説明

列車通信システム

【課題】走行中の列車と大量のデータの送受信を可能にする。
【解決手段】進行する列車を通信圏内に含む路側装置20は、車載装置10との間でパケット通信を行い、かつ、通信未了のパケットをサーバ装置40に送信し、サーバ装置40は通信未了のパケットを進行する列車を通信圏内に含む次の路側装置30へ送信し、通信未了のパケットを受けた路側装置30は車載装置40との間で通信未了のパケットのパケット通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車に設けられた車載装置との間でパケット通信を行う軌道に沿って配置された複数の路側装置と、各路側装置と通信可能に接続されたサーバ装置とを含む列車通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車内に旅客向けの表示装置を設け、画像や文字データを旅客サービスとして表示する場合、表示内容であるコンテンツを列車外から列車内に通信する必要がある。従来は有線によるデータ伝送あるいは無線LAN(Local Area Network)やSS無線(Spread Spectrum:スペクトラム拡散)といった手段で、データ伝送を行っていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
一方、自動車に対しては、VICS(Vehicle Information and Communication System)が利用されている。これは、FM多重放送や道路上の発信機から受信した交通情報を図形・文字で表示するシステムであり、VICSセンターで編集・処理された渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションシステムに用意されている地図の上に重ね書きして表示する。
【0004】
VICSは、適用対象が自動車であり、道路状況などの情報を、2.5GHz帯の電波で片方向通信を行っている。各発信ポイントでのデータ継承性はなく、各ポイントから完結したデータを送信している。また、車載装置の種類は汎用的な受信機であり、通常のカーナビゲーションシステムと組み合わせて利用される。
【特許文献1】特開2002−104189号公報
【特許文献2】特開2003−104203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシステムにあっては、データ伝送量が限られており、伝送ごとの時間的な制約を前提に使用されていた。従って、低速なSS無線や操作性が悪い有線通信はデータ量の増大や即時性に対応できなかった。
【0006】
一方、従来例としての無線LANは高速通信が可能だが、使用者が多い場合は、限られた電波使用でお互いに制約を受けて通信が制限され、また、データ漏洩などセキュリティに問題を含んでいた。
【0007】
本発明は、走行中の列車と大量のデータの送受信が可能な列車通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、列車に設けられた車載装置との間でパケット通信を行う軌道に沿って配置された複数の路側装置と、各路側装置と通信可能に接続されたサーバ装置とを含む列車通信システムであって、進行する列車を通信圏内に含む路側装置は、前記車載装置との間でパケット通信を行い、かつ、通信未了のパケットを前記サーバ装置に送信し、前記サーバ装置は通信未了のパケットを進行する列車を通信圏内に含む次の路側装置へ送信し、前記通信未了のパケットを受けた路側装置は前記車載装置との間で前記通信未了のパケットのパケット通信を行う。
【0009】
上記構成によれば、列車に設けられた車載装置との間で通信路を占有して一対一の通信が可能になるため、大量のデータの送受信が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、列車に設けられた車載装置との間で通信路を占有して一対一の通信が可能になるため、大量のデータの送受信が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の列車通信システムを説明するための概略構成図を示す。本実施形態の列車通信システムは、列車内の運転席等に設置される車載装置10と、列車が走行する線路沿いに複数設置される路側装置N20および路側装置(N+1)30と、路側装置N20および路側装置(N+1)30と通信可能に接続されるサーバ装置40とを含んで構成される。ここでは、路側装置を2つ示したが、路側装置は列車が走行する線路沿いに多数設置される。
【0012】
本実施形態の列車通信システムは、走行中の列車に大量のパケットデータを送信し、列車内の乗客への案内情報や広告情報を行なう。そのために、列車が走行する線路沿いに多数の路側装置20,30を設置し、路側装置20,30から接近する列車に対向するように、例えば5.8GHz帯の電波を発射して双方向の通信を行なう。列車には、運転席等に専用の車載装置10が設けられる。
【0013】
路側装置20,30と車載装置10間の通信は、列車が路側装置20,30に接近(例えば、30〜40m)して通過するまでの短時間に行われるので、1つの路側装置20,30から送信できるデータ量には制限がある。そこで、サーバ装置40でそれぞれの路側装置20,30で送信したパケット数などのパケット情報を管理しておき、1つの路側装置20,30で未送付となったパケットは次の路側装置20,30から送信する(データの継承性)。
【0014】
本実施形態の列車通信システムでは、列車外から直接列車の運転席などに設けられた車載装置10に対して車両の窓ガラスごしに信号をやり取りすることで、使用する電波を占有して使用することができる。また、同じ帯域を同時に使用する他の通信からの混信を避けることができ、伝送速度を十分確保することができる。
【0015】
また、路側装置20,30と車載装置10を対向させて送受信するとともに、路側装置20,30のアンテナにはある程度指向性を持たせ、他の車両が他の路側装置と行っている別の通信に対して影響を与えないようにする。
【0016】
また、車載装置10と対向して通信を行なう路側装置20,30は、列車が走る線路沿いに複数台設けられるので、列車が移動する先で逐次データの通信を行なうことができる。列車外部から列車内部への通信内容は、車内の乗客へのサービスでもよいし、運転手に対する運行上の情報でもよい。また、通信を双方向として、列車内にある情報を列車外に通信する為に使用することもできる。
【0017】
図2は、本実施形態の列車通信システムのシステム構成ブロック図を示す。車載装置10は、客室に設けられるデータ表示装置11と、運転室に設けられる車載側制御装置12と、表示するデータ等を格納する記憶装置A14と、運転席等に設けられる車載側アンテナ装置13とを含む。
【0018】
路側装置N20は、例えば5.8GHz帯の電波を発射する路側側アンテナ装置21と、路側側制御装置22と、列車に送信するデータ等を格納する記憶装置B24と、サーバ装置40とデータ伝送を行なう伝送装置23と、通信レベルを判定して列車の接近および通過を検出する通信レベル判定回路25とを含む。路側装置(N+1)30も同様である。
【0019】
サーバ装置40は、路側装置N20および路側装置(N+1)30とのデータ伝送を制御するサーバ41と、列車に送信するデータ等を格納する記憶装置D43と、その表示内容等を制御するデータ用サーバ42とを含む。
【0020】
図3は、本実施形態の列車通信システムにおいて通信するデータ構成を示す。通信するデータは、パケットに分けられ、個々のパケットには、1番目、・・・(n−2)番目、(n−1)番目、n番目のように個別のナンバーがふってある。これにより、サーバ装置10でそれぞれの路側装置20,30で送信したパケット数などのパケット情報を管理しておき、1つの路側装置20,30で未送付となったパケットは次の路側装置20,30から送信することができる。
【0021】
図4は、本実施形態の列車通信システムにおけるデータ送信のシーケンス1(サーバ装置40から車載装置10)を示す。列車が側路装置N20に近づくと、路側装置N20から車載装置10に対してポーリングが行われる(1)。これに対し、車載装置10から路側装置N20へACK(acknowledgement)が返される(2)。
【0022】
次に、路側装置N20からサーバ装置40へのデータ要求が行われ(3)、サーバ装置40から路側装置N20へ総パケットナンバーの通知が行われる(4)。また、路側装置N20から車載装置10へ総パケットナンバーの通知が行われる(5)。
【0023】
次に、サーバ装置40から路側装置N20へデータ送出が行われ(6)、路側装置N20から車載装置10へのデータ取り込みが行われる(7)。また、車載装置10から路側装置N20へ通信レベル確認が行われ(8)、路側装置N20から車載装置10へ通信レベル限界が通知される(9)。これにより列車が路側装置N20を通過したことを確認する。
【0024】
列車が側路装置(N+1)30に近づくと、路側装置(N+1)30から車載装置10に対してポーリングが行われ(10)、車載装置10から路側装置(N+1)30へACKが返される(11)。次に、路側装置(N+1)30からサーバ装置40へデータ要求が行われ(12)、サーバ装置40から路側装置(N+1)30へデータ送出が行われる(13)。
【0025】
また、路側装置(N+1)30から車載装置10へデータ取り込みが行われる(14)。データ取り込みが終了すると、車載装置10から路側装置(N+1)30へ通信終了が通知され(15)、路側装置(N+1)30からサーバ装置40へ通信終了が通知される(16)。
【0026】
図5は、本実施形態の列車通信システムにおける路側装置切り替え時のフロー1(データはサーバ装置40から車載装置10へ送信)を示す。サーバ装置40(記憶装置D43)からn個のパケット情報を路側装置N20(記憶装置B24)経由で車載装置10(記憶装置A14)へ送付する(ステップS51)。次に、サーバ装置40(記憶装置D43)から路側装置N20へパケット内容を送出し、記憶装置B24へ格納し(ステップS52)、さらに、路側装置N20(記憶装置B24)から車載装置10へパケット内容を送出し、記憶装置A14へ格納する(ステップS53)。
【0027】
次に、路側装置N20と車載装置10の通信レベル確認を行い(ステップS54)、路側装置N20と車載装置10の通信が可能な場合は(ステップS55のYes)、路側装置N20から車載装置10へパケットの送出が継続され(ステップS56)、ステップS52に戻る。
【0028】
一方、ステップS55において、路側装置N20と車載装置10の通信が未了の場合は(No)、車載装置10から次の路側装置(N+1)30経由でサーバ装置40へ未受領のパケット情報を送付する(ステップS57)。次に、サーバ装置40(記憶装置D43)から路側装置(N+1)30へ未送付のパケット内容を送出し、記憶装置C34へ格納し(ステップS58)、さらに、路側装置(N+1)30から車載装置10へ未送付のパケット内容を送出し、記憶装置A14へ格納する(ステップS59)。そして、車載装置10が全てのパケットを受信完了したかを判断し(ステップS60)、受信完了している場合(Yes)は終了し、受信完了していない場合(No)は、(N+1)をNに置き換えて(ステップS61)ステップ52へ戻る。
【0029】
図6は、本実施形態の列車通信システムにおけるデータ送信のシーケンス2(車載装置10からサーバ装置40)を示す。列車が側路装置N20に近づくと、路側装置N20から車載装置10へポーリングが行なわれ(1)、これに対して車載装置10から路側装置N20へACKが返される(2)。
【0030】
次に、路側装置N20から車載装置10へデータ要求が行われ(3)、車載装置10から路側装置N20へ総パケットナンバーの通知が行われる(4)。また、路側装置N20からサーバ装置40に総パケットナンバーの通知が行われる(5)。
【0031】
次に、車載装置10から路側装置N20へデータ送出が行われ(6)、さらに、路側装置N20からサーバ装置40へのデータ取り込みが行われる(7)。次に、車載装置10から路側装置N20へ通信レベル確認が行われ(8)、路側装置N20から車載装置10へ通信レベル限界が通知される(9)。これにより列車が路側装置N20を通過したことを確認する。
【0032】
次に、列車が路側装置(N+1)30に近づくと、路側装置(N+1)30から車載装置10へポーリングが行われ(10)、車載装置10から路側装置(N+1)30へACKが返される(11)。次に、路側装置(N+1)30から車載装置10へデータ要求が行われ(12)、車載装置10から路側装置(N+1)30へデータ送出が行われる(13)。また、路側装置(N+1)30からサーバ装置40へデータ取り込みが行われる(14)。
【0033】
サーバ装置40へのデータ取り込みが完了すると、サーバ装置40から路側装置(N+1)30へ取り込み完了が通知され(15)、さらに、サーバ装置40へのデータ取り込み完了が路側装置(N+1)30から車載装置10へ通知される(16)。また、通信が終了する場合は、通信終了が車載装置10から路側装置(N+1)30へ通知され(17)、さらに、路側装置(N+1)30からサーバ装置40へ通知される(18)。
【0034】
図7は、本実施形態の列車通信システムにおける路側装置切り替え時のフロー2(データは車載装置10からサーバ装置40へ送信)を示す。車載装置10(記憶装置A14)よりn個のパケット情報を路側装置N20(記憶装置B24)および路側装置N20経由でセンターのサーバ装置40(記憶装置D43)へ送付する(ステップS71)。次に、車載装置10(記憶装置A14)より路側装置N20へパケット内容を送出し、記憶装置B24へ格納する(ステップS72)。
【0035】
次に、路側装置N20(記憶装置B24)からサーバ装置40へパケット内容を送出し、記憶装置D43へ格納する(ステップS73)。次に、路側装置N20と車載装置10の通信レベルを確認する(ステップS74)。そして、路側装置N20と車載装置10が通信可能の場合は(ステップS75のYes)車載装置10から路側装置N20へパケットの送出を継続し(ステップS76)、ステップS72へ戻る。
【0036】
一方、ステップS75において、路側装置N20と車載装置10の通信が未了の場合(No)、次の路側装置(N+1)30からセンター経由で未送付のパケット情報を受け取る(ステップS77)。そして、車載装置10(記憶装置A14)から路側装置(N+1)30へ未送付のパケット内容を送出し、記憶装置C34へ格納する(ステップS78)。
【0037】
また、路側装置(N+1)30からサーバ装置40へ未送付のパケット内容を送出し、記憶装置D43へ格納する(ステップS79)。次に、サーバ装置40が全てのパケットを受信完了したかを判断し(ステップS80)、受信完了した場合は(Yes)終了し、受信完了していない場合(No)は、(N+1)をNに置き換えて(ステップS81)ステップ72へ戻る。
【0038】
このように、本実施形態の列車通信システムおよび列車通信方法によれば、列車内と列車外を専用の通信手段で結び、路側装置20,30を列車の走行する線路沿いに複数台設置することで、列車が移動した先で通信が可能となり、結果として通信量を増やすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の列車通信システムは、列車に設けられた車載装置との間で通信路を占有して一対一の通信が可能になるため、大量のデータの送受信が可能となるという効果を有し、列車に設けられた車載装置との間でパケット通信を行う軌道に沿って配置された複数の路側装置と、各路側装置と通信可能に接続されたサーバ装置とを含む列車通信システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態の列車通信システムを説明するための概略構成図
【図2】本実施形態の列車通信システムのシステム構成ブロック図
【図3】本実施形態の列車通信システムにおいて通信するデータ構成
【図4】本実施形態の列車通信システムにおけるデータ送信のシーケンス1(サーバ装置40から車載装置10)
【図5】本実施形態の列車通信システムにおける路側装置切り替え時のフロー1(データはサーバ装置40から車載装置10へ送信)
【図6】本実施形態の列車通信システムにおけるデータ送信のシーケンス2(車載装置10からサーバ装置40)
【図7】本実施形態の列車通信システムにおける路側装置切り替え時のフロー2(データは車載装置10からサーバ装置40へ送信)
【符号の説明】
【0041】
10 車載装置
11 データ表示装置
12 車載側制御装置
13 車載側アンテナ装置
14 記憶装置A
20 路側装置N
21,31 路側側アンテナ装置
22,32 路側側制御装置
23,33 伝送装置
24 記憶装置B
25,35 通信レベル判定回路
30 路側装置N+1
34 記憶装置C
40 サーバ装置
41 サーバ
42 データ用サーバ
43 記憶装置D

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に設けられた車載装置との間でパケット通信を行う軌道に沿って配置された複数の路側装置と、各路側装置と通信可能に接続されたサーバ装置とを含む列車通信システムであって、
進行する列車を通信圏内に含む路側装置は、前記車載装置との間でパケット通信を行い、かつ、通信未了のパケットを前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は通信未了のパケットを進行する列車を通信圏内に含む次の路側装置へ送信し、
前記通信未了のパケットを受けた路側装置は前記車載装置との間で前記通信未了のパケットのパケット通信を行う列車通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の列車通信システムであって、
各路側装置は、前記車載装置にポーリングを行ない、前記車載装置から応答があった場合にパケット通信を開始する列車通信システム。
【請求項3】
請求項1記載の列車通信システムであって、
各路側装置は、通信レベルを判定して、通信圏内に含む列車を認識する列車通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−182285(P2006−182285A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380467(P2004−380467)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】