説明

削孔方法、削孔機及び削孔装置

【課題】削孔対象が土砂、粘土又は砂礫層のような軟質地盤であるときは削孔機からウォータジェットを噴射して削孔し、削孔対象が岩石層のように硬質地盤であるときは削孔機のビットの打撃により削孔することにより、削孔工事で発生する振動及び騒音を低減する削孔方法、削孔機及び削孔装置を提供する。
【解決手段】削孔機1は、削孔部10とエアタンク部30を有する削孔機本体Aと削孔機本体Aを吊り下げ削孔機1外から送られる高圧水と圧縮空気を削孔機本体Aに送るスイベルユニット50を有し、該削孔部10はチャックガイド24に装着されているビット27,28と、ビット27,28に衝撃を付与する衝撃付与部20を有する。削孔深度によっては削孔機1に1又は2以上の継ぎ部材40が配備される。削孔機1は、先端(下端)から削孔対象である地盤に向けて圧縮空気とウォータジェットを噴射する構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔方法、削孔機及び削孔装置に関する。更に詳しくは、削孔対象の地盤の性状により、削孔手段の選択を可能にした削孔方法、削孔機及び削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を削孔する方法の一つに、ダウンザホールハンマを使用して削孔を行う方法がある。
従来のダウンザホールハンマは単一のビットの打撃力により地盤を削孔するためビットの打撃力が大きく、それに伴なう削孔時の振動及び騒音も大きい。このため、住宅地や都市部での工事に使用するには適していなかった。
【0003】
そこで、本発明者は特許文献1に示すような掘削装置及び地中掘削方法を提案した。特許文献1記載の掘削装置は、複数の小型のビット及び該ビットを打撃するピストン(ハンマ)を内蔵するダウンホール式駆動装置を備え、各ダウンホール式駆動装置毎に作動流体の流入タイミングに変化をつけて各ピストンの打撃タイミングを調節し、各ビットが同時に地盤を打撃しないような工夫が図られている。これにより、従来の単一の大型ビットにより削孔作業を行う場合と比較して、振動及び騒音が低減される。
【特許文献1】特許第3721381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の掘削装置及び地中掘削方法によって従来のダウンザホールハンマーを使用する場合より振動及び騒音が低減されたとはいえ、ビットの打撃により削孔を行う以上、振動及び騒音の課題は存在する。
【0005】
本発明者は長年の経験から、一般的な地盤の性質として地表に近いところは土砂、粘土または砂礫層のような軟質地盤であり、削孔深度が深くなるにつれて転石、玉石層のような硬質地盤に遭遇することを知見している。
【0006】
そこで、発生する振動及び騒音の更なる低減を図るべく鋭意研究を重ね、ウォータジェットとビットによる削孔手段を組み合わせて、地表に近い軟質地盤はウォータジェットによる削孔作業を行い、削孔作業が進み削孔深度が深くなって硬質地盤に遭遇しウォータジェットでは削孔できない状態になったときにビットによる削孔作業を行えば、振動や騒音が外部に漏れにくくなり、作業環境に良い影響を及ぼすことを知見した。
【0007】
一方、施工中に使用されたウォータジェットの水と削孔作業により生じた削孔屑である土砂等が削孔内で混合されてスラリーが生成されるが、このスラリーをウォータジェットの噴射または/およびダウンホール式駆動装置から排出された圧縮空気で削孔内壁に沿って開口部方向へ押し出すと、削孔装置と削孔内壁の間の潤滑手段として利用できることも知見した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0008】
(発明の目的)
そこで本発明の目的は削孔対象の地盤が土砂、粘土または砂礫層のような軟質地盤であるときは削孔機からウォータジェットを噴射して削孔し、削孔対象が岩石層のように硬質地盤であるときは、削孔機のビットの打撃により削孔することにより、削孔工事で発生する振動及び騒音を低減する削孔方法、削孔機及び削孔装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、前記方法の実施により生じたスラリーを削孔機と削孔内壁の間の潤滑手段として用いることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
【0011】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
ウォータジェットによる削孔が可能な地盤はウォータジェットで削孔し、ウォータジェットによる削孔が困難な地盤はビットで削孔することを含む、地盤の削孔方法である。
【0012】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
ウォータジェットによる削孔が可能な地表側の軟質地盤はウォータジェットで削孔し、ウォータジェットによる削孔が困難な硬質地盤に遭遇したときはビットで削孔することを含む、地盤の削孔方法である。
【0013】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
削孔機は、少なくともダウンホール式駆動装置と該ダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビットを有し、削孔機の削孔面側にはエア排出口とウォータジェットの噴射口を備えており、
削孔作業当初の地表側軟質地盤はウォータジェットで削孔し、
削孔作業の進行に伴ってビットを含む削孔機の掘削部が削孔内に入った後、ウォータジェットによる削孔が困難な硬質地盤に遭遇しビットが地盤に接触して押し上げられ又は押し込まれた状態になったときは、ダウンホール式駆動装置のピストンが往復運動を開始してビットに衝撃を与えビットで地盤を削孔することを含む、地盤の削孔方法である。
【0014】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
削孔機は、少なくともダウンホール式駆動装置と該ダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビットを有し、削孔機の削孔面側にはエア排出口とウォータジェットの噴射口を備えており、削孔中はエア排出口から常時圧縮空気を排出し、軟質地盤を削孔するときには噴射口からウォータジェットを噴射しながら削孔し、硬質地盤を削孔するときにはウォータジェットの噴射を止めるか又はウォータジェットを噴射しながら地盤を削孔することを含む、地盤の削孔方法である。
【0015】
ダウンホール式駆動装置とビットは対応した複数を有し、各ダウンホール式駆動装置はそれぞれ時間をずらしてビットに衝撃を与えるようにしてもよい。
【0016】
削孔機に軸周方向の回転力を与えながら自重により削孔機を降下させて削孔するようにしてもよい。
【0017】
削孔作業により生じた削孔屑と削孔機から噴射したウォータジェットの水を削孔内部で混合してスラリーとし、該スラリーをウォータジェットまたは/および排出された圧縮空気で削孔内壁に沿って削孔の開口部側へ向かわせて削孔機外周と削孔内壁の間の潤滑手段として用いながら排出するようにしてもよい。
【0018】
削孔機は削孔深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材を有し、継ぎ部材の外周面に形成されている掘削屑又はスラリーの排出手段で掘削屑又はスラリーを排出しながら削孔を行うようにしてもよい。
【0019】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機であって、
前記削孔機は、削孔面側にウォータジェットの噴射口とビットを備えている、削孔機である。
【0020】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを行うことが可能な削孔機であって、
削孔機は、少なくとも、先部にエア排出口を有する一又は二以上のビットと削孔機下面から削孔方向へ噴射する一又は二以上のウォータジェットの噴射ノズルを有しており、
ウォータジェットによる削孔が可能な地盤又は地表側の軟質地盤はウォータジェットによる削孔を、ウォータジェットによる削孔が困難な地盤又は硬質地盤はビットによる削孔を選択できるようにしている、削孔機である。
【0021】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機であって、
削孔機は、少なくとも複数のダウンホール式駆動装置とダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビットを有し、ダウンホール式駆動装置の数とビットの数は対応し、各ダウンホール式駆動装置はそれぞれ時間をずらしてビットに衝撃を与えるようにしており、
削孔機の削孔面側にはエア排出口とウォータジェットの噴射口を備えている、削孔機である。
【0022】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機であって、
削孔機は、削孔部に接続されているエアタンク部を有する削孔機本体と、
該削孔機本体を吊り下げ削孔機外から送られてきた高圧水と圧縮空気を削孔機本体に送るスイベルユニットと、を有し、
前記削孔部は、チャックガイドに装着されている複数のビットと、該ビットに衝撃を付与する衝撃付与部と、を有し、
該衝撃付与部(20)は、ケーシング内に収納されており時間をずらしてビットを打撃するようにしているダウンホール式駆動装置を前記ビットの数に対応する数有し、
前記削孔部の削孔面側には、前記ビットと所要数のウォータジェットの噴射口を有している、削孔機である。
【0023】
エアタンク部とスイベルユニット部の間には、削孔の深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材が配備される。
【0024】
エアタンク部及び継ぎ部材の外周面に掘削屑又はスラリーの排出手段を形成してもよい。
【0025】
本発明は、削孔機と、該削孔機に軸周方向の回転力を与える回転式駆動装置を備えている、削孔装置である。
【0026】
本発明は、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にしたものである。基本的には地盤の性状によってウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを選択的に採用するものであるが、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔の何れか一方だけ、または両方を採用して削孔することも出来る。
【0027】
本発明に係る方法に使用する削孔機には、実施の形態で例示したような複数のダウンホール式駆動装置とそれに対応した数のビットを備え、各ビットが同時に地盤を打撃しないようにしたものだけでなく、削孔機の下端に複数のビットを備え、複数のビットが地盤を同時に打撃するようにしたもの、更には、単一のビットを備え、単一のビットで地盤を打撃するものも含まれる。
【0028】
要するに、ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行うことができれば、削孔機の構造は限定されない。
特に削孔工事で発生する振動及び騒音を低減する観点からは、前記した複数のビットが同時に地盤を打撃する削孔機、及び単一のビットで地盤を打撃する削孔機に、より効果を発揮する。
【0029】
ウォータジェットによる削孔は、噴射ノズルから高圧水を常時又は間欠的に噴射させるものであってもよいし、ビットの打撃時には噴射が止まるよう設定されていてもよい。
【0030】
ウォータジェットによる削孔が困難な地盤又は硬質地盤は、例えば、岩石を多く含む地層のほか、岩盤、礫層等も含まれる。
【0031】
「ウォータジェットまたは/および排出された圧縮空気によって」の文言は、ウォータジェットまたは排出された圧縮空気のいずれかであってもよいし、ウォータジェットおよび排出された圧縮空気の双方によるものであってもよい、という意味で使用している。
【0032】
スラリーの排出手段としては、例えば削孔機や継ぎ部材を含むの周面に形成された螺旋状の羽根を使用してスラリーを排出する手段が挙げられるが、これに限定するものではなく、他の公知手段の使用を除外するものでもない。
【0033】
(作 用)
本発明の作用を説明する。
削孔対象が土砂等の軟質地盤のときは、ウォータジェットによりを削孔する。削孔対象が岩石層等の硬質地盤のときは、ビットの打撃によって削孔する。なお、ビットとウォータジェットを併用して削孔することもできる。
【0034】
一般的な地盤の性質として地表に近いところは軟質地盤であることが多いので、ウォータジェットにより削孔すれば、削孔当初及び穴が浅い状態において発生する騒音、振動を抑制できる。
【0035】
また、削孔が進んで削孔機の先端が硬質地盤等に遭遇又は接する場合は、削孔機の先端は削孔の中にあることが多いため、硬質地盤等をビットが打撃して発生する騒音が漏出したり、振動が周囲に伝わりにくい。
【0036】
圧密が原因で削孔作業中の削孔機の動きが妨げられ、ビットが垂れ下がり状態となって地盤を打撃しなくなる場合が生じる。この場合は、削孔機を逆転させたり、削孔機を引き上げる必要があり、削孔作業が中断する。
【0037】
しかし、削孔屑とウォータジェットの水が混じってスラリーが生成される場合は、スラリーが削孔内壁に沿って削孔の開口部へ向い、削孔機と作業孔内壁の間でいわゆる潤滑剤の役割を果たため、圧密によって削孔作業が中断するのを防止できる。
【0038】
削孔機をクレーン等で吊り下げ、ビットが地盤と接しないように調整しながらウォータジェットで削孔作業を行うと、ビットは作動させずにウォータジェットのみで削孔作業が継続でき、削孔による振動及び騒音が発生しないか又はほとんど発生しない。
【0039】
回転式駆動装置で削孔機に軸周方向の回転力を付与して円周方向に回転することによって、削孔機から噴射されるウォータジェットや削孔機の先端に配備されているビットは円周方向に公転しながら地盤を削孔する。
【0040】
なお、地層の中には、地層の構成物や構造等の特性により通気性が良い層(以下「ブロー層」という。)が存在する。特に河川敷では、施工時にブロー層に遭遇する事例が多くみられる。このような場合は削孔内に排出された圧縮空気は地層中に流入し、削孔屑を削孔外へ排出する力が拡散されてしまう。
【0041】
しかし、施工時にブロー層に遭遇しても継ぎ部材の外周面に排出手段が形成されているので削孔屑を効果的に削孔外に排出することができる。
【0042】
なお、ブロー層のうち、ブロー層の隙間が小さいもの又はブロー層に土等が混じったものについては、通常の削孔作業を継続することによりスラリーがブロー層の隙間に入り込んで目詰まりを起こし、結果的に通常の削孔内と同じ所要の気密状態となるので、スラリーをエアで押し上げることができる。
【発明の効果】
【0043】
(1) 本発明によれば、一の削孔機でウォータジェットによる削孔、ビットによる削孔、或いはこれらの組み合わせによる削孔を適宜選択することができるので、地盤の性状に適合した効果的な削孔工事が可能となるばかりでなく、作業現場に適合した削孔手段を採択することによって振動及び騒音の低減に寄与することができる。
【0044】
(2) 同じ削孔機でウォータジェットによる削孔とビットによる削孔が可能となるために、使用中の削孔機以外の削孔機の設置場所は不要であり、住宅地や都市部での狭小な工事区域の工事に好適に使用することができる。
【0045】
(3) 削孔屑とウォータジェットの水が混じってできたスラリーが削孔内壁に沿って削孔の開口部へ向い、削孔機と削孔内壁の間で潤滑剤の役割を果すものは、圧密が原因で削孔作業中の削孔機の動きが妨げられるのを防止できる。従って、圧密を原因とする削孔作業の中断を防止できる。
【0046】
(4) 削孔機と回転式駆動装置を備えた掘削装置を使用して地盤を削孔する場合は、削孔機から噴射されるウォータジェットあるいはビットの打撃が円周方向に公転しながら削孔箇所を満遍なく掘削するので、効率良く削孔できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明の実施の形態を、図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は削孔機の内部構造を示す分解説明図で、エアタンクとスイベルユニットの間に継ぎ部材を配備している。
【0048】
[削孔機1の概要]
図1に示すように、削孔機1は、削孔部10とエアタンク部30を有する削孔機本体Aと、削孔機本体Aを吊り下げ削孔機1外から送られてきた高圧水と圧縮空気を削孔機本体Aに送るスイベルユニット50を有する。
【0049】
削孔部10は、チャックガイド24に装着されているビット27,28と、ビット27,28に衝撃を付与する衝撃付与部20を有する。
【0050】
図1に示すように、削孔機1は、通常、エアタンク部30とスイベルユニット50の間に掘削孔の深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材40が配備される。従って、多くの場合、削孔機1は、削孔機本体Aとスイベルユニット部50の他に継ぎ部材40を備えている。
【0051】
チャックガイド24と衝撃付与部20、衝撃付与部20とエアタンク部30、エアタンク部30と継ぎ部材40、継ぎ部材40とスイベルユニット部50は、それぞれボルトB及びナットNにより分離及び連結可能となっている。
【0052】
削孔機1は、先端(下端)から削孔対象である地盤に向けて圧縮空気とウォータジェットを噴射する構造を有している。
【0053】
[衝撃付与部20]
衝撃付与部20は、ダウンホール式駆動装置22(ダウンザホールハンマの駆動部分)を長手方向に収納しているケーシング23を有し、基端側(図1では上端部)でエアタンク部30に接続される。
【0054】
ダウンホール式駆動装置22は、圧縮空気によってピストンを往復運動させ、このピストンが衝撃付与部20先端側に設けられてハンマビット27,28に衝撃を付与し、衝撃を付与されたハンマビット27,28が地盤等を打撃して削孔する構造である。
【0055】
ケーシング23には、中央に一基とその周囲に等間隔で配置された五基のダウンホール式駆動装置22が収容されている。
各ダウンホール式駆動装置22は、何れも同じ構造を有する。なお、ダウンホール式駆動装置の数及び配置は適宜変更可能である。
【0056】
ケーシング23は中空体で、ダウンホール式駆動装置22を除いた箇所は空間230となっており、この空間230を3本の送水管21が通り抜けている。送水管21の本数は後述する噴射口の数に対応し、噴射口の数の増減によってその本数は変わる。
【0057】
送水管21とダウンホール式駆動装置22を除いたケーシング23の空間230には砂等の粉状物或いは粒状物が充填され、低騒音化又は低振動化への寄与を図っている。
【0058】
削孔機1を構成する各パーツに配備されている送水管は、連結されたときには繋がるようになっている。また、本実施の形態では送水管は削孔機1の内部に設けられているが、継ぎ部材40とエアタンク部30の送水管は外部に設けることもできる。
【0059】
また、コンプレッサ(図示省略)からエアタンク部30を通じて送られてくる圧縮空気は、各ダウンホール式駆動装置22へ分配されるようになっている。そして、各ダウンホール式駆動装置22は、ビット27,28が垂れ下がっている状態のときは、ダウンホール式駆動装置22内に設けられた圧縮空気の流通路が切り替わって、圧縮空気がピストンを往復運動させないで通過し、エア排出口271,281から排出される構造である。
【0060】
衝撃付与部20では、各ハンマビット27,28に時間をずらして衝撃を付与し、各ハンマビット27,28は時間をずらして地盤を打撃する構造となっている。つまり、地盤を同時に打撃するのを防止する構造となっている。
【0061】
具体的な例としては、各ダウンホール式駆動装置22に順番に圧縮空気を送ってピストンを時間差をおいて作動させ、これによって各ハンマビット27,28に時間をずらして衝撃を付与する方法がある。
【0062】
また、他の例としては、各ダウンホール式駆動装置22のピストンの重さ又はストローク長等を変更したり、各ダウンホール式駆動装置22に流入する圧縮空気の量を調整することにより、単位時間当たりの各ピストンの往復運動数を変えて各ハンマビット27,28が地盤等を同時に打撃するのを防止する方法がある。
【0063】
これらの構造は、本発明者が特許第3721381号、特許第4076551号、特許第4076564号、特許第4076565号等で既に提案しているところである。
【0064】
なお、ダウンホール式駆動装置22で各ハンマビット27,28が地盤等を打撃して削孔する機構については、前記特許文献1記載の掘削装置や前記特許公報、或いは特開昭61−92288号公報、特開平9−328983号公報に記載された削孔装置と同様か概ね同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
[チャックガイド24とビット27,28]
図2は図1に示す削孔機下部のチャックガイド部分を拡大して示した縦断面説明図、図3は削孔部先端を下側から見た説明図である。
衝撃付与部20の下端部には、チャックガイド24に装着されダウンホール式駆動装置22に対応する数(本実施の形態では六基)のビット27,28を備えている。
【0066】
チャックガイド24は平面視略円形状で所要の厚みを有し、衝撃付与部20の先端部(下端部)に着脱可能に設けられる。
【0067】
チャックガイド24の先端面24a中央部には円形状の中央凹部240が設けられている。この中央凹部240を取り囲むようにして外周方向に向けて末広がり状の底面視略V状形曲線の周辺凹部241,242,243,244,245が等間隔且つ放射状に計五箇所に設けられている。
【0068】
チャックガイド24の各凹部240,241,242,243,244,245の上面には、ビットの装着孔246がそれぞれ鉛直方向へ貫通して形成されており、装着孔246にビット27,28が下側からチャックガイド24に装着される(図1,2参照)。
【0069】
ビット27,28はダウンホール式駆動装置22の配置に対応して配設されており、中央に一基のビット27とその周辺に等間隔で五基のビット28が配置されている。これによって中央凹部240及び各周辺凹部241,242,243,244,245には、それぞれビット27,28のヘッド部270,280が配置される。
【0070】
ヘッド部270,280は、超硬合金製のボタンチップ(符号省略)が多数設けてあり、その打撃面中央部分にはエア排出口271,281が設けられている。
【0071】
ヘッド部270には中央からやや外周寄り二箇所にエア排出口271が設けてあり、それぞれのエア排出口271からは外周側に向けて排気溝273が設けられている。ヘッド部280には中央の一箇所にエア排出口281が設けてあり、エア排出口281からは外周側に向けて三本の排気溝283が略等間隔で放射状に設けられている。
【0072】
なお、ビット27,28は、前記のチャックガイド24と組み合わされて衝撃付与部20に連結される。
【0073】
ビット27,28のエア排出口271,281は、ダウンホール式駆動装置22内と連通しており、通常はダウンホール式駆動装置22内のピストンを往復運動させた後、圧縮空気を削孔機1外へ排出する。
【0074】
ビット27,28が地盤を打撃しない垂れ下がり状態においては、ダウンホール式駆動装置22内へ送られた圧縮空気は、ピストンを往復運動させることなく、エア排出口271,281から排出される。つまり、ダウンホール式駆動装置22内へ送られた圧縮空気は、常時エア排出口271,281から排出される。
【0075】
地盤に接して打撃しているヘッド部270,280のエア排出口271,281から排出された圧縮空気は、周縁方向へ形成された排気溝273,283を通りヘッド部270,280の周方向へ拡散される。
【0076】
本実施の形態におけるビットは、中央に配置されているビット27の外形形状および排気溝273を除き、残りのビット28は同様の構造である。また、ビット27及びビット28の機能は大体同じである。
【0077】
チャックガイド24の先端面24aであって周辺凹部241,242,243,244,245の間には、それぞれ溝251,252,253,254,255が形成されており、溝の数は五本である。
【0078】
三本の溝251,253,255の中には、ウォータジェットの噴射口291,292,293が形成されており、ビット27,28のヘッド部270,280が地盤に接して打撃しているときに、噴射口291,292,293から噴射されたウォータジェットがチャックガイド24の外周方向、つまり横方向に流れるようにしている。
【0079】
後で説明するように、削孔によって生じる削孔屑とウォータジェットの高圧水とが混じってスライムが生成される。このスライムは削孔開口部から排出されるが、溝251,253,255が形成されることによって生成したスライムを効率よく排出するようにしている。
【0080】
各噴射口291,292,293の中には噴射ノズル29を備えており、削孔部10内へ送られた高圧水は、衝撃付与部20内の送水管21を経由して、チャックガイド24先端面24aに設けられたウォータジェットの噴射口291,292,293から削孔箇所の地盤に向けて噴射される。
【0081】
チャックガイド24の中心から各噴射口291,292,293までの距離は、噴射口291よりも噴射口292が離れており、噴射口292よりも噴射口293が離れている。
【0082】
このように噴射口291,292,293がチャックガイド24の中心、つまり削孔装置の回転中心から不等距離にあることによって各噴射口291,292,293の回転軌跡は半径を異にする同心円を描き、ウォータジェットで削孔対象である地盤を偏りなく削孔できるようにしている。
【0083】
なお、本実施の形態では噴射口は三箇所であるが、増減することもできる。殊に削孔部10の径が大きくなったときには噴射口も増やすことが好ましく、その場合は残りの二本の溝の中に形成する。
【0084】
[エアタンク部30]
図4はエアタンク部の下部連結部を拡大して示した縦断面説明図、図5はエアタンク部の底面説明図である。
【0085】
図1に示すように、衝撃付与部20の上部にはエアタンク部30が配置されている。エアタンク部30は内部に中空のエア貯留部33を有する円筒状のタンク胴部32と、タンク胴部32の外周面に設けられている螺旋羽根36と、タンク胴部32上部に設けられている上部連結部34と、タンク胴部32の下部に設けられており、衝撃付与部20の上部と連結される下部連結部35を備えている。
【0086】
螺旋羽根36はタンク胴部32の上部から下部連結部35上端までの外周面に設けられている。螺旋羽根36には、後述する回転式駆動装置6のドライブブッシュ611の係合条部612と係合する係合切欠部361が設けられている。
【0087】
係合切欠部361は、螺旋羽根36を外側から一部切欠するようにして周方向へ等間隔で4箇所に、かつ軸芯方向に向けて同一直線状に位置するようにして螺旋羽根36の1ピッチ毎に設けられている。(図1、図6参照)。
【0088】
タンク胴部32の下部に設けられている下部連結部35は、タンク胴部32よりもやや径大であって衝撃付与部20の周面とほぼ同じ径に形成されており、連結時において下部連結部35の周面と衝撃付与部20の周面がほぼ面一となる。
【0089】
下部連結部の構造について図4、図5を参照しながら更に説明する。
下部連結部35は、エア貯留部33と連絡して各ダウンホール式駆動装置22へ圧縮空気を分配する機能と、送水管31から送られてきた高圧水を衝撃付与部20内の各送水管21に分配する機能と、衝撃付与部20と連結する機能を有している。
【0090】
下部連結部35は、上面に開口部を有し、開口部より下側の内部には開口部に通じる所要高さの円盤状の空間部335が形成されている。空間部335の径は開口部縁部353の径より径大に形成されている。開口部にはタンク胴部32の下端部分が挿入されて開口縁部353と溶接によって固着されている。
【0091】
下部連結部35の中央部分には、空間部335を通って立ち上がる上部ブロック部37が形成されている。上部ブロック部37の上部分はタンク胴部32内に位置している。
【0092】
上部ブロック部37の外径はタンク胴部32の内径よりも径小に形成され、上部ブロック部37の外側面とタンク胴部32の内側面の間には、圧縮空気が流通する周辺エア流路334が形成されている。これによってエアタンク部30内の圧縮空気を空間部335を経由して、衝撃付与部20の円環状に配置されている五基のダウンホール式駆動装置22に送るようになっている。
【0093】
上部ブロック部37の中央には上下方向に貫通孔370が形成され、この貫通孔370に送気管330が挿着されている。送気管330の上端は上部ブロック部37の上面から所要高さに位置し、上端には下方に向けて窪んだ球面を有するエア分配器331が設けられている。
【0094】
エア分配器331はエアタンク部30内に送られてきた圧縮空気が直進することによって送気管330に多量に入るのを妨げるもので、これによって各ダウンホール式駆動装置22の作動の均一化を図るようにしている。
【0095】
エア分配器331と送気管30の挿着部の間の適宜位置には、送気管330内に通じるエア流入口332が形成されている。これによってエアタンク部30内の圧縮空気を送気管330を経由して、衝撃付与部20の中央に配置されている一基のダウンホール式駆動装置22に送るようになっている。
【0096】
上部ブロック部37の下側に位置している下部ブロック部351には上下方向にダウンホール式駆動装置22の数に対応したエア流路355が形成されている。エア流路355の下端側は径大に形成されてダウンホール式駆動装置22との連結口352となっている。
【0097】
前記構成によりエアタンク部30からダウンホール式駆動装置22に至る二系統の圧縮空気流路が形成される。
その一つは、エア貯留部33内の圧縮空気が送気管330のエア流入口332から入って送気管330内の中央エア流路333を通り、エア流路355を通って、中央の一基のダウンホール式駆動装置22に至る流路である。
他の一つは、エア貯留部33内の圧縮空気が周辺エア流路334を通り、空間部335を経由し、エア流路355を通って周辺の五基のダウンホール式駆動装置22に至る流路である。
【0098】
上部ブロック部37には、送気管330の回りに送水分配部372が形成されている。送水分配部372からは、下部ブロック部351を貫通して下部連結部35の下面に至る送水路354が形成されている。送水路354は、衝撃付与部20の送水路211を介してチャックガイド24の送水路214と繋がる。
【0099】
前記構成によってエアタンク部30からチャックガイド24に至る高圧水の送水路が形成される。
なお、350は衝撃付与部20と接続するときボルトやナットが外部にでないようにする収容空間である。
【0100】
[継ぎ部材40]
図1,図6に示すように、削孔機本体Aの基端側には、削孔の深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材40が、例えばピン、ボルト、ナット等からなる固着具(図示省略)により連結される。
【0101】
継ぎ部材40は、中空で円筒状の胴部42と、胴部42の外周面に設けられている螺旋羽根46と、胴部42上部に設けられてスイベルユニット50や他の継足部材或いは他の継ぎ手等と連結する上部連結部45と、エアタンク部30上部と連結する下部連結部48を備えている。
【0102】
継ぎ部材40は、内部には削孔部10へ高圧水を送る送水管41と圧縮空気を送る送気管44を有し、送水管41と送気管44は、エアタンク部30やスイベルユニット50或いは他の継ぎ部材40を連結したときには、公知の連結手段を使用して削孔機1の各パーツの送水管や送気管と流路が繋がるようになっている。
【0103】
螺旋羽根46は胴部42の上部から下部連結部48までの外周面に設けられている。螺旋羽根46には、後述する回転式駆動装置6のドライブブッシュ611の係合条部612と係合する係合切欠部461が設けられている。
【0104】
係合切欠部461は、螺旋羽根46を外側から一部切欠するようにして周方向へ等間隔で4箇所に、かつ軸芯方向に向けて同一直線状に位置するようにして螺旋羽根46の1ピッチ毎に設けられており(図1、図6参照)、螺旋羽根36の係合切欠部361とも一直線に位置するように形成されている。
【0105】
[スイベルユニット部50]
削孔機1の最上部にはスイベルユニット50が配設される。
スイベルユニット50の上端には、削孔部10をクレーンにより懸吊する懸吊部560を設けている。削孔機1は、後述するように懸吊部560に取り付けられたワイヤ573を通じてクレーン(図示省略)によって懸吊される(図6参照)。
なお、スイベル構造自体は公知であるので、詳細な図示は省略し、簡単な説明のみ行う。
【0106】
スイベルユニット50は、胴部52と胴部52に内設されている軸部54を有し、軸部54は胴部52内で水平方向に回動する。軸部54には送水路及び送気路(図示省略)が設けられている。
胴部52の側面には高圧水の送水ホース572と圧縮空気の送気ホース574とがそれぞれ接続され(図6参照)、前記一連の送水路及び送気路を介して衝撃付与部20へ高圧水と圧縮空気を送る。
【0107】
[回転式駆動装置6]
図6は、継ぎ部材を装着した削孔機と回転式駆動装置で構成される削孔装置の正面視説明図で、回転式駆動装置の一部を断面にしている。
【0108】
回転式駆動装置6は、フレーム61、フレーム61に設けられており受け部632を有するロータリテーブル63、受け部632に載せる載置部613を有するドライブブッシュ611、フレーム61に設けられておりH鋼等で組んだ仮設足場64上に据え置くためのアウトリガ62を備えている。
【0109】
ドライブブッシュ611内壁には所要数(本実施の形態では等間隔に四本)の係合突条部612が高さ方向に形成されており、エアタンク部30の係合切欠部361、継ぎ部材40の係合切欠部461と係合して削孔機1を回転させるようになっている。符号65で示すものは、ロータリテーブル63を回転させるウォームギアである。
【0110】
(作 用)
図6,7を参照して削孔装置の作用を説明する。
図6に示すように、削孔装置は削孔機1と、削孔機1に回転力を付与する回転式駆動装置6を備えている。
削孔工事をする箇所に削孔機1が位置するように回転式駆動装置6を設置し、ドライブブッシュ611内に削孔機1を設置する。設置の際に、ドライブブッシュ611の係合条部612とエアタンク部30の係合切欠部361を係合させる。
【0111】
スイベルユニット50の懸吊部560にクレーン(図示省略)のワイヤ573取り付け、削孔機1を吊り下げると共に、スイベルユニット50に、削孔部10へ圧縮空気を供給する送気ホース574と、高圧水を供給する送水ホース572を接続する。これによってスイベルユニット50から送られる圧縮空気及び高圧水は、継ぎ部材40を経由し、削孔機本体Aに送られる。
【0112】
削孔の際はロータリーテーブル63を回転させドライブブッシュ61へ回転駆動力を伝達し削孔機1を円周方向に回転する。削孔機1から噴射されるウォータジェットや削孔機1の先端に配備されているビットは円周方向に公転しながら地盤を削孔する。
【0113】
送気ホース574により削孔機本体Aに送られた圧縮空気は、一旦エアタンク部30内に流入した後に衝撃付与部20の各ダウンホール式駆動装置22に導入されてピストンを駆動し、ビット27,28に衝撃を付与するが、前記した通り各ダウンホール式駆動装置22は各ビット27,28を同時に打撃しないようになっている。
【0114】
送水ホース572により削孔機本体Aに送られた高圧水は、衝撃付与部20内の送水管21を経由して、チャックガイド24先端面24aに設けられたウォータジェットの噴射口291,292,293から削孔箇所の地盤に向けて噴射される。
【0115】
例えば軟質地盤を削孔する場合等のように、削孔機1の削孔進度が速すぎて削孔機1の垂直度が保てなくなったり、削孔屑やスライムが十分に排出されずに削孔機1に圧密が加わる状態が発生することがある。このような場合は、掘削機1をクレーンで吊り下げ削孔進度を調整して削孔屑やスライムの排出と同調させるようにするのがよい。
【0116】
硬質地盤での削孔の場合は、上記のような事態は発生しないか又は発生しにくいので、必ずしも掘削機1をクレーンで吊り下げなくてもよいが、軟弱地盤と遭遇することもあり、削孔地盤によって適宜選択される。
【0117】
クレーンによって削孔機1が吊り下げられるなどしてビット27,28が垂れ下がっている状態のときは、圧縮空気はピストンを往復運動させないで各ダウンホール式駆動装置22を通過し、エア排出口271,281から排出される。
また、ビット27,28が地盤を打撃しているときは圧縮空気は各ダウンホール式駆動装置22のピストンを往復運動させた後、エア排出口271,281から排出される。
このように、圧縮空気は、常時エア排出口271,281から排出される。
【0118】
図7は削孔機で地盤を削孔している状態を示した説明図で、(a)は軟質地盤における削孔状態、(b)は軟質地盤中で岩石に遭遇したときの削孔状態、(c)は硬質の地盤における削孔状態を示している。
【0119】
[軟質地盤の削孔]
一般的な地盤の性質として地表に近いところは土砂、粘土または砂礫層のような軟質地盤80である。この場合は削孔部10の先端面24aに設けられた噴射口291,292,293から削孔箇所の地盤に向けてウォータジェット90を噴射して削孔する。
【0120】
この場合、削孔機1をクレーンで吊り下げ、ビット27,28が削孔底84と当接しないように調整しつつ作業を行うと、ダウンホール式駆動装置22は作動しないでウォータジェット90のみでの削孔作業が継続できる。
この場合はビットによる地盤の打撃が無いために、削孔工事で発生する騒音や振動を抑制できる。従って、住宅地や都市部での削孔作業の際に発生する住民からの苦情が無くなるか、少なくなることが期待できる。
【0121】
削孔の際に生じた削孔屑はウォータジェット90の水と混じりスラリー88が生成される。ダウンホール式駆動装置22内へ送られた圧縮空気は、常時エア排出口271,281から排出され、ウォータジェット90の水圧と協働してスラリー88を削孔82外へ排出する力となる。
この力を受けてスラリー88は削孔内壁86に沿って削孔82の開口部へ向い、削孔機1と削孔内壁86の間で潤滑剤の役割を果しながら削孔82外に排出される。
【0122】
なお、削孔する地盤の表面がコンクリート等の硬質材で覆われている場合は、最初にビット27,28の打撃による削孔を行い、軟質地盤に達した時点でウォータジェット90による削孔作業へ切り替えてもよいし、ビット27,28の打撃による削孔を継続してもよい。
【0123】
[軟質地盤中に岩石がある場合の削孔]
軟質地盤を削孔する場合の作用は、前記した通りである。
軟質地盤80の削孔が進み、例えば削孔機1の先端が岩石100に遭遇した場合は、ウォータジェット90による削孔は困難となる。
【0124】
削孔機1はクレーンで吊り下げられ削孔しながら自重で下降するので、ビット27,28が岩石100に接触して押し上げられるか又は衝撃付与部20に押し込まれた状態になると、ダウンホール式駆動装置22のピストンが往復運動を開始してビット27,28に衝撃を与えビット27,28は岩石100を打撃し削孔する。
【0125】
このような場合は、図7(b)に示すように、削孔機1の削孔部10は削孔82の中にあることが多いため、岩石100をビット27,28が打撃しても発生する騒音が外部に漏出したり、振動が周囲に伝わりにくい。
【0126】
ビット27,28による削孔中はウォータジェット90の噴射を中断してもよいし、継続してもよい。ウォータジェット90の噴射を中断する場合は、削孔屑は削孔82内に排出された圧縮空気によって削孔開口部に向かい外部へ排出される。
【0127】
ウォータジェット90の噴射を継続すると、削孔屑は噴射された水と混合されてスラリー88となり、削孔機1と削孔内壁86の間で潤滑剤の役割を果すことは前記の通りである。
【0128】
なお、削孔作業が地中深いところや、ブロー層で行われているときには排出される圧縮空気だけでは削孔屑を排出できないが、エアタンク部30や継ぎ部材40の外周面に形成された螺旋羽根36,46で削孔屑は排出される。
【0129】
また、ブロー層のうち、ブロー層の隙間が小さいもの又はブロー層に土等が混じったものについては、通常の削孔作業を継続することによりスラリーがブロー層の隙間に入り込んで目詰まりを起こし、結果的に通常の削孔内と同じ所要の気密状態になるので、エアでスラリーを押し上げることができる。
【0130】
〔硬質地盤に遭遇した場合の削孔〕
軟質地盤を削孔する場合の作用は前記したとおりである。
軟質地盤80の削孔が進んで削孔深度が深くなるにつれて転石、玉石層のような硬質地盤102に遭遇すると岩石100の場合と同様にウォータジェット90による削孔は困難となる。
【0131】
削孔機1は自重で下降するので、ビット27,28が硬質地盤102に接触して押し上げられるか又は衝撃付与部20に押し込まれた状態になると、ダウンホール式駆動装置22のピストンが往復運動を開始してビット27,28に衝撃を与えビット27,28は硬質地盤102を打撃し削孔する。
【0132】
図7(c)に示すように、硬質地盤102を削孔する場合は、削孔機1の削孔部10は削孔82の中にあることが多いため、硬質地盤102をビット27,28が打撃して発生する騒音が漏出したり、振動が周囲に伝わりにくい。
【0133】
ビット27,28のみによる削孔中は、削孔作業中の削孔機1、殊に削孔部10の周面には圧密により削孔機1の回転運動を妨げる力が働き、削孔機1が下降しなくなり、それによってビット27,28が垂れ下がり状態になり、ビット27,28作動しなくなる場合が生じるが多い。この場合は、削孔機1を逆転させたり、削孔機1を引き上げる必要があり削孔作業が中断する。
【0134】
しかし、ビット27,28による削孔に加えて噴射口291,292,293から削孔箇所の地盤に向けてウォータジェット90を噴射することによって削孔屑とウォータジェット90の水が混じってスラリー88ができ、このスラリー88は削孔内壁86に沿って削孔の開口部へ向い、削孔機1と内壁の間でいわゆる潤滑剤の役割を果たため、圧密によって削孔作業が中断するのを防止できる。
【0135】
なお、ダウンホール式駆動装置22内へ送られた圧縮空気は、常時エア排出口271,281から排出されるために、ウォータジェット90の水圧と協働してスラリー88を削孔外へ排出する。
【0136】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】削孔機の内部構造を示す分解説明図で、エアタンクとスイベルユニットの間に継ぎ部材を配備している。
【図2】図1に示す削孔機下部のチャックガイド部分を拡大して示した縦断面説明図である。
【図3】削孔部先端を下側から見た説明図である。
【図4】エアタンク部の下部連結部を拡大して示した縦断面図。
【図5】エアタンク部の底面図。
【図6】継ぎ部材を装着した削孔機と回転式駆動装置で構成される回転式駆動装置の一部を断面した正面視説明図。
【図7】削孔作業状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0138】
1 削孔機
A 削孔機本体
10 削孔部
20 衝撃付与部
21 送水管
211 送水路
214 送水路
22 ダウンホール式駆動装置
23 ケーシング
230 空間
234 上部連結部
24 チャックガイド
24a チャックガイドの先端面
240 中央凹部
241,242,243,244,245 周辺凹部
246 装着孔
251,252,253,254,255 溝
27,28 ビット
270,280 ヘッド部
271 エア排出口
273 排気溝
281 エア排出口
283 排気溝
29 噴射ノズル
291,292,293 噴射口
30 エアタンク部
31 送水管
32 タンク胴部
33 エア貯留部
330 送気管
331 エア分配器
332 エア流入口
333 中央エア流路
334 周辺エア流路
335 空間部
34 上部連結部
35 下部連結部
350 収容空間
351 下部ブロック部
352 連結口
353 開口縁部
354 送水路
355 エア流路
36 螺旋羽根
361 係合切欠部
37 上部ブロック部
370 貫通孔
372 送水分配部
40 継ぎ部材
41 送水管
42 胴部
44 送気管
447 係合ピン
45 上部連結部
46 螺旋羽根
461 係合切欠部
48 下部連結部
50 スイベルユニット
52 胴部
54 軸部
560 懸吊部
572 送水ホース
573 ワイヤ
574 送気ホース
6 回転式駆動装置
61 フレーム
611 ドライブブッシュ
612 係合条部
613 載置部
62 アウトリガ
63 ロータリテーブル
632 受け部
64 仮設足場
65 ウォームギア
80 軟質地盤
82 削孔
84 削孔底
86 削孔内壁
88 スラリー
90 ウォータジェット
100 岩石
102 硬質地盤
U 回転式駆動装置
B ボルト
N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
ウォータジェットによる削孔が可能な地盤はウォータジェットで削孔し、ウォータジェットによる削孔が困難な地盤はビットで削孔することを含む、
地盤の削孔方法。
【請求項2】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
ウォータジェットによる削孔が可能な地表側の軟質地盤はウォータジェットで削孔し、ウォータジェットによる削孔が困難な硬質地盤に遭遇したときはビットで削孔することを含む、
地盤の削孔方法。
【請求項3】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
削孔機は、少なくともダウンホール式駆動装置と該ダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビットを有し、削孔機の削孔面側にはエア排出口とウォータジェットの噴射口を備えており、
削孔作業当初の地表側軟質地盤はウォータジェットで削孔し、
削孔作業の進行に伴ってビットを含む削孔機の掘削部が削孔内に入った後、ウォータジェットによる削孔が困難な硬質地盤に遭遇しビットが地盤に接触して押し上げられ又は押し込まれた状態になったときは、ダウンホール式駆動装置のピストンが往復運動を開始してビットに衝撃を与えビットで地盤を削孔することを含む、
地盤の削孔方法。
【請求項4】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを一の削孔機で行う地盤の削孔方法であって、
削孔機は、少なくともダウンホール式駆動装置と該ダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビットを有し、削孔機の削孔面側にはエア排出口とウォータジェットの噴射口を備えており、削孔中はエア排出口から常時圧縮空気を排出し、軟質地盤を削孔するときには噴射口からウォータジェットを噴射しながら削孔し、硬質地盤を削孔するときにはウォータジェットの噴射を止めるか又はウォータジェットを噴射しながら地盤を削孔することを含む、
地盤の削孔方法。
【請求項5】
ダウンホール式駆動装置とビットは対応した複数を有し、各ダウンホール式駆動装置はそれぞれ時間をずらしてビットに衝撃を与えるようにしていることを含む、
請求項3または4に記載の地盤の削孔方法。
【請求項6】
削孔機に軸周方向の回転力を与えながら自重により削孔機を降下させて削孔するようにしている、
請求項1から5のいずれかに記載の地盤の削孔方法。
【請求項7】
削孔作業により生じた削孔屑と削孔機から噴射したウォータジェットの水を削孔内部で混合してスラリーとし、該スラリーをウォータジェットまたは/および排出された圧縮空気で削孔内壁に沿って削孔の開口部側へ向かわせて削孔機外周と削孔内壁の間の潤滑手段として用いながら排出するようにしている、
請求項1から6のいずれかに記載の地盤の削孔方法。
【請求項8】
削孔機は削孔深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材を有し、継ぎ部材の外周面に形成されている掘削屑又はスラリーの排出手段で掘削屑又はスラリーを排出しながら削孔を行うようにしている、
請求項7記載の地盤の削孔方法。
【請求項9】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機(1)であって、
前記削孔機(1)は、削孔面側にウォータジェットの噴射口(291,292,293)とビット(27,28)を備えている、
削孔機。
【請求項10】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔とを行うことが可能な削孔機であって、
削孔機(1)は、少なくとも、先部にエア排出口(271,281)を有する一又は二以上のビット(27,28)と削孔機下面から削孔方向へ噴射する一又は二以上のウォータジェットの噴射ノズル(29)を有しており、
ウォータジェットによる削孔が可能な地盤又は地表側の軟質地盤(80)はウォータジェットによる削孔を、ウォータジェットによる削孔が困難な地盤又は硬質地盤(84)はビットによる削孔を選択できるようにしている、
削孔機。
【請求項11】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機であって、
削孔機(1)は、少なくとも複数のダウンホール式駆動装置(22)とダウンホール式駆動装置から衝撃を受けて地盤を打撃するビット(27,28)を有し、ダウンホール式駆動装置の数とビットの数は対応し、各ダウンホール式駆動装置はそれぞれ時間をずらしてビットに衝撃を与えるようにしており、
削孔機(1)の削孔面側にはエア排出口(271,281)とウォータジェットの噴射口(291,292,293)を備えている、
削孔機。
【請求項12】
ウォータジェットによる削孔とビットの打撃による削孔を行うことを可能にした削孔機であって、
削孔機(1)は、
削孔部(10)に接続されているエアタンク部(30)を有する削孔機本体(A)と、
該削孔機本体(A)を吊り下げ削孔機(1)外から送られてきた高圧水と圧縮空気を削孔機本体(A)に送るスイベルユニット(50)と、
を有し、
前記削孔部(10)は、
チャックガイド(24)に装着されている複数のビット(27,28)と、
該ビット(27,28)に衝撃を付与する衝撃付与部(20)と、
を有し、
該衝撃付与部(20)は、
ケーシング(23)内に収納されており時間をずらしてビット(27,28)を打撃するようにしているダウンホール式駆動装置(22)を前記ビット(27,28)の数に対応する数有し、
前記削孔部(10)の削孔面側には、前記ビット(27,28)と所要数のウォータジェットの噴射口(291,292,293)を有している、
削孔機。
【請求項13】
エアタンク部(30)とスイベルユニット部(50)の間には、削孔の深さに応じて1又は2以上の継ぎ部材(40)が配備される、
請求項12記載の掘削機。
【請求項14】
エアタンク部(30)及び継ぎ部材(40)の外周面に掘削屑又はスラリーの排出手段(36,46)が形成されている、
請求項13記載の削孔機。
【請求項15】
請求項9から14記載のいずれかの削孔機(1)と、該削孔機(1)に軸周方向の回転力を与える回転式駆動装置を備えている、
削孔装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43404(P2010−43404A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206094(P2008−206094)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(505046282)
【Fターム(参考)】