説明

制御システム及び制御装置群の更新方法

【課題】更新対象の制御装置群による制御機能を確保しつつ新たな制御装置群への更新を進めることが可能な制御システムを提供する。
【解決手段】第1の制御プログラムに従って制御対象機器60の動作を制御する第1の制御装置群10と、第1の制御プログラムとは機能が異なる第2の制御プログラムに従って制御対象機器60の動作を制御する第2の制御装置群20と、第1の制御装置群10を相互に接続する第1のネットワーク30と、第2の制御装置群20を相互に接続する第2のネットワーク40とを制御システム1に設ける。第1の制御装置群10による制御対象機器60の動作制御と、第2の制御装置群20による制御対象機器60の動作制御とを切り替え可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の生産ライン等を制御するための制御システム及びその制御システムに含まれる制御装置群の更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場の生産ライン等では制御装置を利用することにより、生産の自動化、いわゆるファクトリーオートメーションが実現されている。この種の制御システムとしては、機能毎に制御コンピュータを分散配置したDCS(Distributed Control Systemの略)と、生産ラインに組み込まれる電磁弁、モータ等の制御対象機器のシーケンス制御を担当するPLC(Programable Logic Controllerの略)とを組み合わせたシステム等が提案されている。この種の制御システムにおいて、部分的な障害が発生しても生産ライン全体を停止させる必要がないように、システムを多重化した構成も種々提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2001−209401号公報
【特許文献2】特開2003−273875号公報
【特許文献3】特開平06−161799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の制御システムでは、制御装置の老朽化等の理由から制御装置群の更新が必要となった場合、生産ラインを停止して制御装置群を交換し、新たな制御装置群による動作確認、不具合の修正といった諸作業を経て新たな制御装置群による生産を開始する必要がある。この場合、従前の制御装置群の撤去から新たな制御装置群の設置完了までの間は生産ラインを稼働させることができず、生産が一定期間停止する。しかしながら、牛乳等の日配品(製造したその日に出荷する製品)を生産するラインでは日単位といった短い周期で生産を繰り返す必要があるため、制御装置の更新に必要な停止時間を連続して確保することができない場合がある。制御装置群を多重化した従来の制御システムは、各制御装置群が同一のプログラムに従って動作するものであり、制御装置群の更新時には同様の問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、更新対象の制御装置群による制御機能を確保しつつ新たな制御装置群への更新を進めることが可能な制御システム及び制御装置群の更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の制御システムは、第1の制御プログラムに従って制御対象機器(60)の動作を制御する第1の制御装置群(10)と、前記第1の制御プログラムとは機能が異なる第2の制御プログラムに従って前記制御対象機器の動作を制御する第2の制御装置群(20)と、前記第1の制御装置群を相互に接続する第1のネットワーク(30)と、前記第2の制御装置群を相互に接続する第2のネットワーク(40)とを備え、前記第1の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御とを切り替え可能とすることにより、上述した課題を解決する。
【0006】
本発明の制御システムによれば、例えば第1の制御装置群を更新されるべき既存の制御装置群、第2の制御装置群を新規に設置されるべき制御装置群とすれば、第1の制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれを第1のネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を従来通りに制御する状態と、第2の制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれを第2のネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を制御する状態とを使い分けることができる。そして、第2の制御装置群にて制御対象機器を制御することにより、その第2の制御装置群の制御動作の確認、不具合修正といった作業を実施することができる。これにより、既存の制御装置群の制御機能を確保しつつ、新たな制御装置群への更新を進めることができる。例えば、第1の制御装置群が生産ラインの制御対象機器の動作を制御するものであれば、生産が必要な期間には第1の制御装置群の制御機能を利用して生産ラインを稼働させ、生産を停止できる期間には第2の制御装置群の制御機能を利用して生産ラインの試運転を実施し、それにより第2の制御装置群による動作制御内容の確認、不具合修正等を行うことができる。
【0007】
本発明の制御システムの一形態においては、前記第1の制御装置群と前記第2の制御装置群とを接続する第3のネットワーク(50)をさらに備え、前記第1の制御装置群又は前記第2の制御装置群のいずれか一方の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御が、前記第3のネットワーク及び他方の制御装置群を介して実行されてもよい。
【0008】
この形態によれば、第1の制御装置群又は第2の制御装置群に制御対象機器が接続されていれば、第2の制御装置群又は第1の制御装置群に制御対象機器が直接的に接続されていない状態であっても、一方の制御装置群を制御主体として、その制御装置群から第3のネットワーク及び他方の制御装置群を介して制御対象機器の動作を制御することができる。これにより、制御装置群を更新する際の制御装置群と制御対象機器との接続形態に関する制約が緩和され、更新作業の自由度が高まる。
【0009】
第3のネットワークを設ける形態においては、さらに、前記第1の制御装置群に含まれる複数の制御装置(11a〜11i)のそれぞれが、各制御装置に割り当てられた複数の制御対象機器のそれぞれを個別に制御するように構成され、前記第2の制御装置群は、前記第1の制御装置群に含まれる前記複数の制御装置のそれぞれと1:1に対応付けられた複数の制御装置(21a〜21i)を含み、前記第3のネットワークが前記第1の制御装置群の制御装置と前記第2の制御装置群の制御装置とをそれらの対応関係に従って1:1で接続してもよい。
【0010】
この形態によれば、第1の制御装置群の複数の制御装置と、第2の制御装置群の複数の制御装置とを1:1に設けることにより、第3のネットワークを介して接続された一対の制御装置を、特定の制御対象機器に対する新旧の制御装置の組として位置付けることができる。このため、更新の前後における制御装置と制御対象機器との対応関係が変化せず、更新作業に要する手間が軽減でき、かつ、更新中の制御動作の切り替えも容易に行うことができる。
【0011】
さらに、上記の形態においては、前記第3のネットワークを介して接続される前記第1の制御装置群の制御装置及び前記第2の制御装置群の制御装置のそれぞれが、同一の制御対象機器のシーケンス制御を実行するPLCであってもよい。これにより、制御対象機器に対する専用コントローラとして設置されている既存のPLCの制御機能を確保しつつPLCの更新を進めることができる。
【0012】
本発明の制御システムにおいては、前記第1の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御との切り替えがソフトウエアスイッチ(13、23)により実現されてもよい。ソフトウエアスイッチにより切り替えを行うことにより、第1の制御装置群と第2の制御装置群との間で制御主体を切り替える操作を容易に行うことができ、また、更新に伴うハードウエア装置の設置の負担が軽減される。
【0013】
本発明の制御装置群の更新方法は、第1の制御プログラムに従って制御対象機器(60)の動作を制御する第1の制御装置群(10)と、第1の制御装置群を相互に接続する第1のネットワーク(30)とを備えた旧システムを、前記第1の制御プログラムとは機能が異なる第2の制御プログラムに従って前記制御対象機器の動作を制御する第2の制御装置群(20)と、第2の制御装置群を相互に接続する第2のネットワーク(40)とを備えた新システムへと更新する制御装置群の更新方法であって、前記第1の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御とを切り替え可能とし、前記第1の制御装置群により前記制御対象機器の動作を制御しつつ、前記第2の制御装置群の設置に必要な作業を進める状態と、前記第2の制御装置群により前記制御対象機器の動作を制御して該第2の制御装置群による前記制御対象機器の動作を確認する状態とを交互に切り替えて前記旧システムから前記新システムへの更新を進めることにより、上述した課題を解決する。
【0014】
本発明の更新方法によれば、第1の制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれを第1のネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を従来通りに制御する状態と、第2の制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれを第2のネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を制御する状態とを使い分けることができる。そして、第2の制御装置群による制御対象機器の制御を必要に応じて実行することにより、その第2の制御装置群の制御動作の確認、不具合修正といった作業を実施することができる。これにより、第1の制御装置群の制御機能を確保しつつ、第2の制御装置群への更新を進めることができる。
【0015】
なお、本発明の更新方法においては、前記第1の制御装置群と前記第2の制御装置群とを接続する第3のネットワーク(50)をさらに設置し、前記第1の制御装置群又は前記第2の制御装置群のいずれか一方の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御を、前記第3のネットワーク及び他方の制御装置群を介して実行してもよい。前記第1の制御装置群に含まれる複数の制御装置(11a〜11i)のそれぞれを、各制御装置に割り当てられた複数の制御対象機器のそれぞれを個別に制御するように構成し、前記第2の制御装置群は、前記第1の制御装置群に含まれる前記複数の制御装置のそれぞれと1:1に対応付けられた複数の制御装置(21a〜21i)を含むものとし、前記第3のネットワークが前記第1の制御装置群の制御装置と前記第2の制御装置群の制御装置とをそれらの対応関係に従って1:1で接続するものとしてもよい。さらに、前記第3のネットワークを介して接続される前記第1の制御装置群の制御装置及び前記第2の制御装置群の制御装置のそれぞれを、同一の制御対象機器のシーケンス制御を実行するPLCとしてもよい。前記第1の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御との切り替えをソフトウエアスイッチ(13、23)により実現してもよい。
【0016】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明したように、本発明の制御システム及び制御装置群の更新方法によれば、既存の制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれをネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を従来通りに制御する状態と、新たに設置すべき制御装置群に含まれる制御装置のそれぞれをネットワークを介して連係させつつ、その制御装置群を制御主体として制御対象機器の動作を制御する状態とを使い分けることが可能となる。そして、新たに設置すべき制御装置群にて制御対象機器を制御することにより、その制御装置群の制御動作の確認、不具合修正といった作業を実施することができる。これにより、既存の制御装置群の制御機能を確保しつつ、新たな制御装置群への更新を進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一形態に係る制御システムを示す。制御システム1は工場の生産ラインに設けられる各種の制御対象機器の動作を制御することにより、生産ラインを所定の手順で動作させるために設けられている。生産ラインは例えば牛乳等の日配品を生産するものである。制御システム1は、第1の制御装置群10と、第2の制御装置群20とを備えている。第1の制御装置群10は、生産ラインの動作を制御する目的で従来から設置されている更新対象の制御装置群である。その第1の制御装置群10は、複数台(図では9台)のPLC11a〜11iを備えている。PLC11a〜11i(以下、参照符号11で代表することがある。)は、CPU及びそのCPUの動作に必要なメモリ等の周辺装置を含んだコンピュータユニットの一種であり、メモリに記憶された所定の制御プログラム(第1の制御プログラムに相当する。)をCPUが実行することにより特定の制御対象機器をシーケンス制御する専用コントローラとして構成されている。制御対象機器としては、例えばポンプ、電磁弁、モータ等がある。制御対象機器はPLC11毎に異なっており、各PLC11にインストールされる制御プログラムも制御対象機器に与えるべき動作に応じた制御対象機器毎の専用プログラムである。
【0019】
PLC11は第1のネットワーク30にて相互に接続されている。ネットワーク30にはPLC用に開発された各種の専用ネットワークを利用することができる。第1の制御装置群10に対しては、上位監視制御装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する。)31、32が設けられている。PC31、32は上位ネットワーク33を介して互いに接続され、かつ一方のPC32はシリアル回線34を介してPLC11aに接続されている。さらに、PC32は、PLC11aを中継点として、ネットワーク30を介して他のPLC11b〜11iにも接続されている。上位ネットワーク33には例えばイーサネット(登録商標)を利用することができる。PC31、32はPLC11に対する動作指示、PLC11の動作状況の監視等を行う。PC31、32からPLC11に対して動作指示を与えることにより、各PLC11がそれぞれにインストールされた制御プログラムに従って制御対象機器のシーケンス制御を実行する。これにより、生産ラインを稼働させて日配品の生産を行うことができる。
【0020】
一方、第2の制御装置群20は、第1の制御装置群10に代えて生産ラインの動作を制御する目的で生産ラインに新たに設置される制御装置群である。その第2の制御装置群20は複数台(図では10台)のPLC21a〜21jを備えている。PLC21a〜21j(以下、参照符号21で代表することがある。)も、CPU及びそのCPUの動作に必要なメモリ等の周辺装置を含んだコンピュータユニットの一種である。また、PLC21a〜21iは、メモリに記憶された所定の制御プログラム(第2の制御プログラムに相当する。)をCPUが実行することにより特定の制御対象機器をシーケンス制御する専用コントローラとして構成されている。PLC21a〜21iによる制御対象機器は第1の制御装置群10におけるPLC11a〜11iのそれらと同じである。PLC21jについては後述する。
【0021】
PLC21は第2のネットワーク40にて相互に接続されている。ネットワーク40にはPLC用に開発された各種の専用ネットワークを利用することができる。第2の制御装置群20に対しては、上位監視制御装置としてのPC41、42、43が設けられている。PC41〜43は上位ネットワーク44を介して互いに接続され、かつシリアル回線45を介してPLC21jに接続される。さらに、PC41〜43は、PLC21jを中継点として、ネットワーク40を介して他のPLC21a〜21iにも接続されている。PC41、42、43はPLC21に対する動作指示、PLC21の動作状況の監視等を行う。PLC21a〜21iのそれぞれに生産ライン上の制御対象機器を接続し、PC41〜43からPLC21a〜21iに対して動作指示を与えることにより、PLC21a〜21iがそれぞれにインストールされた制御プログラムに従って制御対象機器のシーケンス制御を実行する。これにより、生産ラインを稼働させて日配品の生産を行うことができる。なお、上位ネットワーク44には例えばイーサネット(登録商標)を利用することができる。上位ネットワーク44には、プリンタ46等の周辺機器がさらに接続される。PC41〜43には無停電電源47がバックアップ電源として接続されている。
【0022】
PLC21a〜21iは、第1の制御装置群10のPLC11a〜11iと1:1に対応付けて設けられている。対をなすPLC同士は第3のネットワーク50を介して相互に接続されている。第3のネットワーク50にはPLC用に開発された各種の専用ネットワークを利用してよい。PLC21a〜21iは、対応する第1の制御装置群10のPLC11a〜11iと同一の制御対象機器をシーケンス制御するために用意されている。例えば、第1の制御装置群10のPLC11aが、生産ラインに設けられた特定のモータをシーケンス制御するための専用コントローラである場合、そのPLC11aとネットワーク50で接続されたPLC21aも同一モータをシーケンス制御するための専用コントローラとして設けられている。一方、PLC21a〜21iにインストールされている制御プログラムは、第1の制御装置群10のPLC11にインストールされている制御プログラムとは機能が異なる。第2の制御装置群20は第1の制御装置群10の置き換え用であるため、その第2の制御装置群20に含まれるPLC21a〜21iの制御プログラムには、第1の制御装置群10による制御機能の向上、拡張、変更等を実現するように適宜の追加、変更が加えられている。なお、PC41〜43に接続されたPLC21jは、PLC21a〜21iの動作監視のために設けられたものである。第1の制御装置群10においてはPLC21jに対応するPLCが存在せず、PLC11aがその機能を兼ねている。
【0023】
図2は、第1の制御装置群10に設けられた1台のPLC11(PLC11a〜11iのいずれか一つ)、及びそのPLC11と対をなす第2の制御装置群20のPLC21(PLC21a〜21iのいずれか一つ)のそれぞれの内部構成を示す機能ブロック図である。PLC11には、CPU及び制御プログラムの組み合わせによって実現される論理的装置として動作制御部12、及び切替部13が設けられている。動作制御部12は制御プログラムに従って制御対象機器60のシーケンス制御を実行する主体として機能する。切替部13は、PC31又は32から与えられる切替指示に従って、動作制御部12の動作モードを生産モードとIOモードとの間で切り替えるソフトウエアスイッチとして機能する。切替部13によって生産モードが指示された場合、動作制御部12はPLC11の制御プログラムに従って制御対象機器60のシーケンス動作を制御する。一方、切替部13によってIOモードが指示された場合、動作制御部12は第2の制御装置群20のPLC21の入力インターフェース及び出力インターフェースの一部として機能する。
【0024】
また、PLC11には、センサ等の入力機器61からの信号を動作制御部12に入力するための入力インターフェース(図ではIFと表示。以下同様。)14、動作制御部12からの動作指示を制御対象機器60に出力するための出力インターフェース15、PLC11をネットワーク30に接続するためのネットワーク制御部16、及びPLC11をネットワーク50に接続するための装置間通信制御部17が設けられている。ネットワーク制御部16は、動作制御部12及び切替部13のそれぞれとネットワーク30との間におけるデータ通信を制御し、装置間通信制御部17は、ネットワーク50を介した動作制御部12とPLC21との間のデータ通信を制御する。
【0025】
一方、PLC21には、CPU及び制御プログラムの組み合わせによって実現される論理的装置として動作制御部22、及び切替部23が設けられている。動作制御部22は制御プログラムに従って制御対象機器60のシーケンス制御を実行する主体として機能する。切替部23は、PC41〜43のいずれかから与えられる切替指示に従って、動作制御部22の動作制御機能を有効化又は無効化するソフトウエアスイッチとして機能する。切替部23によって制御機能が有効化された場合、動作制御部22はPLC21の制御プログラムに従って制御対象機器60のシーケンス動作を制御する。一方、切替部23によって制御機能が無効化された場合、動作制御部22による制御は行われない。
【0026】
また、PLC21には、センサ等の入力機器61からの信号を動作制御部22に入力するための入力インターフェース24、動作制御部22からの動作指示を制御対象機器60に出力するための出力インターフェース25、PLC21をネットワーク40に接続するためのネットワーク制御部26、及びPLC21をネットワーク50に接続するための装置間通信制御部27が設けられている。ネットワーク制御部26は、動作制御部22及び切替部23のそれぞれとネットワーク40との間におけるデータ通信を制御し、装置間通信制御部27は、ネットワーク50を介した動作制御部22とPLC11との間のデータ通信を制御する。なお、第1の制御装置群10のPLC11の入力インターフェース14及び出力インターフェース15に入力機器61及び制御対象機器60が接続されている状態では、入力インターフェース24及び出力インターフェース25に入力機器61及び制御対象機器60を接続する必要はない。
【0027】
上述した本形態の制御システム1では、生産ラインに対して全ての構成要素が同時的に設置されるものではない。すなわち、第1の制御装置群10及びこれと組み合わされるべき第1のネットワーク30、PC31、32、上位ネットワーク33及びシリアル回線34が先行して設置され、これらを利用して生産ラインの動作が制御されて生産が繰り返される。以下では、この段階を更新前段階と呼び、その更新前段階で設置されている構成要素の集合を旧システムと便宜的に呼ぶ。そして、第1の制御装置群10の老朽化、仕様変更等によりそれらの更新が必要となった段階で、第2の制御装置群20及びこれと組み合わされるべき第2のネットワーク40、PC41〜43、上位ネットワーク44、シリアル回線45等が設置される。この段階を更新段階と呼ぶ。図1の形態はこの更新段階における制御システム1を示すものである。そして、第2の制御装置群20を利用した生産が実用可能となった段階で第1の制御装置群10等が撤去される。以下では、この段階を更新後段階と呼び、その更新後段階で設置されている構成要素の集合を新システムと便宜的に呼ぶ。
【0028】
次に、図3を参照して、旧システムから図1の制御システム1を経由して新システムへとシステムを更新する手順を説明する。日配品の生産ラインでは、生産期間(ラインの稼働期間)と停止期間とが定期的に繰り返されることから、本形態の制御システム1による更新作業ではこれらの期間を使い分けて作業を進める。まず、更新段階の初期では、旧システムによって生産ラインを稼働させて生産を実施する。そして、生産ラインが停止期間に入ると、まず旧システムに対する追加、修正といった作業を実施する。
【0029】
すなわち、更新前段階において、旧システムに含まれるPLC11は切替部13を必要としない。従って、本形態の制御システム1を経由した更新が予定されていない限り、切替部13及び動作制御部12のモード切替機能は旧システムのPLC11に用意されていないことが通例である。そこで、更新段階初期では、各PLC11において、切替部13を構成する機能、動作制御部12を生産モード又はIOモードで選択的に動作させる機能、及び切替部13の指示に応じて動作制御部12の動作モードを変化させる機能が追加されるように、PLC11にインストールされた制御プログラムに追加又は修正を施す必要がある。また、第3のネットワーク50をPLC11と接続するための装置間通信制御部17についても各PLC11に新たに追加する必要がある。これらの作業を更新段階初期でかつ生産ラインの停止期間に実施する必要がある。
【0030】
また、新システムに関しては、更新段階初期であっても、生産ラインの稼働に影響が及ばない設置作業等を併行して実施することができる。例えば、第2の制御装置群20の設置、第2のネットワーク40の構築、PC41〜43の設置、上位ネットワーク44の構築、シリアル回線45の接続、及びPLC21に対する制御プログラムのインストール等を生産ラインの稼働と併行して実施してよい。また、第3のネットワーク50の構築に関しては生産ラインの停止期間に実施する。
【0031】
旧システムに対する追加、修正作業が完了してPLC11の動作制御部12のモードが切り替え可能となった後、旧システムに関しては、生産期間でPLC11の動作制御部12を生産モードに切り替えて生産ラインを稼働させ、停止期間ではPLC11の動作制御部12をIOモードに切り替える。これにより、生産期間においては旧システムの制御機能を利用して生産ラインを稼働させることができる。一方、新システムの設置が完了した場合、その新システムに関しては、生産期間において動作制御部22の制御機能を無効化しておく。これにより、旧システムを利用した生産に対して、新システムが影響を与えるおそれを排除することができる。なお、図3では、一回の停止期間で旧システムの追加、修正作業等が完了するものとしたが、これらの作業が複数回の停止期間に分けて行われてよいことは勿論である。また、新システムの設置作業等の完了時期は必ずしも旧システムの追加、修正等の作業の完了時期と同時的でなくてよい。
【0032】
旧システムの追加、修正といった作業が完了し、かつ新システムについてもその設置が完了した後は、生産ラインの停止期間への移行に伴って、第1の制御装置群10のPLC11の動作モードをIOモードに切り替える一方、第2の制御装置群20のPLC21の制御機能を有効化する。そして、PLC21の制御プログラムを実行させ、それらのPLC21からの動作指令をPLC11を介して制御対象機器60に与えることにより、PLC21の制御機能を利用した生産ラインの試運転を実施する。これにより、停止期間において第2の制御装置群20の動作制御の適否を確認することができる。そして、次の生産期間に入る際には旧システムのPLC11を生産モードに切り替えて生産ラインを稼働させる一方で、新システムのPLC21の制御機能を無効化する。その生産期間には、新システムのPLC21の不具合修正等を実施することができる。そして、次の停止期間で再度生産ラインの試運転を実施して動作確認等を行えばよい。
【0033】
以上のような手順を繰り返すことにより、生産期間における生産を確保しつつ、停止期間では新システムのPLC21の制御機能を利用して生産ラインの試運転を実施し、その試運転を通じて不具合修正等を施すことにより、新システムの構築を進めることができる。新システムが完成し、PLC21を利用した生産が可能となった後は旧システムを撤去することができる。なお、旧システムの構成要素のうち、新システムでも利用するもの、例えば制御対象機器60、入力機器61については当然ながら撤去不要である。制御対象機器60はPLC20の出力インターフェース25に、入力機器61はPLC21の入力インターフェース24にそれぞれ接続すればよい。第3のネットワーク50は更新後段階において不要であり、撤去してよい。なお、生産ラインの停止期間において、PLC21の動作制御部22の制御機能を適宜に無効化して作業を実施してよいことは勿論である。
【0034】
本発明は以上の形態に限ることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、PLC11、21の個数は生産ラインに応じて適宜に変更してよい。第1の制御装置群及び第2の制御装置群はPLCを用いたものに限らず、適宜の制御装置の集合によりこれらを構成してよい。上記の形態では、第1の制御装置群を第2の制御装置に対する入力インターフェース、及び出力インターフェースとして機能させることにより、第1の制御装置群のPLC11と制御対象機器60及び入力機器61との接続を維持しつつ、第2の制御装置群20のPLC21への入力機器61の信号の入力、及びPLC21による制御対象機器60の動作制御を可能としている。しかしながら、図2に想像線で示したように、停止期間において第2の制御装置群20のPLC21に入力機器61及び制御対象機器60を付け替え、生産期間において第2の制御装置群20のPLC21を第1の制御装置群10のPLC11に対する入力インターフェース及び出力インターフェースとして機能させてもよい。この場合でも、第1の制御装置群10のPLC11の制御機能を利用して生産ラインを稼働させることができる。さらに、入力機器61及び制御対象機器60を第1の制御装置群10のPLC11及び第2の制御装置群20のPLC21のそれぞれに並列的に接続し、PLC11、21と入力機器61及び制御対象機器60との間に、第1の制御装置群10と第2の制御装置群20との間で接続先を択一的に選択可能な切替装置をさらに設けてもよい。その切替装置はハードウエアによる物理的装置として構成してもよいし、ソフトウエアによる論理的装置として構成してもよい。さらに、切替装置を別途設置する場合には、第3のネットワーク50を省略することも可能である。なお、制御装置群10、20のPLC11、21のそれぞれは制御対象機器60と接続されてその制御対象機器60の動作を制御するものであればよく、制御において参照すべき情報の入力手段としての入力機器61が接続されていることを必ずしも必要としない。
【0035】
本発明は、日配品の生産ラインに限らず、各種の物品の生産ラインに適用できる。さらに、本発明は生産ラインに限らず、ネットワークを介して相互に接続された制御装置群によって制御対象機器の動作制御を行う限りにおいて、各種の制御システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一形態に係る制御システムの構成を示す図。
【図2】図1の制御システムに含まれる第1の制御装置群のPLC、及び第2の制御装置群のPLCのそれぞれの内部構成を示す機能ブロック図。
【図3】制御システムを利用した更新手順の一例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1 制御システム
10 第1の制御装置群
11a〜11i PLC
12 動作制御部
13 切替部
20 第2の制御装置群
21a〜21j PLC
22 動作制御部
23 切替部
30 ネットワーク(第1のネットワーク)
40 ネットワーク(第2のネットワーク)
50 ネットワーク(第3のネットワーク)
60 制御対象機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御プログラムに従って制御対象機器の動作を制御する第1の制御装置群と、前記第1の制御プログラムとは機能が異なる第2の制御プログラムに従って前記制御対象機器の動作を制御する第2の制御装置群と、前記第1の制御装置群を相互に接続する第1のネットワークと、前記第2の制御装置群を相互に接続する第2のネットワークと、を備え、前記第1の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御とを切り替え可能としたことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記第1の制御装置群と前記第2の制御装置群とを接続する第3のネットワークをさらに備え、前記第1の制御装置群又は前記第2の制御装置群のいずれか一方の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御が、前記第3のネットワーク及び他方の制御装置群を介して実行されることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1の制御装置群に含まれる複数の制御装置のそれぞれが、各制御装置に割り当てられた複数の制御対象機器のそれぞれを個別に制御するように構成され、前記第2の制御装置群は、前記第1の制御装置群に含まれる前記複数の制御装置のそれぞれと1:1に対応付けられた複数の制御装置を含み、前記第3のネットワークが前記第1の制御装置群の制御装置と前記第2の制御装置群の制御装置とをそれらの対応関係に従って1:1で接続することを特徴とする請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第3のネットワークを介して接続される前記第1の制御装置群の制御装置及び前記第2の制御装置群の制御装置のそれぞれが、同一の制御対象機器のシーケンス制御を実行するPLCであることを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の制御装置群による前記制御対象機器の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御との切り替えがソフトウエアスイッチにより実現されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
第1の制御プログラムに従って制御対象機器の動作を制御する第1の制御装置群と、第1の制御装置群を相互に接続する第1のネットワークとを備えた旧システムを、前記第1の制御プログラムとは機能が異なる第2の制御プログラムに従って前記制御対象機器の動作を制御する第2の制御装置群と、第2の制御装置群を相互に接続する第2のネットワークとを備えた新システムへと更新する制御装置群の更新方法であって、
前記第1の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御と、前記第2の制御装置群による前記制御対象機器群の動作制御とを切り替え可能とし、
前記第1の制御装置群により前記制御対象機器の動作を制御しつつ、前記第2の制御装置群の設置に必要な作業を進める状態と、前記第2の制御装置群により前記制御対象機器の動作を制御して該第2の制御装置群による前記制御対象機器の動作を確認する状態とを交互に切り替えて前記旧システムから前記新システムへの更新を進める、
ことを特徴とする制御装置群の更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−304678(P2007−304678A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129909(P2006−129909)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【Fターム(参考)】