説明

制御装置

【課題】ワインドアップ現象を起こさずに飽和要素を含む制御対象に対し制御機能を限界まで発揮する。
【解決手段】線形制御器5が、制御対象2の操作量を生成するための線形操作量Ueqを生成すると共に、非線形操作量Unlに基づいて線形操作量Ueqの大きさを制限するの。これにより、非線形操作量Unlの大きさを考慮する必要がなくなるので、非線形制御器6はワインドアップしなくなる。またこの結果、非線形制御器6でワインドアップ現象を考慮する必要がなくなるので、線形制御器5でのみ飽和時の影響を考慮すればよくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和特性を有する制御対象を制御するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多くの制御対象には、アクチュエータの最大駆動力やトルク,電気回路の最大電流,機構の有限ストローク長等のように、単数又は複数の飽和要素(拘束条件)が含まれる。そしてこのような飽和要素を考慮せずに制御装置を設計した場合には、制御出力のオーバーシュートやシステムの不安定化が生じることがある。このような背景から、システム設計者は、飽和要素の飽和値を固定値とみなし、固定飽和値を用いた人工的な飽和要素を制御補償器に挿入することにより、飽和要素を考慮して制御装置を設計するようにしている(例えば特許文献1,2,3,4参照)。
【特許文献1】特開平5−143105号公報
【特許文献2】特開2001−195102号公報
【特許文献3】特開平1−173201号公報
【特許文献4】特開2004−86858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般的なフィードバック制御では、追従性を確保するために積分演算を含む補償器(積分補償要素)が制御補償器に挿入されるが、積分補償要素が制御補償器に挿入されている場合に飽和要素を制御補償器に挿入した場合には、飽和時においても積分演算が継続されることになるために、位置,速度,電流,温度等の制御変数が目標値に追従せずに時間と共にオーバーシュートや振動的な振る舞いをする、所謂ワインドアップ現象が生じやすい。このような背景から、フィードバック制御系では、ワインドアップ現象を起こさずに飽和特性を有する制御対象に対し制御機能を限界まで発揮できる制御装置の提供が望まれている。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ワインドアップ現象を起こさずに飽和要素を含む制御対象に対し制御機能を限界まで発揮することが可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、制御対象の目標出力値、出力値、及び操作量のうちの少なくとも一つを含む制御情報に基づいて制御対象の操作量を生成するための第1中間値を生成する第1中間値生成手段と、制御情報に基づいて制御対象の操作量を生成するための第2中間値を生成すると共に、第1中間値に基づいて第2中間値の大きさを制限する第2中間値生成手段と、第1中間値と第2中間値に基づいて制御対象の操作量を生成し、制御対象に生成した操作量を与える操作量生成手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る制御装置によれば、制御対象の操作量を生成するための第1中間値に基づいて制御対象の操作量を生成するための第2中間値の大きさを制限するので、第1中間値の大きさを考慮する必要がなくなり、第1中間値生成手段ではワインドアップ現象は発生しなくなる。またこの結果、第1中間値生成手段でワインドアップ現象を考慮する必要がなくなるので、第2中間値生成手段でのみ飽和時の影響を考慮すればよくなる。従って、本発明に係る制御装置によれば、ワインドアップ現象を起こさずに飽和要素を含む制御対象に対し制御機能を限界まで発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施形態となる制御装置の構成について説明する。
【実施例1】
【0008】
〔制御装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる制御装置1は、図1に示すように、目標値と制御対象2の出力の差を制御偏差として出力する比較器3と、比較器3から出力された制御偏差の積分演算を行う積分演算器(1/s)と、目標値,制御偏差の積分演算値,及び制御対象2の操作量を用いて状態変数ベクトルを推定するオブザーバ(観測器)4と、目標値,制御偏差の積分演算値,及び制御対象2の出力に従って制御対象2の操作量を生成するための線形入力を第2中間値として演算する線形制御器5と、オブザーバ4により推定された状態変数ベクトルに従って制御対象2の操作量を生成するための非線形入力を第1中間値として演算する非線形制御器6と、第1中間値と第2中間値を加算又は減算した値を操作量として制御対象2に与える加算器7とを備え、フィードバック入力により構成される線形入力と非線形入力から成る操作量を飽和特性を有する制御対象2に与える。なお、振動制御等のように制御対象2の出力を0にしたい制御の場合には上記積分演算器(1/s)は設けなくてもよい。
【0009】
上記線形制御器5は、図1に示すように、目標値,制御偏差の積分演算値,及び制御対象2の出力を用いて第3中間値を生成する線形な伝達関数行列Nと、リミッタ8から出力される第2中間値を用いて第4中間値を生成する線形な伝達関数行列Rと、第3中間値と第4中間値に基づいて第5中間値をリミッタ8に与える加算器9と、第5中間値の大きさに基づいて大きさを制限しながら第2中間値を出力するリミッタ8とを備え、アンチワインドアップ制御系を構成する一手法である左既約分解により表現されている。すなわち、線形制御器5が線形な伝達関数行列Cで表現される場合、伝達関数行列C,N,Rの間には以下の数式2に示す関係が成り立つ。
【数2】

【0010】
なお、本実施形態では、非線形制御器6及び線形制御器5は、スライディングモード制御理論を適用し、スライディングモード制御理論により演算される非線形入力及び線形入力をそれぞれ第1中間値及び第2中間値として演算する。但し、非線形制御器6に非線形制御理論を適用した場合、線形制御理論において適用可能な左既約分解表現をそのまま用いることができない。
【0011】
そこで、この制御装置1では、スライディングモード制御における線形な操作量である等価制御入力Ueqを演算する以下に示す数式3と非線形な操作量である非線形入力Unlを演算する以下に示す数式4を設け、左既約分解により表現するのは線形な等価制御系のみとし、非線形制御系に対してはアンチワインドアップ機能を付加しないこととする。
【数3】

【数4】

【0012】
なお、本実施形態は、非線形制御理論の一つであるスライディングモード制御理論を適用したものであるが、線形演算により演算される操作量が含まれる操作量演算方法であれば、本発明は、例えばフィードフォワード制御と線形なフィードバック制御を併用した場合(この場合、フィードフォワード制御はマップやテーブル等を用いることができる)等、任意の制御系に適用することができる。また、この制御は、連続時間,離散時間を問わないため、連続時間制御理論又は離散時間制御理論のどちらにも適用することができる。
【0013】
また、線形制御器5,非線形制御器6,及び加算器7はそれぞれ、図2に示す本発明に係る第2中間値生成手段12,第1中間値生成手段13,及び操作量生成手段14として機能する。また、伝達関数行列N,伝達関数行列R,リミッタ8,及び加算器9はそれぞれ、図3に示す本発明に係る第3中間値生成手段21,第4中間値生成手段22,第5中間値生成手段23,及び第2中間値制限手段24として機能する。
【0014】
そして、このような構成を有する制御装置1は、以下に示す操作量生成処理を実行することにより、ワインドアップ現象を生じさせることなく飽和特性を有する制御対象2に対し制御機能を限界まで発揮することを可能にする。以下、図4に示すフローチャートを参照して、この操作量生成処理を実行する際の制御装置1の動作について詳しく説明する。
【0015】
〔操作量生成処理〕
図4に示すフローチャートは、オブザーバ4に目標値,制御偏差,及び制御対象2の操作量が入力されるのに応じて開始となり、操作量生成処理はステップS1の処理に進む。
【0016】
ステップS1の処理では、オブザーバ4が、目標値,制御偏差の積分演算値,制御対象2の出力,及び制御対象2の操作量を用いて状態変数ベクトルXを推定する。これにより、ステップS1の処理は完了し、操作量生成処理はステップS2とステップS3の処理に進む。
【0017】
ステップS2の処理では、線形制御器5が、上述の数式1を利用して線形操作量(等価制御入力)Ueqを演算する。これにより、ステップS2の処理は完了し、操作量生成処理はステップS5の処理に進む。
【0018】
ステップS3の処理では、非線形制御器6が、上述の数式2を利用して非線形操作量(非線形入力)Unlを演算する。これにより、ステップS3の処理は完了し、操作量生成処理はステップS4の処理に進む。なお、ステップS2の処理とステップS3,4の処理は実際には平行して実行されるものとする。
【0019】
ステップS4の処理では、非線形制御器6が、加算器7によって予め設定された制御対象2の操作量の最大値Umax及び最小値UminとステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqを以下の数式5,6に代入することにより、線形操作量Ueqの最大値Ueq_max及び最小値Ueq_minを演算する。これにより、ステップS4の処理は完了し、操作量生成処理はステップS5の処理に進む。
【数5】

【数6】

【0020】
ステップS5の処理では、線形制御器5が、ステップS2の処理により演算された線形操作量UeqがステップS4の処理により演算された線形操作量Ueqの最大値Ueq_max以上であるか否かを判別する。そして、判別の結果、ステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqが線形操作量Ueqの最大値Ueq_max以上である場合、線形制御器5は、ステップS6の処理としてステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqを線形操作量Ueqの最大値Ueq_maxに設定した後、操作量生成処理をステップS7の処理に進める。一方、ステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqが線形操作量Ueqの最大値Ueq_max未満である場合には、線形制御器5は操作量生成処理をステップS5の処理からステップS7の処理に進める。
【0021】
ステップS7の処理では、線形制御器5が、ステップS2の処理により演算された線形操作量UeqがステップS4の処理により演算された線形操作量Ueqの最小値Ueq_min以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、ステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqが線形操作量Ueqの最小値Ueq_min以下である場合、線形制御器5は、ステップS8の処理としてステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqを線形操作量Ueqの最小値Ueq_minに設定した後、操作量生成処理をステップS9の処理に進める。一方、ステップS2の処理により演算された線形操作量Ueqが線形操作量Ueqの最小値Ueq_min以下でない場合には、線形制御器5は操作量生成処理をステップS7の処理からステップS9の処理に進める。
【0022】
ステップS9の処理では、加算器7が、線形制御器5により演算された線形操作量Ueqと非線形制御器6により演算された非線形操作量Unlを加算した値を操作量Uとして制御対象2に与える。これにより、ステップS9の処理は完了し、操作量生成処理はステップS1の処理に戻る。
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、線形制御器5が、制御対象2の操作量を生成するための線形操作量Ueqを生成すると共に、図5に示すように非線形操作量Unlに基づいて線形操作量Ueqの大きさを制限するので、非線形操作量Unlの大きさを考慮する必要がなくなり、非線形制御器6ではワインドアップ現象が発生しなくなる。またこの結果、非線形制御器6でワインドアップ現象を考慮する必要がなくなるので、線形制御器5でのみ飽和時の影響を考慮すればよくなる。従って、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、図6に示すように、従来の制御装置とは異なり、ワインドアップ現象を起こさずに飽和要素を含む制御対象に対し制御機能を限界まで発揮することができる。
【0024】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、線形制御器5は状態変数ベクトルXと線形操作量Ueqとが線形関係となる線形演算を行うので、非線形操作量Unlと線形操作量Ueqが混在する場合でも飽和時の制御性能の悪化具合を低下させることができる。また、非線形制御器6は状態変数ベクトルXと非線形操作量Unlが非線形関係となる非線形演算を行うので、非線形制御対象の操作量を生成できると共に、非線形操作量に飽和要素を持たさないため、非線形演算時にワインドアップを考慮する必要がなくなる。またこの結果、非線形演算での飽和時の制御性能の悪化を考える必要がなくなるので、設計及び実装が容易に行えるようになる。
【0025】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、非線形制御器6はスライディングモード制御理論により演算される非線形入力に基づいて非線形操作量Unlを生成し、線形制御器5はスライディングモード制御理論により演算される線形入力に基づいて線形操作量Ueqを生成するので、ロバストな制御系が構成できると共に、非線形制御理論に対してもワインドアップ現象を低減可能な制御系を容易に構成することができる。
【0026】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、加算器7は制御対象2の操作量の最大値Umax及び最小値Uminを設定し、非線形制御器6は非線形操作量Unlの大きさが設定された操作量の範囲内になるように非線形操作量Unlを生成するので、線形操作量Ueqの大きさは制限幅が0を含む範囲内となる。またこれにより、線形操作量Ueqが飽和する頻度が低下し、制御性能の悪化を低減できる。
【0027】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、線形制御器5は線形操作量Ueqの大きさを制限するリミッタ8を備え、リミッタ8は制御対象2の操作量が最大値Umax以下になるように線形操作量Ueqを制限するので、非線形操作量Unlに基づいて線形操作量Ueqの大きさを制限する場合にも飽和要素を一ついれればよくなり、マイコンやパーソナルコンピュータを使って演算を行う場合でっても演算時間が長くならず、容易に実装することができる。
【0028】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、リミッタ8は、演算された線形操作量Ueqが最大値Ueq_max以上である場合、演算された線形操作量Ueqを最大値Ueq_maxに設定し、演算された線形操作量Ueqが最小値Ueq_min以下である場合には、演算された線形操作量Ueqを最小値Ueq_minに設定するので、線形操作量Ueqが不必要に制限されることがなくなり、飽和しない時には所望の制御性能が得られ飽和した時だけ制限を加える制御系を構成することができる。
【0029】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、リミッタ8は、制御対象2の操作量が最大値Umax以下になるように線形操作量Ueqの最大値Ueq_maxを変化させるので、線形操作量Ueqと非線形操作量Unlの和が制御対象2の操作量の最大値Umaxを越えることがなくなる。またこれにより、制御対象2に操作量が過剰に印加されることがなくなり、制御性能の悪化頻度を低下させることができる。
【0030】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、線形制御器5は、状態変数ベクトルXを用いて第3中間値を生成する線形な伝達関数行列N、リミッタ8から出力される第2中間値を用いて第4中間値を生成する線形な伝達関数行列Rと、第3中間値と第4中間値に基づいて第5中間値をリミッタ8に与える加算器9とを備え、リミッタ8は第5中間値に基づいて第2中間値を生成するので、第2中間値が制限された場合であっても制限された情報をフィードバックし、簡単な構造で性能悪化を低減することができる。
【0031】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、線形制御器5は、アンチワインドアップ制御系を構成する一手法である左既約分解により表現され、左既約分解を用いて第2中間値を生成することができるので、理論的に操作量の飽和を考慮し、簡単な構造で性能悪化を低減できる。
【0032】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、加算器7は、非線形操作量Unlと線形操作量Ueqの加算又は減算により制御対象2の操作量を生成するので、線形性を保ったまま制御系を構成することができる。
【0033】
また、本発明の第1の実施形態となる制御装置1によれば、制御偏差の積分演算値を利用して操作量を演算するので、目標値に制御対象2の出力を追従させたい場合にも定常偏差をなくす操作量を演算し、目標値に対して制御対象2の出力を適切に制御することができる。
【0034】
また、上記操作量生成処理において、数式2における定数Kの値は定数Kと制御対象2の操作量の最大値Umax及び最小値Uminとが以下に示す数式7を満たすように設定することが望ましい。このように定数Kの値を設定することにより、数式5,6により演算される線形操作量の最大値Ueq_max及び最小値Ueq_minが以下に示す数式8を満たすようになり、線形操作量Ueqが線形操作量Ueqの最大値Ueq_max以上又は最小値Ueq_min以下になる確率が下がるので、制御対象2の操作量が飽和しにくくなり、操作量が飽和することに伴う制御性能の悪化幅を低減させることができる。
【数7】

【数8】

【実施例2】
【0035】
本発明の第2の実施形態となる制御装置は、フィードバック入力で構成される線形入力とフィードフォワード入力で構成される非線形入力とから成る操作量を上述の操作量生成処理と同様の方法により演算し、演算された操作量を制御対象2に与える。また、本実施形態では、非線形制御器6は、ニューラルネットワークやファジー制御理論を利用して非線形入力を演算する。なお、本実施形態では、ニューラルネットワークによる非線形フィードフォワード入力,公知の線形フィードバック制御系により演算された線形入力をそれぞれUnn,Ufbとした場合、第1の実施形態における非線形操作量Unl及び線形操作量UeqをそれぞれUnn,Ufbに置き換えて上述の操作量生成処理を実行する。また、ニューラルネットワークを利用して非線形入力を演算する場合には、ニューラルネットワークのシグモイド関数の最大値Usg_maxと最小値Usg_minが以下に示す数式9〜11を満たすようにシグモイド関数の最大値Usg_maxと最小値Usg_minを設定することにより、上述の数式8を満たすニューラルネットワークを構成し、操作量が飽和することに伴う制御性能の悪化幅を低減することができる。
【数9】

【数10】

【数11】

【実施例3】
【0036】
本発明の第3の実施形態となる制御装置は、フィードバック入力で構成される線形入力と、フィードバック入力とフィードフォワード入力で構成される非線形入力とから成る操作量を上述の操作量生成処理と同様の方法により演算し、演算された操作量を制御対象2に与える。また、本実施形態では、非線形制御器6は、ニューラルネットワークを利用して非線形入力を演算する。また、線形制御器5は、スライディングモード制御理論を適用して線形入力を演算する。なお、本実施形態では、ニューラルネットワークによるフィードフォワード入力,スライディングモード制御理論による非線形フィードバック入力,及びスライディングモード制御理論による線形フィードバック入力をそれぞれUnn’,Unl’,Ueq’とした場合、第1の実施形態における非線形操作量Unl及び線形操作量UeqをそれぞれUnn’+Unl’,Ueq’に置き換え、上述の操作量生成処理を実行する。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。このように、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2に示す第2中間値生成手段の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態となる操作量演算処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】本発明の実施形態となる操作量演算処理の概要を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態となる制御装置及び従来の制御装置について制御対象の制御量と操作量の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1:制御装置
2:制御対象
3:比較器
4:オブザーバ
5:線形制御器
6:非線形制御器
7,9:加算器
8:リミッタ
N,R:伝達関数行列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和特性を有する制御対象の出力を制御するための制御装置であって、
前記制御対象の目標出力値、出力値、及び操作量のうちの少なくとも一つを含む制御情報に基づいて前記制御対象の操作量を生成するための第1中間値を生成する第1中間値生成手段と、
前記制御情報に基づいて前記制御対象の操作量を生成するための第2中間値を生成すると共に、前記第1中間値に基づいて当該第2中間値の大きさを制限する第2中間値生成手段と、
前記第1中間値と前記第2中間値に基づいて制御対象の操作量を生成し、当該制御対象に生成した操作量を与える操作量生成手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記第2中間値生成手段は、前記制御情報と前記第2中間値とが線形関係となる線形演算を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御装置であって、
前記第1中間値生成手段は、前記制御情報と前記第1中間値が非線形関係となる非線形演算を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第1中間値生成手段は、スライディングモード制御理論により演算される非線形入力に基づいて前記第1中間値を生成し、前記第2中間値生成手段は、スライディングモード制御理論により演算される線形入力に基づいて前記第2中間値を生成することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記操作量生成手段は、前記操作量の大きさが予め定められた飽和操作量以下になるように操作量を生成し、前記第1中間値生成手段は前記第1中間値の大きさが飽和操作量以下になるように第1中間値を生成することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第2中間値生成手段は、生成される第2中間値の大きさを制限する第2中間値制限手段を備え、当該第2中間値制限手段は、前記操作量の大きさが飽和操作量以下の大きさになるように第2中間値の大きさを制限することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置であって、
前記第2中間値制限手段は、前記飽和操作量と前記第1中間値の大きさに基づいて前記第2中間値の大きさの最大値を飽和第2中間値として生成し、第2中間値の大きさが飽和第2中間値より大きい場合、第2中間値を飽和第2中間値とし、第2中間値の大きさが飽和第2中間値より小さい場合には、生成された第2中間値を出力することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の制御装置であって、
前記第2中間値制限手段は、前記操作量の大きさが飽和操作量の大きさ以下になるように前記飽和第2中間値を変化させることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第2中間値生成手段は、前記制御情報に基づいて、前記第2中間値を生成するための第3中間値を生成する第3中間値生成手段と、前記第2中間値に基づいて前記第2中間値を生成するための第4中間値を生成する第4中間値生成手段と、前記第3中間値と前記第4中間値に基づいて第5中間値を生成する第5中間値生成手段とを備え、前記第2中間値制限手段は前記第5中間値に基づいて前記第2中間値を生成することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置であって、
前記第2中間値生成手段が線形な伝達関数行列Cと表現される演算手段である場合、以下の数式1で表現される第2中間値生成手段の左既約分解を用いて、前記第3及び第4中間値生成手段をそれぞれ線形な伝達関数行列N及び伝達関数行列Rとすることを特徴とする制御装置。
【数1】

【請求項11】
請求項1乃至請求項10のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記制御情報は前記目標出力値と前記出力値の差を積分した演算結果を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第1中間値生成手段は、ニューラルネットワーク又はファジー制御理論により演算を行い、演算結果を前記第1中間値とすることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第1中間値生成手段は、ニューラルネットワーク又はファジー制御理論によりフィードフォワード演算を行い、演算結果を前記第1中間値とすることを特徴とする制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の制御装置であって、
前記第1中間値生成手段は、ニューラルネットワーク又はファジー制御理論により演算されたフィードフォワード演算結果とスライディングモード制御により演算された非線形演算結果に基づいて前記第1中間値を生成することを特徴とする制御装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のうち、いずれか1項に記載の制御装置であって、
前記操作量生成手段は、前記第1中間値と前記第2中間値の加算又は減算により操作量を生成することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−115101(P2007−115101A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307032(P2005−307032)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】