説明

制御システム

HVAC(加熱、通気、空調)、冷却又は液体チラーシステム(100)内の遠心ガスコンプレッサ(108)を制御するシステム。コンプレッサを通るガスの流れがシステム内での失速及びサージ状態を阻止するため所望のパラメータを所定の範囲内に維持するように自動的に制御される。コンプレッサ内の可変幾何学ディフューザー(119)が、コンプレッサのインペラホイール(201)の排出部で冷媒ガスの流れを制御する。この構成は、マスフローを減少させ、流れ減少による失速を減少/排除し、部分負荷状態でのコンプレッサの作動効率を増大させる。可変速度ドライブ(VSD)(120)と組み合わせた可変幾何学ディフューザー制御が、部分システム負荷でのコンプレッサの効率を増大させ、遠心コンプレッサの入口での予備回転ベーンの必要性を排除する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本願は、参照としてここに組み込む2007年10月31日に出願された「VARIABLE GEOMETRY DIFFUSERS AS CAPACITY CONTROL」という名称の米国仮特許出願第60/984,073号の優先権及び利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本願は、全体として、単段又は多段の遠心コンプレッサのための容量(capacity)制御システムに関する。本願は、特に、可変幾何学ディフューザー(VGD; Variable Geometry Diffuser)を有するコンプレッサのための容量制御システムに関する。冷却システムにおいては、容量は冷却能力(cooling ability)を言い、一方、他のガス圧縮システムにおいては、容量は容積流れ(volumetric flow)を言う。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来、液体チラーのような冷却システムに使用するための遠心コンプレッサにおいては、冷却システムの冷却容量(cooling capacity)を制御するために、冷却又は加熱、通気、空調及び冷却(HVAC&R)、及びガス圧縮、予備回転ベーン(PRV)又は入口ガイドベーンが必要であった。蒸発器からコンプレッサへの入口では、1又はそれ以上のPRVがコンプレッサへの冷媒の流れを制御する。コンプレッサへの冷媒の量を増大させるように、従って、システムの冷却容量を増大させるようにPRVを開くために、アクチュエータを使用する。同様に、コンプレッサへの冷媒の量を減少させるように、従って、システムの冷却容量を減少させるようにPRVを閉じるために、アクチュエータを使用する。
【0004】
[0004] 可変幾何学ディフューザー(VGD、複数)は遠心コンプレッサのディフューザー区域内で回転停止(stall)(失速)を制御するために使用されてきた。VGDの1つの実施の形態は、本願の譲受人に譲渡された、ネンスチール社(Nenstiel)の米国特許第6,872,050号の明細書に記載されており、これを参照としてここに組み込む。VGDは、測定された信号のレベルが所定のしきい値以下に低下するまで、遠心コンプレッサのディフューザー通路内へ延長される。その結果として、失速の排除、及び、内部の及び空気伝達の音レベルの双方における対応する低下が生じる。ある時間経過後又は状態の変化後、失速状態を検出したことを測定信号のレベルが表示するまで、ディフューザーギャップが段階的に又は増分的に再度開かれる。
【0005】
[0005]失速及びサージ状態はコンプレッサの極限の作動状態を表す異なる物理的な現象である。失速はコンプレッサの1又はそれ以上の素子における局部的な流れ分離であり、インペラの回転周波数よりも小さな基本的周波数での排出圧力かく乱を特徴とする。遠心コンプレッサにおける回転失速はディフューザーにおいて優勢的に存在し、VGDにより排除することができる。対照的に、サージは圧縮ガスシステムにおけるシステムの幅広い不安定である。コンプレッサ内の主要な流れは瞬間的に方向を逆転し、サージは更に一層低い周波数、大きな圧力変動を特徴とする。
【0006】
[0006]VGDは、圧縮ガスのための出口流れ経路であるディフューザーギャップを占領するように動くことのできるリングを含む。VGDは、リングが最大のガス流れを許容するように出口流れ経路の完全に外側にあるような引き戻し位置から、リングが出口流れ経路の一部を占めてガス流れの一部を制限するような伸張位置へ、移動することができる。リングは、遠心コンプレッサ内の失速の状態の検出に基づいて作動できる。可変幾何学ディフューザーは、差し迫った失速を検出するために排出圧力の交互の成分を測定するプローブ又はセンサに関連して使用される。
【0007】
測定されたパラメータは、この測定されたパラメータに基づいて差し迫った失速を検出するようにプログラムされたコントローラへ送られる。次いで、コントローラは失速を排除し、その結果サージを回避するために可変幾何学ディフューザーを作動させるのに必要な時期を決定する。したがって、可変幾何学ディフューザーは、失速回避、サージ回避及びこのような状態を達成させるノイズの減少の利点を提供した。
【0008】
[0007]遠心コンプレッサ内のディフューザーシステムの一部として、回転するインペラの下流側の静的圧力を回復するための多くのオプションがある。ディフューザーは、第1に、冷媒速度の接線方向の成分を減少させ、第2に、冷媒速度の半径方向の成分を減少させるように応答できる。冷媒速度が減少すると、静的圧力が増大する。性能が重大となるような主要な目標は、最小の合計圧力損失で静的圧力を回復させることである。
【0009】
[0008]遠心コンプレッサにおける伝統的なディフューザーは、羽根無し形式、羽根付き(翼、楔、高硬度、低硬度)形式、パイプ形式、トンネル形式及びチャンネル形式又はこれらの形式の組み合わせを含む。ディフューザーの各形式は、その利点及び欠点を有する。たとえば、羽根無しディフューザーは、2つの壁を備え、インペラの高圧側に羽根を有しない。羽根無しディフューザー内での静的圧力の回復は、入来速度状態と半径比率とディフューザー中の幅との間の既知の関係の結果として得られる。
【0010】
[0009]インペラの低圧側における入口ガイドベーンとしても知られるPRV、予備渦羽根等、可変速度ドライブ、高温ガスバイパス、可変ディフューザー羽根及び吸入スロットル弁を含む種々の方法が容量制御のために個々に又は組み合わせて適用されてきた。これらの容量制御方法の各々は、利点及び制限を提供する。最も普通に利用される容量制御方法は、PRV、高温ガスバイパス及び可変速度ドライブを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,872,050号明細書
【特許文献2】米国特許第7,328,587号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0010]1つの実施の形態においては、ガス圧縮システムの容量を制御する方法を開示する。ガス圧縮システムは、コンプレッサ、冷媒凝縮器及び冷媒ループ内に接続された蒸発器を含む。方法は、コンプレッサの排出部においてディフューザーを提供する工程と、ガス圧縮システムの負荷を表す値を感知する工程と、ガス圧縮システムのシステム圧力差を決定する工程と、ガス圧縮システムの容量を制御するために感知された負荷値及び決定されたシステム圧力差に応答してディフューザーの位置を制御する工程と、を含む。
【0013】
[0011]別の実施の形態においては、ガス圧縮システムは、コンプレッサ、冷媒凝縮器及び冷媒ループ内に接続された蒸発器を含む。ガス圧縮システムは、コンプレッサの排出部に位置するディフューザーを含む。ディフューザーは、コンプレッサからの冷媒の流れを規制するように配列される。主要な制御パネルガス圧縮システムは、容量制御システムを含む。容量制御システムは、退去冷液体の温度及びシステム圧力差に応答してガス圧縮システムの容量を制御するためにディフューザーの位置を調整するように配列される。
【0014】
[0012]ここに開示される実施の形態のある利点は、HVAC&Rシステムの素子及び制御の複雑さを減少させるために遠心コンプレッサ内でのPRVの排除、及び部分的な負荷でのシステム効率を改善するために、単独で又は可変速度ドライブ(VSD)と組み合わせて可変幾何学ディフューザーを使用する冷却システムにおける作動容量の減少を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、可変幾何学ディフューザーを適用できる例示的なHVAC&Rシステムを示す。
【図2】図2は、本発明で使用される遠心コンプレッサ及び可変幾何学ディフューザーの部分断面図を示す。
【図3】図3は、システムヘッド圧力に関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図4】図4は、冷水温度に関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図5】図5は、凝縮器の水の温度に関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図6A】図6Aは、システム容量及び可変幾何学ディフューザーの位置決めに関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図6B】図6Bは、コンプレッサ速度に関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図7】図7は、失速防止検出に関連するHVAC&R制御システムの部分概略線図である。
【図8】図8は、チラーユニットの制御システムの概略図である。
【図9】図9は、低硬度羽根付きディフューザーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0023]一例として、本発明を適用できる一般的なHVAC&Rチラーシステム100を図1に示す。例えばHVAC&R又は液体チラーシステム100内の遠心ガスコンプレッサ108を制御するためのHVAC&Rシステム100を以下に説明する。コンプレッサ108は、単段又は多段遠心コンプレッサとすることができる。コンプレッサ108を通る冷媒ガスの流れは、所望のパラメータを所定の範囲内に維持し、システム100内での失速及びサージ状態を阻止するために自動的に制御される。
【0017】
コンプレッサ108の各段におけるVGD119は、コンプレッサのインペラホイール201(図2参照)の排出部で冷媒ガスの流れを制御する。VGD119の配列は、マスフローを減少させ、流れ減少による失速を減少又は排除し、部分的な負荷状態で作動する場合のコンプレッサ108の作動効率を増大させる。可変速度ドライブ(VSD)120と組み合わせて可変幾何学ディフューザーを使用する容量制御は、部分的なシステム負荷でのコンプレッサ108の効率を増大させ、コンプレッサ108の出口でのPRVの必要性を排除する。代わりの実施の形態においては、VGD119は、多段コンプレッサ108における1又はそれ以上の段の排出部から排除することができる。
【0018】
[0024]図示のように、HVAC&Rチラーシステム100は、コンプレッサ108と、凝縮器112と、水チラー又は蒸発器126と、制御パネル140とを含む。制御パネル140は、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ148と、マイクロプロセッサ150と、不揮発性メモリー144と、インターフェイスボード146とを含むことができる。制御パネル140の作動を以下に一層詳細に説明する。
【0019】
[0025]コンプレッサ108は、冷媒蒸気を圧縮し、排出ライン113を通して蒸気を凝縮器112へ送給する。コンプレッサ108を駆動するため、システム100は、コンプレッサ108のためのモータ又は駆動機構152を含む。「モータ」という用語は、コンプレッサ108のための駆動機構に関して使用するが、「モータ」という用語は、モータに限定されず、モータ152の駆動に関連して使用できる可変速度ドライブ及びモータ始動器のような任意の素子を包含することを意図するものであることを理解すべきである。本発明の好ましい実施の形態においては、駆動機構又はモータ152は、電気モータ、VSD120及び関連する素子である。しかし、コンプレッサ108を駆動するために、蒸気又はガスタービン又はエンジンのような他の駆動機構114及び可変速度コントローラのような関連する素子を使用することができる。
【0020】
[0026]コンプレッサ108により凝縮器112へ送給された冷媒蒸気は、例えば空気又は水のような流体と熱交換関係となり、流体との熱交換関係の結果として冷媒液体へと位相変化する。凝縮器112からの凝縮された液体冷媒は、膨張装置22を通って蒸発器126へ流れる。膨張装置22は、高温ガスバイパス弁(HGV)134と並列に接続できる。フラッシュガスエコノマイザー又はインタークーラー132は、凝縮器116と蒸発器126との間を接続することができる。エコノマーザー132は、蒸発器126の圧力と凝縮器116の圧力との間の圧力で冷媒フラッシュガスをコンプレッサに導入する。中間圧力の冷媒ガスの導入は、熱力学サイクルの効率を改善する。好ましい実施の形態においては、凝縮器112内の冷媒蒸気は、水と熱交換関係になり、冷却塔122に接続された熱交換器116を通って流れる。凝縮器112内の冷媒蒸気は、熱交換器116内での水との熱交換関係の結果として冷媒液体へと位相変化する。
【0021】
[0027]蒸発器126は、好ましくは冷却負荷130に接続された供給ライン128S及び帰還ライン128Rを有する熱交換器128を含むことができる。熱交換器128は、蒸発器126内の複数のチューブ束(図示せず)を含むことができる。水とすることのできる補助の液体又は例えばエチレン、塩化カルシウムブライン、塩化ナトリウムブラインのような任意の他の適当な補助の液体は、帰還ライン128Rを介して蒸発器126へ入り、供給ライン128Sを介して蒸発器126から出る。蒸発器126内の液体冷媒は、熱交換器128内の補助の液体と熱交換関係になり、熱交換器128内の補助の液体の温度を冷やす。
【0022】
蒸発器126内の冷媒液体は、熱交換器128内の補助の液体との熱交換関係の結果として冷媒蒸気へと位相変化する。蒸発器126内の蒸気冷媒は、蒸発器126から出て、吸入ライン123によりコンプレッサ108へ帰還し、サイクルを完了する。凝縮器112及び蒸発器126のための好ましい実施の形態についてシステム100を説明したが、凝縮器112及び蒸発器126内の適当な位相変化が得られる限り、凝縮器112及び蒸発器126の任意の適当な形状をシステム100内で使用できることを理解すべきである。
【0023】
[0028]制御パネル140は、システム100の性能を表示する入力信号をシステム100から受け取るためにA/Dコンバータ148を有することができる。たとえば、制御パネル140により受け取られる入力信号は、蒸発器126から退去する冷えた液体の温度、蒸発器126及び凝縮器112内の冷媒圧力、及び、コンプレッサの排出通路内の聴覚的圧力即ち音響圧力測定値を含むことができる。制御パネル140は、システム100の作動を制御するためにシステム100の素子に信号を伝達するようにインターフェイスボード146を通して通信する。たとえば、制御パネル140は、存在する場合には随意の高温ガスバイパス弁134の位置を制御するために、及び、VGD119内のディフューザーリング210(例えば図2参照)の位置を制御するために、信号を伝達することができる。
【0024】
[0029]制御パネル140は、システム100の作動を制御するために、及び、システム及びコンプレッサの安定性を維持するように特定のコンプレッサ状態に応答してVGD119内のディフューザーリング210の伸長及び引き戻しの時期を決定するために、制御アルゴリズム(単数又は複数)を使用し、この安定性は、この開示の目的にとっては、失速及びサージの無い状態である。更に、制御パネル140は、システム及びコンプレッサの安定性を維持するように特定のコンプレッサ状態に応答して、存在する場合には随意の高温ガスバイパス弁(HGV)134を開閉するために制御アルゴリズム(単数又は複数)を使用することができる。1つの実施の形態においては、制御アルゴリズム(単数又は複数)は、マイクロプロセッサ150により実行できる一連のインストラクションを有する不揮発性メモリー144内に記憶されたコンピュータプログラムとすることができる。
【0025】
制御アルゴリズムは、コンピュータプログラム(単数又は複数)内で具体化され、マイクロプロセッサ150により実行されるが、当業者なら、制御アルゴリズムは、デジタル及び(又は)アナログハードウエアを使用して履行及び実行できることを理解できよう。制御アルゴリズムを実行するためにハードウエアを使用した場合、制御パネル140の対応する形状は、必要な素子を組み込むように、及び、もはや必要となくなることのある例えばA/Dコンバータ148のような任意の素子を削除するように、変更することができる。
【0026】
[0030]制御パネル140は、アナログ/デジタル(A/D)及びデジタル/アナログ(D/A)コンバータ148と、マイクロプロセッサ150と、不揮発性メモリー又は他の記憶装置144と、チラーシステム100の種々のセンサ及び制御装置と通信するためのインターフェイスボード146とを含むことができる。更に、制御パネル140は、オペレータによる制御パネル140との相互作用を許容するユーザーインターフェイス194に接続するか又はこれを組み込むことができる。オペレータは、ユーザーインターフェイス194を介して制御パネル140のためのコマンドを選択又はエンターすることができる。更に、ユーザーインターフェイス194は、オペレータのためにチラーシステム100の作動状況に関する制御パネル140からのメッセージ及び情報を表示することができる。ユーザーインターフェイス194は、チラーシステム100又は制御パネル140上に装着されるような、制御パネル140の近くに位置することができるか、又は代わりに、ユーザーインターフェイス194は、チラーシステム100から離れた別個の制御室内に位置するような、制御パネル140から遠くに位置することができる。
【0027】
[0031]マイクロプロセッサ150は、コンプレッサ108、VSD120、凝縮器112及びチラーシステム100の他の素子を含むチラーシステム100を制御するために単一の即ち主要な制御アルゴリズム又は制御システムを実行又は使用することができる。1つの実施の形態においては、制御システムは、マイクロプロセッサ150により実行できる一連のインストラクションを有するコンピュータプログラム又はソフトウエアとすることができる。別の実施の形態においては、制御システムは、当業者によりデジタル及び(又は)アナログハードウエアを使用して履行及び実行することができる。更に別の実施の形態においては、制御パネル140は、制御パネル140の出力を決定する主要なコントローラを伴う、各々別個の機能を遂行する多数のコントローラを組み込むことができる。制御アルゴリズムを実行するためにハードウエアを使用した場合、制御パネル140の対応する形状は、必要な素子を組み込むように、及び、もはや必要となくなることのある任意の素子を削除するように、変更することができる。
【0028】
[0032]チラーシステム100の制御パネル140は、チラーシステム100の素子から多くの異なるセンサ入力を受け取ることができる。制御パネル140へのセンサ入力のいくつかの例を後に提供するが、制御パネル140は、チラーシステム100の素子から任意の所望の又は適当なセンサ入力を受け取ることができることを理解すべきである。コンプレッサ108に関連する制御パネル140へのある入力は、コンプレッサ排出温度センサ、コンプレッサオイル温度センサ、コンプレッサオイル供給圧力センサ及びVGD位置センサからのものとすることができる。
【0029】
[0033]制御パネル140上でマイクロプロセッサ150により実行される主要な制御アルゴリズムは、好ましくは冷却負荷を満足させるためにコンプレッサ108から所望の容量を発生させるように、VSD120を介してのモータ152の速度従ってコンプレッサ108の速度を制御するための容量制御プログラム又はアルゴリズムを含む。容量制御プログラムは、好ましくはチラーシステム100上の冷却負荷デマンドを表す温度である蒸発器126内の退去する冷えた液体の温度に直接応答して、モータ152及びコンプレッサ108のための所望の速度を自動的に決定することができる。所望の速度を決定した後、制御パネル140は、VSD120へ制御信号を送るか又は伝達し、それによって、モータ152の速度を規制する。代わりの実施の形態においては、モータ152は、一定の電圧及び周波数において一定の速度で作動することができ、VSD120からパワーを受け取らない。
【0030】
[0034]容量制御プログラムは、チラーシステム100の選択されたパラメータを予め選択された範囲内に維持するように形状づけることができる。このようなパラメータは、原動機速度、冷液体の出口温度、原動機パワー出力、及び、最小コンプレッサ速度及び可変幾何学ディフューザー位置のためのサージ防止限界を含む。容量制御プログラムは、モータ152及びコンプレッサ108の速度を連続的に監視し、システムの冷却負荷の変化に応答してこれらの速度を変化させるために、ここで述べる種々の作動パラメータを監視するセンサからの連続的なフィードバックを使用することができる。即ち、チラーシステム100が付加的な又は減少した容量を必要とするとき、チラー100内のコンプレッサ108の作動パラメータは、新たな冷却容量要求に応答して対応的に更新又は変更される。最大の作動効率を維持するため、コンプレッサ108の作動速度は、容量制御アルゴリズムにより頻繁に変更又は修正することができる。更に、システムの負荷要求とは別に、容量制御プログラムはまた、チラーシステム100内の冷媒の容積流量を最適化し、コンプレッサ108の結果としての効率を最適化するために、冷媒システム圧力差を連続的に監視することができる。
【0031】
[0035]モータ152は、可変速度で駆動されることのできる誘導モータ152とすることができる。誘導モータ152は、2極、4極又は6極を含む任意の適当な極構成を有することができる。誘導モータ152は、例えば図1に示すコンプレッサ108のような負荷を駆動するために使用される。別の実施の形態においては、モータ152は、永久磁石ロータを備えた同期モータとすることができる。1つの実施の形態においては、システム100及び容量制御方法は、冷却システムのコンプレッサを駆動するために使用することができる。
【0032】
[0036]図2は、本開示の例示的な実施の形態のコンプレッサ108の部分断面図を示す。コンプレッサ108は、冷媒蒸気を圧縮するためのインペラ201を含む。次いで、圧縮された蒸気は、ディフューザー119を通る。ディフューザー119は、好ましくは可変幾何学形状を有する羽根無しラジアルディフューザーである。可変幾何学ディフューザー(VGD)119は、冷媒蒸気を通過させるための、ディフューザープレート206とノズルベースプレート208との間に形成されたディフューザー空間204を有する。ノズルベースプレート208は、ディフューザーリング210と一緒に使用するように形状づけられる。ディフューザーリング210は、ディフューザー空間又は通路202を通過する冷媒蒸気の速度を制御するために使用される。ディフューザーリング210は、通路を通って流れる蒸気の速度を増大させるためにディフューザー通路202内へ伸長することができ、通路を通って流れる蒸気の速度を減少させるためにディフューザー通路202から引き戻すことができる。
【0033】
ディフューザーリング210は、VGD119の可変幾何学形状を提供するために、アクチュエータ650(図6A参照)により駆動される調整機構212を使用して伸長及び引き戻しできる。VGD119の1つの形式の作動及び素子の一層詳細な説明は、2002年12月6日に出願された米国特許出願番号第10/313,364号明細書である2005年3月29日に発行された「Variable Geometry Diffuser Mechanism」という名称の上記米国特許第6,872,050号明細書において提供されており、この特許を参照としてここに組み込む。しかし、本発明において任意の適当なVGD119を使用することができることを理解すべきである。また、コンプレッサインペラ(単数又は複数)201のための冷媒の流れを制御するために、従ってコンプレッサ108の容量を制御するために、2以上のVGD119を使用することができる。
【0034】
VGD119は、コンプレッサ108外への冷媒流れが実質上妨げられないような実質上開いた位置と、コンプレッサ108外への冷媒流れが制限されるような実質上閉じた位置との間の任意の位置へ位置決めできる。閉じた位置にある場合、VGD119は、コンプレッサ108からの冷媒の流れを完全に停止できないことを理解すべきである。調整機構212は、連続的に又は別個の段階で増分的にディフューザーギャップを開閉できる。
【0035】
[0037]容量制御装置は、サージ防止手段を提供するように主として管理される。1つの実施の形態においては、容量制御プログラムは、蒸発器126からの退去冷液体温度(LCLT)の変化に応答して、モータ152(及びコンプレッサ108)の速度、及び高温ガスバイパス弁134の位置を制御することができる。図4−7は、本発明の容量制御プログラムのための容量制御プロセス(工程)の実施の形態を示す。図4は、VGD119位置制御アルゴリズム602(例えば図6A参照)に対するシステムヘッド圧力入力変数(CSYSTEM)を決定するためのシステムヘッド圧力感知制御を全体として示す。ブロック402において、システムは、蒸発器圧力を感知し、ブロック404において、システムは、凝縮器圧力を感知する。ブロック406において、ブロック402からの蒸発器圧力値は、ブロック404の凝縮器圧力値から差し引かれる。蒸発器圧力値とブロック404の凝縮器圧力値との間の差は、システムヘッド圧力を産む。システムヘッド圧力は、また飽和温度状態の差のような他の方法により画定(定義)することができる。問題のパラメータは、例えばガス又は冷媒のマスフローである。システムのヘッド圧力即ち差圧は、マスフローを表示する相似のパラメータである。ガス/冷媒のマスフローは、また温度に相似することができるか、又は、適当な器具を使用して測定することができる。
【0036】
[0038]凝縮器圧力はまた、例えば180psiの設定点値を有する比例/積分/微分(PID)排出オーバーライドのために、ブロック408へ入力される。同様に、蒸発器圧力は、例えば28psiの設定点値を有するPID(比例積分微分)排出オーバーライドのために、ブロック412に入力される。ブロック408からの出力信号及びブロック412からの出力信号は、低セレクタリレー(LSR)416への入力であり、LSR416は、記号(B)418で示すように、2つの入力変数の低い方の値を、図4における次の制御プロセス線図区分へ送る。
【0037】
[0039]次に、図4及び5を参照すると、LSR416の出力信号は、別のLSR502へ入力される。システムの退去冷水温度は、ブロック508において感知される。感知された冷水温度は、ブロック510において、プロセス変数(PV)としてPID冷水温度制御へ入力される。冷水温度は、例えば時間間隔当りのカ氏温度(°F)の変化の所定の割合で温度を制御するために、ブロック512において設定点制御出力と比較される。冷水温度設定点は、制御オペレータ515から発生する。
【0038】
[0040]PIDコントローラ510からの冷水温度制御変数出力511は、低選択リレー(LSR)504へ入力され、このリレーは、2つの入力のうちの低い方の値を選択し、低い方の値を出力値として送る。LSR504への第2の入力は、PID熱温度制御514から受け取る。熱温度制御514は、退去凝縮器温度513及び熱設定点率即ち勾配(傾斜)516から決定される。熱設定点勾配516は、凝縮器水設定点入力517を受け取る。冷水PIDコントローラ510及び熱温度制御513のうちの低い方の値は、LSR502に入力される。LSR502は、LSR504からの出力値を、ブロック(B)418からのシステムヘッド圧力を表す第2の入力と比較する。LSR502は、ブロック418及びLSR504からの2つの入力値のうちの低い方の値を選択し、選択された値をLSR506へ入力する。
【0039】
LSR506は、PIDコントローラ530から負荷限界出力を表す第2の入力を受け取る。PIDコントローラ530は、LSR506へ入力される負荷限界値536を決定するために、モータの全負荷の百分率としてのモータ負荷532を負荷限界設定点534と比較する。LSR506は、入力値502、536の小さい方の値を計算リレー(CR)540へ入力する。CR540は、チラーシステム100の容量の3つの作動範囲を決定するために使用することができる。図3−7の実施の形態においては、容量制御装置は、3つの負荷範囲を有するものとして考えることができる。低容量負荷範囲においては、システム容量は、HGV134により制御され;中間容量負荷範囲においては、システム容量は、VGD119により制御され、高容量負荷範囲においては、システム容量は、コンプレッサ速度により制御される。例示的な実施の形態は、3容量制御装置として示すが、制御信号は、一層多くの又は一層少ない範囲に分割することができる。
【0040】
容量制御の方法は、無負荷容量値に最も近い範囲の副区分に対する相対効率に基づいて指定される。例示的な実施の形態においては、HGVは、容量制御の最低効率方法に対応する。容量制御の最も効率的な方法は、負荷される容量値に関連する容量範囲の副区分で指定され、これは、例示的な実施の形態では、速度制御である。その理由は、これは一般的に容量制御の最も効率的な方法と考えられるからである。例示的な実施の形態においては、中間の範囲は最も無負荷の状態及び最も負荷された状態を表す範囲間の容量負荷範囲の中央の副区分である。VGDは、中間の容量負荷範囲において容量を制御するように指定される。コンプレッサシステムが完全無負荷から完全負荷へと負荷を増大させると、容量装置は、分割された総合範囲にわたって順々に適用される。コンプレッサ速度設定点を負荷しない又は負荷した場合、VGDの位置及びHGVの位置は、連続的に決定され、コンプレッサシステム上に与えられる負荷を供給するために、効率的な作動を得るように変調される。
【0041】
サージ防止又は失速防止アルゴリズム(例えば図6A、6B、7のアルゴリズム1及びアルゴリズム2参照)により不安定として定義されるいかなる区域もが、回避又は除外すべき不安定範囲とみなされ、コンプレッサは、このような作動範囲に入るのを阻止され、総合範囲の次の副区分が、LSR4の上流側のすべてのアルゴリズムにより指令されるようなシステムの負荷又は無負荷を満たすために使用される。
【0042】
[0041]次に、図6Aを参照すると、第1の制限リレー542は、経路620を選択し、制限リレー542の出力値を計算リレー(CR)622へ入力する。CR622は、高値選択リレー(HSR)624への入力のための容量範囲値の百分率を計算する。HSR624は、CR622からの容量範囲出力及び高温ガス弁(HGV)勾配626のうちの高い方の値を選択し、これは、時間間隔当りの百分率変化を制限する。CR622からの容量範囲出力及び変化制限アルゴリズムのHGV率又はHSR624からの勾配626のうちの大きい方の値は、HGV625へ入力される。
【0043】
[0042]制御線図の可変幾何学ディフューザー容量制御部分600は、破線で示す。CR612は、100%−200%の範囲の容量信号610を受け取る。CR612は、100%−200%の範囲を表す経路610からの入力値から100を差し引く(入力−100)ことにより範囲を標準化即ち再縮尺化する。次いで、LSR614は、第1の入力でCR612の出力を及び第2の入力で可変幾何学ディフューザー勾配範囲615を受け取り、LSR614は、第1及び第2の入力信号のうちの低い方の値を選択し、選択した値をLSR616へ入力する。LSR616において、LSR614の出力及び失速防止コントローラ710(例えば図7参照)からの出力信号715の2つの値のうちの低い方の値が選択され、選択された値は、HSR618へ入力される。HSR618は、LSR616の出力、及び、ボックス602及びリミットスイッチ603の出力を受け取り、最小サージ防止位置を計算する。最小サージ防止位置は、ボックス602内のアルゴリズム1を適用することにより発生する。ボックス602内で適用されるアルゴリズムは、次の通りである「アルゴリズム1」:

【0044】
【数1】

【0045】
[0043]アルゴリズム1は、0ないし100%の間の百分率値として必要なシステム容量Yを決定する。ここに、PD=実際のシステムヘッド圧力、PD1=最大システムヘッド圧力、PD2=最小システムヘッド圧力、MVP1=最小可変幾何学ディフューザー高ヘッド圧力、MVP2=最小可変幾何学ディフューザー低ヘッド圧力である。
【0046】
アルゴリズム1は、サージ防止位置を決定する1つの方法であって、例として提供されるが、本開示は、サージ防止位置を決定する特定の方法に限定されない。実際のシステムヘッド圧力は、図3に関して上述したように決定され、アルゴリズム602に入力される。
【0047】
[0044]HSR618に戻ると、アルゴリズム602の必要なシステム容量は、LSR616の出力と比較される。LSR616の出力は、失速防止制御信号715又はシステム容量デマンド信号の低い方を表す。リミットスイッチ603及びLSR616のうちの高い方の値は、位置コントローラ640を介して可変幾何学ディフューザーモータ650を制御するために適用される。1つの実施の形態においては、位置コントローラ640は、可変幾何学ディフューザーパルス幅変調(PWM)位置コントローラである。位置コントローラ640は、ブロック644で決定される現在の可変幾何学ディフューザー位置の基準入力に基づいて出力信号を決定する。
【0048】
[0045]上述のように、図3ないし7で示した制御体系は、コンプレッサシステムの積分容量制御を提供し、圧力についてのオーバーライド制限、デマンド制限、サージ防止制御及び初期の失速回避制御を提供する。コンプレッサシステムの容量制御は、PRVを必要とせずに、VGD119を使用して積分される。図4を参照すると、LSR4(506)の成果(resultant)は、所定のアナログ値範囲により表されるようなチラーの無負荷又は負荷に対するコマンドを提供する。この範囲の一方の極限において、コマンドは、完全無負荷を表し、この範囲の他方に極限においては、完全負荷を表す。
【0049】
計算リレー540、リミットスイッチ542、リミットスイッチ544及びリミットスイッチ546の組み合わせの実施の形態は、アナログ値範囲を所定の副区分に分割し、1つの副区分は、図4に関して上述したように、各容量制御装置のためのものである。計算リレー632は、標準化された信号をHSR634に送る。HSR634は、最小速度設定点Yを表す第2の入力信号をボックス632から受け取る。最小速度設定点Yは、次のようなボックス638内のアルゴリズム2の適用により決定される。
【0050】
【数2】

[アルゴリズム2]
【0051】
[0046]アルゴリズム2は、サージ防止計算のための最小速度Yを決定する。ここに、SPD1=最大システムヘッド圧力、SPD2=最小システムヘッド圧力、MSP1=最小速度高ヘッド圧力、MSP2=最小速度低ヘッド圧力、である。
【0052】
[0047]コンプレッサ108の最小回転速度は、全開ディフューザーギャップでのマスフローを表すコンプレッサ108の速度と比較された、コンプレッサ108のヘッド圧力要求を表す差圧により定義される。コンプレッサ108の各与えられたヘッド圧力要求に対して、コンプレッサ108内でのサージ状態の発生を阻止するのに必要な対応する最小回転速度が存在する。アルゴリズム2は、コンプレッサ108のためのサージ防止ロジックの例示的な実施の形態を表す。上述したパラメータは、経験的に又はアルゴリズム2と同様のサージ検出アルゴリズムにより決定することができる。他のサージ検出アルゴリズムは、当業者にとって既知であり、アルゴリズム2と交換することができる。
【0053】
[0048]最小ガス流れの考察は、また排出ディフューザーギャップ202の閉鎖について考慮される。各ヘッド圧力要求に対して、コンプレッサ108のインペラホイール201を通過する所定のマスフローを制御するためにディフューザーにとって必要な対応する最小開度即ちギャップ幅が存在する。ディフューザーギャップが大き過ぎる場合、ディフューザーは、コンプレッサ108を通るマスフローを妨げることによりコンプレッサ108内にサージを生じさせてしまう。アルゴリズム2は、サージ防止アルゴリズム602(図6A)の例示的な実施の形態である。
【0054】
[0049]次いで、全モータ速度の0ないし100%の間の百分率としてのコンプレッサモータ速度は、計算リレーCR632からの速度範囲百分率出力と比較され、2つの百分率のうちの大きい方の百分率は、可変速度ドライブ(VSD)に入力され、それに従ってコンプレッサ駆動モータの速度を調整する。図6の実施の形態に示すように、CR632からの速度百分率出力及びCR636のサージ防止速度値出力のうちの大きい方の値を表すHSR634の出力は、CR635に適用される。CR635は、CR634からの入力値をモータ最大速度の0ないし100%の範囲の比例信号に変換し、ブロック637で速度設定点を出力する。ブロック637からの速度設定点信号は、コンプレッサモータ速度を制御するためにVSD120に入力される。手動での速度設定点選択を許容するために、随意のセレクタスイッチ639をHSR634とCR635との間で接続することができる。
【0055】
[0050]次に図7を参照すると、失速防止制御回路700は、排出失速圧力センサ712を含む。センサ712からの信号は、可変幾何学ディフューザー失速検出ボード714に適用され、そこで、排出圧力を表す信号が処理され、プロセス変数として失速防止直接活動(DIR)コントローラ710に入力される。失速検出ボード714は制御パネル140に又は制御パネル140とデータ通信する別個の独立のモジュールに組み込むことができる。実際の排出圧力は、一組の失速関連パラメータを産むように処理され、これらのパラメータは、これらに限定されないが、ノイズ電圧デッドバンド、始動位置、最大及び最小制御変数(CV)、プローブ速度、待ち時間、反応勾配及び信号設定点失速しきい値を含む、一組の失速関連設定点値713と比較される。
【0056】
[0051]失速防止アルゴリズムは、図7において全体的に履行される。失速無負荷信号715は、失速防止コントローラ710から出力される。失速防止アルゴリズムは、上述の失速パラメータの結果として高ノイズ状態が検出されたときに、無負荷アルゴリズムとしてコンプレッサ制御体系に統合される。失速無負荷信号715は、HSR618において上述のアルゴリズム1によりオーバーライドされる。これらに限定されないが、可変幾何学ディフューザーノイズデッドバンド、可変幾何学ディフューザープローブ速度、待ち時間、反応/勾配率最大値CV及び最小値CVを含む、複数の設定点713は、コントローラ710へ挿入される。
【0057】
[0052]別の実施の形態においては、容量制御システムは、コンプレッサ108を駆動するために蒸気タービンを使用して履行することができる。蒸気タービンは、コンプレッサ108を稼動するための代わりの原動機114を提供するために、図1に示すVSD120及びモータ152と交換される。その全体を参照としてここに組み込む「INTEGRATED ADAPTIVE CAPACITY CONTROL FOR A STEAM TURBINE POWERED CHILLER UNIT」という名称の本出願人に係る米国特許第7,328,587号明細書は、タービンで稼動されるチラーユニットを開示しており、このユニットにおいては、コンプレッサに提供される冷媒の流れを制御し、それによって、コンプレッサの容量を制御する1又はそれ以上のPRV又は入口ガイドベーンが存在する。蒸気タービンで駆動されるチラーシステムは、PRVを排除し、VGD119及び図3ないし7に関して上述したような関連する制御を組み込むように修正することができる。
【0058】
[0053]図1に示す実施の形態においては、高温ガスバイパス接続部133及びHVD134は、冷媒凝縮器116及び蒸発器126を接続し、膨張装置22をバイパスする。別の実施の形態においては、高温ガスバイパス接続部133及び高温ガスバイパス弁134はコンプレッサ吸入ライン123及びコンプレッサ排出ライン113を接続することができる。高温ガスバイパス弁134は、好ましくは冷媒凝縮器116を介してコンプレッサ108の排出ライン113から蒸発器126を介してコンプレッサ108の吸入ライン123へ冷媒ガスを再循環させるようにコンプレッサ108のための再循環ラインとして使用される。高温ガスバイパス弁134は、冷媒流れが本質的に妨げられないような実質上開いた位置と、冷媒流れが制限されるような実質上閉じた位置との間の任意の位置に調整することができる。高温ガスバイパス弁134は、連続的な方法、又は、段階的又は増分的な方法で開閉することができる。高温ガスバイパス弁134が開くと、コンプレッサ108内でのサージ状態の発生を阻止するためにコンプレッサの吸入部へ供給される冷媒ガスの量を増大させることができる。
【0059】
[0054]図8は、原動機114の作動のための付加的な入力及び制御を統合するように修正された、チラーシステム100のための制御システム140の実施の形態の概略線図を示す。図8に示すように、制御パネル140は、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ148及びデジタル/アナログ(D/A)コンバータ149と、マイクロプロセッサ150と、不揮発性メモリー又は他の記憶装置144と、チラーシステム100の種々のセンサ及び制御装置との通信のためのインターフェイスボード146とを含む。更に、制御パネル140は、オペレータによる制御パネル140との相互作用を許容するユーザーインターフェイス194に接続するか又はこれを組み込むことができる。オペレータは、ユーザーインターフェイス194を介して制御パネル140のためのコマンドを選択又はエンターすることができる。
【0060】
更に、ユーザーインターフェイス194は、オペレータのためにチラーシステム100の作動状況に関する制御パネル140からのメッセージ及び情報を表示することができる。ユーザーインターフェイス194は、チラーシステム100又は制御パネル140上に装着されるような、制御パネル140の近くに位置することができるか、又は、代わりに、ユーザーインターフェイス194は、チラーシステム100から離れた別個の制御室内に位置するような、制御パネル140から遠くに位置することができる。
【0061】
[0055]マイクロプロセッサ150は、コンプレッサ108、原動機114及びチラーシステム100の他の素子を含むチラーシステム100を制御するために単一の即ち主要な制御アルゴリズム又は、制御システムを実行又は使用することができる。1つの実施の形態においては、制御システムは、マイクロプロセッサ150により実行できる一連のインストラクションを有するコンピュータプログラム又は、ソフトウエアとすることができる。別の実施の形態においては、制御システムは、当業者によりデジタル及び(又は)アナログハードウエアを使用して履行及び実行することができる。更に別の実施の形態においては、制御パネル140は、制御パネル140の出力を決定する主要なコントローラを伴う、各々別個の機能を遂行する多数のコントローラを組み込むことができる。制御アルゴリズムを実行するためにハードウエアを使用した場合、制御パネル140の対応する形状は、必要な素子を組み込むように、及び、もはや必要となくなることのある任意の素子を削除するように、変更することができる。
【0062】
[0056]チラーシステム100の制御パネル140は、チラーシステム100の素子から多くの異なるセンサ入力を受け取ることができる。制御パネル140へのセンサ入力のいくつかの例を後に提供するが、制御パネル140は、チラーシステム100の素子から任意の所望の又は適当なセンサ入力を受け取ることができることを理解すべきである。コンプレッサ108に関連する制御パネル140へのある入力は、コンプレッサ排出温度センサ、コンプレッサオイル温度センサ、コンプレッサオイル供給圧力センサ及び可変幾何学ディフューザー位置センサからのものとすることができる。
【0063】
[0057]冷媒凝縮器112に関連する制御パネル140へのある入力は、入来冷媒凝縮器水温度センサ、退去凝縮器水温度センサ、冷媒液体温度センサ、冷媒凝縮器圧力センサ、サブクーラー冷媒液体レベルセンサ及び冷媒凝縮器水流れセンサからのものとすることができる。蒸発器128に関連する制御パネル140へのある入力は、退去冷液体温度センサ、帰還冷液体温度センサ、蒸発器冷媒蒸気圧力センサ、冷媒液体温度センサ及び冷水流れセンサからものとすることができる。更に、コントローラ140への他の入力は、サーモスタット又は他の同様な温度制御システムからのHVAC&Rデマンド入力を含む。
【0064】
[0058]更に、チラーシステム100の制御パネル140は、チラーシステム100の素子のための多くの異なる制御信号を提供又は発生することができる。制御パネル140からの制御信号のある例は以後に提供されるが、制御パネル140は、チラーシステム100のための任意の所望の又は適当な制御信号を提供できることを理解すべきである。制御パネル140からのある制御信号は、コンプレッサオイルヒータ制御信号、可変速度オイルポンプ制御信号、高温ガスバイパス弁制御信号、サブクーラー冷媒液体レベル制御信号、可変幾何学ディフューザー位置制御信号を含むことができる。更に、制御パネル140は、熟練者が停止コマンドをユーザーインターフェイス194へ入力したとき、又は、記憶装置144内に記録された所定のパラメータからの逸れが検出されたときに、原動機114を停止させるために信号を送ることができる。
【0065】
[0059]主要な制御アルゴリズムは、またチラーシステム100の始動及びルーチン作動中にチラーシステム100のための種々の作動パラメータの監視機能を制御パネル140に提供する他のアルゴリズム及び(又は)ソフトウエアを含む。チラーシステム100を停止させるようなロジック機能を伴った望ましくない作動パラメータが制御パネル140内でプログラムされることがある。更に、主要な制御アルゴリズムは、チラーシステム100の多くの作動パラメータのための所定の限界を有し、これらの限界外で熟練者がチラーシステム100を手動で作動させるのを阻止することができる。
【0066】
[0060]好ましい実施の形態においては、容量制御プログラムは、蒸発器126からの退去冷液体温度(LCLT)の変化に応答して、コンプレッサ108の速度、VGD119の位置及び高温ガスバイパス弁134の位置を制御することができる。図3−7は、本発明の容量制御プログラムのための容量制御プロセスの実施の形態を示す。
【0067】
[0061]次に図9を参照すると、別の実施の形態において、一層高いコンプレッサ効率を提供し、付加的な容量制御を提供するために、VGD119及び可変速度制御と組み合わせて、羽根付きディフューザーを使用することができる。インペラ201の低圧側に位置するPRVとは異なり、羽根付きディフューザーは、インペラ201の高圧側に位置する。高圧側に羽根を有しない遠心コンプレッサは、羽根無しディフューザーとして参照する。羽根付きディフューザー174を図9に示す。
【0068】
[0062]本出願は、以下の説明に記載し、図面に示す詳細又は方法論に限定されないことを理解すべきである。また、ここで使用する専門語及び用語は説明の目的のためのものであり、限定とみなすべきではないことを理解すべきである。開示した実施の形態は、HVAC&Rチラーシステム、及び、プロセスが与えられた温度又は他の状態において冷えた液体又はガスを必要とするようなプロセス機械のためのコンプレッサ制御を特に参照したが、VGD119は、コンプレッサ108の容量を制御するために使用することができる。
【0069】
[0063]本発明のある特徴及び実施の形態のみを図示し、説明したが、当業者なら、特許請求の範囲に記載された要旨の新規な教示及び利点から逸脱することなく、多くの修正及び変更(例えば、種々の素子のサイズ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータ(例えば、温度、圧力等)の値、材料の使用、色彩及び方位等の変更)を行うことができる。それ故、特許請求の範囲は、本発明の真の精神内に入るすべてのそのような修正及び変更をカバーすることを意図するものであることを理解すべきである。
【0070】
更に、例示的な実施の形態の簡潔な説明を提供する努力において、実際の履行のすべての特徴は説明しなかったことがある(即ち、本発明を実行するのに現時点で最良と思われるものに関連しないもの、又は、特許請求の範囲の発明を可能にすることに関連しないものは説明しなかった)。任意のこのような実際の履行の開発において、任意の技術的又はデザイン的なプロジェクトにおけるように、多数の履行上の特定の決定を行うことができることを認識すべきである。このような開発努力は、複雑で、時間を費やすものであるが、それにも拘らず、この開示の利益を有する当業者にとっては、過度の経験を伴わない、デザイン、製作及び製造の日常の仕事となろう。
【符号の説明】
【0071】
100:チラーシステム、108:コンプレッサ、119:VGD、112:凝縮器、120:VSD、126:蒸発器、134:高温ガスバイパス弁、140:制御パネル、150:マイクロプロセッサ、152:モータ、201:インペラホイール、210:ディフューザーリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ループに接続されたコンプレッサ、冷媒凝縮器、及び蒸発器を有するガス圧縮システムの容量を制御する方法であって、
コンプレッサ排出部にディフューザーを設ける工程と、
ガス圧縮システムの負荷を表す値を感知する工程と、
ガス圧縮システムのシステム圧力差を決定する工程と、
ガス圧縮システムの容量を制御するために、感知された負荷値及び決定されたシステム圧力差に応答してディフューザーの位置を制御する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、更にコンプレッサを駆動するための可変速度で制御可能な状態で作動できる原動機を提供する工程と、感知された負荷値及び決定されたシステム圧力差に応答して原動機の速度を制御する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、更にガス圧縮システムの高圧側とガス圧縮システムの低圧側との間の冷媒の流れを規制するために高温ガスバイパス弁を提供する工程と、ガス圧縮システムの容量を制御するために、感知された負荷値及び決定されたシステム圧力差に応答して高温ガスバイパス弁を制御する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記原動機の速度を制御する工程が、所望のシステム負荷状態を維持するためにコンプレッサの速度を調整する工程を含み、ディフューザーの位置を制御する工程が、所定の最小位置にディフューザーを位置決めする工程を含み、所定の最小位置がシステム圧力差に基づくようにされており、高温ガスバイパス弁を制御する工程が、閉じた位置に高温ガスバイパス弁を位置決めする工程を含む、ことを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】
請求項3の方法であって、更にサージ状態又は初期の失速状態を表示する複数のガス圧縮システム作動パラメータを感知する工程と、サージ状態又は初期の失速状態の徴候を検出する工程と、サージ状態又は初期の失速状態の徴候の検出に応答して、感知された負荷値及び決定されたシステム圧力差に対する応答をオーバーライドさせる工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記ディフューザーのための所定の最小位置がサージ状態でのコンプレッサの作動を阻止することを特徴とする請求項4の方法。
【請求項7】
前記原動機の速度を制御する工程が、所定の最小速度でコンプレッサを作動させる工程を含み、所定の最小速度がシステム圧力差に基づくようにされており、ディフューザーの位置を制御する工程が、所望のシステム負荷状態を維持するためにディフューザーの位置を調整する工程を含み、高温ガスバイパス弁を制御する工程が、閉じた位置に高温ガスバイパス弁を位置決めする工程を含む、ことを特徴とする請求項3の方法。
【請求項8】
前記原動機のための所定の最小速度が、サージ状態でのコンプレッサの作動を阻止することを特徴とする請求項4の方法。
【請求項9】
請求項3の方法であって、前記原動機の速度を制御する工程が、所定の最小速度でコンプレッサを作動させる工程を含み、所定の最小速度がシステム圧力差に基づくようにされており、ディフューザーの位置を制御する工程が、所定の最小位置にディフューザーを位置決めする工程を含み、所定の最小位置がシステム圧力差に基づくようにされており、高温ガスバイパス弁を制御する工程が所望のシステム負荷状態を維持するために高温ガスバイパス弁の位置を調整する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2の方法であって、ディフューザーの位置を制御する工程が、決定されたシステム圧力差に応答してディフューザーのための最小位置を決定する工程と、可変幾何学ディフューザーの位置を決定された最小位置に設定するために制御信号をディフューザーへ送る工程とを含み、ディフューザーのための決定された最小位置が、サージ状態でのコンプレッサの作動を阻止することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、コンプレッサの速度を制御する工程が、決定されたシステム圧力差に応答してコンプレッサのための最小速度を決定する工程と、コンプレッサの速度を決定された最小速度に設定するために制御信号をコンプレッサへ送る工程と、を含み、コンプレッサのための決定された最小速度がサージ状態でのコンプレッサの作動を阻止する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ガス圧縮システムの負荷を表す値を感知する工程が、蒸発器からの退去冷液体温度を決定する工程を含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項13】
請求項1の方法であって、システム圧力差を決定する工程が、凝縮器圧力を測定する工程と、蒸発器圧力を測定する工程と、システム圧力差を決定するために、測定された凝縮器圧力から測定された蒸発器圧力を差し引く工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記原動機が蒸気タービンであることを特徴とする請求項2の方法。
【請求項15】
前記原動機が可変速度ドライブにより稼動されるモータであることを特徴とする請求項2の方法。
【請求項16】
冷媒ループに接続されたコンプレッサ、冷媒凝縮器、及び、蒸発器を有するガス圧縮システムであって、
コンプレッサの排出部に位置し、コンプレッサからの冷媒の流れを規制するように形状づけられたディフューザーと、容量制御システムを備えた主要な制御パネルガス圧縮システムと、を有し、
容量制御システムが退去冷液体温度及びシステム圧力差に応答してガス圧縮システムの容量を制御するためにディフューザーの位置を調整するように形状づけられることを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項17】
前記ガス圧縮システムが更に退去冷液体温度及びシステム圧力差に応答してコンプレッサの速度を調整するように形状づけられた容量制御システムを有することを特徴とする請求項16のガス圧縮システム。
【請求項18】
前記ガス圧縮システムが更に、ガス圧縮システムの高圧側とガス圧縮システムの低圧側との間で冷媒の流れを規制するための高温ガスバイパス弁を有し、容量制御システムが、退去冷液体温度及びシステム圧力差に応答してガス圧縮システムの容量を制御するために高温ガスバイパス弁の位置を調整するように形状づけられることを特徴とする請求項17のガス圧縮システム。
【請求項19】
請求項18のガス圧縮システムであって、制御システムが更に、サージ状態又は初期の失速状態の徴候を検出し、サージ状態又は初期の失速状態の徴候の検出に応答して、冷液体温度及び決定されたシステム圧力差に対する応答をオーバーライドさせるように形状づけられることを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項20】
請求項18のガス圧縮システムであって、容量制御システムが、サージ状態でのコンプレッサの作動を阻止するために、ディフューザー、高温ガスバイパス弁、及び、コンプレッサの速度を制御するように形状づけられることを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項21】
請求項18のガス圧縮システムであって、容量制御システムが、ガス圧縮システムの容量を制御するために、高温ガスバイパス制御モード、ディフューザー制御モード又はタービン速度制御モードのうちの1つにおいて作動するように形状づけられることを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項22】
請求項21のガス圧縮システムであって、高温ガスバイパス制御モードが所定の最小タービン速度及び所定の最小ディフューザー位置での作動を含み、ディフューザー制御モードが、閉じた高温ガスバイパス弁による所定の最小タービン速度での作動を含み、タービン速度制御モードが、閉じた高温ガスバイパス弁による所定の最小ディフューザー位置での作動を含むことを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項23】
前記ディフューザーが更に羽根を有することを特徴とする請求項16のガス圧縮システム。
【請求項24】
前記羽根が低硬度羽根及び高硬度羽根のうちの1つから選択されることを特徴とする請求項23のガス圧縮システム。
【請求項25】
請求項17のガス圧縮システムであって、蒸気タービン及び蒸気ループに接続された蒸気凝縮器を更に有し、コンプレッサが蒸気タービンにより駆動されることを特徴とするガス圧縮システム。
【請求項26】
前記コンプレッサの速度を変更するように制御できる可変速度ドライブを更に有することを特徴とする請求項16のガス圧縮システム。
【請求項27】
前記コンプレッサが複数の段を有し、複数段のコンプレッサの各段がその中に位置する排出ディフューザーを有することを特徴とする請求項16のガス圧縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−502227(P2011−502227A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532238(P2010−532238)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081747
【国際公開番号】WO2009/058975
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(598147400)ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー (224)
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
【Fターム(参考)】