説明

制振層及び制振材

【課題】 軽量で、制振性が高く、製造にあたっては押し出成形法で容易に成膜でき、接着層を設けることで使用時には粘着や熱接着によって容易に貼り付け加工ができる耐熱性の高い制振材10を提供する。
【解決手段】
(A)ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂、(B)マイカ鱗片、(C)導電性カーボン粉末、(D)熱可塑性架橋樹脂及び架橋助剤(E)を含有し、電離放射線で架橋された制振層11を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材に関し、さらに詳しくは、家電、自動車、家具、建築資材等に利用する各種鋼板やプラスチック板に対して容易に接着でき、優れた制振性を発揮する制振材に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、車輌、船舶、自動車部品、機器、機械、建築材料などの構造部材の振動を防止し、騒音を低減するためは、部材自体を厚くしたり、装置自体から発生しにくくしたり、部材にシート状の制振材を貼り付けたり、塗布したり、していた。制振材は、振動エネルギーを熱エネルギーや他のエネルギーに変えることで、振動を低減していた。
従来の多くの制振材としては、制振性を良くするために厚くなったり、重くなったり、また、制振材の製造でも煩雑で時間がかかったりして、製造性が低く、さらに、使用にあたっても、溶接や接着剤での接着作業で、制振材を損傷したりして、作業の容易性に欠けるという欠点があった。
従って、制振材は、軽量で、制振性が高く、製造にあたっては押し出成形法で容易に成膜でき、また、使用にあたっては粘着や熱接着によって容易に貼り付け加工ができることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭47−6019号公報
【特許文献2】特開昭59−137998号公報
【特許文献3】特開昭60−51750号公報
【特許文献4】特開平3−188165号公報
【特許文献5】特開昭63−178037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(先行技術)従来、制振材は、軟質の塩化ビニル樹脂系のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ポリ塩化ビニル系制振材で、制振性の高いものは使用温度範囲が狭く、また、使用温度範囲が広いものは逆に制振性が低い。
また、塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加した軟質塩ビ樹脂が知られているが、振動エネルギーを吸収する材料として、これは、振動エネルギーを樹脂内部で摩擦熱として消費するが、制振材としては不十分であるという問題点がある。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、フレーク状無機質充填剤を含有する組成物を、発泡させた軟質ポリ塩化ヒニール系の割振材が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、使用温度範囲が狭く、制振性も低いという欠点がある。
さらに、高分子材料と圧電粉末材料を主成分とした組成物が開示されている(例えば、特許文献3〜4参照。)。これらは、振動エネルギーを圧電粉末材料により電気エネルギーに変換して振動を吸収するものである。これら組成物は、圧電粉末材料を50質量%以上含有するように配合しないと、十分な効果が得られないが、そのような配合では混練や成型が困難な欠点があった。また、これらの制振材は、圧電粉末材料としてジルコン酸チタン酸鉛やチタン酸バリウム等のセラミックスを用いており、軽量性に乏しいという欠点がある。
さらにまた、炭素繊維、黒鉛、フェライト及びマイカから選ばれた充填剤、特定のエポキシ樹脂、特定のアミド樹脂とからなる混合組成物を硬化してなる樹脂組成物と、金属材料とを積層せしめた板状振動減衰材が知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、特許文献2〜5のいずれも、その製造において、面倒で時間のかかる混錬作業を要し、膜(板)状化では、本願のような押出し成形ができず、カレンダー製膜や加熱重合などの生産性の低い製造法で、効率が悪く、コストも高いという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明では(A)ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂、(B)マイカ鱗片、(C)導電性カーボン、(D)熱可塑性架橋樹脂、及び(E)架橋助剤を含有し、電離放射線により架橋させた架橋型樹脂層からなる制振層を有する制振材とすることにより、制振性が高く、製造にあたっては押し出成形法で容易に成膜でき、接着層を形成することで容易に貼り付け加工ができ、しかも電離放射線により架橋することで耐熱性を高めた制振材を完成すべく、本発明者らは鋭意研究を進め本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる制振層は、少なくとも(A)ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂、(B)マイカ鱗片、(C)導電性カーボン粉末、(D)熱可塑性架橋樹脂、(E)架橋助剤を含有し、電離放射線により架橋されているようにしたものである。
請求項2の発明に係わる制振層は、上記ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分構成単位がイソフタル酸及び/又はアゼライン酸に由来し、上記ポリエステル樹脂のジオール成分構成単位が1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる1種または2種以上であるようにしたものである。
請求項3の発明に係わる制振材は、請求項1〜2のいずれかに記載の制振層において、架橋助剤が、トリメリルトリメリテート、トリアリルメリテート、ジアリルメリテート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートから選ばれる1種または2種以上であるようにしたものである。
請求項4の発明に係わる制振材は、請求項1〜3のいずれかに記載の制振層のみからなるようにしたものである。
請求項5の発明に係わる制振材は、請求項1〜3のいずれかに記載の制振層及び接着層とからなる制振材において、前記接着層が熱可塑性架橋樹脂を50%以上含有するか、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体を50%以上含有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜3の本発明によれば、押し出成形法で容易に成膜でき、軽量で、制振性と耐熱性が高い制振層が提供される。
請求項4の本発明によれば、軽量で、制振性が高い、制振材が提供される。
請求項5の本発明によれば、被着体表面に貼り付け易い効果を奏し、熱接着法で被着体表面に貼り付けられる制振材、または平滑な被着体に対しても、粘着力で貼り付けられる制振材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す制振層の断面図である。
【図2】本願発明の1実施例を示す制振材の断面図である。
【図3】本願発明の1実施例を示す制振材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(制振層)本願発明において、制振層11は図1に示すように、(A)ポリエステル樹脂21、(B)マイカ鱗片23、(C)導電性カーボン粉末25、(D)熱可塑性架橋樹脂、及び(E)架橋助剤とからなる組成物を電離放射線で架橋したものである。また、制振層11は、制振性とともに放熱性も良好であり、制振性と放熱性とを兼ね備えている。
【0012】
(ポリエステル樹脂)制振層11に用いる(A)ポリエステル樹脂21としては、ジカルボン酸成分構成単位が、イソフタル酸および/またはアゼライン酸に由来し、ジオール成分構成単位が1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、およびネオペンチルグリコールから選ばれる1種または2種以上のものを用いることができる。
【0013】
制振層11は(A)ポリエステル樹脂21に、(B)マイカ鱗片23、(C)導電性カーボン粉末25、及び(D)熱可塑性架橋樹脂26を分散させて使用するが、本発明の効果を損なわない程度に、可塑剤、顔料、難燃剤や滑剤などの他の構成単位を含ませてもよい。また、マイカ鱗片だけでなく、ガラス片、セリサイト、グラファイト、タルク、アルミニウムフレーク、窒化硼素、二硫化モリブデン、黒鉛、などの鱗片状充填材の併用も可能である。
【0014】
(マイカ鱗片)(A)(B)(C)の合計を100質量部とした場合に、マイカ鱗片23の含有量は、30〜80質量部の範囲であり、制振層11全体においては15〜80質量部の範囲である。ここで、制振層11全体におけるマイカ鱗片の割合が15質量部未満では制振効果に乏しく、また80質量部を超えると成形性が低下するため好ましくない。
【0015】
(導電性カーボン粉末)制振効果を高めるため、制振層11には導電性成分として、カーボンブラックやカーボンナノチューブなどの(C)導電性カーボン粉末25を添加する。また、他の導電性材料として銀、鉄、鉛、銅、銅合金、ニッケル、低融点合金などの金属粉末や金属繊維、貴金属を被覆した銅や銀の微粒子、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの金属酸化物の微粒子、炭素繊維、金属を被覆したポリマー微粒子などを併用することもできる。
【0016】
導電性カーボン粉末25の含有量は、(A)(B)(C)の合計を100質量部とした場合に0.1〜20質量部の範囲であり、制振層11全体においては0.05〜20質量部の範囲とする。制振層11全体における導電性カーボン粉末25の割合が0.05質量部未満の場合、導電性カーボン粉末による制振性の向上効果が期待できず、また20質量部を超えると成膜が困難となり、好ましくない。本発明における(A)(B)(C)からなる組成物として、三菱瓦斯化学社よりネオフェードが上梓されており、グレードを適宜選択して用いることができる。
【0017】
(熱可塑性架橋樹脂)本発明においては、これらの(A)(B)(C)からなる組成物に対して、(D)熱可塑性架橋樹脂及び(E)架橋助剤を添加して制振層11とする。ここで、熱可塑性架橋樹脂とは、イオン結合などを利用して擬似的な架橋がなされる熱可塑性のポリマーであり、擬似架橋により150℃程度の温度においても自己形状保持機能を有するものである。このような熱可塑性架橋樹脂としては、日本ポリエチレンから上梓されているレクスパールRCが該当する。(D)熱可塑性架橋樹脂の添加により、(A)(B)(C)からなる組成物の成形性を改善することができる。好ましい添加の割合は、質量基準で(A)+(B)+(C):(D)=100:5〜100の範囲内である。100:5未満では、熱可塑性架橋樹脂(D)の添加による成形性の改善効果に乏しく、また100:100を超えると制振性が低下する。
【0018】
(架橋助剤)本発明においては、(E)架橋助剤を添加し、製膜時、あるいは製膜後に電離放射線架橋によって耐熱性を高めることができる。架橋助剤としては、トリメリルトリメリテート、トリアリルメリテート、ジアリルメリテート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。好ましい架橋助剤の添加濃度は、制振層11全体においては0.05〜3質量%の範囲である。
【0019】
(電離放射線)上記電離放射線としては、特に限定されず、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV‐A、UV‐B、UV‐C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、電子線(EB)、ガンマー線、X線、紫外線(UV)、又は可視光線などが適用できるが、取扱い性やコスト面からEB又はUV(これらを合わせて活性エネルギー線ともいう)が好ましい。
【0020】
(制振材)図1に示すような制振層11のみの構成で、制振材10として用いてもよく、もちろん、任意の他の層を加えてもよい。図2に示すような制振層11の一方の面へ接着層13を積層したり、図3に示すような制振層11の一方の面へ接着層13を、他方の面へ剥離層15を積層したりする構成で制振材10としてもよい。
【0021】
(接着層)図2に示すような制振層11に接着層13を積層した制振材10は、各種鋼板やプラスチック板に対する接着を容易にすることができる。接着層13としては、例えば前述した熱可塑性架橋樹脂を50%以上含有する樹脂組成物を使用することができる。熱可塑性架橋樹脂を含有する接着層13を制振層11に積層することで、得られる制振材10は、被着体に対して強固に熱接着できるようになる。
【0022】
(剥離層)剥離層15としては、熱可塑性樹脂が適用でき、好ましくは低密度ポリエチレン、リニアー低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが例示できる。
【0023】
また、本発明における接着層13として、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体を50%以上含有すること樹脂組成物を使用することもできる。この場合、熱接着ではなく、平滑な表面を有する被着体に対しても、制振材10を加圧することで、粘着力で貼り付けることができる。
【0024】
(スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体)スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体は、ハードセグメントがポリスチレン系化合物、ソフトセグメントがポリイソブチレンで構成されるスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体である。ソフトセグメントをイソブチレンとすることでソフトセグメントに二重結合を含まない。スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体に用いられるビニル芳香族化合物は、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0025】
スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として、上記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)、イソブチレン系重合体、又はビニル芳香族化合物とイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(b)、ビニル芳香族化合物とイソブチレンのうちビニル芳香族化合物が漸増するテーパーブロック(c)の少なくとも(a)と(b)とを含むブロック共重合体である。ここで、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体としては、(a)−(b)、(a)−(b)−(a)、あるいは、(a)−(b)−(c)の構成が好ましい。また、ブロック(a)とブロック(b)とは、必ずしも明確に区別される必要はなく、ブロック(a)からブロック(b)に移行するにしたがい、ビニル芳香族化合物が漸減するようなテーパー部分をもつ構成でもよい。
【0026】
二重結合を含む化合物は、熱や経時によって分解や老化が進むことは周知であり、特に二重結合を多く含む生ゴムでは老化が著しく早くなる。制振材は、車輌、船舶、自動車部品、機器、機械、建築材料などの構造部材の振動を防止するものであり、その使用期間は長期にわたるため、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー等の不飽和型や水添型のスチレン系エラストマーよりも、耐熱安定性や耐候性に優れたスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体の利用が好ましい。このようなスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として、カネカ社のシブスター等を挙げることができる。本発明においては、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。スチレン−イソブチレンブロック共重合体を接着層に用いることで、電離放射線の照射による影響や、使用時の温湿度の影響が少ない接着層を得ることができる。
【0027】
制振層11と接着層13とを積層し一体化されたシート形状の制振材10において、制振層11へ接着層13を積層する方法としては、制振層11と接着層13とを同時に押し出す多層共押出による製造が好ましい。
【0028】
また、図4に示すように、剥離層15/制振層11/接着層13のような3層構成とした制振材10とすることで、通常使用する巻き取り状態においても、巻き取りとした場合に制振層11と接着層13とが隣接して密着しやすいが、3層構成とすることで、層間の剥離を良くなり、巻きほぐし易く、作業効率が向上できる。
【0029】
(制振材厚さ)接着層13の厚さとしては各種鋼板やプラスチック板に容易に接着できればよく、5〜100μm程度、好ましくは10〜50μmである。剥離層15の厚さとしては巻取状態で制振層11又は接着層13とが隣接しても、巻きほぐしできればよく、5〜100μm程度、好ましくは10〜50μmである。制振層11の厚さとしては、10〜500μm程度、好ましくは50〜500μmである。この範囲未満では制振性が不足し、この範囲以上厚くしても対厚みの制振効果の増加が少なく、用途で要求され制振性から選定すればよい。制振材10の厚さとしては用途と使用形態から選定すればよく、20〜500μm程度、好ましくは200〜500μm(0.5mm)である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0031】
(実施例1)90mmφ押出機を有するTダイ型製膜機を用い、下記の組成物を厚み200μにて押し出し、製膜後に、175kV、3Mradの電子線を照射することにより本発明の制振材10(制振層11のみ)を得た。、
<制振層組成物>
・三菱瓦斯化学 ネオフェード4140(制振性ポリエステル) 90部
・日本ポリエチレン レクスパールE030Y 9部
・日本化成 タイク(トリアリルイソシアヌレート) 1部
【0032】
(実施例2)90mmφ押出機と65mmφ押出機を有する多層Tダイ型製膜機を用い、厚さが200μmの制振層11と厚さ20μmの接着層13のとなるように、総厚み220μにて押し出し、製膜後に、175kV、3Mradの電子線を照射することにより本発明の制振材10を得た。
<制振層組成物(90mmφ押出機)>
・三菱瓦斯化学 ネオフェード4140(制振性ポリエステル) 90部
・日本ポリエチレン レクスパールES030Y 9部
・日本化成 タイク(トリアリルイソシアヌレート) 1部
<接着層組成物(65mmφ押出機)>
・日本ポリエチレン レクスパールES030Y 100部
【0033】
(実施例3)90mmφ押出機と65mmφ押出機を有する多層Tダイ型製膜機を用い、下記の組成物を用い、厚さが200μmの制振層11と厚さ20μmの接着層13となるように、総厚み220μにて押し出し、製膜後に、175kV、3Mradの電子線を照射することにより本発明の制振材10を得た。
<制振層組成物(90mmφ押出機)>
・三菱瓦斯化学 ネオフェード4140(制振性ポリエステル) 90部
・日本ポリエチレン レクスパールES030Y 9部
・日本化成 タイク(トリアリルイソシアヌレート) 1部
<接着層組成物(65mmφ押出機)>
・鐘淵化学工業 シブスター062T 100質量部
【0034】
(実施例4)90mmφ押出機、65mmφ押出機2台を有する多層Tダイ型製膜機を用い、下記の組成物を用い、剥離層15の厚さを20μm、制振層11の厚さを450μm、接着層13の厚さを30μmとし、総厚み500μにて押し出し、製膜後に、175kV、3Mradの電子線を照射することにより本発明の制振材10を得た。
<剥離層組成物(65mmφ押出機)>
・日本ポリエチレン LC522(LDPE) 100部
<制振層組成物(90mmφ押出機)>
・三菱瓦斯化学 ネオフェード4140(制振性ポリエステル) 90部
・日本ポリエチレン レクスパールES030Y 9部
・日本化成 タイク(トリアリルイソシアヌレート) 1部
<接着層組成物(65mmφ押出機)>
・鐘淵化学工業 シブスター062T 100質量部
【0035】
(比較例1)下記の制振層組成物でTダイ法により厚さが200μmの制振材10(制振層11)を試みたが、当該材料組成では延展性に乏しく、シート端部が不安定でTダイ法での連続的な成膜は困難であった。
<制振層組成物(90mmφ押出機)>
・三菱瓦斯化学 ネオフェード4140 100部
【0036】
(比較例2)下記の制振層組成物でTダイ法により厚さが200μmの制振材10(制振層11)を得た。
<制振層組成物(90mmφ押出機)>
・JSR ダイナロン1320P 100部
【0037】
(評価方法)制振性、接着性、加工性,耐熱性で評価した。
【0038】
(制振性の測定方法)実施例1〜4および比較例1、2の制振材10を10mm×150mmにカットして試験片とし、厚み1mmのアルミニウム板(5052合金)に貼り付けて非拘束型制振材を作成した。ここでアルミニウム板への制振材10の貼り付け方法は、実施例1及び比較例1は、2液硬化型エポキシ系接着剤を塗布し80℃、圧力200kPaで30分間圧着した。実施例2は熱プレス法で、温度170℃、圧力200kPaで2分間圧着した。実施例3、及び比較例2では常温で圧力200kPaで2秒間圧着した。得られた非拘束型制振材について、損失係数測定装置を用いて、温度20℃にて中央加振法により500Hz反共振点での損失係数を測定した。損失係数が大きいほど、制振性が高い。結果を表1に示す。
【0039】
(接着性の測定方法)制振性の評価用に作成した各試験片について、アルミニウム板と制振材10の接着強度を引っ張り速度300mm/分で、180°剥離して測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(加工性の測定方法)加工性は、実施例1〜4および比較例1、2での制振材10をTダイ法又は多層Tダイ法で成膜する際に成膜状況を観察し、問題ない場合は○印、問題ありを×印とした。
【0041】
(耐熱性の評価方法)実施例1〜3及び比較例1、2での制振材10を10cm×10cmにカットして試験片とし、200℃にて5分間保持し、加熱収縮率を測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
(評価結果)実施例1〜3では加工性、制振性、耐熱性共に良好であった。特に実施例2、3は、接着性(貼り付け適性)も良好であった。比較例1は制振性は良好であったが、加工性、接着性、耐熱性が劣っていた。比較例2では制振性、耐熱性が劣っていた。
この結果から明らかなように、本発明の制振材10は、製造にあたっては押し出成形法で容易に成膜できるので加工が容易であり、少なくとも2層構成で薄肉化が可能である。また、接着層13を設けることで、鋼板やプラスチック板に対して粘着や熱接着によって容易に貼り付け加工ができるようになり、制振効果も高く、産業上寄与すること大である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
(産業上の利用可能性)本発明の制振材は、電子計算機、農業や食品などの各種の製造機器、機械、空調機、ホッパー、シュータ−などの産業用機器、船舶や自動車のエンジンルーム、及びその他振動発生源で、その振動を減衰させるものに利用することができる。しかしながら、振動を減衰を必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
10:制振材
11:制振層
13:接着層
15:剥離層
21:ポリエステル樹脂
23:マイカ鱗片
25:導電性カーボン粉末
26:熱可塑性架橋樹脂
30:架橋助剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂、(B)マイカ鱗片、(C)導電性カーボン粉末、(D)熱可塑性架橋樹脂、及び架橋助剤(E)を含有し、電離放射線線により架橋されたことを特徴とする制振層。
【請求項2】
上記ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分構成単位がイソフタル酸及び/又はアゼライン酸に由来し、上記ポリエステル樹脂のジオール成分構成単位が1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる1種または2種以上であるを特徴とする請求項1記載の制振層。
【請求項3】
架橋助剤(E)が、トリメリルトリメリテート、トリアリルメリテート、ジアリルメリテート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の制振層。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の制振層のみからなることを特徴とする制振材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の制振層及び接着層とからなる制振材において、前記接着層が熱可塑性架橋樹脂を50%以上含有するか、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体を50%以上含有することを特徴とする制振材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−254777(P2010−254777A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104866(P2009−104866)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】