説明

券類取出し装置

【課題】 簡易な構成でありながら、チケット等の排出エラーを低減し、確実に排出可能な券類取出し装置を提供する。
【解決手段】 カード状の券類であるチケットPをその内部に積層して収容する収容箱10と、チケットを吸着保持する吸着子24と、吸着子24を支持するアーム23と、アーム23の昇降機構20とを備える。吸着子24と、アーム23と、収容箱10に収容されているチケットPの表面に吸着子24を吸着させる吸着位置と待機位置との間でアーム23を移動可能にする昇降機構20は、取出し手段を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
チケット等の発行機に備えられる券類取出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予め印刷等されて発行されたチケット、例えば乗車券、回数券等の券類は、ロール紙を所定の長さに切断し、それに印字し、必要により磁気データを書込むことにより発行される(特許文献1参照)。そして、従来より、予め発行された各種チケットやプリペイドカード等の券類の発行機に備えられる券類取出し装置として、チケットを上下方向に積層した収納容器の最上部から、その先端に吸着子を有する吸着ユニットによりチケットを吸着保持して上方に取出す装置が提案されている(特許文献2参照)。なお、特許文献2に記載の取出し装置においては、吸着子にチケットが吸着保持されていることを、吸着子近傍に配設した反射型の光電センサにより検知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−40554号公報
【特許文献2】特開2009−205574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予め発行されたチケットは、その券紙の材料がロール紙であることや、発行機による発行過程等により、その長辺方向に湾曲した状態となる場合が多い。特に、特許文献1に記載されたような発行機から発行されるチケットは、ロール紙のロールの内側が印刷面となるため、文字等が印字された面が内側となるように湾曲する。こうして予め印刷されたチケットを、特許文献2に記載された取出し装置で取出す場合には、チケットの湾曲の度合いによりチケットの表面とセンサとの距離が一定しない。そして、図5(b)に示すように、チケットの表面とセンサとの距離が近すぎた場合には、反射型の光電センサの光路が十分に確保できないことになる。このため、吸着子がチケットを吸着保持しているにもかかわらずチケットの検出信号がセンサから出力されず、チケットの排出エラーを招く原因となるという問題があった。
【0005】
本願発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながら、チケット等の排出エラーを低減し、一枚ずつ確実に排出可能な券類取出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、その開口部の対向縁部に分離板を形成した収容箱内に積層されたカード状の券類を、その最上部より一枚ずつ吸着保持して取出す券類取出し装置において、吸着子と、当該吸着子を支持するとともに吸着位置と待機位置との間を移動可能な支持部材と、を有する取出し手段と、前記支持部材に配設され、前記支持部材と同期して移動するとともに、前記カード状の券類が前記吸着子により吸着保持されていることを検知するセンサと、前記支持部材に配設され、前記センサと同期して移動するとともに、前記カード状の券類の表面に当接することにより、前記センサと前記カード状の券類との間の距離を所定の間隔より大きく保つための当接部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記当接部材は、前記センサを保持するブラケットである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記センサは、光電センサである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1乃至請求項3に記載の発明によれば、センサと、そのセンサと同期して移動する当接部材を備えることから、センサが吸着保持されたチケット等を確実に検出することができ、チケット等が吸着保持されているにもかかわらずセンサの検出不良に起因したチケット等の排出エラーが発生することを低減することができる。これにより、簡易な構成でありながら、チケット等を確実に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る券類取出し装置の概要図である。
【図2】収容箱10の斜視図である。
【図3】収容箱10の断面図とともにチケットPの残量検出動作を示す説明図である。
【図4】収容箱10の断面図とともに収容箱10からチケットPを取出す状態を示す説明図である。
【図5】吸着子24に吸着保持されたチケットPの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明に係る券類取出し装置の概要を示す側面図である。図2は、収容箱10の斜視図であり、図3は、チケットPの残量検出動作を収容箱10の縦断面図とともに示す説明図である。また、図4は、収容箱10からチケットPを取出す状態を収容箱10の縦断面図とともに示す説明図である。
【0012】
この券類取出し装置は、カード状の券類であるチケットPをその内部に積層して収容する収容箱10と、チケットを吸着保持する吸着子24と、吸着子24を支持する支持部材としてのアーム23と、昇降機構20を備える。昇降機構20は、図1に実線で示す収容箱10に収容されているチケットPの表面に吸着子24を吸着させる吸着位置と、図1に仮想線で示す待機位置との間でアーム23を移動可能とするものである。なお、吸着子24、アーム23、および、昇降機構20は、この発明における取出し手段を構成する。
【0013】
昇降機構20はすべりねじを使用しており、一端がモータ21に連結され、収容箱10に対して垂直配置されたねじ軸22に螺合したナット(図示せず)が、ねじ軸22に加えられた回転駆動力により昇降するものである。このナットは、アーム23に内設されており、アーム23がナットを介してねじ軸22に接続される。アーム23はナットの昇降により、チケットPの吸着位置と待機位置との間を移動する。なお、昇降機構20によるアーム23の昇降動作は制御部25により制御される。
【0014】
アーム23の先端部には吸着子24と吸着検出センサS1が配設される。吸着子24は、吸引ポンプ等を備える吸引調整部26を介して制御部25に接続される。吸引調整部26は、制御部25から出力されるチケットPの吸着・排出信号に応じて、吸引ポンプ等の動作を制御することにより吸着子24における吸引力を調整する。
【0015】
吸着検出センサS1は、吸着子24に吸着保持されたチケットPを検出するための投光器と受光器を備える光電センサであり、ブラケット30に保持されている。ブラケット30には、板材を曲げ加工、溶接、切削加工等することにより、アーム接続部31と、センサ保持部32と、チケット当接部33とを形成させている。吸着検出センサS1は、アーム接続部31を介してアーム23に接続され、吸着子24の近傍に配置される。なお、チケット当接部33の形状は、板状に限定されるものではなく、光電センサの外形に対応した円筒形状または角柱形状のものであってもよい。
【0016】
収容箱10は、図2に示すように、その底面が内部に収容するチケットPの大きさに対応した箱形状を有する。収容箱10の開口部13の短辺側の対向縁部には、それぞれ分離板11が形成されており、この分離板11は、収容箱の短辺側の側板の上端を箱の内側に向かって略直角に折り曲げ加工することにより形成している。また、収容箱10の長辺側の側板の一方の上端には、積層されたチケットPの残量を確認するための切欠き部12が形成される。
【0017】
収容箱10の内部には、図3および図4に示すように、2個のコイルスプリング17と、そのコイルスプリング17により下面を支持された券受け板14と、券受け板14に垂設された検出板15が配設される。各コイルスプリング17は、その両端を収容箱10の底面と券受け板の下面の対応する位置に配設された一対のコイル支持部16にそれぞれ嵌着させることにより、収容箱10内に配設され、券受け板14をバランスよく支持する。券受け板14と分離板11の間に挟持された状態のチケットPが収容箱10の開口部13から排出されるにつれて、コイルスプリング17の復元力により券受け板14が上昇する。そして、券受け板14に垂設された検出板15が収容箱10の切欠き部12に到達すると、図3に示すように、検出板15が残量検出センサS2により検出される。
【0018】
残量検出センサS2は、投光器と受光器を備えた反射型センサであり、収容箱10の切欠き部12から水平方向に所定の距離だけ離隔した位置に配置される。そして、残量検出センサS2は、収容箱10の切欠き部12に位置する積層されたチケットPの側面や検出板15に対して光を投光し、反射された光を受光器に受光する。紙である積層されたチケットPの側面に投光された光の反射光は金属板材からなる検出板15からの反射光に比べて弱いため、受光器を一定以上の強度を有する光のみを受光するように調整することにより、残量検出センサS2が検出板15から反射された光のみを受光した場合にのみ、その検出信号を制御部25に伝達するようにしている。また、検出板15における残量検出センサS2からの投光を受ける面には、検出精度を向上させるために、積層されたチケットの側面と比較してより多くの光を反射するアルミ箔等の素材を貼付等している。こうして、検出板15が収容箱10の切欠き部12に到達し、残量検出センサS2により検出板15からの反射光が検出されると、検出信号が制御部25に伝達され、さらに、制御部25からチケット残量が少なくなったことを警告する信号が発せられる。
【0019】
次に、収容箱10からチケットPを取出す動作について説明する。
【0020】
この収容箱10に収容されるチケットPは、ロール紙を切断して印刷および磁気の書き込みを行うチケット発行機により予め発行されたものである。このような印刷面が内側になるように湾曲しているチケットPの束を、収容箱10の開口部13からコイルスプリング17の弾性力を利用して、まず一方の分離板11と券受け板14の間に印刷面を上側にした状態で差込み、次にもう一方の分離板11と券受け板14の間に人の手で押し込むようにして収容箱10内にチケットPの束全体を収容する。こうして、チケットは収容箱10の開口部13から印刷面が見える状態で、収容箱10の分離板11と券受け板14の間に収容される。なお、収容箱10の開口部13から印刷面が見える状態で収容することで、チケット残量が少なくなったときにチケットPを補充すべき収容箱10を補充者が見間違えることがない。また、この実施形態では、吸着検出センサS1に光電センサを利用しているため、一般的に黒色または茶色であるチケットの磁気書き込み面よりも光の反射のよい印刷面を上側にして収容箱に収容するほうが、より好適に吸着子24に吸着されているチケットPを検出できる。
【0021】
収容箱10に収容されたチケットPは、アーム23が昇降機構20によりチケットPの吸着位置に下降すると、収容箱10の最上部のチケットPに吸着子24が密着し吸着保持される。しかる後、アーム23が昇降機構20によりチケットPの待機位置へと上昇する。このアーム23の上昇に伴い、吸着保持されている収容箱10の最上部のチケットPが収容箱10から取り出される。なお、最上部のチケットPの裏面にその下層のチケットが静電気等により互いに吸着していても、図4に示すように、チケットPの取出し時のチケットの変形により、最上部のチケットPの端部とその下層のチケットの端部の間に段差が生じ、収容箱10の開口部13の短辺側に設けられた一対の分離板11が、下層のチケットの端部にのみ係止することで、両チケットを分離することができる。
【0022】
図5は、吸着子24に吸着保持されたチケットの状態を示す説明図である。図5(a)は、この発明に係る券類取出し装置におけるブラケット30を備えたアーム23によりチケットPを取出したときのチケットPの状態を示し、図5(b)は、従来のブラケット40を備えたアーム23によりチケットPを取出したときのチケットの状態を示している。なお、図5において、同一の構成については同一の符号を付している。
【0023】
上述したように、チケットPは印刷面が内側となるように湾曲した形状を有している。このため、図5(b)に示すように、チケットPは吸着子24に吸着保持された状態でも湾曲している。従来のブラケット40は、アーム当接部41とセンサ保持部42とからなり、チケット当接部33を有していない。このため、湾曲しているチケットPの表面はチケット自身の湾曲により、吸着検出センサS1と極めて近い距離に位置している。ここで吸着検出センサS1として光電センサを採用している場合には、光路が十分に確保できずに、吸着子24がチケットPを吸着保持しているにもかかわらず、吸着検出センサS1からの信号が制御部25に伝達されずチケットの排出エラーが起こっていた。
【0024】
一方、図5(a)に示す、この発明の実施形態に係る券類取出し装置においては、ブラケット30に、チケット当接部33を設けていることから、吸着検出センサS1とチケットPの表面との間の距離を常に一定以上に保つことができ、光電センサの光路を十分に確保することができる。なお、チケット当接部33は、吸着検出センサS1とチケットPの表面との間の距離が1mm乃至10mmとなるように構成するのが好ましく、より好ましくは、2mm乃至4mmとなるように構成するのがよい。このため、吸着子24がチケットPを保持しているにもかかわらず、吸着検出センサS1からの信号が制御部25に伝達されずチケットPの排出エラーが起こることを、有効に防止することができる。
【0025】
この発明に係る券類取出し装置は、アーム23がチケットPを吸着保持して待機位置に上昇したときに収容箱10をアームの下部からスライド移動させる移動機構(図示せず)を備えたチケット自動販売機に設置することができる。この場合は、アーム23を待機位置から、さらにチケットの排出位置に移動させた後に、吸着子23によるチケットの吸着が解除されると、収容箱10の下部に配置されたチケット受取トレイ等にチケットが投下されることになる。また、この発明に係る券類取出し装置は、収容箱10の移動機構を備えたチケット自動販売機だけでなく、ベルトコンベア等を利用した他のチケット搬送手段と組み合わせることで、種々のチケット販売機に適用できる。
【符号の説明】
【0026】
10 収容箱
11 分離板
12 切欠き部
13 開口部
14 券受け板
15 検出板
16 コイル支持部
17 コイルスプリング
21 モータ
22 ねじ軸
23 アーム
24 吸着子
25 制御部
26 吸着調整部
30 ブラケット
31 アーム接続部
32 センサ保持部
33 チケット当接部
40 ブラケット
S1 吸着検出センサ
S2 残量検出センサ
P チケット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の対向縁部に分離板を形成した収容箱内に積層されたカード状の券類を、その最上部より一枚ずつ吸着保持して取出す券類取出し装置において、
吸着子と、当該吸着子を支持するとともに吸着位置と待機位置との間を移動可能な支持部材と、を有する取出し手段と、
前記支持部材に配設され、前記支持部材と同期して移動するとともに、前記カード状の券類が前記吸着子により吸着保持されていることを検知するセンサと、
前記支持部材に配設され、前記センサと同期して移動するとともに、前記カード状の券類の表面に当接することにより、前記センサと前記カード状の券類との間の距離を所定の間隔より大きく保つための当接部材と、
を備えることを特徴とする券類取出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の券類取出し装置において、
前記当接部材は、前記センサを保持するブラケットである券類取出し装置。
【請求項3】
請求項2に記載の券類取出し装置において、
前記センサは、光電センサである券類取出し装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−128931(P2011−128931A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287268(P2009−287268)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(502231904)株式会社仲久 (4)
【Fターム(参考)】