説明

前駆体溶液の製造方法、圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法、および液体噴射装置の製造方法

【課題】安定性の高い前駆体溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る前駆体溶液の製造方法は、酸とアルコールと金属錯体とを含む、複合酸化物の前駆体溶液の製造方法であって、溶媒に対して20質量%以上の水を添加する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前駆体溶液の製造方法、圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法、および液体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェットプリンター等の液体噴射装置において、インク等の液滴を噴射する液体噴射ヘッドが知られている。液体噴射ヘッドは、圧力室内の圧力を変化させるために圧電素子を備えている。圧電素子は、上部電極および下部電極に挟まれた圧電体層を有し、駆動信号等によって圧電体層が変形することにより、振動板を屈曲させることができる。これにより、液体噴射ヘッドは、ノズル孔から圧力発生室内に供給されたインク等を噴射させることができる。
【0003】
このような圧電体層を形成する方法としては、気相法と液相法とに大別される。気相法としては、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などが、液相法としては、MOD(Metal Organic Deposition)法、ゾルゲル法などが知られている(特許文献1,2参照)。液相法は、高価な真空装置を必要とせず、元素組成や添加物を制御しやすい点で、気相法よりも低コストで、かつ簡便な薄膜形成が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−79747号公報
【特許文献2】特開平5−58636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液相法によって圧電体層を形成する際に、前駆体溶液中に含まれる酸とアルコールとにより、エステル化反応が起こる。エステルは、アルコールよりも粘度が低いため、経時により増大すると、前駆体溶液の粘度が低下してしまう。前駆体溶液の粘度が低いと、圧電体層の膜厚が薄くなり、膜ムラの要因となることがある。逆に、前駆体溶液の粘度が高いと、基板(下部電極)への濡れ性の悪化や、圧電体層の厚膜化が起こり、クラックの要因となることがある。このような前駆体溶液の変質により、圧電体層形成時のスピンコート条件の設定が難しくなることがある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、安定性の高い前駆体溶液の製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記前駆体溶液の製造方法を含む圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法、および液体噴射装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る前駆体溶液の製造方法は、
酸とアルコールと金属錯体とを含む、複合酸化物の前駆体溶液の製造方法であって、
溶媒に対して20質量%以上の水を添加する工程を含む。
【0008】
このような前駆体溶液の製造方法によれば、エステル化反応を抑制することができる(詳細は後述)。これにより、溶液の合成後にエステルが増大することを抑制することができ、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。その結果、安定性の高い前駆体溶液を得ることができる。
【0009】
本発明に係る前駆体溶液の製造方法において、
前記溶媒に対してエステルを添加する工程をさらに含んでもよい。
【0010】
このような前駆体溶液の製造方法によれば、より確実に、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る前駆体溶液の製造方法において、
前記エステルを添加する工程では、前記酸と前記アルコールとの反応によって生成されるエステルを添加してもよい。
【0012】
このような前駆体溶液の製造方法によれば、安定性の高い前駆体溶液を得ることができる。
【0013】
本発明に係る前駆体溶液の製造方法において、
チタン化合物を添加する工程と、
ジルコニウム化合物を添加する工程と、
鉛化合物を添加する工程と、
をさらに含み、
前記水を添加する工程は、
前記チタン化合物を添加する工程、および前記ジルコニウム化合物を添加する工程の後であって、前記鉛化合物を添加する工程の前に行われてもよい。
【0014】
このような前駆体溶液の製造方法によれば、沈殿物の生成を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る圧電素子の製造方法は、
本発明に係る前駆体溶液の製造方法によって製造された前駆体溶液を用いる。
【0016】
このような圧電素子の製造方法によれば、信頼性の高い圧電素子を得ることができる。
【0017】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、
本発明に係る圧電素子の製造方法を含む。
【0018】
このような液体噴射ヘッドの製造方法によれば、信頼性の高い液体噴射ヘッドを得ることができる。
【0019】
本発明に係る液体噴射装置の製造方法は、
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法を含む。
【0020】
このような液体噴射装置の製造方法によれば、信頼性の高い液体噴射装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法を示すフローチャート。
【図2】実施例1、実施例2、および比較例のエステル変化量を示すグラフ。
【図3】実施例1における保管日数0日のH−NMRスペクトル。
【図4】実施例1における保管日数30日のH−NMRスペクトル。
【図5】比較例における保管日数0日のH−NMRスペクトル。
【図6】比較例における保管日数30日のH−NMRスペクトル。
【図7】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図11】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
1. 前駆体溶液
まず、本実施形態に係る前駆体溶液について説明する。本実施形態に係る前駆体溶液は、複合酸化物を液相法によって形成するための前駆体溶液である。より具体的な複合酸化物としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTN)などのペロブスカイト型の複合酸化物が挙げられる。本実施形態に係る前駆体溶液によって形成される複合酸化物は、圧電性を有する圧電体層を形成することができる。本実施形態に係る前駆体溶液によって形成される複合酸化物は、圧電性を有することができれば、上記のような鉛系に限定されず、非鉛系であってもよい。
【0024】
図1は、本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法は、図1に示すように、溶媒を準備する工程と、金属原料を添加する工程と、水を添加する工程と、を含む。さらに、本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法は、溶液を攪拌する工程と、エステルを添加する工程と、を含むことができる。
【0025】
以下では、一例として、PZT複合酸化物をゾルゲル法によって製造するための、前駆体溶液の製造方法について説明する。PZT複合酸化物を製造するための前駆体溶液の製造方法においては、金属原料を添加する工程は、図1に示すように、チタン化合物を添加する工程と、ジルコニウム化合物を添加する工程と、鉛化合物を添加する工程と、を有することができる。以下、各工程について説明する。
【0026】
まず、溶媒を準備する(S1)。溶媒としては、例えば、酢酸やプロピオン酸などのカルボン酸が挙げられる。溶媒としてカルボン酸を用いることにより、本実施形態に係る前駆体溶液は、酸を含むことができる。
【0027】
次に、溶媒にチタン化合物を添加して、溶液1を形成する(S2)。チタン化合物としては、例えば溶液を攪拌する工程において、配位子交換によりアルコールを生成する化合物を用いることができる。このようなチタン化合物としては、アルコキシドが挙げられる。チタニウムアルコキシドとしては、配位子として炭素数が3〜8のアルコキシ基を有するものであればよく、例えば、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、チタニウムテトラ−iso−ブトキシド、チタニウムテトラ−sec−ブトキシド、チタニウムテトラ−tert−ブトキシド、チタニウムテトラ−n−ペントキシド、チタニウムテトラ−sec−ペントキシド、チタニウムテトラ−tert−ペントキシド、チタニウムテトラ−n−ヘキソキシド、チタニウムテトラ−sec−ヘキソキシド、チタニウムテトラ−n−ヘプトキシド、チタニウムテトラ−sec−ヘプトキシド、チタニウムテトラ−n−オクトキシドおよびチタニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)等が挙げられ、単体あるいは混合体として用いることが可能である。
【0028】
次に、溶液1にジルコニウム化合物を添加して、溶液2を形成する(S3)。ジルコニウム化合物としては、例えば溶液を攪拌する工程において、配位子交換によりアルコールを生成する化合物を用いることができる。このようなジルコニウム化合物としては、アルコキシドが挙げられる。ジルコニウムアルコキシドとしては、配位子として炭素数が3〜8のアルコキシ基を有するものであればよく、例えば、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−iso−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−n−ペントキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ペントキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ペントキシド、ジルコニウムテトラ−n−ヘキソキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ヘキソキシド、ジルコニウムテトラ−n−ヘプトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ヘプトキシド、ジルコニウムテトラ−n−オクトキシドおよびテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)オルトジルコネート等が挙げられ、単体あるいは混合体として用いることが可能である。また、これらのジルコニウムアルコキシドがブタノール等のアルコールに溶解したものを、添加してもよい。
【0029】
次に、溶液2に水(純水)を添加して溶液3を形成する(S4)。水の添加量は、溶媒に対して20質量%以上である。これにより、本実施形態に係る前駆体溶液は、エステル化反応を抑制することができ、高い安定性を有することができる。その理由について、以下に説明する。
【0030】
一般的に、酸とアルコールとを含む溶液では、下記式(1)のように、エステル化反応によって、エステルと水とが生成する。
【0031】
酸 + アルコール ⇔ エステル + 水 ・・・ (1)
【0032】
本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法では、溶液の合成時に、溶媒に対して20質量%以上の水を添加することにより、式(1)における平衡反応の右辺への移動を抑制することができる。すなわち、エステル化反応を抑制することができる。これにより、本実施形態に係る前駆体溶液では、溶液の合成後にエステルが増大することを抑制することができ、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。その結果、本実施形態に係る前駆体溶液は、高い安定性を有することができる。
【0033】
添加する水の量は、溶媒に対して、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。添加する水の量が20質量%より少ないと、(1)式のエステル化反応を十分に抑制できない場合がある。添加する水の量が50質量%より多いと、前駆体溶液の粘度が低くなり、圧電体層の厚膜化が困難となる場合がある。
【0034】
水を添加する工程は、どの段階で行ってもよいが、図1に示すように、チタン化合物を添加する工程、およびジルコニウム化合物を添加する工程の後であって、鉛化合物を添加する工程の前であることが好ましい。これにより、沈殿物の生成を抑制することができる。すなわち、一般的に、チタン化合物やジルコニウム化合物を添加することによって沈殿物(例えばオキシ酢酸ジルコニウム)が生成することがあるが、本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法では、水を添加することにより溶解性を向上させ、沈殿物の生成を抑制することができる。
【0035】
なお、水を添加する工程は、1回に限定されず、添加する水の合計量が上記の範囲であれば、複数回行ってもよい。
【0036】
また、水を添加した後、ポリエチレングリコールを添加してもよい。これにより、溶液の粘度を調整することができる。
【0037】
次に、溶液3に鉛化合物を添加して、溶液4を形成する(S5)。鉛化合物としては、例えば、酢酸鉛(II)三水和物、酢酸鉛(IV)三水和物を用いることができ、取り扱いの容易性から酢酸鉛(II)三水和物を用いることが好ましい。
【0038】
なお、上述した鉛化合物、ジルコニウム化合物、およびチタン化合物の混合モル比は、得られる圧電体層の圧電特性を考慮すると、例えば、Pb:Zr:Ti=1.05〜1.25:0.46〜0.56:0.44〜0.54(モル比)となるように設定することが好ましい。
【0039】
次に、溶液4を攪拌する(S6)。より具体的には、25℃以上120℃以下のオイルバスで10分以上の加熱攪拌を行う。これにより、溶媒および金属原料(チタン化合物、ジルコニウム化合物、鉛化合物)において配位子交換が起こり、酸とアルコールと金属錯体とを含む前駆体溶液を得ることができる。なお、加熱攪拌を行った後に、室温攪拌を行ってもよい。
【0040】
例えば、溶媒として酢酸を用いた場合、前駆体溶液に含まれる酸は、酢酸である。例えば、チタン化合物としてチタニウムテトライソプロポキシドを用い、ジルコニウム化合物としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液を用いた場合、前駆体溶液に含まれるアルコールは、イソプロパノールおよびブタノールである。前駆体溶液に含まれる金属錯体は、形成される複合酸化物に含有される金属を有し、PZT複合酸化物を形成する場合には、チタン、ジルコニウム、および鉛を含有する錯体である。
【0041】
次に、攪拌された溶液4に、エステルを添加して溶液5を形成する(S7)。エステルを添加することにより、より確実に、上記式(1)における平衡反応の右辺への移動を抑制することができる。これにより、より確実に、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。
【0042】
添加するエステルの量は、例えば、溶媒に対して、30質量%以下であることが好ましい。添加するエステルの量が30質量%より多いと、前駆体溶液の粘度が低くなり、厚膜化が困難となる場合がある。添加するエステル量は、より好ましくは15質量%以上30質量%以下の範囲である。これは添加するエステルの量が15質量%より少ないと、式(1)のエステル化反応を、より確実に抑制できない場合があるためである。
【0043】
添加するエステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、n−酪酸エチルおよびエチレングリコールジアセテートが挙げられるが、攪拌された溶液4に含まれる、酸とアルコールとの反応によって生成されるエステルを添加することが好ましい。すなわち、溶液4が、酸として酢酸を含み、アルコールとしてイソプロパノールおよびブタノールを含む場合は、エステルとして酢酸イソプロピルおよび酢酸ブチルを添加することが好ましい。
【0044】
なお、エステルを添加する工程は、どの段階で行ってもよい。また、エステルを添加する工程は、1回に限定されず、添加するエステルの合計量が上記の範囲であれば、複数回行ってもよい。
【0045】
以上の工程により、本実施形態に係る前駆体溶液を製造することができる。
【0046】
本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法によれば、溶媒に対して20質量%以上の水を添加する工程を含む。そのため、上記式(1)における平衡反応の右辺への移動を抑制することができる。すなわち、エステル化反応を抑制することができる。これにより、本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法では、溶液の合成後にエステルが増大することを抑制することができ、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。その結果、安定性の高い前駆体溶液を得ることができる。さらに、本実施形態に係る前駆体溶液は、安定性が高いため、溶液寿命を延長することができ、その分、コストを低減することができる。
【0047】
本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法によれば、エステルを添加する工程を含むことができる。そのため、より確実に、上記式(1)における平衡反応の右辺への移動を抑制することができる。これにより、より確実に、合成後の溶液の粘度変化を抑制することができる。
【0048】
本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法によれば、水を添加する工程は、チタン化合物を添加する工程、およびジルコニウム化合物を添加する工程の後であって、鉛化合物を添加する工程の前に行われることができる。これにより、沈殿物の生成を抑制することができる。すなわち、一般的に、チタン化合物やジルコニウム化合物を添加することによって沈殿物が生成することがあるが、本実施形態に係る前駆体溶液の製造方法では、水を添加することにより溶解性を向上させ、沈殿物の生成を抑制することができる。
【0049】
2. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
2.1. 前駆体溶液の作製
2.1.1. 実施例1
酢酸を溶媒として、これにチタニウムテトライソプロポキシド(Ti原料)を添加した後、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(Zr原料)を添加して、室温攪拌を行った。次に、溶媒に対して25質量%の純水を添加して、室温攪拌を行った。次に、ポリエチレングリコールを添加して攪拌した後、酢酸鉛(II)三水和物(Pb原料)を添加して、80℃のオイルバスで90分の加熱撹拌を行った。以上により、PZT前駆体溶液を作製した。
【0051】
2.1.2. 実施例2
酢酸を溶媒として、これにチタニウムテトライソプロポキシド(Ti原料)を添加した後、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(Zr原料)を添加して、室温攪拌を行った。次に、溶媒に対して20質量%の純水を添加して、室温攪拌を行った。次に、ポリエチレングリコールを加えて攪拌した後、酢酸鉛(II)三水和物(Pb原料)を添加して、80℃のオイルバスで90分の加熱撹拌を行い、さらに90分の室温攪拌を行った。次に、溶媒に対して20質量%の酢酸ブチルを添加して、30分の室温攪拌を行った。以上により、PZT前駆体溶液を作製した。
【0052】
2.1.3. 比較例
酢酸を溶媒として、これにチタニウムテトライソプロポキシド(Ti原料)を添加した後、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(Zr原料)を添加して、室温攪拌を行った。次に、溶媒に対して10質量%の純水を添加して、室温攪拌を行った。次に、ポリエチレングリコールを加えて攪拌した後、酢酸鉛(II)三水和物(Pb原料)を添加して、80℃のオイルバスで90分の加熱撹拌を行った。以上により、PZT前駆体溶液を作製した。
【0053】
2.2. エステル変化量調査
実施例1、実施例2、および比較例の前駆体溶液について、溶液中に含まれるエステル比率(より具体的には、酢酸イソプロピルおよび酢酸ブチルの比率)を次の方法により算出した。
【0054】
バリアン社製のFT−NMR装置/500NBにてH−NMR(プロトン核磁気共鳴)測定を実施し、そのピーク積分比から、エステル比率[mol%]を下記(2)式に基づいて算出した。ピーク積分比の算出には、SpecManager(ACD Inc.製)を用いて行った。
【0055】
エステル比率 = 100×[カルボン酸エステル]/([カルボン酸エステル]+[アルコール]) ・・・ (2)
【0056】
図2は、保管日数30日(30日経過後)のエステル比率と、保管日数0日のエステル比率と、の差を、エステル変化量として示したものである。保管は、室温で行った。
【0057】
図2より、実施例1および実施例2は、比較例よりも、経時によるエステル変化量が少なく、エステル化反応を抑制できることがわかった。保管日数30日のエステル変化量が15mol%を超えると、粘度の低下により、圧電体層形成時のスピンコート条件の設定が難しくなる場合がある。
【0058】
図3〜図6は、図2に示したエステル変化量を算出する際に測定したH−NMRスペクトルである。
【0059】
図3は、実施例1における保管日数0日のH−NMRスペクトルを示している。図3に示すように、酢酸イソプロピルのCH基由来のピーク積分比、および酢酸ブチルのCH基由来のピーク積分比は、それぞれ、0.05、1.17であった。
【0060】
図4は、実施例1における保管日数30日のH−NMRスペクトルを示している。図4に示すように、酢酸イソプロピルのCH基由来のピーク積分比、および酢酸ブチルのCH基由来のピーク積分比は、それぞれ、0.08、1.49であった。
【0061】
図5は、比較例における保管日数0日のH−NMRスペクトルを示している。図5に示すように、酢酸イソプロピルのCH基由来のピーク積分比、および酢酸ブチルのCH基由来のピーク積分比は、それぞれ、0.06、1.37であった。
【0062】
図6は、比較例における保管日数30日のH−NMRスペクトルを示している。図6に示すように、酢酸イソプロピルのCH基由来のピーク積分比、および酢酸ブチルのCH基由来のピーク積分比は、それぞれ、0.13、1.84であった。
【0063】
3. 圧電素子
次に、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図である。
【0064】
圧電素子100は、図7に示すように、第1電極10と、圧電体層20と、第2電極30と、を含むことができる。圧電素子100は、例えば、基板1上に形成されている。
【0065】
基板1は、例えば、半導体、絶縁体で形成された平板である。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。
【0066】
基板1は、可撓性を有し、圧電体層20の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板を含んでいてもよい。振動板の材質としては、例えば、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、これらの積層体が挙げられる。
【0067】
第1電極10は、基板1上に形成されている。第1電極10の形状は、例えば、層状または薄膜状である。第1電極10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第1電極10の平面形状は、第2電極30が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されない。
【0068】
第1電極10の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムとの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルとの複合酸化物(LaNiO:LNO)が挙げられる。第1電極層10は、上記に例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
【0069】
第1電極10は、第2電極30と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体層20の下方に形成された下部電極)となることができる。
【0070】
なお、基板1が振動板を有さず、第1電極10が振動板としての機能を有していてもよい。すなわち、第1電極10は、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極としての機能と、圧電体層20の動作によって変形することのできる振動板としての機能と、を有していてもよい。
【0071】
また、図示はしないが、第1電極10と基板1との間には、例えば、両者の密着性を付与する層や、強度や導電性を付与する層が形成されてもよい。このような層の例としては、例えば、チタン、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの酸化物の層が挙げられる。
【0072】
圧電体層20は、第1電極10上に形成されている。圧電体層20の厚みは、例えば、300nm以上3000nm以下である。圧電体層20の結晶構造は、モノクリニック構造であってもよい。圧電体層20は、(100)に優先配向していてもよい。
【0073】
圧電体層20は、本発明に係る前駆体溶液を用いて形成されることができる。圧電体層20の材質としては、例えば、PZT、PZTNが挙げられる。圧電体層20は、圧電性を有することができ、第1電極10および第2電極30によって電圧が印加されることで変形することができる。
【0074】
第2電極30は、圧電体層20上に形成されている。第2電極30は、圧電体層20を介して、第1電極10と対向して配置されている。第2電極30の形状は、例えば、層状または薄膜状の形状である。第2電極30の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下である。第2電極30の平面形状は、第1電極10に対向して配置されたときに両者の間に圧電体層20を配置できる形状であれば、特に限定されない。
【0075】
第2電極30の材質としては、例えば、第1電極10の材質として上記に列挙したものを適用することができる。第2電極30の機能の一つとしては、第1電極10と一対になって、圧電体層20に電圧を印加するための他方の電極(例えば、圧電体層20の上方に形成された上部電極)となることが挙げられる。
【0076】
次に、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る圧電素子100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0077】
図8に示すように、基板1上に、第1電極10を形成する。第1電極10は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより導電層を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。
【0078】
次に、第1電極10上に、前駆体層22を成膜する。前駆体相22は、本発明に係る前駆体溶液を用いて、液相法により形成される。
【0079】
より具体的には、本発明に係る前駆体溶液を、例えばスピンコート法により、第1電極10が形成された基板1上に塗布して、前駆体層22を形成する(塗布工程)。スピンコートの塗布条件(回転数や時間等)は、本発明に係る前駆体溶液の粘度や、前駆体層22の膜厚などによって、適宜決定される。
【0080】
次に、前駆体層22を加熱して乾燥させる(乾燥工程)。乾燥温度としては、前駆体層22の溶媒(前駆体溶液の溶媒)が蒸発するように設定することが好ましく、例えば、140℃以上180℃以下で、5分以上30分以下の保持時間で行われる。
【0081】
次に、乾燥された前駆体層22を加熱して脱脂する(脱脂工程)。これにより、前駆体層22に含まれる有機成分(前駆体溶液に含まれる有機成分)を、例えば、CO、HO、アルコール、炭化水素等として離脱させることができる。脱脂温度としては、例えば、350℃以上500℃以下で、5分以上30分以下の保持時間で行われる。
【0082】
以上の、塗布工程、乾燥工程、および脱脂工程を複数回繰り返すことにより、所望の膜厚を有する前駆体層22を得ることができる。
【0083】
図7に示すように、脱脂した前駆体層22を、焼成によって結晶化して、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電体層20を形成する(結晶化工程)。結晶化工程は、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)により、酸素雰囲気中で、650℃以上800℃以下の熱処理によって行われる。
【0084】
次に、圧電体層20上に、第2電極30を形成する。第2電極30は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより導電層を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。第2電極30を形成するためのパターニングにおいて、圧電体層20も一括にパターニングしてもよい。
【0085】
以上の工程により、本実施形態に係る圧電素子100を製造することができる。
【0086】
圧電素子100の製造方法によれば、本発明に係る前駆体溶液を用いて、圧電体層20を形成することができる。本発明に係る前駆体溶液は、上述のように、高い安定性を有することができる。そのため、圧電素子100の製造方法によれば、信頼性の高い圧電素子100を得ることができる。
【0087】
なお、圧電素子100は、例えば、圧力発生室内の液体を加圧する圧電アクチュエーターとして、液体噴射ヘッドや、該液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置(インクジェットプリンター)などに適用されてもよいし、圧電体層の変形を電気信号として検出する圧電センサー等その他の用途として用いてもよい。
【0088】
4. 液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる液体噴射ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図9は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図10は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図である。なお、図10では、図9と上下逆さまの状態を図示している。
【0089】
液体噴射ヘッド600は、本発明に係る圧電素子を有する。以下では、本発明に係る圧電素子として、圧電素子100を用いた例について説明する。
【0090】
液体噴射ヘッド600は、図9および図10に示すように、例えば、ノズル板610と、流路形成基板620と、振動板630と、圧電素子100と、筐体640と、を含む。なお、図10では、圧電素子100を簡略化して図示している。
【0091】
ノズル板610は、ノズル孔612を有することができる。ノズル孔612からは、液体(インク)が吐出される。ノズル板610には、例えば、複数のノズル孔612が設けられている。図10に示す例では、複数のノズル孔612は、一列に並んで形成されている。ノズル板610の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
【0092】
流路形成基板620は、ノズル板610上(図10の例では下)に設けられている。流路形成基板620の材質としては、例えば、シリコンが挙げられる。流路形成基板620がノズル板610と振動板630との間の空間を区画することにより、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力発生室622と、が設けられている。図10に示す例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力発生室622と、が区別されているが、これらはいずれも液体の流路(例えば、マニホールドということもできる)であって、このような流路はどのように設計されても構わない。例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。
【0093】
リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板630に設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力発生室622に供給されることができる。
【0094】
圧力発生室622は、例えば、複数のノズル孔612に対応して、複数設けられている。圧力発生室622は、振動板630の変形により容積が変化する。圧力発生室622はノズル孔612と連通しており、圧力発生室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
【0095】
なお、リザーバー624および供給口626は、圧力発生室622と連通していれば、流路形成基板620とは別の部材(図示せず)に設けられていてもよい。
【0096】
振動板630は、流路形成基板620上(図10の例では下)に設けられている。圧電素子100は、振動板630上(図10の例では下)に設けられている。圧電素子100は、駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板630は、圧電素子100(圧電体層20)の動作によって変形し、圧力発生室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0097】
筐体640は、図10に示すように、ノズル板610、流路形成基板620、振動板630、および圧電素子100を収納することができる。筐体640の材質としては、例えば、樹脂、金属が挙げられる。
【0098】
次に、本実施形態に係る液体噴射ヘッド600の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0099】
まず、流路形成基板620となる母材を準備する。母材としては、例えば(110)配向のシリコン単結晶基板を用いることができる。次に、母材に振動板630を形成する。振動板630は、例えば、スパッタ法により形成される。
【0100】
次に、図9に示すように、振動板630上に、上述した製造方法によって圧電素子100を形成する。
【0101】
次に、図9および図10に示すように、母材をパターニングし、所定の位置に、圧力発生室622、リザーバー624、および供給口626となる凹部を形成する。本実施形態では、母材として(110)配向のシリコン基板を用いているので、高濃度アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング(異方性エッチング)が好適に採用される。高濃度アルカリ水溶液によるウェットエッチングの際には、例えば振動板630をエッチングストッパーとして機能させることができる。したがって、圧力発生室622等の形成を容易に行うことができる。
【0102】
次に、ノズルプレート610を、各ノズル孔612が各圧力発生室622となる凹部に対応するように位置合わせし、その状態で流路形成基板620に接合する。これにより、複数の圧力発生室622、リザーバー624、および複数の供給口626が形成される。ノズルプレート610と流路形成基板620との接合は、例えば接着剤による接着法や、融着法などを用いることができる。
【0103】
次に、ノズルプレート610、流路形成基板620、振動板630、および圧電素子100を筐体640に収納する。
【0104】
以上の工程によって、本実施形態に係る液体噴射ヘッド600を製造することができる。
【0105】
液体噴射ヘッド600の製造方法によれば、信頼性の高い圧電素子100の製造方法を含む。したがって、信頼性の高い液体噴射ヘッド600を得ることができる。
【0106】
なお、上記の例では、圧電体層20を2つの電極10,30で挟む圧電素子100を用いて、撓み振動によって圧力発生室622の容積を変化させる液体噴射ヘッド600について説明した。しかしながら、本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記の形態に限定されず、例えば、圧電体層と電極とを交互に積層させてなる圧電素子を固定基板に固定し、縦振動によって圧力発生室の容積を変化させる形態であってもよい。また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、圧電素子の伸張や収縮変形ではなく剪断変形によって圧力発生室の容積を変化させる、いわゆるシェアモード型の圧電素子を用いた形態であってもよい。
【0107】
また、上記の例では、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0108】
5. 液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
【0109】
液体噴射装置700は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。以下では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、液体噴射ヘッド600を用いた例について説明する。
【0110】
液体噴射装置700は、図11に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
【0111】
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
【0112】
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
【0113】
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0114】
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
【0115】
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
【0116】
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
【0117】
液体噴射装置700によれば、高い信頼性を有する液体噴射ヘッド600を含む。したがって、液体噴射装置700は、高い信頼性を有することができる。
【0118】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0119】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0120】
1 基板、10 第1電極、20 圧電体層、22 前駆体層、30 第2電極、
100 圧電素子、600 液体噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、
620 流路形成基板、622 圧力発生室、624 リザーバー、626 供給口、
628 貫通孔、630 振動板、640 筐体、700 液体噴射装置、
710 駆動部、720 装置本体、721 トレイ、722 排出口、
730 ヘッドユニット、731 インクカートリッジ、732 キャリッジ、
741 キャリッジモーター、742 往復動機構、743 タイミングベルト、
744 キャリッジガイド軸、750 給紙部、751 給紙モーター、
752 給紙ローラー、752a 従動ローラー、752b 駆動ローラー、
760 制御部、770 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸とアルコールと金属錯体とを含む、複合酸化物の前駆体溶液の製造方法であって、
溶媒に対して20質量%以上の水を添加する工程を含む、前駆体溶液の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記溶媒に対してエステルを添加する工程をさらに含む、前駆体溶液の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記エステルを添加する工程では、前記酸と前記アルコールとの反応によって生成されるエステルを添加する、前駆体溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
チタン化合物を添加する工程と、
ジルコニウム化合物を添加する工程と、
鉛化合物を添加する工程と、
をさらに含み、
前記水を添加する工程は、
前記チタン化合物を添加する工程、および前記ジルコニウム化合物を添加する工程の後であって、前記鉛化合物を添加する工程の前に行われる、前駆体溶液の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された前駆体溶液を用いた、圧電素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電素子の製造方法を含む、液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドの製造方法を含む、液体噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−253177(P2012−253177A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124202(P2011−124202)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】