説明

分離膜の表面検査装置および表面検査方法

【課題】従来の表面欠点検査装置において十分に検出できなかった微細な凹凸の疵等の欠点を、分離膜の地合いの散乱の強さを問わず、十分に検出できる表面検査装置および表面検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】分離膜を照明する照明装置2と分離膜3からの反射光を受光する撮像装置1と、撮像装置の出力信号を処理して前記被検査物の欠点を検出する画像処理装置を備えた表面検査装置であって、前記撮像装置1の撮像軸と前記照明装置2の照射方向が前記分離膜3の法線方向に対して同じ側であり、前記照明装置2はライン状で指向性の高い光を分離膜3に照射し、前記撮像装置の撮像軸と分離膜表面との交点を前記照射域における最大光量を得られる位置に設定し、なおかつ、前記照明装置の照射方向と前記分離膜表面に対する角度より、前記撮像装置の撮像軸と前記分離膜表面に対する角度が大きい、ことを特徴とする表面検査装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜の表面検査装置および表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不透明のシート体の表面に生じる微細な凹凸欠点の検出方法として、特許文献1に開示されている方法がある。この方法は、撮像装置と照明装置をシート体の法線方向に対し同じ側に配置することで正常部分からの正反射成分を受光しないようにし、欠点部分のコントラスト(ここでは正常部と欠点部の受光量差を指す。)を大きくし、微細凹凸欠点を検出するものである。
【0003】
図5は、特許文献1に記載されている欠点検査装置の光学系を表した図である。図5において、照明装置52から照射された光はシート体53により反射され、その一部が撮像装置51で受光される。ここで、6は微細凹凸欠点からの散乱成分を示し、4は微細凹凸欠点がない場合の正常部分からの正反射成分を示す。撮像装置51と照明装置52をシート体53の法線方向に対して同じ側に配置することにより、シート体53の正常部分からの正反射成分を受光しない構成に設定して、微細な凹凸を強調して明欠点として検出する。
【0004】
また、特許文献2には、不織布等の線状体が組織を構成するシート体の欠点検出方法として、シート体からの反射散乱光と透過散乱光を同時に受光して光量の和の分布変化からキズや孔開き等の欠点を検査する方法および装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3および4には、鋼板や磁気シートなど、不透明のシート体表面に生じる微小凹凸キズや線状キズの検出方法として、照明装置と撮像装置をそれぞれ特定の角度に配置し、照明装置よりライン状光を照射して撮像装置の受光する正常部表面からの正反射成分を抑え、欠点部分からの反射散乱光を効率よく受光する検査装置が開示されている。
【0006】
本発明の検査対象となる分離膜の製造方法の一例が特許文献5に開示されている。この分離膜は以下の方法で製造される。不織布等の多孔質基材の表面に、樹脂と開孔剤、溶媒を含む原液を塗布し、原液の一部が基材に含浸した状態の皮膜を形成する。その後に前記皮膜を凝固させ、基材表面に多孔質樹脂層を形成する。
【0007】
図6は、特許文献5に開示されている製造方法で製造された分離膜に見られる、塗布した樹脂面上に樹脂の一部のめくれと盛り上がりを伴う凹凸欠点の概略図を示したものである。図中、8は塗布膜(樹脂層)、9は不織布、10は盛り上がりを伴う凹凸欠点をそれぞれ示したものである。欠点は分離膜の法線方向に数mm程度の大きなものである。
【0008】
この特許文献5に記載されているような製造方法で製造された分離膜の欠点を検査する場合、以下に示す理由により、上記特許文献1〜4に開示されている欠点検査方法をもってしても、検査が困難な場合があった。
【0009】
すなわち、特許文献1に開示されている欠点検査装置を用いて不透明かつ光を散乱させる性質を有する分離膜の欠点を検査する場合は、図7に示す特許文献1の検査装置を分離膜に用いた場合の模式図のように、分離膜3で反射された光は、正反射成分4と散乱成分5を含む。撮像装置51では、散乱成分5と微細凹凸欠点からの散乱成分6との合成光を受光し、欠点部分のコントラストが低下し、微細な欠点を見逃す可能性がある。
【0010】
また、特許文献2に開示されている欠点検査装置を用いて不透明かつ光を散乱させる性質を有する分離膜の欠点を検査する場合は、樹脂面側表面と不織布側表面の両面から照明を照射するため、検出対象である、樹脂面側表面に生じる凹凸欠点部のコントラストが低下して検出精度が低下する可能性がある。
【0011】
また、特許文献3および4に開示されている欠点検査装置を用いて不透明かつ光を散乱させる性質を有する分離膜の欠点を検査する場合は、光を散乱させる性質を有する樹脂膜を検査する場合、正常部からの散乱光も凹凸欠点部からの散乱光とともに受光するため、凹凸欠点部のコントラストが低下し、正常部と欠点部の判別が困難になる可能性がある。
【特許文献1】特開2002−5845号公報
【特許文献2】特開平8−50105号公報
【特許文献3】特開2006−242886号公報
【特許文献4】特開2006−258662号公報
【特許文献5】PCT国際出願公表WO02/064240号公報
【非特許文献1】中川清隆(立正大学)、“中川用語集”、[online]、[平成19年7月17日検索]、インターネット〈URL:http://es.ris.ac.jp/~nakagawa/term_collection/yogoshu/ll/so.htm〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述する課題を解決するもので、従来の表面欠点検査装置において十分に検出できなかった微細な凹凸の疵等の欠点を、分離膜の地合いの散乱の強さを問わず、十分に検出できる表面検査装置および表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成して得られた分離膜の樹脂面側表面の欠点を検出する分離膜の表面検査装置において、前記分離膜の照射域に光を照射する照明装置と、前記分離膜からの反射光を受光する撮像装置と、該撮像装置の出力信号を処理して前記分離膜の欠点を検出する画像処理装置とを備え、前記照明装置は、ライン状で広がり角度が2°以内である出射光を前記照射領域に照射するものであり、前記撮像装置の撮像軸と前記分離膜表面との交点が前記照射域中にあり、かつ、前記照射域と前記分離膜表面の法線とを含む平面に対して前記撮像装置と前記照明装置とが同じ側であり、かつ、前記照明装置の照射中心軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記照射中心軸と前記分離膜表面とがなす角度θ2より、前記撮像軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記撮像軸と前記分離膜表面とがなす角度θ1が大きいことを特徴とする分離膜の表面検査装置が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態として、前記角度θ1と、前記角度θ2とが、以下の関係式を満たすことを特徴とする分離膜の表面検査装置が提供される。
【0015】
15°≦θ1−θ2≦25°
5°≦θ2≦20°
また、本発明の好ましい形態として、前記画像処理装置は、検出した欠点の幅、長さ、面積を測定し、製品の欠点であるかを判断するものであることを特徴とする分離膜の表面検査装置が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態として、前記分離膜が平面体であることを特徴とする分離膜の表面検査装置が提供される。
【0017】
また、本発明の別の形態として、分離膜の照射域にライン状の光を照明して、前記分離膜からの反射光を撮像手段で受光し、該撮像手段の出力信号を処理して前記分離膜の欠点を検出する分離膜の表面検査方法であって、前記照射域と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記撮像手段による撮像と光の照射を同じ側から行い、照射される光が前記分離膜に照射される際、出射光の広がり角度が2°以内である光であり、前記撮像手段の撮像軸と分離膜表面との交点が分離膜表面における照射域中にあり、かつ、前記撮像軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、照射中心軸と前記分離膜表面とがなす角度より、前記撮像手段の撮像軸と前記分離膜表面とがなす角度が大きいことを特徴とする分離膜の表面検査方法が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態として、前記分離膜の欠点部分のみを強調した形で明欠点もしくは暗欠点として検出することを特徴とする分離膜の表面検査方法が提供される。
【0019】
また、本発明の好ましい形態として、前記画像処理手段による画像処理結果より、検出した欠点の幅、長さ、面積を測定し、製品の欠点であるかを判断することを特徴とする分離膜の表面検査方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態として、前記分離膜として平面体を用いることを特徴とする分離膜の表面検査方法が提供される。
【0020】
本発明において、広がり角度が2°以内である光は、たとえば、照明装置の光出射口から100mm離れた位置での分離膜の搬送方向の広がり幅を測定することにより、算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来の表面欠点検査装置において十分に検出できなかった分離膜の樹脂面側表面の微細な凹凸の疵等の欠点を、分離膜の地合いの散乱の強さを問わず、十分に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1Aは、本発明の一実施形態における表面検査装置の光学系を示した模式図である。また、図1Bは、本発明の一実施形態における表面検査装置の光学系を示した斜視図である。
【0023】
照明装置2は分離膜3の幅方向に光を照射する照明装置である。このとき照明装置2は搬送される分離膜3の表面に対して斜め方向から光を照射する。照明装置2は、分離膜3の幅方向に伸びたライン状で指向性の高い光、すなわち、照明装置からの出射光が分離膜に照射される際、出射光の広がり角度が2°以内である光を分離膜に照射するものが好ましい。指向性の高い光を実現するための手段としては、たとえば、光源としてハロゲン光源やメタルハライド光源を用い、光源からの光を光ファイバを通じて石英ガラスやプラスチック等を材料とするロッド端部から入射し、ロッドの円周面から光を照射するものを用いることができる。
【0024】
ロッドを使用した照明装置を用いて光の指向性を高める仕組みを、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態における光の指向性を高める照明装置の模式図である。光源21は光源部22aとミラー22bからなり、ミラー22bによって集光された光は光ファイバを通じて、ロッド23端部に入射する。ロッド23の円周面の一部には白色の縞が塗布されているか、または拡散板24が設けられており、光が散乱するようになっている。ロッド23のもう一方の端部には反射膜25が設けられている。ロッド23端部から入射した光は、ロッド23内を全反射しながら伝送する。この全反射している光のうち、拡散板24にあたった光が拡散され、ロッド23のレンズ作用により指向性を伴って射出される。さらにこのロッド23にシリンドリカルレンズを装着することで、光の指向性をさらに高めることができるので好ましい。また、ロッドの代わりに光ファイバを使用し、光ファイバの光の出射口を線状に配置し、出射光付近にシリンドリカルレンズを装着したものを用いることもできる。
【0025】
本実施形態では、指向性の高い照明装置を使用し、分離膜3の正常な部分からの乱反射を抑える。その仕組みを図3および図4を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態における指向性の高い照明装置を使用した場合の反射光の散乱分布を示した模式図である。図4は、指向性の低い照明装置を使用した場合の反射光の散乱分布を示した模式図である。図中、4は反射光中の正反射成分を示し、5は反射光中の散乱成分を示している。指向性の高い照明装置を使用した場合、図3に示すように、照明装置2から照射された光の分布がほとんど広がることなく分離膜3の表面に達するため、正常な分離膜3の表面からの反射光中の散乱成分の広がりを小さくすることができる。一方、指向性の低い照明装置を使用した場合、図4に示すように、照明装置2から照射された光の分布が広がった状態で分離膜3の表面に達するため、分離膜3の表面からの反射光中の散乱成分が大きくなり、散乱成分を撮像装置が受光するために欠点部でのコントラストを十分に得ることができず、欠点の検出が困難になる。
【0026】
図1Aに示すように、撮像装置1は、分離膜3からの反射光を受光し、受光量に応じた電気信号に変換し、電気信号を画像処理装置へ出力する。画像処理装置は、撮像装置より得た画像情報より欠点の幅、長さ、面積を測定し、製品の欠陥であるかを判断する。撮像装置1は、分離膜3の幅方向(分離膜3の搬送方向に対し、直交する方向)の検査すべき範囲の光を順次受光する。撮像装置1としては、特に限定するものではなく、分離膜3がシート状の幅のある物体である場合には、例えばラインCCDカメラを用いることが好ましい。また、撮像装置1の視野方向は照明装置2の照射幅方向と平行であり、分解能は、分離膜あるいは検出欠点の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、撮像装置にラインセンサカメラを使用した場合、幅方向の1画素あたりの分解能を50μm、搬送方向の1画素あたりの分解能を30μm程度とすることができる。
【0027】
図1Aに示す実施形態の欠点検査装置においては、この撮像装置1と照明装置2の位置関係が重要であり、撮像装置1の撮像軸と分離膜3の表面との交点が照明装置2の照射域中にあり、かつ、前記照射域と分離膜3の表面の法線とを含む平面に対して撮像装置1と照明装置2とが同じ側であることと、照明装置2の照射中心軸と分離膜3の表面の法線とを含む平面において、照射中心軸と分離膜3の表面とがなす角度θ2より、撮像軸と分離膜3の表面の法線とを含む平面において、撮像軸と分離膜表面とがなす角度θ1が大きいことが必要である。このように撮像装置1と照明装置2とを設置することにより、撮像装置1が分離膜3の表面の正常部からの正反射成分を受光しない構成とすることができる。本実施形態の光学系は図11に示す、欠点部を拡大した拡大図のように、欠点の凹凸部からの反射光を受光する構成となっているため、撮像軸と分離膜3の表面との交点が照明装置2の照射域を外れた場合、欠点部からの反射を受光できなくなり、欠点の撮像および検出が困難になる。
図8Aは、θ2が大きい場合の正反射光の散乱の様子を示した模式図であり、図8Bは、θ2が小さい場合の正反射光の散乱の様子を示した模式図である。ここで、θ2は、照明装置の照射中心軸と分離膜表面の法線とを含む平面において、照射中心軸と分離膜表面とがなす角度である。本発明者らの実験により、θ2の角度を調整することにより、正常部分の正反射光の散乱成分は図8A、図8Bに示すような分布になることがわかった。すなわち、θ2が大きい場合には、図8Aに示すように、正反射光の散乱が広い範囲に拡がっているのに対し、θ2が小さい場合には、図8Bに示すように、正反射光の散乱が狭い範囲に絞られていることがわかった。なお、この現象については、非特許文献1に記載の双方向反射率分布関数で説明することができる。双方向反射率分布関数とは、光源方向からの入射光照度に対する視点方向への反射光輝度の比率を表す関数であり、物体表面の反射特性を表現したものである。
【0028】
このように照明装置から照射される光の指向性を高め、照射する角度を低く設定することで分離膜3の正常部からの受光量を小さく抑えることができる。次に、欠点部分からの反射光の受光量を増大する方法について説明する。
【0029】
図6に本実施形態の検査対象となる欠点の断面図を示す。欠点の形状は図6に示すように、塗布層8の一部がめくれ上がり、めくれた樹脂がめくれ部分のふちに盛り上がり部分を形成した、凹凸欠点である。凹凸欠点の大きさは、およそ1〜9mmである。欠点の盛り上がり部分は製法上、一定の方向に発生することから、光を照射した際のこの盛り上がり部分からの反射光を撮像装置1で受光することにより、欠点を検出する。受光角度θ1と照射角度θ2の関係がθ1>θ2であり、θ2が5°〜20°、かつθ1−θ2が15°〜25°となるように設定することで正常部での反射光の散乱成分を抑え、ほぼ正反射成分のみとすることができ、撮像装置1は凹凸欠点の散乱成分もしくは欠点部における正反射光成分のみを受光することができ、欠点の凹凸が浅い場合でも検出することができる。ここで、θ1とθ2の関係を逆転させて、θ1<θ2とした場合、前述の図7に示す特許文献1の光学系と同等の光学系となり、撮像装置は欠点部からの反射光と正常部からの散乱光の合成光を受光することになり、欠点部のコントラストが低下し、欠点の検出精度が低下する。照明装置2はハロゲン光源もしくはメタルハライド光源をシリンドリカルレンズを使用したロッド照明に接続して、分離膜の樹脂層側表面に照射する。
【0030】
本実施形態の欠点検出のメカニズムを図10、図11を用いて以下に説明する。
【0031】
図10は本発明の一実施形態における表面検査装置による分離膜上の検査を示したものである。図11Aは図10の分離膜上の正常部(欠点のない部分)を拡大した拡大図であり、図11Bは図10の分離膜上の欠点部を拡大した拡大図である。図11に示す盛り上がりを伴う凹凸欠点は、分離膜3の幅方向にわたって存在しているわけではなく、分離膜3の表面に点在している。図11Aに示すように、照明装置2から照射された光11の分離膜上の正常部の正反射成分4は、前述の双方向反射率分布関数で示されるように、散乱が抑えられた状態となり、撮像装置の受光方向に正常部からの散乱光がほとんど入らない状態となる。一方、図11Bに示すように、分離膜上の欠点部分における正反射成分7は撮像装置の受光方向に進むため、欠点の凹凸部を明欠点として検出が可能となる。
【0032】
前述の各要件から外れた場合に、検出が困難になる理由を下記に示す。図11Bにおいて、撮像装置1の撮像軸と分離膜3の表面との交点が照明装置2の照射域中にない場合、正反射成分、散乱成分のどの成分も受光できない状態となり、撮像自体が困難になる。また、θ1−θ2が25°よりも大きい角度の場合、欠点の盛り上がり部分の傾斜による、照射光との正反射の関係が成り立たなくなる。θ1−θ2を25°以下にするためにθ2を20°よりも大きくした場合、図10中に示す、正常部からの正反射光による散乱成分5の分布が変化し、欠点部での正反射成分7の方向へも散乱光が生じるため、撮像装置1が欠点部での正反射成分7と正常部からの散乱光の合成光を受光することから、欠点部のコントラストが低下し、検出精度が低下する。
【0033】
検出方法については、特に限定するものではなく、例えば、取得した画像中から一定輝度以上の欠点を検出してもよいし、取得した画像に画像処理を施して、一定条件を満たす欠点を検出対象としてもよい。
【0034】
なお、本実施形態の欠点検査装置においては、撮像装置1と照明装置2とを固定して分離膜3を搬送させながら欠点の検査を行ってもよいし、位置関係を固定した撮像装置1と照明装置2とを分離膜3上を移動させながら欠点の検査を行ってもよい。
【0035】
分離膜3を搬送させながら検査を行う場合、検査を行う場所は、搬送ロール上などのバタツキの少ない搬送状態の安定した場所が好ましい。また、位置関係を固定した撮像装置1と照明装置2とを分離膜3上を移動させながら検査を行う場合、移動手段に振動対策を施すのが好ましい。
【0036】
本実施形態における画像処理装置は、撮像装置1から出力された信号を入力し、欠点部分の幅、長さ、面積等を測定し、規定している検査条件に基づいて、分離膜3の欠点を検出する。
【0037】
画像処理装置の構成については特に限定するものではなく、電子回路を用いて信号を変換して処理を行うものでも、パソコン内のプログラムによって処理を行うものでもよい。
【0038】
画像処理の方法については特に限定するものではなく、たとえば、撮像装置から画像処理装置に入力された画像信号に微分処理を施し、予め設定された閾値を用いて二値化を行ない、欠点部分の幅、長さ、面積等を測定して、あらかじめ規定している検出すべき欠点の幅、長さ、面積等と比較し、分離膜3の欠点を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態の表面検査装置は、不織布等の平面体の表面上の塗布膜に存在する微細な凹凸欠点、特に、図6に示すような欠点部の淵に盛り上がりを伴うものの検査装置として特に適している。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
図9に示す実施形態の装置を用いて実験を行った。受光角度θ1を45°、照射角度θ2を25°に設定した。照明装置2は、ハロゲン光源にシリンドリカルレンズを接続して、分離膜3の幅方向に帯状に照射する。撮像装置1はCCDラインセンサカメラを使用し、幅方向の分解能を30μm/画素とし、10m/分の速度で分離膜3を搬送させながら、欠点部を明欠点として撮像した。撮像した欠点の画像を画像処理プログラムを有するパソコンに取り込み、画像に平均化処理、微分処理を施した後に2値化処理を行って得られた2値化画像より欠点の幅を求め、一定の幅以上の欠点を不合格とすべき欠陥として検出した。この方法で検査した検査画像を図12に示す。
[比較例1]
特許文献1に記載の光学系による分離膜の樹脂層のめくれ欠点の検査画像を図13に示す。
[まとめ]
図12と図13を比較すると、図12の方が欠点部のコントラストがはっきりしていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は分離膜に限らず、不透明で反射光を散乱させる平面体の検査に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明の一実施形態における表面検査装置の光学系を示した模式図である。
【図1B】本発明の一実施形態における表面検査装置の光学系を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における光の指向性を高める照明装置の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態における指向性の高い照明装置を使用した場合の反射光の散乱分布を示した模式図である。
【図4】指向性の低い照明装置を使用した場合の反射光の散乱分布を示した模式図である。
【図5】特許文献1の検査装置の光学系を示した推測図である。
【図6】分離膜に見られる樹脂層のめくれ欠点を示した断面図である。
【図7】図5に示す特許文献1の検査装置を分離膜検査に用いた場合の光学系を示した模式図である。
【図8A】θ2が大きい場合の正反射光の散乱の様子を示した模式図である。
【図8B】θ2が小さい場合の正反射光の散乱の様子を示した模式図である。
【図9】本発明の一実施形態の一例を示した模式図である。
【図10】本発明の一実施形態における表面検査装置による分離膜上の検査を示した模式図である。
【図11A】図10の分離膜上の正常部(欠点のない部分)を拡大した拡大図である。
【図11B】図10の分離膜上の欠点部を拡大した拡大図である。
【図12】本発明の一実施形態における表面検査装置の光学系による樹脂層のめくれ欠点の検査画像を示した図である。
【図13】特許文献1の検査装置の光学系による樹脂層のめくれ欠点の検査画像を示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 撮像装置
2 照明装置
3 分離膜
4 正反射成分
5 散乱成分
6 微細凹凸欠点からの散乱成分
7 欠点部での正反射成分
8 塗布膜(樹脂層)
9 不織布
10 盛り上がりを伴う凹凸欠点
11 照射光
θ1 受光角度
θ2 照射角度
21 照明装置の光源
22a 光源部
22b ミラー
23 ロッド
24 拡散板
25 反射膜
51 撮像装置
52 照明装置
53 シート体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成して得られた分離膜の樹脂面側表面の欠点を検出する分離膜の表面検査装置において、前記分離膜の照射域に光を照射する照明装置と、前記分離膜からの反射光を受光する撮像装置と、該撮像装置の出力信号を処理して前記分離膜の欠点を検出する画像処理装置とを備え、前記照明装置は、ライン状で広がり角度が2°以内である出射光を前記照射領域に照射するものであり、前記撮像装置の撮像軸と前記分離膜表面との交点が前記照射域中にあり、かつ、前記照射域と前記分離膜表面の法線とを含む平面に対して前記撮像装置と前記照明装置とが同じ側であり、かつ、前記照明装置の照射中心軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記照射中心軸と前記分離膜表面とがなす角度θ2より、前記撮像軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記撮像軸と前記分離膜表面とがなす角度θ1が大きいことを特徴とする分離膜の表面検査装置。
【請求項2】
前記角度θ1と、前記角度θ2とが、以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の分離膜の表面検査装置。
15°≦θ1−θ2≦25°
5°≦θ2≦20°
【請求項3】
前記画像処理装置は、検出した欠点の幅、長さ、面積を測定し、製品の欠点であるかを判断するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜の表面検査装置。
【請求項4】
前記分離膜が平面体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜の表面検査装置。
【請求項5】
分離膜の照射域にライン状の光を照明して、前記分離膜からの反射光を撮像手段で受光し、該撮像手段の出力信号を処理して前記分離膜の欠点を検出する分離膜の表面検査方法であって、前記照射域と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、前記撮像手段による撮像と光の照射を同じ側から行い、照射される光が前記分離膜に照射される際、出射光の広がり角度が2°以内である光であり、前記撮像手段の撮像軸と分離膜表面との交点が分離膜表面における照射域中にあり、かつ、前記撮像軸と前記分離膜表面の法線とを含む平面において、照射中心軸と前記分離膜表面とがなす角度より、前記撮像手段の撮像軸と前記分離膜表面とがなす角度が大きいことを特徴とする分離膜の表面検査方法。
【請求項6】
前記分離膜の欠点部分のみを強調した形で明欠点もしくは暗欠点として検出することを特徴とする請求項5に記載の分離膜の表面検査方法。
【請求項7】
前記画像処理手段による画像処理結果より、検出した欠点の幅、長さ、面積を測定し、製品の欠点であるかを判断することを特徴とする請求項5または6に記載の分離膜の表面検査方法。
【請求項8】
前記分離膜として平面体を用いることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の分離膜の表面検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−42076(P2009−42076A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207525(P2007−207525)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】