説明

制御機能を有し、トランスミッタを組み込んでいるパワー半導体モジュール

【課題】 本発明の課題は、さらに制御機能が組み込まれているパワー半導体モジュールを提供することである。
【解決手段】 本発明は、基板と、この基板に配されている複数の互いに電気絶縁されている導体路と、これらの導体路に配されているパワー半導体素子と、接続装置とを備えているパワー半導体モジュールによって解決される。この接続装置は、パワー半導体素子及び/或いは導体路及び/或いは外部接触装置の回路に整合する接続のために、少なくとも2つの導電層と少なくとも1つの電気絶縁層とが交互に連続している層から成っている。導電層は接続路を形成し、少なくとも1つのトランスミッタが配され、このトランスミッタは、一体型として形成されているので接続装置の構成部分で形成されている。このトランスミッタは、少なくとも1つの送信コイルと少なくとも1つの受信コイルとから成り、これらのコイルは、夫々互いに対して同軸に配され、螺旋状の巻線を有して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御機能を有するパワー半導体モジュールに関するものである。このモジュールにおいては、パワー半導体素子だけではなく付属している駆動回路もまたパワー半導体モジュールの構成部分である。パワー半導体モジュールの駆動回路全体は、少なくとも100Vを越える比較的高圧であるために、通常2つの絶縁された回路部分、一次側と二次側とを有している。これらの回路部分間の信号伝達のために或いは電圧供給のためにもトランスミッタが頻繁に用いられる。このようなトランスミッタは一般的に2つのコイルとこれらのコイルを接続しているコアとを備えているトランスに類似して構成される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から同様に半導体に配置するためのトランスもまた周知であるが、2つのコイルを接続しているコアがない。従ってこのようなトランスは効率があまり良くない。
【0003】
さらに、一例として特許文献2から、パワー半導体モジュールの回路配置の回路整合性のある接続のために、導電層と絶縁層とが交互に連続する接続装置が周知である。この場合、導電層が構成されるので相互に電気絶縁されている接続路を形成している。このような接続装置は、パワー半導体モジュールのコンパクトな構成のために特に好ましい。その上、このような接続装置に制御構成要素と、この機能のために必要とされる抵抗及びコンデンサを導電層に配することはすでに周知である。
【0004】
パワー半導体モジュールに制御機能を組み込むことは、例えば特許文献3からも周知である。この場合、通常パワー半導体素子を配するために設けられている導体路を有する基板に、制御構成要素と必要な場合はさらに抵抗及びキャパシタのような素子とが配され、導体路を用いて回路に整合するように接続している。しかし、付加素子、とりわけパワー半導体素子より大きいサイズを有する素子は、パワー半導体モジュールの外側に配されるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE10100282A1
【特許文献2】DE10355925A1
【特許文献3】DE102006021412A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、さらに制御機能が組み込まれているパワー半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明に従い、請求項1の特徴を備えているパワー半導体モジュールによって解決される。好適実施例は従属項で述べられる。
【0008】
本発明の出発点は、基板と、この基板に配されている複数の互いに電気絶縁されている導体路と、この導体路に配されているパワー半導体素子とを備えているパワー半導体モジュールである。これらの素子は、夫々基板に付設されている導体路に導電接続している。
【0009】
パワー半導体素子及び/或いは導体路及び/或いは外部接触装置に対してさらに回路に整合する接続をするために、パワー半導体モジュールは接続装置を有している。この場合、接続装置として、少なくとも2つの導電層とこれらの間に配されている少なくとも1つの電気絶縁層との交互に連続する層が機能する。このために導電層はそれ自体が構造化(パターン化)され、互いに電気絶縁されている接続路を形成している。
【0010】
さらにパワー半導体モジュールは外部から加える信号によりパワー半導体モジュールのパワー半導体素子が駆動されることによる制御機能を有している。このために、制御構成要素と好ましくは抵抗及びコンデンサのような付加素子とが少なくとも1つの接続装置の導電層に設けられている。この少なくとも1つの制御構成要素と付加素子とは接続路を用いて電気接点接続されている。
【0011】
本発明に従うと、パワー半導体モジュールは一体型として接続装置から形成された少なくとも1つのトランスミッタを有し、このトランスミッタは接続路を用いて制御構成要素に対して導電接続している。この少なくとも1つのトランスミッタは接続装置の構成部分で一体形成されている。特に、トランスミッタの巻線は接続装置の接続路から形成されている。トランスミッタは少なくとも1つの送信コイルと少なくとも1つの受信コイルとから成ると好ましく、これらのコイルは夫々螺旋状に形成され互いに対して同軸に配されている。基本的には、複数の巻線が接続装置の1つの導電層の接続路によって形成され得る。しかし、トランスミッタの巻線が接続装置の異なる導電層に位置すると好ましい。
【0012】
このパワー半導体モジュールの特に好適なさらなる形成は各実施例の記述において述べられる。さらに、本発明の解決手段は図1〜4の実施例に基づいて、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従うパワー半導体モジュールの概略図である。
【図2】パワー半導体モジュールの本発明に従う第1実施例の部分的な平面図と断面図である。
【図3】パワー半導体モジュールの本発明に従う第2実施例の部分的な断面図である。
【図4】パワー半導体モジュールの本発明に従う第3実施例の部分的な平面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、接続装置(6)を備えている、本発明に従うパワー半導体モジュールの断面図である。この場合、いわゆるDCB基板(direct copper bonding)或いはIMS基板(絶縁型金属基板)のような周知で頻繁に用いられる基板(2)を示しているが、このタイプの基板に限定される訳ではない。この基板(2)は、絶縁層を有し、この絶縁層に導体路が配されている。ここでは、これらの導体路の1つは、三相モータを駆動するために頻繁に用いられる例えばパワートランジスタのようなパッケージされていない半導体素子(4)を支持している。
【0015】
半導体素子(4)を支持している導体路と半導体素子(4)の第1主要面の接触面との間の導電性接続のために焼結金属層が配されているのが好ましい。この焼結金属層が、溶剤と貴金属フレークとから成る懸濁液から製造する焼結プロセスの間に生じた後、より信頼性の高まった導電接続が成される。
【0016】
ここではパワートランジスタである半導体素子(4)の第2主要面は2つの接触面を有し、これらの接触面は接続装置(6)に対する導電接続のために機能し、これらの接続もまた焼結接続として形成されているのが好ましい。同様に、接続装置(6)は基板(2)の導体路との接触面(20)を有している。
【0017】
接続装置(6)自体がここでは交互に3層から成る構成を有し(図2参照のこと)、この連続層は、基板を基準にすると、第1導電層から始まり、第1絶縁層、次に再び第2導電層が続く。第1導電層は主にパワー半導体素子(4)の負荷接続のために機能する一方で、ここでは、より薄く構成された第2導電層は制御信号を伝達するために機能する。
【0018】
これらの制御信号は、負荷電流と同様に、ここでは図面上ネジ接続として形成されている外部接触装置(10)を用いて接続装置(6)に供給されている。この場合、完全に規定された制御信号が供給されるのではなく、本発明に従う、パワー半導体モジュールに組み込んだ構成部分である制御機能を用いて基本的な制御コマンドのみが供給され、対応する制御信号に変換される。このために、第2導電層には制御構成要素(8)と、図示されていない抵抗及びキャパシタのような付加素子も配されている。さらに、絶縁されたレベル変換のために、接続装置(6)自体にトランスミッタ(70)が組み込まれている。
【0019】
図2は、パワー半導体モジュールの本発明に従う第1実施例の部分的な平面図と断面図である。ここでは、接続装置(6)部分に限定して示しており、この接続装置(6)は、ここに組み込まれたトランスミッタ(70)を有している。このトランスミッタ(70)は、送信コイル(76)と受信コイル(72)とを夫々1つずつ有しており、これらのコイルは互いに対して同軸に配されている。送信コイル(76)及び受信コイル(72)の各巻線が一平面に位置しているため、第1接触位置(720、760)を夫々螺旋の外側の始点に且つ第2接触位置(722、762)を夫々螺旋の内側に有し、四角い螺旋として形成されている。
【0020】
送信コイル(76)及び受信コイル(72)の巻線は、接続路(64a)で形成されているので、接続装置(6)の他の接続路(60、64)と共にすなわち各コイルの各第1接触位置(720、760)への供給ラインと共に1つの作業工程において製造され得る。各もう1つの接続路(64b)に対して第2接触位置(722、762)を接続するために、ボンディング接続、好ましくはワイヤボンディング接続(764)がここでは設けられている。
【0021】
このトランスミッタ(70)の形成において、各コイル(72、76)の巻線は、同じ導電層、ここでは接続装置(6)の第2導電層(64)に配され、送信コイルの螺旋状接続路(76)が接続装置(6)の表面に平行である側面位置から見て受信コイル(72)の巻線と交互になるように相互配置されている。2つのコイル(72、76)の相互間の電気絶縁は、これらの巻線が形成する接続路の離間によって達成される。
【0022】
図3はパワー半導体モジュールの本発明に従う第2実施例の部分的な断面図である。ここでは再び接続装置(6)部分のみを示しており、この接続装置(6)は、ここに組み込まれたトランスミッタ(70)を有している。このトランスミッタ(70)は送信コイル(76)と受信コイル(72)とを夫々1つずつ有しており、これらのコイルは、互いに対して同軸に配されている。しかし、送信コイル(76)及び受信コイル(72)の各円形螺旋状巻線は接続装置(6)の異なる導電層(60、64)の異なる平面に位置している。この実施例では、送信コイル(76)と受信コイル(72)とは、図2とは異なって示されており、さらに異なる巻線数を有している。
【0023】
2つのコイル(72、76)の相互間の電気絶縁は、ここでは接続装置(6)の絶縁層(61、63)によって達成される。接続路から成る各巻線の他の基本構成は、図2に従う構成と一致する。
【0024】
コイル(72、76)の各第2接触位置(722、762)を接続するために、接続装置(6)はもう1つの導電層(62)を有し、この導電層(62)の接続路は各第2接触位置(722、762)に対して供給ラインを形成している。このために、このもう1つの導電層(62)は他の2つの導電層(60、64)の間に配され、夫々絶縁層(61、63)によってこれらの導電層から絶縁されている。さらに、絶縁層(61、63)の夫々は、各第2接触位置(722、762)を、夫々付設されたもう1つの導電層(62)の接続路(62)に対して導電接続するために、各通過接触部(726、766)を有している。
【0025】
図4はパワー半導体モジュールの本発明に従う第3実施例の部分的な平面図と断面図である。ここでは同様に接続装置(6)部分に限定して示し、ここでは再び3つの導電層(60、62、64)とこれらの間に夫々配されている2つの絶縁層(61、63)とを有して形成されている。第2導電層(64)ともう1つの導電層(62)とは夫々制御信号を伝達するために機能し、この実施例では、トランスミッタ(70)もまた、1つの送信コイル(76)と2つの受信コイル(72、74)とを有し、第2導電層(64)ともう1つの導電層(62)との2つの層で形成されている。
【0026】
ここではトランスミッタ(70)の3つのコイル(72、74、76)が配されるため、送信コイル(76)はもう1つの導電層(62)に配され、2つの受信コイル(72、74)は第2導電層(64)に配されている。2つの受信コイル(72、74)は、図2の2つのコイルと同様に相互に交互配置され、これにより3つのコイル(72、74、76)全ては互いに対して同軸に配されている。
【0027】
この実施例でも、送信コイル(76)或いは受信コイル(72、74)夫々の第2接触位置が少なくとも1つの絶縁層(61、63)により通過接触部を用いて直接的に或いは間接的に隣接する導電層の導体路と接続しているのが好ましい。このために通常負荷電流が流されている第1導電層(60)は適切である。第1導電層(60)が用いられるとき、明確に図示されてはいないが、第2接触位置が簡潔に且つ回路に整合するようにさらなる通過接触部を用いて第2導電層(64)或いはもう1つの導電層(62)に付設されている接続路と接続することは可能である。
【0028】
さらに、2つの受信コイルのうちの1つ(72)の、制御構成要素(8)に対する直接の接続が図示されている。コイル及び接続路、制御構成要素(8)に対して接続するために機能する接続路及びこの導電層の他の全ては、基本的に技術面において同じ方式で製造され形成される。
【符号の説明】
【0029】
2 基板
4 半導体素子
6 接続装置
8 制御構成要素
10 接触装置
20 接触面
60、62、64a/b 導電層、接続路
61、63 絶縁層
70 トランスミッタ
72、74 受信コイル
720、760 第1接触位置
722、762 第2接触位置
726、766 通過接触部
76 送信コイル
764 ワイヤボンディング接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)と、この基板(2)に配されている複数の互いに電気絶縁している導体路と、この導体路に配されているパワー半導体素子(4)と、接続装置(6)とを備えているパワー半導体モジュールであって、この接続装置(6)は、パワー半導体素子(4)及び/或いは導体路及び/或いは外部接触装置(10)の回路に整合する接続のために、少なくとも2つの導電層(60、62、64a/b)と少なくとも1つの電気絶縁層(61、63)とが交互に連続する層から成っており、
導電層(60、62、64a/b)は接続路を形成し、少なくとも1つのトランスミッタ(70)が配され、このトランスミッタ(70)は組み込まれて形成され、従って接続装置(6)の構成部分から形成されているパワー半導体モジュール。
【請求項2】
トランスミッタ(70)が少なくとも1つの送信コイル(76)と少なくとも1つの受信コイル(72、74)とから成り、これらのコイルは夫々互いに対して同軸に配され、螺旋状の巻線を備えて形成され、夫々第1接触位置(720、760)と第2接触位置(722、762)とを有している、請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
送信コイル(76)及び受信コイル(72、74)の各巻線が、接続装置(6)の接続路(60、62、64a/b)から成っている、請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
送信コイル(76)と受信コイル(72)とが、同じ導電層に相互に交互配置され、このときにこれらの2つの巻線がこれらの両方の巻線を形成する接続路(64)の離間により互いに電気絶縁されている、請求項3に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
送信コイル(76)と少なくとも1つの受信コイル(72、74)とが、2つの直接的或いは間接的に隣接する導電層(60、62、64a/b)に配され、少なくとも1つの絶縁層(61、63)により互いに電気絶縁されている、請求項3に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項6】
1つの送信コイル(76)が導電層(62)に配され、2つの受信コイル(72、74)がもう1つの導電層(64)に配され、そこでこれらの受信コイル(72、74)が相互に交互配置されている、請求項3に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項7】
送信コイル(76)或いは受信コイル(72)の第1接触位置(720、760)が、直接的に及び一体的に形成され、コイルの供給ラインを形成している接続路(60、62、64a/b)と接続している、請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項8】
送信コイル(76)或いは受信コイル(72、74)の第2接触位置(722、762)が、ボンディング接続(764)を用いて同じ導電層のもう1つの導体路(64b)と、又は、少なくとも1つの絶縁層(61、63)を通じる通過接触部(726、766)を用い、もう1つの導電層(62)の導体路と接続している、請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項9】
少なくとも1つの導電層(60、62、64a/b)に少なくとも1つの制御構成要素(8)が配され、この制御構成要素(8)の接続路及び少なくとも1つのトランスミッタ(70)と接続している、請求項1に記載のパワー半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−123953(P2010−123953A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258909(P2009−258909)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(592221975)ゼミクロン エレクトローニク ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (97)
【Fターム(参考)】