説明

刺激応答性高分子化合物と水の混合成分、インクジェット記録方法、インクジェットインク及びインクジェットインクセット

【課題】インク吸収性を有さない基材、特に剛度が低い被記録媒体に対しても、カラーブリード等を起こさず、かつ寸法安定性に優れ、折れ割れがない画像を、インク吸収性を持つ普通紙等に対しては高画質でカール等の問題を生じないインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】刺激を付与されることにより粘弾性を変化させる刺激応答性高分子化合物と水の混合成分であって、該混合成分の刺激前の粘度が1.5mPa・s以上20mPa・s以下、かつヤング率が0以上1Pa以下であり、該混合成分の刺激後の粘度が80mPa・s以上500Pa・s以下かつヤング率が1Pa以上、0.5MPa以下であることを特徴とする刺激応答性高分子化合物と水の混合成分、該刺激応答性高分子化合物と水の混合成分を含有したインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方法に関する物であり、インク吸収性に劣る媒体に対するカラーブリードや光沢の違和感がなく、かつ比較的剛度の低い被記録媒体に対して寸法安定性に優れ、かつ基材の折り曲げなどに対して、記録面の折れ割れがなく、普通紙記録に際しては、フェザリングが防止され、高画質出力が可能で、かつカールやコックリングなどを防止したインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的簡単な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また、使用される用途も多岐にわたり、それぞれの目的にあった記録媒体あるいはインクが使用される。
【0003】
特に、近年では記録速度の大幅な向上がみられ、軽印刷用途にも耐え得る性能を持つプリンタの開発も行われている。
【0004】
しかしながら、インクジェットプリンタにおいてその性能を引き出すためにはインクの吸収性を付与したインクジェット専用紙が必要である。
【0005】
インクの吸収性に劣る印刷用コート紙やアート紙、もしくは吸収性の全くないプラスチックフイルム上に記録する際には、異色インク液体同士が記録媒体上で混ざり色濁りを起こすいわゆるブリード等の課題があり、インクジェットに対して記録媒体の多様性をもたせる上で課題となっていた。
【0006】
一方、吸収性を十分保持する普通紙等や微塗工紙に対しては、インクが紙繊維間に沿ってにじむいわゆるフェザリングといった課題や、インクと共に色材が沈み込み、普通紙に対する顔料付き量に対して濃度が充分発現しない課題があった。
【0007】
上記の課題において、紫外線を露光することにより硬化するインクジェット記録用インクが開示されている(特許文献1参照)。また、顔料が必須に含有され、かつ重合性材料として三官能以上のポリアクリレートが必須とされており、かつ、ケトン、アルコールを主溶剤とするいわゆる非水系インクが提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
また、水系の紫外線重合モノマーを用いたインクが提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
これらの方法では、インク自身を硬化成分により硬化させるため非吸収性の媒体に対しても記録が可能となったが、色剤以外の硬化成分が多量に含有し、かつ揮発しないため記録面がインクドットにより盛り上がり、画質、特に光沢の不自然さを生じさせた。
【0010】
また、厚みが100μm以下の薄膜プラスチックフイルムや、坪量が100g/m2以下の比較的剛度が低い媒体に対して記録をすると、インク自身の硬化収縮を起因とする寸法安定性の悪化、いわゆるカール等の現象、記録済みの基材を折り曲げたときなどに発生するインク面の折れ割れ等が顕著であった。
【特許文献1】米国特許第4,228,438号明細書
【特許文献2】特公平5−64667号公報
【特許文献3】特開平7−224241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的はインク吸収性を有さない基材、特に剛度が低い被記録媒体に対しても、カラーブリード等を起こさず、かつ寸法安定性に優れ、折れ割れがない画像を、インク吸収性を持つ普通紙等に対しては高画質でカール等の問題を生じないインクジェット記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するには記録後のインク膜物性について、刺激応答後の粘度が80mPa・s以上250Pa・s以下かつヤング率が1Pa以上、0.5MPa以下に調整することで達成する。
【0013】
従来公知の活性エネルギー線により重合するモノマー、オリゴマー等を用いたインクジェット記録方法においてはインクを構成する大部分が比較的堅くてもろい膜となり、粘度が300Pa・s以上、ヤング率が1MPa以上となり折れ割れ正当の課題を解決できない。
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0015】
1.刺激を付与されることにより粘弾性を変化させる刺激応答性高分子化合物と水の混合成分であって、該混合成分の刺激前の粘度が1.5mPa・s以上20mPa・s以下、かつヤング率が0以上1Pa以下であり、該混合成分の刺激後の粘度が80mPa・s以上500Pa・s以下かつヤング率が1Pa以上、0.5MPa以下であることを特徴とする刺激応答性高分子化合物と水の混合成分。
【0016】
2.記録媒体に、インクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、該インクは、少なくとも色材と、前記1記載の刺激応答性高分子化合物と水の混合成分を含有し、かつ該インクは、刺激前の粘度が1.5mPa・s以上20mPa・s以下、ヤング率が0以上1Pa以下であり、刺激後の粘度が80mPa・s以上250Pa・s以下、ヤング率が1Pa以上、0.2MPa以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0017】
3.前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、刺激を与えることにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物であることを特徴とする前記2に記載のインクジェット記録方法。
【0018】
4.前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子であることを特徴とする前記3に記載のインクジェット記録方法。
【0019】
5.前記親水性主鎖に複数の側鎖の部分構造が下記一般式(A)で表されることを特徴とする前記4に記載のインクジェット記録方法。
【0020】
一般式(A) Poly−{(X1m−〔B−(Y1np
(式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
6.前記刺激応答性高分子化合物の親水性主鎖が重合度200以上、1000以下のポリ酢酸ビニルケン化物であり、かつ側鎖の変性率が0.5モル%以上4.5モル%以下であることを特徴とする前記4または5に記載のインクジェット記録方法。
【0021】
7.前記インクが、前記刺激応答性高分子化合物を0.8質量%以上5.0質量%以下含有することを特徴とする前記2〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0022】
8.前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする前記2〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
9.前記刺激に応答する前と前記刺激に応答した後の前記インクの初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とする前記2〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0024】
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間の秒を表す。
【0025】
10.前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たす事を特徴とする前記9に記載のインクジェット記録方法。
【0026】
式(2) 2<d(lnη)/dt<6
但し、ηは粘度を表し、tは時間の秒を表す。
【0027】
11.前記2〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いることを特徴とするインクジェットインク。
【0028】
12.前記11に記載のインクジェットインクをインクセットとして用いることを特徴とするインクジェットインクセット。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、インク吸収性を有さない基材、特に剛度が低い被記録媒体に対しても、カラーブリード等を起こさず、かつ寸法安定性に優れ、折れ割れがない画像を、インク吸収性を持つ普通紙等に対しては高画質でカール等の問題を生じないインクジェットインクとその記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明を更に詳しく説明する。
(刺激応答性高分子化合物)
本発明でいう刺激応答系高分子化合物とは、たとえば、熱、活性光線、磁場、pH等の刺激に応答して、存在形態を変化せしめ、その結果粘弾性等の物性に変化が生じる化合物をいう。与える刺激としては、活性エネルギー線が好ましい。
【0031】
本発明においては刺激応答の結果、粘弾性が増加する材料が好ましい。
【0032】
刺激に対する応答は、可逆的であっても不可逆的であってもかまわない。
【0033】
一方、刺激として紫外線を照射することにより重合固化する多官能モノマー、オリゴマー等の低分子材料が知られていたが、要求性能を満たさないといった課題があった。
【0034】
本来要求される性能を満たすためには、インクジェットインクの反応前後の粘弾性を厳密に制御する必要があり、そのためには本発明のような親水性主鎖に複数の反応性側鎖を持ち、側鎖間で架橋反応を起こす高分子化合物が好ましい。
【0035】
本発明の硬化を阻害しない範囲で従来公知の硬化性化合物を入れ、硬化収縮を調整することも好ましい。
【0036】
本発明のヤング率とは、与える応力に対するひずみ量により算出される。本発明のヤング率は、フィッシャーインスツルメンツ社製、フィッシャースコープH100Cにより、刺激応答後の材料面を押し込み深さ2ミクロンでのヤング率を測定した。
【0037】
刺激応答前のヤング率が0より小さいことはあり得ず、1Pasより大きいと、インクジェットヘッドでの安定な出射が不可能となる。
【0038】
刺激応答後のヤング率が1Paより小さいとカラーブリード等の課題を生じ、0.5MPaより大きいと記録後の被膜の折れ割れ性等に劣る。
【0039】
粘度はたとえば日本分光(株)製レオメータ(製品名レオロジカ)等により活性エネルギー線、たとえば紫外線照射前後の粘弾性変化を測定できる。
【0040】
刺激応答前の粘度は1.5mPa・s以上20mPa・s以下かつヤング率が0以上1mPa以下であることが好ましい、この範囲を逸脱すると、インクジェットヘッドでの安定な出射が不可能となる。
【0041】
刺激応答後の粘度が80mPa・s以上250Pa・s以下かつヤング率が0.5MPa以下であることが好ましく。粘度が80mP・sより小さいと、カラーブリード等の問題が生じ、250Pa・sより大きいと揮発成分乾燥後に被記録媒体の表面と裏面の張力のバランスに著しい差が生じ、寸法安定性に劣ることとなる。
【0042】
〈活性エネルギー線架橋性高分子化合物〉
本発明に係る親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物(活性エネルギー線架橋性高分子化合物)とは、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性樹脂に対して、側鎖に光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型等の変性基を導入したものである。光重合型の架橋性基が感度、生成される画像の性能の観点から望ましい。
【0043】
色材のイオン性と前記高分子化合物の側鎖のイオン性の間には、好ましい組合せが存在する。色材にアニオン性を選択し、側鎖にはノニオン性またはアニオン性を組み合わせることで、画像堅牢性およびインクの保存性、連続出射性の観点で優れていることがわかった。側鎖としてはノニオン性が最も好ましい。理由は定かではないが、上記イオンの組合せの場合は、インク組成物の分解やインク組成物同士の会合などが少なくなり、このことが、上記効果に影響している可能性がある。
【0044】
本発明の活性エネルギー線架橋性高分子化合物の親水性主鎖と側鎖の部分構造が下記一般式(A)で表されるものが好ましい。
【0045】
一般式(A)
Poly−{(X1m−〔B−(Y1np
式中、Polyは親水性主鎖を表す。ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体が好ましい。
【0046】
{ }は側鎖を表す。側鎖中、X1は(p+1)価の連結基を表わす。pは正の整数を表し、好ましくは1〜5の整数である。具体的には、p=1のとき、X1が2価の連結基を表し、例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、イミノ基、エステル基、アミド基、スルホニル基などが挙げられ、又、これらが組み合わさって一つの2価以上の基を形成してもよい。またp=2以上のとき、後述する複数のB及びYは同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
1は、好ましくは、アルキレンオキシド、芳香族基が少なくとも組み合わさっている2価以上の連結基が挙げられる。
【0048】
Bは、架橋基を表す。具体的には、二重結合、三重結合を含有する基であり、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、ジアゾ基、アジド基を表す。好ましくは、アクリル基、メタクリル基である。
【0049】
1は、水素原子または置換基を表す。置換基とは具体的にはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンジル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ブチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アルキルウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、メトキシエチルウレイド、ジメチルウレイド等)、アリールウレイド基(例えば、フェニルウレイド等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド、トリルスルホンアミド等)、アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えば、メチルアミノスルホニルアミノ、エチルアミノスルホニルアミノ等)、アリールアミノスルホニルアミノ基(例えば、フェニルアミノスルホニルアミノ等)、ヒドロキシ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)などが挙げられ、更にこれらは置換基を有していても良い。
【0050】
mは、0または1を表す。
【0051】
nは、0または1を表す。
【0052】
親水性主鎖においては、側鎖の導入に対する簡便性や、取り扱いの観点からポリ酢酸ビニルのケン化物が好ましく、その重合度は200以上1000以下が好ましく、250以上700以下がハンドリングの観点からより好ましい。主鎖に対する側鎖の変性率は0.5モル%以上4.5モル%以下が好ましく1.5モル%以上3.5モル%以下が反応性の観点からより好ましい。0.5モル%より小さいと架橋性が不足し本発明の効果が小さくなり、4.5モル%より大きいと架橋密度が大きくなり硬くてもろい膜となり、本発明の効果が充分得られない。
【0053】
本発明の活性エネルギー線架橋性高分子化合物において、さらに好ましい構造としては、特開昭56−67309号公報記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中に、下記一般式(1)で表されるスチルバゾニウム基を導入した側鎖、又は、下記一般式(2)で表され4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造(ノニオン性)の側鎖、を有する樹脂組成物である。
【0054】
【化1】

【0055】
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、A-はカウンターアニオンを表す。
【0056】
また、下記一般式(3)で表される変性基(アニオン性)の側鎖も好ましく用いられる。
【0057】
【化2】

【0058】
光重合型の変性基としては、例えば特開2000−181062号、特開2004−189841号に示される下記一般式(4)で表される樹脂(ノニオン性)が反応性の観点から好ましい。
【0059】
【化3】

【0060】
式中、Rはアルキレン基又は芳香族環を表す。好ましくはベンゼン環である。
【0061】
また、特開2004−161942号公報に記載されている光重合型の下記一般式(5)で表される変性基(ノニオン性)を、従来公知の水溶性樹脂に用いることも好ましい。
【0062】
【化4】

【0063】
式中、R2はMe又はH、nは1又は2を表し、Xは−(CH2m−COO−又は−O−、Yは芳香族環又は単結合、mは0〜6までの整数を表す。
【0064】
更に、下記一般式(6)で表される変性基(ノニオン性)も好ましく用いられる。
【0065】
【化5】

【0066】
式中、R3はMe又はHを表し、R4は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。
【0067】
このような活性エネルギー線架橋型の樹脂は、インク全質量に対して0.5質量%から5.0質量%含有することが、好ましい。0.5質量%以上存在することで、架橋効率が向上し、架橋後のインク粘度の急激な上昇によりビーディングやカラーブリードがより好ましくなる。5.0質量%以下の場合、出射性やインク保存性の観点で好ましい。
【0068】
本発明の活性エネルギー線架橋型の樹脂においては、元々ある程度の重合度をもった主鎖に対して側鎖間で架橋結合を介して架橋をするため、一般的な連鎖反応を介して重合する活性エネルギー線硬化型の樹脂に対して光子一つ当たりの分子量増加効果が著しく大きい。一方、従来公知の活性エネルギー線硬化型の樹脂においては架橋点の数は制御不可能であるため硬化後の膜の物性、特にヤング率をコントロールすることができず、硬くてもろい膜となりやすい。また、揮発成分を含有するような場合に、乾燥後の膜物性が堅くてもろいため、紙の張力に打ち勝ってしまい寸法安定性を損なってしまう。
【0069】
本発明に用いられる高分子化合物においては架橋点の数は親水性主鎖の長さと、側鎖の導入量で完全に制御でき、目的に応じたインク膜の物性制御が可能である。
【0070】
また少量の反応点にて架橋を行うため、硬化収縮がほとんどないだけでなく、インクを乾燥しインク体積を減じる際に画像厚みのみ減少させ、面内方向の硬化収縮がほとんどない画像となるだけでなく、被記録媒体表面に追随して寸法安定性を損なうことがなく、できあがった膜はしなやかな膜となり折れ割れ性等に耐性がある。さらに、従来公知の活性エネルギー線硬化型インクが色剤以外のほぼ全量が硬化成分であり、そのため硬化後のドットが盛り上がり、光沢の違和感が劣ることに対し、本発明に用いられる樹脂においては光沢の違和感を損なうことない画像が得られる。
【0071】
(光重合開始剤、増感剤)
本発明においては、光重合開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0072】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0073】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はないが、水溶性の物が混合性、反応効率の観点から好ましい。特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましい。
【0074】
さらに、樹脂との相溶製の観点から下記一般式(9)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(n=1、HMPK)や、そのエチレンオキシド付加物(n=2〜5)がより好ましい。
【0075】
【化6】

【0076】
式中、nは1〜5の整数を表す。
【0077】
また、他には一例としベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類。2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、及びこれらの混合物等が好ましく用いられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0078】
これらの光重合開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる。
【0079】
これらの光重合開始剤は親水性主鎖に対して、側鎖にグラフト化されていても好ましい。
【0080】
(活性エネルギー線、照射方法)
本発明でいう活性エネルギー線とは、例えば電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が上げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。
【0081】
電子線を用いる場合には、照射する電子線の量は0.1〜30Mradの範囲が望ましい。0.1Mrad未満では十分な照射効果が得られず、30Mradを越えると支持体等を劣化させる可能性があるため、好ましくない。
【0082】
紫外線を用いる場合は、光源として例えば0.1kPaから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等従来公知の物が用いられる。
【0083】
(インク着弾後の光照射条件)
活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
【0084】
(ランプの設置)
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0085】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0086】
《色剤》
本発明のインクジェット用インクに用いられる色剤としては、インクジェットで公知の各種染料又は顔料を用いることができるが、活性エネルギー線架橋型の樹脂の側鎖のイオン性との組合せから、アニオン性である。
【0087】
〈染料〉
本発明で用いることのできる染料としては、特に制限はなく、酸性染料、直接染料、反応性染料等の水溶性染料、分散染料等が挙げられ、アニオン性染料である。
【0088】
〈水溶性染料〉
本発明で用いることのできるアニオン性の水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示した化合物に限定されるものではない。
【0089】
〈C.I.アシッドイエロー〉
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246、
〈C.I.アシッドオレンジ〉
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
〈C.I.アシッドレッド〉
88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
〈C.I.アシッドバイオレット〉
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
〈C.I.アシッドブルー〉
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
〈C.I.アシッドグリーン〉
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
〈C.I.アシッドブラウン〉
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
〈C.I.アシッドブラック〉
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
〈C.I.ダイレクトイエロー〉
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153、
〈C.I.ダイレクトオレンジ〉
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
〈C.I.ダイレクトレッド〉
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
〈C.I.ダイレクトバイオレット〉
9、35、51、66、94、95、
〈C.I.ダイレクトブルー〉
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
〈C.I.ダイレクトグリーン〉
26、28、59、80、85、
〈C.I.ダイレクトブラウン〉
44、106、115、195、209、210、222、223、
〈C.I.ダイレクトブラック〉
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〈C.I.リアクティブイエロー〉
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
〈C.I.リアクティブオレンジ〉
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
〈C.I.リアクティブレッド〉
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235、
〈C.I.リアクティブバイオレット〉
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
〈C.I.リアクティブブルー〉
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
〈C.I.リアクティブグリーン〉
8、12、15、19、21、
〈C.I.リアクティブブラウン〉
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
〈C.I.リアクティブブラック〉
5、8、13、14、31、34、39、
〈C.I.フードブラック〉
1、2、
等を挙げることができる。
【0090】
《顔料》
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できるが、アニオン性顔料である。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0091】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0092】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0093】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0094】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0095】
〈分散剤〉
上記顔料をインク中に安定に分散するための水溶性高分子分散剤としては、下記の水溶性樹脂を用いることができ、吐出安定性の観点から好ましい。
【0096】
水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂である。
【0097】
水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。
【0098】
これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0099】
〈アニオン性顔料〉
本発明に用いられるアニオン性顔料の形態としては、上記顔料をアニオン性高分子分散剤により分散された顔料、またはアニオン変性自己分散顔料であることが分散安定性の点から好ましい。
【0100】
アニオン性高分子分散剤とは、分子内に酸性基を有しており、これを塩基性化合物により中和して得られるアニオン性基を有した分散剤を指す。この時に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン類が挙げられるが、本発明においてはアミン類が特に好ましい。
【0101】
本発明に好まし用いられるアニオン性高分子分散剤としては、分子量が1000以上であれば特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸や、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩などの共重合体あるいは樹脂が、例えば、カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸の官能性を持つホモポリマー、コポリマー、ターポリマーを含むものである。酸の官能性を与えるモノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、ビニル酢酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸及びビニルスルホン酸等である。
【0102】
本発明に好ましく用いられるアニオン変性自己分散顔料とは、表面にアニオン性基を有し、分散剤なしで分散が可能な顔料を指す。アニオン性の自己分散顔料は、顔料に酸性基が修飾されており、これを塩基性化合物により中和しアニオン性基として、分散剤が無くとも水への分散を可能とした顔料を指す。
【0103】
表面に酸性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接酸性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接にまたはジョイントを介して酸性基が結合しているものをいう。
【0104】
酸性基(極性基ともいう)としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
【0105】
酸性基の修飾剤としては、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸、スルホン化ピリジン塩、スルファミン酸等の硫黄原子を含有する処理剤、顔料粒子表面を酸化させてカルボン酸基を導入する次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等のカルボキシル化剤が挙げられる。中でも、三酸化硫黄,スルホン化ピリジン塩またはスルファミン酸等のスルホン化剤、もしくはカルボキシル化剤が好ましい。酸性基を中和する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン類が挙げられるが、本発明においてはアミン類が特に好ましい。
【0106】
表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、例えば、WO97/48769号公報、特開平10−110129号公報、特開平11−246807号公報、特開平11−57458号公報、同11−189739号公報、特開平11−323232号公報、特開2000−265094公報等に記載の顔料粒子表面を適当な酸化剤で酸化させることにより、顔料表面の少なくとも一部に、スルホン酸基もしくはその塩といった極性基を導入する方法が挙げられる。具体的には、カーボンブラックを濃硝酸で酸化したり、カラー顔料の場合は、スルフォランやN−メチル−2−ピロリドン中で、スルファミン酸、スルフォン化ピリジン塩、アミド硫酸等で酸化することにより調製することができる。これらの反応で、酸化が進みすぎ、水溶性となってしまった物は除去、精製することにより、顔料分散体を得ることができる。また、酸化によりスルフォン酸基を表面に導入した場合は、酸性基を必要に応じて、塩基性化合物を用いて中和してもよい。
【0107】
そのほかの方法としては、特開平11−49974号公報、特開2000−273383公報、同2000−303014公報等に記載の顔料誘導体をミリング等の処理で顔料粒子表面に吸着させる方法、特開2002−179977号、同2002−201401号に記載の顔料を顔料誘導体と共に溶媒で溶解した後、貧溶媒中で晶析させる方法等を挙げることができ、いずれの方法でも容易に、表面に極性基を有する顔料粒子を得ることができる。
【0108】
本発明においては、極性基は、フリーでも塩の状態でもよいし、あるいはカウンター塩を有していてもよい。カウンター塩としては、例えば、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられ、好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
【0109】
本発明のインクジェット用インクに使用する顔料分散体の平均粒径は、500nm以下が好ましく200nm以下がより好ましく、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、150nm以下がより好ましい。顔料分散体の平均粒径が500nmを越えると、分散が不安定となり。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
【0110】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来る。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0111】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0112】
本発明のインクジェット用インクに用いる水に分散あるいは溶解可能な色剤の含有量は、インク全質量に対して、1〜10質量%であるのが好ましい。
【0113】
〈水溶性溶媒〉
本発明に係る溶媒としては、水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0114】
〈界面活性剤〉
本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0115】
これらの界面活性剤は顔料の分散剤としても用いることが出来、特にアニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0116】
〈各種添加剤〉
本発明においては、その他に従来公知の添加剤を含有することができる。例えば蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等である。
【0117】
〈記録用紙〉
紙には、塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m2あたりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m2あたりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m2あたりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙などを挙げることが出来る。
【0118】
本発明では坪量100g/m2以下の比較的剛度が低い被記録媒体に対して効果が顕著である。
【0119】
非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙などを挙げることが出来る。更に詳しくは、「最新紙加工便覧」紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、「印刷工学便覧」日本印刷学会編、などに詳細に記載されている。
【0120】
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。上質紙及び色上質紙、再生紙、複写用紙・色もの、OCR用紙、ノーカーボン紙・色もの、ユポ60、80、110ミクロン、ユポコート70、90ミクロン等の合成紙、その他片面アート紙68kg、コート紙90kg、フォームマット紙70、90、110kg、発泡PET38ミクロン、みつおりくん(以上、小林記録紙)、OK上質紙、ニューOK上質紙、サンフラワー、フェニックス、OKロイヤルホワイト、輸出上質紙(NPP、NCP、NWP、ロイヤルホワイト)OK書籍用紙、OKクリーム書籍用紙、クリーム上質紙、OK地図用紙、OKいしかり、きゅうれい、OKフォーム、OKH、NIP−N(以上、新王子製紙)、金王、東光、輸出上質紙、特需上質紙、書籍用紙、書籍用紙L、淡クリーム書籍用紙、小理教科書用紙、連続伝票用紙、上質NIP用紙、銀環、金陽、金陽(W)、ブリッジ、キャピタル、銀環書籍、ハープ、ハープクリーム、SKカラー、証券用紙、オペラクリーム、オペラ、KYPカルテ、シルビアHN、エクセレントフォーム、NPIフォームDX(以上、日本製紙)、パール、金菱、ウスクリーム上質紙、特製書籍用紙、スーパー書籍用紙、書籍用紙、ダイヤフォーム、インクジェットフォーム(以上、三菱製紙)、金毯V、金毯SW、白象、高級出版用紙、クリーム金毯、クリーム白象、証券・金券用紙、書籍用紙、地図用紙、複写用紙、HNF(以上、北越製紙)しおらい、電話帳表紙、書籍用紙、クリームしおらい、クリームしおらい中ラフ、クリームしおらい大ラフ、DSK(以上、大昭和製紙)、せんだいMP上質紙、錦江、雷鳥上質、掛紙、色紙原紙、辞典用紙、クリーム書籍、白色書籍、クリーム上質紙、地図用紙、連続伝票用紙(以上、中越パルプ)、OP金桜(チューエツ)、金砂、参考書用紙、交換証用紙(白)、フォーム印刷用紙、KRF、白フォーム、カラーフォーム、(K)NIP、ファインPPC、紀州インクジェット用紙(以上、紀州製紙製)、たいおう、ブライトフォーム、カント、カントホワイト、ダンテ、CM用紙、ダンテコミック、ハイネ、文庫本用紙、ハイネS、ニューAD用紙、ユトリロエクセル、エクセルスーパーA、カントエクセル、エクセルスーパーB、ダンテエクセル、ハイネエクセル、エクセルスーパーC、エクセルスーパーD、ADエクセル、エクセルスーパーE、ニューブライトフォーム、ニューブライトNIP(以上、大王製紙製)、日輪、月輪、雲嶺、銀河、白雲、ワイス、月輪エース、白雲エース、雲岑エース(以上、日本紙業製)、たいおう、ブライトフォーム、ブライトニップ(以上、名古屋パルプ)、牡丹A、金鳩、特牡丹、白牡丹A、白牡丹C、銀鳩、スーパー白牡丹A、淡クリーム白牡丹、特中質紙、白鳩、スーパー中質紙、青鳩、赤鳩、金鳩Mスノービジョン、スノービジョン、金鳩スノービジョン、白鳩M、スーパーDX、はまなすO、赤鳩M、HKスーパー印刷紙(以上、本州製紙製)、スターリンデン(A・AW)、スターエルム、スターメイプル、スターローレル、スターポプラ、MOP、スターチェリーI、チェリーIスーパー、チェリーIIスーパー、スターチェリーIII、スターチェリーIV、チェリーIIIスーパー、チェリーIVスーパー(以上、丸住製紙製)、SHF(以上、東洋パルプ製)、TRP(以上、東海パルプ製)等が挙げられる。
【0121】
〈各種フィルム〉
各種フィルムとしては、一般的に使用されているものはすべて使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどがある。
【0122】
また、熱収縮性支持体としては、たとえばPETフイルム、OPS(延伸ポリスチレン)フイルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フイルム、ONy(延伸ナイロンフイルム)フイルム、PEフイルム等、熱等、外部エネルギーの印加により収縮する素材であれば適用可能である。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0124】
〈高分子化合物1の合成〉
グリシジルメタクリレート56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒド48g、ピリジン2g、及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩1gを反応容器に入れ、80℃の湯浴中で8時間攪拌した。
【0125】
次に、重合度300、ケン化率88%のポリ酢酸ビニルケン化物45gをイオン交換水225gに分散した後、この溶液にリン酸4.5gと上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをPVAに対して変性率が3モル%になる様に加え、90℃で6時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂30gを加え1時間攪拌した。その後イオン交換樹脂を濾過し、ここに光重合開始剤として、イルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%水溶液100gに対して1.2gの割合で混合しその後イオン交換水にて希釈して10%の高分子化合物水溶液1を得た。
【0126】
なお、必要に応じてポリ酢酸ビニルケン化物の重合度、ケン化度を変え、p−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドの仕込量を変えて変性率を調整した。
【0127】
(マゼンダ顔料分散液の調製)
Cabot社製のマゼンダ自己分散物cabo−jet260をイオン交換水で希釈して、マゼンダ顔料含有量が10%のマゼンダ顔料分散液を調製した。得られたマゼンダ顔料分散液に含まれるマゼンダ顔料粒子の平均粒径は180nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0128】
(ブラック顔料分散液の調製)
Cabot社製のカーボンブラック自己分散物cabo−jet300をイオン交換水で希釈して、カーボンブラック含有量が10%のブラック顔料分散液を調製した。得られたブラック顔料分散液に含まれるカーボンブラック粒子の平均粒径は111nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0129】
(粘弾性の測定)
高分子化合物水溶液及び以下に示すインクセットを、日本分光(株)製レオメータ(製品名レオロジカ)により、UV光照射前後の粘性、弾性を測定した。
【0130】
尚、上記測定においては、UV光源としてウシオ電機性スポット式照射装置を用い、照射後の動的粘弾性変化を測定することにより、粘度と、ヤング率を求めた。
【0131】
高分子化合物水溶液のUV光照射前後の粘度と、ヤング率を下記表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
〔インクの作製〕
インクセット1の作製
以下によりインクセット1を作製した。
【0134】
顔料分散液 20部
高分子化合物水溶液1 22部
エチレングリコール 20部
2−ピロリドン 12部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0135】
インクセット2の作製
高分子化合物水溶液1において主鎖PVAの重合度を1200、変性率を1.0とした高分子化合物2の10%水溶液にした以外は同様にしてインクセット2を得た。
【0136】
インクセット3の作製
高分子化合物水溶液1において変性率を5.0とした高分子化合物3の10%水溶液にした以外は同様にしてインクセット3を得た。
【0137】
以下によりインクセット4を得た
顔料分散液 20部
高分子化合物水溶液1 20.9部
PEG400DA(ポリエチレングリコールジアクリレート) 1.1部
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア2959 0.2部
エチレングリコール 20部
2−ピロリドン 12部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0138】
インクセット5の作製
以下によりインクセット5を得た
顔料分散液 20部
高分子化合物水溶液1 19.8部
PEG400DA(ポリエチレングリコールジアクリレート) 2.2部
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア2959 0.2部
エチレングリコール 20部
2−ピロリドン 12部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0139】
インクセット6の作製
以下によりインクセット6を得た
顔料分散液 20部
高分子化合物水溶液1 11部
PEG400DA(ポリエチレングリコールジアクリレート) 11部
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア2959 0.2部
エチレングリコール 20部
2−ピロリドン 12部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0140】
インクセット7の作製
以下によりインクセット7を得た
顔料分散液 20部
高分子化合物水溶液1 6.6部
PEG400DA(ポリエチレングリコールジアクリレート) 15.4部
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア2959 0.2部
エチレングリコール 20部
2−ピロリドン 12部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0141】
インクセット8の作製
インクセット1において、高分子化合物水溶液の代わりに、イオン交換水に置き換えた以外は同様にしてインクセット8を得た。
【0142】
インクセット9の作製
以下に従いインクセット9を得た。
【0143】
顔料分散液 20部
PEG400DA(ポリエチレングリコールジアクリレート) 31部
エトキシ化グリセリントリアクリレート(EO20モル) 5部
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア2959 1.5部
エチレングリコール 20部
グリセリン 13部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクとブラックインクを得た。
【0144】
インクセット10の作製
以下によりインクセット10を得た。
【0145】
(マゼンダ顔料分散液)
ピグメントレッド122 15部
高分子分散剤(ジョンソン社製、ジョンクリル961) 5部
テトラエチレングリコールジアクリレート 80部
(ブラック顔料分散液)
カーボンブラック 15部
高分子分散剤(ジョンソン社製、ジョンクリル961) 5部
テトラエチレングリコールジアクリレート 80部
上記をサンドグラインダーにて、粒径が0.2〜0.3μmとなるように分散した。
【0146】
インクの作製
顔料分散液 20部
ラウリルアクリレート 15部
テトラエチレングリコールジアクリレート 25部
エチレングリコール変性トリメチロールプロパンアクリレート 24.5部
(共栄社化学製:TMP−3EO−A)
チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア907 5部
なお、上記インクセットは、インク作製後2μmのフィルターに通した。
【0147】
刺激応答前後の粘度・ヤング率の測定
上記実施例のインクについて紫外線照射前後のヤング率について、フィッシャーインスツルメンツ社製、フィッシャースコープH100Cにより、刺激応答前後の後の材料面を押し込み深さ2ミクロンでのヤング率を測定した。
【0148】
粘度については上記実施例の顔料分散液をのぞいた組成物の紫外線照射前後の粘度をジャスコインターナショナル(株)製レオメータ(製品名レオロジカ)により紫外線照射前後の粘度を測定した。
【0149】
本発明の紫外線照射前後の粘度・ヤング率はウシオ電機(株)製スポットUV照射装置(SP−7)にて1500mW/cm2の照度で10秒間照射後の値を示す。得られた、インクセットの照射前後の粘度・ヤング率は表2に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
評価画像の作製
カラーブリードの評価
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用し、表に示す各種記録媒体にマゼンダベタ地の上に巾250μmの黒細線をプリントした後、目視観察し、下記の基準に従ってカラーブリード耐性の評価を行った。
【0152】
◎:細線とベタの境界線がはっきりしている
○:わずかに境界がにじんでいる箇所があるが、実用上問題のない品質である
△:境界部ににじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である
××:細線とベタ部の境界が不明瞭な品質であり、ブリード耐性が極めて乏しい。
【0153】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射し、その後ドライヤーにて乾燥した。
【0154】
〔画像部光沢違和感〕
同様にして各種記録媒体に20cm×28cmの黒ベタプリント後、目視観察し、下記の基準に従って白地との光沢違和感の評価を行った。
【0155】
◎:画像部の光沢が一様である
○:画像部の光沢がわずかに乱れるが、許容できるレベル
△:画像部の光沢が少し乱れるが、許容できるレベル
×:画像部の光沢が乱れ、肉眼でもはっきりと確認でき、許容されないレベル
××:画像部の光沢がドット盛り上がりにより完全に乱れ、完全に許容されないレベル
×以下は商品として許容されないレベル。
【0156】
〔白地光沢違和感〕
同様にして各種記録媒体に1cm×10cmの黒線を5mm間隔で10本プリントし、目視観察し、下記の基準に従って白地との光沢違和感の評価を行った。
【0157】
◎:記録面と下地の光沢度差がほとんど無く自然である
○:記録面と下地の光沢度が少し異なるが、許容できるレベル
△:記録面と下地の光沢度が少し異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より高い
×:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より高い
××:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より低い
×以下は商品として許容されないレベル。
【0158】
〔寸法安定性〕
同様にA4サイズの各種被記録媒体上に20cm×25cmの黒ベタをプリントし10分放置後、四隅のカール平均をとり以下の基準に従って寸法安定性の評価を行った。
【0159】
◎:四隅のカール平均が5mm以下である
○:四隅のカール平均が5mmより大きく1cmより小さい
△:四隅のカール平均が1cm以上である
×:四隅の内少なくとも一つ以上のカールが3cmを超えている
××:被記録媒体の変形が著しく評価不能である。
【0160】
〔折れ割れ性評価〕
同様にA4サイズの各種被記録媒体上に20cm×25cmの黒ベタをプリントし、3cmの径を持つステンレス棒に巻き付け、膜面の割れを観察し、以下に沿って評価を行った。
【0161】
◎:割れが全くない
○:割れはないが膜面に少し変化が見られる
△:割れが2〜3本見られる
×:割れが10本以上見られる
××:割れが多数見られ評価不能である。
【0162】
(フェザリングの評価)
同様に普通紙に対して巾250μm、長さ5cmの黒細線をプリントし、目視観察し、下記の基準に従ってフェザリングの評価を行った。
【0163】
◎:滲みにより線が太ることも無く細線が再現されている
○:滲みにより線が太ることはないが5箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
△:滲みにより線が太ることはないが、10箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
×:滲みにより線が若干太り、紙繊維に沿ったインク滲みも10箇所以上観測される
××:滲みによる線太りが激しく、紙繊維に沿ったインク滲みも20箇所以上観測される
このうち、×、××は製品として問題があるレベルである。
【0164】
〔濃度〕
同様に普通紙に対して10cm×10cmの各色ベタプリント後、各色濃度を反射濃度計(X−Rite社:X−Rite)により測定し各色の平均値を求め、以下の基準に沿って評価した。
【0165】
◎:4色平均濃度1.5以上
○:黒濃度1.2以上1.5未満
△:黒濃度1.0以上1.2未満
×:黒濃度0.8以上1.0未満
××:黒濃度0.8未満。
【0166】
〔普通紙寸法安定性〕
同様にA4サイズの普通紙に対して20cm×25cmの黒ベタをプリントし、23℃55RH%の環境下で1日放置後、四隅のカール平均をとり以下の基準に従って寸法安定性の評価を行った。
【0167】
◎:四隅のカール平均が10mm以下である
○:四隅のカール平均が10mmより大きく2cmより小さい
△:四隅のカール平均が2cm以上である
×:四隅の内少なくとも一つ以上のカールが5cmを超えている
××:被記録媒体の変形が著しく評価不能である。
【0168】
上記結果を表3〜5に示す。
【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
【表5】

【0172】
本発明の試料は、記録メディアの種類に依存することなく、優れた印字性能を示し、かつ優れた耐久性を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激を付与されることにより粘弾性を変化させる刺激応答性高分子化合物と水の混合成分であって、該混合成分の刺激前の粘度が1.5mPa・s以上20mPa・s以下、かつヤング率が0以上1Pa以下であり、該混合成分の刺激後の粘度が80mPa・s以上500Pa・s以下かつヤング率が1Pa以上、0.5MPa以下であることを特徴とする刺激応答性高分子化合物と水の混合成分。
【請求項2】
記録媒体に、インクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、該インクは、少なくとも色材と、請求項1記載の刺激応答性高分子化合物と水の混合成分を含有し、かつ該インクは、刺激前の粘度が1.5mPa・s以上20mPa・s以下、ヤング率が0以上1Pa以下であり、刺激後の粘度が80mPa・s以上250Pa・s以下、ヤング率が1Pa以上、0.2MPa以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、刺激を与えることにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記親水性主鎖に複数の側鎖の部分構造が下記一般式(A)で表されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
一般式(A) Poly−{(X1m−〔B−(Y1np
(式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
【請求項6】
前記刺激応答性高分子化合物の親水性主鎖が重合度200以上、1000以下のポリ酢酸ビニルケン化物であり、かつ側鎖の変性率が0.5モル%以上4.5モル%以下であることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記インクが、前記刺激応答性高分子化合物を0.8質量%以上5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記刺激に応答する前と前記刺激に応答した後の前記インクの初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間の秒を表す。
【請求項10】
前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たす事を特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
式(2) 2<d(lnη)/dt<6
但し、ηは粘度を表し、tは時間の秒を表す。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項12】
請求項11に記載のインクジェットインクをインクセットとして用いることを特徴とするインクジェットインクセット。

【公開番号】特開2008−24770(P2008−24770A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196687(P2006−196687)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】