄肉中空フィラメントを形成し得るポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0090】
ここまで、例示のために本発明の特定の実施形態を説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明から逸脱することなく、細部に関して多くの変形を実施し得ることは明らかであろう。例として、但しそれには限定されないが、本発明のカテーテル内で流動する熱交換流体と流動する血液との間のような、2種の流動流体間で熱交換させる場合、熱交換は、両流体間に向流が散在する場合、すなわち、両流体が反対方向に流れる場合により効率的であることが判明した。本明細書に記載した実施例において、血液は、カテーテル挿入手段に応じて、熱交換フィラメントを基端側から先端側にまたは先端側から基端側に通り過ぎて流動し得る。例えば、頚静脈切開部を介してカテーテルを下大静脈内に挿入すると、血液は、カテーテルの先端部から基端部に向かって(すなわち、逆方向の流れ)熱交換領域を越えて流れるであろうし、カテーテルを大腿静脈切開部から下大静脈内に挿入すると、血液は、基端側から先端側に向かって(すなわち、前方へ)熱交換領域を越えて流れるであろう。血液と熱交換流体との向流を達成するために、記載されている本発明から逸脱することなく、シャフトの流入管腔と流出管腔とを逆にし得る。同様に、記載されている実施形態の他の変形も、権利請求されている本発明の範囲内で予測される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端及び先端を備えた長手方向カテーテルシャフトと、
複数の熱交換要素を含む熱交換要素とを備える熱交換カテーテルにおいて、前記熱交換要素のそれぞれがある長さと対向する端部とを有し、前記カテーテルの熱交換領域が体液を含む身体の内腔または体腔内に配置される場合には、前記体液が各熱交換要素の少なくとも一部の外周を取り囲み得るように、前記熱交換要素のそれぞれが配置される熱交換カテーテル。
【請求項2】
前記熱交換要素の少なくとも一部が、その内部に流体流路を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記熱交換要素の少なくとも一部が、非円形断面を有する請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記シャフトが、流体流入管腔と、流体流出管腔と、それら管腔の間の熱交換媒体を循環させるための循環経路とを有し、熱交換要素の少なくとも一部が前記循環経路内に位置して、前記熱交換要素を介して流体熱交換媒体の循環を可能にする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
各熱交換要素が、一端に流入オリフィスを有し、かつ対向する端に流出オリフィスを有し、前記流入オリフィス及び流出オリフィスが前記循環経路と連絡している請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
各熱交換要素が、非直線状通路内を流入オリフィスから流出オリフィスへと延び、前記非直線状通路が、少なくとも1点の屈曲を有する請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテルが各熱交換要素の流入管腔及び流入オリフィスへ開口した流入マニホルドを備え、かつ前記カテーテルが各熱交換要素の流出管腔及び流出オリフィスへ開口した流出マニホルドを備える請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記流入マニホルドが、前記流出マニホルドについて先端側に配置されている請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記熱交換要素が、流入オリフィス及び流出オリフィスをそれぞれ画定する対向する開口端を有する長尺状中空フィラメントからなり、各フィラメント開口端が、各マニホルド内の内部空間と連絡している請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記熱交換要素が、前記流入マニホルドと流出マニホルドとの間の距離よりも長い請求項7に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記シャフトがある長さを有し、前記熱交換領域は前記シャフトの長さの半分よりも短い距離にわたって延びている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記熱交換領域が、前記シャフトの先端部分上に位置する請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記熱交換領域について基端側に位置するシャフト上に断熱部分をさらに備える請求項11に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記断熱部分が、前記熱交換領域の基端側のシャフトの全長にわたって延びる請求項13
に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記断熱部分が前記シャフトの約85〜90%の長さに延び、熱交換領域は前記シャフトの残部にほぼ沿って延びる請求項13に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記熱交換領域に対して基端側に位置するシャフト上に断熱部分をさらに備え、前記断熱部分は前記シャフトを取り囲む膨張式バルーンを有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記シャフトは前記バルーン内にあり、前記断熱部分が、前記バルーンの内壁と前記シャフトとの間に挟まれ、かつ前記バルーンの内壁と前記シャフトとを離間している複数の隔離碍子(stand−offs)を備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記断熱部分が、前記シャフトを取り囲む複数のバルーンと前記バルーンを包囲するスリーブとを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項19】
少なくとも3つの熱交換要素を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記熱交換要素が、前記シャフトの周りに周方向に均等に分配されている請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記熱交換要素は可撓性であり、各熱交換要素の自由端が体液内を自由に漂流することが可能であるように、前記熱交換要素の各々が、前記シャフトに対して同シャフトの長さの一部に沿って拘束されている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記熱交換要素が、非常に薄い壁を有するバルーンを備える請求項21に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記熱交換要素が、それを介して高率の伝導性熱伝達を可能にする壁を有する請求項21に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記熱交換要素は中空であり、前記シャフトは流体循環路を有し、かつ前記熱交換要素の中空内部が流体循環路と流体連通している請求項21に記載のカテーテル。
【請求項25】
各熱交換要素が先端及び基端を有し、各熱交換要素の先端は前記カテーテルシャフトに取り付けられている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項26】
各熱交換要素が、先端及び基端を有し、かつ前記カテーテルシャフトの基端から前記カテーテルシャフトの先端を超えるまで延び、複数の熱交換要素は、それらの熱交換要素が分離して体液内を自由に浮動することが可能な同熱交換要素の先端以外では、前記シャフトにより互いに密着保持されている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項27】
熱交換媒体を各熱交換要素の中空内部に対して供給及び除去するために、先端側マニホルドをさらに備える請求項26に記載のカテーテル。
【請求項28】
各熱交換要素が同軸の流路を備えて形成され、前記熱交換媒体が内側管腔に供給され、かつ外側管腔から除去される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項29】
各熱交換要素がシングル管腔チューブのループを備え、前記熱交換媒体は前記チューブの管腔に供給される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項30】
各熱交換要素は、先端及び基端を有するフィラメントからなり、前記先端は前記カテーテルシャフトに取り付けられ、
各熱交換要素はばね部材をさらに有し、該ばね部材は前記フィラメントと前記シャフトとの間に位置し、かつ体腔に挿入されるとカテーテルに外力が加わることから収縮し、そのような外力が無い場合には拡張して、前記フィラメントをシャフトから径方向に所定距離だけ離間して維持するように適合されている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項31】
各フィラメントは同フィラメントの基端で前記カテーテルシャフトに取り付けられ、各フィラメントは中空であり、かつその内部に液状熱交換媒体を通過させるための流体流路を備えている請求項30に記載のカテーテル。
【請求項32】
各熱交換要素が、上部に配置された流動中断リブ(flow disrupting rib)を有する棒状フィラメントを備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項33】
前記流動中断リブが、前記フィラメントの周囲にらせん状に配置されている請求項32に記載のカテーテル。
【請求項34】
前記流動中断リブが、前記フィラメントの周囲に周方向に配置されている、請求項32に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記カテーテルシャフトが、スリーブにほぼ取り囲まれた複数の熱交換要素を備え、前記熱交換領域は前記スリーブから突出する前記熱交換要素の部分を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項36】
体液との熱交換のためのシステムであって、
液状熱交換媒体と、
基端及び先端を備えたシャフトを有する熱交換カテーテルと、前記カテーテルシャフトの先端は体腔内に経皮的に挿入可能であり、前記シャフトは同シャフトを通って熱交換媒体を循環させるために内部に循環経路を有することと、
ある長さと対向する端部とを有する複数の熱交換要素と、各要素は同要素の少なくとも一端において前記シャフトに取り付けられ、かつ各要素は、内部に体液を有する流動性の体腔内に挿入されると、前記体液が前記熱交換要素の長さの一部に沿って各熱交換要素の外周を取り囲み得るように配置されることとからなるシステム。
【請求項1】
基端及び先端を備えた長手方向カテーテルシャフトと、
複数の熱交換要素を含む熱交換要素とを備える熱交換カテーテルにおいて、前記熱交換要素のそれぞれがある長さと対向する端部とを有し、前記カテーテルの熱交換領域が体液を含む身体の内腔または体腔内に配置される場合には、前記体液が各熱交換要素の少なくとも一部の外周を取り囲み得るように、前記熱交換要素のそれぞれが配置される熱交換カテーテル。
【請求項2】
前記熱交換要素の少なくとも一部が、その内部に流体流路を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記熱交換要素の少なくとも一部が、非円形断面を有する請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記シャフトが、流体流入管腔と、流体流出管腔と、それら管腔の間の熱交換媒体を循環させるための循環経路とを有し、熱交換要素の少なくとも一部が前記循環経路内に位置して、前記熱交換要素を介して流体熱交換媒体の循環を可能にする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
各熱交換要素が、一端に流入オリフィスを有し、かつ対向する端に流出オリフィスを有し、前記流入オリフィス及び流出オリフィスが前記循環経路と連絡している請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
各熱交換要素が、非直線状通路内を流入オリフィスから流出オリフィスへと延び、前記非直線状通路が、少なくとも1点の屈曲を有する請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテルが各熱交換要素の流入管腔及び流入オリフィスへ開口した流入マニホルドを備え、かつ前記カテーテルが各熱交換要素の流出管腔及び流出オリフィスへ開口した流出マニホルドを備える請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記流入マニホルドが、前記流出マニホルドについて先端側に配置されている請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記熱交換要素が、流入オリフィス及び流出オリフィスをそれぞれ画定する対向する開口端を有する長尺状中空フィラメントからなり、各フィラメント開口端が、各マニホルド内の内部空間と連絡している請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記熱交換要素が、前記流入マニホルドと流出マニホルドとの間の距離よりも長い請求項7に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記シャフトがある長さを有し、前記熱交換領域は前記シャフトの長さの半分よりも短い距離にわたって延びている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記熱交換領域が、前記シャフトの先端部分上に位置する請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記熱交換領域について基端側に位置するシャフト上に断熱部分をさらに備える請求項11に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記断熱部分が、前記熱交換領域の基端側のシャフトの全長にわたって延びる請求項13
に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記断熱部分が前記シャフトの約85〜90%の長さに延び、熱交換領域は前記シャフトの残部にほぼ沿って延びる請求項13に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記熱交換領域に対して基端側に位置するシャフト上に断熱部分をさらに備え、前記断熱部分は前記シャフトを取り囲む膨張式バルーンを有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記シャフトは前記バルーン内にあり、前記断熱部分が、前記バルーンの内壁と前記シャフトとの間に挟まれ、かつ前記バルーンの内壁と前記シャフトとを離間している複数の隔離碍子(stand−offs)を備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記断熱部分が、前記シャフトを取り囲む複数のバルーンと前記バルーンを包囲するスリーブとを備える請求項16に記載のカテーテル。
【請求項19】
少なくとも3つの熱交換要素を有する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記熱交換要素が、前記シャフトの周りに周方向に均等に分配されている請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記熱交換要素は可撓性であり、各熱交換要素の自由端が体液内を自由に漂流することが可能であるように、前記熱交換要素の各々が、前記シャフトに対して同シャフトの長さの一部に沿って拘束されている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記熱交換要素が、非常に薄い壁を有するバルーンを備える請求項21に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記熱交換要素が、それを介して高率の伝導性熱伝達を可能にする壁を有する請求項21に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記熱交換要素は中空であり、前記シャフトは流体循環路を有し、かつ前記熱交換要素の中空内部が流体循環路と流体連通している請求項21に記載のカテーテル。
【請求項25】
各熱交換要素が先端及び基端を有し、各熱交換要素の先端は前記カテーテルシャフトに取り付けられている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項26】
各熱交換要素が、先端及び基端を有し、かつ前記カテーテルシャフトの基端から前記カテーテルシャフトの先端を超えるまで延び、複数の熱交換要素は、それらの熱交換要素が分離して体液内を自由に浮動することが可能な同熱交換要素の先端以外では、前記シャフトにより互いに密着保持されている請求項24に記載のカテーテル。
【請求項27】
熱交換媒体を各熱交換要素の中空内部に対して供給及び除去するために、先端側マニホルドをさらに備える請求項26に記載のカテーテル。
【請求項28】
各熱交換要素が同軸の流路を備えて形成され、前記熱交換媒体が内側管腔に供給され、かつ外側管腔から除去される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項29】
各熱交換要素がシングル管腔チューブのループを備え、前記熱交換媒体は前記チューブの管腔に供給される請求項27に記載のカテーテル。
【請求項30】
各熱交換要素は、先端及び基端を有するフィラメントからなり、前記先端は前記カテーテルシャフトに取り付けられ、
各熱交換要素はばね部材をさらに有し、該ばね部材は前記フィラメントと前記シャフトとの間に位置し、かつ体腔に挿入されるとカテーテルに外力が加わることから収縮し、そのような外力が無い場合には拡張して、前記フィラメントをシャフトから径方向に所定距離だけ離間して維持するように適合されている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項31】
各フィラメントは同フィラメントの基端で前記カテーテルシャフトに取り付けられ、各フィラメントは中空であり、かつその内部に液状熱交換媒体を通過させるための流体流路を備えている請求項30に記載のカテーテル。
【請求項32】
各熱交換要素が、上部に配置された流動中断リブ(flow disrupting rib)を有する棒状フィラメントを備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項33】
前記流動中断リブが、前記フィラメントの周囲にらせん状に配置されている請求項32に記載のカテーテル。
【請求項34】
前記流動中断リブが、前記フィラメントの周囲に周方向に配置されている、請求項32に記載のカテーテル。
【請求項35】
前記カテーテルシャフトが、スリーブにほぼ取り囲まれた複数の熱交換要素を備え、前記熱交換領域は前記スリーブから突出する前記熱交換要素の部分を備える請求項1に記載のカテーテル。
【請求項36】
体液との熱交換のためのシステムであって、
液状熱交換媒体と、
基端及び先端を備えたシャフトを有する熱交換カテーテルと、前記カテーテルシャフトの先端は体腔内に経皮的に挿入可能であり、前記シャフトは同シャフトを通って熱交換媒体を循環させるために内部に循環経路を有することと、
ある長さと対向する端部とを有する複数の熱交換要素と、各要素は同要素の少なくとも一端において前記シャフトに取り付けられ、かつ各要素は、内部に体液を有する流動性の体腔内に挿入されると、前記体液が前記熱交換要素の長さの一部に沿って各熱交換要素の外周を取り囲み得るように配置されることとからなるシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図9A】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図9A】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−207619(P2010−207619A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132357(P2010−132357)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【分割の表示】特願2001−517953(P2001−517953)の分割
【原出願日】平成12年7月31日(2000.7.31)
【出願人】(510034982)ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【分割の表示】特願2001−517953(P2001−517953)の分割
【原出願日】平成12年7月31日(2000.7.31)
【出願人】(510034982)ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
【Fターム(参考)】
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