説明

剥離処理剤の製造方法

【課題】
エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとの反応に触媒として有機金属系、アミン系以外のものを使用することで、副生成物量が少なく、触媒が残存しない剥離処理剤を提供する。また剥離処理剤の品質にバラツキがない、安定した製造方法を提供する。
【解決手段】
エチレン−ビニルアルコール共重合体と、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートの1種または2種以上との反応生成物を有効成分とする剥離処理剤であって、水溶性の高い弱酸のアルカリ金属塩をウレタン化反応触媒として添加し反応させて得られる反応生成物を有効成分とする剥離処理剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エチレン−ビニルアルコール共重合体と炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートとの反応に、水溶性の高い弱酸のアルカリ金属塩をウレタン化反応触媒として使用し、この反応生成物を有効成分とする剥離処理剤を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体に、アルキルイソシアネートを付加させたウレタン系付加剥離処理剤が知られている。具体例としては、ポリビニルアルコールを使用したウレタン系剥離処理剤(例えば、特許文献1参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体を使用したウレタン系剥離処理剤(例えば、特許文献2参照)、前記エチレン−ビニル共重合体を使用したウレタン系剥離処理剤の製造方法として、水溶性溶媒を用いて反応開始から反応終了に至るまでその中間生成物も含めて溶液状態下で反応させる剥離処理剤の製造方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。さらには前記エチレン−ビニル共重合体または/およびポリビニルアルコールを使用したウレタン系剥離処理剤および製造方法(例えば、特許文献4参照)も開示されている。
【0003】
通常、前記剥離処理剤を製造する際に、原料であるエチレン−ビニルアルコール共重合体をトルエン等の有機溶媒に分散させて、加温してジメチルスルホキシド等の水溶性溶媒を加えて、オクタデシルイソシアネート等の脂肪族イソシアネートを加えて反応させる方法が採用される。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ジメチルスルホキシド等の水溶性溶媒を添加した際に徐々に溶解するので、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のペレット状物またはフレーク状物の周りからイソシアネートと反応し、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとのウレタン反応生成物(以下、ウレタン生成物と略称)を得ることができる。ウレタン生成物は、トルエンに溶解するため溶液状態で反応を進行させることができる。このイソシアネート付加反応をスムーズに進行させる為、反応温度を高くすると副反応が起こり易い。一方、副反応を避けるため低温で反応を行うのは長時間を要する。通常は反応進行が困難な場合には反応促進用の触媒を添加している(特許文献4参照)。特許文献3の実施例においては、有機金属系触媒(例えば、錫系触媒のジブチルチンジラウレート(以下、DBTDLと略称。))を使用して反応完結している。
【0004】
しかし、この有機錫系触媒の使用はウレタン化反応触媒としての効果は大きい反面、反応後のウレタン生成物中に錫触媒が残存し、これを使用したフィルム等への練り込み、コンパウンドの調製や押出成形加工などの際に生じた熱でウレタン結合が熱分解により生じた低分子量の副生物、熱解離により生じたアロハネートやビューレット結合を持つ副生成物などによる剥離性能の低下等の問題がある。また、金属の含有を嫌う電子部品材料などの用途への使用もトラブルの原因となり用途範囲を制限する必要がある。ここで、ウレタン化反応触媒について広く紹介している文献(非特許文献1参照)に着目すると、非特許文献1の118ページ〜121ページに記載されているように、代表的なウレタン化反応触媒は有機金属系触媒とアミン系触媒の2群しかない。しかし、アミン系触媒の使用は、ウレタン生成物である剥離処理剤の黄変化の原因となるという問題点があり、さらに反応や抽出に使用した溶剤等からアミン回収のために別の工程を設ける必要性が生じる。
【特許文献1】特公平2−7988号公報
【特許文献2】特公昭60−30355号公報
【特許文献3】特公平4−28002号公報
【特許文献4】特開2003−96432号公報
【非特許文献1】ポリウレタン樹脂ハンドブック、岩田敬治編、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と脂肪族イソシアネートとの反応に触媒として有機金属系触媒、アミン系触媒以外のものを使用することで、低温条件での反応がスムーズに進行し、ビスウレア体等を生成する副反応が起こり難く、有機金属系触媒のウレタン生成物への残存が無く、アミン系触媒回収工程の必要性が解消でき、剥離処理剤の品質にバラツキがない製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートの1種または2種以上とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪酸イソシアネートのイソシアネート基の当量比(以下「NCO/OH比」と略称。)を0.5〜1.0とし、ウレタン化反応触媒として剥離処理剤100質量部に対して0.01〜0.5質量部の水溶性の高い弱酸のアルカリ金属塩を添加して反応させ得られる反応生成物を有効成分とする剥離処理剤の製造方法である。
【0007】
また本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体の脱水操作を行うことによって水分含量を減少させた後、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートの1種または2種以上と反応させることを特徴とする剥離処理剤の製造方法である。
【0008】
さらに本発明は、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートと水との反応副生物であるビスウレア体の含有量を、剥離処理剤に対して0.01〜0.6質量%に低減することも特徴としている。
【0009】
本発明において前記したビスウレア体とは、前記イソシアネートと水との反応において生成物したアミン化合物に対して、さらに前記イソシアネートが反応することによって生成した尿素化合物のことをさしている。さらに前記したビスウレア体には前記ビスウレア体に対して前記イソシアネートが反応して生成したビウレット化合物が混合している場合もある。
【0010】
ビスウレア体を生成する副反応を制御するための有効な手段の1つが、原料中に含まれている水分を除去することである。この水分除去の方法としては、特許文献4に記載された方法のようにかなり改善されてきたが、原料中の水分を完全に除去することは困難である。
本発明の製造方法では、水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩をウレタン化触媒に使用することによって、脂肪族イソシアネートと水との副反応よりも脂肪族イソシアネートとエチレン−ビニルアルコール共重合体との主反応が優先して進行するため、ビスウレア体の含有量を低減できるのである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剥離処理剤の製造方法によれば、水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩をウレタン化触媒に使用することで短時間にウレタン化反応が完結し、イソシアネートが水と反応した副生物であるビスウレア体の生成に消費されないためエチレン−ビニルアルコール共重合体に対する脂肪族イソシアネートの付加率が一定となり、剥離処理剤の品質が向上すると共にバラツキがなく安定化し、また有機金属触媒等の使用もないので剥離処理剤中に金属残留の危険性はなく電子材料分野への使用も可能である。また剥離処理剤としての用途において、剥離層から粘着層へ不純物が移行することによる粘着性能の低下の問題が防止できる。さらに、弱酸性のアルカリ金属塩は簡単に回収できるので、アミン系触媒回収のような付加工程を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のウレタン生成物中である剥離処理剤の製造例としては、次のようにして製造することができる。粒子状エチレン−ビニルアルコール共重合体をトルエン等の非極性溶媒に分散し例えば共沸脱水し、温度を下げてから、反応触媒の水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩および、必要によりジメチルスルホキシド等の水溶性の溶媒を添加し、オクタデシルイソシアネート等の脂肪族イソシアネートを滴下し反応させる。触媒添加の時期は、上記のように反応前のトルエン溶媒中に予め溶解させておくが、反応の完結に時間がかかるなどの場合には反応途中に添加しても問題はない。
【0013】
エチレン−ビニルアルコール共重合体の水分を除く方法として特に限定されないが、例示すると乾燥機等により水分を除く方法があげられる。一般的に水分を除く方法として、共沸脱水の方法を用いるのが工業的に好ましく、共沸脱水の操作として、還流を行いながら還流装置の途中で水分を分離除去する方法等も含まれる。また使用する溶剤は水と共沸する溶剤であれば特に限定されないが、本発明の剥離処理剤との溶解性などからトルエン、キシレンが好ましい。水分除去工程後のエチレン−ビニルアルコール共重合体中の水分含有量は、150ppm以下とするのが好ましい。
【0014】
反応の終点は、反応混合物中の未反応イソシアネート化合物の残存量を赤外分光光度計により測定して確認することができる。上記の反応を完結させるに際し、水酸基とイソシアネート基との反応を促進させるため触媒の水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩を使用する。反応終了後に水を加えて油層と水層を分離し、触媒の水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩は水層に移行し簡単に除去することができる。一方目的物のウレタン化生成物は油層に移行し、ろ過機(フィルター)を通してろ過し、微量の副生物であるビスウレア体を捕捉する。使用できるろ過機は特に限定はされないが、使用する溶剤はトルエン等の有機溶剤で、ろ液中に反応生成物が含まれていることにより、溶液に不溶な副生物を除去することを目的とすることから、密閉型加圧ろ過機が好ましい。溶液を入れた器からフィルターを通し別の受器で溶液を受ける方式、あるいは、溶液を入れた器からフィルターを通し、再び溶液を入れてある器に戻す循環方式のどちらでも使用できる。最後に、予めメタノールを入れてある器に油層(トルエン、剥離処理剤)を導入し、反応生成物をろ別し乾燥させて目的とするウレタン生成物である剥離処理剤を得る。
【0015】
エチレン−ビニルアルコール共重合体と炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートとの割合は、特に限定されないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対して0.4当量〜1.0当量、好ましくは0.5〜1.0当量である。本発明の製造方法に用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体の粒子の大きさは、短時間で溶剤に溶解させる必要から10メッシュ以下の細かいものが好ましい。
【0016】
本発明のウレタン系剥離処理剤の製造用触媒である水溶性の高い弱酸性のアルカリ金属塩
としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機カルボン酸のアルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機弱酸のアルカリ金属塩が挙げられる。その中でも酢酸ナトリウムの触媒効果は顕著である。触媒の添加量は剥離処理剤100質量部に対して0.01〜0.5質量部である。好ましくは、0.05〜0.2質量部である。0.01質量部以下の添加量では、触媒効果は小さい。また0.5質量部以上の添加量では、ウレタン化反応が制御できない虞がある。
【0017】
本発明で使用できるエチレン−ビニルアルコール共重合体の構造は特に限定されないが、好ましくはビニルアルコール構造単位の含有率は、40〜80モル%であり、好ましくは40〜70%である。市販品としては、株式会社クラレ製の商品名エバール:グレードE−171B、E−151B、E−105B等や、日本合成化学工業株式会社製のソアノール:グレードAT4403、AT4406、A4412等があげられる。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体のビニル基に酸化エチレンを付加重合することによって合成される酸化エチレンを付加したエチレン−ビニルアルコールの共重合体も使用できる。市販されているものとしては、住友化学社製の商品名スミガード グレード300K又は商品名スミガード グレード300Gが挙げられる。以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
本発明で使用するエチレン−ビニルアルコールとしては、重合度として100〜3000、好ましくは500〜1500のものが使用できる。
【0019】
本発明で使用する脂肪族イソシアネートの脂肪族基は特に限定されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが用いられ、好ましくはアルキル基が挙げられる。脂肪族基としては、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状の方が好ましい。脂肪族基の炭素数は8以上であることが必要であるが、上限は特に限定されない。好ましくは30以下、より好ましくは20以下のものが使用できる。
【0020】
具体的に例示すると、オクチルイソシアネート、ドデシルイソシアネート(ラウリルイソシアネート)等のモノアルキルイソシアネートが挙げられるが、好ましくはオクタデシルイソシアネート(ステアリルイソシアネート)が挙げられる。一般にオクタデシルイソシアネートは、アルキル基の炭素の数が12、炭素数14、炭素数16、炭素数17、炭素数18、炭素数20のモノアルキルイソシアネートを含有しており、その含有割合はアルキル基の炭素数が16のイソシアネートが1〜10重量%、アルキル基の炭素数が17のイソシアネートが0.5〜4重量%、アルキル基の炭素数が18のアルキル基が80〜98重量%の混合物が市販されているが、好ましい混合物としては、主成分の混合比がアルキル基の炭素数が16のイソシアネートが8〜9重量%、アルキル基の炭素数17のイソシアネートが3〜4重量%、炭素数18のイソシアネートが85〜87重量%のものがよく、前記混合物の市販品としては、保土谷化学工業社製、商品名:ミリオネートOがあげられる。また以上のイソシアネートは単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【実施例1】
【0021】
以下、実施例においてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」はすべて「質量部」を示す。
【0022】
ウレタン化反応生成物中に含まれる不純物の含量は、以下に示すGPC分析条件によって測定した。
[GPCの分析条件]
装置:Shodex GPC system−21H(昭和電工製)
カラム:G−6000、G−4000、G−2500、計3本(東ソー製)
溶媒:テトロヒドロフラン、
流量:1.0ml/分、
カラム温度:40℃、
ループ:100μL、
検出器:RI、
【実施例2】
【0023】
[剥離処理剤の製造方法]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名エバール、グレードE−171B、クラレ社製)の粒子を10メッシュの篩いで分級し、篩いを通過した10メッシュより小さいエチレン−ビニルアルコール共重合体100部をトルエン1200部に分散し、2時間還流しながら還流装置の途中で水分を分離除去し、40℃まで冷却して、酢酸ナトリウム0.33部(剥離処理剤100部に対し0.10部)およびジメチルスルホキシドを290部加えて、オクタデシルイソシアネート(商品名:ミリオネートO、保土谷化学工業社製)269部(NCO/OH比=0.6)を撹拌しながら滴下し、120℃、4時間反応させる。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外分光光度計で定量し、その残存分が消失した時点をもって終点とした。反応終了後、135部の水を加えて、反応液を分液し、この操作を計2回繰り返し水層を除去した後、トルエン層である反応液を4130部のメタノール中に注ぎ白色沈殿物を析出させ、ろ別後メタノールで洗浄し、乾燥粉砕して目的物であるウレタン生成物327部を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)でウレタン生成物中のビスウレア体を分析した結果、ビスウレア体が0.3質量%検出された。
【0024】
[比較例1]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名エバール、グレードE−171B、クラレ社製)の粒子を10メッシュの篩いで分級し、篩いを通過した10メッシュより小さいエチレン−ビニルアルコール共重合体100部をトルエン1200部に分散し、2時間還流しながら還流装置の途中で水分を分離除去し、40℃まで冷却して、ジメチルスルホキシドを290部加えて、オクタデシルイソシアネート(商品名:ミリオネートO、保土谷化学工業社製)269部(NCO/OH比=0.6)を撹拌しながら滴下し、120℃、8時間反応させる。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外分光光度計で定量した結果、反応率は92%であった。更にこの条件で14時間反応させ、反応率95%の時点をもって終点とした。反応終了後、135部の水を加えて、反応液を分液し、この操作を計2回繰り返し水層を除去した後、トルエン層である反応液を4130部のメタノール中に注ぎ白色沈殿物を析出させ、ろ別後メタノールで洗浄し、乾燥粉砕して目的物であるウレタン生成物327部を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)でウレタン生成物中のビスウレア体を分析した結果、ビスウレア体が0.7質量%検出された。
【実施例3】
【0025】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名エバール、グレードE−171B、クラレ社製)の粒子を10メッシュの篩いで分級し、篩いを通過した10メッシュより小さいエチレン−ビニルアルコール共重合体100部をトルエン1200部に分散し、2時間還流しながら還流装置の途中で水分を分離除去し、40℃まで冷却して、錫系触媒のジブチルチンジラウレート0.33部(剥離処理剤100部に対し0.10部)およびジメチルスルホキシドを290部加えて、オクタデシルイソシアネート(商品名:ミリオネートO、保土谷化学工業社製)269部(NCO/OH比=0.6)を撹拌しながら滴下し、120℃、4時間反応させる。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外分光光度計で定量し、その残存分が消失した時点をもって終点とした。反応終了後、135部の水を加えて、反応液を分液し、この操作を計2回繰り返し水層を除去した後、トルエン層である反応液を4130部のメタノール中に注ぎ白色沈殿物を析出させ、ろ別後メタノールで洗浄し、乾燥粉砕して目的物であるウレタン生成物327部を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)でウレタン生成物中のビスウレア体を分析した結果、ビスウレア体が0.3質量%検出された。
【実施例4】
【0026】
本発明のウレタン化触媒である酢酸ナトリウムと有機金属系触媒のジブチルチンジラウレート(DBTDL)とを使用し、[実施例2]および[実施例3]に従い剥離処理剤を製造した。その剥離処理剤中に残留しているナトリウムおよび錫含量をICP発光分光分析法により測定した。測定結果は、[表1]の通りである。
【0027】
【表1】

【実施例5】
【0028】
前処理方法および分析機器は以下の通り。
[前処理剤方法(湿式分解法)]
石英製50mlナス型フラスコに試料約1gを正確に秤量し、硫酸5mlを加え、過酸化水素水を少しづつ滴下し分解を行った。分解終了後、沈殿物がないことを確認し精製水で50mlに定容し、ICP発光分光分析法にて分析した。なお、検量線はスズ標準溶液を使用して行った。
[分析装置]
パーキンエルマー社製、Optima 3300DV、
【0029】
[表1]からも明らかなように、酢酸ナトリウムを触媒とした場合には最終製品の剥離処理剤中に酢酸ナトリウムはほとんど残留せず、分液処理段階で除去されている。しかしDBTDLを触媒に使用した場合、触媒が分液処理段階では除去できず、かなりの量が剥離処理剤中に残留(残留値=12.9%)していることが確認された。
【0030】
実施例2と比較例1に記載の製造方法とを比較して、実施例2は触媒(酢酸ナトリウム)を使用し短時間で反応が完結しているため剥離処理剤としての収率が高い。またイソシアネートがビスウレア体の生成に消費されないためにエチレン−ビニルアルコール共重合体対する脂肪族イソシアネートの付加率が一定になり、目的とする品質が安定した剥離処理剤を容易に設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ビスウレア体の含有量が、剥離処理剤に対して0.6質量%以下に低減することを要求される分野の用途にも使用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアルコール共重合体と、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートの1種または2種以上とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対する脂肪酸イソシアネートのイソシアネート基の当量比(以下「NCO/OH比」と称す。)を0.5〜1.0とし、ウレタン化反応触媒として剥離処理剤100質量部に対して0.01〜0.5質量部の水溶性の高い弱酸のアルカリ金属塩を添加して反応させ得られた反応生成物を有効成分とする剥離処理剤の製造方法。
【請求項2】
エチレン−ビニルアルコール共重合体の脱水操作を行うことによって水分含量を減少させた後、炭素数が8以上の脂肪族基を有する脂肪族イソシアネートの1種または2種以上と反応させることを特徴とする請求項1記載の剥離処理剤の製造方法。
【請求項3】
前記した脱水操作が、エチレン−ビニルアルコール共重合体を水と共沸する有機溶媒に添加して共沸脱水を行うことによって遂行されることを特徴とする請求項2記載の剥離処理剤の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性の高い弱酸のアルカリ金属塩が、有機カルボン酸のアルカリ金属塩である請求項1〜請求項3いずれかの項に記載の剥離処理剤の製造方法。
【請求項5】
前記有機カルボン酸のアルカリ金属塩が酢酸ナトリウムである請求項4記載の剥離処理剤の製造方法。

【公開番号】特開2008−239726(P2008−239726A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80682(P2007−80682)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】