説明

制御装置

【課題】車両減速時における運転者の違和感を軽減しつつ、電気加熱触媒を適切に暖機する。
【解決手段】制御装置(100)は、エンジン(11)と、該エンジンの排気通路(12)に配置された電気加熱触媒(21、22)と、エンジンに連結される回転軸(15a)を有し、減速時に、該回転軸の運動エネルギーを利用して回生発電を行う電気モータ(15)と、を備える車両(1)に搭載される。制御装置は、減速時に電気加熱触媒を加熱する場合、回生発電に起因する電力量に応じて、電気加熱触媒の加熱量を変更する加熱制御手段(24)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車等の電気モータを備える車両の制御装置に関し、特に、電気加熱触媒を備える車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、エンジンとモータとからなる駆動源と、該エンジンの排気通路に配置された電気触媒と、を備えるハイブリッド車両において、車両減速時に電気触媒を暖機する際には、少なくともモータの回生電力を電気触媒に供給する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
尚、エンジンと該エンジンにより駆動される発電機とを備える車両において、車両の減速時に、ブレーキ操作状態に基づいて要求減速度を判定し、該判定された要求減速度が大きいほど発電機における発電電圧を高くして、運転者が要求する減速感を実現する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214703号公報
【特許文献2】特開2008−67504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、車両減速時に電気触媒に電力を供給することに起因して、モータの回生電力量が変動する可能性がある。すると、運転者が違和感を覚える可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両減速時における運転者の違和感を軽減しつつ、電気加熱触媒を適切に暖機することができる制御装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御装置は、上記課題を解決するために、エンジンと、前記エンジンの排気通路に配置された電気加熱触媒と、前記エンジンに連結される回転軸を有し、減速時に、前記回転軸の運動エネルギーを利用して回生発電を行う電気モータと、を備える車両に搭載され、減速時に前記電気加熱触媒を加熱する場合、前記回生発電に起因する電力量に応じて、前記電気加熱触媒の加熱量を変更する加熱制御手段を備える。
【0008】
本発明の制御装置によれば、当該制御装置が搭載される車両は、エンジンと、該エンジンの排気通路に配置された電気加熱触媒と、該エンジンに連結された電気モータと、を備えて構成される。電気モータは、車両の減速時に、回転軸に生じる運動エネルギーを利用して回生発電を行う。
【0009】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる加熱制御手段は、車両の減速時に、電気加熱触媒を加熱する場合、回生発電に起因する電力量(即ち、回生電力量)に応じて、該電気加熱触媒の加熱量(例えば、ヒータに供給される電力量)を変更する。
【0010】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、車両において、電気加熱触媒と、例えば電気モータ及びバッテリ等とは、互いに電気的に接続されているため、互いに密接に関わっており、電気加熱触媒の作動(即ち、加熱)の仕方によっては、例えば回生電力量が変化する可能性がある。すると、車両の減速時に、運転者が違和感を覚える可能性がある。
【0011】
そこで本発明では、上述の如く、加熱制御手段により、車両の減速時に、電気加熱触媒が加熱される場合、回生発電に起因する電力量に応じて、該電気加熱触媒の加熱量が変更される。つまり本発明では、電気モータにおける回生発電と、電気加熱触媒の加熱と、が協調制御される。この結果、電気加熱触媒を作動に起因する回生電力量の変化を抑制することができる。従って、本発明の制御装置によれば、車両減速時における運転者の違和感を軽減しつつ、電気加熱触媒を適切に暖機することができる。
【0012】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る車両における電気的な接続を示す図である。
【図3】実施形態に係る電気ヒータの出力等の時間変動の一例である。
【図4】実施形態に係る電気ヒータの出力等の時間変動の他の一例である。
【図5】バッテリの充電状態と電気加熱触媒出力とをパラメータとするマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る制御装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態に係る制御装置が搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、車両1は、エンジン11と、該エンジン11の駆動軸11aに、動力分配装置13を介して、夫々連結されたモータ・ジェネレータ14(MG1)及びモータ・ジェネレータ15(MG2)と、該モータ・ジェネレータ14及び15に電力を供給可能であり、且つ該モータ・ジェネレータ14及び15からの回生電力により充電可能であるバッテリ23と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)24と、を備えて構成されている。
【0017】
尚、モータ・ジェネレータ14の回転軸と、エンジン11の駆動軸11aは、実際には平行であるが、便宜上、図1のように記載している。
【0018】
エンジン11の排気通路12には、例えば三元触媒等の触媒21が配置されている。触媒21には、該触媒21を暖機するための電気ヒータ22が設けられている。尚、本実施形態に係る「触媒21」及び「電気ヒータ22」は、本発明に係る「電気加熱触媒」の一例である。
【0019】
車両1の減速時には、車輪Wの回転力が、ドライブシャフト及び減速機16を介して、モータ・ジェネレータ15の回転軸15aに伝達されることにより、該回転軸15aに生じる運動エネルギーを利用して、モータ・ジェネレータ15において回生発電が行われる。尚、本実施形態に係る「モータ・ジェネレータ15」は、本発明に係る「電気モータ」の一例である。
【0020】
ここで、車両1における電気的な接続(要部)について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る車両における電気的な接続を示す図である。図2において、抵抗R1は配線抵抗であり、抵抗R2はバッテリ23に係る抵抗であり、抵抗R3は電気ヒータ22に係る抵抗である。尚、抵抗R2の抵抗値は、バッテリ23の充電状態(State of Charge:SOC)に応じて変化する。
【0021】
図2に示すように、モータ・ジェネレータ15に係るオルタネータは、バッテリ23及び電気ヒータ22に、電気的に接続されている。即ち、モータ・ジェネレータ15に係るオルタネータで発電された電力(即ち、回生電力)は、バッテリ23及び電気ヒータ22の少なくとも一方に供給される。
【0022】
ECU24は、モータ・ジェネレータ15に係るオルタネータの出力をモニタし(図2中の点線矢印参照)、該モニタされたオルタネータの出力に基づいて、モータ・ジェネレータ15のフィールドコイルに供給される電流量を制御する。つまり、ECU24は、モータ・ジェネレータ15に係るオルタネータの出力を、フィードバック制御する。
【0023】
図2からわかるように、モータ・ジェネレータ15と、バッテリ23及び電気ヒータ22とは、密接に関わっている。ここで、モータ・ジェネレータ15に係るオルタネータの出力Waltは、下記(式1)により表わすことができる。
【0024】
【数1】

(式1)
パラメータ“Valt”及び“Vbatt”は、夫々、「オルタネータ発電電圧」及び「バッテリ23の電圧」を表わしている。
【0025】
(式1)に示すように、オルタネータの出力Waltは、電気ヒータに係る抵抗R3の影響を受ける。従って、車両1の減速時に、触媒21の暖機のために電気ヒータ22を作動させると、オルタネータの出力Waltが変化する(即ち、回生発電に起因する電力量が変化する)ことによって、車両1の運転者が感じる減速感が変化する可能性がある。
【0026】
そこで本実施形態に係る制御装置100は、車両1の減速時に触媒21を電気ヒータ22により加熱する場合、モータ・ジェネレータ15における回生発電に起因する電力量に応じて、電気ヒータ22の加熱量を変更する、本発明に係る「加熱制御手段」の一例としての、ECU24を備えて構成されている。つまり、本実施形態では、車両1の各種電子制御用のECU24の機能の一部を、制御装置100の一部として利用している。
【0027】
具体的には例えば、ECU24は、車両1の減速時に触媒21を暖機する場合、図3に示すように、車両1の減速開始時(即ち、回生発電開始時)から所定時間(ここでは、時刻t1から時刻t2までの期間)かけて、電気ヒータ22の出力が比較的緩やかに立ち上がるように、電気ヒータ22に供給される電力量(即ち、電気ヒータ22による触媒21の加熱量)を制御する。
【0028】
ここで、車両1の減速時に、図4の最下段に点線で示すように、オルタネータ発電電圧Valtが一定となるように、例えばモータ・ジェネレータ15のフィールドコイルに供給される電流量が制御されると、図4の最上段に点線で示すように、比較的短時間で車両1の速度が減少する(即ち、車両1の運転者が、比較的強い減速感を感じる)。
【0029】
そこで、例えば車両1の運転者によるブレーキペダルの踏み込み量等に対応する減速度となるように(即ち、車両1の運転者が所望する減速感となるように)、ECU24は、モータ・ジェネレータ15のフィールドコイルに供給される電流量を制御することによって、オルタネータ発電電圧Valtを変化させる(図4の最下段の実線参照)。
【0030】
尚、オルタネータ発電電圧Valtをどの程度にするかは、例えば図5(a)及び(b)に示すような、バッテリ23の充電状態及び電気ヒータ22の出力間をパラメータとするマップと、上述した(式1)と、から決定すればよい。ここで、車両1の運転者が違和感を覚えないように、該車両1を減速させるためには、典型的には、車速が高い程オルタネータ発電電圧Valtを上げ、逆に、車速が低い程オルタネータ発電電圧Valtを下げればよい。
【0031】
以上の結果、本実施形態に係る制御装置100によれば、車両1の減速時におけるオルタネータの出力Waltの変化を抑制することができるので、車両1の運転者の違和感を軽減しつつ、触媒21を適切に暖機することができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…車両、11…エンジン、12…排気通路、14、15…モータ・ジェネレータ、21…触媒、22…電気ヒータ、23…バッテリ、24…ECU、100…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの排気通路に配置された電気加熱触媒と、前記エンジンに連結される回転軸を有し、減速時に、前記回転軸の運動エネルギーを利用して回生発電を行う電気モータと、を備える車両に搭載され、
減速時に前記電気加熱触媒を加熱する場合、前記回生発電に起因する電力量に応じて、前記電気加熱触媒の加熱量を変更する加熱制御手段を備える
ことを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86575(P2013−86575A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226685(P2011−226685)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】