説明

切断機

【課題】可動カバーの動きを安定かつスムーズにすることを可能にした切断機を提供する。
【解決手段】被切断材を載置するベース10と、被切断材に対して上方から切り込む方向Zへ移動可能に設けた本体30と、を備え、本体は、回転駆動する切断刃32と、本体に固定されて切断刃の上部を覆う固定カバー33と、固定カバーに装着されて本体を切り込む方向へ移動させるに従って切断刃の下部を露出させるように可動する可動カバー34A、34Bと、を有し、ベースの上面には、本体を切り込む方向へ移動させる際に、切断刃の進入を許可するスリット15を形成し、可動カバー34Aの下端には、切断刃がスリットに進入する際に、ベースの上面を転動する転動体35を設けた切断機1において、ベースの上面には、転動体を転動可能に案内する案内部16を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被切断材を載置するベース上に、回転駆動する切断刃を備えた本体を上下動可能に設けた切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、モータの回転力を丸鋸刃に伝達させて、回転する丸鋸刃によって被切断材を切断する丸鋸盤が開示されている。特許文献1等に示された丸鋸盤では、ベースに固定された被切断材に対して上方から切り込む方向に丸鋸刃を押し下げると、丸鋸刃を覆う鋸刃カバーが、丸鋸刃を露出させるように可動して、丸鋸刃の下部が、前記べースに形成されたスリットに進入する。その際には、鋸刃カバーの下端に設けたコロが、ベースの上面を転動することで、鋸刃カバーが、丸鋸刃を露出させる方向へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−15932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の丸鋸盤等の切断機では、例えば、コロ等の転動体とベースの上面との間に作用する摩擦力により、ベースの上面を転動する転動体の転動方向が一定になるとは限らないことから、転動体の転動動作が安定しないことや、転動体がベースの上面を転動した後に該上面から落下することが懸念されていた。このような場合には、転動体が設けられた鋸刃カバーのような、丸鋸刃を露出させるように可動する可動カバーの動きが不安定かつスムーズでないという問題が生じるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、可動カバーの動きを安定かつスムーズにすることを可能にした切断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る切断機は、被切断材を載置するベースと、前記被切断材に対して上方から切り込む方向へ移動可能に設けた本体と、を備え、該本体は、回転駆動する切断刃と、前記本体に固定されて前記切断刃の上部を覆う固定カバーと、該固定カバーに装着されて前記本体を前記切り込む方向へ移動させるに従って前記切断刃の下部を露出させるように可動する可動カバーと、を有し、前記ベースの上面には、前記本体を前記切り込む方向へ移動させる際に、前記切断刃の進入を許可するスリットを形成し、前記可動カバーの下端には、前記切断刃が前記スリットに進入する際に、前記ベースの上面を転動する転動体を設けた切断機において、前記ベースの上面には、前記転動体を転動可能に案内する案内部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記案内部は、前記転動体の転動方向に延設された凹溝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係る切断機によれば、ベースの上面で転動体が転動する動作を安定させることができる。これに伴って、転動体が設けられた可動カバーの動きを安定かつスムーズにすることが可能になる。
請求項2の発明によれば、転動体が凹溝に嵌りながら該凹溝に沿って転動可能となる。したがって、転動体が設けられた可動カバーが、凹溝の延設方向に沿って移動して、ベースの上面から落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の切断機の側面図である。
【図2】第1可動カバーに軸支されたガイドコロがベース上面の凹溝を転動する状態の説明図である。
【図3】同切断機の工具ホルダにスパナを挟持した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図1ないし図3を参照しつつ説明する。図1に示す切断機1は、ベース10と、本体支持部20と、本体30とを備えている。
【0011】
ベース10は、固定バイス片11と、移動バイス片12とを備えている。固定バイス片11は、ベース10の上面にねじで固着されている。移動バイス片12は、送りねじ13に噛合しており、送りハンドル14を回転操作して送りねじ13が回転することで、送りねじ13の軸方向へ、ベース10の上面を移動可能に設けられている。被切断材Wは、固定バイス片11と移動バイス片12との間に挟持されて、ベース10の上面に載置される。
【0012】
ベース10の上面には、図1に示すように、後述する切断砥石32の下縁部が進入するスリット15が開口する。べース10の上面で、スリット15よりもベース10の側端側であって、後述のガイドコロ35が転動可能な位置及び方向に、凹溝16が延設されている。ここでは、凹溝16の延設方向を、切断機1の前後方向Y(図1中の左右方向)と一致させた。この凹溝16は、その断面形状が略U字状とされ、後述するように、ガイドコロ35がベース10の上面を転動して移動することを案内する。加えて、ベース10の上面には、後述する圧縮スプリング24の支持部材17が突設されている。支持部材17は、ベース10の上面にその裏側から突出するようにベース10に螺合されたねじ部材によって形成されている。なお、カイドコロ35は本発明の転動体の一例であり、凹溝16は本発明の案内部の一例である。
【0013】
本体支持部20は、ブラケット21と、ジョイント部材22と、圧縮スプリング24とを備えている。ブラケット21は、ベース10の上面の後端(図1中の右側)に立設されている。ジョイント部材22の一端は、連結軸26によって、ブラケット21に対して回転可能に軸支されている。一方、ジョイント部材22の他端には、支軸27によって、後述のアーム31が回転可能に軸支されている。圧縮スプリング24の上端は、断面コの字状のアーム31の開口面側から差し込まれてアーム31の内壁面に支持されている。圧縮スプリング24の下端は、上記の支持部材17に取り付けられている。図1に示すように、圧縮スプリング24により、本体30を上死点に付勢できる。
【0014】
本体30は、アーム31と、切断砥石32と、固定カバー33と、可動カバー34(34A、34B)と、ガイドコロ35とを備えている。アーム31の上端には、ハンドルHが設けられている。切断砥石32は、アーム31の上端に回転可能な状態で軸支されている。切断砥石32は、モータ(図示せず。)の回転軸から駆動力が伝達されることで回転可能とされている。固定カバー33は、アーム31の上端に固定用ねじ(図示せず。)で固定されて、切断砥石32の上部を覆う。なお、切断砥石32は、本発明の切断刃の一例である。
【0015】
可動カバー34は、第1可動カバー34Aと第2可動カバー34Bとを、相対する互いの端部同士を突き合わせて形成した。図1に示した上死点では、各可動カバー34A、34Bは、固定カバー33に装着されて、切断砥石32の下縁部を覆う。
【0016】
一方、ハンドルHを用い、作業者が、上記の圧縮スプリング24の付勢力に抗して、本体30を、上記の支軸27を回転支点として被切断材Wに対して上方から切り込む方向Z(以下、切込方向Zという。)へ移動させるときは、リンクを用いた連動機構によって、第1可動カバー34Aが時計方向へ、第2可動カバー34Bが反時計方向へそれぞれ回転する。第1可動カバー34Aの前面下端には、カイドコロ35が設けられている。ガイドコロ35は、ピン36によって、前記前面下端からベース10側へ突出した状態で第1可動カバー34Aの前面に回転可動に軸支されている。
【0017】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、ベース10の背面10Aには、工具ホルダ40が設けられている。工具ホルダ40は、2枚の板スプリング41、41を用いて形成した。各板スプリング41では、先端側が、断面略U字状になるように折り曲げた工具保持部42を、後端側が、ベース10の上面にねじで固定される固定部43をそれぞれ構成する。各工具保持部42にはスパナSの柄が差し込まれて、その柄が、板スプリング41、41の弾性力で各工具保持部42に挟持される。スパナSは、上記の固定カバー33をアーム31に固定する固定ねじの着脱に用いられる。
【0018】
次に、切断機1の動作を説明する。切断機1では、上記のように、作業者が切込方向Zへ本体30を移動させると、各可動カバー34A、34Bが上述した方向へ回転することに伴って、図2に示すように、各可動カバー34A、34Bが互いに離間して、各可動カバー34A、34Bから切断砥石32の下縁部が露出する。回転駆動させた切断砥石32の下縁部が、被切断材W(図1参照。)に切り込まれることで、該被切断材Wを切断できる。このとき、前記下縁部は、スリット15に進入する。なお、図2では、上記の支持部材17や圧縮スプリング24の図示を省略した。
【0019】
切断砥石32の下縁部がスリット15に進入するに従って、図2に示すように、ガイドコロ35は、上記の凹溝16に嵌りながら、凹溝16の終端16Aに接するまで前記延設方向Yへ転動可能となる。これに伴って、ガイドコロ35が設けられた第1可動カバー34Aも、延設方向Yの前記終端16A側へ移動して、第1可動カバー34Aが、切断砥石32の下部を露出させるように移動する。
【0020】
<本実施形態の効果>
本実施形態の切断機1では、切断砥石32が、スリット15に進入する際には、ガイドコロ35が、凹溝16によって、ベース10の上面を転動して移動するように案内される。よって、ベース10の上面でガイドコロ35が転動する動作を安定させることができる。これに伴って、ガイドコロ35が設けられた第1可動カバー34Aが切断砥石32の下部を露出させる動きを、安定かつスムーズに行うことができる。
【0021】
また、上述したように、切断砥石32の下縁部がスリット15に進入するに従って、ガイドコロ35は、凹溝16に嵌りながら、凹溝16の終端16Aに接するまで前記延設方向Yへ転動可能となる。したがって、第1可動カバー34Aは、延設方向Yに沿って移動して、ガイドコロ35が前記終端16Aに到達した所で、延設方向Yに沿って移動することが規制される。よって、第1可動カバー34Aがベース10の上面から落下することを防止できる。
【0022】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。上述した実施形態では、ガイドコロ35が、ベース10の上面に延設した凹溝16に嵌りながら転動する例を示したが、これに限らず、凹溝16と同様の延設方向に延びてベース10の上面に立設させて互いに対向する一対のガイド壁の間を転動するようにしてもよい。
【0023】
また、上述した実施形態では、凹溝16の断面形状を、略U字状としたが、これに限らず、例えば略V字状のように、ガイドコロ35が嵌り込んで転動し易い適宜の形状に変更してもよい。さらに、上述した実施形態では、可動カバー34を2つのカバー34A、34Bによって形成したが、これに代えて、2つのカバー34A、34Bを一体にしてもよい。加えて、工具ホルダ40には、スパナSに限らず、レンチ等の適宜の工具を挟持させてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1・・切断機、10・・ベース、15・・スリット、16・・凹溝、30・・本体、32・・切断砥石、33・・固定カバー、34(34A、34B)・・可動カバー、35・・ガイドコロ、W・・被切断材、Y・・凹溝の延設方向、Z・・切込方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材を載置するベースと、前記被切断材に対して上方から切り込む方向へ移動可能に設けた本体と、を備え、該本体は、回転駆動する切断刃と、前記本体に固定されて前記切断刃の上部を覆う固定カバーと、該固定カバーに装着されて前記本体を前記切り込む方向へ移動させるに従って前記切断刃の下部を露出させるように可動する可動カバーと、を有し、
前記ベースの上面には、前記本体を前記切り込む方向へ移動させる際に、前記切断刃の進入を許可するスリットを形成し、前記可動カバーの下端には、前記切断刃が前記スリットに進入する際に、前記ベースの上面を転動する転動体を設けた切断機において、
前記ベースの上面には、前記転動体を転動可能に案内する案内部を設けたことを特徴とする切断機。
【請求項2】
前記案内部は、前記転動体の転動方向に延設された凹溝であることを特徴とする請求項1に記載の切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245578(P2011−245578A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119592(P2010−119592)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】