説明

剥離性フィルムおよびそれを用いた粘着テープまたは粘着ラベル

【課題】良好な剥離性と印刷性を両立させた剥離性フィルムの提供、さらには、該剥離性フィルムを使用した粘着テープの提供、また、該剥離性フィルムを使用した被着体貼付時のエアー抜けが良好な粘着ラベルの提供。
【解決手段】易印刷性層(A)、熱可塑性樹脂フィルム層(B)、剥離層(C)を順に含む積層構造を有する剥離性フィルムであって、
剥離層(C)の表面が、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を有し、
剥離層(C)の表面に穿孔構造(c2)は50〜400μm間隔で少なくとも一方向に規則的に配置されており、
剥離層(C)の表面に占める平坦面(c1)の面積率が5〜40%の範囲であり、
平坦面(c1)から穿孔構造(c2)最底部までの深さが5〜20μmの範囲であり、
平坦面(c1)と平行方向で見た穿孔構造(c2)の断面形状が菱形および楕円の少なくとも一つであり、
かつ該断面形状の対角線比(長径/短径)が3〜10の範囲である
ことを特徴とする剥離性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に剥離剤層を設けたものは剥離性フィルムとして工業的に広範に使用されている。さらには、剥離性フィルムの剥離面の反対側の面に粘着剤を塗工したものが粘着テープとして使用されており、加えて、剥離性フィルムの剥離面に粘着剤を塗工した後、印刷用上紙であるフィルム等と貼合したものが粘着ラベルとして使用されている。
【背景技術】
【0002】
剥離性フィルムを用いた粘着テープは、引張時でも破れにくく、高強度であることを利用し、例えばダンボールの梱包等に幅広く使用されている。しかし、剥離剤として各分野で幅広く使用されているシリコーン系剥離剤を使用すると、剥離面への、マジック等の筆記具での筆記性や、印刷時のインキ等の密着性が悪いことから、特許文献1に挙げられるような長鎖アルキル変性エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂からなる剥離剤が、粘着テープ用の剥離剤として長年使用されている。
しかし、このような非シリコーン系剥離剤は、粘着剤面と剥離面との剥離に要する力がシリコーン系剥離剤に比べて大きいという欠点があり、加えて粘着テープが高温下で長時間保管された場合には剥離に要する力がさらに大きくなるといった欠点があるため、性能改善が要望されている。筆記性や印刷性が改善された剥離剤としては、特許文献2に挙げられるようなスチレン変性アクリル系樹脂といった剥離性ポリマーを使用する手法も挙げられているが、筆記性や印刷性の向上に伴い、これも剥離に要する力が大きくなるという欠点を有する。
【0003】
また剥離性フィルムの別の使用用途として、粘着ラベル用セパレーターがある。この場合、剥離剤を塗工した剥離面は外表面に出ることがないので、同面への筆記性や印刷性は特に必要とされず、シリコーン系剥離剤が通常使用されている。特許文献3に記載の発明は粘着ラベルに関するものであり、特に表面凹凸形状を有する剥離加工紙に、印刷用上紙を貼合せ、粘着剤面に凹凸形状を転写し、被着体へ貼付時にエアー抜けの良好な粘着ラベルに関するものである。同発明は、剥離加工した紙にエンボス加工をすることで表面凹凸形状を付与した剥離加工紙を得たものである。しかし同方法では、剥離加工紙に凹凸形状をエンボス加工により付与する際に、高温高圧条件とするために加工紙が部分的に破壊されてしまい、歩留まりが低下する傾向にある。従って剥離加工紙はコスト低減を目的に薄手化すると、高温高圧条件での加工時に破断するトラブルが発生するため、剥離加工紙は厚くする必要があり、同剥離加工紙は高価になる傾向があり、改良の余地が残されている。
【0004】
表面凹凸形状を有する剥離加工紙の製造方法としては、表面凹凸形状のある加工紙にシリコーン剤を塗工して剥離加工紙を得る方法も考えられるが、従来は凹部分(溝部分)にシリコーン剤がたまりやすいためにシリコーン剤の塗工量に分布(ムラ)が出来やすく、結果として剥離に要する力が不安定になるといった欠点を有していた。粘着ラベルにおいて剥離に要する力が大きくなると、特に下記特許文献の印刷用上紙の様に柔軟な可塑性ポリ塩化ビニルフィルム等を使用する場合には、剥離性フィルムからの剥離時、および粘着ラベルを被着体に貼着した後、粘着ラベルの貼り直しを行うべく剥がそうとすると、印刷用上紙であるフィルムが伸びてしまい、同上紙の外観が大きく損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−142096号公報
【特許文献2】実用新案登録3032012号公報
【特許文献3】特許第3950115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って従来、粘着テープや粘着ラベルに使用される剥離性フィルムにおいて、剥離面の剥離に要する力が大きくなること無く安定(以下、剥離性が良好と表記)しており、更に剥離面への筆記性や印刷性の良好(以下、印刷性が良好と表記)かつ薄手化可能なものは、未だ見いだされていないのが実情である。
本発明の目的は、従来の粘着テープや粘着ラベルに用いられる剥離性フィルムの上記の問題点を鑑み、これを解決するために、良好な剥離性と印刷性を両立させた剥離性フィルムを提供すること、さらには、該剥離性フィルムを使用した粘着テープを提供すること、または該剥離性フィルムを使用した被着体貼付時のエアー抜けが良好な粘着ラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく、本発明者らが剥離性フィルムの観点から鋭意検討を重ねた結果、下記構成からなる剥離性フィルムを使用することによって粘着テープおよび粘着ラベルにおける上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
1.易印刷性層(A)、熱可塑性樹脂フィルム層(B)、剥離層(C)を順に含む積層構造を有する剥離性フィルムであって、剥離層(C)の表面が、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を有し、剥離層(C)の表面の穿孔構造(c2)は50〜400μm間隔で規則的に配置されており、剥離層(C)の表面に占める平坦面(c1)の面積率が5〜40%の範囲であり、平坦面(c1)から穿孔構造(c2)最低部までの深さが5〜20μmの範囲であり、平坦面(c1)と平行方向で見た穿孔構造(c2)の断面形状が菱形および楕円の少なくとも一方であり、かつ該断面形状の対角線比(長径/短径)が3〜10の範囲であることを特徴とする剥離性フィルム、
【0008】
2.剥離層(C)がポリオレフィン系樹脂を主成分として平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を形成した樹脂層(c3)と、該樹脂層(c3)上に塗工により設けられるシリコーン剥離剤層(c4)から形成されることを特徴とする上記1に記載の剥離性フィルム、
3.樹脂層(c3)が、熱可塑性樹脂と添加剤を含む樹脂組成物からなり、該樹脂層(c3)から同層表面への添加剤のブリードアウト量が、10〜200mg/mであることを特徴とする上記2に記載の剥離性フィルム、
4.樹脂層(c3)上にシリコーン剥離剤層(c4)を設ける前に、樹脂層(c3)表面へ放電密度10〜50W・min/mの強度でコロナ放電処理を行うことを特徴とする上記2または3に記載の剥離性フィルム、
【0009】
5.剥離層(C)において、平坦面(c1)で観測されるSi量(s1)と、穿孔構造(c2)部分で観測されるSi量(s2)とから求められる珪素存在比(s1/s2)が0.8〜1.2の範囲であることを特徴とする上記2〜4のいずれかに記載の剥離性フィルム、
6.剥離層(C)表面にグラビアインキを2g/mの量でベタ印刷を行い、インキ乾燥後の同表面をJIS−L−0849:2004に準拠し学振型摩擦試験器および金巾3号を用いて荷重500gで50回摩擦試験した後のインキ残留率が60〜100%であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の剥離性フィルム、
7.熱可塑性樹脂フィルム層(B)が、ポリオレフィン系樹脂と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つを主構成材として含むことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の剥離性フィルム、
【0010】
8.易印刷性層(A)が、熱可塑性樹脂フィルム層(B)上に塗工により設けられた層であり、高分子型帯電防止剤を含有し、表面固有抵抗値(JIS−K−6911:1995)が10〜1013Ω/mであり、表面の水接触角(JIS−R−3257:1999)が60〜100°であり、かつ算術平均表面粗さRa(JIS−B−0601:1994)が0.2〜0.9μmであることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の剥離性フィルム、
9.上記1〜8のいずれかに記載の剥離性フィルムの易印刷性層(A)上に、粘着剤層(D)を設けたことを特徴とする粘着テープ、
10.剥離性フィルムが長手方向に連続して巻き上げたロール状であり、これを巻き出しながら易印刷性層(A)上に粘着剤を塗工し、乾燥させて粘着剤層(D)とした後、これを再び巻き上げてロール状としたことを特徴とする上記9に記載の粘着テープ、
【0011】
11.粘着テープを23℃条件下で2週間調整した後、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度(JIS−K−6854−2:1999)を室温接着力(N/50mm)とし、
別に粘着テープを70℃条件下で20時間調整した後、23℃条件下で30分冷却し、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度(JIS−K−6854−2:1999)を高温接着力(N/50mm)としたとき、
下記式(1)により求められる接着力保持率が80〜99%の範囲であることを特徴とする上記10に記載の粘着テープ、
接着力保持率(%)=高温接着力/室温接着力×100 ・・・(1)
12.上記1〜8のいずれかに記載の剥離性フィルムの剥離層(C)上に、粘着剤層(D)、ラベル用上紙(E)を順に設けた粘着ラベルであって、JIS−K−7133:1999に準拠して測定した熱可塑性樹脂フィルム層(B)の熱収縮率とラベル用上紙(E)の熱収縮率の比が、0.7〜1.3の範囲であることを特徴とする粘着ラベル、
【0012】
13.ラベル用上紙(E)が、ポリオレフィン系樹脂を主構成材として含む樹脂フィルムであることを特徴とする上記12に記載の粘着ラベル、
14.ラベル用上紙(E)が、ポリオレフィン系樹脂と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも1つとを主構成材として含み、延伸して形成される合成紙であることを特徴とする上記13に記載の粘着ラベル、
15.ラベル用上紙(E)が、天然パルプを主構成材として含む紙であることを特徴とする上記12に記載の粘着ラベル、を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来の粘着テープや粘着ラベルに用いられる剥離性フィルムの問題点を解消し、良好な剥離性と印刷性を両立させた剥離性フィルムを提供すること、さらには、該剥離性フィルムを使用した粘着テープを提供すること、また該剥離性フィルムを使用した被着体貼付時のエアー抜けが良好な粘着ラベルを提供可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の剥離性フィルムの態様例を示す断面図。
【図2】本発明の剥離性フィルムの剥離層(C)の断面方向での構成を示す模式図。
【図3】本発明の剥離性フィルムの剥離層(C)の俯瞰方向での構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の剥離性フィルム、粘着テープ、および粘着ラベルについて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
『剥離性フィルム』
本発明の剥離性フィルムの構成について説明する。
本発明の剥離性フィルムは、易印刷性層(A)、熱可塑性樹脂フィルム層(B)、剥離層(C)を順に含む積層構造を有するフィルムである。以下、各構成要素について説明する。
【0016】
「熱可塑性樹脂フィルム層(B)」
本発明の剥離性フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム層(B)を含む。熱可塑性樹脂フィルム層(B)は剥離性フィルムの芯材として、剥離性フィルムの生産を容易にするものであり、剥離性フィルムに耐水性、強度、剛性といった特徴を付与するものである。熱可塑性樹脂フィルム層(B)はその主構成材として熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂フィルム層(B)はその主構成材として熱可塑性樹脂に加えて無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つを含むことが好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層(B)の構造は単層であっても2層以上の多層からなる積層フィルムであってもよい。
【0017】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂は熱可塑性樹脂フィルム層(B)の主構成材(マトリクス樹脂)として用いるものである。
上記熱可塑性樹脂フィルム層(B)に使用可能な熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、エチレングリコールとテレフタル酸を主原料とするポリエチレンテレフタレートや3元系以上の共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0018】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点より、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。またプロピレンを主成分とし、これとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレン系共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0019】
[無機フィラーおよび/又は有機フィラー]
無機フィラーおよび/又は有機フィラーは熱可塑性樹脂フィルム層(B)の構成材として、白色性付与、および延伸形成時には、空孔を形成する目的から添加するものである。
上記熱可塑性樹脂フィルム層(B)に使用可能な無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの無機フィラー、無機フィラーを核としこの周囲にアルミニウム酸化物乃至は水酸化物を有する複合無機フィラー、中空ガラスビーズ等を例示することができる。中でも重質炭酸カルシウム、焼成クレー、珪藻土は安価で延伸時に多くの空孔を形成させることができるために好ましい。
【0020】
また使用可能な有機フィラーとしては、空孔形成の目的のために、マトリクスとして用いる上記の熱可塑性樹脂よりも融点又はガラス転移点が高く、且つ上記の熱可塑性樹脂に非相溶性の樹脂から選択して用いることが好ましい。有機フィラーの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル酸エステル乃至はメタクリル酸エステルの単独重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチルエーテルケトン、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレン等α−オレフィンとの共重合体(COC)等を例示することができる。上記熱可塑性樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラーとして、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(COC)より選択されるものを用いることが好ましい。
【0021】
[配合比]
熱可塑性樹脂フィルム層(B)の原料組成は、上記の、熱可塑性樹脂20〜90重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ10〜80重量%とを含み、好ましくは熱可塑性樹脂40〜80重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ20〜60重量%とを含み、更に好ましくは熱可塑性樹脂50〜80重量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一つ20〜50重量%とを含む。
【0022】
[製造法]
熱可塑性樹脂フィルム層(B)は、無延伸フィルムもしくは延伸フィルムとして当業者に公知の種々の方法およびそれらの組み合わせによって製造することができる。いかなる方法により製造された熱可塑性樹脂フィルムであっても、本発明に記載された条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
本発明で使用する熱可塑性樹脂フィルム層(B)が延伸フィルムである場合は、熱可塑性樹脂と無機フィラーおよび/又は有機フィラーとを所定の割合で混合し、溶融混練した後に押出し等の方法により製膜し、製膜後に熱可塑性樹脂の融点より低い温度、好ましくは5〜60℃低い温度条件下で1軸方向乃至2軸方向に延伸を行うことによって得られる。
本発明において2種以上の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合、延伸は、用いる熱可塑性樹脂の配合量(重量%)が最大である熱可塑性樹脂の融点より5℃以上低い温度で行うことが好ましい。
【0023】
本発明において熱可塑性樹脂フィルム層(B)として多層フィルムを用いる場合、同層(B)は、それぞれの層を個別に形成した後に積層することによって得られたものでもよいし、積層した後にまとめて延伸して得られたものでもよい。熱可塑性樹脂フィルム層(B)は、例えば、基層(ア)の表裏面に表層(イ)の樹脂組成物を積層してイ/ア/イの多層構造とした後、1軸乃至は2軸方向に延伸することにより、全層1軸方向乃至は全層2軸方向に配向した多層フィルムとして得ることができる。また基層(ア)を1軸方向に延伸した後、その表裏面に表層(イ)を表裏それぞれに積層してイ/ア/イの多層構造とし、前段とは異なる延伸軸に再度1軸延伸することにより、1軸/2軸/1軸方向に配向した多層フィルムとして得ることもできる。
【0024】
各層を別個に延伸した後に積層することも可能であるが、上記のように各層を積層した後にまとめて延伸する方が工程数は少なく簡便であり、製造コストも安くなる。これらの方法により、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(B)を得ることが好ましい。
延伸には、当業者に公知の種々の方法を使用することができる。
延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸、テンターオーブンとリニアモーターを利用した同時二軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフを利用した同時二軸延伸、チューブラー法を利用したインフレーション(同時二軸延伸)形成法などを挙げることができる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、任意の剛性、クッション性、不透明性、軽量性を有する熱可塑性樹脂フィルム層(B)を得ることが容易であり好ましい。
【0025】
延伸倍率は特に限定されるものではなく、本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(B)に所
望する物性と、用いる熱可塑性樹脂の特性を考慮して決定する。ロール間延伸は通常は4〜11倍が好ましく、4〜10倍であることがより好ましく、5〜7倍であることがさらに好ましい。テンターオーブンを利用したクリップ延伸の場合は4〜11倍であることが好ましく、6〜9倍であることがより好ましい。これらを組み合わせた二軸延伸面積倍率としては、通常は4〜80倍であり、好ましくは4〜60倍、より好ましくは5〜50倍である。面積倍率を4倍以上にすることによって、低密度でより空孔が多い、且つ延伸ムラを防いでより均一な厚さの熱可塑性樹脂フィルム層(B)を製造することが容易になる傾向がある。また80倍以下にすることによって、延伸切れや粗大な穴あきをより効果的に防ぐことができる傾向がある。
【0026】
延伸後の熱可塑性樹脂フィルム層(B)には熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、延伸温度から延伸温度より30℃高い温度の範囲内を選択することが好ましい。熱処理を行うことにより、延伸方向の延伸応力に起因する熱収縮率が低減し、製品保管時の巻き締まりや熱による収縮から生じるシートの波打ち等が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。これらの処理は延伸したフィルムを緊張下に保持された状態において熱処理するのがより高い処理効果が得られるので好ましい。
【0027】
「易印刷性層(A)」
本発明の剥離性フィルムでは、これに表面印刷性および帯電防止性を付与するため、熱可塑性樹脂フィルム層(B)の片面に易印刷性層(A)を設ける。易印刷性層(A)は、塗工により熱可塑性樹脂フィルム層(B)上に設けられることが好ましい。
易印刷性層(A)は、特に印刷時の静電気発生防止の目的から、高分子型帯電防止剤を含有するものであって、当該表面のJIS−K−6911:1995に準拠して測定する表面固有抵抗値が10〜1013Ω/mであることが好ましく、10〜1012Ω/mであることがより好ましい。同表面の固有抵抗値が1013Ω/mを上回る場合は、印刷時の帯電防止効果が不十分となり、印刷時に、印刷機用紙供給側での剥離性フィルムの走行性が悪化して重送したり、用紙排出側での用紙揃えが悪化することがある。逆に10Ω/mを上回る場合は、同表面上に極性基が多くなり、印刷インキの密着性が低下することがあり好ましくない。
【0028】
さらに、易印刷性層(A)表面はオフセット印刷適性を保持するために、JIS−R−3257:1999に準拠して測定する水の接触角が60〜100°であることが好ましく、70〜95°であることがより好ましい。水接触角が100°を上回る場合は、インキの濡れ性が低下するためかインキ密着性が低下するので好ましくない。逆に水接触角が60°未満の場合は、オフセット印刷時の水負け現象が発生し、網点等の印刷外観が悪化するので好ましくない。
さらに、易印刷性層(A)表面のJIS−B−0601:1994に準拠して測定する算術平均表面粗さRaは、0.2〜0.9μmであることが好ましく、0.3〜0.8μmであることがより好ましい。表面粗さRaが0.9μmを上回る場合は、表面凹凸が大きくなりすぎることから、網点再現性が低下し、印刷物の外観が悪化するために好ましくない。表面粗さRaが0.2μm未満の場合は、表面凹凸によるインキ密着性向上効果(アンカー効果)が低下するため好ましくない。
【0029】
[高分子バインダー]
本発明の剥離性フィルムにおいて易印刷性層(A)は、印刷インキの定着性や熱可塑性樹脂フィルム層(B)への密着性を向上させるために、高分子バインダーを含有する。
高分子バインダーの具体例としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸
メチル−ブタジエン共重合体等の水系エマルジョンやポリビニルアルコール、シラノール基を含むエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、メチルエチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、各種でんぷん、各種ゼラチン等の水溶性ポリマーが挙げられる。
【0030】
上記の高分子バインダーの中で、インキ定着性向上および熱可塑性樹脂フィルム層(B)との密着性の点から下記一般式(I)で表されるポリエチレンイミン系重合体またはポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物が好ましい。
【化1】

(式中、RとRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10の範囲の直鎖または分岐状のアルキル基、脂環式構造を有するアルキル基、アリル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20の範囲のアルキル基、アリル基、脂環式構造を有するアルキル基、アリル基乃至はこれらの水酸化物であり、mは2〜6の範囲の整数であり、nは20〜3000の範囲の整数であり、これらを単独または数種類複合させても良い。)
【0031】
[高分子型帯電防止剤]
本発明の剥離性フィルムにおいて易印刷性層(A)は、印刷時の静電気発生防止の目的から、高分子型帯電防止剤を含有する。
使用可能な高分子型帯電防止剤としては、カチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型などのものが挙げられる。カチオン型としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するものが挙げられる。アニオン型としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸などのアルカリ金属塩(例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有するものが挙げられる。
両性型としては、上記のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有するもので、例としてベタイン型が挙げられる。ノニオン型としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体や、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体が挙げられる。その他、ホウ素を分子構造中に有する高分子型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらの中で好ましくは窒素含有高分子型帯電防止剤であり、より好ましくは第三級窒素またはカチオン型の第四級窒素を含有するアクリル系高分子である。
【0032】
[フィラー成分]
熱可塑性樹脂フィルム層(B)との密着性が低下しない範囲であれば、易印刷性層(A)に、インキ定着成分や白色度向上成分としてフィラー成分を含有させることも可能である。フィラー成分の具体例として、合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナヒドロゾル、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、二酸化チタン、プラスチックピグメント等が挙げられるが、これらの中でも炭酸カルシウム、シリカ、クレー、硫酸バリウム等の無機フィラーを使用することが好ましい。
【0033】
[その他成分]
また上記易印刷性層(A)には、エポキシ系、イソシアネート系、ホルマリン系、オキサゾリン系の架橋剤を含有させることも可能である。これらの樹脂を加えると易印刷性層(A)と印刷インキとの耐水密着性を更に改良することができる。架橋剤としては、特にビスフェノールA−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エ
ポキシ樹脂が好ましく、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、あるいは単官能乃至多官能のグリシジルエーテル、グリシジルエステル類が特に好ましい。尚、本発明を構成する易印刷性層(A)には、印刷性や密着性が損なわない範囲で、消泡剤、その他の助剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0034】
[配合比]
易印刷性層(A)の配合量比としては、高分子バインダー20〜90重量%、高分子型帯電防止剤1〜60重量%、フィラー成分0〜60重量%、架橋剤等のその他成分0〜40重量%であることが好ましい。
【0035】
[活性化処理]
塗工により熱可塑性樹脂フィルム層(B)上に易印刷性層(A)を設ける前に、両者の密着向上のため、熱可塑性樹脂フィルム層(B)の表面に各種の活性化処理を施しても良い。活性化処理とは、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた少なくとも一種の処理方法であり、好ましくはコロナ放電処理である。コロナ放電処理における適正な処理量は5〜200W・分/m、好ましくは10〜100W・分/mである。5W・分/m未満では、コロナ放電処理の効果が不十分で、その後の塗工により易印刷性層(A)を設ける際にはじきが生じやすい傾向にあり好ましくない。200W・分/m超では処理の効果が頭打ちとなるので200W・分/m以下で十分である。易印刷性層(A)を設けた後、その表面に、更に上記の活性化処理を施してもよい。
【0036】
[塗工方法]
易印刷性層(A)として、上記の高分子バインダーや帯電防止剤を配合した水溶液(以下、塗工剤と表記)を、熱可塑性樹脂フィルム層(B)上へ設ける塗工方法としては、ダイ、バー、ロール、グラビア、スプレー、ブレード、エアーナイフ、サイズプレス等の塗工方法およびこれらの塗工方法を組み合わせた方法を採用することができる。塗工剤の粘度、塗工量、塗工速度に応じて、ダイ、ロール、グラビア、スプレー等を用いて規定量の塗工剤を計量してロール、サイズプレスに転写して塗工したり、ダイ、ロールで規定量以上の塗工剤を転写させた後にバー、ブレード、エアーナイフ等で余分な塗工剤を掻き取って規定量の塗工剤を塗工したり、ダイ、スプレー等を用いて規定量の塗工剤を直接塗工することが可能である。より具体的な例として、塗工剤の粘度が10〜1000cP(0.01〜1Ns/m)、塗工量が1〜20g/m、塗工速度が300m/分以下で塗工する場合の塗工方式として、オフセットグラビア方式やスプレーシステム、ローターダンプニングを用いることができる。オフセットグラビア方式はグラビアとロールの組み合わせであり、塗工剤はグラビア版からロールに転写され、各ロール間で液の転写が行われる際にグラビア版目の除去と塗工剤の平滑化が行われた後、各層の表面に転写される。
【0037】
また、スプレーとサイズプレスを組み合わせたスプレーシステムは、塗工剤が供給装置からスプレー塗工装置を通じてサイズプレスに均一な塗工剤膜が形成され、サイズプレスから熱可塑性樹脂フィルム層(B)に転写されるため少量の塗工剤を塗工する方法として好ましい。ローターダンプニングはスプレー塗工の一種であり、ベルト駆動で高速回転するローターで塗工剤を霧状にして、各層の表面に直接噴霧する方法である。塗工剤を熱可塑性樹脂フィルム層(B)上へ塗工後、さらに必要によりスムージング(表面平滑化処理)を行い、乾燥工程を経て余分な水や親水性溶剤の除去を行うことにより、易印刷性層(A)が得られる。
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム層(B)の表面に設ける易印刷性層(A)中の高分子型帯電防止剤が、単位面積(m)当たり固形分量として0.001〜10g、好ましくは0.002〜8g、さらに好ましくは0.002〜5g、特に好ましくは0.005〜0.1gとなるように含有させるのが良い。高分子型帯電防止剤分布量が0.001g未満では帯電防止効果が十分に現れず、10gを超えると印刷インキの密着性が不十分になる傾向がある。
【0038】
[追加の表面処理]
上記の易印刷性層(A)で印刷適性および帯電防止性が不足する場合は、ピグメントを含有するコート層を更に設けることができる。このピグメントコート層は、一般的なコート紙の製造法に準じて易印刷性層(A)上にピグメント塗工を行うことにより形成することができる。ピグメントコート層に用いられるピグメントコート剤としては、一般的なコート紙に使用されるクレー、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルムニウム、プラスチックピグメント等のピグメント30〜80重量%と、接着剤20〜70重量%とを含有するラテックス等から構成されるものを挙げることができる。
また、この際に使用される接着剤としては、SBR(スチレン・ブタジエン共重合体ラバー)、MBR(メタクリレート・ブタジエン共重合体ラバー)等のラテックス、アクリル系エマルジョン、澱粉、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、メチルセルロース等を挙げることができる。さらに、これらのピグメントコート剤には、アクリル酸・アクリル酸ソーダ共重合体等の特殊ポリカルボン酸ナトリウム等の分散剤や、ポリアミド尿素系樹脂等の架橋剤を配合することができる。これらピグメントコート剤は通常15〜70重量%、好ましくは35〜65重量%の固形分濃度の水溶性塗工剤として使用される。
【0039】
「剥離層(C)」
本発明における剥離層(C)は、本発明の剥離性フィルムの熱可塑性樹脂フィルム層(B)の両側面のうち、易印刷性層(A)を設ける面とは反対側の面に設ける層であり、粘着剤層を設けて粘着テープ形態や粘着ラベル形態となった時に粘着剤と接する層である。その特徴は、外表面に平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を有し、穿孔構造(c2)は面上に規則的に配置され、平坦面(c1)の面積率が一定の範囲であり、更に穿孔構造(c2)の断面形状を規定したことにある。これらの特徴によって、シリコーン剤の塗工量に分布(ムラ)が出来にくく剥離面の良好な剥離性が得られ、凹凸付与により良好な印刷性(筆記性)が得られ、これらを両立することが可能となった。
本発明の剥離層(C)は、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を予め形成した樹脂層(c3)と、同樹脂層(c3)上に塗工により設けられるシリコーン剥離剤層(c4)とから形成されることが好ましい。該手法によれば、剥離性フィルムに無理なく穿孔構造(c2)を付与することができ、剥離性フィルムの薄手化が可能になる。
熱可塑性樹脂フィルム層(B)上に設けられる剥離層(C)乃至樹脂層(c3)は、いかなる方法により製造されたものであっても、本発明に記載された条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
【0040】
[平坦面(c1)および穿孔構造(c2)]
本発明における剥離層(C)の表面には、平坦面(c1)、および穿孔構造(c2)を形成する。穿孔構造(c2)を平面上に規則的に配置し、且つ平面上の平坦面(c1)の面積率(同様に、平面上の穿孔構造(c2)部の面積率)を一定の範囲にする。
剥離層(C)の表面上に穿孔構造(c2)は50〜400μm間隔で少なくとも一方向に規則的に配置し、剥離層(C)の表面に占める平坦面(c1)の面積率が5〜40%、好ましくは10〜30%の範囲にする。
穿孔構造(c2)のピッチが50μmに満たない場合や、平坦面(c1)の面積率が5%に満たない場合は、シリコーン剥離剤が、穿孔構造(c2)部に集中配置されるためか、剥離性が低下する傾向にあるので好ましくない。逆に穿孔構造(c2)のピッチが400μmを超える場合や、平坦面(c1)の面積率が40%を超える場合は、印刷性、なかでも印刷インキの密着性が低下する傾向にあるので好ましくない。またピッチが400μmを上回る場合は凹凸のパターンが鮮明となり、外観不良となったり筆記不良となる傾向があることから好ましくない。
【0041】
平坦面(c1)および穿孔構造(c2)の形成方法は、剥離層(C)を形成する樹脂層(c3)をTダイ押出し等で形成する時に、冷却ロールに表面凹凸模様を付随した金属ロール(エンボスロール)を使用する型付け方法である、エンボスロール加工法を採用することが好ましい。
穿孔構造(c2)の形成にあたり、上述のエンボスロール加工法を採用する以外であっても、当業者に公知の種々の方法およびそれらの組み合わせによって穿孔構造(c2)を有する剥離層(C)を製造することができる。例えば、ダイヤモンド粒子付きローラー、熱針、抜き刃を利用した機械的穿孔法、レーザー光穿孔法、電子照射穿孔法、プラズマ穿孔法、高圧放電穿孔法などの穿孔法が適用でき、剥離層(C)を形成する樹脂層(c3)の材質、肉厚、通過速度、穿孔径に応じて適宜選択することができる。
【0042】
[穿孔構造(c2)の形状]
本発明において、剥離層(C)における穿孔構造(c2)の形状は、線状、破線状、波線状、円形、楕円形、3角形、さらにはn角形(nは5以上の自然数)、任意のマークやデザイン(ロゴ等)の様な凹凸が考えられるが、剥離性および印刷性の両立のためには、平坦面(c1)と平行方向で見た穿孔構造(c2)の断面が、菱形形状および楕円形状の少なくとも一方であることが必須条件であることを見出した。
例えば、凹構造が線状の場合は、線状の形状に平行方向もしくは垂直方向で筆記性が大きく異なるので好ましくない。さらに正方形や六角形、任意の形状の場合は、筆記方向にかかわらず、筆記性は良好であるが、シリコーン剥離剤が、穿孔構造部に集中配置されためか、剥離性が低下する傾向があり好ましくない。
【0043】
また本発明において、平坦面(c1)から穿孔構造(c2)最低部までの深さは、5〜20μmの範囲である。該深さが、5μm未満である場合は印刷インキの密着性が低下し、逆に20μmを超える場合は、印刷性は良好であるものの、凹凸のパターンが鮮明となり外観不良となったり、シリコーン剥離剤が穿孔構造(c2)部に集中的に塗工されて(流入して)剥離剤の分布が不安定になり、筆記性不良となる傾向があることから好ましくない。
更に本発明において、穿孔構造(c2)の断面形状の対角線比(長径/短径)が3〜10の範囲とする。対角線比(長径/短径)は5〜10であることが好ましい。
【0044】
平坦面(c1)と平行方向で見た穿孔構造(c2)の断面形状が菱形および楕円の少なくとも一方であり、形状の対角線比(長径/短径)を3〜10の範囲とすることで、剥離性および印刷性の両立を図りやすくなる。穿孔構造(c2)の対角線比が3未満である場合は、シリコーン剥離剤が、穿孔構造部に集中配置されやすく、シリコーン剥離剤の塗工量分布が不均一となり、結果として剥離性が不安定になる傾向にあり好ましくない。逆に対角線比が10を上回る場合は、剥離の安定性には問題はないが、穿孔構造(c2)のパターンが鮮明となり、粘着性ラベルとしてラベルを目視したときに、外観に菱形形状が目立ちやすくなることから好ましくない。
なお、本発明において、剥離層(C)における穿孔構造(c2)は、下記の理由から図3に示すように断面形状対角線の短径がフィルムの走行方向に、ならびに対角線の長径がフィルムの直交方向に沿って配置されることが好ましい。即ち形状が上記条件から外れた場合は、シリコーン剥離剤を樹脂層(c3)の塗工時に、シリコーン剥離剤が穿孔構造部の長手方向に集中配置されためか、剥離性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0045】
[樹脂層(c3)の組成および形成]
樹脂層(c3)は、上記熱可塑性樹脂フィルム層(B)と同種の熱可塑性樹脂を主体に含み、実質的にフィラー(無機フィラーおよび有機フィラー)を含まないことが好ましい
。ここで「実質的に含まない」とは原料配合として意図的に含まないことを意味し、観察される量として0〜1重量%の範囲であることが好ましい。従って、剥離層(C)を形成する樹脂層(c3)を構成する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂フィルム層(B)と同様、ポリオレフィン系樹脂を主体としたものを用いる事が好ましい。
樹脂層(c3)もまた、前述の製造法と同様の方法で形成することができる。工業生産を考慮した場合、樹脂層(c3)は、熱可塑性樹脂フィルム層(B)と同一工程で製造することが好ましい。例えば、共押出手法により両者が積層したものをシート状に形成しても良いし、さらに両者を個別にシート状に形成した後に積層しても良い。
【0046】
本発明の剥離性フィルムは延伸された延伸フィルムからなるものであっても良い。例えば、熱可塑性樹脂フィルム層(B)の延伸前に易印刷性層(A)や樹脂層(c3)を積層し、1軸乃至は2軸方向に延伸することにより、全層1軸方向もしくは全層2軸方向に配向した積層構造物として得ることができる。また、熱可塑性樹脂フィルム層(B)の延伸後に易印刷性層(A)や樹脂層(c3)を積層することもでき、さらに積層した後にまとめて延伸して得ることもできる。
また、熱可塑性樹脂フィルム層(B)を多層フィルムとする場合は、基層(ア)をシート状に形成して1軸方向に延伸した後、その表裏面にシート状に形成した表層(イ)を積層し、さらに表層(イ)の一方の上に剥離層(C)乃至樹脂層(c3)を積層し、異なる延伸軸に再度1軸延伸することにより、1軸/2軸/1軸方向に配向した積層構造物として得ることもできる。
【0047】
各層は、別個に延伸して積層することも可能であるが、上記のように各層を積層した後にまとめて延伸する方が簡便であり製造コストも安くなる。これらの方法を用いて、本発明の剥離性フィルムを得ることが好ましい。
また、樹脂層(c3)は熱可塑性樹脂と添加剤を含む樹脂組成物からなる場合でも、該樹脂層(c3)から層表面への添加剤のブリードアウト量が、10〜200mg/mの範囲となるよう調整することが好ましい。該量は20〜100mg/mの範囲であることがより好ましい。樹脂層(c3)の表面への添加剤のブリードアウト量は、エンボス加工後にシリコーン剥離剤を塗工してシリコーン剥離剤層(c4)を設けることを考慮すれば、シリコーン剥離剤の硬化速度を維持するために、できるだけ低減することが好ましい。添加剤のブリードアウト量が200mg/mを超えてはシリコーン剥離剤硬化速度が著しく低下し好ましくない。しかし、添加剤のブリードアウト量を10mg/m未満とすると、樹脂層(c3)の熱安定性が著しく低下することから、上記範囲内で、極力低い添加量とすることが好ましい。ここで言うシリコーン剥離剤硬化を阻害する添加剤としては、ラジカル捕捉材、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
これら樹脂層(c3)の表面への添加剤のブリードアウト量を、上記特定の範囲内に調整する具体的な手段としては、例えば、添加量自体を極力低くすることや、移行しにくい高分子量の添加剤を選定すること、熱可塑性樹脂との相溶性を改善するべく構造設計されたものを選定することなどの手段が挙げられ、本発明では移行しやすい添加剤は極力添加量自体を低くするよう調整した。
【0048】
また本発明では、樹脂層(c3)上にシリコーン剥離剤層(c4)を設ける前に、樹脂層(c3)表面へ放電密度10〜50W・min/mの強度でコロナ放電処理を行うことが好ましく、20〜40W・min/mの強度でコロナ放電処理を行うことがより好ましい。
該層表面にコロナ放電処理を行うことで、シリコーン剥離剤の密着性が向上することに加えて、シリコーンを硬化させる際の阻害物質でもある該層表面にブリードアウトしてきた添加剤の除去が可能となる。コロナ放電処理量が10W・min/m未満では、上記のコロナ放電処理の効果が不十分であり、逆に50W・min/m超では、処理の効果が頭打ちとなることに加え、樹脂層(c3)内部の添加剤のブリードアウトを促進する傾向があり、またフィルム表面の帯電による塗工ムラが発生するため好ましくない。
【0049】
[シリコーン剥離剤層(c4)の組成および形成]
本発明の剥離層(C)は、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を予め形成した樹脂層(c3)と、該樹脂層(c3)上に塗工により設けられるシリコーン剥離剤層(c4)
とから形成されることが好ましい。
シリコーン剥離剤層(c4)を構成するシリコーン剥離剤としては、シリコーンハンドブック(日本工業新聞社発行,518頁〜530頁)にも記載されているものが使用でき、中でも付加反応型シリコーン、および紫外線硬化型シリコーン、さらにはシリコーン変性熱硬化性樹脂等の、フィルム用剥離シリコーン剤として販売され、幅広く使用されているものが使用可能である。さらに、これらの原材料に反応制御剤、剥離調整剤、スリップ改良剤等を適時添加してもよい。
上記シリコーン剥離剤の樹脂層(c3)上への塗工量は、固形分量として0.03〜5g/m、好ましくは0.05〜1g/mである。0.03g/m未満ではその殆どが穿孔構造(c2)部に集中的に塗工されて(流入して)剥離剤の分布が不安定になり、粘着テープまたは粘着ラベルとの剥離性が不十分になる傾向にある。5g/m超ではシリコーン剥離剤層(c4)が厚くなりすぎ、樹脂層(c3)と剥離剤層(c4)との密着性が低下するため好ましくない。
【0050】
樹脂層(c3)上へのシリコーン剥離剤の塗工には、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等を利用した塗工装置を使用することができる。ただし、本発明においては安定した剥離性を実現するために、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)に等しくシリコーン剥離剤が塗工されるような塗工方式、さらには乾燥方式を選択し、採用する必要がある。
剥離層(C)におけるシリコーン剥離剤の塗工量分布として、平坦面(c1)で観測されるSi量(s1)と、穿孔構造(c2)部分で観測されるSi量(s2)とから求められる珪素存在比(s1/s2)が0.8〜1.2であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。上記範囲を外れるとシリコーン剤の塗工量に分布(ムラ)が出来やすく、結果として剥離に要する力が不安定になる。特に珪素存在比が0.8未満の場合は、穿孔構造(c2)部分でのシリコーン塗工量が過剰となり、平坦面での剥離に要する力が増大する傾向にある。また穿孔構造(c2)部分で樹脂層(c3)と剥離剤層(c4)との密着性の低下を招き好ましくない。逆に珪素存在比が1.2を上回る場合は、穿孔構造(c2)部分のシリコーン塗工量が不足して、同部分での剥離に要する力が増大する傾向にある。加えて、反対面である易印刷性層(A)へシリコーンが移行しやすく、同層のインキ密着性が大きく損なわれることから好ましくない。
【0051】
本発明の剥離性フィルムは、上記の穿孔構造(c2)および珪素存在比を達成することで、剥離層(C)表面に良好な印刷性を具備している。このことは例えば、印刷インキの密着性評価として、剥離層(C)表面にグラビアインキを2g/mの量でベタ印刷を行い、インキ乾燥後の同表面をJIS−L−0849:2004に準拠し学振型摩擦試験器および金巾3号を用いて荷重500gで50回摩擦試験した後の表面へのインキの残留率が60〜100%と良好であり、より好ましくは80〜95%であることから明らかである。インキ残留率が60%未満であれば印刷インキの密着性は充分とは言えず、印刷性が良好とは言えない。
【0052】
また、剥離層(C)の粘着剤との剥離力は、0.01〜2.0N/50mmの範囲であることが好ましく、0.1〜1.0N/50mmの範囲であることがより好ましい。該剥離力は、後述する(剥離力)の項で詳述する通り、基準となる市販の粘着テープを用いてJIS−K−6854−2:1999に準拠して求めた値である。該剥離力が2.0N/50mmを上回る場合は、粘着テープまたは粘着ラベルとしたときに剥離性フィルムの剥離に要する力が大きくなる傾向があり、その商品価値が低下する。該剥離力が0.01N/50mmを下回る場合は、後述する残留接着率が低下する傾向があることから好ましくない。該剥離力は剥離層(C)の穿孔構造の程度や、シリコーン剥離剤の選定などが複合する要因により調整できる。
【0053】
また、剥離層(C)の性能を示す一指標として、残留接着率が挙げられる。これは基準となる粘着テープの粘着剤を剥離層(C)に接触させ、引き剥がしたときに、剥離層(C)からの剥離剤の脱落、即ち樹脂層(c3)からの剥離剤層(c4)の剥離、によって、該粘着剤表面が剥離剤で汚染され、接着力が低下することを定量化したものである。後述する(残留接着率)の項で詳述する方法で算出された残留接着率は、70〜100%の範囲であることが好ましく、80〜100%の範囲であることがより好ましい。70%を下回る場合は、シリコ−ン剥離剤の樹脂層(c3)との密着性が低いことを意味しており、粘着テープ等に加工した際には反対面の粘着剤がシリコーンで汚染されてしまうことから好ましくない。該残留接着率は、上述するコロナ放電処理、樹脂層(c3)の表面への添加剤のブリードアウト量、およびシリコーン剥離剤の選定など複合する要因により調整できる。
【0054】
『粘着テープ』
本発明の剥離性フィルムにおいて、易印刷性層(A)の上にさらに粘着剤層(D)を設け、巻き上げることで、剥離性および剥離面への印刷性・筆記性に優れた粘着テープが得られる。本発明はこのような粘着テープも包含するものである。
「粘着剤層(D)」
本発明において粘着剤層(D)の形成に使用可能な粘着剤としては、粘着剤ハンドブック第3版(日本粘着テープ工業会発行)20頁〜88頁に記載の粘着剤が挙げられる。
粘着剤の具体的な例としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物を
ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの、或いは2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤、さらには同一組成のエマルジョン系粘着剤などを挙げることができる。
【0055】
上記粘着剤の塗工量としては、固形分量で通常は3〜40g/m、好ましくは10〜30g/mである。上記の粘着剤塗工・乾燥後の粘着剤層(D)の厚さは、アクリル系粘着剤の場合で10〜50μm、ゴム系粘着剤の場合で80〜150μmとするのが一般的である。易印刷性層(A)側の剥離性フィルムと粘着剤との接着力が小さいときは、上記粘着剤を塗工する前に、易印刷性層(A)上にアンカーコート剤を塗工することが好ましい。該アンカーコート剤としては、ポリウレタン、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート・ポリエステルポリオール・ポリエチレンイミン、アルキルチタネートなどが使用できる。これらは一般に、水やメタノール、酢酸エチル、トルエン、ヘキサンなどの有機溶剤に溶解して塗工剤として使用される。易印刷性層(A)上へのアンカーコート剤の塗工量は、塗工・乾燥後の固形分量で通常0.01〜5g/m、好ましくは0.05〜2g/mである。
【0056】
加えて本発明では、粘着テープを23℃条件下で2週間調整した後、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を室温接着力(N/50mm)とし、別に粘着テープを70℃条件下で20時間調整した後、23℃条件下で30分冷却し、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を高温接着力(N/50mm)としたとき、下記式(1)により求められる粘着剤層(D)の接着力保持率が80〜100%、さらには90〜100%の範囲であることが好ましい。
接着力保持率(%)=高温接着力/室温接着力×100 ・・・(1)
【0057】
接着保持率が80%未満の場合は、剥離性フィルムとシリコーン剥離剤、即ち樹脂層(c3)とシリコーン剥離剤層(c4)、との密着性が不足していることを意味しており、好ましくない。この様な場合に、上述するコロナ放電処理等の対応が必要になる。
本発明の剥離性フィルムの易印刷性層(A)上に粘着剤を塗工し乾燥させた後、巻き上げることで本発明の粘着テープとなる。粘着テープ巻上げ時は、シワやたるみの発生がないように適度な巻取り張力条件下で巻取ることが重要である。加えて、粘着剤の種類によっては、使用時の品質の安定化のために、上記巻上げ後に30〜50℃設定のオーブンにてエージングすることが好ましい。
【0058】
『粘着ラベル』
本発明の剥離性フィルムにおいて、剥離層(C)の上に上記同様の粘着剤層(D)、さらにはラベル用上紙(E)を順に設けて積層することで、エアー抜けが良好で、カールの少ない、さらに貼り直しが可能な粘着ラベルが得られる。本発明はこのような粘着ラベルをも包含するものである。
「ラベル用上紙(E)」
本発明で使用する粘着ラベルのラベル用上紙(E)としては、普通紙、コート紙等の天然パルプを主構成材として含む紙、および熱可塑性樹脂フィルム、合成紙等の熱可塑性樹脂を主構成材として含む紙が使用可能である。粘着ラベルの屋外使用を考慮し、基材の耐
水性の観点から、熱可塑性樹脂フィルムや合成紙を使用するのが好ましい。
【0059】
ラベル用上紙(E)として用いる熱可塑性樹脂フィルムは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン・環状オレフィン共重合体、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,T等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等からなるものを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。これらの熱可塑性樹脂の中では、コスト面およびラベルのしなやかさや貼りなおしが可能であるといった点から、ポリオレフィン系樹脂を主構成材とすることが好ましい。
【0060】
本発明で使用可能なプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティック乃至はシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を有するポリプロピレン、またはプロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた共重合体を使用することができる。この共重合体は、2元系でも3元系以上でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体を用いる場合は、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することができる。そのような融点が低い樹脂として、高密度乃至は低密度のポリエチレンを例示することができる。
【0061】
ラベル用上紙(E)として用いる合成紙は、上記のポリオレフィン系樹脂と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも1つとを主構成材として含み、延伸して形成されるものである。これらは前述の熱可塑性樹脂フィルム層(B)と同様に製造され、必要に応じて安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤などを添加したものを使用できる。
なお、本発明で使用するラベル用上紙(E)は、粘着ラベル加工時のシワ防止、使用時のカール防止、および廃棄時のリサイクル性を考慮し、熱可塑性樹脂フィルム層(B)と同一主原料であることが好ましく、さらには同一製造法で製造することが好ましい。
同一主原料・同一製造法で製造した熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂フィルム層(B)とラベル用上紙(E))を貼合することにより、本発明の粘着ラベルの使用時、例えば印刷時のカールを低減することが容易になる。
【0062】
さらに具体的な数値目標として、本発明の粘着ラベルの熱履歴(例えば印刷後の熱乾燥、UV乾燥)によるカール発生防止のために、JIS−K−7133:1999に準拠して測定した熱可塑性樹脂フィルム層(B)の熱収縮率と、ラベル用上紙(E)の熱収縮率とから求められる比(ラベル用上紙(E)の熱収縮率(%)/熱可塑性樹脂フィルム層(B)の熱収縮率(%))が、0.7〜1.3の範囲であることが好ましい。熱収縮率比が0.7未満の場合は、粘着ラベルを印刷後に乾燥させた場合、剥離性フィルム側に大きくカールするので好ましくない。逆に熱収縮率比が1.3を上回る場合は、粘着ラベルを印刷後に乾燥させた場合、ラベル用上紙(E)側に大きくカールするので好ましくない。
また本発明で用いるラベル用上紙(E)は、被着体に接着後の貼り直しが更に容易となるように、粘着剤層(D)の選定に併せて適度な引張強度、引張弾性率を有することが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。各実施例、比較例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限
り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、各実施例、比較例にて使用した材料の詳細を表1に記載した。同表中の「MFR」はメルトフローレートを意味する。また、各実施例、比較例の熱可塑性樹脂フィルム層(B)の製造にあたって使用した材料の種類と配合量(重量%)は表2に、延伸条件、層の坪量は表3に記載した。表2、5、6に記載される材料名は、表1に記載される材料名に対応している。
【0064】
(比較例1)
表2に記載の組成を有する配合物を基層(ア)として250℃に設定した押出機で溶融混練して、ダイよりシート状に押出形成した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを表3に記載の延伸温度に加熱した後、ロール間延伸にて縦方向に延伸し、縦1軸延伸フィルムを得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物を表層(イ)として250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記縦1軸延伸フィルムの表裏両面に積層して、これを表面平滑な金属ロールとゴムロール(バックアップロール)とからなるニップロールの間に通し、各層を圧着して積層フィルム(表層(イ)/基層(ア)/表層(イ))を得た。この例では、表面側の表層(イ)が樹脂層(c3)に相当する。
【0065】
この積層フィルムを表3に記載の延伸温度に加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に9倍に延伸し、更に延伸温度(2)より20℃高い温度でアニーリング処理を行い、各層が1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸されている熱可塑性樹脂フィルム層(B)を得た。
さらにこの熱可塑性樹脂フィルム層(B)の両面に40W・min/mの強度でコロナ放電処理を施し、層(B)の裏面側に、表2に示す塗工剤液をグラビア塗工方式にて塗工し、乾燥させて易印刷性層(A)を設けた。さらに層(B)の表面側に、表2に示すシリコーン剥離剤液をグラビア塗工方式にて塗工し、乾燥させてシリコーン剥離剤層(c4)を設け、剥離性フィルムを得た。
【0066】
(実施例1)
比較例1の積層フィルムを得る際に、表2に記載の組成を有する配合物を表層(イ)として250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記縦1軸延伸フィルムの表面側に積層して、これを金属ロールよりなるエンボスロール(仕様は表3に記載)とゴムロールとからなるニップロールの間に通し、圧着して、層(B)の表面側に凹構造のある積層フィルムとした以外は、比較例1と同様の製造方法で剥離性フィルムを得た。剥離性フィルムとしての性能評価結果を表4に示す。
【0067】
(実施例2〜15、比較例2〜14)
表2に記載の組成を有する配合物、および表3に記載の製造条件に変更した以外は、実施例1と同様の製造方法で剥離性フィルムを得た。剥離性フィルムとしての性能評価結果を表4に示す。
【0068】
(実施例16、比較例15)
表2に記載の組成を有する配合物を基層(ア)として250℃に設定した押出機で溶融混練して、ダイよりシート状に押出形成した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。
次いで表2に記載の組成を有する配合物を表層(イ)として250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押し出し、これを前記無延伸フィルムの裏面側に積層して、これを表面平滑な金属ロールとゴムロール(バックアップロール)とからなるニップロールの間に通し、両層を圧着した後、さらに表2に記載の組成を有する配合物を表層(イ)(樹脂層(c3))として250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシー
ト状に押し出し、これを前記無延伸フィルムの表面側に積層して、これを金属ロールよりなるエンボスロール(仕様は表3に記載)とゴムロールとからなるニップロールの間に通し、圧着して、表面側に凹構造のある積層フィルムを得た。
さらにこの積層フィルムの両面に40W・min/mの強度でコロナ放電処理を施し、該フィルムの裏面側に、表2に示す塗工剤液をグラビア塗工方式にて塗工し、乾燥させて易印刷性層(A)を設けた。さらに該フィルムの表面側に、表2に示すシリコーン剥離剤液をグラビア塗工方式にて塗工し、乾燥させてシリコーン剥離剤層(c4)を設け、剥離性フィルムを得た。剥離性フィルムとしての性能評価結果を表4に示す。
【0069】
(実施例17〜19、比較例16,17)
上記実施例1,8,9および比較例2,8で製造した剥離性フィルムの易印刷性層(A)側に、表5に示す粘着剤(粘着剤1)をコンマコーター方式で塗工し、熱オーブンで乾燥した後に剥離性フィルムを巻取ることで、粘着テープを得た。製造条件の詳細を表5に示す。さらに、該粘着テープの性能評価結果も併せて表5に示す。
【0070】
(実施例20)
上記比較例1の剥離性フィルムを得る際に、層(B)の表面側に、裏面側と同じ塗工剤液を塗工した以外は、比較例1と同様の製造方法から、表裏面とも易印刷性層(A)を有するラベル用上紙(E)を得た。このものにはシリコーン剥離剤層(c4)は設けていない。
次いで、上記実施例1で得た剥離性フィルムの剥離層(C)側に表6に示す粘着剤(粘着剤2)をコンマコーター方式で塗工し、熱オーブンで乾燥した後に、上記ラベル用上紙(E)を貼合することで粘着ラベルを得た。製造条件の詳細を表6に示す。さらに、該粘着ラベルの性能評価結果も併せて表6に示す。
【0071】
(実施例21)
実施例16において、積層フィルムの両面に40W・min/mの強度でコロナ放電処理を施した後、同フィルムの表面側に、裏面側と同じ塗工剤液を塗工した以外は、実施例16と同様の製造方法から、表裏面とも易印刷性層(A)を有するラベル用上紙(E)を得た。このものにはシリコーン剥離剤層(c4)は設けていない。
次いで、上記実施例16で得た剥離性フィルムの剥離層(C)側に表6に示す粘着剤(粘着剤2)をコンマコーター方式で塗工し、熱オーブンで乾燥した後に、上記ラベル用上紙(E)を貼合することで粘着ラベルを得た。製造条件の詳細を表6に示す。さらに、該粘着ラベルの性能評価結果も併せて表6に示す。
【0072】
(実施例22、比較例18〜21)
表6に示す剥離性フィルムおよびラベル用上紙を使用した以外は、実施例21と同様な方法で粘着ラベルを得た。該粘着ラベルの性能評価結果も併せて表6に示す。
【0073】
(比較例22)
特許第3950115号公報の実施例1の剥離性フィルムを再現すべく下記方法で粘着ラベルを作成した。
即ち、エンボスの間隔が126μmであり、エンボスの高さが16μmであり、溝上側の長さが34μmであり、溝底面の長さが17μmである溝付きエンボスロールを110℃に加熱して使用し、シリコーン加工したポリエチレン加工紙をエンボス加工して、剥離性フィルムとした。
該剥離性フィルムを用いて、表6に示す粘着剤、ラベル用上紙を使用して粘着ラベルを作成した。該粘着ラベルの性能評価結果も、併せて表6に示す。
【0074】
(比較例23)
比較例22で使用した剥離性フィルムを使用し、印刷用上紙を表6に示すラベル用上紙に変更した以外は、比較例22と同様な方法で粘着ラベルを作成した。該粘着ラベルの性能評価結果を表6に示す。
【0075】
[試験例]
(表面固有抵抗)
JIS−K−6911:1995に準拠し、剥離性フィルムを温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2時間以上状態調整した後、該フィルムの易印刷性層(A)表面の表面固有抵抗値(Ω/m)を絶縁計(型番:DSM−8103、東亜電波工業(株)社製)を用いて測定した。
(表面粗さ)
JIS−B−0601:1994に準拠し、剥離性フィルムの易印刷性層(A)表面の表面平均粗さ(Ra)(μm)を、三次元粗さ測定装置(型番:SE−3AK、(株)小坂研究所製)および解析装置(型番:SPA−11、(株)小坂研究所製)を用いて測定した。
【0076】
(水接触角)
JIS−R−3257:1999に準拠し、剥離性フィルムの易印刷性層(A)表面の水接触角(°)を、接触角測定器(型番:CA−D、協和界面科学(株)製)を使用し、純水を層(A)表面に滴下して1分後の水接触角から測定した。この測定を10回行い(1回の測定毎に表面が濡れていない未測定のフィルムに交換)、測定した値の平均値を求め、水接触角とした。
(インキ残留率)
剥離性フィルムの剥離層(C)表面に、グラビア適性試験器(型番:NO.2270、熊谷理機社製)を用いて溶剤系グラビアインキ(型番:パンエコー藍、東洋インキ製造社製)を2g/mの量で、グラビア線数175線のベタ印刷パターンを印刷し、室温下で3日間放置して乾燥させて、印刷サンプルを得た。JIS−L−0849:2004に準拠し、該印刷サンプルを学振型摩擦試験器(スガ試験器社製)に取り付け、印刷面を、金巾3号を用いて荷重500gで50回摩擦試験し、摩擦前後のマクベス色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製)にて測定して、インキ残留率を下記式(2)から求めた。
インキ残留率(%)=(擦化後のマクベス濃度)÷(擦化前のマクベス濃度)×100
・・・(2)
【0077】
(インキ密着性)
剥離性フィルムの菊半版(636mm×470mm)のサイズのものを1000枚準備した。
次いで温度23℃、相対湿度30%の環境下で、オフセット印刷機(型番:OF−4、三菱重工業社製)およびUVインキ(型番:BC−161スミ、T&K TOKA社製)を使用し、剥離性フィルムの易印刷性層(A)の表面に、50%網点および100%ベタを含む図柄を、6000枚/時の速度で1000枚連続印刷した。その後、UV照射器にて強度100mj/cmの紫外線を照射しインキ乾燥させた後のインキ接着度合いを、粘着テープ(型番:セロテープ(登録商標)CT−18、ニチバン社製)を手で貼着し、手で剥離したときの状態を観察して、以下の基準にて評価した。
○ : インキが殆ど剥がれず、剥離性フィルムの材質破壊に到る場合もある。
△ : 剥がす時に抵抗はあるが、インキの殆どが剥がれ、実用上問題がある。
× : インキが全量剥がれ、剥がす時の抵抗も殆ど無い。
【0078】
(網点再現性)
上記インキ密着性評価で印刷した剥離性フィルムの、50%網点部分を、デジタル顕微鏡(型番:VH−8000、キーエンス社製)を用いて50倍率で拡大して画面観察し、
以下の基準にて評価した。
○ : 画面内で網点抜けが5箇所以内。
△ : 画面内で網点抜けが6箇所以上、20箇所以内。
× : 画面内で網点抜けが21箇所以上。
(熱収縮率)
実施例20〜22、比較例19〜24にて用いた熱可塑性樹脂フィルム層(B)とラベル用上紙(E)を10cm角で切り落とし、4辺の長さをデジタルリーダー(型番:DR−565D、大日本スクリーン製造社製)で測定し、次いで100℃に設定したオーブン(型番:DN−43、ヤマト化学社製)内で該サンプルを2時間吊り下げ加熱し、オーブン加熱後の4辺の長さをデジタルリーダーで再測定し、寸法変化率の平均値を熱収縮率(%)として算出した。
【0079】
(添加剤ブリードアウト量)
剥離性フィルムを10cm角で切り落とし、剥離層(C)側を内側にして、500mlビーカー側面部に2枚配置する。本ビーカーにクロロホルム500mlを注ぎいれ、スターラーにて2分間攪拌し、表面ブリードアウト物をクロロホルムに溶解させる。本クロロホルム抽出液をエバポレーターを使用して10倍(50ml)に濃縮した後、ガラス繊維濾紙(型番:GF/F、ワットマン社製)にてフィラーやシリコーン硬化物等の固形分を一旦除去し、再度エバポレーターにて完全に溶剤を気化させ、剥離層(C)表面にブリードアウトしていた添加剤を固化物として抽出した。固化物の重量およびサンプルの表面積から、一定面積あたりの添加剤ブリードアウト量(mg/m)を算出した。
【0080】
(剥離層(C)表面形状)
剥離性フィルムの剥離層(C)表面形状に関しては、非接触3次元表面形状粗さ測定器(型番:NewView5010、ザイゴ(株)製)を用いて、面方向の3次元表面形状を、測定面積:2mm×2mm、対物レンズ:20倍、14μm以下の波長をカットする条件下で測定を行い、解析ソフト(型番:MetroPro、ザイゴ(株)製)を用いて下記4点の解析を行った。
1)穿孔構造(c2)の間隔(フィルム走行方向/直交方向)
2)剥離層(C)に占める平坦面(c1)の面積率
3)平坦面(c1)から穿孔構造(c2)最底部までの深さ
4)穿孔構造(c2)断面形状およびその対角線比(長径/短径)
加えて、剥離性フィルムの製造に用いたエンボスロールの表面凹凸形状は、該エンボスロールからレプリカフィルム(応研商事社製)に転写して、剥離性フィルム同様に、上記1)〜4)の評価を行った。
【0081】
(シリコーン剥離剤塗工量分布)
剥離性フィルムの剥離層(C)において、平坦面(c1)で観測されるSi量(s1)と、穿孔構造(c2)部分で観測されるSi量(s2)は、行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)を用いて、それぞれの箇所でのSi正イオン強度として測定を行った。測定条件は下記の通りである。
機種名 :IONTOF社製 TOF−SIMS IV
一次イオン:Bi3+、加速電圧25kV、照射電流0.2pA
二次イオン:正イオン収集、分析面積2mm角、積算時間209sec
珪素存在比(s1/s2)は、観測された上記Si量(s1)と上記Si量(s2)との比から求めた。
【0082】
(ラブオフ評価)
剥離性フィルムの剥離層(C)において、樹脂層(c3)上のシリコーン剥離剤層(c4)の密着性を以下の方法と基準から定性的に評価した。
即ち剥離性フィルムの剥離層(C)表面を人差し指の腹で往復10回強く表面を擦った後、赤色の油性マジック(型番:マジックインキ極太、寺西化学工業社製)で擦化面および非擦化面を筆記し、インキのはじき度合いを目視で判定した。
○ : 擦化面と非擦化面のインキのはじき度合いは同様であり、シリコーン剥離剤は強く密着している。
△ : 擦化面のインキのはじき度合いがやや弱く差が見られることから、シリコーン剥離剤の密着はやや弱く、一部が剥離している。
× : 擦化面と非擦化面のインキのはじき度合に大きな差が見られ、擦化面にインキのはじきが感じられないことから、シリコーン剥離剤の密着は弱く、完全に剥離している。
【0083】
(剥離力)
JIS−K−6854−2:1999に準拠し、剥離性フィルムの剥離層(C)に、市販の粘着テープ(型番:31B、日東電工社製、テープ幅25mm)を貼合し、10g/cm荷重をかけて23℃恒温室内で1時間放置して密着させた後、該サンプルの剥離性フィルムと粘着テープとを引張り試験器(型番:オートグラフAGS−5KND、島津製作所社製)を用いて、剥離速度を300mm/分にて180°剥離時の強度を測定し、剥離力とした。
【0084】
(残留接着率)
上記の剥離力測定で使用した剥離力測定後の粘着テープを、平坦なSUS304ステンレス板に接触貼合させ、10g/cm荷重をかけて23℃恒温室内で1時間放置して密着させた後、上記剥離力測定と同一条件にて粘着テープとSUS板との180°剥離強度を測定し、同様にブランクの粘着テープを、平坦なSUS304ステンレス板に接触貼合させ、10g/cm荷重をかけて23℃恒温室内で1時間放置して密着させた後、上記剥離力測定と同一条件にて粘着テープとSUS板との180°剥離強度を測定したとき、残留接着率を下記式(3)により算出した。
残留接着率(%)=剥離力測定後の剥離強度/ブランクの剥離強度×100 ・・・(3)
【0085】
(接着力および接着力保持率)
実施例17〜19、比較例17、18にて得た粘着テープを23℃条件下で2週間調整した後、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を室温接着力(N/50mm)とし、
別に粘着テープを70℃条件下で20時間調整した後、23℃条件下で30分冷却し、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を高温接着力(N/50mm)としたとき、
接着力保持率は下記式(1)により算出した。
接着力保持率(%)=高温接着力/室温接着力×100 ・・・(1)
【0086】
(ラベルカール判定)
実施例20〜22、比較例19〜24にて得た粘着ラベルを10cm角で切り落とし、60℃に設定したオーブン(型番:DN−43、ヤマト化学社製)内で同サンプルを2時間吊り下げ加熱し、その後同サンプルを室温環境下で水平な実験台上に凸カールが下側になるように置き、30分静置後、台から浮き上がったカール量をサンプル四隅で測定し、4点の平均値から下記基準より判定を行った。
○ : カール平均量が5mm以内であり良好
△ : カール平均量が5mmを超えて10mm以内であり不良
× : カール平均量が10mmを超えて不良
【0087】
(エアー抜け外観判定)
実施例20〜22、比較例19〜24にて得た粘着ラベルを30cm角で切り落とし、2kgローラーを使用してガラス板への貼合を行った。
貼合後のラベル用上紙のエアー抜け度合いを、外観から下記基準で判定を行った。
○ : ブリスター(空気の巻き込みによる膨れ)はなく、エアー抜け良好
△ : ブリスターが1〜2個見られ、エアー抜け不良
× : ブリスターが3個以上見られ、エアー抜け不良
【0088】
(貼り直し適性)
上記エアー抜け外観判定で使用したラベル用上紙の隅部分を手で引き上げ、ガラス板より5cm角部分引き上げた後、再度ガラス板へ貼合を行った。貼り直し前と貼り直し後でのラベル用上紙の位置ずれから、下記基準より判定を行った。
○ : 位置ずれが5mm以内であり良好
△ : 位置ずれが5mmを超えて10mm以内であり不良
× : 位置ずれが10mmを超えて不良
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
易印刷性層(A)、熱可塑性樹脂フィルム層(B)、剥離層(C)を順に含む積層構造を有する剥離性フィルムであって、
剥離層(C)の表面が、平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を有し、
剥離層(C)の表面の穿孔構造(c2)は50〜400μm間隔で少なくとも一方向に規則的に配置されており、
剥離層(C)の表面に占める平坦面(c1)の面積率が5〜40%の範囲であり、
平坦面(c1)から穿孔構造(c2)最底部までの深さが5〜20μmの範囲であり、
平坦面(c1)と平行方向で見た穿孔構造(c2)の断面形状が菱形および楕円の少なくとも一方であり、
かつ同断面形状の対角線比(長径/短径)が3〜10の範囲である
ことを特徴とする剥離性フィルム。
【請求項2】
剥離層(C)が、ポリオレフィン系樹脂を主成分として平坦面(c1)および穿孔構造(c2)を形成した樹脂層(c3)と、該樹脂層(c3)上に塗工により設けられるシリコーン剥離剤層(c4)から形成されることを特徴とする請求項1に記載の剥離性フィルム。
【請求項3】
樹脂層(c3)が、熱可塑性樹脂および添加剤を含む樹脂組成物からなり、該樹脂層(c3)から同層表面への添加剤のブリードアウト量が、10〜200mg/mであることを特徴とする請求項2に記載の剥離性フィルム。
【請求項4】
樹脂層(c3)上にシリコーン剥離剤層(c4)を設ける前に、樹脂層(c3)表面へ放電密度10〜50W・min/mの強度でコロナ放電処理を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の剥離性フィルム。
【請求項5】
剥離層(C)において、平坦面(c1)で観察されるSi量(s1)と、穿孔構造部(c2)で観察されるSi量(s2)とから求められる珪素存在比(s1/s2)が0.8〜1.2の範囲であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の剥離性フィルム。
【請求項6】
剥離層(C)表面にグラビアインキを2g/mの量でベタ印刷を行い、乾燥後の同表面をJIS−L−0849:2004に準拠し学振型摩擦試験機及び金巾3号を用いて荷重500gで50回摩擦試験した後のインキ残留率が60〜100%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに剥離性フィルム。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルム層(B)が、ポリオレフィン系樹脂と無機および有機フィラーの少なくとも一つを主構成材として含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の剥離性フィルム。
【請求項8】
易印刷性層(A)が、熱可塑性樹脂フィルム層(B)上に塗工により設けられる層であり、高分子型帯電防止剤を含有し、JIS−K6911:1995に準拠して測定した表面固有抵抗値が10〜1013Ω/mであり、JIS−R3257:1999に準拠して測定した表面の水接触角が60〜100°であり、かつJIS−B0601:1994に準拠して測定した算術平均表面粗さRaが0.2〜0.9μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の剥離性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の剥離性フィルムの易印刷性層(A)上に、粘着剤層(D)を設けたことを特徴とする粘着テープ。
【請求項10】
剥離性フィルムが長手方向に連続して巻き上げたロール状をしており、これを巻き出しながら易印刷性層(A)上に粘着剤を塗工し、乾燥させて粘着剤層(D)とした後、これを再び巻き上げてロール状としたことを特徴とする請求項9に記載の粘着テープ。
【請求項11】
粘着テープを23℃条件下で2週間調整した後、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を室温接着力(N/50mm)とし、
別に粘着テープを70℃条件下で20時間調整した後、23℃条件下で30分冷却し、平坦なSUS304板表面に粘着剤層(D)を接触貼合させ、更に23℃条件下で10g/cm荷重をかけて1時間圧着した後、JIS−K6854−2:1999に準拠し引張試験器を用いて剥離速度300mm/minで測定した180°剥離強度を高温接着力(N/50mm)としたとき、下記式(1)により求められる接着力保持率が80〜100%の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の粘着テープ。
接着力保持率(%)=高温接着力/室温接着力×100 ・・・(1)
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の剥離性フィルムの剥離層(C)上に、粘着剤層(D)、ラベル用上紙(E)を順に設けた粘着ラベルであって、JIS−K−7133:1999に準拠して測定した熱可塑性樹脂フィルム層(B)の熱収縮率とラベル用上紙(E)の熱収縮率の比が、0.7〜1.3の範囲であることを特徴とする粘着ラベル。
【請求項13】
ラベル用上紙(E)が、ポリオレフィン系樹脂を主構成材として含む樹脂フィルムであることを特徴とする請求項12に記載の粘着ラベル。
【請求項14】
ラベル用上紙(E)が、ポリオレフィン系樹脂と無機および有機フィラーの少なくとも一つを主構成材として含み、延伸して成形される合成紙であることを特徴とする請求項13に記載の粘着ラベル。
【請求項15】
ラベル用上紙(E)が、天然パルプ紙であることを特徴とする請求項12に記載の粘着ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−36578(P2010−36578A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158636(P2009−158636)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】