判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法
【課題】連続して搬送されるタイヤコードの断線部、結節部、表面状態を同時に検出し、精度良くタイヤコードの表面状態を検査することを可能にする判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法を提供する。
【解決手段】直線方向に移動するタイヤコード3を所定の周期で撮像するカメラ20;21;22;23及び当該カメラ20;21;22;23の出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、タイヤコード3の移動速度を検出する速度検出手段と、カメラ20;21;22;23によるタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nをタイヤコード3の移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、有効画素範囲における現フレームF1の後部と次フレームF2の前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域N0を、有効画素数Nをタイヤコード3の移動速度に基づき制御して最適化する。
【解決手段】直線方向に移動するタイヤコード3を所定の周期で撮像するカメラ20;21;22;23及び当該カメラ20;21;22;23の出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、タイヤコード3の移動速度を検出する速度検出手段と、カメラ20;21;22;23によるタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nをタイヤコード3の移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、有効画素範囲における現フレームF1の後部と次フレームF2の前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域N0を、有効画素数Nをタイヤコード3の移動速度に基づき制御して最適化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用のコードの断線部、結節部、表面状態等の外観検査を同時に行うことが可能な判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤなどのゴム部材を補強するためにタイヤコードが一体化される。このタイヤコードは、複数本のものを並べて搬送され、複数の工程を経て所定の表面加工がなされる。表面加工の工程には、タイヤコードの表面に接着剤を塗布するディッピング工程や、ディッピングされたタイヤコードを乾燥させる複数の乾燥工程などが存在する。
具体的には、加工前のタイヤコードが巻き付けられたボビンが複数設けられる巻出し装置から連続的かつ並列直線的に複数本のタイヤコードを巻き出して一定方向に搬送し、各種工程を経て巻取りボビンに巻き取ることにより表面加工が行われる。このような加工工程において、高品質な製品を高収率で得るために、タイヤコードの断線検出、結節部検出、タイヤコード外観検査等を測定することが必要とされている。
タイヤコードの表面加工工程では、図11(b)に示すようにタイヤコード3の搬送時に断線することがあり、断線した部分を補修接続した上で加工処理後に取り除く必要がある。また、巻出しボビンからタイヤコード3の巻出しを連続的に行うため、巻き出されているタイヤコード3の終了端と新たに巻き出されるタイヤコード3の開始端とを結節させた結節部が形成される。当該結節部は、検出されずにボビンに巻き取られると、巻き取られたボビンから再度タイヤコード3を引き延ばして結節部を排除する必要があり、結節部を排除する作業の追加によって作業工数が増加し、生産性が低下してしまう。また、結節部や断線部が検出されずに搬送されると、後工程で搬送設備あるいは加工設備にタイヤコード3が引っかかり、設備停止を招く可能性がある。さらに、結節部がゴム部材製品に混入すると、ゴム部材製品が完成した時に結節部の存在する部分は、ゴム部材製品に浮き上がりを生じさせてしまう等の外観上の問題がある。このため、上記断線、結節部等も検知して排除する必要がある。
タイヤコードの表面加工で発生する断線を検出する方法としては、図11(a),(b)で示すようにドロッパーピンと通電バーを用いる技術が知られている。具体的には、図11(a)に示すように並列直線的に複数本巻き出されたタイヤコード3を通したドロッパーピン40は、根元が図外の基部で支持されているが、タイヤコード3が断線すると図11(b)に示すようにドロッパーピン40がタイヤコード3からはずれて、通電バー41に接触し通電することによって断線が検出される。
また、タイヤコードの断線や結節部を検出する方法としては、図12(a),(b),(c)に示す光電センサや超音波センサを用いる技術が知られている。一例として、複数本のタイヤコード3の通過位置近辺に設置した光電センサ42の発光素子42aからの光42cは、図12(b)に示すように断線により緩んだたるみ部分3mや図12(c)に示すように旧コードの後部に新コードを継ぐときに生じる結節部3n等の存在によって光42cが一部遮られるのでこれらが受光素子42bで感知される。
また、タイヤコードの断線や結節部を検出する別の方法としては、ラインCCDカメラやエリアセンサを用いる技術が知られている。具体的には図13に示すように、タイヤコード3の上方などにラインCCDカメラ43を設置し、スリット光43aを照射して複数本のタイヤコード3からスリット画像を得て、この画像を処理することによりタイヤコード3の断線や結節部を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−71939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図11(a),(b)に示すドロッパーピン40と通電バー41を用いた方法は、ドロッパーピン40がタイヤコード3と直接接触することによって、タイヤコード3への異物の付着や、擦れによるタイヤコード3の断線を引き起こす可能性がある。また、断線のみ検出し結節部の検出を行う選別的な検出を行うことはできない。
また、図12(a),(b),(c)に示す光電センサを用いた方法は、タイヤコード一本一本毎の検出を行うためタイヤコード3の本数分の光電センサ42(発光素子42a,受光素子42b,処理回路等)が必要となり設置に費用がかかる。さらに、弛んだタイヤコード3や、表面加工装置からタイヤコード3に伝わる振動によって、光電センサ42の誤検出を引き起こすという問題がある。
また、図15に示すラインCCDカメラ43を用いた方法は、タイヤコード3が振動するため安定検出が難しい。また、ライン画像を検知する方法であるので不連続にしか検出できず、最終的に作業員による確認を必要とし、完全自動化された測定ができないという問題がある。
本発明では、前記課題を解決するため、連続して搬送されるタイヤコードの断線、結節部、表面状態を同時に検出し、精度良くタイヤコードの表面状態を検査することを可能にする判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成として、直線方向に移動するコードを所定の周期で撮像するカメラ及び当該カメラの出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、コードの移動速度を検出する速度検出手段と、カメラによるコードの移動方向の有効画素数をコードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を、有効画素数をコードの移動速度に基づき制御して最適化することを特徴とする。これにより、コードの移動速度に合わせて画素数を変更できるため、フレーム同士の重なりを小さくでき効率良く連続的に状態の判定が可能となる。
本発明の構成として、コードは複数本並設され、複数本毎にカメラを1台ずつ設けられたことを特徴とする。これにより、少ないカメラでコードの測定ができ、低コスト化が図れる。
本発明の構成として、撮像において、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設けたことを特徴とする。これにより、コードを鮮明にカメラで抽出できるので、物や人が通過しても背景の色調を変化させることなく、常に背景を一定の色調に保つことにより画像のエッジ抽出の精度が不変となる。
本発明の構成として、処理手段は、各フレーム内の画像の輝度を微分して出力を得、当該出力の輝度変化が最大となる波形のエッジ位置を抽出し、当該エッジ位置によりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、フレーム内のコードにおいて、微分によりエッジ位置を検出でき、コードの良否が判定可能となる。
本発明の構成として、処理手段は、エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数を検知し、検知した画素数と閾値とを比較してコードの良否を判定するか、又は、フレームにおける絶対位置に対するエッジ位置を検出し、得られたエッジ位置と閾値とを比較して、コードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードのエッジ位置とコードの閾値とを比較することによって、コードの良否を判定できる。
本発明の構成として、処理手段は、エッジ位置の有,無を検出することによりコードが断線しているか否かを判定することを特徴とする。これにより、コードの断線部の有,無を判定することができる。
本発明の構成として、処理手段は、登録画像との差異を判別するパターンマッチングに基づきコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、撮像された画像は、基準画像を基にしてコードの良否、つまりコードの断線及び結節部を判定することができる。
本発明の構成として、コードは各工程を経て処理されるものとし、各工程毎に請求項1記載の判定装置を設置し、各カメラによる撮像及び、処理手段によるコードの画像をロギングし、ロギングした出力の処理により、各工程毎にコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、各工程毎にコードの状態を検出できるので、工程の異常も判定できる。
本発明の構成として、コードの状態変化を色調変化の検知に基づき検出することを特徴とする。これにより、色調変化を検出でき、より細かいコードの処理状態の変化を判定できる。
本発明の構成として、1台のモニタに各工程を経たコードの外観の良否結果を表示することを特徴とする。これにより、どの工程に不具合があるのか、表示結果の比較の上で早期に発見でき、補修管理が容易となる。
本発明の形態として、直線方向に移動するコードを所定の周期でカメラにより撮像する撮像ステップと、カメラにより撮像された出力画像を処理する処理ステップと、コードの移動速度を検出する速度検出ステップと、カメラのコードの移動方向の有効画素数をコードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定ステップとを含み、コードの移動速度に基づき有効画素数を制御し、有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を最適化することを特徴とする。これにより、コードの移動速度に合わせて画素数を変更できるため、フレーム同士の重なりを小さくでき効率良く状態判定が可能となる。
本発明の形態として、撮像ステップは、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設置して撮像することを特徴とする。これにより、鮮明なコードの画像を常にカメラで撮像できる。
本発明の形態として、処理ステップは、出力画像内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、当該勾配と閾値とを比較してコードのエッジ位置を検出するエッジ検出ステップと、検出されたエッジ位置によりコードの良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とする。これにより、フレーム内のコードにおいて、エッジ位置を検出することにより、コードの良否であるコードの断線及び結節部を判定することができる。
本発明の形態として、判定ステップは、エッジ検出ステップで検出されたエッジ位置に基づき、エッジ間の画素数をカウントし、当該画素数の閾値と比較してコードの良否を判定するか、又は、出力画像における絶対位置に対するエッジ位置を検出し、当該検出結果と閾値とを比較してコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードのエッジ検出結果と閾値とを比較することによって、コードの良否つまりコードの断線及び結節部の検出ができる。
本発明の形態として、判定ステップは、エッジ位置の有,無によりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードの断線部の有,無を判定することができる。
本発明の形態として、判定ステップは、予め記憶する登録画像をエッジ位置に対してパターンマッチングして、コードの良否を判定することを特徴とする。これにより、撮像された画像は、登録画像を基にしてコードの良否を判定することができる。
本発明の形態として、処理ステップは、エッジ間により囲まれる領域を構成する画素の輝度の平均値を算出し、輝度の平均値と予め設定された閾値とによりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードの輝度の平均値と設定された輝度の閾値とにより、コードの良否であるコードの表面処理状態を判定できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の判定装置によれば、カメラによるリアルタイムでの断線検出が可能なため、断線を早期に発見できスクラップを低減することができる。また、コードを用いるゴム部材製品への結節部混入を防止できる。コードの外観検出が可能であるため、コード一本一本全てにわたって品質検査ができる。また、コードの外観状態は表面加工工程や表面加工設備の状態と相関しており、コードの外観状態を把握することは表面加工工程や表面加工設備の変化や異常を検出することに繋がり異常の早期発見ができる。さらに、搬送速度によってカメラの有効画素を設定することが可能であるため、搬送速度が高速であっても検出できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るタイヤコード処理装置の概略工程側面図及び上面図。
【図2】本発明に係る判定装置のブロック図。
【図3】本発明に係る判定装置の概略側面図。
【図4】従来の判定装置により撮像したコードの画像表示図。
【図5】本発明に係る判定装置により撮像したコードの画像表示図。
【図6】本発明に係る判定装置のカメラ視野を示した概略図。
【図7】本発明に係る判定装置により検出した、(a)はコード画像及びその波形図、(b)はコードと結節部の画像及びその波形図。
【図8】本発 明に係る判定装置により検出したコードの色調の良否判定を示す図。
【図9】本発明に係る判定装置による検査結果をモニタに表示した内容の外観図。
【図10】カメラ仕様の説明図。
【図11】ドロッパーピンを用いた従来の検査方法を示す図。
【図12】光電センサを用いた従来の検査方法を示す図。
【図13】スリット画像を抽出する従来の検査方法を示す図。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1,2は本発明による判定装置1を適用するタイヤコード処理装置の一例を示す簡略図であり、各図において、2はタイヤコード3が巻き出されたボビン2aを複数個有し、巻出しボビン2aから複数本(例えば100本)のタイヤコード3(図3参照)が巻き出される巻出し装置、4;5;6はガイド、7は巻出し駆動装置、8は一時的にタイヤコード3を蓄えるバッファ装置、9は駆動装置、10は例えば接着剤等の浸漬装置、11;12;13は表面加工液を乾燥させる乾燥装置、14はガイド、15は巻取り駆動装置、16;17;18;19は表面加工されたタイヤコード3をボビンへと巻取る巻取り装置である。
タイヤコード3の加工は、巻出しボビン2aから巻き出す巻出し装置2から開始される。巻出しボビン2aから巻き出されたタイヤコード3は、複数本同時に並列直線状に巻き出され、ガイド4;5;6によって平行状態を保ちつつガイドされた状態で一方向に搬送(移動)される。
次の工程は、巻出し装置2から巻き出されたタイヤコード3を一時的に蓄えるバッファ装置8を有し、バッファ装置8は、巻出し装置2が停止したとき、又は、後述の巻取り装置16;17;18;19が停止したときに、一時的に蓄えたタイヤコード3を送出し、バッファ装置8以降の後段の工程を停止させないようにタイヤコード3をバッファする。よって、例えば、旧コードと新コードとを継ぐ場合にも旧コードの後端側の巻出しを停止することもできる。
次の工程では、表面加工液にタイヤコード3を浸漬装置10に浸漬させてタイヤコード3に表面加工を施す。平行状態を保ちつつ並列直線状に搬送される複数本のタイヤコード3を浸漬装置10の表面加工液に浸漬する。
次の工程では、浸漬装置10で表面加工液に浸漬された複数本のタイヤコード3の表面加工液を各乾燥装置11;12;13を経て乾燥させる。
次の工程では、乾燥装置11;12;13を通過して乾燥した複数本のタイヤコード3が連続的に巻取り装置16;17;18;19の複数の巻取りボビンによって巻き取られる。
【0010】
判定装置1は、本例では最終の乾燥装置13の後段に設けられるが、浸漬装置10の直後でも乾燥装置11の直後でも、乾燥装置12の直後でも、あるいは後述の如く複数の個所に設けても良い。
図3においては、判定装置1は複数本(例えば100本)平行に並べて、直線方向に移動するタイヤコード3を所定の周期で撮像する一例として4台のカメラ20;21;22;23及び、処理手段24を備え、上記カメラ20;21;22;23の出力画像3aは処理手段24に出力される。
処理手段24は、有効画素設定手段27と、撮像周期設定手段28と、タイヤコード3の速度を検知する速度センサ29aからの信号を検知する速度検出手段29と、二重処理領域最適化手段30と、演算手段31と、記憶手段50とによって構成される。速度センサ29aは、例えば巻出し駆動装置7の搬送歯車の時間当たりの回転数を検知するものが採用される。
4台のカメラ20;21;22;23は、図3に示すようにそれぞれ一例として25本ずつ異なったタイヤコード3を上部位置から撮像するが、カメラ20;21;22;23のタイヤコード3の反対側には背景板32が設置されており、この背景板32の色は、後述の画像処理におけるタイヤコード3のエッジを安定検出可能な色が設定されている。
4台のカメラ20;21;22;23は、4台のカメラに対応した光源20a;21a;22a;23aを有し、一例としてタイヤコード3が100本であるとした場合、25本のタイヤコード3を1台のカメラで撮像するように設定されている。このとき、各光源20a;21a;22a;23aより各カメラの撮像範囲に撮像光が照射される。
制御手段25は制御用CPU、上位信号出力用の外部出力用端子(パラレル通信のような比較的高速処理可能なもの)から成る。処理手段24は画像をロギング演算する演算手段31を有し、撮像した情報を処理して蓄積する記憶手段を含むCPUより構成される。
【0011】
上記カメラ20;21;22;23は、例えば、1台のカメラで25本のタイヤコード3を撮像するとき、速度検出手段29より出力されるタイヤコード3の移動速度に対し、所定の周期で撮像を行うと、図4に示すようにタイヤコード3の移動方向mに対する有効画素数Nが所定の画素数より成るフレームF1,F2が形成される。タイヤコード3の移動方向mに対しF1を現フレームとすると、F2がx次フレームであり、現フレームF1と次フレームF2とに跨る二重処理領域N0が発生する。二重処理領域N0とは、現フレームF1の後部と次フレームF2の全部とが移動方向に重なる領域である。この二重処理領域N0は、各フレームF1,F2の処理を個別に行う場合に、処理が二重に行われるために、処理手段24の処理にとっては非効率となる。
本実施形態では、速度検出手段29は、速度センサ29aが出力するタイヤコード3の移動速度を速度信号として取り込み、有効画素設定手段27を制御する。この場合、二重処理領域最適化手段30は、処理速度と有効画素設定手段27に撮像領域としての有効画素数Nを調整するように制御を加えて、撮像領域としての有効画素数Nを調整することで、二重処理領域N0を最小限とし、ムラなく、漏れの無い処理と高解像度化を実現する。
【0012】
本例の場合、図5に示すように有効画素数Nを小さく設定して、タイヤコード3の移動方向mの各フレームF1,F2の幅(有効画素数N)を狭くし高速運転時のインライン計測に対応可能とし、さらに、タイヤコード3の移動速度に応じて二重処理領域N0を必要最小限に小さく設定して、効率的な動作が行われるようにする。
上記二重処理領域N0のタイヤコード3の移動方向mの大きさ(幅)は、一例として図外の操作手段で操作可能としておく。
即ち、撮像画像からタイヤコード3を安定的に検出する場合や、検出されたタイヤコード3を画像処理する場合、撮像画像において検出されるタイヤコード3の太さの安定検出画素数には3画素は必要とされる。このため、タイヤコード3の太さに少なくとも3画素を割り当てるためには、カメラの1フレーム当たりの総画素数が増えることになり、1フレーム当たりの画素数の増加に伴って処理速度が低下してしまい、タイヤコード3の移動速度を毎分100m以上の高速運転時にはインラインでの測定・検査ができなくなるという問題がある。
そのため、タイヤコード3の移動速度とともに処理手段24の処理速度に合わせて、タイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nを制御し、さらに二重処理領域N0を最適化し、画像のムラや漏れのない処理と高い解像度を両立した処理が可能となる。
例えば、タイヤコードが100本程度の本数となると、1台のカメラにおける1フレーム当たりの総画素数を上げたところで、タイヤコードの安定検出画素数を確保できないため、複数台のカメラによる同期処理システムとする。100本程度のタイヤコード3であれば、4台のカメラで十分処理可能である。
また、背景板32は、タイヤコード3に対して最もタイヤコード3の後述のエッジを安定検出できる色を選定し設置する。
なお、図4と図5は撮像周期設定手段28の制御下でそれぞれ同一の周期でカメラが制御される場合であるが、図5において二重処理領域N0を調整するために、撮像周期設定手段28を制御して、カメラの撮像周期を制御してもよい。
【0013】
図6に示すように、上記撮像領域としての有効画素数Nの幅(大きさ)は、実測定視野であり、前述したとおり、有効画素設定手段27により設定可能であるが、その設定範囲は、カメラ自体の最大測定視野範囲J内である。
この有効画素数Nの幅は、二重処理領域N0の幅が最小となる範囲に設定され、タイヤコード3の搬送速度が速くなると、有効画素数Nをあまり狭くはできず、搬送速度が速くなると最大測定視野範囲J内でタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの幅を広げなければならない。つまり、タイヤコード3の移動速度が速くなると二重処理領域N0の幅が狭くなるため、二重処理領域N0を維持するには、最大測定視野範囲Jの範囲内でタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの幅を広げる領域を確保する必要がある。よって、最大測定視野範囲Jには、タイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの両側に非測定範囲であるパーシャル領域Kが生じる。
図6において、横列に並べた各カメラ20;21;22;23には、隣接するカメラ同士の撮像画像に重なりWが生じる。このカメラ同士の重なりWにより、各カメラが横振れしてもタイヤコード3の撮像漏れを防ぐことができる。
【0014】
図7(a),(b)は、各フレームF1,F2毎に出力画像3aを演算手段31で演算処理するための一例を示す。演算手段31は、タイヤコード3の出力画像3aの輝度値を微分することによって、波形Qを得て、この波形QのエッジQ1とエッジQ2との間の画素数Rをカウントする。つまり、各フレーム内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、算出された輝度の勾配の絶対値と閾値とを比較し、比較の結果から、輝度の勾配の絶対値が閾値以上のときにタイヤコード3のエッジ位置として検出する。例えば、背景板からタイヤコード3を検出したときの勾配は正の値で算出され、タイヤコード3から背景板を検出したときの勾配は負の値で算出される。
上記エッジ位置とは、画像を構成する画素の輝度が急激に変化する点であり、タイヤコード3の幅(太さ)の両側端部のうちいずれかが正又は負の勾配として検出される位置である。
また、処理手段24は、正の勾配として検出されたエッジ位置と負の勾配として検出されたエッジ位置とにより囲まれ、タイヤコード3の移動方向mに延長する領域を構成する画素の輝度の平均輝度値を算出し、平均輝度値と予め設定された輝度の閾値とを比較することにより、タイヤコード3の良否を判定する。
判定の結果、画素数Rが記憶手段50に記憶した閾値を超えるか下回ると、アラーム手段51を駆動してアラームを発生したり、装置を停止したりする。また、平均輝度値が記憶手段50に記憶した閾値を超えるか、又は、下回るとアラーム手段51を駆動してアラームを発生したり、装置を停止したりする。
したがって、タイヤコード3の一部が規定のものより太径のもの、あるいは細径のものがカメラで撮像されると、画素数Rが閾値よりも大きくなったり、あるいは画素数Rが閾値よりも小さくなったりするので、アラームを発生したり、装置を停止してメンテナンスを行ったりできる。
【0015】
図7(b)に示すように結節部画像3bを有するタイヤコード3の画像3cの輝度値についても、演算手段31で微分することによって、波形Qを得て、エッジQ3とエッジQ4との間の画素数Rを検出して同様の処理を行うことで結節部画像3bを検出でき、アラームを発生させることや、装置を停止してメンテナンスを行わせることもできる。また、処理手段24は、タイヤコード3のエッジ位置の有,無を判定することによって、タイヤコード3の断線部及びタイヤコード3の良否を判定する。
さらに、処理手段24は、タイヤコード3のエッジ位置の検出により、検出されたエッジ位置を基準とし、エッジ間の画素数をカウントする。カウントされた画素数と設定登録した基準となる閾値とを比較してタイヤコード3の良否を判定する。
また、各フレームF1,F2においては、各フレームの絶対位置に対してエッジ位置を検出し、検出されたエッジ位置と設定したエッジ位置の閾値とを比較してタイヤコード3の良否を判定する。具体的には、各フレームに左上を原点とする基準座標系を設定し、基準座標系のタイヤコード3の移動方向mに延長する座標軸を絶対位置として設定する。絶対位置の座標軸からタイヤコード3の並び方向にエッジ位置の検出を行い、座標軸からエッジ位置までの画素数をカウントし、検出されたエッジ位置とエッジ位置との画素数の差である画素数Rを閾値と比較して、タイヤコード3の良否を判定する。
なお、画素数Rの検出に替えて、出力画像3a中に基準座標であり、空間の中で物体の位置を示すワールド座標Mを設定し、ワールド座標Mにおける各座標点とエッジQ3との間RmとRnとの差Rtを検出する方法でも、あるいは差分Rhを検出する方法でも結節部画像3bを検出できる。なお、ワールド座標Mとは、出力画像3aを構成する画素によって画面上に形成される座標系を示し、例えば、出力画像3aの左上を座標原点に設定される。
また、タイヤコード3が断線した場合は、出力画像3aより得られる波形Q中には上記エッジQ1,Q2が無くなるので、これを演算手段31で断線と判定してアラームを作動できる。
【実施例】
【0016】
本例では、カメラより成る判定装置1を装置の各プロセス毎(例えば、巻出し装置2の後,バッファ装置8の後,浸漬装置10の後,乾燥装置11;12;13の後)に設置し、演算手段31では、タイヤコード3の外観状態(色や色ムラ)をロギングし、色調の±3σの値を算出し、常に色調と基準色とを比較しながら色調変化により外観状態を判定する。
図8は色調に対する演算手段31の出力波形Pを示し、色調定常値の範囲内に出力波形Pが納まっておれば、アラームは発しないが、非定常にまでシフトしておれば、アラームを発生するように構成している。
【0017】
図9により任意の複数のプロセス毎にカメラ及び処理装置を設置した場合に、管理センターに設置された一個のモニタ26aにより表示結果が表示される。モニタ26aの下部には乾燥前(乾燥装置11の前段)、第一乾燥段階(乾燥装置11の直後)、第二乾燥段階(乾燥装置12の直後)、第三乾燥段階(乾燥装置13の直後)の各プロセス毎に撮像した複数本のタイヤコード3の外観(色付)を画像処理結果26bとして示している。モニタ26aの上段の表示部には、検出したタイヤコード3の輝度値を微分し、輝度変化が最大となる位置をタイヤコード3の各々のエッジとして抽出した結果をタイヤコード3毎に数字で示している。また、モニタ26aの表示の中段の表示部には、タイヤコード3の抽出した色の結果を数字で示している。一例として、第一乾燥段階のタイヤコード3の色を基準として、基準色の面積値を数値にて表示し、数値が大きいほど基準色の占める割合が高いことを示している。画像処理結果26bの結果表示は、リアルタイムで撮像したタイヤコード3の画像を表示している。
本実施の形態によれば、1台のモニタ26aにより色抽出結果26dの内容(数字)によりタイヤコード3のプロセス毎の色を検知して、タイヤコード3が正常か否かを判定でき、またコードエッジ位置検出結果26cにより各プロセス毎のエッジ位置等を数字で検出でき、正常か否かを判定できる。あるいは、画像処理結果26b内のコード色によってもタイヤコード3が正常か否か判定できる。また、色抽出結果26dの全並びの数字を対比することでも各プロセスの異常を判定できる。
ここで、エッジ検出は、輝度値を微分し、輝度変化が最大となる位置をエッジとして抽出する色抽出はタイヤコード3の中央部の第一乾燥段階(乾燥装置11の直後)の色(赤茶)を基準とし、基準色の面積値を数値にて表示し、表示が大きいほど基準色の占める割合が高いことを示す。
【0018】
本発明によれば、リアルタイムで断線検出が可能なため、スクラップの低減や断線したタイヤコードの機体へのからまり最小限化による復旧時間短縮が図れ、また、結節部識別による後工程への誤流入防止が図れ、外観検査が可能となる。さらに、上記構成のタイヤコード処理装置をプロセス毎に配置することで、タイヤコードの外観検査によるプロセス監視、設備監視が可能となり、簡易的な構成の処理装置によって工程毎の全数品質検査が実施できる。また、設備の故障や不具合を早期に発見できる可能性がある。
また、一つのユニットで数百本の個別判定が可能となり、上記異常モードも識別可能となる。さらに、インラインで全数検査が可能となり、毎分150m程度の高速対応が可能となる。
【0019】
次に、図10に示すようにタイヤコード3の移動方向mに対するタイヤコード3の並び方向hに対する適用例の一例を下記に示す。この場合、カメラは200万画素のデジタルカメラを用いている。
(1)H方向検討において、タイヤコードの安定検出画素数を3画素とした場合、タイヤコード外径≒0.6mmのときの分解能は0.6/3=0.2mm/画素となり、パノラマ画像処理検出機能を用いたカメラでは、200万画素(H1600×V1200)×4となる。また、現フレームF1と次フレームF2とに300画素ずつ重ね合わせるためには、(H1600−300)×4=H5200画素、視野=5200×0.2=1040mm>990mm(タイヤコード幅)となり、安定検出してタイヤコード100本を測定可能で、緩みについても検出可能となる。
(2)V方向検討において、タイヤコードの移動速度を150m/minとした場合、150m/min=2500mm/s=2.5mm/ms、パーシャル領域K100万画素(H1600×V600)に設定する。また、一秒間当たりのフレーム数は60fps(60フレーム/s)とすれば、1フレームの処理速度は、1/60=16.7ms(理論値)である。よって、視野の最大幅=1200×0.2=240mmであるから、1フレーム間のタイヤコード移動距離は、視野の最大幅よりも小さく、タイヤコード移動距離=2.5×(総処理時間)≧120mm(パーシャル領域Kを100万画素とした場合の視野の幅)となるので、タイヤコードの測定において全数の検出が可能となる。ここで、総処理時間=1フレーム処理速度+画像処理時間+通信速度=50ms以内である。
(3)レンズの検討において、1台の必要視野H=0.2×1600=320mmとなり、レンズによる収差及び取付スペースを考えると、例えば焦点距離が8mmの低ディストーションレンズ等が妥当であると考え、カメラの設置距離は、520mm。レンズ収差は、基本的に遠距離からの方が球面収差の影響を受けない。焦点距離が短いレンズ、例えば5mmでワークが視野いっぱいにあると、球面収差が顕著に現れる。取付スペースは、短い方が望ましい。
【0020】
なお、エッジ位置の基準となるパターンを登録画像として予め記憶手段に記憶させ、カメラによる画像を1フレーム毎に処理手段で処理した後、処理手段の検出したエッジ位置と登録画像とのエッジ位置を比較して、パターンマッチングするようにしてタイヤコードの外観の良否を判定するようにしてもよい。
また、撮像画像の中から基準画像に近似するものを候補画像として選択抽出し、当該選択抽出された基準画像と撮像画像とを色抽出結果の数値として比較し、タイヤコードの外観の良否を判定するようにしてもよい。
【0021】
本発明は、測定用のコードはタイヤ用として説明した。これに限定されず、他の用途に用いる線材について適用できる。例えば、コイル等に用いる銅等の導電材でも、あるいは糸、チューブ等の線材であっても適用できる。
【0022】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 判定装置、3 タイヤコード、20;21;22;23 カメラ、
24 処理手段、25 制御手段、26 モニタ、27 有効画素設定手段、
28 撮像周期設定手段、29 速度検出手段、30 二重処理領域最適化手段、
31 演算手段、32 背景板、50 記憶手段、51 アラーム手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用のコードの断線部、結節部、表面状態等の外観検査を同時に行うことが可能な判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤなどのゴム部材を補強するためにタイヤコードが一体化される。このタイヤコードは、複数本のものを並べて搬送され、複数の工程を経て所定の表面加工がなされる。表面加工の工程には、タイヤコードの表面に接着剤を塗布するディッピング工程や、ディッピングされたタイヤコードを乾燥させる複数の乾燥工程などが存在する。
具体的には、加工前のタイヤコードが巻き付けられたボビンが複数設けられる巻出し装置から連続的かつ並列直線的に複数本のタイヤコードを巻き出して一定方向に搬送し、各種工程を経て巻取りボビンに巻き取ることにより表面加工が行われる。このような加工工程において、高品質な製品を高収率で得るために、タイヤコードの断線検出、結節部検出、タイヤコード外観検査等を測定することが必要とされている。
タイヤコードの表面加工工程では、図11(b)に示すようにタイヤコード3の搬送時に断線することがあり、断線した部分を補修接続した上で加工処理後に取り除く必要がある。また、巻出しボビンからタイヤコード3の巻出しを連続的に行うため、巻き出されているタイヤコード3の終了端と新たに巻き出されるタイヤコード3の開始端とを結節させた結節部が形成される。当該結節部は、検出されずにボビンに巻き取られると、巻き取られたボビンから再度タイヤコード3を引き延ばして結節部を排除する必要があり、結節部を排除する作業の追加によって作業工数が増加し、生産性が低下してしまう。また、結節部や断線部が検出されずに搬送されると、後工程で搬送設備あるいは加工設備にタイヤコード3が引っかかり、設備停止を招く可能性がある。さらに、結節部がゴム部材製品に混入すると、ゴム部材製品が完成した時に結節部の存在する部分は、ゴム部材製品に浮き上がりを生じさせてしまう等の外観上の問題がある。このため、上記断線、結節部等も検知して排除する必要がある。
タイヤコードの表面加工で発生する断線を検出する方法としては、図11(a),(b)で示すようにドロッパーピンと通電バーを用いる技術が知られている。具体的には、図11(a)に示すように並列直線的に複数本巻き出されたタイヤコード3を通したドロッパーピン40は、根元が図外の基部で支持されているが、タイヤコード3が断線すると図11(b)に示すようにドロッパーピン40がタイヤコード3からはずれて、通電バー41に接触し通電することによって断線が検出される。
また、タイヤコードの断線や結節部を検出する方法としては、図12(a),(b),(c)に示す光電センサや超音波センサを用いる技術が知られている。一例として、複数本のタイヤコード3の通過位置近辺に設置した光電センサ42の発光素子42aからの光42cは、図12(b)に示すように断線により緩んだたるみ部分3mや図12(c)に示すように旧コードの後部に新コードを継ぐときに生じる結節部3n等の存在によって光42cが一部遮られるのでこれらが受光素子42bで感知される。
また、タイヤコードの断線や結節部を検出する別の方法としては、ラインCCDカメラやエリアセンサを用いる技術が知られている。具体的には図13に示すように、タイヤコード3の上方などにラインCCDカメラ43を設置し、スリット光43aを照射して複数本のタイヤコード3からスリット画像を得て、この画像を処理することによりタイヤコード3の断線や結節部を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−71939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図11(a),(b)に示すドロッパーピン40と通電バー41を用いた方法は、ドロッパーピン40がタイヤコード3と直接接触することによって、タイヤコード3への異物の付着や、擦れによるタイヤコード3の断線を引き起こす可能性がある。また、断線のみ検出し結節部の検出を行う選別的な検出を行うことはできない。
また、図12(a),(b),(c)に示す光電センサを用いた方法は、タイヤコード一本一本毎の検出を行うためタイヤコード3の本数分の光電センサ42(発光素子42a,受光素子42b,処理回路等)が必要となり設置に費用がかかる。さらに、弛んだタイヤコード3や、表面加工装置からタイヤコード3に伝わる振動によって、光電センサ42の誤検出を引き起こすという問題がある。
また、図15に示すラインCCDカメラ43を用いた方法は、タイヤコード3が振動するため安定検出が難しい。また、ライン画像を検知する方法であるので不連続にしか検出できず、最終的に作業員による確認を必要とし、完全自動化された測定ができないという問題がある。
本発明では、前記課題を解決するため、連続して搬送されるタイヤコードの断線、結節部、表面状態を同時に検出し、精度良くタイヤコードの表面状態を検査することを可能にする判定装置,タイヤコード処理装置及び状態判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成として、直線方向に移動するコードを所定の周期で撮像するカメラ及び当該カメラの出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、コードの移動速度を検出する速度検出手段と、カメラによるコードの移動方向の有効画素数をコードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を、有効画素数をコードの移動速度に基づき制御して最適化することを特徴とする。これにより、コードの移動速度に合わせて画素数を変更できるため、フレーム同士の重なりを小さくでき効率良く連続的に状態の判定が可能となる。
本発明の構成として、コードは複数本並設され、複数本毎にカメラを1台ずつ設けられたことを特徴とする。これにより、少ないカメラでコードの測定ができ、低コスト化が図れる。
本発明の構成として、撮像において、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設けたことを特徴とする。これにより、コードを鮮明にカメラで抽出できるので、物や人が通過しても背景の色調を変化させることなく、常に背景を一定の色調に保つことにより画像のエッジ抽出の精度が不変となる。
本発明の構成として、処理手段は、各フレーム内の画像の輝度を微分して出力を得、当該出力の輝度変化が最大となる波形のエッジ位置を抽出し、当該エッジ位置によりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、フレーム内のコードにおいて、微分によりエッジ位置を検出でき、コードの良否が判定可能となる。
本発明の構成として、処理手段は、エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数を検知し、検知した画素数と閾値とを比較してコードの良否を判定するか、又は、フレームにおける絶対位置に対するエッジ位置を検出し、得られたエッジ位置と閾値とを比較して、コードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードのエッジ位置とコードの閾値とを比較することによって、コードの良否を判定できる。
本発明の構成として、処理手段は、エッジ位置の有,無を検出することによりコードが断線しているか否かを判定することを特徴とする。これにより、コードの断線部の有,無を判定することができる。
本発明の構成として、処理手段は、登録画像との差異を判別するパターンマッチングに基づきコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、撮像された画像は、基準画像を基にしてコードの良否、つまりコードの断線及び結節部を判定することができる。
本発明の構成として、コードは各工程を経て処理されるものとし、各工程毎に請求項1記載の判定装置を設置し、各カメラによる撮像及び、処理手段によるコードの画像をロギングし、ロギングした出力の処理により、各工程毎にコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、各工程毎にコードの状態を検出できるので、工程の異常も判定できる。
本発明の構成として、コードの状態変化を色調変化の検知に基づき検出することを特徴とする。これにより、色調変化を検出でき、より細かいコードの処理状態の変化を判定できる。
本発明の構成として、1台のモニタに各工程を経たコードの外観の良否結果を表示することを特徴とする。これにより、どの工程に不具合があるのか、表示結果の比較の上で早期に発見でき、補修管理が容易となる。
本発明の形態として、直線方向に移動するコードを所定の周期でカメラにより撮像する撮像ステップと、カメラにより撮像された出力画像を処理する処理ステップと、コードの移動速度を検出する速度検出ステップと、カメラのコードの移動方向の有効画素数をコードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定ステップとを含み、コードの移動速度に基づき有効画素数を制御し、有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を最適化することを特徴とする。これにより、コードの移動速度に合わせて画素数を変更できるため、フレーム同士の重なりを小さくでき効率良く状態判定が可能となる。
本発明の形態として、撮像ステップは、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設置して撮像することを特徴とする。これにより、鮮明なコードの画像を常にカメラで撮像できる。
本発明の形態として、処理ステップは、出力画像内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、当該勾配と閾値とを比較してコードのエッジ位置を検出するエッジ検出ステップと、検出されたエッジ位置によりコードの良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とする。これにより、フレーム内のコードにおいて、エッジ位置を検出することにより、コードの良否であるコードの断線及び結節部を判定することができる。
本発明の形態として、判定ステップは、エッジ検出ステップで検出されたエッジ位置に基づき、エッジ間の画素数をカウントし、当該画素数の閾値と比較してコードの良否を判定するか、又は、出力画像における絶対位置に対するエッジ位置を検出し、当該検出結果と閾値とを比較してコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードのエッジ検出結果と閾値とを比較することによって、コードの良否つまりコードの断線及び結節部の検出ができる。
本発明の形態として、判定ステップは、エッジ位置の有,無によりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードの断線部の有,無を判定することができる。
本発明の形態として、判定ステップは、予め記憶する登録画像をエッジ位置に対してパターンマッチングして、コードの良否を判定することを特徴とする。これにより、撮像された画像は、登録画像を基にしてコードの良否を判定することができる。
本発明の形態として、処理ステップは、エッジ間により囲まれる領域を構成する画素の輝度の平均値を算出し、輝度の平均値と予め設定された閾値とによりコードの良否を判定することを特徴とする。これにより、コードの輝度の平均値と設定された輝度の閾値とにより、コードの良否であるコードの表面処理状態を判定できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の判定装置によれば、カメラによるリアルタイムでの断線検出が可能なため、断線を早期に発見できスクラップを低減することができる。また、コードを用いるゴム部材製品への結節部混入を防止できる。コードの外観検出が可能であるため、コード一本一本全てにわたって品質検査ができる。また、コードの外観状態は表面加工工程や表面加工設備の状態と相関しており、コードの外観状態を把握することは表面加工工程や表面加工設備の変化や異常を検出することに繋がり異常の早期発見ができる。さらに、搬送速度によってカメラの有効画素を設定することが可能であるため、搬送速度が高速であっても検出できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るタイヤコード処理装置の概略工程側面図及び上面図。
【図2】本発明に係る判定装置のブロック図。
【図3】本発明に係る判定装置の概略側面図。
【図4】従来の判定装置により撮像したコードの画像表示図。
【図5】本発明に係る判定装置により撮像したコードの画像表示図。
【図6】本発明に係る判定装置のカメラ視野を示した概略図。
【図7】本発明に係る判定装置により検出した、(a)はコード画像及びその波形図、(b)はコードと結節部の画像及びその波形図。
【図8】本発 明に係る判定装置により検出したコードの色調の良否判定を示す図。
【図9】本発明に係る判定装置による検査結果をモニタに表示した内容の外観図。
【図10】カメラ仕様の説明図。
【図11】ドロッパーピンを用いた従来の検査方法を示す図。
【図12】光電センサを用いた従来の検査方法を示す図。
【図13】スリット画像を抽出する従来の検査方法を示す図。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1,2は本発明による判定装置1を適用するタイヤコード処理装置の一例を示す簡略図であり、各図において、2はタイヤコード3が巻き出されたボビン2aを複数個有し、巻出しボビン2aから複数本(例えば100本)のタイヤコード3(図3参照)が巻き出される巻出し装置、4;5;6はガイド、7は巻出し駆動装置、8は一時的にタイヤコード3を蓄えるバッファ装置、9は駆動装置、10は例えば接着剤等の浸漬装置、11;12;13は表面加工液を乾燥させる乾燥装置、14はガイド、15は巻取り駆動装置、16;17;18;19は表面加工されたタイヤコード3をボビンへと巻取る巻取り装置である。
タイヤコード3の加工は、巻出しボビン2aから巻き出す巻出し装置2から開始される。巻出しボビン2aから巻き出されたタイヤコード3は、複数本同時に並列直線状に巻き出され、ガイド4;5;6によって平行状態を保ちつつガイドされた状態で一方向に搬送(移動)される。
次の工程は、巻出し装置2から巻き出されたタイヤコード3を一時的に蓄えるバッファ装置8を有し、バッファ装置8は、巻出し装置2が停止したとき、又は、後述の巻取り装置16;17;18;19が停止したときに、一時的に蓄えたタイヤコード3を送出し、バッファ装置8以降の後段の工程を停止させないようにタイヤコード3をバッファする。よって、例えば、旧コードと新コードとを継ぐ場合にも旧コードの後端側の巻出しを停止することもできる。
次の工程では、表面加工液にタイヤコード3を浸漬装置10に浸漬させてタイヤコード3に表面加工を施す。平行状態を保ちつつ並列直線状に搬送される複数本のタイヤコード3を浸漬装置10の表面加工液に浸漬する。
次の工程では、浸漬装置10で表面加工液に浸漬された複数本のタイヤコード3の表面加工液を各乾燥装置11;12;13を経て乾燥させる。
次の工程では、乾燥装置11;12;13を通過して乾燥した複数本のタイヤコード3が連続的に巻取り装置16;17;18;19の複数の巻取りボビンによって巻き取られる。
【0010】
判定装置1は、本例では最終の乾燥装置13の後段に設けられるが、浸漬装置10の直後でも乾燥装置11の直後でも、乾燥装置12の直後でも、あるいは後述の如く複数の個所に設けても良い。
図3においては、判定装置1は複数本(例えば100本)平行に並べて、直線方向に移動するタイヤコード3を所定の周期で撮像する一例として4台のカメラ20;21;22;23及び、処理手段24を備え、上記カメラ20;21;22;23の出力画像3aは処理手段24に出力される。
処理手段24は、有効画素設定手段27と、撮像周期設定手段28と、タイヤコード3の速度を検知する速度センサ29aからの信号を検知する速度検出手段29と、二重処理領域最適化手段30と、演算手段31と、記憶手段50とによって構成される。速度センサ29aは、例えば巻出し駆動装置7の搬送歯車の時間当たりの回転数を検知するものが採用される。
4台のカメラ20;21;22;23は、図3に示すようにそれぞれ一例として25本ずつ異なったタイヤコード3を上部位置から撮像するが、カメラ20;21;22;23のタイヤコード3の反対側には背景板32が設置されており、この背景板32の色は、後述の画像処理におけるタイヤコード3のエッジを安定検出可能な色が設定されている。
4台のカメラ20;21;22;23は、4台のカメラに対応した光源20a;21a;22a;23aを有し、一例としてタイヤコード3が100本であるとした場合、25本のタイヤコード3を1台のカメラで撮像するように設定されている。このとき、各光源20a;21a;22a;23aより各カメラの撮像範囲に撮像光が照射される。
制御手段25は制御用CPU、上位信号出力用の外部出力用端子(パラレル通信のような比較的高速処理可能なもの)から成る。処理手段24は画像をロギング演算する演算手段31を有し、撮像した情報を処理して蓄積する記憶手段を含むCPUより構成される。
【0011】
上記カメラ20;21;22;23は、例えば、1台のカメラで25本のタイヤコード3を撮像するとき、速度検出手段29より出力されるタイヤコード3の移動速度に対し、所定の周期で撮像を行うと、図4に示すようにタイヤコード3の移動方向mに対する有効画素数Nが所定の画素数より成るフレームF1,F2が形成される。タイヤコード3の移動方向mに対しF1を現フレームとすると、F2がx次フレームであり、現フレームF1と次フレームF2とに跨る二重処理領域N0が発生する。二重処理領域N0とは、現フレームF1の後部と次フレームF2の全部とが移動方向に重なる領域である。この二重処理領域N0は、各フレームF1,F2の処理を個別に行う場合に、処理が二重に行われるために、処理手段24の処理にとっては非効率となる。
本実施形態では、速度検出手段29は、速度センサ29aが出力するタイヤコード3の移動速度を速度信号として取り込み、有効画素設定手段27を制御する。この場合、二重処理領域最適化手段30は、処理速度と有効画素設定手段27に撮像領域としての有効画素数Nを調整するように制御を加えて、撮像領域としての有効画素数Nを調整することで、二重処理領域N0を最小限とし、ムラなく、漏れの無い処理と高解像度化を実現する。
【0012】
本例の場合、図5に示すように有効画素数Nを小さく設定して、タイヤコード3の移動方向mの各フレームF1,F2の幅(有効画素数N)を狭くし高速運転時のインライン計測に対応可能とし、さらに、タイヤコード3の移動速度に応じて二重処理領域N0を必要最小限に小さく設定して、効率的な動作が行われるようにする。
上記二重処理領域N0のタイヤコード3の移動方向mの大きさ(幅)は、一例として図外の操作手段で操作可能としておく。
即ち、撮像画像からタイヤコード3を安定的に検出する場合や、検出されたタイヤコード3を画像処理する場合、撮像画像において検出されるタイヤコード3の太さの安定検出画素数には3画素は必要とされる。このため、タイヤコード3の太さに少なくとも3画素を割り当てるためには、カメラの1フレーム当たりの総画素数が増えることになり、1フレーム当たりの画素数の増加に伴って処理速度が低下してしまい、タイヤコード3の移動速度を毎分100m以上の高速運転時にはインラインでの測定・検査ができなくなるという問題がある。
そのため、タイヤコード3の移動速度とともに処理手段24の処理速度に合わせて、タイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nを制御し、さらに二重処理領域N0を最適化し、画像のムラや漏れのない処理と高い解像度を両立した処理が可能となる。
例えば、タイヤコードが100本程度の本数となると、1台のカメラにおける1フレーム当たりの総画素数を上げたところで、タイヤコードの安定検出画素数を確保できないため、複数台のカメラによる同期処理システムとする。100本程度のタイヤコード3であれば、4台のカメラで十分処理可能である。
また、背景板32は、タイヤコード3に対して最もタイヤコード3の後述のエッジを安定検出できる色を選定し設置する。
なお、図4と図5は撮像周期設定手段28の制御下でそれぞれ同一の周期でカメラが制御される場合であるが、図5において二重処理領域N0を調整するために、撮像周期設定手段28を制御して、カメラの撮像周期を制御してもよい。
【0013】
図6に示すように、上記撮像領域としての有効画素数Nの幅(大きさ)は、実測定視野であり、前述したとおり、有効画素設定手段27により設定可能であるが、その設定範囲は、カメラ自体の最大測定視野範囲J内である。
この有効画素数Nの幅は、二重処理領域N0の幅が最小となる範囲に設定され、タイヤコード3の搬送速度が速くなると、有効画素数Nをあまり狭くはできず、搬送速度が速くなると最大測定視野範囲J内でタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの幅を広げなければならない。つまり、タイヤコード3の移動速度が速くなると二重処理領域N0の幅が狭くなるため、二重処理領域N0を維持するには、最大測定視野範囲Jの範囲内でタイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの幅を広げる領域を確保する必要がある。よって、最大測定視野範囲Jには、タイヤコード3の移動方向mの有効画素数Nの両側に非測定範囲であるパーシャル領域Kが生じる。
図6において、横列に並べた各カメラ20;21;22;23には、隣接するカメラ同士の撮像画像に重なりWが生じる。このカメラ同士の重なりWにより、各カメラが横振れしてもタイヤコード3の撮像漏れを防ぐことができる。
【0014】
図7(a),(b)は、各フレームF1,F2毎に出力画像3aを演算手段31で演算処理するための一例を示す。演算手段31は、タイヤコード3の出力画像3aの輝度値を微分することによって、波形Qを得て、この波形QのエッジQ1とエッジQ2との間の画素数Rをカウントする。つまり、各フレーム内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、算出された輝度の勾配の絶対値と閾値とを比較し、比較の結果から、輝度の勾配の絶対値が閾値以上のときにタイヤコード3のエッジ位置として検出する。例えば、背景板からタイヤコード3を検出したときの勾配は正の値で算出され、タイヤコード3から背景板を検出したときの勾配は負の値で算出される。
上記エッジ位置とは、画像を構成する画素の輝度が急激に変化する点であり、タイヤコード3の幅(太さ)の両側端部のうちいずれかが正又は負の勾配として検出される位置である。
また、処理手段24は、正の勾配として検出されたエッジ位置と負の勾配として検出されたエッジ位置とにより囲まれ、タイヤコード3の移動方向mに延長する領域を構成する画素の輝度の平均輝度値を算出し、平均輝度値と予め設定された輝度の閾値とを比較することにより、タイヤコード3の良否を判定する。
判定の結果、画素数Rが記憶手段50に記憶した閾値を超えるか下回ると、アラーム手段51を駆動してアラームを発生したり、装置を停止したりする。また、平均輝度値が記憶手段50に記憶した閾値を超えるか、又は、下回るとアラーム手段51を駆動してアラームを発生したり、装置を停止したりする。
したがって、タイヤコード3の一部が規定のものより太径のもの、あるいは細径のものがカメラで撮像されると、画素数Rが閾値よりも大きくなったり、あるいは画素数Rが閾値よりも小さくなったりするので、アラームを発生したり、装置を停止してメンテナンスを行ったりできる。
【0015】
図7(b)に示すように結節部画像3bを有するタイヤコード3の画像3cの輝度値についても、演算手段31で微分することによって、波形Qを得て、エッジQ3とエッジQ4との間の画素数Rを検出して同様の処理を行うことで結節部画像3bを検出でき、アラームを発生させることや、装置を停止してメンテナンスを行わせることもできる。また、処理手段24は、タイヤコード3のエッジ位置の有,無を判定することによって、タイヤコード3の断線部及びタイヤコード3の良否を判定する。
さらに、処理手段24は、タイヤコード3のエッジ位置の検出により、検出されたエッジ位置を基準とし、エッジ間の画素数をカウントする。カウントされた画素数と設定登録した基準となる閾値とを比較してタイヤコード3の良否を判定する。
また、各フレームF1,F2においては、各フレームの絶対位置に対してエッジ位置を検出し、検出されたエッジ位置と設定したエッジ位置の閾値とを比較してタイヤコード3の良否を判定する。具体的には、各フレームに左上を原点とする基準座標系を設定し、基準座標系のタイヤコード3の移動方向mに延長する座標軸を絶対位置として設定する。絶対位置の座標軸からタイヤコード3の並び方向にエッジ位置の検出を行い、座標軸からエッジ位置までの画素数をカウントし、検出されたエッジ位置とエッジ位置との画素数の差である画素数Rを閾値と比較して、タイヤコード3の良否を判定する。
なお、画素数Rの検出に替えて、出力画像3a中に基準座標であり、空間の中で物体の位置を示すワールド座標Mを設定し、ワールド座標Mにおける各座標点とエッジQ3との間RmとRnとの差Rtを検出する方法でも、あるいは差分Rhを検出する方法でも結節部画像3bを検出できる。なお、ワールド座標Mとは、出力画像3aを構成する画素によって画面上に形成される座標系を示し、例えば、出力画像3aの左上を座標原点に設定される。
また、タイヤコード3が断線した場合は、出力画像3aより得られる波形Q中には上記エッジQ1,Q2が無くなるので、これを演算手段31で断線と判定してアラームを作動できる。
【実施例】
【0016】
本例では、カメラより成る判定装置1を装置の各プロセス毎(例えば、巻出し装置2の後,バッファ装置8の後,浸漬装置10の後,乾燥装置11;12;13の後)に設置し、演算手段31では、タイヤコード3の外観状態(色や色ムラ)をロギングし、色調の±3σの値を算出し、常に色調と基準色とを比較しながら色調変化により外観状態を判定する。
図8は色調に対する演算手段31の出力波形Pを示し、色調定常値の範囲内に出力波形Pが納まっておれば、アラームは発しないが、非定常にまでシフトしておれば、アラームを発生するように構成している。
【0017】
図9により任意の複数のプロセス毎にカメラ及び処理装置を設置した場合に、管理センターに設置された一個のモニタ26aにより表示結果が表示される。モニタ26aの下部には乾燥前(乾燥装置11の前段)、第一乾燥段階(乾燥装置11の直後)、第二乾燥段階(乾燥装置12の直後)、第三乾燥段階(乾燥装置13の直後)の各プロセス毎に撮像した複数本のタイヤコード3の外観(色付)を画像処理結果26bとして示している。モニタ26aの上段の表示部には、検出したタイヤコード3の輝度値を微分し、輝度変化が最大となる位置をタイヤコード3の各々のエッジとして抽出した結果をタイヤコード3毎に数字で示している。また、モニタ26aの表示の中段の表示部には、タイヤコード3の抽出した色の結果を数字で示している。一例として、第一乾燥段階のタイヤコード3の色を基準として、基準色の面積値を数値にて表示し、数値が大きいほど基準色の占める割合が高いことを示している。画像処理結果26bの結果表示は、リアルタイムで撮像したタイヤコード3の画像を表示している。
本実施の形態によれば、1台のモニタ26aにより色抽出結果26dの内容(数字)によりタイヤコード3のプロセス毎の色を検知して、タイヤコード3が正常か否かを判定でき、またコードエッジ位置検出結果26cにより各プロセス毎のエッジ位置等を数字で検出でき、正常か否かを判定できる。あるいは、画像処理結果26b内のコード色によってもタイヤコード3が正常か否か判定できる。また、色抽出結果26dの全並びの数字を対比することでも各プロセスの異常を判定できる。
ここで、エッジ検出は、輝度値を微分し、輝度変化が最大となる位置をエッジとして抽出する色抽出はタイヤコード3の中央部の第一乾燥段階(乾燥装置11の直後)の色(赤茶)を基準とし、基準色の面積値を数値にて表示し、表示が大きいほど基準色の占める割合が高いことを示す。
【0018】
本発明によれば、リアルタイムで断線検出が可能なため、スクラップの低減や断線したタイヤコードの機体へのからまり最小限化による復旧時間短縮が図れ、また、結節部識別による後工程への誤流入防止が図れ、外観検査が可能となる。さらに、上記構成のタイヤコード処理装置をプロセス毎に配置することで、タイヤコードの外観検査によるプロセス監視、設備監視が可能となり、簡易的な構成の処理装置によって工程毎の全数品質検査が実施できる。また、設備の故障や不具合を早期に発見できる可能性がある。
また、一つのユニットで数百本の個別判定が可能となり、上記異常モードも識別可能となる。さらに、インラインで全数検査が可能となり、毎分150m程度の高速対応が可能となる。
【0019】
次に、図10に示すようにタイヤコード3の移動方向mに対するタイヤコード3の並び方向hに対する適用例の一例を下記に示す。この場合、カメラは200万画素のデジタルカメラを用いている。
(1)H方向検討において、タイヤコードの安定検出画素数を3画素とした場合、タイヤコード外径≒0.6mmのときの分解能は0.6/3=0.2mm/画素となり、パノラマ画像処理検出機能を用いたカメラでは、200万画素(H1600×V1200)×4となる。また、現フレームF1と次フレームF2とに300画素ずつ重ね合わせるためには、(H1600−300)×4=H5200画素、視野=5200×0.2=1040mm>990mm(タイヤコード幅)となり、安定検出してタイヤコード100本を測定可能で、緩みについても検出可能となる。
(2)V方向検討において、タイヤコードの移動速度を150m/minとした場合、150m/min=2500mm/s=2.5mm/ms、パーシャル領域K100万画素(H1600×V600)に設定する。また、一秒間当たりのフレーム数は60fps(60フレーム/s)とすれば、1フレームの処理速度は、1/60=16.7ms(理論値)である。よって、視野の最大幅=1200×0.2=240mmであるから、1フレーム間のタイヤコード移動距離は、視野の最大幅よりも小さく、タイヤコード移動距離=2.5×(総処理時間)≧120mm(パーシャル領域Kを100万画素とした場合の視野の幅)となるので、タイヤコードの測定において全数の検出が可能となる。ここで、総処理時間=1フレーム処理速度+画像処理時間+通信速度=50ms以内である。
(3)レンズの検討において、1台の必要視野H=0.2×1600=320mmとなり、レンズによる収差及び取付スペースを考えると、例えば焦点距離が8mmの低ディストーションレンズ等が妥当であると考え、カメラの設置距離は、520mm。レンズ収差は、基本的に遠距離からの方が球面収差の影響を受けない。焦点距離が短いレンズ、例えば5mmでワークが視野いっぱいにあると、球面収差が顕著に現れる。取付スペースは、短い方が望ましい。
【0020】
なお、エッジ位置の基準となるパターンを登録画像として予め記憶手段に記憶させ、カメラによる画像を1フレーム毎に処理手段で処理した後、処理手段の検出したエッジ位置と登録画像とのエッジ位置を比較して、パターンマッチングするようにしてタイヤコードの外観の良否を判定するようにしてもよい。
また、撮像画像の中から基準画像に近似するものを候補画像として選択抽出し、当該選択抽出された基準画像と撮像画像とを色抽出結果の数値として比較し、タイヤコードの外観の良否を判定するようにしてもよい。
【0021】
本発明は、測定用のコードはタイヤ用として説明した。これに限定されず、他の用途に用いる線材について適用できる。例えば、コイル等に用いる銅等の導電材でも、あるいは糸、チューブ等の線材であっても適用できる。
【0022】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 判定装置、3 タイヤコード、20;21;22;23 カメラ、
24 処理手段、25 制御手段、26 モニタ、27 有効画素設定手段、
28 撮像周期設定手段、29 速度検出手段、30 二重処理領域最適化手段、
31 演算手段、32 背景板、50 記憶手段、51 アラーム手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線方向に移動するコードを所定の周期で撮像するカメラ及び当該カメラの出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、前記コードの移動速度を検出する速度検出手段と、前記カメラによるコードの移動方向の有効画素数を前記コードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、前記有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を、前記有効画素数をコードの移動速度に基づき制御して最適化することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
コードは複数本並設され、複数本毎にカメラを1台ずつ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
撮像において、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
処理手段は、各フレーム内の画像の輝度を微分して出力を得、当該出力の輝度変化が最大となる波形のエッジ位置を抽出し、当該エッジ位置によりコードの良否を判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の判定装置。
【請求項5】
処理手段は、前記エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数を検知し、検知した画素数と閾値とを比較してコードの良否を判定するか、又は、前記フレームにおける絶対位置に対するエッジ位置を検出し、得られたエッジ位置と閾値とを比較して、コードの良否を判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項6】
処理手段は、エッジ位置の有,無を検出することによりコードが断線しているか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項7】
処理手段は、登録画像との差異を判別するパターンマッチングに基づきコードの良否を判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項8】
コードは各工程を経て処理されるものとし、各工程毎に請求項1記載の判定装置を設置し、各カメラによる撮像及び、処理手段によるコードの画像をロギングし、ロギングした出力の処理により、各工程毎にコードの良否を判定することを特徴とするタイヤコード処理装置。
【請求項9】
コードの状態変化を色調変化の検知に基づき検出することを特徴とする請求項8に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項10】
1台のモニタに各工程を経たコードの外観の良否結果を表示することを特徴とする請求項8又は9に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項11】
直線方向に移動するコードを所定の周期でカメラにより撮像する撮像ステップと、前記カメラにより撮像された出力画像を処理する処理ステップと、前記コードの移動速度を検出する速度検出ステップと、前記カメラのコードの移動方向の有効画素数を前記コードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定ステップとを含み、前記コードの移動速度に基づき前記有効画素数を制御し、前記有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を最適化することを特徴とする状態判定方法。
【請求項12】
前記撮像ステップは、前記カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設置して撮像することを特徴とする請求項11に記載の状態判定方法。
【請求項13】
前記処理ステップは、前記出力画像内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、当該勾配と閾値とを比較して前記コードのエッジ位置を検出するエッジ検出ステップと、前記検出されたエッジ位置によりコードの良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の状態判定方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、前記エッジ検出ステップで検出された前記エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数をカウントし、当該画素数の閾値と比較してコードの良否を判定するか、又は、前記出力画像における絶対位置に対するエッジ位置を検出し、当該検出結果と閾値とを比較してコードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項15】
前記判定ステップは、エッジ位置の有,無によりコードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項16】
前記判定ステップは、予め記憶する登録画像をエッジ位置に対してパターンマッチングして、コードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項17】
前記処理ステップは、前記エッジ間により囲まれる領域を構成する画素の輝度の平均値を算出し、輝度の平均値と予め設定された閾値とによりコードの良否を判定することを特徴とする請求項13乃至請求項16いずれかに記載の状態判定方法。
【請求項1】
直線方向に移動するコードを所定の周期で撮像するカメラ及び当該カメラの出力画像を処理する処理手段からなる判定装置において、前記コードの移動速度を検出する速度検出手段と、前記カメラによるコードの移動方向の有効画素数を前記コードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定手段とを備え、前記有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を、前記有効画素数をコードの移動速度に基づき制御して最適化することを特徴とする判定装置。
【請求項2】
コードは複数本並設され、複数本毎にカメラを1台ずつ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
撮像において、カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
処理手段は、各フレーム内の画像の輝度を微分して出力を得、当該出力の輝度変化が最大となる波形のエッジ位置を抽出し、当該エッジ位置によりコードの良否を判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の判定装置。
【請求項5】
処理手段は、前記エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数を検知し、検知した画素数と閾値とを比較してコードの良否を判定するか、又は、前記フレームにおける絶対位置に対するエッジ位置を検出し、得られたエッジ位置と閾値とを比較して、コードの良否を判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項6】
処理手段は、エッジ位置の有,無を検出することによりコードが断線しているか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項7】
処理手段は、登録画像との差異を判別するパターンマッチングに基づきコードの良否を判定することを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
【請求項8】
コードは各工程を経て処理されるものとし、各工程毎に請求項1記載の判定装置を設置し、各カメラによる撮像及び、処理手段によるコードの画像をロギングし、ロギングした出力の処理により、各工程毎にコードの良否を判定することを特徴とするタイヤコード処理装置。
【請求項9】
コードの状態変化を色調変化の検知に基づき検出することを特徴とする請求項8に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項10】
1台のモニタに各工程を経たコードの外観の良否結果を表示することを特徴とする請求項8又は9に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項11】
直線方向に移動するコードを所定の周期でカメラにより撮像する撮像ステップと、前記カメラにより撮像された出力画像を処理する処理ステップと、前記コードの移動速度を検出する速度検出ステップと、前記カメラのコードの移動方向の有効画素数を前記コードの移動速度に基づき所定の画素数に設定する有効画素設定ステップとを含み、前記コードの移動速度に基づき前記有効画素数を制御し、前記有効画素数の範囲における現フレームの後部と次フレームの前部との移動方向重なりに基づく二重処理領域を最適化することを特徴とする状態判定方法。
【請求項12】
前記撮像ステップは、前記カメラが対面するコードの後方に所定の色の背景板を設置して撮像することを特徴とする請求項11に記載の状態判定方法。
【請求項13】
前記処理ステップは、前記出力画像内の隣接する画素の輝度の勾配を算出し、当該勾配と閾値とを比較して前記コードのエッジ位置を検出するエッジ検出ステップと、前記検出されたエッジ位置によりコードの良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の状態判定方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、前記エッジ検出ステップで検出された前記エッジ位置に基づき、エッジ間の画素数をカウントし、当該画素数の閾値と比較してコードの良否を判定するか、又は、前記出力画像における絶対位置に対するエッジ位置を検出し、当該検出結果と閾値とを比較してコードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項15】
前記判定ステップは、エッジ位置の有,無によりコードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項16】
前記判定ステップは、予め記憶する登録画像をエッジ位置に対してパターンマッチングして、コードの良否を判定することを特徴とする請求項13に記載の状態判定方法。
【請求項17】
前記処理ステップは、前記エッジ間により囲まれる領域を構成する画素の輝度の平均値を算出し、輝度の平均値と予め設定された閾値とによりコードの良否を判定することを特徴とする請求項13乃至請求項16いずれかに記載の状態判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−196891(P2011−196891A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65545(P2010−65545)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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