説明

切換スイッチ

【課題】外部接続端子への加熱があってもこれを支持する樹脂製の絶縁基台の軟化、変形を抑えることのできる耐熱性の高い切換スイッチを提供する。
【解決手段】切換スイッチの絶縁基台を貫通してこれにより固定支持された常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の前記絶縁基台に埋め込まれた部分に幅の狭い狭隘部を設けることにより、端子板から絶縁基台への熱伝導を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押ボタンスイッチなどに組み込んで使用される切換スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチは、すでに特許文献1等によりよく知られている。
【0003】
この特許文献1等により知られている従来の切換スイッチの代表的な構成を図6に示す。
【0004】
この図6の切換スイッチは、固定部材として、常閉固定端子板4、常開固定端子板5および共通端子板6を備えている。常閉固定端子板4には、図7に示すように、先端部に固定接点4aが取り付けられ、基端部に一体的に外部接続端子4bが形成されている。また、常開固定端子板5にも、先端部に固定接点5aが取り付けられ、常閉固定端子板4の固定接点4aの下方に所定間隔をおいて対向配置されている。そして基端部に、外部接続端子5bが一体に形成されている。さらに、共通端子板6には、先端部に可動接触子2および操作レバー3等の可動部材を支持するためのU字形の支持枠6aが形成されるとともに基端部に外部接続端子6bが一体に形成されている。これらの固定部材としての端子板4,5,6は中間部が共通の絶縁樹脂により形成された絶縁基台1に埋め込まれ、これを貫通して固定支持される。
【0005】
可動部材となる可動接触子2には、先端に双頭の可動接点2aが取り付けられるとともに、基端部に支持枠6aに当接されて可動接触子の回動支点となる支点部2cが形成される。もう一つの可動部材である操作レバー3には、図7の方が明確であるが、先端部に前記絶縁基台1に設けられた操作レバー3を支持する支持体1aに当接して回動支点となる支点部3aが形成され、基端部に外部から操作される操作片3bが設けられている。そしてこの操作レバー3は共通端子板6に形成された支持枠6aにより支持され、これにより上限の位置が制限される。
【0006】
そして、可動接触子2と操作レバー3とは、これらに設けられた係止穴2hおよび3hに引張りコイルばねにより構成された操作ばね8の両端に設けられた鉤状のフック8aおよび8bを引掛けて連繋されている。
【0007】
このように構成された切換スイッチは、図6および図7に示すように操作レバー3の操作片3bが上方にある状態では、操作ばね8が、可動接触子2の先端部および操作レバー3の基端部を上方へ引張るため可動接触子2は常閉固定接点4a側に回動され、可動接点2aが固定接点4aに当接する。これにより、共通端子板6と常閉固定端子板4の間の回路が閉じられる。
【0008】
操作片3bを押し下げて操作レバー3を支点部3aを支点にして反時計方向に回動させると、操作ばね8の操作レバー側のフック8bが中心より下方に移動したところで、このばねの作用力の方向が反転し、可動接触子2が急激に下方へ引っ張られて、可動接点2aが常開固定端子板5の固定接点5aに閉じられ、共通端子板6を常開固定端子板5に切換え接続する。
【特許文献1】特開平11−195346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように構成された切換スイッチを電気回路に組み込んだり、電気回路から外したりするときは、各端子板の外部接続端子に半田ごてを当てて加熱して、電線を端子に半田付けしたり、半田を溶かして電線を端子から引き外したりするのが一般的である。しかしながら、このような切換スイッチの外部接続端子への電線の接続作業や、接続された電線の引き外し作業のとき、外部接続端子に加えられる熱が、これらの端子を支持する樹脂製の絶縁基台に伝わり、この熱によって加熱されて絶縁基台が軟化、変形し、絶縁基台による端子板の締め付け力に緩みが生じることがある。この緩みにより各端子板が揺動すると、内部の固定接点や、支持枠の位置関係がずれて切換スイッチの動作が不安定になる問題がある。
【0010】
また現在は、環境汚染対策のために半田付けには鉛成分を含まない鉛フリーの半田が使用されることが一般化されつつあるが、鉛フリーの半田は、その融点が鉛を含有する半田よりも高く、また端子部材への濡れ性が鉛を含有する半田よりも低下するので、鉛フリー半田を使用して電線の接続作業を行う場合は、外部接続端子への半田ごてを当てて加熱する時間が長くなるので、このような加熱時間の長い半田付け作業に耐えられる耐熱性の高い切換スイッチの出現が望まれている。
【0011】
この発明は、このような問題点を解消するために、外部接続端子への加熱があってもこれを支持する樹脂製の絶縁基台が熱により軟化、変形することを抑えることのできる耐熱性の高い切換スイッチを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、この発明は、それぞれ先端部に固定接点が取り付けられ、基端部に外部接続端子が形成された常閉固定端子板および常開固定端子板と、先端部にU字形の支持枠が形成され、基端部に外部接続端子が形成された共通端子板とを設け、これらの端子板を、前記固定接点および支持枠ならびに外部接続端子を露出させて絶縁樹脂により形成した絶縁基台に埋め込んで固定し、この絶縁基台上で、前記常閉固定端子板に取り付けた固定接点と常開固定端子板に取り付けた固定接点とを上下に間隔をおいて対向配置し、先端部に可動接点を取り付け、基端部に前記支持枠に当接して回動支点となる支点部を形成した可動接触子と、前記支持枠に回動自在に支持され、先端部を前記絶縁基台上に設けた支持体に当接して回動支点となる支点部を形成し、基端部に外部から操作される操作片を設けた操作レバーとを操作ばねにより連繋してスナップアクション機構を形成し、前記操作レバーの操作片を上下方向に回動操作することにより前記可動接触子を反転駆動して先端部の可動接点を、前記常閉固定端子板の固定接点と常開固定端子板の固定接点とに交互に切換え接触させるようにしてなる切換スイッチにおいて、前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の前記絶縁基台に埋め込まれた中間部分に幅を狭くした狭隘部を設けたことを特徴するものである。
【0013】
また、この発明においては、前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板は、インサート成形により絶縁樹脂製の絶縁基台に埋設するようにすると前記狭隘部を抜け止め機構とすることができる利点がある。
【0014】
さらに、この発明においては、前記前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の狭隘部は、各端子板の中心部を打ち抜くことによって形成することができる。そして、前記狭隘部は、各端子板を側方の一方または両方から切り欠くことによっても形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、切換スイッチの絶縁樹脂製の絶縁基台に埋設支持された、常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の絶縁基台に埋め込まれた中間部分に幅を狭めた狭隘部を設けているので、この部分で端子板の熱抵抗が大きくなるため、外部接続端子に電線を半田付けにより接続する等のために、この端子板を加熱しても、端子板から絶縁基台への熱伝導が抑制され、絶縁基台の熱変形を小さくすることができる。このため、各端子板の絶縁基台による締め付け力の低下による固定の緩みを防止することができ、切換スイッチの耐熱性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施の形態を、図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1および図2は、この発明による切換スイッチの第1の実施例を示すものであり、図1は、その縦断面図、図2はこの実施例にける端子板を示す平面図である。
【0018】
この実施例の切換スイッチは、外観的には図6および図7に示す従来例とほとんど同じであるため、この実施例の外観の構成は、図6を参照されたい。
【0019】
図1および図2において、従来のスイッチと同じ構成要素は同一の符号で示し、その説明を省略する。
【0020】
図1および図2から明らかように、実施例1の切換スイッチにおいては、常閉固定端子板4、常開固定端子板5および共通端子板6は、従来例と同様に、その中間部分を絶縁基台1の中に埋め込んで、絶縁基台にこれを貫通して固定、支持される。絶縁基台1の上方へ引き出された各端子板(4、5、6)の先端部には、それぞれ固定接点4a、5aおよび可動接触子2が結合または支持される。絶縁基台1の下方へ引き出された各端子板(4、5、6)の基端部側にはそれぞれ外部接続端子4b,5bおよび6bが形成される。
【0021】
図2は、絶縁基台1により固定支持する前の端子板4,5,6を示すものであるが、この図から明らかように、一点鎖線の4角形の枠で囲まれた端子板4、5,6の絶縁基台1中に埋め込まれる中間部分4d,5d、6dには、それぞれ、この発明にしたがって、この部分に適宜の形状の窓穴4e,5e,6eを打ち抜き形成することにより導体幅の狭められた狭隘部4f,5f、6fが設けられており、この点が、前記の従来装置と異なるところである。
【0022】
このように絶縁基台1に埋め込まれる中間部分に窓穴4e,5e、6eを打ち抜いて導体幅の狭められた狭隘部を形成した端子板4,5,6を樹脂モールド型にインサートした状態で絶縁樹脂をモールド成形する通常のインサート成形により、端子板の埋め込まれた絶縁基台1を形成する。これにより、端子板4,5,6を固定支持した絶縁基台1の中では、図1に示すように、各端子板の窓穴4e、5e,6e中にも絶縁樹脂が充填されるため、各端子板の絶縁基台1に対する抜け止め効果が一段と高まり、端子板4、5,6の絶縁基台1による固定、支持が強固に行われる。
【0023】
そして、端子板4,5,6の絶縁基台1の中に埋め込まれる中間部分にそれぞれ窓穴を設けて導体幅の狭められた狭隘部4f,5f,6fが形成されることにより、この部分の熱抵抗が増大するため、外部接続端子4b,5b,6bが外部の電線を半田付けするために加熱されても、端子板から樹脂の絶縁基台1への熱伝導が抑止され、絶縁基台1の温度上昇が抑えられるため、絶縁基台1の熱的変形が小さくなり、端子板4,5,6に対する絶縁基台1の締め付け力の緩みが起きにくくなる。このため、溶融温度の高い鉛フリー半田を用いて半田付けを行っても端子板を支持固定する絶縁基台1の熱変形を抑えることができ、切換スイッチの開閉特性を安定に保つことができる。
【0024】
なお、この狭隘部の幅は、熱抵抗を大きくするには可能な限り細くするのがよいが、電気回路も構成するので、定格の電流容量を確保できる大きさにすることが必要であるので、両方の条件を満たす値から適宜に選択する。
【実施例2】
【0025】
前記の実施例1では、端子板の絶縁基台に埋め込まれる中間部分に窓穴を打ち抜いて導体幅の縮小された狭隘部を形成するようにしているが、これは次のように端子板を側方から切り欠いて形成することもできる。
【0026】
図3および図4に示す第2の実施例においては、端子板4,5,6の絶縁基台1に埋め込まれる中間部分に、その側方の一方側から、それぞれ図4に点線で示すような切欠き4m、5m、6mを設けて、他方側に幅の狭められた狭隘部4g,5g,6gが形成されている。この場合、切欠き部に入り組んだ段差が形成されるようにすることにより、端子板4,5,6の絶縁基台1に対する抜け止め効果を大きくすることができる。
【0027】
また、図5は実施例2の端子板の変形例を示すものであり、この図5には、共通端子板6だけを例示しているが、その絶縁基台1に埋め込まれる中間部分に、両側から点線で示すように切欠き6m、6nを設け、この部分の中間部に幅の狭められた狭隘部6hを形成したものである。
【0028】
以上説明したように、この発明にしたがって、切換スイッチの絶縁基台1に支持固定される端子板4,5,6の絶縁基台1に埋め込まれる中間部分に幅の狭められた狭隘部を形成することにより、外部接続端子4b、5b、6bを、これに電線を半田付けするために高温に加熱しても、中間部分は熱抵抗が高いことにより、端子板から絶縁基台への熱伝導が抑えられるため、絶縁樹脂で構成された絶縁基台1の熱変形が小さくなり、端子板の緩みの発生が抑制され絶縁基台による端子板の支持が安定し、強固に保たれる。したがって、この発明によれば、切換スイッチの耐熱性が高められ、鉛フリー半田のような高温半田による半田付け作業が対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1の実施例による切換スイッチの構成を示す縦断面図である。
【図2】この発明の第1の実施例による端子板の構成を示す平面図である。
【図3】この発明の第2の実施例による切換スイッチの構成を示す縦断面図である。
【図4】この発明の第2の実施例による端子板の構成を示す平面図である。
【図5】この発明の第2の実施例による端子板の変形例を示す平面図である。
【図6】従来の切換スイッチの構成を示す斜視図である。
【図7】従来の切換スイッチの構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:絶縁基台
2:可動接触子
3:操作レバー
4:常閉固定端子板
4a:常閉固定接点
4f、4g:狭隘部
5:常開固定端子板
5a:常開固定接点
5f、5g:狭隘部
6:共通端子板
6a:支持枠
6f、6g:狭隘部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ先端部に固定接点が取り付けられ、基端部に外部接続端子が形成された常閉固定端子板および常開固定端子板と、先端部にU字形の支持枠が形成され、基端部に外部接続端子が形成された共通端子板とを設け、これらの端子板を、前記固定接点および支持枠ならびに外部接続端子を露出させて絶縁樹脂により形成した絶縁基台に埋め込んで固定し、この絶縁基台上で、前記常閉固定端子板に取り付けた固定接点と常開固定端子板に取り付けた固定接点とを上下に間隔をおいて対向配置し、先端部に可動接点を取り付け、基端部に前記支持枠に当接して回動支点となる支点部を形成した可動接触子と、前記支持枠に回動自在に支持され、先端部を前記絶縁基台上に設けた支持体に当接して回動支点となる支点部を形成し、基端部に外部から操作される操作片を設けた操作レバーとを操作ばねにより連繋してスナップアクション機構を形成し、前記操作レバーの操作片を上下方向に回動操作することにより前記可動接触子を反転駆動して先端部の可動接点を、前記常閉固定端子板の固定接点と常開固定端子板の固定接点とに交互に切換え接触させるようにしてなる切換スイッチにおいて、前記の常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の前記絶縁基台に埋設された部分に幅を狭くした狭隘部を設けたことを特徴する切換スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板をインサート成形により絶縁樹脂の絶縁基台に埋設したことを特徴とする切換スイッチ
【請求項3】
請求項1または2に記載のものにおいて、前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の端子板の狭隘部を各端子板の中心部を打ち抜くことによって形成したことを特徴とする切換スイッチ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のものにおいて、前記常閉固定端子板、常開固定端子板および共通端子板等の各端子板の狭隘部を各端子板を側方から切り欠くことによって形成したことを特徴とする切換スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−235218(P2008−235218A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77242(P2007−77242)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【出願人】(390021186)株式会社秩父富士 (54)
【Fターム(参考)】