説明

切削砥石、切削砥石を備えた切削加工機械、及び切削加工機械による切削加工方法

【課題】加工体を切削する切削砥石の外周と加工体間の加工点へクーラントを的確に供給し、切削砥石に構成された砥石等の切刃部の磨耗を抑制すると共に加工体の品質向上を図れるようにする。
【解決手段】台金17の外周部に砥石18を固着した切削砥石において、台金17の回転中心部にクーラント供給口23を設け、台金17の外周部や砥石18にはクーラントを噴出するクーラント噴出口21を設ける。これらクーラント噴出口21とクーラント供給口23とを連通する密閉されたクーラント通路20を切削砥石2内に設ける。クーラント通路20を通じてクーラント噴出口21からクーラントを噴出することができるので、切削砥石2を回転して加工体を切削するに際し、切削砥石2の外周と加工体間の摩擦熱の発生する加工点へ的確にクーラントを供給でき冷却及び遊離粉の除去を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア、シリコン、SIC、ガラス、希土類磁石、窯業系材料などの硬脆性材料や、鋼材等の加工体を切削し所定形状・寸法に加工するときに使用する切削砥石、切削砥石を備えた切削加工機械、及び切削加工機械による加工体の切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年急速に普及しているLED発光素子用サファイア基板の製造においては、サファイア基板を得るために、硬脆性材料としてのサファイアを所要形状に切り出す切削加工が行われている。こうした切削加工では、外周にダイヤモンド砥粒を固着させた切削砥石を回転させながら加工体の切断を行うことが不可欠となっており、その生産効率の向上が望まれている。
【0003】
ところで、前述したダイヤモンド砥粒を固着した切削砥石のほか、CBNを砥粒として固着した切削砥石を使用し、鋼材等を切削する切削加工においても高能率で切削加工を可能とする技術が求められており、こうした技術に関連するものとして、例えば特許文献1には、コアの外周部にCBNを砥粒として固着した超砥粒ホイールが開示されており、研削点へクーラントを供給するための高圧ノズルを砥石外周の接線方向に設け、高圧ノズルからクーラントを砥石側面と加工体に噴射して該加工体を冷却するようにしたものであって、超砥粒ホイールの超砥粒層部に溝を設けることで研削点(加工点)へのクーラントの供給を実現しようとした鉄鋼材料の研削切断加工方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、回転可能に設けられた円盤状の台金の外周に、セグメントチップとしてダイヤモンド等の砥粒を固着させたダイヤモンド切断砥石が開示されており、該ダイヤモンド切断砥石のセグメントチップに貫通孔を形成すると共に該貫通孔と台金の外周部との間に貫通孔に連通する開口部を形成し、さらに台金外周側の両側面に冷却水誘導溝を形成することにより、台金の表面に放出された研削液(クーラント)を、冷却水誘導溝、開口部、貫通孔を通じて、カッティングポイント(加工点)に供給できるようにしたダイヤモンド切断砥石が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153135号公報
【特許文献2】特開平10−58330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、高圧ノズルからクーラントを砥石側面と加工体に噴射して加工体を冷却しようというものであるが、超砥粒層部に溝を設けただけでは、加工点(研削作用点)に対しクーラントの供給を促進することは困難であると言わざるを得ない。
【0007】
また、特許文献2では、台金の外側表面に形成した冷却水誘導溝により、台金の外側表面に放出されたクーラントを開口部に流し入れようというものであるが、冷却水誘導溝は台金外周部のみに形成されているに過ぎないため、冷却水誘導溝近傍の台金表面に放出されたクーラントについては誘導できるとしても、台金の外側表面の中心側に放出されたクーラントについては誘導することは実質困難である。しかも、特許文献2の図6に示されているように、超砥粒ホイールの軸が水平方向に配置されることで、超砥粒ホイールが垂直に配置されている場合には、台金に放出されたクーラントは重力により落下してしまうことから、放出されたクーラントのほとんどについて冷却水誘導溝に誘導することは難しく、また、冷却水誘導溝に供給されたクーラントは開口部を介して貫通孔からカッティングポイント(加工点)に供給されるが、冷却水誘導溝と貫通孔を結ぶ開口部は台金の厚さ方向に開口しているため、貫通孔からだけでなく外部に露出する開口部からもクーラントが放出されてしまうため、摩擦熱で高温になるカッティングポイント(加工点)に対しクーラントを確実に供給することはできず、台金外周部に固着されたセグメントチップ(砥石切刃部)にクーラントを確実に供給できないことにより、砥石寿命の延長を図ることができないばかりでなく、加工体の品質悪化、砥石切刃部の早期磨耗に伴う研削能率の悪化やコスト高にもつながることになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加工体を切削する切削砥石の外周と加工体間の加工点にクーラントを的確に供給し、切削砥石に構成される砥石等の切刃部の磨耗を抑制すると共に加工体の品質向上を図ることができる切削砥石、切削加工機械、及び切削加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る切削砥石の発明は、
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
該クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するクーラント噴出口を前記台金の外周部に設け、
該台金のクーラント噴出口と前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を前記台金内に設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る切削砥石の発明は、
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
該クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するクーラント噴出口を前記切刃部の外周部に設け、
該切刃部のクーラント噴出口と前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を前記台金内及び前記切刃部内に連通して設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る切削砥石の発明は、
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
前記台金の外周部には前記クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出する第1のクーラント噴出口を設け、
前記切刃部には前記クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するための第2のクーラント噴出口を外周に有するクーラント噴出孔を設け、
前記第1のクーラント噴出口及び前記クーラント噴出孔の第2のクーラント噴出口と、前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を内部に設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る切削砥石の発明は、請求項1又は3において、
前記切刃部は前記台金の外周にセグメント状に配置された複数の砥石であり、
前記台金に設けたクーラント噴出口を前記複数配置された砥石間の台金外周部に設けたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る切削砥石の発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記台金は前記クーラント通路を構成するために積層構造として両側の板を密閉板とし、
該密閉板間に挟持されるようにして保持された挟持板を分断するようにして配置することで前記密閉板と前記挟持板で囲まれた部位に前記台金のクーラント通路を構成し、
前記密閉板と挟持板とからなる積層された板は貼着され一体化されたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る切削砥石の発明は、請求項1〜5の何れか1項において、
前記切削砥石の台金内のクーラント通路を稲妻状に形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る切削砥石を備えた切削加工機械の発明は、請求項1〜6の何れか1項において、
前記切削砥石に設けられた台金の回転中心部に形成したクーラント供給口から前記クーラントを前記切削砥石へ供給しながら加工体の加工を行う切削加工機械において、
前記クーラント供給口に接続された前記クーラントを供給する筒状のクーラント供給管と、
該クーラント供給管を保持する保持手段と、
前記クーラント供給管に取り付けられた前記切削砥石を回転させるための駆動力を伝達させる駆動伝達機構と、
該駆動伝達機構を介して前記切削砥石を回転させる電動モータと、
前記クーラント供給管へ前記クーラントを吐出するクーラントポンプと、を備え、
前記クーラント供給管から前記クーラントが供給される前記台金のクーラント供給口の位置を前記回転中心部とし、
前記クーラントポンプから吐出されるクーラントを、前記クーラント供給口を介して前記切削砥石のクーラント噴出口へ供給するようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る切削砥石を備えた切削加工機械の発明は、請求項7において、
前記保持手段は、前記切削砥石が装着された前記クーラント供給管を回転可能な回転軸として保持するものであることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る切削加工機械による切削加工方法の発明は、請求項7又は8において、
前記電動モータを駆動して前記駆動伝達機構を介し前記切削砥石を回転させ加工体の切削加工を行う前記切削加工機械による切削加工方法において、
前記砥石などの切刃部を回転させて前記加工体の切削加工を行なうとき、
前記クーラントポンプにより吐出されるクーラントを、前記切削砥石のクーラント噴出口から、前記砥石などの切刃部と前記加工体との間の加工点に噴出させ、
該加工点で発生する摩擦熱の冷却を行うようにしたことを特徴する。
【0018】
本発明の切削砥石によれば、切削砥石の外周部にクーラント噴出口(台金の外周部に設けたクーラント噴出口、砥石等の切刃部の外周部に設けたクーラント噴出口)を設けたから、切削砥石を回転させ、切削砥石外周の切刃部により、サファイア、シリコン、SIC、ガラス、希土類磁石、窯業系材料などの硬脆性材料や、鋼材等の加工体を切削したりするとき、切削砥石の外周と加工体間の加工点(切削作用点)へクーラントを的確に供給することができる。
【0019】
さらに、クーラント通路を切削砥石の内部である台金内に形成したことから、加工体を切削により切断等するに際し、加工点で発生する摩擦熱ばかりでなく、加工点から台金へと伝達される熱を冷却することができる。よって、クーラント通路に有するクーラントによって切刃部を含む切削砥石全体が、加工体の切削に伴う摩擦熱により高温になってしまうことを抑制することができる。
【0020】
さらに、クーラント供給管からクーラントが供給されるクーラント供給口の位置を回転中心部とし、クーラントの供給位置が切削砥石の回転に伴い変移しない定位置になるよう配置したことから、切削砥石が回転停止中はもちろんのこと、切削砥石の回転中であってでもクーラント供給管からの切削砥石へのクーラント供給を確実に行うことが可能となる。
【0021】
さらに、加工体を切断する砥石等の切刃部の固着された台金は、所定以上の強度を必要とするが、切削砥石の台金内のクーラント通路を直線状ではなく稲妻状に形成したことで該台金が撓んだりすることを抑え局部的な剛性低下を抑制することができる。なお、前記稲妻状とは、左右に連続して折れ曲がった形態のほか、左右に連続して折れ曲がった形からさらに枝状に分岐した形態のものも包含するものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クーラントポンプにより吐出され加圧されたクーラントを切削加工機械のクーラント供給管を通して切削砥石の内部に導入し、続いて加工点(切削作用点)にクーラントを確実に供給することができるから、高速切削で制約となる切刃部(砥石等)と加工体間の摩擦熱による切削焼けや切刃部の磨耗劣化を抑制でき、摩擦による加工点の温度上昇を抑えることができる。さらに、加工点に直接噴出されるクーラントの流速圧力によって切削に伴い生じたスラッジを的確に洗い出すことができるのでスラッジ咬み込みによる切刃部の切れ味の低下や切れ味の低下に伴う加工体に対する切削砥石の摩擦抵抗の増大を抑えることができる。よって、切削加工における、高速切削、深切込み、高速送りが可能となり、とりわけ切断工程の加工能率を飛躍的に向上させることができると共に加工体の品質向上をも図ることができ、さらに、切刃部(砥石等)の寿命をも延ばすことができる。
【0023】
さらに、切削加工機械のクーラント供給管を回転軸として回転させ、該回転されるクーラント供給管を通して切削砥石の内部にクーラントを導入した後、該クーラントを加工点(切削作用点)に確実に供給することができるから、クーラント供給管と共に回転される切削砥石の遠心力と、加工点へのクーラントの直接噴出による相乗効果により、砥石を構成する砥粒結合材や加工体の遊離摩耗粉を効果的に排除することが可能となり、切刃部の切れ味を保ちつつ、前記遊離粉発生による切幅の変化を防ぐことができ、加工体の加工面の品位と加工精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1(実施例2及び3も含む)における切削砥石を装着した切削加工機械の構成を示す概略図である。
【図2】実施例1における切削砥石を示す斜視図である。
【図3】実施例1における切削砥石を示す正面図である。
【図4】実施例1における切削砥石の要部を示す断面図である。
【図5】実施例1における切削砥石の要部を示し、複数の砥石の間に位置する台金の外周にクーラント噴出口を設けた場合を示している。
【図6】実施例2における切削砥石を示す正面図である。
【図7】実施例2における切削砥石の要部を示し、台金に固着された砥石にクーラント噴出口を設けた場合を示している。
【図8】実施例3における切削砥石を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態としての実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0026】
図1に示す切削加工機械1は、サファイア、シリコン、SIC、ガラス、希土類磁石、窯業系材料などの硬脆性材料や、鋼材等の加工体を切削して所定形状・寸法に加工するときに使用するものであり、同図に示すように切削加工機械1には加工体を切削し切断等するための着脱自在な切削砥石2が設けられている。
【0027】
切削加工機械1には、切削砥石2が先端に装着される筒状のクーラント供給管3、クーラント供給管3を回転軸として回転可能に保持し、クーラント供給管3を介して該クーラント供給管3に装着された切削砥石2を回転可能に保持する軸受部材4、クーラント供給管3の後端部に先端部が挿通される内部に貫通孔5が形成されたロータリージョイント6、ロータリージョイント6及び前記軸受部材4が固定された保持フレーム7、クーラントの収容されたクーラントタンク9、クーラントタンク9に貯められたクーラントを吸い上げ、前記ロータリージョイント6及びクーラント供給管3内を通じて切削砥石2へクーラントを供給するクーラントポンプ10、切削砥石2を回転させるための駆動源として用いられる電動モータ11、電動モータ11の回転軸12に装着された電動モータ用プーリ13、クーラント供給管3の外周に装着された従動プーリ14、電動モータ用プーリ13と従動プーリ14とに掛けまわされた駆動伝達ベルト15を少なくとも備え、電動モータ11が回転されることで駆動伝達機構たる、電動モータ用プーリ13、駆動伝達ベルト15、及び従動プーリ14を介し、クーラント供給管3と共に該クーラント供給管3に装着された切削砥石2を回転させるようになっている。
【0028】
また、切削砥石2には、図2〜図5に示すように、円盤状の鋼板である台金17を備え、その外周には、加工体を切断等するため、セグメント状に複数の切刃部としての砥石18が固着されている。また、切削砥石2の寸法は、外径φ500mm、台金17の外形φ486mm、台金17の厚さ2mm、砥石厚さ2.5mmとなっており、台金17は、図4に示すように3層からなる積層構造を有しており、両側の板を密閉板17a,17bとし、これら密閉板17a,17b間に挟持されるようにして挟持板17cが保持され、挟持板17cは、図3、図4に示すように分断するようにして前記密閉板17a,17b間に配置することで密閉板17a,17bと挟持板17cで囲まれた部位に稲妻状のクーラント通路20を有している。なお、本実施例においては、密閉板17a,17bと挟持板17cとからなる積層された台金17は、スポット溶接により一体に貼着されたものであるが、栓溶接、ロー付け、または接着剤による接着で貼着してもよく、また、クーラント通路20の「稲妻状」とは、図3に示すように、左右に連続して折れ曲がった形からさらに枝状に分岐した分岐部20aを有した形態となっているが、該分岐部20aを有さない形態であってもよいものとする。
【0029】
前記台金17の外周に固着された砥石18は、より詳しくはダイヤモンド砥粒メタルボンドによる砥石セグメントであり、図3に示すように、台金17の外周部に36個、等間隔に配置されており、これら砥石18間に位置する台金17の外周にはクーラント噴出口21が形成され、また、クーラント供給管3の中心部と同一線上に設けられたフランジ部22を有する台金17の一方面に設けられた密閉板17aの回転中心部には、クーラント供給管3に連通されたクーラント供給口23が形成されている。
【0030】
そして、台金17の回転中心部に位置するクーラント供給口23と台金17の外周に位置するクーラント噴出口21は、台金17内で分断して形成された前述したクーラント通路20により連通されていることから、クーラントポンプ10を作動させることによりクーラントタンク9から吐出されるクーラントは、ロータリージョイント6、クーラント供給管3を通じ、切削砥石2のクーラント供給口23に供給され、クーラント通路20を通じてクーラント噴出口21から噴出される。なお、前記クーラント通路20は、密閉板17a,17bと挟持板17cで囲まれて形成されていることから、クーラントポンプ10により7Mp以上の高圧で加圧されたクーラントであっても、クーラント噴出口21へ供給される途中においては、クーラントが外部に漏れることなくクーラント噴出口21から噴射することが可能になっている。
【0031】
以上のように本実施形態の切削加工機械1によれば、電動モータ11を駆動し切削砥石2を回転させると共にクーラントポンプ10を作動させ切削砥石2にクーラントを供給しながら、切削砥石外周の切刃部たる砥石18で加工体を切断等のために削ったりするとき、切削砥石2の外周部に設けたクーラント噴出口21から、切削砥石2の外周と加工体間の加工点(切削作用点)へクーラントを的確に供給することができるから、高速切削で制約となる切刃部(砥石18等)と加工体間の摩擦熱による切削焼けや切刃部の磨耗劣化を抑制でき、摩擦による加工点の温度上昇を抑えることができる。
【0032】
さらに、加工点に直接噴出されるクーラントの流速圧力によって切削に伴い生じたスラッジを的確に洗い出すことができるのでスラッジ咬み込みによる砥石18等切刃部の切れ味の低下や、切れ味の低下に伴う加工体に対する切削砥石2の摩擦抵抗の増大を抑えることができ、それにより、切削加工における、高速切削、深切込み、高速送りが可能となる。よって、切断工程等の加工能率を飛躍的に向上させることができると共に加工体の品質向上をも図ることができ、しかも切刃部(砥石18等)の寿命をも延ばすことができる。
【0033】
さらに、クーラント供給管3と共に回転される切削砥石2の遠心力と、クーラント噴出口21から加工点へのクーラントの直接噴出による相乗効果により、砥石18を構成する砥粒結合材や加工体から生じる遊離摩耗粉を効果的に排除することができるから、砥石18の切れ味を保ちつつ、前記遊離粉発生による加工体の切幅の変化を防ぎ、加工体の加工面の品位と加工精度を向上することができる。
【0034】
さらに、クーラント通路20を切削砥石2の内部である台金17内に形成したことから、加工体を切断等するに際し、加工点で発生する摩擦熱ばかりでなく、加工点から台金17に伝達される熱を効果的に冷却することができる。よって、クーラント通路20に有するクーラントによって砥石18を含む切削砥石全体が、加工体の切断等に伴う摩擦熱により高温になってしまうことを抑制することができる。
【0035】
さらに、クーラント供給管3からクーラントが供給される切削砥石2のクーラント供給口23の位置を回転中心部とし、クーラントの供給位置が切削砥石の回転に伴い変移しない定位置になるよう配置したことから、切削砥石2の回転停止中はもちろんのこと、切削砥石2の回転中であっても、該切削砥石2と共に回転されるクーラント供給管3から切削砥石2へクーラントの供給を確実に行うことが可能となる。
【0036】
さらに、加工体を切断する砥石18の固着された台金は所定以上の強度を必要とするが、切削砥石2の台金17内のクーラント通路20を直線状ではなく、切削砥石2の法線方向になるようにして稲妻状に形成したことで、切削砥石2で加工体を切削加工しているときに、台金17が撓んだりすることを抑え局部的な剛性低下を抑制することができる。
【0037】
以上、本発明の一例を実施例1として説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。例えば、台金17の外周に固着された複数の切刃部(砥石18等)の形状は、それぞれ同形状の矩形型に形成されたものであるが、台形型、楔型、半円型等であってもよく、また、切削砥石2は、硬脆性材料や鋼材等の加工体を切削し、所定形状・寸法に加工する際に使用する旨説明したが、切刃部の形状を適宜選定することで、研削や研磨用として使用したり、或いはコアドリル用のコアビットとしても利用することが可能である。
【実施例2】
【0038】
実施例2について図6、図7により説明する。実施例2の切削砥石2は、クーラント噴出口21が切削砥石2の外周にあるものの、実施例1のようにクーラント噴出口21が台金17の外周ではなく、切刃部たる砥石18に形成されており、砥石18に形成したクーラント噴出孔30のクーラント噴出口21とクーラント供給口23とを連通するクーラント通路20が台金17内及び砥石18内で連通して設けられている。その点を除いて実施例1の構成と同一であるため、同一部分には同一符号を示し、その詳細な説明は省略し説明する。そして、これにより、硬脆性材料や鋼材等の加工体を切削したりするとき、切削砥石2の外周と加工体間の狭小間隙である加工点(切削作用点)へクーラントをより的確に供給することができるので、前述した実施例1と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【実施例3】
【0039】
実施例3について図8により説明する。実施例3の切削砥石2は、クーラント噴出口が台金17の外周及び切刃部たる砥石18に形成されている。そこで、台金17の外周のクーラント噴出口を第1のクーラント噴出口21aとし、砥石18の外周のクーラント噴出口を第2のクーラント噴出口21bとして以下に説明する。
【0040】
実施例3の砥石18には、実施例2と同様に、切削砥石2の外周に第2のクーラント噴出口21bを有するクーラント噴出孔30が形成され、クーラント噴出孔30と台金17のクーラント通路20とが連通して形成されていることから、砥石18に形成したクーラント噴出孔30もクーラント通路として用いられ、台金17の外周部に設けた第1のクーラント噴出口21a及び砥石18の外周部に設けた第2のクーラント噴出口21bとクーラント供給口とは連通しており、第1,第2のクーラント噴出口21a,21bから、クーラントが噴出されるようになっている。その点を除いて前述した実施例の構成と実質同一であるため、同一部分には同一符号を示し、その詳細な説明は省略し説明するが、以上のように構成することにより、実施例1や実施例2のように、台金17の外周部に設けたクーラント噴出口21、又は砥石18の外周部に設けたクーラント噴出口21からだけでなく、これら両者からクーラントを噴出することができることから、硬脆性材料や鋼材等の加工体を切削したりするとき、切削砥石2の外周と加工体間の加工点(切削作用点)へクーラントをより一層的確に供給することが可能となり、前述した実施例1や2で説明した作用効果をより高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
1 切削加工機械
2 切削砥石
3 クーラント供給管
4 軸受部材(保持手段)
10 クーラントポンプ
11 電動モータ
17 台金
17a,17b 密閉板
17c 挟持板
18 砥石(切刃部)
20 クーラント通路
21 クーラント噴出口
21a 台金の第1のクーラント噴出口
21b 切刃部の第2のクーラント噴出口
23 クーラント供給口
30 クーラント噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
該クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するクーラント噴出口を前記台金の外周部に設け、
該台金のクーラント噴出口と前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を前記台金内に設けたことを特徴とする切削砥石。
【請求項2】
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
該クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するクーラント噴出口を前記切刃部の外周部に設け、
該切刃部のクーラント噴出口と前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を前記台金内及び前記切刃部内に連通して設けたことを特徴とする切削砥石。
【請求項3】
回転可能に装着される台金と、該台金の外周部に固着される切刃部とを備えた切削砥石において、
前記台金の回転中心部にクーラント供給口を設け、
前記台金の外周部には前記クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出する第1のクーラント噴出口を設け、
前記切刃部には前記クーラント供給口から供給されるクーラントを噴出するための第2のクーラント噴出口を外周に有するクーラント噴出孔を設け、
前記第1のクーラント噴出口及び前記クーラント噴出孔の第2のクーラント噴出口と、前記台金のクーラント供給口とを連通する密閉されたクーラント通路を内部に設けたことを特徴とする切削砥石。
【請求項4】
前記切刃部は前記台金の外周にセグメント状に配置された複数の砥石であり、
前記台金に設けたクーラント噴出口を前記複数配置された砥石間の台金外周部に設けたものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の切削砥石。
【請求項5】
前記台金は前記クーラント通路を構成するために積層構造として両側の板を密閉板とし、
該密閉板間に挟持されるようにして保持された挟持板を分断するようにして配置することで前記密閉板と前記挟持板で囲まれた部位に前記台金のクーラント通路を構成し、
前記密閉板と挟持板とからなる積層された板は貼着され一体化されたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の切削砥石。
【請求項6】
前記切削砥石の台金内のクーラント通路を稲妻状に形成したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の切削砥石。
【請求項7】
前記切削砥石に設けられた台金の回転中心部に形成したクーラント供給口から前記クーラントを前記切削砥石へ供給しながら加工体の加工を行う切削加工機械において、
前記クーラント供給口に接続された前記クーラントを供給する筒状のクーラント供給管と、
該クーラント供給管を保持する保持手段と、
前記クーラント供給管に取り付けられた前記切削砥石を回転させるための駆動力を伝達させる駆動伝達機構と、
該駆動伝達機構を介して前記切削砥石を回転させる電動モータと、
前記クーラント供給管へ前記クーラントを吐出するクーラントポンプと、を備え、
前記クーラント供給管から前記クーラントが供給される前記台金のクーラント供給口の位置を前記回転中心部とし、
前記クーラントポンプから吐出されるクーラントを、前記クーラント供給口を介して前記切削砥石のクーラント噴出口へ供給するようにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の切削砥石を備えた切削加工機械。
【請求項8】
前記保持手段は、前記切削砥石が装着された前記クーラント供給管を回転可能な回転軸として保持するものであることを特徴とする請求項7に記載の切削砥石を備えた切削加工機械。
【請求項9】
前記電動モータを駆動して前記駆動伝達機構を介し前記切削砥石を回転させ加工体の切削加工を行う前記切削加工機械による切削加工方法において、
前記砥石などの切刃部を回転させて前記加工体の切削加工を行なうとき、
前記クーラントポンプにより吐出されるクーラントを、前記切削砥石のクーラント噴出口から、前記砥石などの切刃部と前記加工体との間の加工点に噴出させ、
該加工点で発生する摩擦熱の冷却を行うようにしたことを特徴する請求項7又は8に記載の切削加工機械による切削加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−143836(P2012−143836A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3771(P2011−3771)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(501376590)株式会社ジェイシーエム (20)
【Fターム(参考)】