削孔機用ロッド及び削孔機用カップリングスリーブ
【課題】地盤等に削孔を行うための削孔機用ロッドの接続構造において、ロッドの継ぎ足しが可能であるとともに回り止めも充分かつ確実に行え、ロッドを先端部材から抜き取るための構造が簡素に構成できるようにすること。
【解決手段】相互に螺合する雄ねじ部13と雌ねじ部22とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッド11の連結構造であって、上記雄ねじ部13の隣接位置に、当該削孔機用ロッド11の長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部13に螺合する雌ねじ部22を有したスリーブ部21,21aから差し込まれる差込部材24と係合する係合溝14が少なくとも1本形成される一方、上記スリーブ部の上記係合溝14と対応する位置に、上記差込部材24を差し込むための挿入孔23が形成され、上記雄ねじ部13と雌ねじ部22の螺合時に、上記差込部材24が差し込まれる連結構造。
【解決手段】相互に螺合する雄ねじ部13と雌ねじ部22とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッド11の連結構造であって、上記雄ねじ部13の隣接位置に、当該削孔機用ロッド11の長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部13に螺合する雌ねじ部22を有したスリーブ部21,21aから差し込まれる差込部材24と係合する係合溝14が少なくとも1本形成される一方、上記スリーブ部の上記係合溝14と対応する位置に、上記差込部材24を差し込むための挿入孔23が形成され、上記雄ねじ部13と雌ねじ部22の螺合時に、上記差込部材24が差し込まれる連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル工事や基礎工事、補強工事等において用いられる削孔機用ロッドに関し、より詳しくは、作業の進行に伴って順次継ぎ足して使用される削孔機用ロッドの回り止めが良好に行えるような削孔機用ロッド及び削孔機用カップリングスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
削孔機用ロッドは、その工法等に応じて様々な使い方をされる。その一つに、一方向への回転力と打撃力の作用をビット等の先端部材に伝達するものがある。このような削孔機用ロッドを用いた削孔作業では、削孔作業の進行に伴って、つまり削孔深度が増すにつれてロッドの継ぎ足しを行う必要がある。このロッドの継ぎ足しを可能にする連結構造は、一般的には、ロッド、またはロッドとカップリングスリーブに形成されたねじを介して行われている。
【0003】
すなわち、回転力が作用する方向には締まるように形成された雄ねじ部と雌ねじ部を介して連結され、所望の深度まで削孔を行う。
【0004】
削孔後は、たとえば下記特許文献1に記載された掘削工具のように、ロッドの回収が行われるが、そのためにロッドの先端部とその先に設けられる先端部材との着脱可能な連結構造は複雑である。
【0005】
ロッドの回収が、削孔時とは逆方向に回転するだけで行えればよいが、ロッドは継ぎ足されているため、削孔方向後ろ側のロッドに加えた逆方向への回転力はそれより先端側のロッドには伝達されない。
【0006】
なお、ねじで連結した上で、ねじ相互の回転防止をする構成が下記特許文献2に開示されている。この技術は、「シャンクロッド−ロッド連結用カップリングの円形外面を有する端部にねじ孔をかすめて横切るように相対して設けられた貫通孔を貫通してシャンクの雄ねじに係入する2対の止めピンを」備えたもので、「シャンクの雄ねじの谷に係入してシャンクが削孔方向とは反対方向に回転してもシャンクがシャンク−ロッド連結カップリングの雌ねじからねじ結合を解放するように回転するのを防止する機能を有する。」
しかし、止めピンが係止するのは雄ねじの谷であるので、回り止めは主として接触抵抗によるものであって、充分かつ確実な回り止めはできない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−172089号公報
【特許文献2】特許第3272324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、ロッドの継ぎ足しが可能であるとともに回り止めも充分かつ確実に行え、ロッドを先端部材から抜き取るための構造が簡素に構成できるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、相互に螺合する雄ねじ部と雌ねじ部とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッドの連結構造であって、上記雄ねじ部の隣接位置に、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が少なくとも1本形成される一方、上記スリーブ部における、上記雄ねじ部と雌ねじ部が螺合した時の上記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成され、上記雄ねじ部と雌ねじ部の螺合時に、上記差込部材が差し込まれる削孔機用ロッドの連結構造である。
【0010】
すなわち、連結に際しては削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、雌ねじ部を有するスリーブ部の挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材がスリーブ部の挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離するには、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【0011】
別の手段は、長さ方向の端部に連結用の雄ねじ部を有した削孔機用ロッドであって、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が、上記雄ねじ部に隣設して少なくとも1本形成された削孔機用ロッドである。該削孔機用ロッドは、上記雄ねじ部が長さ方向の一方の端部に形成されるものであるも、長さ方向の両端部に形成されるものであるもよい。長さ方向の一方の端部に形成されたものである場合には、長さ方向の他端部には、上記スリーブ部が形成される。
【0012】
すなわち、この削孔機用ロッドの連結に際しては上記と同様に、削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、雌ねじ部を有するスリーブ部の挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材がスリーブ部の挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離する場合も同様に、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【0013】
ここで、上記構成についは、次のような態様に構成することができる。
その態様の一つは、上記係合溝が雄ねじ部より先端側部位に形成されたものである。
すなわち、係合溝を雄ねじ部より後端側部位に形成した場合には、雄ねじ部が螺合方向の先端側に位置する関係上、係合溝部分とこれに対応するスリーブ部の形状が複雑になるが、雄ねじ部より先端側部位に係合溝を形成する場合には、スリーブ部に挿入孔を形成するだけで簡素に形成できる。
【0014】
別の手段は、上記削孔機用ロッドの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有した削孔機用カップリングスリーブであって、上記雄ねじ部と螺合した時に前記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成された削孔機用カップリングスリーブである。
すなわち、この削孔機用カップリングスリーブを用いての削孔用ロッドの連結に際しては上記と同様に、削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材が挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離する場合も同様に、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、ロッドの継ぎ足しが可能である上に、雄ねじ部と雌ねじ部の螺合状態を差込部材と係合溝との係合で確実に保持する。係合溝は、特許文献2のように雄ねじの谷を利用するのではなく雄ねじ部の雄ねじとは別個に設けたものであって、積極的に係合するうえに、係合溝の方向性もねじのように螺旋を描いたものではないので、進退方向への回り止めが確実になされる。
【0016】
このため、雄ねじ部と雌ねじ部の相互の回転を完全に阻止することができる。そして、削孔機用ロッドとその先に取り付けられる先端部材との連結構造を、例えばねじによる結合など、簡素に構成できる。構造が簡素であれば、操作が容易で、コストを低減することも可能となる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、削孔機用ロッド11(以下、ロッドという)の連結構造を示す断面図である。このロッド11は、カップリングスリーブ21を介して連結されるもので、削孔作業の進行に伴って順次継ぎ足されて使用される。特に、図2に示したような削孔工具31に対して好適に使用される。
【0018】
この削孔工具31について簡単に説明し、併せて上記ロッド11の連結構造について説明する。
【0019】
図2は、ロッド11を外した状態の削孔工具31の断面図である。この図に示すように削孔工具31は、削孔のための動力を伝達する上記ロッド11と、該ロッド11の先端に着脱可能に取り付けられて削孔を行う削孔ビット部材41と、上記ロッド11の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ51と、該ケーシングパイプ51の先端に設けられ、上記削孔ビット部材41との間に介在する先端スリーブ61とを有する。
【0020】
この削孔工具31では、ロッド11を介して削孔ビット41に伝達された回転力と打撃力とによって削孔が行われる構造であって、上記先端スリーブ61とケーシングパイプ51はその削孔動作に追従して削孔内に侵入する。
【0021】
上記各部について順に説明する。
上記ロッド11は、パーカッションマシンの本体ハンマ機構部におけるシャンクロッド(図示せず)の先に接続されるもので、上記削孔ビット部材41に対して接続される先端ロッド11aと、この先端ロッド11aの後ろに順次継ぎ足される継ぎ足しロッド11b(図3参照)とがある。いずれも所定長さに形成された円筒状で、軸心部には長さ方向に貫通する導通孔部12を有し、両端部には接続のための雄ねじ部13,13が形成されている。この雄ねじ部13のねじは左ねじである。つまり、左への回転が締まる方向への回転である。なお、図示例のねじはテーパねじである。
【0022】
先端ロッド11aにおいては、削孔ビット部材41に接続する側の一端部は、雄ねじ部13のみで形成されるが、他端部と継ぎ足しロッド11bの両端部の雄ねじ13部近傍には、図3に示したように雄ねじ部13の先に係合溝14が併せて形成される。また、この嵌合溝14より先には、カップリングスリーブ21による連結時に対向する別のロッド11と当接する端面部15が形成されている(図1参照)。
【0023】
すなわち、上記係合溝14は、所定長さの範囲にわたって形成された雄ねじ部13の先に、断面U字状をなす形態で、ロッド11の長さ方向と直角をなす周方向にのびるように1本形成されている。そして、先端ロッド11aと継ぎ足しロッド11b、継ぎ足しロッド11b同士は、上記雄ねじ部13に螺合する雌ねじ部22を略全体にわたって有した円筒状の上記カップリングスリーブ21によって接続されるが、このカップリングスリーブ21における接続時に上記係合溝14と対応する位置には、図4、図5に示したように、貫通孔23が形成される。貫通孔23は、1条の係合溝14に対して平行に2個、すなわち一つのカップリングスリーブ21に合計4個形成されている。
【0024】
これら貫通孔23には、螺合による接続後にピン24が挿入される(図5、図6参照)。ピン24の挿入によりロッド11がカップリングスリーブ21から抜ける方向、すなわち右方向に回転しようとしても、貫通孔23に挿入されているピン24が係合溝14に係合された状態を保つので、右方向への回転が阻止され、抜け止めがなされる。なお、ピン24には割りピンを用いるのが好ましい。
【0025】
上記削孔ビット部材41は、上記ロッド11が接続される略円筒状の本体部材42と、該本体部材42の先に一体固定されるビット部材43とからなる。本体部材42は、後端部に上記先端ロッド11aの雄ねじ13が螺合する雌ねじ42aを有し、先端部がビット部材43内に差し込まれて回転不可能な状態に固定される。本体部材42におけるビット部材43から出ている部分は、嵌合軸部44である。
【0026】
ビット部材43は、本体部材42よりも大径で、先端部は適宜の形状に形成され、超硬合金からなるチップ45が固定されている。そしてこのビット部材43には、本体部材42の軸心部に形成されている中央孔部46aに連通する中央孔部46bが形成され、この中央孔部46bから先には複数本の噴孔46cが形成されている。
【0027】
上記中央孔部46a,46bと噴孔46cには、ロッド11内の導通孔部12を通して、またはその他の部材を通して注入されるエアや水、薬液などの流体が通る。このため、上記中央孔部46a,46bには、逆止弁47が設けられる。
【0028】
また、逆止弁47と上記雌ねじ42aとの間には、上記先端スリーブ61を相対移動可能な状態で取り付ける嵌合構造の構成要素としての凸部48が形成されている。上記相対移動は、先端スリーブ61の長さ方向および周方向に適宜範囲で行われるように設定される。また、凸部48は、たとえば3個、4個などと周方向に複数形成される。
【0029】
この例では凸部48は、転動可能な球体48aで形成されている。また、この球体48aは内外に出没自在である。
【0030】
すなわち、球体48aは、嵌合軸部44に形成された保持孔44aに保持されるとともに、この保持孔44aの内周側に位置するように収納された短筒状の支持環48bと、この支持環48bを上記保持孔44aの下に位置するように付勢するばね48cとを有する。上記支持環48bの外周面における反ばね側にはテーパ面48dが形成され、支持環48bが先端側に変位した位置からばね48cの付勢力に従って後方に変位した時に、球体48aを外周側に押圧して移動するように構成されている。図中49は、上記支持環48bに対して位置規制を行う止め具である。
【0031】
このような嵌合軸部44の外周に嵌まるのが、上記先端スリーブ61である。この先端スリーブ61は、内周面における上記球体48aに対応する部位に凹部62を有する。凹部62は、先端スリーブ61を嵌合軸部44上で相対移動可能にする緩衝用の隙間62aを有した大きさである。
【0032】
先端スリーブ61の内周面における上記凹部62を長さ方向にはさむ2位置には、嵌合軸部44との間をシールするシール部材63,64が設けられている。
【0033】
また、先端スリーブ61の先端部には、上記削孔ビット部材41におけるビット部材43の後端部に形成された噛合部43aと、相対移動可能に噛合する噛合部61aが形成されている。
【0034】
一方、先端スリーブ61の後端部には、接続用の接続ねじ部61bが形成されており、上記ケーシングパイプ51が接続される。
【0035】
先端スリーブ61を嵌合軸部44に嵌合するには、適宜の治具を用いて支持環48bを先端方向に向けて押し込んでおき、この状態で、先端スリーブ61の先端部を嵌合軸部44に対して差し込んでから、治具による支持環48bの押圧を解除すればよい。すると、支持環48bがばね48cの弾性復帰に伴って後方に向けて変位し、球体48aが外周側に突出する。すなわち、球体48aが凹部62内に収まり嵌め殺し状態になる。
【0036】
上記ケーシングパイプ51は、塩化ビニルなどの合成樹脂製で、所定長さに形成された円筒状である。そして先端に、上記接続ねじ部61bに螺合する第1ねじ部51aが形成され、後端には、この第1ねじ部51aに螺合可能な形状の第2ねじ部(図示せず)が形成された構造で、順次継ぎ足して使用される。
【0037】
また、ケーシングパイプ51には、薬剤を噴射するために逆止弁付きの複数の噴射孔52が適宜間隔おきに形成されている(図7参照)。
【0038】
このように構成された削孔工具31では、ロッド11を削孔ビット部材41に接続した状態でパーカッションマシンから左回りの回転力と打撃力を削孔ビット部材41に伝達すると、削孔ビット部材41は、その回転力と打撃力を受けて、地盤や岩盤内に切り込む。
【0039】
このとき、回転力と打撃力を受ける削孔ビット部材41に接触しているのは先端スリーブ61であるが、この先端スリーブ61の接触は、凸部48と凹部62とからなる嵌合構造とシール部材63,64を介してなされている。そして、凸部48と凹部62の間には、隙間62a(余裕、あそび)を有しているため、回転力や打撃力による振動は緩和され、先端スリーブ61の後端部に接続されたケーシングパイプ51に掛かる負荷を軽減できる。
【0040】
しかも、凸部48は転動可能であるため、凸部48と凹部62の衝突時の衝撃も緩和できるため、ケーシングパイプ51に掛かる負荷はより一そう軽減される。
【0041】
さらに、先端スリーブ51は嵌合軸部に対してシール部材63,64を介して接続されているので、先端スリーブ61はいたずらにがたつくことはない。そのうえ、嵌合軸部44と先端スリーブ61との間に泥土などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0042】
また、削孔などの作業終了後には、ロッド11に対して図2に示した如く、削孔の時とは逆、すなわち右回りの回転力を加えれば、ロッド11はすべて一体であるので、先端ロッド11aを削孔ビット部材41から簡単に分離することができる。抜き取ったロッド11は、カップリングスリーブ21の貫通孔23に差し込んだピン24を抜き取れば各部材ごとに分離できる。
【0043】
以上のような削孔工具31では、削孔をしながら薬液注入を行うことができる。すなわち図7に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔(削孔工程)を行い(a)、削孔動作を止めてからエア又は水に代えて所望の薬液を噴孔46cから噴射(薬液注入工程)する(b)。または、上記削孔(削孔工程)と薬液噴射(薬液注入工程)を同時に行う。
このような動作を順次繰り返して、所定の深さまで削孔と薬液注入を行う(c)。
最後に、ロッド11を右に回転してロッド11とカップリングスリーブ21を回収する(d)。
【0044】
また、所定深さの削孔(削孔工程)をしてから薬液注入(薬液注入工程)を行うこともできる。すなわち、図示はしないが、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔を行う。次に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する。続いて、薬液注入用の注入管をロッドに代えて差し込んで、注入管を利用して薬液注入を行う薬液は、ケーシングパイプ51に設けられた逆止弁付きの噴射孔52から噴出する。
【0045】
上記のようにしてロッド11が接続され、上記例のように削孔作業と薬液注入作業が行われる。
【0046】
つまり、ロッド11の継ぎ足しが可能である上に、ロッド11の雄ねじ部13とカップリングスリーブ21の雌ねじ部22の螺合状態をピン24と係合溝14との係合で確実に保持する。係合溝14は、雄ねじ部13の雄ねじとは別個に設けたものであって、回転を阻止する方向での凹凸で積極的に係合するうえに、係合溝14の方向性もねじのように螺旋を描いたものではないので、進退方向への回り止めが確実になされる。
【0047】
このため、雄ねじ部13と雌ねじ部22の相互の回転を完全に阻止することができる。
【0048】
また、適宜継ぎ足されて使用されるロッド11は、相互に回り止めされるとともに、ロッド11と削孔ビット部材41との着脱可能な接続構造がねじ(接続ねじ部42a)で構成されているので、ロッド11の回収に際しては、ロッド11を削孔時とは逆の右方向に回転するだけで、ロッド11を削孔ビット部材41から分離することができて作業が簡単である。そのうえ、構造が簡素であるため、部品点数の低減や組み立て工数の低減などによりコストを抑えることもできる。
【0049】
以下、その他の形態について説明する。なお、上記構成と同一又は同等の部位については、上記構成と同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0050】
図8は、ロッド11が複数本の係合溝14を有した例を示している。すなわち、上述例と同様にロッド11の先端部に係合溝14を形成するとともに、この係合溝14から適宜距離後方に隔てた位置に、別の(第2の)係合溝14を形成している。換言すれば、2個の雄ねじ部13を間欠的に成形し、これらの間に第2の係合溝14を形成している。このように複数本の係合溝14を形成し、各係合溝14部分でピン24による回り止めを行うと、ピン24にかかる荷重を分散でき、強度を高めることができる。
【0051】
図9は、雄ねじ部13と雌ねじ部22を構成するねじが、上記例のようなテーパねじではなく、ハイリードねじである例を示す。
【0052】
同様に、図10は、雄ねじ部13と雌ねじ部22を構成するねじが、ロープねじである例を示す。
【0053】
図11は、カップリングスリーブを使用せずに連結できるロッド11の例を示している。すなわち、長さ方向の一端部に上記雄ねじ部13と係合溝14を有し、他端部にスリーブ部21a、すなわち雌ねじ部22と貫通孔23を有したロッド11である。
【0054】
この発明の構成と上記一形態の構成との対応において、
この発明のスリーブ部は、上記一形態におけるカップリングスリーブ21およびスリーブ部21aに対応し、
以下同様に、
差込部材は、ピン24に対応し、
挿入孔は、貫通孔23に対応するも、
この発明は上記一形態の構成のみに限定されるものではない。
【0055】
たとえば、挿入孔は、貫通しておらずに一方のみが開口されているものであってもよく、また、差込部材には、割りピン以外の適宜の部材を使用することもできる。さらに、上記係合溝14は、雄ねじ部13の先端側の隣接位置に形成されるのに限らず、例えば図8に示した第2の係合溝14のように、雄ねじ部13間に形成されるものであるもよい。さらにまた、係合溝14は1本または2本に限らず、3本、4本と形成するもよく、また1本の係合溝14に対応する貫通孔23の数は、上述したように2本に限らず、例えば1本であるもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】削孔機用ロッドの連結構造を示す断面図。
【図2】削孔工具の断面図。
【図3】削孔機用ロッドの側面図。
【図4】削孔機用カップリングスリーブの片側断面図。
【図5】削孔機用カップリングスリーブの断面図。
【図6】回り止め状態を示す断面図。
【図7】作用状態の説明図。
【図8】他の例に係る連結構造の断面図。
【図9】他の例に係る連結構造の断面図。
【図10】他の例に係る連結構造の断面図。
【図11】他の例に係る削孔機用ロッドの片側断面図。
【符号の説明】
【0057】
11…削孔機用ロッド
13…雄ねじ部
14…嵌合溝
15…端面部
21…カップリングスリーブ
21a…スリーブ部
22…雌ねじ部
23…貫通孔
24…ピン
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル工事や基礎工事、補強工事等において用いられる削孔機用ロッドに関し、より詳しくは、作業の進行に伴って順次継ぎ足して使用される削孔機用ロッドの回り止めが良好に行えるような削孔機用ロッド及び削孔機用カップリングスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
削孔機用ロッドは、その工法等に応じて様々な使い方をされる。その一つに、一方向への回転力と打撃力の作用をビット等の先端部材に伝達するものがある。このような削孔機用ロッドを用いた削孔作業では、削孔作業の進行に伴って、つまり削孔深度が増すにつれてロッドの継ぎ足しを行う必要がある。このロッドの継ぎ足しを可能にする連結構造は、一般的には、ロッド、またはロッドとカップリングスリーブに形成されたねじを介して行われている。
【0003】
すなわち、回転力が作用する方向には締まるように形成された雄ねじ部と雌ねじ部を介して連結され、所望の深度まで削孔を行う。
【0004】
削孔後は、たとえば下記特許文献1に記載された掘削工具のように、ロッドの回収が行われるが、そのためにロッドの先端部とその先に設けられる先端部材との着脱可能な連結構造は複雑である。
【0005】
ロッドの回収が、削孔時とは逆方向に回転するだけで行えればよいが、ロッドは継ぎ足されているため、削孔方向後ろ側のロッドに加えた逆方向への回転力はそれより先端側のロッドには伝達されない。
【0006】
なお、ねじで連結した上で、ねじ相互の回転防止をする構成が下記特許文献2に開示されている。この技術は、「シャンクロッド−ロッド連結用カップリングの円形外面を有する端部にねじ孔をかすめて横切るように相対して設けられた貫通孔を貫通してシャンクの雄ねじに係入する2対の止めピンを」備えたもので、「シャンクの雄ねじの谷に係入してシャンクが削孔方向とは反対方向に回転してもシャンクがシャンク−ロッド連結カップリングの雌ねじからねじ結合を解放するように回転するのを防止する機能を有する。」
しかし、止めピンが係止するのは雄ねじの谷であるので、回り止めは主として接触抵抗によるものであって、充分かつ確実な回り止めはできない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−172089号公報
【特許文献2】特許第3272324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、ロッドの継ぎ足しが可能であるとともに回り止めも充分かつ確実に行え、ロッドを先端部材から抜き取るための構造が簡素に構成できるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、相互に螺合する雄ねじ部と雌ねじ部とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッドの連結構造であって、上記雄ねじ部の隣接位置に、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が少なくとも1本形成される一方、上記スリーブ部における、上記雄ねじ部と雌ねじ部が螺合した時の上記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成され、上記雄ねじ部と雌ねじ部の螺合時に、上記差込部材が差し込まれる削孔機用ロッドの連結構造である。
【0010】
すなわち、連結に際しては削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、雌ねじ部を有するスリーブ部の挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材がスリーブ部の挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離するには、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【0011】
別の手段は、長さ方向の端部に連結用の雄ねじ部を有した削孔機用ロッドであって、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が、上記雄ねじ部に隣設して少なくとも1本形成された削孔機用ロッドである。該削孔機用ロッドは、上記雄ねじ部が長さ方向の一方の端部に形成されるものであるも、長さ方向の両端部に形成されるものであるもよい。長さ方向の一方の端部に形成されたものである場合には、長さ方向の他端部には、上記スリーブ部が形成される。
【0012】
すなわち、この削孔機用ロッドの連結に際しては上記と同様に、削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、雌ねじ部を有するスリーブ部の挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材がスリーブ部の挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離する場合も同様に、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【0013】
ここで、上記構成についは、次のような態様に構成することができる。
その態様の一つは、上記係合溝が雄ねじ部より先端側部位に形成されたものである。
すなわち、係合溝を雄ねじ部より後端側部位に形成した場合には、雄ねじ部が螺合方向の先端側に位置する関係上、係合溝部分とこれに対応するスリーブ部の形状が複雑になるが、雄ねじ部より先端側部位に係合溝を形成する場合には、スリーブ部に挿入孔を形成するだけで簡素に形成できる。
【0014】
別の手段は、上記削孔機用ロッドの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有した削孔機用カップリングスリーブであって、上記雄ねじ部と螺合した時に前記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成された削孔機用カップリングスリーブである。
すなわち、この削孔機用カップリングスリーブを用いての削孔用ロッドの連結に際しては上記と同様に、削孔機用ロッドの継ぎ足しは雄ねじ部と雌ねじ部とを相互に螺合して連結した後、挿入孔に対して、たとえば割りピンなどで構成される差込部材を差し込む。すると、差込部材が挿入孔にとどまるとともに、差込部材の長さ方向の中間部が雄ねじ部に隣接して形成された係合溝に係合する。係合溝は、前後方向、すなわち削孔機用ロッドの長さ方向での移動を阻止するので、回転すると前後方向に移動しようとする雄ねじ部と雌ねじ部による螺合状態を保持できる。このため、雄ねじ部と雌ねじ部が進退いずれの方向にも回転しない回り止め状態となる。
継ぎ足された削孔機用ロッドを分離する場合も同様に、差込部材を取り出した後に、削孔機用ロッドを順に分離方向に回転すればよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、ロッドの継ぎ足しが可能である上に、雄ねじ部と雌ねじ部の螺合状態を差込部材と係合溝との係合で確実に保持する。係合溝は、特許文献2のように雄ねじの谷を利用するのではなく雄ねじ部の雄ねじとは別個に設けたものであって、積極的に係合するうえに、係合溝の方向性もねじのように螺旋を描いたものではないので、進退方向への回り止めが確実になされる。
【0016】
このため、雄ねじ部と雌ねじ部の相互の回転を完全に阻止することができる。そして、削孔機用ロッドとその先に取り付けられる先端部材との連結構造を、例えばねじによる結合など、簡素に構成できる。構造が簡素であれば、操作が容易で、コストを低減することも可能となる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、削孔機用ロッド11(以下、ロッドという)の連結構造を示す断面図である。このロッド11は、カップリングスリーブ21を介して連結されるもので、削孔作業の進行に伴って順次継ぎ足されて使用される。特に、図2に示したような削孔工具31に対して好適に使用される。
【0018】
この削孔工具31について簡単に説明し、併せて上記ロッド11の連結構造について説明する。
【0019】
図2は、ロッド11を外した状態の削孔工具31の断面図である。この図に示すように削孔工具31は、削孔のための動力を伝達する上記ロッド11と、該ロッド11の先端に着脱可能に取り付けられて削孔を行う削孔ビット部材41と、上記ロッド11の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ51と、該ケーシングパイプ51の先端に設けられ、上記削孔ビット部材41との間に介在する先端スリーブ61とを有する。
【0020】
この削孔工具31では、ロッド11を介して削孔ビット41に伝達された回転力と打撃力とによって削孔が行われる構造であって、上記先端スリーブ61とケーシングパイプ51はその削孔動作に追従して削孔内に侵入する。
【0021】
上記各部について順に説明する。
上記ロッド11は、パーカッションマシンの本体ハンマ機構部におけるシャンクロッド(図示せず)の先に接続されるもので、上記削孔ビット部材41に対して接続される先端ロッド11aと、この先端ロッド11aの後ろに順次継ぎ足される継ぎ足しロッド11b(図3参照)とがある。いずれも所定長さに形成された円筒状で、軸心部には長さ方向に貫通する導通孔部12を有し、両端部には接続のための雄ねじ部13,13が形成されている。この雄ねじ部13のねじは左ねじである。つまり、左への回転が締まる方向への回転である。なお、図示例のねじはテーパねじである。
【0022】
先端ロッド11aにおいては、削孔ビット部材41に接続する側の一端部は、雄ねじ部13のみで形成されるが、他端部と継ぎ足しロッド11bの両端部の雄ねじ13部近傍には、図3に示したように雄ねじ部13の先に係合溝14が併せて形成される。また、この嵌合溝14より先には、カップリングスリーブ21による連結時に対向する別のロッド11と当接する端面部15が形成されている(図1参照)。
【0023】
すなわち、上記係合溝14は、所定長さの範囲にわたって形成された雄ねじ部13の先に、断面U字状をなす形態で、ロッド11の長さ方向と直角をなす周方向にのびるように1本形成されている。そして、先端ロッド11aと継ぎ足しロッド11b、継ぎ足しロッド11b同士は、上記雄ねじ部13に螺合する雌ねじ部22を略全体にわたって有した円筒状の上記カップリングスリーブ21によって接続されるが、このカップリングスリーブ21における接続時に上記係合溝14と対応する位置には、図4、図5に示したように、貫通孔23が形成される。貫通孔23は、1条の係合溝14に対して平行に2個、すなわち一つのカップリングスリーブ21に合計4個形成されている。
【0024】
これら貫通孔23には、螺合による接続後にピン24が挿入される(図5、図6参照)。ピン24の挿入によりロッド11がカップリングスリーブ21から抜ける方向、すなわち右方向に回転しようとしても、貫通孔23に挿入されているピン24が係合溝14に係合された状態を保つので、右方向への回転が阻止され、抜け止めがなされる。なお、ピン24には割りピンを用いるのが好ましい。
【0025】
上記削孔ビット部材41は、上記ロッド11が接続される略円筒状の本体部材42と、該本体部材42の先に一体固定されるビット部材43とからなる。本体部材42は、後端部に上記先端ロッド11aの雄ねじ13が螺合する雌ねじ42aを有し、先端部がビット部材43内に差し込まれて回転不可能な状態に固定される。本体部材42におけるビット部材43から出ている部分は、嵌合軸部44である。
【0026】
ビット部材43は、本体部材42よりも大径で、先端部は適宜の形状に形成され、超硬合金からなるチップ45が固定されている。そしてこのビット部材43には、本体部材42の軸心部に形成されている中央孔部46aに連通する中央孔部46bが形成され、この中央孔部46bから先には複数本の噴孔46cが形成されている。
【0027】
上記中央孔部46a,46bと噴孔46cには、ロッド11内の導通孔部12を通して、またはその他の部材を通して注入されるエアや水、薬液などの流体が通る。このため、上記中央孔部46a,46bには、逆止弁47が設けられる。
【0028】
また、逆止弁47と上記雌ねじ42aとの間には、上記先端スリーブ61を相対移動可能な状態で取り付ける嵌合構造の構成要素としての凸部48が形成されている。上記相対移動は、先端スリーブ61の長さ方向および周方向に適宜範囲で行われるように設定される。また、凸部48は、たとえば3個、4個などと周方向に複数形成される。
【0029】
この例では凸部48は、転動可能な球体48aで形成されている。また、この球体48aは内外に出没自在である。
【0030】
すなわち、球体48aは、嵌合軸部44に形成された保持孔44aに保持されるとともに、この保持孔44aの内周側に位置するように収納された短筒状の支持環48bと、この支持環48bを上記保持孔44aの下に位置するように付勢するばね48cとを有する。上記支持環48bの外周面における反ばね側にはテーパ面48dが形成され、支持環48bが先端側に変位した位置からばね48cの付勢力に従って後方に変位した時に、球体48aを外周側に押圧して移動するように構成されている。図中49は、上記支持環48bに対して位置規制を行う止め具である。
【0031】
このような嵌合軸部44の外周に嵌まるのが、上記先端スリーブ61である。この先端スリーブ61は、内周面における上記球体48aに対応する部位に凹部62を有する。凹部62は、先端スリーブ61を嵌合軸部44上で相対移動可能にする緩衝用の隙間62aを有した大きさである。
【0032】
先端スリーブ61の内周面における上記凹部62を長さ方向にはさむ2位置には、嵌合軸部44との間をシールするシール部材63,64が設けられている。
【0033】
また、先端スリーブ61の先端部には、上記削孔ビット部材41におけるビット部材43の後端部に形成された噛合部43aと、相対移動可能に噛合する噛合部61aが形成されている。
【0034】
一方、先端スリーブ61の後端部には、接続用の接続ねじ部61bが形成されており、上記ケーシングパイプ51が接続される。
【0035】
先端スリーブ61を嵌合軸部44に嵌合するには、適宜の治具を用いて支持環48bを先端方向に向けて押し込んでおき、この状態で、先端スリーブ61の先端部を嵌合軸部44に対して差し込んでから、治具による支持環48bの押圧を解除すればよい。すると、支持環48bがばね48cの弾性復帰に伴って後方に向けて変位し、球体48aが外周側に突出する。すなわち、球体48aが凹部62内に収まり嵌め殺し状態になる。
【0036】
上記ケーシングパイプ51は、塩化ビニルなどの合成樹脂製で、所定長さに形成された円筒状である。そして先端に、上記接続ねじ部61bに螺合する第1ねじ部51aが形成され、後端には、この第1ねじ部51aに螺合可能な形状の第2ねじ部(図示せず)が形成された構造で、順次継ぎ足して使用される。
【0037】
また、ケーシングパイプ51には、薬剤を噴射するために逆止弁付きの複数の噴射孔52が適宜間隔おきに形成されている(図7参照)。
【0038】
このように構成された削孔工具31では、ロッド11を削孔ビット部材41に接続した状態でパーカッションマシンから左回りの回転力と打撃力を削孔ビット部材41に伝達すると、削孔ビット部材41は、その回転力と打撃力を受けて、地盤や岩盤内に切り込む。
【0039】
このとき、回転力と打撃力を受ける削孔ビット部材41に接触しているのは先端スリーブ61であるが、この先端スリーブ61の接触は、凸部48と凹部62とからなる嵌合構造とシール部材63,64を介してなされている。そして、凸部48と凹部62の間には、隙間62a(余裕、あそび)を有しているため、回転力や打撃力による振動は緩和され、先端スリーブ61の後端部に接続されたケーシングパイプ51に掛かる負荷を軽減できる。
【0040】
しかも、凸部48は転動可能であるため、凸部48と凹部62の衝突時の衝撃も緩和できるため、ケーシングパイプ51に掛かる負荷はより一そう軽減される。
【0041】
さらに、先端スリーブ51は嵌合軸部に対してシール部材63,64を介して接続されているので、先端スリーブ61はいたずらにがたつくことはない。そのうえ、嵌合軸部44と先端スリーブ61との間に泥土などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0042】
また、削孔などの作業終了後には、ロッド11に対して図2に示した如く、削孔の時とは逆、すなわち右回りの回転力を加えれば、ロッド11はすべて一体であるので、先端ロッド11aを削孔ビット部材41から簡単に分離することができる。抜き取ったロッド11は、カップリングスリーブ21の貫通孔23に差し込んだピン24を抜き取れば各部材ごとに分離できる。
【0043】
以上のような削孔工具31では、削孔をしながら薬液注入を行うことができる。すなわち図7に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔(削孔工程)を行い(a)、削孔動作を止めてからエア又は水に代えて所望の薬液を噴孔46cから噴射(薬液注入工程)する(b)。または、上記削孔(削孔工程)と薬液噴射(薬液注入工程)を同時に行う。
このような動作を順次繰り返して、所定の深さまで削孔と薬液注入を行う(c)。
最後に、ロッド11を右に回転してロッド11とカップリングスリーブ21を回収する(d)。
【0044】
また、所定深さの削孔(削孔工程)をしてから薬液注入(薬液注入工程)を行うこともできる。すなわち、図示はしないが、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔を行う。次に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する。続いて、薬液注入用の注入管をロッドに代えて差し込んで、注入管を利用して薬液注入を行う薬液は、ケーシングパイプ51に設けられた逆止弁付きの噴射孔52から噴出する。
【0045】
上記のようにしてロッド11が接続され、上記例のように削孔作業と薬液注入作業が行われる。
【0046】
つまり、ロッド11の継ぎ足しが可能である上に、ロッド11の雄ねじ部13とカップリングスリーブ21の雌ねじ部22の螺合状態をピン24と係合溝14との係合で確実に保持する。係合溝14は、雄ねじ部13の雄ねじとは別個に設けたものであって、回転を阻止する方向での凹凸で積極的に係合するうえに、係合溝14の方向性もねじのように螺旋を描いたものではないので、進退方向への回り止めが確実になされる。
【0047】
このため、雄ねじ部13と雌ねじ部22の相互の回転を完全に阻止することができる。
【0048】
また、適宜継ぎ足されて使用されるロッド11は、相互に回り止めされるとともに、ロッド11と削孔ビット部材41との着脱可能な接続構造がねじ(接続ねじ部42a)で構成されているので、ロッド11の回収に際しては、ロッド11を削孔時とは逆の右方向に回転するだけで、ロッド11を削孔ビット部材41から分離することができて作業が簡単である。そのうえ、構造が簡素であるため、部品点数の低減や組み立て工数の低減などによりコストを抑えることもできる。
【0049】
以下、その他の形態について説明する。なお、上記構成と同一又は同等の部位については、上記構成と同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0050】
図8は、ロッド11が複数本の係合溝14を有した例を示している。すなわち、上述例と同様にロッド11の先端部に係合溝14を形成するとともに、この係合溝14から適宜距離後方に隔てた位置に、別の(第2の)係合溝14を形成している。換言すれば、2個の雄ねじ部13を間欠的に成形し、これらの間に第2の係合溝14を形成している。このように複数本の係合溝14を形成し、各係合溝14部分でピン24による回り止めを行うと、ピン24にかかる荷重を分散でき、強度を高めることができる。
【0051】
図9は、雄ねじ部13と雌ねじ部22を構成するねじが、上記例のようなテーパねじではなく、ハイリードねじである例を示す。
【0052】
同様に、図10は、雄ねじ部13と雌ねじ部22を構成するねじが、ロープねじである例を示す。
【0053】
図11は、カップリングスリーブを使用せずに連結できるロッド11の例を示している。すなわち、長さ方向の一端部に上記雄ねじ部13と係合溝14を有し、他端部にスリーブ部21a、すなわち雌ねじ部22と貫通孔23を有したロッド11である。
【0054】
この発明の構成と上記一形態の構成との対応において、
この発明のスリーブ部は、上記一形態におけるカップリングスリーブ21およびスリーブ部21aに対応し、
以下同様に、
差込部材は、ピン24に対応し、
挿入孔は、貫通孔23に対応するも、
この発明は上記一形態の構成のみに限定されるものではない。
【0055】
たとえば、挿入孔は、貫通しておらずに一方のみが開口されているものであってもよく、また、差込部材には、割りピン以外の適宜の部材を使用することもできる。さらに、上記係合溝14は、雄ねじ部13の先端側の隣接位置に形成されるのに限らず、例えば図8に示した第2の係合溝14のように、雄ねじ部13間に形成されるものであるもよい。さらにまた、係合溝14は1本または2本に限らず、3本、4本と形成するもよく、また1本の係合溝14に対応する貫通孔23の数は、上述したように2本に限らず、例えば1本であるもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】削孔機用ロッドの連結構造を示す断面図。
【図2】削孔工具の断面図。
【図3】削孔機用ロッドの側面図。
【図4】削孔機用カップリングスリーブの片側断面図。
【図5】削孔機用カップリングスリーブの断面図。
【図6】回り止め状態を示す断面図。
【図7】作用状態の説明図。
【図8】他の例に係る連結構造の断面図。
【図9】他の例に係る連結構造の断面図。
【図10】他の例に係る連結構造の断面図。
【図11】他の例に係る削孔機用ロッドの片側断面図。
【符号の説明】
【0057】
11…削孔機用ロッド
13…雄ねじ部
14…嵌合溝
15…端面部
21…カップリングスリーブ
21a…スリーブ部
22…雌ねじ部
23…貫通孔
24…ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に螺合する雄ねじ部と雌ねじ部とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッドの連結構造であって、
上記雄ねじ部の隣接位置に、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が少なくとも1本形成される一方、
上記スリーブ部における、上記雄ねじ部と雌ねじ部が螺合した時の上記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成され、
上記雄ねじ部と雌ねじ部の螺合時に、上記差込部材が差し込まれる
削孔機用ロッドの連結構造。
【請求項2】
長さ方向の端部に連結用の雄ねじ部を有した削孔機用ロッドであって、
当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が、上記雄ねじ部に隣設して少なくとも1本形成された
削孔機用ロッド。
【請求項3】
前記係合溝が雄ねじ部より先端側部位に形成された
請求項1または請求項2に記載の削孔機用ロッドの連結構造または削孔機用ロッド。
【請求項4】
前記請求項2から請求項3のうちのいずれか一項に記載の削孔機用ロッドの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有した削孔機用カップリングスリーブであって、
上記雄ねじ部と螺合した時に前記係合溝と対応する位置に、前記差込部材を差し込むための挿入孔が形成された
削孔機用カップリングスリーブ。
【請求項1】
相互に螺合する雄ねじ部と雌ねじ部とを介して長さ方向に連結される削孔機用ロッドの連結構造であって、
上記雄ねじ部の隣接位置に、当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が少なくとも1本形成される一方、
上記スリーブ部における、上記雄ねじ部と雌ねじ部が螺合した時の上記係合溝と対応する位置に、上記差込部材を差し込むための挿入孔が形成され、
上記雄ねじ部と雌ねじ部の螺合時に、上記差込部材が差し込まれる
削孔機用ロッドの連結構造。
【請求項2】
長さ方向の端部に連結用の雄ねじ部を有した削孔機用ロッドであって、
当該削孔機用ロッドの長さ方向と直角をなす周方向にのびるとともに、雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有したスリーブ部から差し込まれる差込部材と係合する係合溝が、上記雄ねじ部に隣設して少なくとも1本形成された
削孔機用ロッド。
【請求項3】
前記係合溝が雄ねじ部より先端側部位に形成された
請求項1または請求項2に記載の削孔機用ロッドの連結構造または削孔機用ロッド。
【請求項4】
前記請求項2から請求項3のうちのいずれか一項に記載の削孔機用ロッドの雄ねじ部が螺合する雌ねじ部を有した削孔機用カップリングスリーブであって、
上記雄ねじ部と螺合した時に前記係合溝と対応する位置に、前記差込部材を差し込むための挿入孔が形成された
削孔機用カップリングスリーブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−46300(P2007−46300A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230859(P2005−230859)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591046858)アロイ工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591046858)アロイ工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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