説明

切削工具を製造する方法

本発明は、焼結超硬合金またはサーメット切削工具インサートの寸法偏差を低減する方法に関係する。この方法により、インサートが少なくとも5分間、液相線温度より高い温度で、保護雰囲気または真空で、加熱処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライス、ドリルおよび旋削のような金属機械加工操作のための切削工具インサートを、改善された寸法精度を伴って、製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、超硬合金とよばれる、タングステンカーバイドベース合金は、広い範囲の用途で使用される。最も重要な用途は、切削工具インサート用材料としてである。この用途において、この合金は通常、コバルトバインダー相、および硬質構成要素としてのWC、およびしばしば一以上のIVa,Vaおよび/またはVIa族元素を有する混合カーバイド、を含む。切削工具用途用の別の重要な材料群は、通常サーメットと呼ばれる、チタンカーバイドベース合金である。それらは通常コバルトおよび/またはニッケルの金属バインダー相を含み、且つ硬質構成要素として、チタン炭窒化物に加えて、一以上のIVa, Va および/または Via族元素のカーバイド、炭窒化物および/または窒化物をほとんどの場合で含む。
【0003】
上述した種類の切削工具インサートは、粉末冶金法によって製造される。通常、この方法は、バインダー相および硬質構成要素を形成する粉末を湿式混合/粉砕してスラリーにし、続いてこのスラリーをスプレー乾燥して直ぐにプレスできる粉末(RTP(ready-to-press)粉末)にし、このRTP粉末を概ね一軸でプレスして約50 %の相対密度を有する成形体にし、そして最終的にこの成形体をグラファイトのトレーに置いてセラミックコーティングとともに焼結し、本質的に十分に緻密な超硬合金またはサーメットのインサートにすることを含む。この焼結の間に、この成形体は元の容積の約半分に縮む。
【0004】
この焼結インサートの寸法および形状は非常に精密な許容差を持たなければならない。これは、フライス用のインサートにとって特に重要である。極めて重要な要件は、RTP粉末混合体がよく分散した成分を伴って均質であること、および、プレスした成形体が密度勾配を生じず均質な密度を有することである。所望の形状および寸法からの偏差は、焼結操作によっても生じ得る。焼結に関係する偏差の一類型は、インサートの反りであり、この反りはインサートとその環境、すなわち焼結担体または焼結炉内の雰囲気、の間の制御されていない炭化または脱炭反応による(米国特許5,151,247参照)。もう一つの周知の焼結による歪みの類型は、重力効果に関するものである。この類型の歪みは、主にバインダー相含有率が高い合金および大きな物体の場合に、問題である。例えば、切削工具インサートの製造において、その効果は小さく、工具のプレス設計で補償することができる。歪みの別の類型は、成形体と焼結トレーの間の摩擦によって生じる。
【0005】
米国特許5,151,247は、液相焼結の間に高圧の不活性ガスを使用することによって、前述の炭化または脱炭反応を緩和する方法を開示している。米国特許5,993,970は、グラファイト担体トレーに適切なコーティングを選択することにより、成形体と担体との間の反応を最小化することが可能である、と開示している。
【0006】
欧州特許1468764Aは、焼結の間、焼結トレーの上で或る方向に超硬合金体を配置することにより、その超硬合金体の寸法偏差を低減する方法を開示している。このやり方においては、焼結プロセスによって生じた寸法上の変形が、プレス操作によって生じた変形で補償される。
【0007】
寸法偏差は、従来、焼結後研磨操作によって修正されていたが、この操作は、偏差の大きさとともに、ますます高価になる。加えて、焼結後研磨は、インサートがオーバーサイズのときにのみ適用できるものである。インサートがアンダーサイズの場合、適用できない。そのような場合、インサートはより小さい標準寸法まで再研磨しなければならず、いうまでもなく高価になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えば超硬合金またはサーメットの切削工具インサートを製造する方法を提供することであり、それは焼結後研磨操作の必要性を緩和または低減する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべき事に、焼結プロセスでの許容できない寸法の偏差が熱処理によって修正可能であることが判明した。バインダー相の再加熱および再溶融は、結果として液体バインダー相をインサート中に均等に分散させる。再凝固の間のインサート上の温度勾配を制御することにより、許容可能な寸法の偏差が得られる。この温度勾配は、炉内の位置、冷却速度、および炉のサイズによって決まり、そして熱流計算から容易に見積もることができる。焼結後研磨が必要なことは、無いかまたは非常に稀である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、焼結超硬合金 または サーメット 切削工具インサートの寸法偏差を低減する方法に関する。この方法により、インサートは、少なくとも5分間、合金の液相線温度を超える温度で、すなわち1380°C超で、保護雰囲気で、加熱される。そのインサート上の温度勾配は、100 °C/mのオーダー未満でなければならない。最大の許容される温度勾配は、それぞれの合金に応じて最適化可能である。この方法は、特に、高いバインダー相含有率8-15 wt-%および/または粗いWCグレインサイズ1.5-10 μmを有する、超硬合金インサートに適用される。
【実施例】
【0011】

10.2 wt-% Co, 1.5 wt-% TaC、残余部2.5 μmのグレインサイズを有するWCの組成を有する粉末をプレスして、SNMA1204タイプの正方形インサートを得た。焼結後のバインダー相の凝固は、約1000°C/mの温度勾配で行った。焼結インサートの4つの端部の長さを注意深く、<±5 μmの精度で測定した。最初に凝固したインサートの端部は、10個のインサートの平均として、最後に凝固した端部より35 μm長かった。温度勾配に対して平行な二つの端部では、深刻な長さの差は見られなかった。
【0012】
このインサートを別の炉で不活性雰囲気で1400°Cまで再加熱し、そして30分間保持した。その冷却速度は、約25°C/mの温度勾配を得るために、最初の焼結サイクルに比べて遅くした。この再加熱したインサートの4つの端部の長さを注意深く、<±5 μmの精度で測定した。4つの端部の長さに深刻な差は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結超硬合金またはサーメット切削工具インサートの寸法偏差を低減する方法であって、
該インサートを、少なくとも5分間、該超硬合金またはサーメットの液相線温度より高い温度で、保護雰囲気または真空で、加熱処理し、再凝固の間に該インサート上の最大温度勾配を制御することを特徴とする、方法。
【請求項2】
凝固の間の最大温度勾配が100 °C/mオーダー未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該インサートが、高いバインダー相含有率および/または粗いWCグレインサイズを有する超硬合金からできていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バインダー相含有率が8-15 wt-%であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
平均のWCグレインサイズが1.5-10 μmであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508321(P2012−508321A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535540(P2011−535540)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051264
【国際公開番号】WO2010/053442
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591106875)セコ ツールズ アクティエボラーグ (28)
【Fターム(参考)】