説明

制御された生体分解性を有する管腔内デバイス

制御された生体分解性を有する管腔内デバイスが提供される。管腔内デバイスは生体分解性管状本体を備えている。光分解性の外層は、管腔内デバイスの少なくとも一部分に配置される。光分解性の外層は移植領域の体液に対して化学的に不活性であり、それによってステントの早期分解を防止する。光分解性の外層の分解は、UV光波で該層を照射することによって、所定時間後に起こる。光分解性の外層を除去した後、管状本体は生体内環境に曝されるようになり、それにより管状本体の分解を可能にしている。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、体腔内で生体分解を受ける管腔内ステントなどの、生体分解性管腔内デバイスに関する。
管腔内ステントなどの生体分解性デバイスは、現在、冠状動脈、気管路、及び消化管を含む患者の様々な体腔に移植されている。特定の状況では、ステントが治療部位での有用性がなくなるか、又は少なくとも大幅に減少すると、ステントの継続的な存在に伴う不都合なリスクを低減するために、生体分解性又は生体吸収性であることが望ましい。そのために、いくつかのステントは、これまで生体分解性又は生体吸収性である材料で全体が構成されていた。生体分解性でありながら生体適合性であり、またステントが移植された時に曝される荷重を支えるのに十分な強度を有する材料を選択することが望ましい。
【特許文献1】米国特許出願US2004/0073297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ステントが目標の身体領域内に移植される時、生体分解性ステントの内面と外面は、移植されたステントの生体分解の開始をもたらす体液と触れる。ステントは生体内で生体分解するので、質量を失う。多くの場合、質量喪失速度が顕著である可能性があり、調整し制御することは困難になる。質量の大幅な喪失は、ステントの機械的強度の早期喪失につながる可能性があり、それによって意図された時間枠に対して、ステントの体腔の開通性を維持する能力がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、ハイブリッド分解性ステントが提供される。該ハイブリッドステントは、内径と外径を有する概ね管状の本体を備えている。該管状の本体は生体分解性材料で形成される。ハイブリッドステントは、さらに生体分解性管状本体の内径及び/又は外径の少なくとも一部分に配置された光分解性の層を備える。該層は、移植部位に含まれている体液に対して化学的に不活性である光分解性の材料で形成されている。光分解性の層は、化学的に不活性な状態から光分解性の状態へ選択的に活性化されるようになされている。光分解性の状態は、生体分解性材料の生体分解を開始する生体分解性材料の少なくとも一部分を露出するように光分解性の層の分解を開始する。
【0004】
第2の態様では、分解性ステントキットが提供される。該キットは、近位端及び遠位端を有する生体分解性の概ね管状の本体と、近位端から遠位端に延在するルーメンとを備えている。該本体は、さらに生体分解性管状本体の少なくとも一部分に配置された光分解性材料を含んでいる。患者の体腔に配備される時、光分解性材料は化学的に不活性である。キットはまた、光分解性の物質を化学的に不活性状態から光分解性の状態に活性化するように構成された光−照射システムが含まれている。光−照射システムは光源と光ファイバ部分を備えている。該ファイバ部分は、光源と連通する近位部分と、管状本体と連通する遠位部分とを有している。ファイバ部分はUV光を近位部分から遠位部分に伝播し、その後UV光を遠位部分から光分解性材料に照射するようになされている。
【0005】
第3の態様では、患者の体腔内でステントを制御可能に分解するための方法が提供される。概ね管状の本体が提供される。該管状の本体は、生体分解性材料で形成されている。該本体は内径と外径を特徴とする。該本体は光分解性管状本体の内径及び/又は外径の少なくとも一部分に配置された光分解性の層をさらに含む。該管状本体は体腔に配備される。細長い光照射導体は配備された管状本体に向かって進められる。特定の波長の光が導体に沿って、ステントの光分解性の層に向かって照射される。光分解性の層は、化学的に不活性な状態から光分解性の状態に活性化される。光分解性の層の少なくとも一部分が光分解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】生体分解性ステントの光分解性の外層と光分解性の内層を有するハイブリッド生体分解性ステントの断面図を示している。
【0007】
【図1B】図1Aのハイブリッド生体分解性ステントの斜視図を示している。
【0008】
【図2A】図1Aのハイブリッド生体分解性ステントのルーメン空間内に挿入された光ファイバの部分断面図で、該光ファイバは、生体分解性の内層の分解プロセスを活性化して開始するために、紫外光を光分解性の内層に向かって伝播する状態を示している。
【0009】
【図2B】図1のハイブリッド生体分解性ステントのルーメン空間内に挿入された光ファイバの部分断面図で、光分解性の内層のさらなる部分を活性化、分解、及び除去するために、紫外光を光分解性の内層に向かって伝播し続け、光分解性の内層の一部分を活性化、分解、及び除去した状態を示している。
【0010】
【図2C】図1Aのハイブリッド生体分解性ステントのルーメン空間内に挿入された、光ファイバの部分断面図で、生体分解性ステントの内面内で光分解性の内層のすべてが除去された状態を示している。
【0011】
【図3】ステントの近位端に沿って生体分解性ステントのルーメン空間の外側に配置された光ファイバの部分断面図であり、該光ファイバは生体分解性ステントの外面に沿って光分解性の外層の活性化を開始して分解を始めるように、紫外光を光分解性の外層に向かって伝播している状態を示す。
【0012】
【図3B】生体分解性ステントのルーメン空間の外側に配置された光ファイバであって、紫外光を光分解性の外層に向かって伝播し続けて、光分解性の外層の一部分を活性化、分解、及び除去したステントの外面に沿って遠位方向にわずかに進められ、生体分解性ステントの外面に沿った光分解性の外層をさらに活性化、分解、及び除去する状態の光ファイバの部分断面図を示す。
【0013】
【図3C】生体分解性ステントのルーメン空間の外側の、生体分解性ステントの外面から光分解性の外層の全てを光分解し除去するためにステントの外面に沿って遠位方向にさらに前進した、光ファイバの部分断面図を示す。
【0014】
【図4A】光ファイバの遠位端に固定され、UV波を長手方向軸線に対して垂直な第1の方向に向きを変えるレンズを示す。
【0015】
【図4B】UV波が光ファイバの長手方向軸線に対して垂直な第2の方向に向きを変えるように、レンズを再設定するために回転された光ファイバを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の様々な要素の関係と機能は、以下の詳細な説明によってより良く理解される。しかしながら、後述する本発明の実施形態は単なる例示にすぎない。図は縮尺合わせされているわけではなく、場合によっては、本発明の理解には必要でない詳細事項、例えば製作及び組み立てに関する従来通りの詳細事項などは省略されていることも理解されたい。特記のない限り、本明細書に述べられたパーセンテージの全ては全混合物に対する重量パーセンテージである。
【0017】
用語「生体分解性」材料は、溶解、分解、吸収及び排出などの消散が生じ得るメカニズムとは関係のない身体内への移植で消散する材料を指す。使用するためにどのタイプの材料を実際に選択するかは当業者によって容易になすことができる。このような材料は当該技術分野においては、「生体再吸収性」、「生体吸収性」、又は「生体分解性」など、材料を消散させるメカニズムに応じて種々の用語で称されることが多い。接頭語「バイオ」は、他の侵食プロセスとは対照的に、例えば高温、強酸又は塩基、或いは紫外線(「UV」)光によって引き起こされた生理学的条件下で侵食作用が生じることを示している。
【0018】
本明細書に使用される用語「近位」及び「遠位」は、使用者に対して基準点を有することが意図されている。特に、本明細書の全体を通して、用語「遠位」及び「遠位方向に」は概ね使用者から離れる位置、方向又は向きを意味し、用語「近位」及び「近位方向に」は概ね使用者に向かう位置、方向又は向きを意味する。
【0019】
図1A及び1Bは典型的なハイブリッド分解性ステント100の断面図を示す。ハイブリッド分解性ステント100は、管状の本体であり、光分解性の外層102と光分解性の内層103との間に配置された生体分解性ステント101を備えている。図1Aは、管状本体が内径「ID」と外径「OD]を有することを特徴としていることを示している。光分解性の内層103はステント101の内面110の「ID」に沿って延在している。光分解性の外層102は、ステント101の外面111の「OD」に沿って延在している。光分解性の内面103は内面110上のステント101の長手方向の全長に沿って延在することが好ましい。同様に、光分解性の外層102は外面111上のステント101の長手方向の全長に沿って延在することが好ましい。本明細書で用いる用語「層」は、材料が生体分解性ステント101の内面110及び/又は外面111に沿って配置できる任意の手段を指している。光分解性の内層103及び光分解性の外層102は、移植部位で体液と接触するとき、化学的に不活性である。換言すると、光分解性の層は、生体分解性材料が移植部位で体液に曝される場合に一般的に発生するあらゆるタイプの生体分解破壊の影響を受けにくい。好ましくは、光分解性の内層103及び光分解性の外層102は通気性がなく、且つステント101の長手方向の全長に沿って延在する。従って、光分解性の内層103及び光分解性の外層102は、移植時に、生体分解性ステント101の保護外装又はシースとして機能する。ステント100による標的体腔の開通性が不要になったとき、保護光分解性の層102及び103の分解を開始できる。UV光又は別のタイプの活性剤は光分解性の層102及び103に触れ、光分解性の層102及び103を活性化しその後分解させる。光分解性の内層103と光分解性の内層102が分解するにつれて、それらは生体分解性ステント101から分離し、それによって生体分解性ステント101の内面110と外面111の少なくとも一部分が露出されるようにする。移植された環境への外面111の露出により、外面111に沿ってステント100の生体分解を開始する。同様に、移植された環境への内面110の露出により、内面110に沿ってステント100の生体分解を開始する。従って、ステント101の生体分解は、分解性ステント101の保護用光分解性の層102及び103を維持し、それによって、生体分解性ステント101の早期生体分解を避け、所定の時間遅延させることができる。
【0020】
種々の光分解性の材料を使用することができる。例えば、光分解性の層は、ベースポリマー又は合成ポリマー、並びにポリマーを含む少量のUV光分解性ケトカルボニルを含むポリマーの混合物であってもよい。組成物のケトカルボニル基の量は、ベースポリマーの総重量に対して、約0.01重量%から約5重量%の範囲であってもよい。ケトカルボニル基は、他の2つの炭素原子にリンクされているカルボニル基(O=C)を特徴とするケトン官能基である。ケトカルボニル基は、一般的にR(CO)Rとして指定することができる。
【0021】
ベースポリマー又は合成ポリマーは、ケトカルボニル基との互換性があるビニリデンモノマーを含むことができる。本明細書で使用する「互換性」は、合理的な強度と強靭性のポリマーブレンドを与えるために、所望の割合で共に配合することができるポリマーを意味する。ビニリデンモノマーはエチレン、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、クロロスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン又はブタジエンを含んでもよい。一例では、ポリエチレンの混合物と約9.5重量%メチレンメチルイソプロペニルケトン共重合体を用いることができる。ポリエチレンは低密度又は高密度であってもよい。別の例では、95重量%スチレンと5重量%メチルイソベンチルケトン(methylisopentylketone)の共重合体を用いることができる。
【0022】
ポリマー組成物はまた、ケトン共重合体の量が約0.01重量%から約5重量%の範囲である凝縮共重合体と少なくとも1つのケトン共重合体を含むことができる。凝縮共重合体は、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエポキシド(polyeopxides)、ポリアミドエステル、ポリイミド、ポリ(アミド−イミド)、ポリ尿素、及びポリ-アミノ酸を含んでもよい。
【0023】
類似のビニリデンモノマーと不飽和ケトンの付加共重合体を、少量の割合で選択することが好ましい。合成ポリマーのモノマーの1種に基づいて少量の割合のUV光分解性共重合体を使用することが特に好ましい。例えば、特に好ましい実施形態は、ポリスチレン(主要な割合)とスチレンの共重合体を含むケト−カルボニル(主要な割合)の混合物、ポリメチルメタクリレート(少量の割合)とメチル−メタクリレートの共重合体を含むケト−カルボニル(少量の割合)の混合物、ポリメチルアクリレート(主要な割合)とメチルアクリレートの共重合体を含むケト−カルボニル(少量の割合)の混合物、及びポリエチレン(主要な割合)とエチレン−不飽和ケトン共重合体を含むケトカルボニル(少量の割合)の混合物などの組成物であり、マクロ分子である。組成物のケトカルボニル基の量は約0.01重量%から約5重量%の範囲であってもよい。
【0024】
本発明の好ましい組成物中に少量の割合で使用されるケト共重合体は、UV放射への曝露状態でそれ自体光分解性である。該ケト共重合体は、ケトンカルボニル基の約0.01から10重量%、好ましくは約0.01から5重量%、最も好ましくは約0.02から2重量%を含んでもよい。それらは、混合されることになっているベースポリマー(すなわち、合成ポリマー)と互換性がある。付加ケト共重合体の場合には、ケト基はバックボーンポリマー分子鎖にすぐ隣接する位置で側鎖に配置されている。凝縮ケト共重合体の場合には、ケト基は上述のような側鎖又はポリマー主鎖のいずれかに配置することができる。ケト共重合体は、これらの好適な組成物に、好ましくは3重量%以下のケト基を含有するポリマー組成物を得るように、合成ポリマーと混合される。
【0025】
光分解性の外層102と光分解性の内層103の分解を活発にするための好ましい手段は、光照射システム270である(図2)。図2を参照すると、光照射システム270は、UV光源271と光ファイバ部203を備えている。光ファイバ203の近位領域201内に放射されるUV光225の強度273又は出力は、UV照射システム270によって調整することができる。UV光はUV光源271から光ファイバ203を通って送られる。光ファイバ203は、その強度273の最小の減衰で高エネルギーUV光の透過を可能にするように構成される。特に、光ファイバ203の近位領域201は、大幅な減衰又は漏洩なしにUV光波の伝播を可能にする当技術分野において既知の外被材料(例えば、溶融シリカ)に覆われることが好ましい。光ファイバ203の遠位領域202は、UV光波225が光分解性の内層103に向かって放出される光透過部を構成している。遠位領域202は、光分解性の内層103(図2A−2C)に向かって延在している。図2Aは、光ファイバ203の近位領域201が層103の内部の光分解性材料と相互作用する適切な波長のUV光源271に連結されていることを示す。放射源271は、光ファイバ203に配信されるように、UV光の量を調節するために強度制御部273を含めることができる。UV源271はまた、外層102と内層103の光分解性材料と相互作用するのに適した波長の放射を選択するための波長調整又は選択制御部272を含めることができる。
【0026】
ハイブリッドステント100は所望の時間枠の間体腔250の開通性を維持した後に、保護用光分解性の内層103と保護用光分解性の外層102の分解を伴うステント101の生体分解が続いて起こり得る。図2A−2C及び3A−3Cは、体腔250内の目標部位における、ステント101の内面110及び続いて外面111からの光分解性の層103と102の活性化、分解及び除去に関与する一連のステップを示す。
【0027】
合わせて、図2A−2Cは、ステント100本体のルーメン104内に配置された光ファイバ203を示す。光ファイバ203のステント100への進行は、シース又はオーバーチューブを通した挿入によって促進できる(図示せず)。光ファイバ203が体腔250の目標部位に到達すると、光ファイバ203の少なくとも遠位領域202はシース又はオーバーチューブから回収することができる。
【0028】
光ファイバ203の遠位領域202は、ステント101の内面110に向かって外側にUV光225を拡散するように作られていることが好ましい。図2Aは、図1Aのハイブリッド生体分解性ステント100のルーメン空間104内に挿入された光ファイバ203の部分断面図を示す。光ファイバ203の近位領域201は、患者の外部に延在し、UV光照射システム270のUV光源271に接続されている。UV光225の適切な波長272と強度273はUV光源271から選択される。UV光225は、光ファイバ203の近位部201を通して光ファイバ203の遠位部202へ伝播する。UV光225は、光分解性の内層103の分解プロセスを活性化し開始するように、光分解性の内層103に向かって拡散する。
【0029】
光ファイバ203の遠位端は、UV光225を光ファイバ203の軸線から半径方向外側に、光分解性の内層103に向かってあらゆる方向に、分散させ得る発散レンズの形状を含めることができる。図2A−2Cに示すように、UV光225は、UV放射照度がステント101の長手方向の長さに沿ってほぼ均一になるように光分解性の内層103に向かってあらゆる方向に拡散する。或いは、光ファイバ203の遠位先端は、光分解性の内面103に向かって外側にUV光波225を拡散するために縮径してもよい。UV照射持続時間は、内部の光分解性材料103の活性化が生じるのに十分である。UV光照射の持続時間は、使用する特定の内部の光分解性材料103、光分解性の内層103内に含まれるケトカルボニル基の濃度、及びUV光照射システム270から放射される能力又は強度273に少なくとも部分的に依存する。一例では、UV照射の時間は約1分である。
【0030】
所定の波長と強度において、UV光225に関連付けられるエネルギーの所定量が存在する。UV光225が光分解性の内層103と触れるときに、このエネルギーは、UV光分解性の層103におけるポリマー分子鎖の化学結合の開裂が発生するように、光分解性の内層103を十分活性化する。放射されるUV光225は層103によって吸収される。UV光225の吸収は、光分解性の内層103のポリマー分子鎖の化学結合を開裂するのに十分な追加熱エネルギーになる結果となる。好ましくは、UV光225は光分解性の内層103の温度をそのガラス転移温度以上まで上昇させる。層103の材料は、崩壊し始め、内部の光分解性材料103がステント101の内面110から引き離された状態になる時点まで分解する。図2Bは、UV光225が光分解性の内層103に触れるときに、光分解性の内層103の部分が活性化され、分解され、及び除去されることを示す。
【0031】
UV光225は、光分解性の内層103の部分をさらに活性化し分解するように、光ファイバ230の遠位領域202を通って伝播し続け、それによって内面110から層103の付加部分を除去する。図2Cは、体腔250における移植環境にステント101の内面110を露出するように、光分解性の内層103のすべてが除去されていることを示している。ステント101の内面110の露出はステント101の生体分解を起こすことができるかもしれない。
【0032】
光分解性の内層103がステント101の内面110から除去された後、図3A−3Cに示すように、光ファイバ203は、ステント101の外面111に沿って外側の光分解性の材料102を削除するために、ステント101の外面111に沿って再配置することができる。光ファイバ203の近位領域201は、患者の外部に延在し、UV光照射システム270のUV光源271に接続されている。UV光225の適切な波長272と強度273はUV光源271から選択される。UV光225は、光ファイバ203の近位部201を通って光ファイバ203の遠位部202へ伝播する。UV光225は、光分解性の外層102の分解プロセスを活性化し開始するように、光分解性の外層102に向かって放射され拡散する。
【0033】
図3Aは、第2の光ファイバ303が光ファイバ203に対して約180°に配置されるステント101の外面111に沿って、第2の光ファイバ303を配置できることを示している。UV光の適切な波長272と強度273はUV光源271から選択される。UV光226は、光ファイバ303の近位部301を通って、光ファイバ303の遠位部302に伝播する。UV光226は、ステント101の下部に沿って光分解性の外層102の分解プロセスを活性化し開始するように、光分解性の外層102に向かって放射され拡散する。第2の光ファイバ303に光分解性の外層102から材料を同時に除去させることにより、ステント101の外面111に沿って光ファイバ203を再配置する必要がなくなり、従って、UV照射システム270からUV光を照射するために必要な時間を短縮することができる。図3Aは、光ファイバ203から放射され拡散されたUV光225、及び光ファイバ303から放射され拡散されたUV光226が、光分解性の外層102の活性化を開始、及び分解を開始するために、光分解性の外層102に触れることを示している。
【0034】
図3A−3Cに示すように、外側の光分解性材料102のUV光波225と226への暴露は、すべての方向に向けて放出されてもよい。図3Bは、外層102の部分がステント101から外面111に沿って分解され除去されたことを示す。結果として、光ファイバ203と303の遠位部202と302は、まだステント101の外面111に固着している光分解性の外層102の部分に極めて近接してなるように、ステント101の外面111に沿って遠位方向にわずかに前進することができる(図3Bと3C)。光分解性の外層102のさらなる量をさらに活性化、分解、及び除去するために、UV光225は光ファイバ203を通って伝播し続け、UV光226は光ファイバ303を通って伝播し続ける。外層102へのUV光225及び226の伝播は、ステント101の外面111を体腔250の移植環境に露出するように光分解性の外層102の全てが除去されるまで続けることが好ましい。ステント101の外面111の露出は、生体分解がステント101の外面111に沿って生じるのを可能にすることができる。
【0035】
別の実施形態では、光ファイバ203の遠位端は、UV光波を光分解性の内層103の内面110に選択的に導くための手段で取り付ける又は製造することができる。例として、図4Aに、光ファイバ203の遠位先端に固定することができ、光ファイバ203の長手方向軸線に対してほぼ垂直な方向にUV光波の向きを変えるレンズ400を示す。このような構成はUV波425の光分解性の内層103の上部に向かって伝播するより大きな部分を提供することができる。言い換えれば、UV波425はレンズ400の表面の方向に向きを変えられる。図4Bは、光ファイバ203がレンズ400を下方に曲げるように回転させることができることを示す。このような構成は、UV波426の光分解性の内層103の下部に向かって伝播するより大きな部分を提供することができる。光分解性の外層102の部分を活性化、分解、及び除去するときに、そのようなUV波の選択的な方向転換を利用することもできる。
【0036】
光ファイバ203及び/又は303の遠位端は、この目的を達成する他の様々な付属部品を有することができ、或いは光ファイバ203及び/又は303自体がその端部で側面発光できるように製作することができる。例えば、図4Aと4Bの上記レンズ面400に加えて、光ファイバ203及び/又は303の遠位先端は、端部を約45°の斜角にし、次に該斜角の端部に鏡面を施すことにより、側面発光させることができる。光ファイバ203及び/又は303の側面発光する端部の別の例は、光ファイバ203及び/又は303の端部内に窪んだ円錐形の陥凹部を作成し、次に陥凹部面に鏡面を施すことにより行うことができる。これらの例に加えて、当該分野で公知のように、多くの他の光学付属部品並びに光ファイバ203及び/又は303の端部を変更する手段を用いることができる。ミラー化された窪んだ円錐形の陥凹部、ミラー化された斜面の反射、並びに回折及び屈折手段を含むこの方向変更を実現するために、公知である幾つかの他の光学的手段を用いることもできる。
【0037】
光分解性の内層103と光分解性の外層102を除去するための変形物が企図される。例えば、光分解性の内層103と外層102の除去の順序は、光分解性の外層102が光分解性の内層103の前に除去できるように置き換え可能である。別の例として、光分解性の内層103及び外層102の一部分のみが活性化され、分解され、及び除去されてもよい。
【0038】
上記の方法は、光分解性の内層103及び外層102の両方を示すが、ステント100は、単一の保護層を備えてもよい。特に、ステント100は、光分解性の内層103又は光分解性の外層102のどちらかを備えることができる。
【0039】
光ファイバが示されているが、当技術分野で知られているように、他のエネルギー導入手段が、UV波をUV光源271から光分解性の内層103と光分解性の外層102に伝播して転送するために使用できる。
【0040】
様々な生体分解性高分子材料がステント101を形成するために使用することができる。生体分解性ポリマーは、通常、ポリ−D、L−乳酸と呼ばれる光学異性体の混合物であり得るポリ乳酸(PLA)を含んでもよい。PLAは、乳酸の二量体から重合できるポリ-α-ヒドロキシ酸のひとつである。このポリマーは2つの光学異性体の形態、即ちポリ(L−乳酸)(PLLA)とポリ(D−乳酸)(PDLA)を持っており、それらは生体分解の速度において互いに異なっている。PDLAが非晶質であるのに対し、PLLAは半結晶性であり、活性種の均一な分散を持つことが重要であるドラッグデリバリーなどの用途に望ましいかもしれない。PLAは卓越した生体適合性と緩慢な分解性を有し、一般的にポリグリコール酸(PGA)よりも疎水性である。使用されるポリマーはまた、望ましくはポリグリコール酸(PGA)を含んでもよい。ポリグリコール酸は、半結晶構造を有する単純な脂肪族ポリエステルであり、3ヶ月で完全に分解し、1ヶ月で完全な強度損失を受ける。PLAと比較して、PGAはより強力な酸であり、より親水性であり、従って、加水分解の影響をより受けやすい。
【0041】
使用する他の望ましい生体分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸グリコ−ル酸(PLGA)とPLA及びPGAの他の共重合体が含まれるが、それらに限定されるものではない。共重合体の特性は、PGAに対するPLAの比率を変えることによって調整できる。例えば、PGAに対して高比率のPLAを有する共重合体は、通常PLAに対して高比率のPGAを有する共重合体よりも遅く分解する。
【0042】
さらに使用する他の望ましいポリマーには、ポリ(エチレングリコール)(PGE)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、フラーレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(スチレン−B−イソブチレン−B−スチレン)、ポリエチレン−co−ビニルアセテート、ポリ−N−ブチルメタクリレート、(ポリ(エステル)アミドなどの)アミノ酸基ポリマー、炭化ケイ素、窒酸化チタン、パリレンC、ヘパリン、ポルホリルコリン(porphorylcholine)が含まれる。
【0043】
多くの生体分解性ホモポリマー、コポリマー、又は生体分解性ポリマーの混合物が当医学分野で公知である。これらには、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタミン酸−CO−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルグルタミン酸)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸塩(PHBT)、ポリバレロラクトン(polyvalerolactones)、ポリヒドロキシ吉草酸塩、ポリ(D、L−ラクチド−CO−カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリカプロラクトン−グリコリド(PGA/PCL)、ポリリン酸エステル)、及びポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸共重合体、ポリホスファゼン、ポリイミノ炭酸塩、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリトリメチル炭酸塩、シアノアクリレート、ポリシアノアクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(ヒアルロン酸、キトサン及び再生セルロースなどの)多糖類、フィブリン、カゼイン、及び(ゼラチンやコラーゲンなどの)タンパク質、ポリ−e−デカラクトン、ポリラクトン酸、ポリヒドロキシブタン酸、ポリ(I,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン類)、ポリ−p−ジオキサノン、ポリ−b−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、マルチブロックポリマー、ポリエーテルエステルマルチブロックポリマー、ポリ(DTE−co−DT−炭酸塩)、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール酸塩ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリ[P−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、ポリウレタン、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテルエステル、ポリアルケンシュウ酸塩、脂質、カラギナン、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、ヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、光線性酸、カルボキシメチル流酸塩、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン流酸塩、デキストラン、b−シクロデキシトリン、グミアラビン、グアー、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、脂質、リン酸脂質、レシリン、及び変形物、共重合体、及び/又は本明細書で特定される任意の基材の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
使用できる他の適切な生体分解性ポリマーとしては、(ラクチドのホモポリマー及び共重合体を含む)脂肪族ポリエステル、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−吉草酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリオキサステル(polyoxaster)とアミド基を含むポリオキサステル、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、及びフィブリノーゲンなどの生体分子とその混合物、澱粉、エラスチン、脂肪酸(とそれらのエステル)、グリコソ−多糖類、及び変形物、共重合体、及び/又は本明細書で特定される任意の基材の混合物又は組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ハイブリッドステント100は、生体分解性ステント101を当技術分野で公知の任意の方法でコーティングすることにより作成することができる。一例として、生体分解性ステント101は、当技術分野で知られているように押出成形することができる。光分解性の内層103は内面110を覆ってもよく、光分解性の外層102は押出成形されたステント101の外面111を覆ってもよい。当技術分野で知られているように、浸漬被覆又は吹付被覆を含む任意の被覆手段が利用できる。好ましくは、ステント101は、その展開された状態で、又は少なくともその一部が展開された状態のステント101とマンドレルに被覆される。また、光分解性の内層103と外層102に他の変形物が企図される。例えば、ステント101は、外側の光分解性のスリーブに挿入されてもよい。内側の光分解性のスリーブをステント101のルーメン空間104内で摺動することもできる。当技術分野で公知のように、生体分解性縫合糸(例えば、商業的に作られ、エチコンが販売する3−0又は4−0ポリジオキサノン吸収性モノフィラメント縫合糸)は、外側及び内側の光分解性スリーブを取り付けるために利用することができる。また、外側の光分解性スリーブだけを使用することもできる。また、光分解性の層103及び102は、生体分解性の層101と共押出することができる。
【0046】
図に示す管状本体に加えて、生体分解性ステント101は、当技術分野で公知のように、任意の他のステント構造を備えることができる。一例では、ステント101は、上記生体分解性材料のいずれかからマンドレルに編組することができる。別の例では、ステント101は、コイル状に巻かれてもよい。さらに別の実施形態では、管状本体は上記の光分解性材料から全て形成することができる。ステント100がもはや不要になった(例えば、狭窄又は他の閉塞の原因となった状態が正常に解決された)とき、保護用光分解性の層102、103の分解が開始できる。UV光が、光分解性の層102及び103に触れ、光分解性の層102及び103を活性化させ、その後分解させる。ステント100全体は光分解性の層102及び103を形成して構成されているため、ステント101全体は、さらなる生体分解プロセスが発生しないように分解される。また、ステント100を光分解性の層で完全に形成させることは、該ステントに覆われた外被を有する光分解性の内層を分解するために有利であり得る。光分解性の内層の分解は外被の無いクリーンな面を露出し、ステント100の寿命を延ばすことができる。
【0047】
生体分解性ステント101は、外面111の少なくとも一部分に沿って治療上有効な量の1つ以上の生物活性物質を装着できる。本明細書で用いる用語「生物活性物質」は、病態又は疾病を治療又は予防するために、身体に意図した治療効果を生じる薬学的に活性な任意の薬剤を指す。生物活性物質は、ステント101の任意の部分に沿って装着できる。好ましくは、生物活性物質は生体分解性ステント101の外面111に沿って装着される。このような実施形態では、光分解性の外層102は、溶出基材と保護用化学的不活性層の両方として機能することができる。本明細書で用いられる「治療上有効な量」とは、人間又は動物の患者に治療上の恩恵を与えるのに必要な生物活性物質の最小限の量である。例えば、人間又は動物の患者への「治療上有効な量」とは、障害例えば再狭窄に屈することと関連又は抵抗する病理学的症状、疾病の進行又は生理的症状における改善を、誘発する、進める或いは他の方法でもたらすような量である。従って、図3A−3Cを参照して上述したように、保護用光分解性の外層102が分解されるときに生物活性物質の溶出が生じ得る。
【0048】
一実施形態では、生物活性物質は抗血栓剤である。抗血栓剤を含むデバイスは、血液に触れる身体の領域での移植用に特に好ましい。抗血栓剤は体内の血管内の血栓形成を阻害又は防止する任意の薬剤である。抗血栓剤の種類には抗凝固薬、抗血小板薬、及び線維素溶解薬がある。抗血栓剤の例としては、トロンビン、第Xa因子、因子VIIaと組織因子の阻害剤などの抗凝固剤;糖タンパク質IIb/IIIa、トロンボキサンA2、ADP誘発性糖タンパク質IIb/IIIa、及びホスホジエステラーゼ阻害薬などの抗血小板薬;及び、プラスミノーゲンアクチベーター、トロンビン活性化可能繊維素溶解インヒビター(TAFI)阻害剤、及び繊維素を切断する他の酵素などの繊維素溶解薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗血栓剤のさらなる例には、ヘパリンなどの抗凝固剤、低分子量ヘパリン、共有結合ヘパリン、合成ヘパリン塩、クマディン、ビバリルジン(ヒルログ)、ヒルジン、アルガトロバン、キシメラガトラン、ダビガトラン、ダビガトランエテキシラート、D−フェナレニル−L−ポリ−L−アルギニル、クロロメチルケトン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、ダナパロイド、バピプロスト、デキストラン、ジピリダモール、オメガ−3脂肪酸、ビトロネクチン受容体拮抗薬、DX−9065a、CI−1083、JTB−803、ラザキサバン(razaxaban)、BAY 59−7939、及びLY−51、7717;エフチバチド(eftibatide)、チロフィバン、オルボフィバン(orbofiban)、ロトラフィバン(lotrafiban)、アブシキシマブ、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾール、ジピラジモール(dipyradimole)などの抗血小板薬;アルフィメプラーゼ(alfimeprase)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ(anistreplase)、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ(Lanoteplase)、モンテプラーゼ、テネクテプラーゼ(tenecteplase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、或いはマイクロバブルを密封したリン脂質などの繊維素溶解薬;内皮前駆細胞や内皮細胞などの他の生物活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
抗血栓剤の別の例は、ニトロシアン化ナトリウム(Sodium nitroprussiate)、ニトログリセリン、S−ニトロソ及びN−ニトロソ化合物などの窒素酸化物源(nitric oxide source)である。一実施形態では、本発明のデバイスにより、血液と接触している表面から一酸化窒素を放出できる材料が、実現できる。
【0050】
本発明のデバイスに含めるのに適した生物活性剤の他の例としては、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)などの天然産物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、パクリタキセル、ラパマイシン類似体、エピジポドフィルロトキシン(epidipodophyllotoxins)(エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(例えば、L−アスパラギンを全体的に代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力を有していない細胞を奪うL−アスパラギナーゼ)などの天然産物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤;(GP)II.sub.b/III.sub.a阻害剤及びビトロネクチン受容体拮抗剤などの抗血小板剤;窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドと類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンとメチルメラミン(methylmelamines)(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホン酸塩−ブスルファン、ニトロソウレア(nirtosoureas)(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(trazenes−dacarbazinine)(DTIC)などの抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)、プリン類似体及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデキシアノン{クラドリビン})などの抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(例えばエストロゲン);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩類及びトロンビンの他の阻害剤);(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなどの)線維素溶解剤、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;移動抑制剤(antimigratory);抗分泌剤(ブレベルジン(breveldin));副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6.alpha.−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、及びデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、即ちアスピリン)などの抗炎症剤;パラ−アミノフェノール誘導体、即ちアセトアミノフェン;インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、及びエトドラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク、及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、及びオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、エベロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)などの血管形成剤;一酸化窒素及び一酸化窒素供与体などのアンジオテンシン受容体拮抗薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligionucleotides)及びその組み合わせ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤、及び成長因子受容体のシグナル伝達キナーゼ阻害剤; ビタミンA類(retenoids);サイクリン/CDK阻害剤;血管内皮前駆細胞(EPC);アンギオペプチン(angiopeptin);ピメクロリムス;アンギオペプチン(angiopeptin);HMG補酵素還元酵素阻害剤(スタチン);メタロプロテイナーゼ阻害剤(バチマスタット);プロテアーゼ阻害剤;EPC細胞マーカーターゲット、CD34、CD133、及びAC133/CD133などの抗体;リポソーム二リン酸化合物(BP)、クロドロネート(Chlodronate)、アレンドロネート、テンパミン(Tempamine)及びPEA/NO保存化合物などの酸素フリーラジカルスカベンジャー、及びバチマスタットなどのマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤、MMPIが挙げられる。さらに、フレームに組み込む或いは被覆することができる他の生物活性剤には、2004年4月15日発行の米国特許出願US2004/0073297号(ローデ(Rohde)ら)に開示され、参照によってその全体が本明細書に組み込まれているように、PPAR.alpha−アゴニスト、PPAR.deltaアゴニスト及びRXRアゴニストが挙げられる。別の実施形態では、生物活性物質はパクリタキセル、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又はmTORである。
【0051】
上記のハイブリッドステント100は、生体分解性ステントに保護用光分解性の外層を実装することにより、生体分解性ステントの早期の生体分解に関連する問題を克服している。早期の生体分解を避けることによって、ステント100は所望の期間、目標の体腔において十分な半径方向の強度を発揮することができる。従って、体腔の開通性が実現される。ステント100がもはや不要になったとき、ステント本体101が生体分解を受けることができるように、光分解性の層102及び103をUV分解できる。自律的生体分解は、有利には、ステント101を除去するために通常必要な追加手順をなくす。
【0052】
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明は、その様に限定されているわけではなく、本発明から逸脱することなく、修正を加えることができるものと理解されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲により定義されており、字義通りにせよ又は等価物によるにせよ、特許請求の範囲の意味に入る全ての装置は、同範囲に包含されるものとする更に、以上に述べられている利点は、必ずしも、本発明の唯一の利点というわけではなく、また、必ずしも、述べられている利点の全てが本発明の個々の実施形態で実現されることになると考えているわけではない。
【符号の説明】
【0053】
100 ハイブリッド分解性ステント
101 生体分解性ステント
102 光分解性の外層
103 光分解性の内層
110 内面
111 外面
201 近位領域
202 遠位領域
203、230、303 光ファイバ
225、226 UV光、UV光波
250 体腔
270 光照射システム
271 UV光源
272 波長調整又は選択制御部
273 強度制御部
400 レンズ
425 UV波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径と外径を備えている概ね管状の本体であって、前記管状本体は生体分解性材料で形成されている管状本体と、
前記生体分解性管状本体の前記内径と前記外径の一方の少なくとも一部分に配置される光分解性の層であって、前記光分解性の層は、患者体内の移植部位に含まれる体液に対して化学的に不活性である光分解性材料から形成され、化学的に不活性な状態から光分解性の状態に選択的に活性化されるようになっており、前記光分解性の状態は、前記生体分解性材料の生体分解を開始するために、前記光分解性の層が配置されている前記生体分解性材料の前記部分を露出するように、光分解性の層の分解を開始する、光分解性の層と
を備える、ハイブリッド分解性ステント。
【請求項2】
前記光分解性の層は、紫外線(UV)光照射システムにより、前記化学的に不活性な状態から前記光分解性の状態に選択的に活性化されるようになっている、請求項1に記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項3】
前記UV光照射システムは紫外線(UV)光源と光ファイバ部分を備え、前記光ファイバ部分は、前記UV光源と連通する近位部分と、前記管状本体の前記内径と前記外径の少なくとも一方と連通する遠位部分を備えており、前記光ファイバ部分は、前記近位部分から前記遠位部分にUV光を伝播して、前記遠位部分から前記管状本体に光を照射する、請求項2に記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項4】
前記光ファイバが前記UV光の向きを変えるためのレンズ面を備える、請求項3に記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項5】
前記光分解性の材料はポリマーを含有するUV光分解性のケトカルボニルより成る、請求項1乃至4の何れかに記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項6】
前記光分解性の材料は、さらにビニリデンモノマーから形成された合成ポリマーから成る、請求項5に記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項7】
前記光分解性ケトカルボニルは合成ポリマーの総重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%の範囲の化学組成から成る、請求項6に記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項8】
前記生体分解性管状本体は、その中に装填された生物活性物質より成る、請求項1乃至7の何れかに記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項9】
前記光分解性の層は通気性がなく、且つ前記生体分解性管状本体の前記内径と前記外径の全長に沿って延在している、請求項1乃至8の何れかに記載のハイブリッド分解性ステント。
【請求項10】
近位端と遠位端、並びに前記近位端から前記遠位端に延在するルーメンを有する、生体分解性の概ね管状の本体であって、前記管状本体は生体分解性管状本体の少なくとも一部分に配置された光分解性の材料を備えており、前記光分解性の材料が患者の体腔に最初に配備されるとき、化学的に不活性である管状本体と、
光分解性の材料を化学的に不活性の状態から光分解性の状態に活性化するようになされ、光源とファイバ部分を備える光照射システムであって、前記ファイバ部分が前記光源と連通する近位部分と前記管状本体と連通する遠位部分を備えており、前記ファイバ部分は、紫外線(UV)光を前記近位部から前記遠位部に伝播して、前記遠位部から前記光分解性材料に照射するように構成されている光照射システムと
を備える分解性ステントキット。
【請求項11】
前記ファイバ部分は光ファイバである、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記光照射システムは、前記光ファイバに配信されるようにUV光の量を調節する強度制御をさらに備えている、請求項10又は11に記載のキット。
【請求項13】
前記管状本体は全て前記光分解性材料から形成されている、請求項10から12のいずれかに記載のキット。
【請求項14】
前記光照射システムが光分解性の材料と相互作用する適切な波長のUV光を選択するための波長調整制御をさらに備えている、請求項10から13のいずれかに記載のキット。
【請求項15】
前記光ファイバが前記UV光波を前記光分解性材料に選択的に導くための手段を有する、請求項10から14のいずれかに記載のキット。
【請求項16】
前記光分解性の層が管状本体全体に配置されている、請求項10から15のいずれかに記載のキット。
【請求項17】
(a)生体分解性材料から形成され、内径と外径を備える概ね管状の本体であって、前記本体は前記生体分解性管状本体の前記内径と前記外径の一方の少なくとも一部分に配置される光分解性の層をさらに備えている管状の本体を提供するステップと、
(b)前記体内の内腔に前記管状本体を配備するステップと、
(c)細長い光照射導体を前記配備された管状本体に向かって前進するステップと、
(d)前記導体を通して前記ステントの前記光分解性の層に向かって、事前に選択された光の波長を照射するステップと、
(e)前記光分解性の層を化学的に不活性の状態から光分解性の状態に活性化するステップと、
(f)前記光分解性の層の少なくとも一部分を光分解するステップと
を含む患者の体腔内でステントを制御可能に分解するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2012−521849(P2012−521849A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503508(P2012−503508)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028438
【国際公開番号】WO2010/117629
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】