説明

制限値超過を判断する方法

【課題】蒸気タービンシステムにおいて動作パラメータの制限値の超過を判断する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】動作パラメータに関連する測定データ220を受信し、所定の時間期間を通して受信したデータ220の変化速度が所定の制限値を超えた場合に制限値超過と判断するステップと、制御値超過と判断された場合に制御動作を行うステップとを含む。測定データ220を受信するステップは、前記蒸気タービンシステムの蒸気タービンに流入する蒸気の温度/温度に関連するデータを受信すること含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には制限値超過を判断する方法に関し、より詳細には、蒸気タービンにおいて動作パラメータ制限値超過を判断するする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械およびその他の装置の動作時に、しばしば装置の動作パラメータを監視することが必要な場合がある。動作パラメータには、パラメータの絶対値と、パラメータが所定の値に留まる期間とを制限する制限値が設けられている。例えば、蒸気タービンの動作については、タービン内の蒸気温度など各種動作パラメータの制御上の制限値を設定する必要がある。
【0003】
通常、動作パラメータの制限値は制限値を超過した大きさと期間との両方により定義される。短い時間期間であれば、パラメータが設定された制限値を超えても悪影響が生じないと考えられるが、このパラメータが長い時間期間にわたって制限値を超えると、装置が損傷する可能性が生じる。同様に、パラメータの変化の速度が緩やかであれば、悪影響が生じないと考えられるが、その一方で、パラメータの大きさが急激に増加または減少した場合、装置が損傷する可能性が生じる。例えば、タービンの蒸気温度の増加が緩やかであれば、装置に損傷が生じないと考えられるが、蒸気温度の増加が急激であれば蒸気タービンに重大な損傷が発生する可能性が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パラメータの制限値の超過を測定する最新の方法では、制限値を越えた時間が検出される。制限値を超過するとタイマーが起動して、パラメータが制限値を超えて留まった期間が決定される。通常、パラメータがその制限値を超えて留まった状態が続きタイマーが所定の期間作動した後に限り是正処置がとられる。しかしながら、制限値を超えて留まっている間の、場合によっては制限値を超える前も含めた、パラメータ値の変化が同様に装置の損傷の判断または予測に同様に重要であることがある。したがって、単に制限値の超過のみならず、パラメータ値におけるパラメータの変化を監視し、検出する技術的なシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの実施の形態では、蒸気タービンシステムの動作パラメータの制限値超過を判断する方法が開示される。この方法は、動作パラメータに関連する測定データを受信するステップと、所定の時間期間を通して受信したデータの変化速度が所定の制限値を超えたことを判断するステップとを含む。制限値超過が発生した場合は制御動作が行われる。
【0006】
本発明の他の実施の形態では、蒸気タービンシステムの動作パラメータの制限値超過を判断するシステムが開示される。このシステムは、蒸気タービンシステムの蒸気タービンと連結し、前記蒸気タービンシステムの動作パラメータと関連する測定データを収集する監視部と、当該監視部と通信して、前記測定データを受信する制御部を含む。制御部はまた、所定の時間期間を通して前記受信したデータの変化速度が所定の制限値を超えたことを判断し、制限値超過が発生した場合は制御動作を行うプログラム論理を有する。
【0007】
以下に記載する本発明の態様は、制限値超過を判断する方法および制限値超過を判断するシステムの両方に適用される。本発明の一つの態様によると、前記受信したデータは、前記蒸気タービンシステムの蒸気タービンに流入する蒸気の温度に関連する。或いは、前記受信した測定データは、前記蒸気タービンシステムの蒸気タービンに流入する蒸気の圧力に関連しても良い。
【0008】
本発明の別の態様によると、制限値超過を判断するステップは、前記受信した測定データを、所定の時間長を通して測定された動作パラメータの大きさの所定の変化速度を有した検出曲線と比較するステップを有する。
【0009】
本発明のさらに別の態様によると、前記所定の時間期間を通して前記受信したデータからデータ曲線を含むグラフを生成し、前記データ曲線が前記検出曲線と交差するポイントを判断して制限値超過を検出する。
【0010】
本発明のさらに別の態様によると、制御動作を行うステップは警報を発令するステップを含む。或いは、制御動作を行うステップは警報信号を送信するステップを含む。制御動作を行うステップはまた、動作パラメータを定義する流入を調整するステップを含んでも良い。或いは、制御動作を行うステップは、動作パラメータを使用するシステムを停止するステップを含んでも良い。本発明のさらに別の態様によると、制御動作を行ったことを示す信号を保存しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の全てではないが一部の実施の形態を示した添付の図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。事実、本発明は様々な形で実現可能であり、以下の実施の形態は出願の法的用件を満たすための開示に過ぎず、本発明は以下に記載の実施の形態に制限されるものではない。明細書を通して同様の構成には同様の符号を付している。
【0012】
本発明の実施の形態のシステム、方法、装置およびコンピュータプログラム製品のブロック図を参照しながら、本発明を説明する。それぞれのブロック図のブロックは単独でも、或いはそれぞれのブロック図のブロックを組み合わせたものでも、コンピュータプログラムの命令で実現可能であることは明らかである。これらのプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、或いはその他のプログラム可能なデータ処理装置に読み込まれ、コンピュータ、またはその他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行されるこれらの命令が、以下に詳細に説明するブロック図のブロックのそれぞれ単独の、或いはそれぞれのブロック図のブロックを組み合わせた機能を実現するための手段を実現する機械を構成することができる。
【0013】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータが読み取り能なメモリに保存され、特定の方法で、コンピュータが読み取り可能なメモリに保存された命令が一つまたは複数のブロックにより指定された機能を実現する命令手段を含む製造物の一つを実現するように、コンピュータまたはプログラム可能なデータ処理装置を命令する機能を実行させることができる。このコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたはその他のプログラム可能なデータ処理装置に読み込まれ、コンピュータまたはその他のプログラム可能なデータ処理装置に一連の動作ステップを実行させ、コンピュータまたはその他のプログラム可能な装置上で実行される命令が一つ以上のブロックにより指定される機能を実現するステップを行わせるなど、コンピュータが実現可能な処理を実現させる。
【0014】
したがって、ブロック図のブロックは、指定された機能を実行するための複数の手段の組み合わせ、指定された機能を実行するための複数のステップの組み合わせ、および指定された機能を実行するための複数のプログラム命令手段をサポートする。さらに、ブロック図のそれぞれのブロック、およびブロック図に示されたブロックの組み合わせは、指定された機能またはステップを実行する専用のハードウェアベースのコンピュータシステム、或いは専用ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせにより実現可能であることは明らかである。
【0015】
本発明は、コンピュータのオペレーティングシステムで動作するアプリケーションプログラムを介して実現しても良い。本発明はまた、携帯機器、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサをベースとした家庭用電子機器、プログラム可能な家庭用電子機器、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ等を含むその他のコンピュータシステムの構成でも実行可能である。
【0016】
本発明の構成要素であるアプリケーションプログラムは、特定のデータタイプを実現するルーチン、プログラム、コンポーネント、データ構造体などを含んでも良く、特定のタスク、動作またはタスクを実行しても良い。分散コンピューティング環境では、アプリケーションプログラムは(全体として、または部分的に)ローカルのメモリ或いはその他の保存装置に記憶されても良い。さらに、或いは代替として、アプリケーションプログラムは(全体として、または部分的に)、タスクが通信ネットワークを介してリンクした遠隔の処理装置により実行されて本発明が実現できるように、遠隔のメモリ或いは保存装置に記憶されても良い。以下、本発明の典型的な実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、それぞれの図面において同様の構成には同様の参照番号を付している。
【0017】
本発明の一つの態様のパラメータ制限値の超過を判断する方法は、許容可能なパラメータの大きさとパラメータの変化速度の両方を一つの簡単な方法に統合する。パラメータの大きさ変化の絶対値の合計は、ある時間間隔を通して監視される。この大きさ変化の合計は、所定の制限値の曲線と比較され、パラメータの制限値が超過したか否かが判断される。制限値を超過した場合、システムは是正処置を行う。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の制限値超過を判断する方法を実現する蒸気タービンシステムを示す図である。蒸気タービンシステムに本発明を用いているが、これは本発明の適用の一つの典型的な例に過ぎない。当業者には、本発明は、システムのパラメータが制限値を有し、パラメータの値が時間とともに変化するものであれば如何なるシステムにも実施可能であることは明らかである。これらのシステムは、工業用機械、蒸気タービン、ガスタービン、その他の燃焼システム、および油圧システムを含むが、これに限定されることはない。
【0019】
図1に示されるように、蒸気タービンシステムに複数の蒸気タービン100を有している。蒸気は、蒸気流入管105を介して蒸気タービン100に流入する。同様に、蒸気は蒸気排出管107を介して蒸気タービン100から排出される。蒸気流入管105を通過する蒸気流は蒸気バルブ110により調整される。蒸気バルブ110が開いている場合、蒸気は蒸気流入管105を介して流れることができる。反対に、蒸気バルブ110が閉じている場合、蒸気は蒸気流入管105を通過して蒸気タービン100に流入することはできなくなる。監視部115は管に流入する蒸気の各種パラメータを監視する。ここでパラメータの一例として蒸気温度を監視する場合について説明するが、当業者には、例えば、蒸気圧、蒸気タービン100で使用される軸受けのメタル温度、および制限値が設けられる可能性のあるその他の各種パラメータなどを含むが、これに限定されない、蒸気タービン100のその他の動作パラメータを監視部115により監視しても良いことは明らかである。以下に説明するように、制御部125は監視部115から測定データを受信し、データの測定値がシステムの制限値を超えた場合に是正処理を行う場合がある。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態の制限値超過を判断する方法で使用される制御部125のブロック図である。制御部125は、本発明に係わるプログラムドロジック215(例えば、ソフトウェア)を保存したメモリ205を有している。メモリ205はまた、本発明の動作で使用される測定データ220およびオペレーティングシステム225も保存している。プロセッサ227はオペレーティングシステム225を用いてプログラムドロジック215を実行し、これにより、測定データ220も使用する。データバス230は、メモリ205とプロセッサ227の間の通信を実行する。ユーザは制御部125と、キーボード、マウス、コントロールパネル、或いは、制御部125とデジタルデータを通信可能なその他の任意のデバイス等から構成されるユーザインタフェース235を介してインタフェースをとっている。制御部125は、蒸気タービン100と、場合によっては、さらに蒸気タービンシステムなどのその他の外部機器と、I/Oインタフェース240を介して通信する。図示された実施の形態において、制御部125は蒸気タービン100に対して遠隔に配設されているが、制御部125は蒸気タービンシステムと同一の場所に配設されても良いし、蒸気タービンシステムに内蔵されていても良い。さらに、ここで実現される制御部125およびプログラムドロジック215は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、或いはこれらの組み合わせを備えても良い。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態の、本発明を実現する制御部125の制御ロジックの典型的なフローチャートを示す。ブロック305において、蒸気タービンシステムは始動し、蒸気タービン100は蒸気流入管105を介して蒸気が流入するまで待機する。ブロック310で、制御部125は蒸気バルブ110を開き、蒸気が蒸気タービン100に流入することを可能にする。監視部115は連続的に動作パラメータ、本実施の形態では蒸気温度を監視する。本発明の一つの態様によると、監視部115は測定データを制御部125に提供しても良い。これにより、制御部125は、ブロック315で示されるように、連続的に動作パラメータを監視する。この測定データは、例えば、動作パラメータの実測値でも良く、或いは動作パラメータの変化を表す絶対値でも良い。当業者には、監視部115により制御部125に提供されるデータは、動作パラメータに関連するデータであれば、これ以外の形式のものでも良いことは明らかである。ブロック320で、制御部は、蒸気タービン100の動作パラメータがそれぞれの動作制限値の範囲内であるか否かを判断する。蒸気タービン100が許容される制限値の範囲内で動作している場合、ブロック315に戻り、制御部125は動作パラメータを監視する。蒸気タービン100が許容される制限値の範囲を超えて動作している場合、制御部125はブロック325で示される是正処置を行う。本発明の実施の形態では、この是正処置325は、如何なる制御動作であっても良い。制御動作は、例えば、警報の発動、警報信号の送信、蒸気バルブ110の閉栓、蒸気タービン100に流入する蒸気温度の変更、蒸気タービン100に流入する蒸気圧の変更、或いは、システムの停止などを含んでも良いが、これに限定されることはない。更に、警報の発動、或いはシステムが許容される制限値を超えて動作した事象は、制御システム125のメモリ205に記憶されても良い。
【0022】
本発明の他の態様によると、ブロック315において動作パラメータを監視している際に、制御システム125は、所定の時間間隔内における動作パラメータの大きさ変化の絶対速度を測定しても良い。したがって、制御システム125は、動作パラメータの大きさの変化が望ましくない速度で行っているか否かを判断することができる。蒸気タービンの蒸気温度の場合を一例として挙げると、20分の時間間隔の間に蒸気温度が40度上昇した場合、蒸気タービンに損傷が発生しないと考えられる。しかしながら、2分間の時間間隔で同じ温度上昇が起こった場合、蒸気タービンに重大な損傷が発生する可能性がある。制御システム125が監視する時間期間の長さは任意の時間期間を設定可能であるが、理解を容易にするため、以下の説明では、時間期間の長さを20分間とする。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、ブロック315で動作パラメータの連続的な監視に検出曲線を用いて制限値の超過を検出する。この検出曲線は、本発明に従って監視している動作パラメータおよび監視している装置の種類の何れか一つ、或いは両方に固有としても良い。検出曲線は、監視している時間期間の間の動作パラメータの絶対値の変化を定義するものであれば、如何なる曲線であっても良い。本発明の一つの態様によると、動作パラメータを監視する前に検出曲線は定義される。本発明によると動作パラメータを監視する際、動作パラメータの絶対値の変化を検出曲線と比較して、制限値の超過事象を瞬間的および前進的に検出する。
【0024】
図3のブロック315で動作パラメータが監視されている際、検出曲線と比較される動作パラメータの大きさ変化の絶対値が継続的に監視され、更新される。動作パラメータの大きさの変化を表すデータ値は、制御部125のメモリ205に保存しても良い。本発明の一つの態様によると、動作パラメータの変化の絶対値は、現時点から遡って所定の時間期間、検出曲線と比較される。このため、所定の時間期間が20分の場合、監視される動作パラメータの変化速度は、最新の20分間のものとなる。動作パラメータを連続して監視している間、データは検出曲線と比較され、連続して更新される。グラフに表すと、時間期間を遡った動作パラメータの大きさ変化の絶対速度を表すデータ曲線は、測定対象の所定の時間期間を表す監視窓を通して時間的に変化する。検出曲線は、所定の時間期間の動作パラメータの変化速度の制限値を定義する。データ曲線がこの検出曲線と交差するポイントは全て制限値の超過となる。ブロック315で制御部125による連続的なスキャンにより制限値超過の事象が検出される。本発明によると、制限値の超過が検出された場合、動作パラメータが制限値レベルを超えて留まった時間期間により制限値超過の事象を定義する必要はない。その代わり、本発明では、動作パラメータが変化している時間期間を自動的に統合して分析し、動作パラメータが装置を損傷する可能性のある速度で増加または減少した状況を検出できるようにしている。
【0025】
図4から図9は、本発明の検出分析の3つの例を示すグラフである。それぞれの例において、蒸気タービンの蒸気温度は、20分の時間間隔で測定されている。当業者には、これらの3つの例は、蒸気タービンシステムに関連する本発明の用途の一つを表すものに過ぎず、本発明は、広範囲の動作パラメータを監視するために、これ以外の様々な種類のシステムにも適用可能であることは明らかである。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態の制御部125により分析される第1のデータの例を示す図である。図4は、蒸気タービンに流入する蒸気の温度がある時間期間一定に留まった後、短い時間期間にわたって急激に増加した状況を表している。蒸気タービンに流入する蒸気の温度は、20分の時間期間の間測定される。午後12時の蒸気温度が1000°F(538℃)で、午後12時15分まで温度は1000°F(538℃)に留まっている。その後、温度は上がり始め、午後12時20分に1025°F(552℃)になる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態の制御部のデータ分析の第1の例を示すグラフである。データ窓に蒸気タービンの検出曲線501が示されている。0分から4分30秒まで水平な曲線であるが、その後直線的に上昇し、さらに15分から20分まで再び水平な曲線に戻る。検出曲線501は、装置に固有のもので、監視する装置から導き出される。蒸気タービンの場合、検出曲線501は監視する蒸気タービンに固有であり、監視する蒸気タービンの寸法、蒸気タービンの種類、およびその動作時の蒸気タービンの状態を含むが、これに限定されない様々な要因の組み合わせから導き出される。本発明の動作を実行する前に、検出曲線501は、制御部125のメモリ250にプログラムされる。この検出曲線501は、蒸気タービンに流入する蒸気温度の大きさ変化の絶対速度の制限値を表す。例えば、蒸気温度は4分30秒間の時間間隔で、制限値を超過せずに、15°F(8.4℃)まで変化することができる。同様に、蒸気温度は15分から20分の時間間隔で、制限値を超過せずに、50°F(27.8℃)まで変化することができる。
【0028】
図4から蒸気温度の変化の累積的な絶対速度を、現時点から遡る20分の時間期間でグラフ化するとデータ曲線503が得られる。12時20分を最新の時間とすると、対応する蒸気温度は1025°F(552℃)となる。遡ると、12時19分で蒸気温度は1021°F(550℃)であった。このため、最新の時間の1分前で、蒸気温度の変化速度の累積的な絶対値は4度となる。これは、データ曲線503でデータポイント(1、4)により表される。同様に、12時15分で、蒸気温度は1000°F(538℃)であった。このため、最新の時間と最新の時間5分間前の12時15分との間の蒸気温度の変化の累積的な絶対速度は25度となる。これはデータ曲線503でデータポイント(5、25)により表される。12時と12時15分の間、蒸気温度は一定して1000°F(538℃)に留まっている。このため、最新の時間5分前から最新の時間20分前までの間の蒸気温度は変化していない。しかしながら、同じ時間期間の蒸気温度の変化の累積的な絶対速度は華氏25度となる。このため、データ曲線503は、ポイント(5、25)とポイント(20、25)の間を走る水平線として表される。理解を容易にするため、本発明の動作例において、蒸気温度の測定は1分毎のみに行った。しかしながら、当業者には、動作パラメータを分析する推移する時間期間の内でデータ測定を任意の回数行っても良いことは明らかである。
【0029】
この例では、データ曲線503が最初に検出曲線501を交差した時に制限値の超過が発生する。このポイントで、制御部125は、例えば、警報の発動、超過を知らせるメッセージの転送、蒸気タービンの蒸気の冷却、蒸気バルブ110の閉栓によるタービンに流入する蒸気流の遮断、或いは蒸気タービン100の停止を含むが、これに限定されない是正処置をとっても良い。さらに、制御部125は、後の検索のため、そのメモリ210に制限値超過を記録しても良い。
【0030】
図6は、本発明の実施の形態の制御部により分析される第2のデータの例を示す図である。図6は、蒸気タービンに流入する蒸気の温度が下がった後、再びのその最初の温度に戻る状況を表している。午後12時に、蒸気タービンに流入する蒸気の温度は1015°F(546℃)である。午後12時12分から蒸気の温度は下がり始め、午後12時15分に蒸気の温度は1005°F(541℃)になる。午後12時16分から蒸気の温度は上昇を始め、午後12時20分に1015°F(546℃)に戻る。
【0031】
図7は、本発明の実施の形態の制御部125のデータ分析の第2の例を示すグラフである。検出曲線701は、図5に示したものと同様である。図5に示した例と同様に、図6から蒸気タービンに流入する蒸気の温度変化の累積的な絶対値を、現時点から遡る20分の時間間隔でグラフ化するとデータ曲線703が得られる。現時点は午後12時20分であり、データは午後12時20分から遡った時間期間でグラフ化される。データ曲線703には、蒸気温度が華氏10度下がった後にその元の温度に戻る山が形成されている。蒸気温度の変化の累積的な絶対値が検出曲線701で定義される制限値を超えるポイントは存在しない。したがって、この例において蒸気温度は許容される動作制限値内に留まっている。
【0032】
図8は、本発明の実施の形態のデータ分析の第3の例を示すグラフである。図8は、蒸気タービンに流入する蒸気温度が分析する時間間隔を通して漸進的に上がる状況を表している。午後12時から午後12時7分まで蒸気温度は1010°F(543℃)近辺で比較的一定に保たれている。その後温度は下がり、午後12時8分に1005°F(541℃)となるが、再び漸進的な上昇を開始し、午後12時20分には1050°F(566℃)となる。
【0033】
図9は、本発明の実施の形態の制御部の第3のデータ分析の例を示すグラフである。検出曲線901は、図5および図7に示したものと同様である。前述の例と同様に、図8から蒸気タービンに流入する蒸気の温度変化の累積的な絶対値を、現時点から遡る20分の時間間隔でグラフ化するとデータ曲線903が得られる。データ曲線903において最新の時間は午後12時20分である。データ曲線903は、最新の時間から12分前である午後12時8分から最新の時間まで温度が漸進的に上昇していることを示している。図5および図5の例と同様に、データ曲線903が最初に検出曲線901と交差した時に制限値の超過は発生する。ほぼデータポイント(9、30)のこのポイントで、制御部125は上述の制御動作をとっても良い。上述の説明はあくまでも動作パラメータを監視する際の3つの時間の例を個別に示したに過ぎないことは明らかである。本発明を通常の動作に適用した場合、動作パラメータは継続的に監視される。それぞれ個別の事例ごとにそれぞれの動作パラメータの監視時間において異なるデータ曲線が生成可能である。
【0034】
当業者には、上述の説明および関連する図面に示された教示の利点を受けて、上述の本発明の実施の形態から多くの修正態様およびその他の実施の形態が相当可能である。したがって、本発明はここに開示した特定の実施の形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱しない限りにおいて、あらゆる修正態様およびその他の実施の形態が含まれる。本明細書中において特定の用語を使用しているが、これらの用語は一般的な説明を行うために用いたものであり、限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図面を参照して、本発明について一般的な用語で説明したが、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。
【図1】図1は、本発明の実施の形態の制限値超過を判断する方法を実行する蒸気タービンシステムの概略ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態の制御値超過を判断する方法で用いられる制御部のブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態の制御部により用いられる制御ロジックの典型的なフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施の形態の制御部により分析される第1のデータの例を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態の制御部のデータ分析の第1の例を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態の制御部により分析される第2のデータの例を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の制御部のデータ分析の第2の例を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態の制御部により分析される第3のデータの例を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の制御部のデータ分析の第3の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
100 蒸気タービン
105 蒸気流入管
107 蒸気排出管
110 蒸気バルブ
115 監視部
125 制御部
205 メモリ
215 プログラムドロジック
220 測定データ
225 オペレーティングシステム
227 プロセッサ
230 データバス
235 ユーザインタフェース
240 I/O インタフェース
305 ブロック
310 ブロック
315 ブロック
320 ブロック
325 ブロック
501 検出曲線
503 データ曲線
701 検出曲線
703 データ曲線
901 検出曲線
903 データ曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン(100)の動作パラメータに関連する測定データ(220)を受信するステップと、
所定の時間期間を通して前記受信したデータの変化速度が所定の制限値を超えたことを判断するステップと、
制限値超過が発生した場合には制御動作を行うステップと、を含むことを特徴とする蒸気タービンシステムの動作パラメータの制限値超過を判断する方法。
【請求項2】
前記測定データ(220)を受信するステップは、前記蒸気タービンシステムの蒸気タービンに流入する蒸気の温度に関連するデータを受信すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定データ(220)を受信するステップは、前記蒸気タービンシステムの蒸気タービンに流入する蒸気の圧力に関連するデータを受信すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記判断するステップは、前記受信した測定データ(220)を、所定の時間長さにおける所定の変化速度の大きさに対応する検出曲線(501、701または901)と比較すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
更に、測定データ(220)から前記所定の時間期間を通した前記受信したデータ曲線(503、703または903)を含むグラフを生成するステップと、
前記データ曲線(503、703または903)が前記検出曲線と交差する前記グラフのポイントを判断するステップと
を有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御動作を行うステップは、警報信号を送信すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記制御動作を行うステップは、前記動作パラメータを定義する流入を調整すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記制御動作を行うステップは、前記動作パラメータを使用するシステムを停止すること含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
更に、制御動作を行ったことを示す信号を保存するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
蒸気タービンシステムの蒸気タービンに連結した、前記蒸気タービンシステムの動作パラメータと関連する測定データを収集する監視部と、
当該監視部と通信して、前記測定データを受信する制御部とを含む、前記蒸気タービンシステムの動作パラメータの制限値超過を判断するシステムにおいて、
前記制御部は、
所定の時間期間を通して前記受信したデータの変化速度が所定の制限値を超えたことを判断するステップと、
制限値超過が発生した場合には制御動作を行うステップと、を実行するプログラム論理を有することを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−224918(P2007−224918A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44824(P2007−44824)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】