説明

制御装置

【課題】 機械の経年変化による強度低下により保守必要性や、動作異常等を検出する制御装置を得る。
【解決手段】 サーボモータで駆動される被駆動体に加速度検出手段と取り付ける。サーボモータの位置、速度のフィードバック制御を行う軸制御回路のプロセッサは、位置、速度制御処理周期毎、位置、速度フィードバック制御処理を行い電流指令を求め電流ループ処理に出力する(a1〜a6)。また、加速度検出手段より加速度検出値αfを読み取り(a7)、該加速度検出値αfがスレショルド値αs以上のとき(a8)、異常信号を出力し、アラーム表示、機械動作停止等を行う。被駆動体の加速度を加速度検出手段で直接検出するから、機械が古くなり振動が多くなったとき、被駆動体が他の物と衝突したとき、部品の破損等の機械異常が発生したときなど、異常を確実に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の加工機械における被駆動体の位置または/及び速度を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の機械においては、工具等のツールを、加工しようとするワークに対して相対的に移動させて加工を行うものである。この加工位置や速度を制御するために、被駆動体(ワーク、ワークを取り付けたテーブルや工具等のツール)をサーボモータで駆動し、通常、位置フィードバック、速度フィードバックさらには電流フィードバック制御を行い被駆動体の位置、速度を制御している。
【0003】
これらモータによって被駆動体を駆動し位置、速度を制御する機械においては、該機械は使用を続けて行くと、時間と共に少しずつ揺れやすくなり、機械の個体差によって、機械の強度が低下し、位置、速度の動作精度が低下する。工作機械においては加工精度が低下する。しかし、この長時間に亘って変化するものを検出することは困難であった。
また、機械の故障や異常の検出には、従来、機械が取り付けられた位置検出器や速度検出器からの信号やモータへの電流指令や電流検出器で検出した実電流値等に基づいてこの機械の異常や故障を検出するようにしている。例えば、工作機械において、工具摩耗や工具破損、被駆動体の他の物への衝突、干渉等の異常の発生を、工具やワークを駆動するモータのモータ電流の大きさを判別してこの異常を検出している。
【0004】
また、被駆動体の速度、加速度が急激に変化するとき、この急激な変化に起因して被駆動体に振動が発生する場合があり、その対策として、被駆動体の加速度を検出する加速度センサを設け、該加速度センサからの信号を速度フィードバック制御により出力される電流指令から差し引き、電流フィードバック制御の電流指令として、振動を抑制する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−91482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機械の長期間に亘って使用することにより発生する機械の揺れや、機械の強度の低下を検出することは困難であった。
また、位置検出器や速度検出器、さらには電流検出器により検出した情報に基づいて機械の故障や異常を検出することは、機械の状況の観測場所が限られていることから、異常が検出できなかったり、負荷の推定誤差の影響で異常を誤検出する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、機械の経年変化による強度低下等により保守の必要性や、動作異常等を検出する制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、請求項1に係る発明は、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段で検出される加速度検出値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを有し、被駆動体の異常を検出するようにした。また、請求項2に係る発明は、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段で検出される加速度検出値を平均した値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを有し、被駆動体の異常を検出するようにした。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記被駆動体の位置または速度を検出する手段で検出された位置または速度に基づいて加速度を推定する手段と、該推定した加速度推定値と前記加速度検出手段から得られた加速度検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備え、被駆動体の異常を検出するようにした。請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明における被駆動体の位置または速度を検出する手段で検出された位置または速度の代わりに、位置指令または速度指令を用いるものとした。
【0010】
請求項5に係る発明は、少なくとも被駆動体の速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出値から加速度検出手段が取り付けられている箇所の速度を推定する手段と、推定された速度推定値と前記速度検出手段が検出する速度検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備え、被駆動体の異常を検出するようにした。また、請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記速度検出手段が検出する速度検出値の代わりに、速度指令値を用いるものとした。
【0011】
請求項7に係る発明は、少なくとも被駆動体の位置を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出値から加速度検出手段が取り付けられている箇所の位置を推定する手段と、推定された位置推定値と前記位置検出手段が検出する位置検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備え、被駆動体の異常を検出するようにした。また、請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記位置検出手段が検出する位置検出値の代わりに、位置指令値を用いるものとした。
【0012】
請求項9に係る発明は、被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体のベッドの加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の加速度検出値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上のときに異常を判断する手段とを備え、機械異常を検出するようにした。また、請求項10に係る発明は、被駆動体の複数箇所に、各箇所での加速度を検出する加速度検出手段と、該各加速度検出手段で検出された各箇所の加速度検出値を比較して、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備え、被駆動体の異常を検出できるようにした。
【0013】
請求項11に係る発明は、上述した発明において、異常であることを判断した場合に、異常状況またはアラームメッセージを通知するようにしたものであり、請求項12に係る発明は、異常であることを判断した場合に、減速停止、非常停止または退避動作を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
被駆動体等に設けた加速度検出手段によって検出した加速度検出値に基づいて、被駆動体等の振動等を検出し、異常を検出するようにしたから、正確に異常を検出できるものである。また、加速度検出手段は任意の最適な位置に配置することによって、より正確に、必要とする部位の振動等を検出できるものである。そして、この加速度検出手段で検出された加速度検出値に基づいて、機械のメンテナンス等を実施する時期を判別することができ、機械の故障等を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を工作機械の制御装置として数値制御装置に適用したときの例をとって、以下説明する。
図1は本発明の一実施形態の要部ブロック図である。CPU11は数値制御を実行する制御装置10を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステムプログラムを、バス19を介して読み出し、該システムプログラムに従って制御装置全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ及びCRTや液晶等で構成される表示器とキーボート等で構成される手動入力手段とからなる表示器/手動入力手段ユニット20を介してオペレータが入力した各種データが格納される。CMOSメモリ14は図示しないバッテリでバックアップされ、制御装置10の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。CMOSメモリ14中には、インタフェース15を介して読み込まれた加工プログラムや表示器/手動入力手段ユニット20を介して入力された加工プログラム等が記憶される。また、ROM12には、各種システムプログラムが予め格納されている。
【0016】
インタフェース15は、制御装置10と外部機器との接続を可能とするものである。PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、制御装置10に内蔵されたシーケンスプログラムで制御対象物の工作機械の補助装置(例えば、工具交換装置のアクチュエータ等)にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、制御装置10で制御される制御対象物である工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチ等の信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU11に渡す。
各軸の軸制御回路30〜32はCPU11からの各軸の移動指令を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40〜42に出力する。サーボアンプ40〜42はこの指令を受けて、機械(制御対象物)の各軸被駆動体のサーボモータ50〜52を駆動する。各軸のサーボモータ50〜52は位置・速度検出器70〜72を内蔵し、この位置・速度検出器70〜72からの位置、速度フィードバック信号を軸制御回路30〜32にフィードバックし、各軸制御回路30〜32で位置・速度のフィードバック制御を行う。この軸制御回路30〜32はプロセッサとROM,RAM等のメモリ等で構成され、位置、速度、さらには電流のフィードバック制御を行い、各軸のサーボモータ50〜52の位置、速度、電流を制御し、各軸サーボモータ50〜52で駆動される被駆動体(ワーク、テーブルや工具軸)60〜62の位置、速度を制御する。なお、位置・速度検出器70〜72を各軸サーボモータにそれぞれ取り付けるのではなく、被駆動体60〜62に設けて、直接被駆動体の位置、速度を検出しフィードバックするようにしてもよいものである。また、図1では、主軸を駆動する制御系については記載を省略している。
【0017】
なお、上述した各構成は従来の数値制御装置及び数値制御装置で制御される機械の構成と同じである。本実施形態においては、さらに、各軸の被駆動体(ワーク、テーブルや工具軸)に加速度検出手段80〜82がそれぞれ配設され、該加速度検出手段80〜82で検出した加速度検出値がそれぞれの軸制御回路30〜32にフィードバックされている点、及び該フィードバックされた加速度検出値に基づいて後述する異常検出処理がなされる点で、従来の数値制御装置と異なるものである。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態における各制御回路30〜32のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
この第1の実施形態は、各制御回路30〜32のプロセッサが、自己のサーボモータが駆動する被駆動体に振動が発生し異常動作をしていないかを判断し、異常の場合、異常信号を上位プロセッサであるCPU11に出力するようにしたものである。
【0019】
各制御回路30〜32のプロセッサは、移動指令の分配処理等の数値制御処理を行うCPU11からの移動指令値Pcを読み取り、かつ位置・速度検出器70〜72からの位置フィードバック値Pfを読み込み、位置ループ処理(位置フィードバック処理)して速度指令Vcを求める(ステップa1,a2,a3)。また、位置・速度検出器70〜72からの速度フィードバック値Vfを読み込み、該速度フィードバック値Vfと、求められた速度指令Vcとにより、速度ループ処理(速度フィードバック処理)して電流指令を求め、電流ループ処理へ出力する(ステップa4,a5,a6)。なお、この電流指令を求めて電流ループ処理へ出力するまでの処理は、従来の軸制御回路による処理(位置、速度ループ処理)と同一である。また、電流ループ処理も従来と同一である。
【0020】
次に、本実施形態においては、加速度検出手段80〜82の出力である加速度検出値αfを読み出し(ステップa7)、この読み出した加速度検出値αfが予め設定されているスレショルド値αs以上か判断する(ステップa8)。加速度検出値αfがスレショルド値αs以上でなければ、当該位置・速度制御処理周期の処理を終了する。しかし、加速度検出値αfがスレショルド値αs以上の場合は、上位プロセッサである移動指令の分配等の数値制御処理を行うCPU11に異常信号、さらには検出加速度値αfを出力し、当該位置・速度制御処理周期の処理を終了する(ステップa9)。
【0021】
CPU11はこの異常信号を受けて、表示器/手動入力手段ユニット20の表示器にアラームメッセージや、この異常信号を発信した軸等を表示する。さらに、機械を減速停止または非常停止させる。また、機械異常信号と共に検出した加速度値αfをもCPU11に送り、この加速度値αfをも表示するようにする。機械を長年使用し続けて、機械強度等の低下によって、被駆動体に振動が発生しているような場合には、検出加速度値αfはスレショルド値αsを越える。または、被駆動体が他の物に衝突したり、部品が破損したり、工作機械においては工具が破損したときには、検出加速度値αfは大きな値となるので、表示器に表示された検出加速度値αfに基づいて、機械の保守を要求する異常か、衝突、工具や部品の破損等による異常を判別することができる。
【0022】
図3は、本発明の第2の実施形態における各制御回路30〜32のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。この第2の実施形態は、検出加速度値αfの平均値αaを求めて、該平均値αaに基づいて異常か否かを判断するものであり、この点が第1の実施形態と相違するのみである。
図2に示したステップa1〜ステップa7と同一の処理のステップb1〜ステップb7を行い、その後、アキュムレータAに検出加速度値αfを加算し、カウンタCを1インクリメントする(ステップb8,b9)。なお、アキュムレータA及びカウンタCは初期設定で最初は「0」にセットされている。
【0023】
次に、カウンタCの値が設定値Cs以上か判断し(ステップb10)、設定値Cs以上でなければ、当該位置、速度制御処理周期の処理を終了する。以下、位置、速度制御処理周期毎にステップb1〜ステップb10の処理を実行し、ステップb10で、カウンタCの値が設定値Csに達したことが検出されると、アキュムレータAの値をカウンタCの値で除して検出加速度値αfの平均値αaを求める(ステップb11)。そして、アキュムレータA、カウンタCを「0」にクリアし(ステップb12)、検出加速度値の平均値αaが予め設定されているスレショルド値αs以上かを判断する(ステップb13)、スレショルド値αsを越えてなければ、当該周期の処理を終了する。一方、スレショルド値αs以上の場合は、CPU11に異常信号、さらには求めた検出加速度値の平均値αaを送信する。
CPU11はこの信号を受けて、表示器に異常発生のメッセージ等を表示する。さらには、送られて来た検出加速度値の平均値αaを表示して、作業員に異常を知らせる。また機械を減速停止または非常停止させる。
【0024】
図4は、本発明の第3の実施形態における各制御回路30〜32のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。この第3の実施形態は、位置・速度検出器70〜72で検出し、フィードバックされる速度フィードバック値より加速度を推定し、この推定加速度と検出加速度値αfとの差によって、異常を検出するものである。
【0025】
即ち、加速度検出手段80〜82で検出される加速度は該加速度検出手段80〜82が取り付けられた位置における加速度を示しており、速度フィードバック値より推定される加速度は、速度検出器が配設された位置での加速度を示すものである。被駆動体を駆動するサーボモータに速度検出器を取り付けていれば、該サーボモータの加速度を示すものである。また、被駆動体に速度検出器を取り付けていれば、該取り付け位置の被駆動体の加速度を示すものである。よって、推定加速度と検出加速度に差があることは、被駆動体の位置によって加速度が異なることを意味し、被駆動体に振動等の異常が発生していることを意味する。この実施形態は、このような被駆動体の位置によって加速度の差異が所定値以上になったとき異常として検出するものである。そのため、加速度検出手段80〜82は、加工や動作に影響を与える被駆動体の最適な位置を選択して配置する。
【0026】
図4において、ステップc1〜c7は、第1の実施形態のステップa1〜a7、第2の実施形態のステップb1〜b7と同一である。
ステップc8で、ステップc4で求めた速度フィードバック値VfからレジスタR(Vf)に記憶する前周期の速度フィードバック値を減じて速度差を求め、この速度差をこの位置、速度制御周期ΔTで除して推定加速度αcを求める。次に、レジスタに当該周期で検出した速度フィードバック値Vfを格納し、前周期の速度フィードバック値R(Vf)として記憶する(ステップc9)。そして、ステップc7で求めた加速度検出手段80〜82で検出した検出加速度値αfと、ステップc8で求めた推定加速度値αcとの差の絶対値が予め設定されているスレショルド値αs以上か判断する(ステップc10)。スレショルド値αsを越えてなれば、当該周期の処理はこのまま終了する。また、スレショルド値αsを越えていれば、異常信号をCPU11に出力する(ステップc11)。さらには、ステップc7で検出した検出加速度値αf、検出加速度値αfと推定加速度値αcとの差をもCPU11に出力する。CPU11は、この異常信号を受けて、表示器に異常メッセージを表示するとともに、検出加速度値αf、検出加速度値αfと推定加速度値αcとの差の絶対値等を表示し、作業員に知らせる。また、機械を減速停止または非常停止させる。
【0027】
図5は、本発明の第4の実施形態における各制御回路30〜32のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。この第4の実施形態は、加速度検出手段80〜82で検出される検出加速度値αfより速度を推定し、この推定速度と位置・速度検出器70〜72で検出した検出速度によって、異常を判断するものである。この実施形態は、加速度検出手段80〜82が配置された被駆動体の位置における速度と、速度検出器が配置された位置における速度との差が所定値以上に達したことをもって異常を判断するもので、被駆動体の位置によって速度差があることは、被駆動体に振動等が発生していることを意味し、これを異常として検出するものである。この実施形態においても、加速度検出手段80〜82は、加工や動作に影響を与える被駆動体の最適な位置に配置するようにする。
【0028】
図5において、ステップd1〜d7は、第1の実施形態のステップa1〜a7の処理と同じである。ステップd8の処理において、ステップd7で求めた加速度検出値αfを、加速度検出値を積算するレジスタに積算し、推定加速度V(αf)を求める。そして、該推定加速度V(αf)と、ステップ4で求めた位置・速度検出器70〜72で検出され実速度の速度フィードバック値Vfとの差の絶対値が予め設定されているスレショルド値Vs以上か判断する(ステップd9)。スレショルド値Vsを越えてなれば、当該周期の処理はこのまま終了する。また、スレショルド値Vsを越えていれば、異常信号をCPU11に出力する。さらには、ステップd7で検出した検出加速度値αf等をもCPU11に出力する(ステップd10)。CPU11は、この異常信号を受けて、表示器に異常メッセージを表示するとともに、検出加速度値αf等を表示し、作業員に知らせる。また、機械を減速停止または非常停止させる。
【0029】
図6は、本発明の第5の実施形態における各制御回路30〜32のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。この第5の実施形態は、加速度検出手段80〜82で検出される検出加速度値αfより位置を推定し、この推定位置と位置検出器で検出した検出位置の差の絶対値によって、異常を判断するものである。この実施形態においても、加速度検出手段を加工や動作に影響を与える被駆動体の最適な位置に配置し、該加速度検出手段で求められた加速度値に基づいた推定位置と位置検出器によって求めた位置に差があることは、被駆動体に振動等の異常があることを意味することから、これによって、異常を検出するものである。
【0030】
図6において、ステップe1〜d3及びステップe5〜e8は、第1の実施形態のステップa1〜a3、ステップa4〜a7の処理と同じである。この実施形態では、位置フィードバック値PfをレジスタR(Pf)に積算し、位置を求める処理のステップe3が追加されているものである。
【0031】
ステップe9において、検出加速度値αfを、推定速度を求めるレジスタに積算して推定速度V(αf)を求める。さらに、推定位置を求めるレジスタに推定速度V(αf)を積算して推定位置P(αf)を求める(ステップe10)。この求めた推定位置P(αf)とステップe3で求めた位置R(Pf)との差の絶対値が予め設定されているスレショルド値Ps以上か判断する(ステップe11)。スレショルド値Psを越えてなれば、当該周期の処理はこのまま終了する。また、スレショルド値Psを越えていれば、異常信号をCPU11に出力する。さらには、ステップe8で検出した検出加速度値αf等をもCPU11に出力する(ステップe12)。CPU11は、この異常信号を受けて、表示器に異常メッセージを表示するとともに、検出加速度値αf等を表示し、作業員に知らせる。また、機械を減速停止または非常停止させる。
【0032】
なお、上述した第3〜第5の実施形態(図4〜図6)では、速度フィードバックまたは位置フィードバックの情報を利用したが、この位置、速度のフィードバックの代わりに位置指令、速度指令を用いてもよい。即ち図4に示す第3の実施形態において、速度フィードバックVfの代わりに速度指令Vcを用いて推定加速度αcを求めてもよい。また、図5に示す第4の実施形態では、速度フィードバックVfの代わりに速度指令Vcを用いてステップd9の判断を行ってもよい。さらに、図6に示す第5の実施形態において、移動指令Pcを積算し指令位置を求め、この指令位置を、位置フィードバック値を積算して得られた位置R(Pf)の代わりに用いてもよいものである。
【0033】
上述した第1〜第5の実施形態は、サーボモータで駆動される被駆動体60〜62に加速度検出手段80〜82をそれぞれ取り付け、この加速度検出手段80〜82で検出された検出加速度値等に基づいて機械異常を検出したが、次に示す第6の実施形態は、加速度検出手段を、被駆動体が取り付けられ該被駆動体が移動する機械のベッド(基台)に取り付けて、機械異常を検出するものである。
【0034】
長年の機械の使用によって機械部品が経年変化し、機械強度が低下したときは、被駆動体の移動によって該被駆動体を支える機械のベッドが振動する場合がある。また、被駆動体が他の部品と衝突したり、干渉すると、その影響で機械ベッドも振動する。この振動を検出して機械異常を検出しようとしたものがこの第6の実施形態である。
【0035】
この第6の実施形態では、図示していないが、機械のベッドに加速度検出手段を取り付け、該加速度検出手段の出力をインタフェースを介して制御装置10に取り込み、制御装置10のCPU11によって、取り込まれた加速度検出値αfによって機械異常を判別するようにしたものである。
【0036】
図7は、この第6の実施形態においてCPU11が所定周期毎に実施する機械異常判別処理のフローチャートである。
CPU11は、インタフェースを介して加速度検出手段から出力される加速度検出値αfを読み込み(f1)、該加速度検出値αfの絶対値が予め設定されているスレショルド値αs以上か判断し(ステップf2)、スレショルド値αs以上でなければ、この処理を終了し、スレショルド値αs以上であると、以上信号を出力し、表示器/手動入力手段ユニット20の表示器にアラームメッセージを表示するとともに、このときの加速度検出値αfをも表示し、機械を減速停止または非常停止させる。即ち、機械ベッドが振動し、加速度検出手段でこの振動による加速度が検出され、その加速度がスレショルド値αs以上になることによって、機械異常を検出するものである。
【0037】
図8は、本発明の第7の実施形態のフローチャートである。この第8の実施形態は、被駆動体の異なった位置にそれぞれ加速度検出手段を取り付けて、機械異常を検出するものである。被駆動体に振動が発生すると、その振動により発生する加速度は被駆動体の位置によって異なる。そのため、被駆動体の異なった位置に配設されている加速度検出手段で検出した各加速度検出値によって、被駆動体の振動を検出して機械異常を検出するものである。この第7の実施形態では、被駆動体の両端部分にそれぞれ加速度検出手段を取り付け、この2つの加速度検出手段からの検出加速度値によって機械異常を判別するようにしている。
【0038】
図8に示すフローチャートは、各軸の被駆動体を駆動するサーボモータの軸制御回路30〜32のプロセッサによって位置、速度制御周期毎に実行してもよい処理であるが、本実施形態では、制御装置10のメインのプロセッサであるCPU11によって、この図8に示す処理を所定周期毎実行するものとした。工作機械等において、ワークが取り付けられるテーブルは、X軸、Y軸のサーボモータで駆動されるものであるが、X軸、Y軸のサーボモータでそれぞれ駆動されるそれぞれの被駆動体ではなく、複数(X軸、Y軸)のサーボモータで駆動される最終的な被駆動体に加速度検出手段を取り付けて、最終的に位置、速度を制御する被駆動体に発生する振動を検出するようにした。そのために各加速度検出手段の出力を、インタフェースを介して制御装置10に取り込むように構成する。
【0039】
そして、CPU11は、2つの加速度検出手段から送られてくる加速度検出値αf1,αf2を読み取り(ステップg1)、2つの加速度検出値の差の絶対値|αf1−αf2|が設定されているスレショルド値δs以上か判断し(ステップg2)、スレショルド値δs以上でなければ、この処理を終了し、スレショルド値δs以上であると、異常信号を出力し、表示器/手動入力手段ユニット20の表示器にアラームメッセージを表示するとともに、このときの加速度検出値αf1,αf2をも表示する。また、機械を減速停止または非常停止させる。これによって被駆動体が振動して機械異常であることが検出できるものである。
【0040】
上述した各実施形態では、機械異常と判断されたとき、表示器/手動入力手段ユニット20の表示器にアラームメッセージ等を表示して作業員に知らせ、減速停止または非常停止をするようにしたが、異常が検出されたとき、従来から行っている退避動作を行うようにしてもよいものである。
【0041】
図9は、この退避動作をも行うときの制御装置10のCPU11が所定周期毎に実施する処理のフローチャートである。まず、退避処理を実行させるか否かをパラメータ等で設定しておく。
CPU11は、異常信号が入力されたか(第1〜第5の実施形態の場合)または、異常が検出されたか(第6,第7の実施形態の場合)判断し(ステップh1)、異常が検出されなければ、当該周期の処理をこのまま終了する。また、異常が検出された場合には、退避実行が設定されているか否か判断し(ステップh2)、退避実行が設定されていれば、従来から実行されているアラーム表示を行うとともに退避処理を実行する。(ステップh3)。また、退避実行が設定されていなければアラーム表示を行い機械を減速停止または非常停止させる(ステップh4)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の制御装置の要部ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における各軸制御回路のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態における各軸制御回路のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第3の実施形態における各軸制御回路のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
【図5】本発明の第4の実施形態における各軸制御回路のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第5の実施形態における各軸制御回路のプロセッサが位置速度制御処理周期毎に実施する処理のフローチャートである。
【図7】本発明の第6の実施形態において制御装置のメインCPUが所定周期毎に実施する機械異常判別処理のフローチャートである。
【図8】本発明の第7の実施形態において制御装置のメインCPUが所定周期毎に実施する機械異常判別処理のフローチャートである。
【図9】本発明の第8の実施形態において制御装置のメインCPUが所定周期毎に実施する機械異常時の退避処理等の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 制御装置
50,51,52 サーボモータ
60,61,62 被駆動体
70,71,72 位置・速度検出器
80,81,82 加速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段で検出される加速度検出値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段で検出される加速度検出値を平均した値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、前記被駆動体の位置または速度を検出する手段で検出された位置または速度に基づいて加速度を推定する手段と、該推定した加速度推定値と前記加速度検出手段から得られた加速度検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
被駆動体の位置または速度を検出する手段で検出された位置または速度の代わりに位置指令または速度指令を用いる請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
少なくとも被駆動体の速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出値から加速度検出手段が取り付けられている箇所の速度を推定する手段と、推定された速度推定値と前記速度検出手段が検出する速度検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
前記速度検出手段が検出する速度検出値の代わりに速度指令値を用いる請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
少なくとも被駆動体の位置を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出値から加速度検出手段が取り付けられている箇所の位置を推定する手段と、推定された位置推定値と前記位置検出手段が検出する位置検出値とを比較し、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
前記位置検出手段が検出する位置検出値の代わりに位置指令値を用いる請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
被駆動体の位置または/及び速度を検出する検出手段を有し、被駆動体の位置または/及び速度を制御する加工機械の制御装置において、被駆動体のベッドの加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の加速度検出値の絶対値が予め定めたスレショルド値以上のときに異常を判断する手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
被駆動体の複数箇所に、各箇所での加速度を検出する加速度検出手段と、該各加速度検出手段で検出された各箇所の加速度検出値を比較して、その差の絶対値が予め定めたスレショルド値以上になったことを以って異常を判断する手段とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項11】
異常であることを判断した場合に、異常状況またはアラームメッセージを通知することを特徴とする請求項1乃至10の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
異常であることを判断した場合に、減速停止、非常停止または退避動作を行うことを特徴とする請求項1乃至10の内いずれか1項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−154998(P2006−154998A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341705(P2004−341705)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】